説明

排水管洗浄装置および排水管洗浄方法

【課題】ノズル孔から噴射される高圧洗浄水により排水管を傷つけることがなく、また、ノズル子により排水管を傷つけることのない排水管洗浄装置および排水管洗浄方法を提供する。
【解決手段】複数のノズル孔が穿設されるノズル子を後正面から見たときに、該ノズル子の中心点を通る水平線よりも上部には3つ以上のノズル孔を同一同心円上、かつノズル子の中心点を通る垂直線に対し線対称の位置に配置するとともに、ノズル子の中心点を通る水平線よりも下部にはこの水平線に対してノズル孔を対称の位置に配置し、水平線下部に配置したノズル孔の内垂直線に最も近くに位置するノズル孔以外のノズル孔、または垂直線に最も近く位置するノズル孔を他のノズル孔よりも細径とし、各ノズル孔の形状を外部に向かって拡径する円錐状とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、集合住宅建築物や事務所建築物等に配設された排水管内を洗浄する排水管洗浄装置および排水管洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、集合住宅建築物や事務所建築物等に配設された排水管内を洗浄する排水管の洗浄方法は、排水管内を満遍なく洗浄するために、高圧洗浄ホースを回転させ、その先端に固着したノズル子を旋回させながらノズル孔から超高圧洗浄水を噴射させる方法が主流であり、排水管洗浄装置もこの洗浄方法に沿ったものであった。
【0003】
このような排水管洗浄装置としては、たとえば、特開2001−170591号公報に開示の「排水管洗浄方法及び装置」がある。
この「排水管洗浄方法及び装置」は、「横管内でも管内周面に沿ってノズルを旋回させることができる排水管洗浄方法及び装置を提供する」ことを目的とし、その解決手段として「ノズルに形成される複数の噴射孔の形成位置および各噴射孔から噴射される高圧水の噴射水量を調整することにより、前記複数の噴射孔のうち、特定の噴射孔のみが常時管内周面と対向するように設定」する構成としている。
【0004】
また、本願出願人に係る特開2007-54738号公報に開示の「配管内壁洗浄用高圧洗浄装置」も上述の排水管の洗浄方法に準じたものであり、「本発明は、配管内のノズル付き洗浄用ホースが、作業員のスイッチ切換え操作により的確に所望の回転速度で旋回したり往復回転したりできるようにして、洗浄作業を能率よく且つ安全に行えるようにした配管内壁洗浄用高圧洗浄装置を提供することを課題」としていて、その課題の解決手段として「枠体に支持された円筒状ドラムにおいて、同ドラムの内周壁に沿い中間部を巻付けられた高圧ホースが、その基端に高圧水源への接続部を有するとともに、その先端には配管の内壁を清掃するためのノズル付きノズル部材を装着されている。そして、枠体の上部のスイッチボックスには、主スイッチのほか、ドラムの正逆回転切換スイッチ、タイマー付き切換スイッチ、モーター回転速度制御レバー、緊急時に使用される押下げ遮断型操作部材が設けられて、使い勝手の向上が図られる」構成としている。
【特許文献1】特開2001−170591号公報
【特許文献2】特開2007-54738号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特開2001−170591号公報に開示の発明に代表される排水管の洗浄方法では、ノズル孔から噴射される超高圧洗浄水により腐食が進んだ排水管に孔を開けるおそれがある。さらに、排水管内でノズル子を旋回させるため、排水管にノズル子が衝突を繰り返すことにより、排水管を傷つけ孔を開けてしまうばかりでなく、排水管が細管の場合には、高圧洗浄ホースが捩れて、場合によっては捩切れることもあった。
一方で、近年、集合住宅建築物や事務所建築物等の管理に際しては、年1回程度の排水管洗浄工事を行うことが常識となり、数多くの建築物で実施されるようになってきている。このような場合には、排水管内壁に付着して排水管を塞ぐ油脂分(以下、「排水管壁付着油脂分」という。)は頑固な固形化をせず、従来の超高圧洗浄水でなくともある程度は除去できることの知見を得た。さらに、横引き排水管においては、前述の排水管壁付着油脂分は排水管の上部に付着することの知見を得た。
【0006】
ところで、特開2001−170591号公報の明細書の〔0040〕には、「ノズルの噴射孔を横管の管上対向させた姿勢を維持したまま旋回を停止し、その後、手操作又は自動により高圧ホースをくり出し操作すれば、ノズルの噴射孔は横管の管上のみに対向したまま長手方向に沿って進行するから、これにより横管の管上に付着した管内付着物のみを、噴射孔から噴射される流量が一番大きい高圧水により粉砕剥離すこともできることとなる。」と記載されているが、ノズルの旋回を停止した状態で高圧洗浄水を排水管に噴射すれば、噴射した部分の管内付着物のみを溝状に粉砕剥離するばかりでこの上なく非能率的であり、さらには、局部的に高圧洗浄水を排水管に噴射させるため、排水管に孔を開けるおそれが生じる。
【0007】
そこで、本願発明は、ノズル孔から噴射される高圧洗浄水により排水管を傷つけることがなく、また、ノズル子により排水管を傷つけることのない排水管洗浄装置および排水管洗浄方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本願請求項1に係る排水管洗浄装置は、高圧洗浄ホースの先端に先端部分が円柱状で後端部分が円錐状の略独楽状を呈するノズル子が固着され、さらに該ノズル子の先端に複数個の略円柱状のガイド子が連結されて、該高圧洗浄ホースから送られた洗浄水を該ノズル子の中心軸線に沿って穿設された有底の通水孔に連通する複数のノズル孔から略斜め後方に噴射させる排水管洗浄装置において、前記ノズル子の後正面から見て該ノズル子の中心点を通る水平線および垂直線を想定したときに、該水平線上部には該中心点を中心とする同一の同心円上に3つ以上のノズル孔が該垂直線に対して対称の位置に穿設されるとともに、該水平線下部には該水平線上部に穿設された該ノズル孔と該水平線に対して対称の位置に同数のノズル孔が穿設され、該水平線上部に穿設されたすべての該ノズル孔は同径の第1のノズル孔であり、該水平線下部に穿設された該ノズル孔の内該垂直線に最も近いノズル孔は該第1のノズル孔と同径の第1のノズル孔であって他のノズル孔は該第1のノズル孔よりも細径の第2のノズル孔である、ことを特徴としている。
