説明

排水処理装置

【課題】マンホールを利用するための構成を簡素化することができる技術を提供する。
【解決手段】マンホール形成部200は、中空の柱状の部分である首部と、首部の下端の全周を囲む上面を形成する上面部と、を含む。マンホール枠300は、第1下面311と、第1下面よりも外周方向側に形成された第2下面312と、第1下面と第2下面との間に形成されて下方に向かって突出する第1脚部110と、を含む。嵩上げ部材を利用しない場合には、マンホール枠の第1下面が首部に支持される。嵩上げ部材を利用する場合には、嵩上げ部材の下端が上面部に支持される。そして、マンホール枠の第2下面が嵩上げ部材の上端に支持される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排水処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、生活排水や産業排水を処理する排水処理装置(浄化槽ともよばれる)が利用されている。点検、清掃、検査等の種々の目的のために排水処理装置の内部にアクセスするために、マンホールを有する本体が、しばしば、利用されている。マンホールを有する排水処理装置の構成として、マンホールを有する本体に、マンホール蓋を支持するマンホール枠を装着する構成が知られている。また、排水処理装置の本体を地中深くに埋設する場合に利用される構成として、マンホールを有する本体と、地表に設けられたマンホール枠との間に、嵩上げ部材を介在させる構成が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−316902号公報
【特許文献2】特開平10−258895号公報
【特許文献3】特開2005−87968号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、マンホールを利用するための構成の簡素化に関しては十分な工夫がなされていないのが実情であった。例えば、嵩上げ部材を利用する場合には、嵩上げ部材の下端と本体との間に、雨水や土砂が侵入し得る大きな隙間が生じる可能性があった。この場合には、その隙間から雨水や土砂がマンホールに侵入することを避けるために、嵩上げ部材の下端に、排水処理装置の本体を覆う形状を有する部分が要求される場合があった。また、排水処理装置の本体と、嵩上げ部材との間に、嵩上げ部材を支持するための枠が別途要求される場合があった。
【0005】
本発明の主な利点は、マンホールを利用するための構成を簡素化することができる技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]
排水処理装置であって、
排水を処理するための処理槽を収容する本体と、
前記本体に設けられ、マンホールを形成するマンホール形成部と、
前記マンホールを塞ぐマンホール蓋と、
前記マンホール蓋を支持するマンホール枠と、
を備え、
前記マンホール形成部は、
上方に向かって突出して上部に前記マンホールを形成する中空の柱状の部分である首部と、
前記首部の下端の全周を囲む上面を形成する上面部と、
を含み、
前記首部の上部は、前記マンホール枠を前記マンホール形成部に載置する場合に、前記マンホール枠を支持し、
前記上面部は、前記マンホール枠を前記首部の代わりに支持するための中空の柱状の嵩上げ部材を、前記首部の周囲を囲むように前記マンホール形成部に載置する場合に、前記嵩上げ部材の環状の下端を全周に亘って支持し、
前記マンホール形成部は、前記マンホール形成部に載置された前記嵩上げ部材の水平方向の動きに対して、前記首部が前記嵩上げ部材の内面と接触して前記嵩上げ部材の動きを制止することによって、前記嵩上げ部材の環状の下端が前記上面部から離れることを前記下端の全周に亘って防止するように構成されており、
上方から下方に向かって見たときに、前記マンホールの輪郭が成す形状の重心位置から前記マンホールの外に向かう方向を外周方向と呼び、前記マンホールの外から前記重心位置に向かう方向を内周方向と呼ぶときに、
前記マンホール枠は、第1下面と、前記第1下面よりも前記外周方向側に形成された第2下面と、前記第1下面と前記第2下面との間に形成されて前記第1下面および前記第2下面よりも下方に向かって突出する第1脚部と、を含み、
前記マンホール枠と前記首部と前記嵩上げ部材は、
(A)前記マンホール枠が前記マンホール形成部に載置される場合には、前記第1脚部が前記首部の前記外周方向側に配置された状態で、前記第1下面が前記首部の前記上部に支持され、前記第1脚部が前記首部と接触して前記マンホール枠の水平方向の動きを制止し、
(B)前記マンホール枠が前記嵩上げ部材に載置される場合には、前記第1脚部の前記外周方向側に前記嵩上げ部材が配置された状態で、前記第2下面が前記嵩上げ部材の上端に支持され、前記第1脚部が前記嵩上げ部材と接触して前記マンホール枠の水平方向の動きを制止するように、構成されている、
排水処理装置。
【0008】
この構成によれば、マンホール形成部が、首部と嵩上げ部材の内面との接触によって、嵩上げ部材の環状の下端が上面部から離れることをその下端の全周に亘って防止するように構成されているので、嵩上げ部材の下端と上面部との間に隙間が生じてその隙間から土砂や雨水がマンホールに侵入する可能性を低減できる。この結果、特殊な形状の嵩上げ部材(例えば、マンホール形成部の形状に合わせた複雑な形状を有する嵩上げ部材)を利用せずに済む。
【0009】
また、マンホール枠がマンホール形成部に載置される場合には、第1脚部が首部の外周方向側に配置された状態で、第1下面が首部の上部に支持され、第1脚部が首部と接触してマンホール枠の水平方向の動きが制止される。その結果、首部に対するマンホール枠の位置ズレが抑制される。
【0010】
また、マンホール枠が嵩上げ部材に載置される場合には、第1脚部の外周方向側に嵩上げ部材が配置された状態で、第2下面が嵩上げ部材の上端に支持され、第1脚部が嵩上げ部材と接触してマンホール枠の水平方向の動きが制止される。その結果、嵩上げ部材に対するマンホール枠の位置ズレが抑制される。
【0011】
このように、嵩上げ部材を利用するか否かに拘わらずに、位置ズレを抑制しつつ同じマンホール枠を利用することができる。また、嵩上げ部材を利用する場合には、マンホール形成部に直接に嵩上げ部材を載置(装着)すればよいので、嵩上げ部材を装着するための枠をマンホール形成部に装着せずに済む。
【0012】
以上により、マンホールを利用するための構成を簡素化することができる。
【0013】
[適用例2]
適用例1に記載の排水処理装置であって、
前記マンホール蓋は、下方に向かって突出する第2脚部を含み、
前記マンホール蓋および前記首部は、
