説明

排熱回生システム

【課題】アイドル時など内燃機関の負荷が低い場合にも効率よく排熱を回生する排熱回生システムを提供する。
【解決手段】内燃機関(10)の排熱によって媒体を昇温する蒸発器(31)と、昇温された媒体によって回転エネルギーを発生する膨張器(34)と、昇温された媒体を冷却する凝縮器(35)と、媒体を循環させるポンプ(36)と、を備え、内燃機関(10)の排熱を回生する排熱回生システム(30)であって、蒸発器(31)によって昇温された媒体を一時的に貯留する貯留部(32)と、貯留部(32)に貯留された媒体を膨張器(34)に流通させるか否かを制御する出口弁(33)と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の排熱を回生する排熱回生システムに関し、特に、より効率よく排熱を回生できる排熱回生システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両に搭載されるエンジン等の内燃機関の排熱による熱エネルギーを用いて媒体を気液変換することにより機械エネルギーとして回生するランキンサイクルを用いた排熱回生システムが広く知られている。
【0003】
このようなランキンサイクルシステムとして、エンジンから排出される排気ガスとで熱交換を行う高温用ランキンサイクル回路と、エンジンの冷却水とで熱交換を行う低温用ランキンサイクル回路と、を備える排熱利用装置(特許文献1、参照。)が開示されている。
【0004】
また、内燃機関の排ガスから熱エネルギーを回収するスターリングエンジンを備え、スターリングエンジンが発生する動力を内燃機関の発生する動力とともに出力軸へと伝え、内燃機関に対する駆動要求がない場合はクラッチを開放する排熱回収装置(特許文献2参照。)も開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−282363号公報
【特許文献2】特開2007−239661号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述のような従来のランキンサイクルシステムは、車両停止時などのアイドル時には熱回収を行っていない。
【0007】
アイドル時は走行風がないため、凝縮器において冷媒が十分に冷却されない。またランキンサイクルシステム稼働時には凝縮器のファンを回転させる。このとき、ファンの使用電力がランキンサイクルシステムによる発電量を上回ると収支がマイナスとなってしまうので、熱回収は行わず、排熱は利用されることなく捨てられていた。
【0008】
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものであり、アイドル時など内燃機関の負荷が低い場合にも効率よく排熱を回生する排熱回生システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一実施態様によると、内燃機関の排熱によって媒体を昇温する蒸発器と、昇温された媒体によって回転エネルギーを発生する膨張器と、昇温された媒体を冷却する凝縮器と、媒体を循環させるポンプと、を備え、内燃機関の排熱を回生する排熱回生システムであって、蒸発器によって昇温された媒体を一時的に貯留する貯留部と、貯留部に貯留された媒体を膨張器に流通させるか否かを制御する出口弁と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、昇温された媒体を貯留部に一時的に蓄積しておき、貯留された媒体を出口弁の開弁により膨張器へと送るので、内燃機関の負荷が低い場合など排熱回生の効率が低い場合にも媒体を昇温させることができる。また、適宜この媒体によって膨張器に回転エネルギーを発生させることができるので、排熱を効率よく回生することができ、内燃機関の燃費を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1の実施形態のランキンサイクルシステムの説明図である。
【図2】本発明の第1の実施形態の制御装置により実行される制御のフローチャートである。
【図3】本発明の第2の実施形態の制御装置により実行される制御のフローチャートである。
【図4】本発明の第3の実施形態の制御装置により実行される制御のフローチャートである。
【図5】本発明の第3の実施形態の制御装置により実行されるサージタンクの制御の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0013】