なお、ノズル子の先後とは、ガイド子が連結される方向が「先」であり高圧洗浄ホースに固着される方向が「後」である。また、ノズル子の上下とは、ノズル子の中心軸線を水平にしてノズル子を置いたときの仮の方向であって、絶対的な方向をいうものではない。そして、垂直線に最も近いノズル孔とは、ノズル孔が奇数個の場合は垂直線上に位置するノズル孔であり、ノズル孔が偶数個の場合は垂直線に最も近い2つのノズル孔である。
また、本願請求項2に係る排水管洗浄装置は、高圧洗浄ホースの先端に先端部分が円柱状で後端部分が円錐状の略独楽状を呈するノズル子が固着され、さらに該ノズル子の先端に複数個の略円柱状のガイド子が連結されて、該高圧洗浄ホースから送られた洗浄水を該ノズル子の中心軸線に沿って穿設された有底の通水孔に連通する複数のノズル孔から略斜め後方に噴射させる排水管洗浄装置において、前記ノズル子の後正面から見て該ノズル子の中心点を通る水平線および垂直線を想定したときに、該水平線上部には該中心点を中心とする同一の同心円上に3つ以上のノズル孔が該垂直線に対して対称の位置に穿設されるとともに、該水平線下部には該水平線上部に穿設された該ノズル孔と該水平線に対して対称の位置に同数のノズル孔が穿設され、該水平線上部に穿設されたすべての該ノズル孔は同径の第1のノズル孔であり、該水平線下部に穿設された該ノズル孔の内該垂直線に最も近いノズル孔は該第1のノズル孔よりも細径の第2のノズル孔であって他のノズル孔は該第1のノズル孔と同径の第1のノズル孔である、ことを特徴としている。
そして、本願請求項3に係るに係る排水管洗浄装置は、請求項1または請求項2に記載の排水管洗浄装置であって、前記高圧洗浄ホースの基端は該高圧洗浄ホースに回転を与える回転付与手段を介設させることなく高圧ポンプに接続される、ことを特徴としている。
なお、回転付与手段とは、たとえば、特開2001−170591号公報における「回転ドラム」や特開2007-54738号公報における「ドラム」のようなノズル子を排水管内で旋回させるために高圧洗浄ホースに回転を与える手段をいう。
さらに、本願請求項4に係る排水管洗浄装置は、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の排水管洗浄装置であって、前記第1のノズル孔および前記第2のノズル孔は外部に向けて拡径された略円錐状に穿設されて前記ノズル子の円錐状の外周面に開口している、ことを特徴としている。
また、本願請求項5に係る排水管洗浄装置は、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の排水管洗浄装置であって、前記ノズル子の円錐状の外周面には前記第1のノズル孔および前記第2のノズル孔が穿設される前記同心円に沿って断面がV字型またはU字型の溝が刻設され、該第1のノズル孔および該第2のノズル孔は該溝に開口している、ことを特徴としている。
そして、本願請求項6に係る排水管洗浄装置は、請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の排水管洗浄装置であって、前記第1のノズル孔および前記第2のノズル孔は合わせて6つまたは8つである、ことを特徴としている。
さらに、本願請求項7に係る排水管洗浄装置は、請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の排水管洗浄装置であって、前記第1のノズル孔および前記第2のノズル孔は互いに等間隔に穿設されている、ことを特徴としている。
また、本願請求項8に係る排水管洗浄装置は、請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の排水管洗浄装置であって、前記第1のノズル孔および前記第2のノズル孔は前記通水孔に対し略30°〜60°、好ましくは略45°の角度で穿設されている、ことを特徴としている。
そして、本願請求項9に係る排水管洗浄装置は、請求項1ないし請求項8のいずれかに記載の排水管洗浄装置であって、前記水平線上部にある前記第1のノズル孔の内、前記垂直線に最も近い該ノズル孔は前記中心軸線に対し略90°の角度で穿設されて前記ノズル子の円柱状の外周面に開口している、ことを特徴としている。
さらに、本願請求項10に係る排水管洗浄装置は、請求項1ないし請求項9のいずれかに記載の排水管洗浄装置であって、少なくとも前記第1のノズル孔から噴射される洗浄水には空気が混入されている、ことを特徴としている。
また、本願請求項11に係る排水管洗浄装置は、請求項10に記載の排水管洗浄装置であって、少なくとも前記第1のノズル孔には前記ノズル子の先端表面から連通する通気孔が穿設されている、ことを特徴としている。
そして、本願請求項12に係る排水管洗浄装置は、請求項10に記載の排水管洗浄装置であって、少なくとも前記第1のノズル孔には前記ノズル子の円柱状の外周面から連通する通気孔が穿設されている、ことを特徴としている。
さらに、本願請求項13に係る排水管洗浄装置は、請求項10に記載の排水管洗浄装置であって、前記高圧洗浄ホースには分岐管が介装され該分岐管を介して空気が該高圧洗浄ホース内に送り込まれる、ことを特徴としている。
また、本願請求項14に係る排水管洗浄装置は、請求項4ないし請求項13のいずれかに記載の排水管洗浄装置であって、前記ノズル子の直径をDとしたときに、前記第1のノズル孔の拡径前の孔径は略0.10D〜0.16Dであり、前記第2のノズル孔の拡径前の孔径は略0.09D〜0.15Dであり、拡径後の該第1のノズル孔および該第2のノズル孔の孔径または前記溝幅は0.18D〜0.32Dである、ことを特徴としている。
そして、本願請求項15に係る排水管洗浄装置は、請求項1ないし請求項14のいずれかに記載の排水管洗浄装置であって、複数個の前記ガイド子、前記ノズル子および前記高圧洗浄ホースの先端部分は前記第1のノズル孔および前記第2のノズル孔の開口部を除き伸縮自在のチューブで一体として被包されている、ことを特徴としている。
さらに、本願請求項16に係る排水管洗浄方法は、高圧洗浄ホースの先端に先端部分が円柱状で後端部分が円錐状の略独楽状を呈するノズル子が固着され、さらにノズル子の先端に複数個のガイド子が連結されて、該ノズル子に穿設された複数のノズル孔から洗浄水を略斜め後方に噴射させ、この噴射力によってノズル子を前進させる排水管洗浄方法において、前記ノズル孔の内、特定のノズル孔を横引き排水管上部に位置させるとともに前記ノズル孔から高圧洗浄水を略円錐状に噴射させ、前記高圧洗浄ホースを旋回させることなく横引き排水管内を洗浄する、ことを特徴としている。