前記マンホール枠を介さずに前記マンホール蓋を前記首部の上部に載せる場合には、前記第2脚部が前記首部の前記外周方向側に配置された状態で、前記マンホール蓋の下面が前記首部の前記上部に支持され、前記第2脚部が前記首部と接触して前記マンホール蓋の水平方向の動きを制止するように構成されている、
排水処理装置。
【0014】
この構成によれば、マンホール蓋をマンホール形成部に載せる場合に、マンホール蓋の位置がずれることを抑制できる。そして、このような効果を、簡単な構成で実現することができる。
【0015】
[適用例3]
適用例1または適用例2に記載の排水処理装置であって、
前記首部は、水平な断面形状が円形状であり、上部の外径が前記首部の最大外径よりも小さくなるように構成されている、
排水処理装置。
【0016】
この構成によれば、マンホール枠の第1脚部と嵌合する複雑な形状を首部に設けなくても、首部にマンホール枠を載置(装着)することができる。このように、マンホールを利用するための構成を簡素化することができる。
【0017】
[適用例4]
適用例1ないし適用例3のいずれかに記載の排水処理装置であって、
前記首部は、前記内周方向側から前記外周方向側に貫通する孔を有し、
前記孔は、前記マンホール枠が前記マンホール形成部に載置される場合の、前記マンホール枠の前記第1脚部の下端よりも高い位置に形成されている、
排水処理装置。
【0018】
この構成によれば、孔を利用して、マンホール枠とマンホール蓋との少なくとも一方を、マンホール形成部に仮固定することができる。例えば、いわゆるPP(ポリプロピレン)バンド等の結束線を孔に通し、その結束線を利用してマンホール枠とマンホール蓋との少なくとも一方を仮固定することができる。また、この孔が、第1脚部の下端よりも高い位置に配置されているので、孔をマンホール枠の固定に利用しない場合であっても、孔を第1脚部によって覆い隠すことができる。嵩上げ部材を利用する場合には、孔を嵩上げ部材によって覆い隠すことができる。以上により、土砂あるいは雨水が孔から排水処理装置の内部に侵入する可能性を低減できる。そして、このような効果を、簡単な構成で実現することができる。
【0019】
[適用例5]
適用例4に記載の排水処理装置であって、
前記マンホール枠の前記第1脚部は、前記内周方向側から前記外周方向側に貫通する孔を有し、
前記第1脚部の前記孔は、前記マンホール枠が前記マンホール形成部に載置される場合の、前記首部の前記孔と重なり得る高さに形成されている、
排水処理装置。
【0020】
この構成によれば、首部の孔と第1脚部の孔とを利用して、マンホール枠をマンホール形成部に固定することができる。例えば、それらの孔を通り抜ける貫通部材(例えば、リベット)を利用して、マンホール枠をマンホール形成部に固定することができる。そして、このような効果を、簡単な構成で実現することができる。
【0021】
[適用例6]
適用例4または適用例5に記載の排水処理装置であって、
前記首部の前記孔のサイズ(径)は、方向に依存して異なっており(非円形)、
前記首部の前記孔の最小サイズは第1サイズであり、
前記首部の前記孔の少なくとも1つの方向のサイズは、前記第1サイズよりも大きい第2サイズである、
排水処理装置。
【0022】
この構成によれば、首部の孔に、断面が第1サイズの円形状の部材を通すことができ、断面が第1サイズよりも大きいサイズの円形状の部材が通り抜けることを防止できる。従って、第1サイズの貫通部分を含む固定部材(例えば、リベットやねじ)を利用して、マンホール枠あるいは嵩上げ部材をマンホール形成部に固定することができる。また、首部の孔に、厚さが第1サイズ以下であって幅が第2サイズ以下である幅広な断面形状を有する部材を通すこともできる。従って、そのような部材(例えば、いわゆるPPバンド等の結束線)を利用して、マンホール蓋とマンホール枠との少なくとも一方をマンホール形成部に仮固定することができる。そして、このような効果を、簡単な構成で実現することができる。
【0023】
なお、本発明は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、排水処理装置、排水処理装置のための嵩上げ部材、マンホール枠、マンホール蓋、等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】排水処理装置の側面図である。
【図2】マンホール形成部200とマンホール枠300とマンホール蓋100との装着状態を示す断面図である。
【図3】図2の部分PAを拡大して表す図である。
【図4】脚部340および第3壁部233を上方から下方に向かって見た断面図である。
【図5】マンホール形成部200と嵩上げ部材400とマンホール枠300とマンホール蓋100との装着状態を示す断面図である。
【図6】図5の部分PBを拡大して表す図である。
【図7】マンホール形成部200にマンホール蓋100を仮固定した様子を示す断面図である。
【図8】マンホール形成部200の第3壁部233の貫通孔233hの形状を示す説明図である。
【図9】マンホール形成部200と嵩上げ部材400とマンホール枠300とマンホール蓋100との装着状態を示す断面図である。
【図10】首部の別の実施例を示す断面図である。
【図11】首部の更に別の実施例を示す断面図である。
【図12】マンホール枠の脚部の別の実施例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
次に、この発明の実施の形態を第1〜第3実施例と変形例とに基づいて説明する。
【0026】
A.第1実施例:
図1は、本発明の一実施例としての排水処理装置の側面図である。この排水処理装置800は、それぞれが槽状に形成された上槽810と下槽820とを接合することによって形成された本体830を有している。上槽810と下槽820とは、例えば、FRP(繊維強化プラスチック)あるいはジシクロペンタジエン樹脂によって形成されている。
【0027】
図示を省略するが、本体830は、排水を処理するための種々の処理槽を収容している。例えば、本体830は、排水中の固形物を分離する処理槽(例えば、夾雑物除去槽、あるいは、沈殿分離槽)と、嫌気性微生物による嫌気処理を行う嫌気処理槽(例えば、嫌気濾床槽)と、好気性微生物による好気処理を行う好気処理槽(例えば、接触曝気槽)と、処理された水を一時的に貯留する処理水槽と、処理水の消毒を行う消毒槽と、を収容している。なお、本体830に収容される処理槽は、上記した処理槽とは異なる他の種々の処理槽であってよい。また、処理フローも、任意の処理フローであってよい。
【0028】