<第1実施形態>
図1は本発明の第1の実施形態のランキンサイクルシステム30の説明図である。
【0014】
本発明のランキンサイクルシステム30は、内燃機関としてのエンジン10の排ガスの排熱により媒体を昇温し、昇温された媒体が気相となり体積が膨張することによって膨張器34に回転エネルギーを発生させる。この回転エネルギーをエネルギー回生手段としての発電機50に伝え、電気エネルギーとして回生する。これにより、エンジン10の排熱を電気エネルギーとして回生する排熱回生システムが構成される。
【0015】
ランキンサイクルシステム30において、媒体は、蒸発器31においてエンジン10の冷却水とで熱交換する。この冷却水は、エンジン10の排気管12に備えられた排熱回収器23において、排ガスの排熱を回収して高温となった冷却水である。
【0016】
蒸発器31において昇温された媒体は液相から気相へと相変換される。この気相の媒体は、サージタンク32に一時的に貯留される。サージタンク32は出口弁33を備えている。この出口弁33を開弁することによって気相の媒体が膨張器34に送られる。膨張器34はこの媒体によって回転エネルギーを発生する。
【0017】
なお、サージタンク32には、制御装置40によって、貯留された媒体の圧力(内圧)を測定する圧力測定手段としてのセンサ32aが備えられている。
【0018】
膨張器34の回転と同軸にクラッチ37を介して発電機50が接続されている。クラッチ37は膨張器34と発電機50との回転を断続する断続手段として構成されている。発電機50は、クラッチ37が接続されているときに膨張器34の回転エネルギーによって発電する。
【0019】
膨張器34を通過した媒体は、凝縮器35において大気と熱交換をすることで温度が下げられて液相へと相変換される。この液相の媒体は、ポンプ36によって圧送され、再び蒸発器31へと循環する。なお、凝縮器35には媒体の冷却を促進するファン38が備えられている。また、媒体は、冷却水やフルオロカーボン類(例えばHFC134a)、アンモニア等が用いられる。
【0020】
内燃機関としてのエンジン10は、燃料混合吸気を爆発させることにより車両の駆動力を発生する。
【0021】
エンジン10の排ガスは排気管12から排出される。この排気管12の途中には、エンジン10の冷却水と排ガスとで熱交換を行う排熱回収器23が備えられている。このエンジン10には、エンジン10を冷却するエンジン冷却システム20が構成されている。
【0022】
ポンプ11によりエンジン冷却システム20内を循環される冷却水は、まずエンジン10を冷却した後、排熱回収器23において排ガスとで熱交換を行う。排ガスの排熱により昇温された冷却水は、蒸発器31においてランキンサイクルシステム30の媒体とで熱交換し、冷却水温度は下げられる。その後、冷却水はラジエタ21を通過して大気とで熱交換を行い、十分に温度を下げられた後、再びポンプ11によって循環される。なお、ラジエタ21には、冷却水の冷却を促進するためのファン24が備えられている。
【0023】
また、エンジン冷却システム20には、バイパス通路25が備えられている。冷却水の温度が低い場合は、冷却水がラジエタ21をキャンセルしてバイパス通路25のみを通過するように、サーモスタット22が回路を切り替える。
【0024】
制御装置40は、エンジン10の運転状態及びサージタンク32の内圧を測定し、これらに基づいて、出口弁33の開閉、ファン38の動作及び、クラッチ37の断続を制御する。
【0025】
次に、このように構成されたランキンサイクルシステム30の動作を説明する。
【0026】
ランキンサイクルシステム30は、エンジン10の排熱を回収して回転エネルギーを得る。この回転エネルギーは、発電機50によって電気エネルギーに回生される。
【0027】
一方で、エンジン10の負荷が低い場合には、エンジン10の排熱が少ないのでランキンサイクルシステム30が回収する熱容量が小さくなり、ランキンサイクルシステム30効率が低くなる。特に、低速走行時や停車時には、凝縮器35に走行風があたらないため、ファン38を動作させる必要がある。このとき、ファン38の電力使用量が、ランキンサイクルシステム30による回生電力よりも上回る場合は、エネルギーの収支がマイナスとなってしまう。この状況ではエンジンの排熱の回生というランキンサイクルシステム30を稼働させる意義が失われてしまう。
【0028】
これに対して、本発明の第1の実施形態では、以下に説明するように、エンジン10の負荷が低い場合にもランキンサイクルシステム30によって排熱を回収し、回収した熱を効率よく回生するように構成した。