また、本願請求項17に係る排水管洗浄方法は、請求項16に記載の排水管洗浄方法であって、前記ノズル子の後正面から見て該ノズル子の中心点を通る水平線および垂直線を想定したときに、該中心点を中心とする同一の同心円上の該水平線上部には3つ以上のノズル孔が該垂直線に対して対称の位置に穿設されるとともに、該水平線下部には該水平線上部に穿設された該ノズル孔と該水平線に対して対称の位置に同数のノズル孔が穿設され、前記特定のノズル孔は該水平線上部に穿設された該ノズル孔の内該垂直線に最も近いノズル孔であり、該水平線上部に穿設されたすべての該ノズル孔は同径の第1のノズル孔であり、該水平線下部に穿設された該ノズル孔の内該垂直線に最も近いノズル孔は該第1のノズル孔と同径の第1のノズル孔であって他のノズル孔は該第1のノズル孔よりも細径の第2のノズル孔であり、または該水平線下部に穿設された該ノズル孔の内該垂直線に最も近いノズル孔は該第1のノズル孔よりも細径の第2のノズル孔であって他のノズル孔は該第1のノズル孔と同径の第1のノズル孔であり、該第1のノズル孔および該第2のノズル孔は外部に向けて拡径された略円錐状に穿設されて該ノズル子の円錐状の外周面に開口している、ことを特徴としている。
そして、本願請求項18に係る排水管洗浄方法は、請求項16に記載の排水管洗浄方法であって、前記ノズル子の後正面から見て該ノズル子の中心点を通る水平線および垂直線を想定したときに、該中心点を中心とする同一の同心円上の該水平線上部には3つ以上のノズル孔が該垂直線に対して対称の位置に穿設されるとともに、該水平線下部には該水平線上部に穿設された該ノズル孔と該水平線に対して対称の位置に同数のノズル孔が穿設され、前記特定のノズル孔は該水平線上部に穿設された該ノズル孔の内該垂直線に最も近いノズル孔であり、該水平線上部に穿設されたすべての該ノズル孔は同径の第1のノズル孔であり、該水平線下部に穿設された該ノズル孔の内該垂直線に最も近いノズル孔は該第1のノズル孔と同径の第1のノズル孔であって他のノズル孔は該第1のノズル孔よりも細径の第2のノズル孔であり、または該水平線下部に穿設された該ノズル孔の内該垂直線に最も近いノズル孔は該第1のノズル孔よりも細径の第2のノズル孔であって他のノズル孔は該第1のノズル孔と同径の第1のノズル孔であり、該ノズル子の円錐状の外周面には該第1のノズル孔および該第2のノズル孔が穿設される前記同心円に沿って断面がV字型またはU字型の溝が刻設され、該第1のノズル孔および該第2のノズル孔は該溝に開口している、ことを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本願発明は、上記構成により以下の効果を奏する。
(1)ノズル子の後正面から見てこのノズル子の中心点を通る水平線および垂直線を想定したときに、水平線上部にはこの中心点を中心とする同一の同心円上に3つ以上のノズル孔を垂直線に対して対称の位置に穿設し、水平線下部には水平線に対して前記のノズル孔と対称の位置に同数のノズル孔を穿設し、水平線上部に穿設されたすべてのノズル孔と水平線下部に穿設されたノズル孔の内垂直線に最も近い該ノズル孔を他のノズル孔よりもやや太径とし、または水平線上部に穿設されたすべてのノズル孔と水平線下部に穿設されたノズル孔の内垂直線に最も近いノズル孔以外のすべてノズル孔をやや太径としている。この構成により、ノズル孔から高圧洗浄水を噴射したときには、ノズル子は常に上半分を上に向けて立ち上がるため、横引き排水管内ではノズル子は常に上半分を上に向けて排水管上部に近接した位置をとることになる。
そして、横引き排水管内のノズル子が排水管上部に近接した位置取りをするため、横引き排水管内上部の排水管壁付着油脂分に対して効率よく高圧洗浄水が噴射されるとともに、噴射された洗浄後の高圧洗浄水は管底を流れることから、高圧洗浄水が排水管壁付着油脂分の少ない管底壁に直接当たることがなく、管底壁を傷めることがない。
なお、上記ノズル孔の構成は、本願出願人の実証実験に基づくものであるが、この実験については後述する。
(2)高圧洗浄ホースの基端は直接高圧ポンプに接続されていて、回転ドラム等の高圧洗浄ホースに回転を付与する回転付与手段を不要としている。このため、本願発明に係る排水管洗浄装置の構成が簡単になるばかりでなく、ノズル子や高圧洗浄ホースは洗浄時に旋回しないので、洗浄時のノズル子やガイド子による排水管壁の傷つけや孔開けを防ぐとともに、高圧洗浄ホースの捩れも防ぐことができる。
(3)第1のノズル孔および第2のノズル孔を外部に向けて拡径された略円錐状とし、あるいは断面がV字型またはU字型の溝に開口するように構成した場合には、ノズル孔から噴射される高圧洗浄水は略円錐状に拡散する。高圧洗浄水が略円錐状ではなく棒状に噴射されると、排水管壁付着油脂分は噴射された部分のみが点状となって剥がれ落ち、ノズル子の進行に伴い、結果として排水管壁付着油脂分が畝状になって排水管壁に残存するが、略円錐状に拡散する高圧洗浄水では、排水管壁付着油脂分が面状となって剥がれ落ちるため、排水管内壁面全体が満遍なく洗浄される。
(4)ノズル子の直径Dは通常、略10mmφ程度であって極めて小さな部品でるため、第1のノズル孔および第2のノズル孔を合わせて6つまたは8つとし、第1のノズル孔の拡径前の孔径を略0.10D〜0.16D(1.0mmφ〜1.6mmφ)とし、第2のノズル孔の拡径前の孔径を略0.09D〜0.15D(0.9mmφ〜1.5mmφ)とすることにより、ノズル子の孔開け加工が容易になる。なお、ノズル孔の拡径後の孔径は略0.18D〜0.32D(1.8mmφ〜3.2mmφ)である。また、ノズル子の円錐状の外周面に断面がV字型またはU字型の溝を刻設し、この溝に第1のノズル孔および第2のノズル孔を開口するようにしてもノズル子の加工は容易である。この場合、ノズル子の円錐状の外周面における溝幅は0.18D〜0.32D(1.8mmφ〜3.2mmφ)である。
(5)第1のノズル孔および第2のノズル孔の角度をノズル子の中心軸線に対し略30°〜60°とし、とくに略45°とした場合には、洗浄力と推進力のバランスがよくなり、効率よく排水管内を前進しながら洗浄することができる。
(6)第1のノズル孔の内垂直線に最も近いノズル孔の角度をノズル子の中心軸線に対し略90°とした場合には、横引き排水管内におけるノズル子は、管上部からやや離れた管の中間部に位置取りするため、効率よく排水管上部に付着した油脂分を洗い落とすことができる。とくに、横引き排水管が100mmφのような太径の場合や立て排水管の場合には有効である。