上槽810には、排水を本体830内に導入する流入管801と、排水処理装置800によって処理された処理水を本体830から放流する放流管802とが設けられている。また、上槽810の上面には、マンホール形成部200が設けられている。本実施例では、上槽810に2つのマンホール形成部200が設けられている。
【0029】
マンホール形成部200は、平面視で(上方から下方に向かって見て)略円形状に形成されており、略円形状のマンホール200hを形成する。マンホール形成部200の上部には、マンホール枠300が固定されている。マンホール枠300は、平面視で略円形枠状に形成されており、マンホール蓋100を支持する。マンホール蓋100は、マンホール200hを塞ぐ円板状の蓋である。
【0030】
図1の実施例では、排水処理装置800は、地中に施工したベースコンクリートC1上に置かれている。そして、排水処理装置800が埋め戻された後に、排水処理装置800の上部にコンクリートスラブC2が打設される。なお、排水処理装置800の設置方法は、図1に示す方法に限らず、他の種々の方法であってよい。例えば、後述するように、嵩上げ部材が利用されてもよい。
【0031】
まず、嵩上げ部材を利用せずに、マンホール形成部200にマンホール枠300を固定する場合について説明する。図2は、マンホール形成部200と、マンホール枠300と、マンホール蓋100と、の装着状態を示す断面図である。図3は、図2の部分PAを拡大して表す図であり、マンホール形成部200と、マンホール枠300と、マンホール蓋100と、の組み付けを示す分解断面図である。図4は、マンホール枠300とマンホール形成部200との組み付けを上方から下方に向かって見た断面図である。図4は、図2のA−A断面を示している。
【0032】
マンホール形成部200は、首部230と、上面部250と、を有している。上面部250は、平面視で略円状に形成された平らな面であり、上槽810の上部に設けられている。上面部250の内周縁255からは、首部230が上方に向かって突出している。首部230は、上方に向かって突出する中空の柱状の部分であり、上面にマンホール200hを形成する。
【0033】
図4には、マンホール200hの輪郭200hoが点線で示されている。図示するように、マンホール200hは、略円形状の孔である。図中の位置200hcは、マンホール200hの輪郭200hoが成す形状の重心位置である。図中の第1方向D1は、マンホール200hの外から重心位置200hcに向かう方向を示し、第2方向D2は、重心位置200hcからマンホール200hの外に向かう方向を示している。以下、第1方向D1を「内周方向D1」とも呼び、第2方向D2を「外周方向D2」とも呼ぶ。
【0034】
図3に示すように、首部230は、第1壁部231と、第2壁部232と、第3壁部233と、第4壁部234と、を有している。第1壁部231は、上面部250の内周縁255から上方に向かって延びている。第2壁部232は、第1壁部231の上端から、内周方向D1に傾斜して斜め上方に延びる傾斜壁である。第3壁部233は、第2壁部232の上端から上方に向かって延びている。第3壁部233には、貫通孔233hが設けられている(詳細については後述)。第4壁部234は、第3壁部233の上端から延びる壁であり、その延びる方向は、上方向から内周方向D1に徐々に変化している。この第4壁部234は、首部230の上端(上面)に対応し、第4壁部234の内端234eは、マンホール200hの輪郭を形成する。
【0035】
上面部250は、首部230の下端(第1壁部231の下端)の全周を囲む上面を形成している。上面部250は、後述する嵩上げ部材を支持するために、利用される。
【0036】
本実施例の首部230は、傾斜する第2壁部232を有する段差形状を有している。これにより、首部230の上部(第3壁部233の上端、および、第4壁部234)の外径ED1は、首部230の下端(第1壁部231の下端)の外径ED2よりも小さい。この理由については、後述する。
【0037】
マンホール枠300は、枠本体310と、脚部340と、内突出部320と、外突出部330と、を有している。枠本体310は、平面視で略円状に形成された中空円板である。脚部340は、枠本体310の下面の内周縁と外周縁の間の位置に、枠本体310の全周に亘って設けられた、下方に向かって突出する突出部である。枠本体310の下面は、脚部340よりも内側の第1下面311と、脚部340よりも外側の第2下面312とに、脚部340によって分けられる。脚部340には、貫通孔340hが設けられている。貫通孔340hは、マンホール形成部200にマンホール枠300を固定するために利用される(詳細については後述)。
【0038】
本実施例では、脚部340の内径ID1が、首部230の上部(上端)の外径ED1と同じ、あるいは、外径ED1よりも若干大きくなるように、マンホール枠300が構成されている。従って、マンホール枠300をマンホール形成部200に装着(載置)する場合には、脚部340が、首部230(第3壁部233および第4壁部234)の外周方向D2側を囲んだ状態で、マンホール枠300の第1下面311が第4壁部234によって支持される。本実施例では、脚部340の内径ID1が、首部230の上部(上端)の外径ED1とほぼ同じであるので、マンホール枠300は、マンホール形成部200に、ぴったりと嵌る。これにより、マンホール形成部200に対するマンホール枠300の位置決めがなされ、そして、マンホール枠300は、マンホール形成部200に支持される。
【0039】
また、図4に示すように、本実施例では、マンホール形成部200の第3壁部233には、複数(4つ)の貫通孔233hが設けられている。マンホール枠300の脚部340にも、同様に、複数(具体的には4つ)の貫通孔340hが設けられている。図示するように、複数の貫通孔340hは、複数の貫通孔233hとそれぞれ重なり得るように、配置されている。本実施例では、4つの貫通孔233h、および、4つの貫通孔340hは、それぞれ、四方に(等方的に)配置されている。また、図2に示すように、貫通孔340hの高さも、貫通孔340hが貫通孔233hと重なるように、設定されている。従って、図2に示すように、貫通孔340hと貫通孔233hとを貫通する固定部材500を利用して、マンホール枠300をマンホール形成部200に容易に固定することができる。固定部材500は、例えば、ねじやリベットであってよい。なお、貫通孔233hおよび貫通孔340hの総数は、4に限らず、任意の数(例えば、1、2、3、あるいは、5以上)であってよい。
【0040】
なお、貫通孔233hと貫通孔340hとの少なくとも一方を、予め設けなくてもよい。この場合には、マンホール枠300をマンホール形成部200に固定する際に、ドリルで孔を設けても良い。
【0041】