【0029】
以下に、その詳細を説明する。
【0030】
図1に示すように、ランキンサイクルシステム30の蒸発器31で昇温されて気相となった媒体は、サージタンク32に一時的に貯留される。
【0031】
貯留部としてのサージタンク32は、気相の媒体をその内部に貯留することができるように構成されている。サージタンク32の下流側には出口弁33が備えられている。出口弁33は、サージタンク32に貯留された媒体を膨張器34へと流通させることを制限するとともに、出口弁33を開弁することにより、媒体を流通させて膨張器34を回転させる。
【0032】
このように構成することによって、エンジン10の負荷が低い場合に、蒸発器31において熱交換した媒体を一時的にサージタンク32に貯留しておくことができる。これにより、貯留された媒体が十分な回転エネルギーを発生させることが可能となった場合に、出口弁33を開弁して、膨張器34を回転させ、この回転エネルギーによって発電機50を発電する。
【0033】
図2は、本発明の第1の実施形態の制御装置40により実行される制御のフローチャートである。
【0034】
このフローチャートは、所定の周期(例えば1ms間隔)で、制御装置40によって実行される。
【0035】
まず、制御装置40は、ランキンサイクルシステム30が稼働中であるか否かを判定する(S101)。
【0036】
ランキンサイクルシステム30は、制御装置40によってポンプ36が駆動され、このポンプ36により媒体の圧力を制御することにより排熱を回生する。一方で、エンジン10の停止後、長時間経過した場合や、イグニションがオフにされた場合など、車両の運用が停止された場合には、排熱の回収が見込めないため、ランキンサイクルシステム30の稼働を停止する。
【0037】
ランキンサイクルシステム30が稼働していると判定した場合はステップS102に移行する。稼働していないと判定した場合はステップS107に移行する。
【0038】
ステップS102では、制御装置40は、クラッチ37を締結する。これによって、膨張器34と発電機50とを接続し、膨張器34の回転エネルギーによって発電機50が発電する。
【0039】
次に、制御装置40は、エンジン10の運転状態が、負荷が低い状態であるか否かを判定する(S103)。
【0040】
エンジン10の負荷が低い場合とは、例えば、車両が停車したアイドル状態である場合や、減速時や低速、定常走行時などエンジンの回転速度が所定値よりも低い場合である。
【0041】
そして、このようにエンジン10の負荷が低い状態でランキンサイクルシステム30を稼働させた場合に、ファン38やポンプ36の使用電力が発電機50の発電力を上回り、収支がマイナスになってしまうことが見込まれる場合に、エンジン10の負荷が低いと判定する。
【0042】
エンジン10の負荷が低いと判定した場合は、ステップS104に移行する。エンジン10の負荷が低い状態でないと判定した場合は、ステップS106に移行する。
【0043】
ステップS104では、制御装置40は、ポンプ36を駆動させつつファン38を停止してサージタンク32の出口弁33を閉塞する。これにより、サージタンク32の内部に気相となった媒体が貯留される。このとき、制御装置40は、クラッチ37を解放する(S105)。その後、本フローチャートによる制御を終了する。
【0044】
この状態では、蒸発器31により媒体が昇温されるが、この回収された熱エネルギーは、サージタンク32によって一時的に蓄積される。
【0045】
一方、ステップS103において、エンジン10の負荷が低い状態でないと判定した場合は、エンジン10の排熱を回収するべく、ステップS106に移行し、制御装置40は、サージタンク32の出口弁33を開弁する。これにより、媒体が膨張器34に伝えられ、膨張器34の回転エネルギーによって、発電機50を発電する。
【0046】
ステップS101において、ランキンサイクルシステム30が稼働していないと判定した場合は、ステップS107に移行し、制御装置40は、サージタンク32の出口弁33を閉塞する。これにより、サージタンク32の内部に気相となった媒体が貯留される。そして、制御装置40は、クラッチ37を解放する(S108)。その後、本フローチャートによる制御を終了する。
【0047】