(7)第1のノズル孔および第2のノズル孔から噴射される高圧洗浄水を空気との混合流体とした場合には、洗浄能力が増大し、より効率よく排水管内を洗浄することができる。この高圧洗浄水の空気との混合は、ノズル子の先端表面やノズル子の円柱状の外周面に連通する通気孔をノズル孔に接続させることにより自動的に洗浄水と空気を混ざり合わせることができる。
(8)また、高圧洗浄ホースに分岐管を介装しこの分岐管を介して空気を高圧洗浄ホース内に送り込むようにすれば、必要に応じて、洗浄水のみとしたり、洗浄水と空気との混合流体としたりすることができる。
(9)複数個のガイド子、ノズル子および高圧洗浄ホースのノズル子側の先端部分に対してノズル孔の開口部を除き伸縮自在の弾力性を有するチューブで一体として被包した場合には、ガイド子の先端部、ガイド子およびノズル子の出隅部、ノズル子と高圧洗浄ホースの継手部分の出隅部が弾力性を有するチューブで覆われるため、排水管への高圧洗浄ホースの出し入れの際に排水管を傷めるおそれがない。
(10)本願発明に係る排水管洗浄方法では、高圧洗浄水を略円錐状に噴射させることにより、横引き排水管上部に特定のノズル孔を上にして自動的に位置させ、かつノズル子は旋回することがないから、上記の(1)ないし(3)に記載の効果を奏することになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本願発明を実施するための最良の形態に係る実施例について、図1ないし図11に基づいて説明する。なお、図1は、実施例1に係る排水管洗浄装置の先端部分の側面図であり、図2は、実施例1に係るノズル子の縦断面図およびII部分詳細図であり、図3は、図2におけるIII−III矢視図であり、図4は、実施例2に係る排水管洗浄装置の先端部分の側面図であり、図5は、実施例2に係るノズル子の縦断面図およびV部分詳細図であり、図6は、図5におけるVI−VI矢視図であり、図7は、実施例3に係るノズル子の縦断面図であり、図8は、実施例4に係るノズル子の縦断面図であり、図9は、実施例5に係るノズル子の縦断面図であり、図10は、実施例6に係る排水管洗浄装置の先端部分の側面図であり、図11は、ノズル孔に関する実証実験説明図である。
また、図1ないし図11において、符号1は実施例1に係る排水管洗浄装置、符号2は実施例2に係る排水管洗浄装置、符号3は実施例3に係る排水管洗浄装置、符号4は実施例4に係る排水管洗浄装置、符号5は実施例5に係る排水管洗浄装置、符号6は実施例6に係る排水管洗浄装置、符号11は実施例1および実施例6に係るノズル子、符号12は実施例2に係るノズル子、符号13は実施例3に係るノズル子、符号14は実施例4に係るノズル子、符号15は実施例5に係るノズル子、符号17はノズル子本体、符号21は第1のノズル孔、符号22は第2のノズル孔、符号23は通水孔、符号25は挿入部、符号27は通気孔、符号29は先端連結部、符号31はガイド子、符号41は圧着ソケット、符号43はチューブ、符号50は高圧洗浄ホース、符号51はホース内通水孔、符号CLはノズル子の中心軸線、符号CLはノズル孔の中心軸線、符号αはノズル子の中心軸線に対するノズル孔の角度、符号βはノズル孔の拡散角度、である。
【実施例1】
【0011】
まず、実施例1に係る排水管洗浄装置1の構成について、図1ないし図3に基づいて説明する。
排水管洗浄装置1は、図示外の高圧ポンプと、この高圧ポンプに連通する高圧洗浄ホース50と、高圧洗浄ホース50の先端に固着される1個のノズル子11と、ノズル子11の先端に連結される複数個(実施例では4個)のガイド子31と、から構成されている。
【0012】
ステンレス鋼製のガイド子31は外観が円柱状を呈していて、それぞれが回動自在に連結ピンで連結されている。そして、隣り合う連結ピンは互いに直交するように構成されていて、4個のガイド子31が連結されることにより、全体として上下左右に曲がることができるようになっている。
【0013】
ステンレス鋼製のノズル子11は、ノズル子本体17と、ノズル子本体17のガイド子31側(前側)に突設される先端連結部29と、ノズル子本体17の高圧洗浄ホース50側(後側)に突設される挿入部25と、から構成されている。ノズル子本体17の外観は、先端部分が略円柱状であって後端部分が高圧洗浄ホース50に向かって徐々に直径が小さくなる円錐状となっていて、丁度、独楽を横に倒したような形状となっている。そして、ノズル子11は先端連結部29を介してガイド子31とピン接合するとともに、挿入部25が高圧洗浄ホース50内に挿入され、さらに挿入部25を囲繞する高圧洗浄ホース50の上から圧着ソケット41により締め付けられてノズル子11が高圧洗浄ホース50の先端に固着されている。
【0014】
ノズル子11の中心軸線CLに沿って通水孔23が穿設され、後側は挿入部25を貫通してホース内通水孔51に連通し、前側はノズル子本体17を貫通することなくノズル子本体17内で止まっていて通水孔23の底部が形成されている。さらに、4つの第1のノズル孔21と2つの第2のノズル孔22とがノズル子本体17の円錐状の外周面から斜め前方に向けて貫設され、その先端は通水孔23内に開口していて、この第1のノズル孔21および第2のノズル孔22の中心軸線CLに対するノズル子11の中心軸線CLの挟角αはいずれも45°であって、第2のノズル孔22は第1のノズル孔21よりも細径となっている。
【0015】
図3に示すように、後正面から見た第1のノズル孔21および第2のノズル孔22に対するノズル孔の中心軸線CL同士が交差する角度は60°となっていて、垂直線上部に位置するノズル孔は第1のノズル孔21であり、以下、右回りに順に、第1のノズル孔21、第2のノズル孔22、第1のノズル孔21、第2のノズル孔22、第1のノズル孔21、となっている。そして、第1のノズル孔21、第2のノズル孔22ともに、外側すなわちノズル子本体17の円錐状の外周面に向けて拡径された円錐状となっていて、ノズル孔の中心軸線CLに対するノズル孔の拡径角度βを略35°としている。
また、実施例では、ノズル子本体17の円柱状部分の直径は略10mmφであり、拡径前の第1のノズル孔21を1.0mmφとし、拡径前の第2のノズル孔21を0.9mmφとし、拡径後のノズル孔はいずれも1.8mmφとしている。また、図2では第1のノズル孔および第2のノズル孔22ともに拡径している断面をV字形の直線状としているが、直線状でなくU字形の曲線状としても良い。