また、図2、図3に示すように、マンホール枠300の枠本体310の上面からは、内突出部320と外突出部330とが上方に向かって突出している。内突出部320は、枠本体310の内周縁に設けられ、外突出部330は、枠本体310の外周縁に設けられている。一方、マンホール蓋100の外周縁には、下方に向かって突出する脚部110が設けられている。マンホール蓋100がマンホール枠300に装着(載置)される場合には、マンホール蓋100の脚部110が、内突出部320と枠本体310と外突出部330とによって形成された凹部325に、挿入される。これにより、マンホール枠300に対するマンホール蓋100の位置決めがなされ、そして、マンホール蓋100は、マンホール枠300に支持される。
【0042】
次に、嵩上げ部材を利用する場合について説明する。図5は、マンホール形成部200と、嵩上げ部材400と、マンホール枠300と、マンホール蓋100と、の装着状態を示す断面図である。図6は、図5の部分PBを拡大して表す図であり、マンホール形成部200と、嵩上げ部材400と、マンホール枠300と、マンホール蓋100と、の組み付けを示す分解断面図である。図示するように、マンホール形成部200とマンホール枠300との間に、嵩上げ部材400が配置されている。
【0043】
マンホール形成部200とマンホール枠300とマンホール蓋100とのそれぞれの構成は、図2〜図4の実施例での構成と同じである。嵩上げ部材400は、下端から上端まで外周の径および内周の径が、それぞれ、ほぼ均一な円筒形状の部材である。また、嵩上げ部材400には、強度を増すために、リブ410が形成されている。ただし、リブ410を省略してもよい。
【0044】
本実施例では、嵩上げ部材400の内径ID2(リブ410の無い部分の内径)が、マンホール形成部200の第1壁部231の外径ED2と同じ、あるいは、外径ED2よりも若干大きくなるように、嵩上げ部材400が構成されている。従って、嵩上げ部材400をマンホール形成部200に装着(載置)する場合には、嵩上げ部材400が第1壁部231の周囲(外周方向D2側)を囲んだ状態で、嵩上げ部材400の下端が上面部250によって支持される。本実施例では、嵩上げ部材400の内径ID2が、第1壁部231の外径ED2とほぼ同じであるので、嵩上げ部材400は、マンホール形成部200に、ぴったりと嵌る。これにより、マンホール形成部200に対する嵩上げ部材400の位置決めがなされ、そして、嵩上げ部材400は、マンホール形成部200に支持される。また、本実施例では、嵩上げ部材400と第1壁部231とを貫通する固定部材500が、嵩上げ部材400をマンホール形成部200に固定する。
【0045】
また、本実施例では、嵩上げ部材400の外径ED4が、上面部250の外周縁の径ED5よりも小さい。従って、上面部250は、嵩上げ部材400の環状の下端を全周に亘って支持する。すなわち、嵩上げ部材400と上面部250との間に大きな隙間が生じることが抑制される。この結果、嵩上げ部材400と上面部250との間の止水を容易に行うことができる。例えば、嵩上げ部材400の下端と上面部250との接触部分を全周に亘ってシーリング材(例えば、シリコン系のシーリング材)でシールしてよい。
【0046】
また、上述したように、マンホール形成部200に対する嵩上げ部材400の水平方向の位置の遊びが小さい。すなわち、嵩上げ部材400の水平方向の動きに対しては、マンホール形成部200(第1壁部231)が、嵩上げ部材400の内面と接触して、嵩上げ部材400の動きを制止する。これにより、嵩上げ部材400の下端が、上面部250から離れることが防止される。この結果、嵩上げ部材400と上面部250との間に大きな隙間が生じる可能性を低減できる。
【0047】
嵩上げ部材400の上部には、マンホール枠300が装着(載置)される。本実施例では、嵩上げ部材400の内径ID2は、脚部340の外径ED3と同じ、あるいは、外径ED3よりも若干大きくなるように、嵩上げ部材400およびマンホール枠300が構成されている。従って、マンホール枠300を嵩上げ部材400に装着(載置)する場合には、脚部340の外周方向D2側が嵩上げ部材400によって囲まれた状態で、マンホール枠300の第2下面312が、嵩上げ部材400の上端に支持される。これにより、嵩上げ部材400に対するマンホール枠300の位置決めがなされ、そして、マンホール枠300は嵩上げ部材400に支持される。
【0048】
マンホール枠300に対するマンホール蓋100の装着(載置)は、図2、図3の実施例と同じである。
【0049】
以上のように、本実施例では、嵩上げ部材400を利用するか否かに拘わらずに、位置ズレを抑制しつつ同じマンホール枠300を利用することができる。また、嵩上げ部材400を利用する場合には、マンホール形成部200に直接に嵩上げ部材400を装着(載置)すればよいので、嵩上げ部材400を装着するための枠を別途準備せずに済む。以上により、マンホール200hを利用するための構成を簡素化することができる。
【0050】
また、本実施例では、マンホール形成部200に直接にマンホール蓋100を載せて、仮固定することも容易にできる。図7は、マンホール形成部200にマンホール蓋100を仮固定した様子を示す断面図である。図2に示す状態との差異は、2点ある。第1の差異は、マンホール枠300が省略されて、マンホール形成部200に直接にマンホール蓋100が載っている点である。第2の差異は、貫通孔233hを通る結束線600によってマンホール蓋100がマンホール形成部200に仮固定されている点である。
【0051】
図示するように、マンホール蓋100の脚部110の内径ID3が、首部230の上部(上端)の外径ED1と同じ、あるいは、外径ED1よりも若干大きくなるように、マンホール蓋100が構成されている。従って、マンホール蓋100をマンホール形成部200に載せる場合には、脚部110が首部230(第4壁部234および第3壁部233)の外周方向D2側を囲んだ状態で、マンホール蓋100の下面が第4壁部234によって支持される。これにより、マンホール形成部200に対するマンホール蓋100の位置決めがなされ、そして、マンホール蓋100は、マンホール形成部200に支持される。ただし、マンホール蓋100の脚部110の内径ID3が、首部230の上部(上端)の外径ED1よりも小さくてもよい。また、マンホール蓋100の脚部110を省略してもよい。
【0052】
マンホール蓋100をマンホール形成部200に仮固定する場合には、まず、結束線600の一端を、貫通孔233hを通して首部230の外から内に入れ、さらに、その一端を別の貫通孔233hを通して首部230の内から外に出す。また、首部230上にマンホール蓋100を載せる。そして、結束線600の一端と他端とを、マンホール蓋100の上側で締結させる。この結果、マンホール蓋100がマンホール形成部200から外れることが防止される。
【0053】
このようにマンホール蓋100をマンホール形成部200に仮固定すれば、排水処理装置800を保管・運送する際に、雨水や異物等がマンホール200hから排水処理装置800の内部に侵入する可能性を低減できる。また、マンホール蓋100の脚部110によってマンホール形成部200に対するマンホール蓋100の位置ズレが抑制されるので、排水処理装置800の運送時にマンホール蓋100が外れてしまう可能性を低減できる。
【0054】
また、排水処理装置800の設置の際に嵩上げ部材400を利用するか否かは、設置現場の状況に応じて決まる。従って、排水処理装置800の出荷時には、マンホール形成部200にマンホール枠300を固定せずに、現場に排水処理装置800を設置するユーザ(例えば、施工業者)が、マンホール枠300あるいは嵩上げ部材400のうちの一方を選択してマンホール形成部200に固定してもよい。従って、マンホール枠300をマンホール形成部200に固定せずに、マンホール形成部200にマンホール蓋100を仮固定すれば、ユーザの利便性を向上できる。
【0055】
また、マンホール蓋100という1つの部材を仮固定する場合には、マンホール蓋100とマンホール枠300との2つの部材を仮固定する場合のように仮固定された複数の部材の組み付けがズレることが無いので、仮固定が意図せずに外れる可能性を低減できる。
【0056】
このように、貫通孔233hを利用して、容易に、マンホール蓋100をマンホール形成部200に仮固定することができる。また、図2に示すように、貫通孔233hの高さは、マンホール枠300をマンホール形成部200に装着(載置)した場合に、マンホール枠300の脚部340の下端よりも高い位置に形成されている。従って、仮に貫通孔233hをマンホール枠300の固定に利用しない場合であっても、この貫通孔233hを脚部340で覆い隠すことができる。また、図5に示すように、嵩上げ部材400を利用する場合には、貫通孔233hを嵩上げ部材400によって覆い隠すことができる。以上により、土砂あるいは雨水が貫通孔233hから排水処理装置800の内部に侵入する可能性を低減できる。
【0057】
図8は、マンホール形成部200の第3壁部233の貫通孔233hの形状を示す説明図である。図中の上下方向は、鉛直方向を示し、図中の左右方向は、水平方向を示している。図示するように、貫通孔233hの形状は、水平方向に延びる略長方形である。貫通孔233hの最小サイズ(最小径)は、鉛直方向のサイズ(「第1サイズIDv」とも呼ぶ)である。この第1サイズIDvは、固定部材500の外径とほぼ同じである(図8(A))。貫通孔233hを貫通する固定部材500に、径が第1サイズIDvよりも大きな大径部分502を設けることにより、固定部材500が貫通孔233hから抜けることを防止できる。例えば、固定部材500がリベットである場合には、大径部分502は、リベットの頭、あるいは、リベットの端部のつぶされた部分であってよい。また、固定部材500がボルトである場合には、大径部分502は、ボルトの頭、あるいは、ボルトに締め付けられたナットであってよい。
【0058】
また、貫通孔233hの水平方向のサイズは、第1サイズIDvよりも大きい第2サイズIDhである。この貫通孔233hには、厚さが第1サイズIDv以下であり幅が第2サイズIDh以下である幅広の断面形状を有する部材を通すこともできる。例えば、図8(B)に示すように、幅広な結束線600(例えば、PPバンド)を貫通孔233hに通すことができる。
【0059】
このように、マンホール形成部200に設けられた貫通孔233hが、サイズが方向に依存して異なる孔であれば、断面形状が略円形状の部材に限らず、貫通孔233hの形状に応じた断面形状を有する部材も、貫通孔233hを通すことができる。従って、固定あるいは仮固定に、種々の部材を利用することができる。なお、貫通孔233hの形状は、長方形とは異なる他の任意の形状(例えば、楕円や星形)であってよい。ただし、貫通孔233hは、円形状であってもよい。
【0060】
B.第2実施例:
上述の第1実施例において、嵩上げ部材400の内径ID2が、第1壁部231の外径ED2よりも大きくてもよい。換言すれば、マンホール形成部200に対する嵩上げ部材400の位置に或る程度の遊びがあってもよい。図9は、内径ID2が外径ED2よりも大きい場合の、マンホール形成部200と、嵩上げ部材400と、マンホール枠300と、マンホール蓋100と、の装着状態を示す断面図である。この場合には、マンホール形成部200に嵩上げ部材400を装着(載置)した状態で、嵩上げ部材400が水平方向に動き得る。図9は、嵩上げ部材400を右方向に動かした状態を示している。図9の左側に示すように、首部230の第1壁部231が嵩上げ部材400の内面と接触することによって、嵩上げ部材400の動きが制止される。
【0061】
本実施例では、図9の右側に示すように、上面部250の幅Wが、嵩上げ部材400の内径ID2と第1壁部231の外径ED2との差DFよりも、大きい。その結果、嵩上げ部材400を、首部230の第1壁部231が嵩上げ部材400の内面と接触するまで水平方向に移動させた場合であっても、嵩上げ部材400の端部は、上面部250からは離れない。すなわち、嵩上げ部材400の端部は、全周に亘って、上面部250に載っている。従って、嵩上げ部材400と上面部250との間に大きな隙間が生じることが抑制される。この結果、嵩上げ部材400と上面部250との間の止水を容易に行うことができる。
【0062】
C.第3実施例:
上記各実施例において、首部230の形状は、図3に示す形状に限らず、他の種々の形状であってよい。図10は、首部の別の実施例を示す断面図である。図3の首部230とは異なり、この首部230Aでは、上面部250の内周縁255から第4壁部234まで、段差の無い傾斜壁231Aが延びている。他の構成は、図3の首部230の構成と同じである。この首部230A(マンホール形成部200A)を利用する場合も、図2、図3の実施例と同様に、マンホール枠300を首部230Aに装着(載置)することができる。そして、図5、図6の実施例と同様に、嵩上げ部材400をマンホール形成部200Aに装着(載置)することができる。そして、図7の実施例と同様に、マンホール蓋100をマンホール形成部200A(首部230A)に載せる場合に、マンホール蓋100の脚部110が首部230Aの周囲を囲むことによって、首部230Aに対するマンホール蓋100の位置決めがなされる。これにより、マンホール蓋100をマンホール形成部200Aに載せる場合に、マンホール蓋100の位置ズレを抑制できる。そして、マンホール蓋100の仮固定が外れる可能性を低減できる。