【実施例2】
【0016】
つぎに、実施例2に係る排水管洗浄装置2の構成について、図4ないし図6に基づいて説明するが、排水管洗浄装置2は排水管洗浄装置1と略同様の構成であり、異なるところは、ノズル子12に穿設したノズル孔の構成であるので、ここでは、ノズル子12の構成について説明する。
【0017】
ステンレス鋼製のノズル子12は、ノズル子本体17と、ノズル子本体17のガイド子31側(前側)に突設される先端連結部29と、ノズル子本体17の高圧洗浄ホース50側(後側)に突設される挿入部25と、から構成されている。ノズル子本体17の外観は、先端部分が略円柱状であって後端部分が高圧洗浄ホース50に向かって徐々に直径が小さくなる円錐状となっていて、丁度、独楽を横に倒したような形状となっている。そして、ノズル子12は先端連結部29を介してガイド子31とピン接合するとともに、挿入部25が高圧洗浄ホース50内に挿入され、さらに挿入部25を囲繞する高圧洗浄ホース50の上から圧着ソケット41により締め付けられてノズル子12が高圧洗浄ホース50の先端に固着されている。
【0018】
ノズル子12の中心軸線CLに沿って通水孔23が穿設され、後側は挿入部25を貫通してホース内通水孔51に連通し、前側はノズル子本体17を貫通することなくノズル子本体17内で止まっていて通水孔23の底部が形成されている。さらに、5つの第1のノズル孔21と1つの第2のノズル孔22とがノズル子本体17の円錐状の外周面から斜め前方に向けて貫設され、その先端は通水孔23内に開口していて、この第1のノズル孔21および第2のノズル孔22の中心軸線CLに対するノズル子11の中心軸線CLの挟角αはいずれも45°であって、第2のノズル孔22は第1のノズル孔21よりも細径となっている。
【0019】
図6に示すように、後正面から見た第1のノズル孔21および第2のノズル孔22に対するノズル孔の中心軸線CL同士が交差する角度は60°となっていて、垂直線上部に位置するノズル孔は第1のノズル孔21であり、以下、右回りに順に、第1のノズル孔21、第1のノズル孔21、第2のノズル孔22、第1のノズル孔21、第1のノズル孔21、となっている。そして、第1のノズル孔21、第2のノズル孔22ともに、外側すなわちノズル子本体17の円錐状の外周面に向けて拡径された円錐状となっていて、ノズル孔の中心軸線CLに対するノズル孔の拡径角度βを略35°としている。
また、実施例では、ノズル子本体17の円柱状部分の直径は略10mmφであり、拡径前の第1のノズル孔21を1.0mmφとし、拡径前の第2のノズル孔21を0.9mmφとし、拡径後のノズル孔はいずれも1.8mmφとしている。また、図5では第1のノズル孔および第2のノズル孔22ともに拡径している断面をV字形の直線状としているが、直線状でなくU字形の曲線状としても良い。
【0020】
〔実証実験1〕
ここで、ノズル孔の配置について、本願出願人が行った実証実験1を図11に基づいて説明する。なお、実証実験1では、ノズル子本体の円柱状部分の直径は10mmφであり、拡径前のノズル孔の直径を1.0mmφまたは0.9mmφとし、拡径後のノズル孔を1.8mmφとし、いずれのノズル孔もノズル子の中心軸線CLの交差する角度αを45°としている。そして、ここでは一連の実証実験の内、ノズル子の後正面から見たノズル孔の中心軸線CL同士が交差する角度を60°とした場合について紹介する。
なお、図11は、図3や図6と同様、ノズル子を後正面から見た図であり、垂直線上の上部のノズル孔の穿設位置を位置[1]とし、以下、右回りに順に、位置[2]、位置[3]、位置[4]、位置[5]、位置[6]として説明する。
【0021】
(1)まず、位置[1]、位置[2]および位置[6]に1.0mmφのノズル孔を穿設し、位置[3]、位置[4]および位置[5]に0.9mmφのノズル孔を穿設して(図11(a)参照)、高圧洗浄水を送水し各ノズル孔から噴出させた。このノズル孔の配置の場合、ノズル子は排水管内壁のどの位置にも押し当てられ、高圧洗浄ホースの捻りに伴って排水管内壁に沿って移動するだけであった。
(2)つぎに、位置[1]、位置[2]および位置[6]に1.0mmφのノズル孔を穿設し、位置[3]および位置[5]に0.9mmφのノズル孔を穿設して(図11(b)参照)、高圧洗浄水を送水し各ノズル孔から噴射させた。このノズル孔の配置の場合、ノズル子は(1)の配置よりも排水管内壁の上部に押し当てられるケースが多くなったが、高圧洗浄水の噴射前のノズル子の置き方(位置[3]または位置[5]を上に向けた場合)によっては、(1)の配置とした場合と同じような結果となった。
(3)つぎに、位置[1]、位置[2]、位置[4]および位置[6]に1.0mmφのノズル孔を穿設し、位置[3]および位置[5]に0.9mmφのノズル孔を穿設して(図11(c)参照)、高圧洗浄水を送水し各ノズル孔から噴射させた。このノズル孔の配置の場合、ノズル子をどのように置いても常にノズル子は位置[1]を上に向けて排水管内壁の上部に押し当てられる。
(4)つぎに、位置[1]、位置[2]、位置[3]、位置[5]および位置[6]に1.0mmφのノズル孔を穿設し、位置[4]に0.9mmφのノズル孔を穿設して(図11(d)参照)、高圧洗浄水を送水し各ノズル孔から噴射させた。このノズル孔の配置の場合、ノズル子をどのように置いてもノズル子は位置[1]を上に向けて排水管内壁の上部に押し当てられるケースが多くなるが、反応動作が(3)の配置の場合よりも鈍くなる傾向にある。
以上の実験から、ノズル孔の配置は上記の(3)の場合が最も優れ、上記の(4)の場合がそれに次ぐことが判明した。
【0022】
〔実証実験2〕
つぎに、ノズル孔の拡径に対して行った実証実験2について説明する。
従来のノズル孔は全断面が同一径の棒状であったが、このようなノズル孔からは噴射された高圧洗浄水はあまり拡散せず、排水管壁付着油脂分はいわば「点」として剥離し、ノズル孔からは噴射される高圧洗浄水と高圧洗浄水との間の排水管壁付着油脂分は取り残されるケースが多いことの知見を得た。そのため、本願出願人はノズル孔を円錐状に拡径した場合についても一連の実証実験を行なった。
その結果、拡径の開始点は深いほど効果があり、また、拡径の角度はノズル孔の中心軸線CLに対して、左右対称に35°ずつ、計70°とすることが最も効果的であることが判明した。さらに、ノズル孔をノズル子本体の円錐状の外周面に刻設した断面が挟角を70°とするV字型またはU字型の溝に開口するようにしても、同様の効果を得ることが判明した。
【0023】
上述の実証実験の結果を踏まえながら、実施例1および実施例2に係る排水管洗浄装置の作用効果について説明する。
排水管洗浄装置1および排水管洗浄装置2は上記構成により、図示外の高圧ポンプから高圧の洗浄水を高圧洗浄ホース50に送水すると、高圧洗浄水はホース内通水孔51および通水孔23を通って、第1のノズル孔21および第2のノズル孔22から円錐状に噴射される。
すべてのノズル孔から高圧洗浄水が噴射されることにより、ノズル孔は〔実証実験1〕の(3)(排水管洗浄装置1の場合)および(4)(排水管洗浄装置2の場合)の配置と同様の配置になっているため、横引きの排水管内では図3および図6に示す垂直線上部の第1のノズル孔21(以下、「上部第1のノズル孔21」という。)を上にして横引きの排水管内上部の排水管壁付着油脂分に接するように自動的に立ち上がり、排水管壁付着油脂分を剥離させて管底に落下させる。そして、管底に落下した排水管壁付着油脂分は噴射後の洗浄水とともに排水管外に排出される。
さらに、高圧洗浄水はノズル孔から斜め後方に噴射するため、この噴射力によってノズル子11およびノズル子12に推進力が発生し、高圧洗浄ホース50を排水管内に送り込むようにすると、排水管洗浄装置1および排水管洗浄装置2の先端は前進しながら、排水管内を洗浄する。
なお、前述のように、ノズル子11のノズル孔は〔実証実験1〕の(3)の配置と同様の配置となっている一方で、ノズル子12のノズル孔は〔実証実験1〕の(4)の配置と同様の配置となっているため、ノズル子11およびノズル子12ともに横引きの排水管内では上部第1のノズル孔21を上にして横引きの排水管内上部の排水管壁付着油脂分に接するように自動的に立ち上がるが、ノズル子12はノズル子11に比べ、その反応がやや鈍くなる。
【0024】
立て排水管内では、ノズル子11およびノズル子12はノズル孔から高圧洗浄水が噴射されても上部第1のノズル孔21の向きに関係なく上部第1のノズル孔21を排水管の内壁に接するよう位置取りするため、立て排水管内の洗浄中はときどき高圧洗浄ホース50を捻ることによりノズル子11およびノズル子12の位置を変えるようにすることが効果的である。
なお、〔実証実験2〕に示すように、ノズル孔を円錐状に拡径する代わりに、ノズル子本体の円錐状の外周面に刻設した断面がV字型またはU字型の溝にノズル孔の先端を開口するようにしても、同様の効果を得ることができる。
【実施例3】
【0025】
つぎに、実施例3に係る排水管洗浄装置3について、主に図7を基に説明する。なお、排水管洗浄装置3は排水管洗浄装置1と略同様の構成であり、異なるところは、上部第1のノズル孔21の穿設角度のみであるので、ここでは、その異なる構成と異なる構成による作用効果について、主に説明する。
【0026】
排水管洗浄装置3が主に高圧洗浄ホース50と、1個のノズル子13と、複数個のガイド子31と、から構成されていること、およびガイド子31とノズル子13の形状は排水管洗浄装置1と同様であるのでその説明を省略する。
ノズル子13のノズル孔の内、図3に示す上部第1のノズル孔21以外はノズル子11と同様であるが、上部第1のノズル孔21はノズル子13の円柱状の外周面から垂直に穿設されていて、この第1のノズル孔21の中心軸線CLに対するノズル子13の中心軸線CLの交差する角度αは略90°である。
【0027】
第1のノズル孔21および第2のノズル孔22に対するノズル孔の中心軸線CL同士が交差する角度は60°となっていて、それぞれが拡径された円錐状になっていること、実施例におけるノズル子本体17の円柱状部分の直径、第1のノズル孔21の孔径および第2のノズル孔21の孔径は排水管洗浄装置1と同様である。
【0028】
排水管洗浄装置3は上記構成により、図示外の高圧ポンプから高圧の洗浄水を高圧洗浄ホース50に送水すると、高圧洗浄水はホース内通水孔51および通水孔23を通って、第1のノズル孔21および第2のノズル孔22から円錐状に噴射されるが、上部第1のノズル孔21からの高圧洗浄水はノズル子13の中心軸線CLに対して略直交する方向に噴射される。
このため、ノズル子11と異なり、ノズル子13は上部第1のノズル孔21を上にして横引きの排水管内で立ち上がるものの、排水管内上部の排水管壁付着油脂分から離れた排水管内の中間部に位置することになる。これにより、高圧洗浄水の噴射範囲が広がり排水管壁付着油脂分の剥離範囲も広がることになり、横引き排水管が100mmφのような太径の洗浄や立て排水管の洗浄にはより有効的となる。
なお、排水管洗浄装置2に係るノズル子12の図6に示す上部第1のノズル孔21をノズル子12の円柱状の外周面から垂直に穿設しても良いことは勿論である。
【実施例4】
【0029】
つぎに、実施例4に係る排水管洗浄装置4について、主に図8を基に説明する。なお、排水管洗浄装置4は排水管洗浄装置1と略同様の構成であり、異なるところは、ノズル子14に穿設された通気孔27にあるので、ここでは、その異なる構成と異なる構成による効果について説明する。
【0030】
ノズル子14にはノズル子14の先端表面から第1のノズル孔21および第2のノズル孔22に連通する通気孔27が穿設されていて、実施例では通気孔27は各ノズル孔の拡径されていない部分に開口しているが、拡径が開始される部分に開口しても良い。
【0031】
排水管洗浄装置4の上記構成により、当該排水管洗浄装置4は排水管洗浄装置1の同様の作用効果を奏するほか、高圧洗浄水には微細な空気粒が混合され、高圧洗浄水と微細な空気粒の相乗効果により、排水管壁付着油脂分の洗浄力が一段と強化される。
なお、排水管洗浄装置2に係るノズル子12や排水管洗浄装置3に係るノズル子13に通気孔27を穿設することもできることは勿論である。
【実施例5】
【0032】
つぎに、実施例5に係る排水管洗浄装置5について、主に図9を基に説明する。なお、排水管洗浄装置5は排水管洗浄装置4と略同様の構成であり、異なるところは、ノズル子15に穿設された通気孔27にあるので、ここでは、その異なる構成と異なる構成による効果について説明する。
【0033】
ノズル子15にはノズル子15の円柱状の外周面から曲折して第1のノズル孔21および第2のノズル孔22に連通する通気孔27が穿設されている。実施例では通気孔27は各ノズル孔の拡径されていない部分に開口しているが、拡径が開始される部分に開口しても良い。
【0034】