【0063】
図11は、首部の更に別の実施例を示す断面図である。図3の首部230とは異なり、この首部230Bでは、上面部250の内周縁255から第3壁部233まで、段差のない傾斜壁231Bが延びている。他の構成は、図3の首部230の構成と同じである。この首部230B(マンホール形成部200B)を利用する場合も、図2、図3の実施例と同様に、マンホール枠300を首部230Bに装着(載置)することができる。そして、図5、図6の実施例と同様に、嵩上げ部材400をマンホール形成部200Bに装着(載置)することができる。そして、図7の実施例と同様に、マンホール蓋100をマンホール形成部200B(首部230B)に載せる場合に、マンホール蓋100の脚部110が首部230Bの周囲を囲むことによって、首部230Bに対するマンホール蓋100の位置決めがなされる。これにより、マンホール蓋100をマンホール形成部200Bに載せる場合に、マンホール蓋100の位置ズレを抑制できる。そして、マンホール蓋100の仮固定が外れる可能性を低減できる。
【0064】
なお、図示を省略するが、図10の傾斜壁231A、および、図11の第3壁部233には、図3の貫通孔233hに対応する孔を設けてよい。
【0065】
一般には、首部の形状は、水平な断面形状が略円形状であり、首部の上部(上端)の外径が、首部の最大外径よりも小さくなるように構成された種々の形状であってよい。例えば、首部の中央部分の外径が首部の下端の外径よりも大きくてもよい。この場合も、嵩上げ部材400の内面が、首部の最大外径の部分と接触することによって、嵩上げ部材400の位置決めが行われる。そして、図5、図6の実施例と同様に、マンホール枠300の第2下面312を嵩上げ部材400の上部(上端)に載せることができる。さらに、首部の上部(上端)の外径が、首部の最大外径よりも小さければ、図2、図3の実施例と同様に、マンホール枠300の第1下面311を首部230の上部(上端)に載せることができる。そして、第1下面311と第2下面312との間に、脚部340を設けることができる。具体的には、首部の上部(上端)の外径と、首部の最大外径との差分に対応する厚みを有する脚部340を設けることができる。さらに、この脚部340により、嵩上げ部材400を利用するか否かに拘わらずに、マンホール枠300の位置決めを行うことができる。
【0066】
なお、マンホール形成部の形成を容易に行うためには、首部の外径が、下端から上端に向かって徐々に小さくなることが好ましい。例えば、図3に示す実施例において、第1壁部231、および、第4壁部234も、内周方向D1にわずかに傾斜して斜め上方に延びる傾斜壁であってよい。
【0067】
D.変形例:
なお、上記各実施例における構成要素の中の、独立クレームでクレームされた要素以外の要素は、付加的な要素であり、適宜省略可能である。また、この発明は上記の実施例や実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0068】
変形例1:
上記各実施例において、上面部250(例えば、図5、図9)は、平面ではなく曲面であってもよい。この場合も、図9の実施例のように、マンホール形成部に対する嵩上げ部材400の位置に或る程度の遊びがあってもよい。ここで、嵩上げ部材400の内面が首部(例えば、首部230(図9)、230A(図10)、230B(図11))と接触するまで嵩上げ部材400を水平方向に動かしたとしても、嵩上げ部材400の下端が上面部から離れることをその下端の全周に亘って防止するように、首部と上面部とを構成することが好ましい。例えば、十分に大きな上面部を利用すればよい。また、上面部は、球面の一部分に対応する形状を有していても良い。こうすれば、上面部上で円筒形状の嵩上げ部材400を移動させた場合に、嵩上げ部材400の下端が上面部から離れることをその下端の全周に亘って容易に防止することができる。
【0069】
なお、上面部の表面には、微少な凹凸が設けられていても良い。この場合には、嵩上げ部材400の下端と上面部との間に細かい隙間が生じ得る。しかし、この場合も、嵩上げ部材400の端部が全周に亘ってほぼ均等に上面部と接触していれば、嵩上げ部材400の環状の下端は、全周に亘って、上面部から離れていない、ということができる。そして、この場合には、嵩上げ部材400と上面部との間を、シーリング材を利用して、容易にシールすることができる。
【0070】
変形例2:
上記各実施例において、マンホール形成部(例えば、マンホール形成部200(図2)、200A(図10)、200B(図11))を、スプレーアップ法で形成してもよい。この場合には、マンホール形成部の表面の寸法(例えば、首部230の上部(第3壁部233の上端、および、第4壁部234)の外径ED1(例えば、図2、図3)と、首部230の下端(第1壁部231の下端)の外径ED2(図3)との少なくとも一方)を所望の寸法にするために、マンホール形成部の表面に成形用の型を嵌めた状態で、樹脂を硬化させることが好ましい。
【0071】
変形例3:
排水処理装置の構成は、上記各実施例の構成とは異なる種々の構成であってよい。例えば、上記各実施例では、マンホール枠300の第1下面311と第2下面312とが同一平面上にあるが、この代わりに、第1下面311が、第2下面312を含む平面から離れた位置にあってもよい。また、マンホール枠300の脚部340(図2〜図4)は、環状の枠本体310の全周に亘って形成される代わりに、環状の枠本体310の一部分にのみ形成されてもよい。いずれの場合も、マンホール枠を首部に装着(載置)する場合に、マンホール枠の脚部が首部と接触してマンホール枠の水平方向の動きが制止されるように、マンホール枠と首部とが構成されていることが好ましい。ここで、任意の水平方向の動きを制止可能な構成が好ましい。
【0072】
図12は、マンホール枠の脚部の別の実施例を示す説明図である。図12は、マンホール枠とマンホール形成部との組み付けを上方から下方に向かって見た断面図であり、図4と同じ位置の断面を示している。図12の実施例では、マンホール枠は、3つの脚部340A1、340A2、340A3を有している。これらの脚部340A1、340A2、340A3は、第3壁部233(首部)の外周方向D2側に沿った円上の第1〜第3位置P1〜P3に、それぞれ配置されている。図中には、3つの中心角Ag1〜Ag3が示されている。第1中心角Ag1は、第1位置P1と第2位置P2とが端である円弧であって、第3位置P3を通らない円弧Ac1の中心角であり、第2中心角Ag2は、第2位置P2と第3位置P3とが端である円弧であって、第1位置P1を通らない円弧Ac2の中心角であり、第3中心角Ag1は、第3位置P3と第1位置P1とが端である円弧であって、第2位置P2を通らない円弧Ac3の中心角である。ここで、3つの中心角Ag1〜Ag3のいずれもが180度未満であれば、脚部340A1〜340A3が首部(第3壁部233)と接触することによって、首部に対するマンホール枠の任意の水平方向の動きを制止することができる。この結果、首部に対するマンホール枠の位置ズレを容易に抑制することができる。