排水管洗浄装置5の上記構成により、当該排水管洗浄装置5は排水管洗浄装置4と同様の作用効果を奏するが、通気孔27の先端がノズル子15の円柱状の外周面に開口しているため、洗い落とした排水管壁付着油脂分による通気孔27の詰まりが少なくなる。
なお、通気孔27を曲折させる手段としては、ノズル子15の先端表面に円柱状の外周面からノズル孔に至る溝を刻設し、この溝をメッシュや板で覆うようにしても良い。
さらに、高圧洗浄ホース50に図示外の分岐管を介装し、該分岐管を介して空気を該高圧洗浄ホース内に送り込み、高圧洗浄水を空気との混合流体とすることもできる。
【実施例6】
【0035】
つぎに、実施例6に係る排水管洗浄装置6について、図10を基に説明する。なお、排水管洗浄装置6は排水管洗浄装置1そのものに新たな構成要素を付加しているので、ここでは、その新たな構成要素とこの新たな構成要素による効果についてのみ説明する。
【0036】
排水管洗浄装置6では、排水管洗浄装置1の4個のガイド子31とノズル子本体17の円柱状部分を一体として伸縮自在の弾力性を有するチューブ43で被包するとともに、ノズル子11と前記高圧洗浄ホース50との接続部材である圧着ソケット25全体を覆うようにチューブ43で被包している。
実施例ではチューブ43に熱収縮チューブを使用していて、熱収縮チューブを該当する部分に緩やかに被包させ、その後熱することにより容易に該当部分に密着させることができる。
【0037】
一般的に、排水管は給水管よりも肉厚が薄いことから衝撃には弱く、衝撃を繰り返すことにより破損しやすい構造となっている。排水管洗浄装置6の上記構成により、排水管洗浄装置6は排水管洗浄装置1と同様の効果を奏するとともに、チューブ43で被包されることにより、排水管洗浄装置6の排水管挿入時においては、ガイド子31が排水管に突き当たる衝撃を吸収し、排水管洗浄装置6の排水管引抜時においては、ガイド子31、ノズル子11および圧着ソケット41の出隅部が排水管の曲折部で衝突する衝撃を吸収することができ、排水管を長持ちさせることができる。
なお、チューブ43で被包することによる上述の効果は、排水管洗浄装置1のみならず排水管洗浄装置2ないし排水管洗浄装置5でも同様に発揮される。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】図1は、実施例1に係る排水管洗浄装置の先端部分の側面図である。
【図2】図2は、実施例1に係るノズル子の縦断面図およびII部分詳細図である。
【図3】図3は、図2におけるIII−III矢視図である。
【図4】図4は、実施例2に係る排水管洗浄装置の先端部分の側面図である。
【図5】図5は、実施例2に係るノズル子の縦断面図およびV部分詳細図である。
【図6】図6は、図5におけるVI−VI矢視図である。
【図7】図7は、実施例3に係るノズル子の縦断面図である。
【図8】図8は、実施例4に係るノズル子の縦断面図である。
【図9】図9は、実施例5に係るノズル子の縦断面図である。
【図10】図10は、実施例6に係る排水管洗浄装置の先端部分の側面図である。
【図11】図11は、ノズル孔に関する実証実験説明図である。
【符号の説明】
【0039】
1 実施例1に係る排水管洗浄装置
2 実施例2に係る排水管洗浄装置
3 実施例3に係る排水管洗浄装置
4 実施例4に係る排水管洗浄装置
5 実施例5に係る排水管洗浄装置
6 実施例6に係る排水管洗浄装置
11 実施例1および実施例6に係るノズル子
12 実施例2に係るノズル子
13 実施例3に係るノズル子
14 実施例4に係るノズル子
15 実施例5に係るノズル子
21 第1のノズル孔
22 第2のノズル孔
23 通水孔
27 通気孔
31 ガイド子
43 チューブ
50 高圧洗浄ホース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高圧洗浄ホースの先端に先端部分が円柱状で後端部分が円錐状の略独楽状を呈するノズル子が固着され、さらに該ノズル子の先端に複数個の略円柱状のガイド子が連結されて、該高圧洗浄ホースから送られた洗浄水を該ノズル子の中心軸線に沿って穿設された有底の通水孔に連通する複数のノズル孔から略斜め後方に噴射させる排水管洗浄装置において、
前記ノズル子の後正面から見て該ノズル子の中心点を通る水平線および垂直線を想定したときに、該水平線上部には該中心点を中心とする同一の同心円上に3つ以上のノズル孔が該垂直線に対して対称の位置に穿設されるとともに、該水平線下部には該水平線上部に穿設された該ノズル孔と該水平線に対して対称の位置に同数のノズル孔が穿設され、
該水平線上部に穿設されたすべての該ノズル孔は同径の第1のノズル孔であり、
該水平線下部に穿設された該ノズル孔の内該垂直線に最も近いノズル孔は該第1のノズル孔と同径の第1のノズル孔であって他のノズル孔は該第1のノズル孔よりも細径の第2のノズル孔である、ことを特徴とする排水管洗浄装置。
【請求項2】
高圧洗浄ホースの先端に先端部分が円柱状で後端部分が円錐状の略独楽状を呈するノズル子が固着され、さらに該ノズル子の先端に複数個の略円柱状のガイド子が連結されて、該高圧洗浄ホースから送られた洗浄水を該ノズル子の中心軸線に沿って穿設された有底の通水孔に連通する複数のノズル孔から略斜め後方に噴射させる排水管洗浄装置において、
前記ノズル子の後正面から見て該ノズル子の中心点を通る水平線および垂直線を想定したときに、該水平線上部には該中心点を中心とする同一の同心円上に3つ以上のノズル孔が該垂直線に対して対称の位置に穿設されるとともに、該水平線下部には該水平線上部に穿設された該ノズル孔と該水平線に対して対称の位置に同数のノズル孔が穿設され、
該水平線上部に穿設されたすべての該ノズル孔は同径の第1のノズル孔であり、
該水平線下部に穿設された該ノズル孔の内該垂直線に最も近いノズル孔は該第1のノズル孔よりも細径の第2のノズル孔であって他のノズル孔は該第1のノズル孔と同径の第1のノズル孔である、ことを特徴とする排水管洗浄装置。
【請求項3】
前記高圧洗浄ホースの基端は該高圧洗浄ホースに回転を与える回転付与手段を介設させることなく高圧ポンプに接続される、ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の排水管洗浄装置。
【請求項4】
前記第1のノズル孔および前記第2のノズル孔は外部に向けて拡径された略円錐状に穿設されて前記ノズル子の円錐状の外周面に開口している、ことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の排水管洗浄装置。
【請求項5】
前記ノズル子の円錐状の外周面には前記第1のノズル孔および前記第2のノズル孔が穿設される前記同心円に沿って断面がV字型またはU字型の溝が刻設され、該第1のノズル孔および該第2のノズル孔は該溝に開口している、ことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の排水管洗浄装置。
【請求項6】
前記第1のノズル孔および前記第2のノズル孔は合わせて6つまたは8つである、ことを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の排水管洗浄装置。
【請求項7】
前記第1のノズル孔および前記第2のノズル孔は互いに等間隔に穿設されている、ことを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の排水管洗浄装置。
【請求項8】
前記第1のノズル孔および前記第2のノズル孔は前記通水孔に対し略30°〜60°、好ましくは略45°の角度で穿設されている、ことを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の排水管洗浄装置。
【請求項9】
前記水平線上部にある前記第1のノズル孔の内、前記垂直線に最も近い該ノズル孔は前記中心軸線に対し略90°の角度で穿設されて前記ノズル子の円柱状の外周面に開口している、ことを特徴とする請求項1ないし請求項8のいずれかに記載の排水管洗浄装置。
【請求項10】
少なくとも前記第1のノズル孔から噴射される洗浄水には空気が混入されている、ことを特徴とする請求項1ないし請求項9のいずれかに記載の排水管洗浄装置。
【請求項11】
少なくとも前記第1のノズル孔には前記ノズル子の先端表面から連通する通気孔が穿設されている、ことを特徴とする請求項10に記載の排水管洗浄装置。
【請求項12】
少なくとも前記第1のノズル孔には前記ノズル子の円柱状の外周面から連通する通気孔が穿設されている、ことを特徴とする請求項10に記載の排水管洗浄装置。
【請求項13】
前記高圧洗浄ホースには分岐管が介装され該分岐管を介して空気が該高圧洗浄ホース内に送り込まれる、ことを特徴とする請求項10に記載の排水管洗浄装置。
【請求項14】
前記ノズル子の直径をDとしたときに、前記第1のノズル孔の拡径前の孔径は略0.10D〜0.16Dであり、前記第2のノズル孔の拡径前の孔径は略0.09D〜0.15Dであり、拡径後の該第1のノズル孔および該第2のノズル孔の孔径または前記溝幅は0.18D〜0.32Dである、ことを特徴とする請求項4ないし請求項13のいずれかに記載の排水管洗浄装置。
【請求項15】
複数個の前記ガイド子、前記ノズル子および前記高圧洗浄ホースの先端部分は前記第1のノズル孔および前記第2のノズル孔の開口部を除き伸縮自在のチューブで一体として被包されている、ことを特徴とする請求項1ないし請求項14のいずれかに記載の排水管洗浄装置。
【請求項16】
高圧洗浄ホースの先端に先端部分が円柱状で後端部分が円錐状の略独楽状を呈するノズル子が固着され、さらにノズル子の先端に複数個のガイド子が連結されて、該ノズル子に穿設された複数のノズル孔から洗浄水を略斜め後方に噴射させ、この噴射力によってノズル子を前進させる排水管洗浄方法において、
前記ノズル孔の内、特定のノズル孔を横引き排水管上部に位置させるとともに前記ノズル孔から高圧洗浄水を略円錐状に噴射させ、
前記高圧洗浄ホースを旋回させることなく横引き排水管内を洗浄する、ことを特徴とする排水管洗浄方法。
【請求項17】
前記ノズル子の後正面から見て該ノズル子の中心点を通る水平線および垂直線を想定したときに、該中心点を中心とする同一の同心円上の該水平線上部には3つ以上のノズル孔が該垂直線に対して対称の位置に穿設されるとともに、該水平線下部には該水平線上部に穿設された該ノズル孔と該水平線に対して対称の位置に同数のノズル孔が穿設され、
前記特定のノズル孔は該水平線上部に穿設された該ノズル孔の内該垂直線に最も近いノズル孔であり、
該水平線上部に穿設されたすべての該ノズル孔は同径の第1のノズル孔であり、
該水平線下部に穿設された該ノズル孔の内該垂直線に最も近いノズル孔は該第1のノズル孔と同径の第1のノズル孔であって他のノズル孔は該第1のノズル孔よりも細径の第2のノズル孔であり、または該水平線下部に穿設された該ノズル孔の内該垂直線に最も近いノズル孔は該第1のノズル孔よりも細径の第2のノズル孔であって他のノズル孔は該第1のノズル孔と同径の第1のノズル孔であり、
該第1のノズル孔および該第2のノズル孔は外部に向けて拡径された略円錐状に穿設されて該ノズル子の円錐状の外周面に開口している、ことを特徴とする請求項16に記載の排水管洗浄方法。
【請求項18】
前記ノズル子の後正面から見て該ノズル子の中心点を通る水平線および垂直線を想定したときに、該中心点を中心とする同一の同心円上の該水平線上部には3つ以上のノズル孔が該垂直線に対して対称の位置に穿設されるとともに、該水平線下部には該水平線上部に穿設された該ノズル孔と該水平線に対して対称の位置に同数のノズル孔が穿設され、
前記特定のノズル孔は該水平線上部に穿設された該ノズル孔の内該垂直線に最も近いノズル孔であり、
該水平線上部に穿設されたすべての該ノズル孔は同径の第1のノズル孔であり、
該水平線下部に穿設された該ノズル孔の内該垂直線に最も近いノズル孔は該第1のノズル孔と同径の第1のノズル孔であって他のノズル孔は該第1のノズル孔よりも細径の第2のノズル孔であり、または該水平線下部に穿設された該ノズル孔の内該垂直線に最も近いノズル孔は該第1のノズル孔よりも細径の第2のノズル孔であって他のノズル孔は該第1のノズル孔と同径の第1のノズル孔であり、
該ノズル子の円錐状の外周面には該第1のノズル孔および該第2のノズル孔が穿設される前記同心円に沿って断面がV字型またはU字型の溝が刻設され、該第1のノズル孔および該第2のノズル孔は該溝に開口している、ことを特徴とする請求項16に記載の排水管洗浄方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−273998(P2009−273998A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−126568(P2008−126568)
【出願日】平成20年5月14日(2008.5.14)
【出願人】(504265064)
【Fターム(参考)】