【0073】
このように、マンホール枠の脚部は、3つの位置P1〜P3のうちの任意の2つの位置を選択した場合に、選択された2つの位置が端である円弧であって、選択されなかった位置を通らない円弧の中心角(例えば、図12の中心角Ag1、Ag2、Ag3)が180度未満であるような、3つの位置P1〜P3(少なくとも3つの位置)に設けられていることが好ましい。ここで、図12の実施例のように、3つの位置P1〜P3のそれぞれに、互いに分離した脚部340A1〜340A3が設けられていてもよい。この代わりに、1つの連続する脚部が、2つの位置(例えば、第1位置P1と第2位置P2)に亘って設けられていても良い。この代わりに、1つの連続する脚部が、3つの位置に亘って設けられていても良い。
【0074】
いずれの場合も、マンホール枠を首部に装着(載置)した状態で、マンホール枠の脚部と首部との間の隙間によるマンホール枠の水平方向の位置ズレの最大値が許容範囲内であれば、「脚部は、首部の外周方向側に沿った位置にある」ということができる。ここで、許容範囲は、排水処理装置の設置および動作に問題の無い範囲であればよく、例えば、25mm以下であることが好ましく、15mm以下であることが特に好ましく、10mm以下であることが最も好ましい。
【0075】
また、首部の構成は、上述の各実施例とは異なる他の構成であってよい。例えば、首部の上部の外径が、マンホール枠の脚部の内径よりも大きくてもよい(例えば、図3の外径ED1が内径ID1よりも大きくてもよい)。この場合には、首部の上部にマンホール枠の脚部と嵌合する嵌合部が設けられていてもよい。例えば、図12に示す3つの脚部340A1〜340A3のそれぞれに嵌合する3つの凹部が、首部の上部に設けられていても良い。このような凹部は、例えば、首部の外周方向D2の表面が内周方向D1に向かって凹むことによって形成される凹部であってよい。この凹部は、首部の上端(上部)から下端まで延びていても良い。このように首部に嵌合部を設ける場合には、マンホール枠の脚部は、図12で説明したような位置関係に配置されていなくてもよい(例えば、図12の1つの脚部340A1のみ、あるいは、2つの脚部340A1、340A2のみが、マンホール枠に設けられていても良い)。首部に設けられる嵌合部の数は、1でもよく2以上(複数)でもよい。
【0076】
同様に、マンホール蓋100の脚部110(例えば、図7)は、円板状のマンホール蓋100の全周に亘って形成される代わりに、マンホール蓋100の縁の一部分にのみ形成されてもよい。いずれの場合も、マンホール蓋を首部に載せる場合に、マンホール蓋の脚部が首部と接触して、マンホール蓋の水平方向の動きが制止されるように、マンホール蓋と首部とが構成されていることが好ましい。ここで、任意の水平方向の動きを制止可能な構成が好ましい。マンホール蓋のこのような脚部の構成は、上述したマンホール枠の脚部と同様の構成であってよい。例えば、以下のような構成を採用可能である。
マンホール蓋の脚部は、マンホール蓋の縁から下方に向かって突出し、
マンホール蓋は、脚部が首部の外周方向側に沿った位置にある状態で、首部の上部に載せることが可能であり、
マンホール蓋の脚部は、少なくともマンホール蓋の円形状の縁上の位置である第1の位置と第2の位置と第3の位置に設けられており、
第1の位置から第2の位置までの円弧であって第3の位置を通らない円弧の中心角が180度未満であり、
第2の位置から第3の位置までの円弧であって第1の位置を通らない円弧の中心角が180度未満であり、
第3の位置から第1の位置までの円弧であって第2の位置を通らない円弧の中心角が180度未満である。
ここで、寸法の公差(遊び)を勘案した場合には、3つの中心角のいずれもが、160度以下であることが好ましく、140度以下であることが特に好ましく、120度であることが最も好ましい。ただし、上述したように首部に嵌合部が設けられている場合には、マンホール蓋の脚部は、上記のような位置関係に配置されていなくてもよい。ここで、マンホール蓋に、首部の嵌合部に嵌合する1つあるいは複数の脚部を設けてもよい。例えば、図12の脚部340A1に対応する1つの脚部のみ、あるいは、脚部340A1、340A2に対応する2つの脚部のみが、マンホール蓋に設けられていても良い。
(マンホール枠の脚部についても、同様の構成を採用可能である)。
【0077】
ここで、マンホール蓋を首部に載せた状態で、マンホール蓋の脚部と首部との間の隙間によるマンホール蓋の水平方向の位置ズレの最大値が許容範囲内であれば、「脚部は、首部の外周方向側に沿った位置にある」ということができる。ここで、許容範囲は、排水処理装置の設置および動作に問題の無い範囲であればよく、例えば、25mm以下であることが好ましく、15mm以下であることが特に好ましく、10mm以下であることが最も好ましい。
【0078】
また、嵩上げ部材400を利用する場合にも、マンホール枠の脚部の上述の種々の構成を採用可能である。いずれの場合も、図5に示すように、マンホール枠の脚部の外周方向D2側に嵩上げ部材400が配置されることが好ましい。こうすれば、マンホール枠の脚部が嵩上げ部材400と接触して、脚部が嵩上げ部材400の外に飛び出すことを防止できる(マンホール枠の水平方向の動きが制止される)。この結果、マンホール枠の位置ズレを抑制できる。ここで、マンホール枠を嵩上げ部材400に載せた状態で、マンホール枠の脚部と嵩上げ部材400との間の隙間によるマンホール枠の水平方向の位置ズレの最大値が許容範囲内であることが好ましい。ここで、許容範囲は、排水処理装置の設置および動作に問題の無い範囲であればよく、例えば、25mm以下であることが好ましく、15mm以下であることが特に好ましく、10mm以下であることが最も好ましい。
【0079】
また、上記各実施例では、マンホールの形状が略円形であるが、この代わりに、マンホールの形状が円形とは異なる他の形状(例えば、矩形)であってもよい。この場合も、上述の各実施例と同様に、マンホール形成部と、マンホール枠と、マンホール蓋と、嵩上げ部材とを、構成すればよい。マンホールの形状が矩形である場合には、マンホール形成部と、マンホール枠と、マンホール蓋と、嵩上げ部材とのそれぞれの形状は、上方から下方に向かって見たときに、矩形状であってよい。例えば、首部は、水平な断面形状が矩形である筒状(中空の柱状)の部分であってもよい。
【0080】
変形例4:
上記各実施例において、嵩上げ部材400は、下端から上端まで外周の径および内周の径が、それぞれ、ほぼ均一な円筒形状の部材である。従って、排水処理装置800の設置現場において、十分に長い円筒状の部材をカットしたものを嵩上げ部材400として利用する場合に、カット後の残りの円筒状部材を、別の嵩上げ部材400として利用することができる。
【0081】
変形例5:
上記各実施例のマンホール形成部と、マンホール枠と、マンホール蓋と、嵩上げ部材とは、嫌気処理や好気処理を行う処理槽を収容する排水処理装置に限らず、他の種々の処理槽を収容する排水処理装置に適用可能である。例えば、処理された水を一時的に貯留して高い位置に汲み上げる処理を行う放流ポンプ槽に適用してもよい。
【符号の説明】
【0082】
100...マンホール蓋
110...脚部
200...マンホール形成部
200A...マンホール形成部
200B...マンホール形成部
200h...マンホール
230...首部
230A...首部
230B...首部
231...第1壁部
231A...傾斜壁
231B...傾斜壁
232...第2壁部
233...第3壁部
233h...貫通孔
234...第4壁部
234e...内端
250...上面部
255...内周縁
300...マンホール枠
310...枠本体
311...第1下面
312...第2下面
320...内突出部
325...凹部
330...外突出部
340、340A1、340A2、340A3...脚部
340h...貫通孔
400...嵩上げ部材
410...リブ
500...固定部材
502...大径部分
600...結束線
800...排水処理装置
801...流入管
802...放流管
810...上槽
820...下槽
830...本体
C1...ベースコンクリート
C2...コンクリートスラブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排水処理装置であって、
排水を処理するための処理槽を収容する本体と、
前記本体に設けられ、マンホールを形成するマンホール形成部と、
前記マンホールを塞ぐマンホール蓋と、
前記マンホール蓋を支持するマンホール枠と、
を備え、
前記マンホール形成部は、
上方に向かって突出して上部に前記マンホールを形成する中空の柱状の部分である首部と、
前記首部の下端の全周を囲む上面を形成する上面部と、
を含み、
前記首部の上部は、前記マンホール枠を前記マンホール形成部に載置する場合に、前記マンホール枠を支持し、
前記上面部は、前記マンホール枠を前記首部の代わりに支持するための中空の柱状の嵩上げ部材を、前記首部の周囲を囲むように前記マンホール形成部に載置する場合に、前記嵩上げ部材の環状の下端を全周に亘って支持し、
前記マンホール形成部は、前記マンホール形成部に載置された前記嵩上げ部材の水平方向の動きに対して、前記首部が前記嵩上げ部材の内面と接触して前記嵩上げ部材の動きを制止することによって、前記嵩上げ部材の環状の下端が前記上面部から離れることを前記下端の全周に亘って防止するように構成されており、
上方から下方に向かって見たときに、前記マンホールの輪郭が成す形状の重心位置から前記マンホールの外に向かう方向を外周方向と呼び、前記マンホールの外から前記重心位置に向かう方向を内周方向と呼ぶときに、
前記マンホール枠は、第1下面と、前記第1下面よりも前記外周方向側に形成された第2下面と、前記第1下面と前記第2下面との間に形成されて前記第1下面および前記第2下面よりも下方に向かって突出する第1脚部と、を含み、
前記マンホール枠と前記首部と前記嵩上げ部材は、
(A)前記マンホール枠が前記マンホール形成部に載置される場合には、前記第1脚部が前記首部の前記外周方向側に配置された状態で、前記第1下面が前記首部の前記上部に支持され、前記第1脚部が前記首部と接触して前記マンホール枠の水平方向の動きを制止し、
(B)前記マンホール枠が前記嵩上げ部材に載置される場合には、前記第1脚部の前記外周方向側に前記嵩上げ部材が配置された状態で、前記第2下面が前記嵩上げ部材の上端に支持され、前記第1脚部が前記嵩上げ部材と接触して前記マンホール枠の水平方向の動きを制止するように、構成されている、
排水処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の排水処理装置であって、
前記マンホール蓋は、下方に向かって突出する第2脚部を含み、
前記マンホール蓋および前記首部は、
前記マンホール枠を介さずに前記マンホール蓋を前記首部の上部に載せる場合には、前記第2脚部が前記首部の前記外周方向側に配置された状態で、前記マンホール蓋の下面が前記首部の前記上部に支持され、前記第2脚部が前記首部と接触して前記マンホール蓋の水平方向の動きを制止するように構成されている、
排水処理装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の排水処理装置であって、
前記首部は、水平な断面形状が円形状であり、上部の外径が前記首部の最大外径よりも小さくなるように構成されている、
排水処理装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の排水処理装置であって、
前記首部は、前記内周方向側から前記外周方向側に貫通する孔を有し、
前記孔は、前記マンホール枠が前記マンホール形成部に載置される場合の、前記マンホール枠の前記第1脚部の下端よりも高い位置に形成されている、
排水処理装置。
【請求項5】
請求項4に記載の排水処理装置であって、
前記マンホール枠の前記第1脚部は、前記内周方向側から前記外周方向側に貫通する孔を有し、
前記第1脚部の前記孔は、前記マンホール枠が前記マンホール形成部に載置される場合の、前記首部の前記孔と重なり得る高さに形成されている、
排水処理装置。
【請求項6】
請求項4または請求項5に記載の排水処理装置であって、
前記首部の前記孔のサイズは、方向に依存して異なっており、
前記首部の前記孔の最小サイズは第1サイズであり、
前記首部の前記孔の少なくとも1つの方向のサイズは、前記第1サイズよりも大きい第2サイズである、
排水処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−61456(P2012−61456A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−210258(P2010−210258)
【出願日】平成22年9月18日(2010.9.18)
【出願人】(390021348)フジクリーン工業株式会社 (71)
【Fターム(参考)】