このように、本発明の第1の実施形態では、エンジン10の負荷が低くエネルギーの収支が見込めない場合に、サージタンク32の出口弁33を閉塞して、サージタンク32に媒体を貯留しておく。このように構成することによって、膨張器34での圧力不足によってランキンサイクルシステム30での負荷が増大することを防ぐことができる。
【0048】
また、エンジン10の負荷が低いときにも、蒸発器31により回収した熱エネルギーをサージタンク32に貯留しておくことで、排熱を回収することができる。また、エンジン10の負荷が再び高負荷になったときに、回収した熱エネルギーを使用できるので、低負荷時に回収した熱エネルギーを無駄にすることなく、発電機50により電気エネルギーとして回生することができる。
【0049】
さらに、エンジン10の負荷が低いと判断してサージタンク32の出口弁33を閉塞するときにポンプ36を駆動させることによって、サージタンク32の内圧を高めることにより媒体を貯留しておくことができる。また、エンジン10の負荷が低いと判断してサージタンク32の出口弁33を閉塞するときにファン38を停止することによって、ファン38の使用電力を減らして収支がマイナスになることを防ぐことができる。
【0050】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
【0051】
第2の実施形態では、サージタンク32の内圧に応じて、出口弁33の開閉を制御するように構成した。なお、第2の実施形態の基本構成は、第1の実施形態の図1と同様である。
【0052】
図3は、第2の実施形態の制御装置40により実行される制御のフローチャートである。
【0053】
このフローチャートは、所定の周期(例えば1ms間隔)で、制御装置40によって実行される。
【0054】
まず、制御装置40は、ランキンサイクルシステム30が稼働中であるか否かを判定する(S201)。
【0055】
ランキンサイクルシステム30が稼働していると判定した場合はステップS202に移行する。稼働していないと判定した場合はステップS208に移行する。
【0056】
ステップS202では、制御装置40は、クラッチ37を締結する。これによって、膨張器34と発電機50とを接続し、膨張器34の回転エネルギーによって発電機50が発電する。
【0057】
次に、制御装置40は、エンジン10の運転状態が、負荷が低い状態であるか否かを判定する(S203)。
【0058】
エンジン10の負荷が低い場合とは、前述のように、エンジン10の負荷が低く、ファン38やポンプ36の使用電力が発電機50の発電力を上回り、収支がマイナスになることが見込まれる場合である。
【0059】
エンジン10の負荷が低いと判定した場合は、ステップS204に移行する。エンジン10の負荷が低い状態でないと判定した場合は、ステップS207に移行する。
【0060】
ステップS203では、制御装置40は、センサ32aによって計測したサージタンク32の内圧が、第1の所定値以上であるか否かを判定する。
【0061】
この第1の所定値は、サージタンク32の内圧が十分に高く、媒体の熱エネルギーによって膨張器34に十分な回転エネルギーを与え、この回転エネルギーによって発電機50を十分に発電させることができるか否かの閾値である。
【0062】
サージタンク32の内圧が第1の所定値以上であると判定した場合は、ステップS204に移行する。サージタンク32の内圧が第1の所定値に満たないと判定した場合は、ステップS205に移行する。
【0063】
ステップS204では、制御装置40は、サージタンク32の出口弁33を開弁する。これにより、媒体が膨張器34に伝えられ、膨張器34の回転エネルギーによって、発電機50を発電する。その後、本フローチャートによる制御を終了する。
【0064】
一方、ステップS205では、十分な排熱の回収が行えない状態であると判断し、制御装置40は、ポンプ36を駆動させつつファン38を停止してサージタンク32の出口弁33を閉塞する。これにより、サージタンク32の内部に気相となった媒体が貯留される。そして、制御装置40は、クラッチ37を解放する(S206)。その後、本フローチャートによる制御を終了する。
【0065】
ステップS203において、エンジン10の負荷が低い状態でないと判定した場合は、ステップS207に移行し、制御装置40は、サージタンク32の出口弁33を開弁する。これにより、媒体が膨張器34に伝えられ、膨張器34の回転エネルギーによって、発電機50を発電する。その後、本フローチャートによる制御を終了する。
【0066】
ステップS201において、ランキンサイクルシステム30が稼働していないと判定した場合は、ステップS208に移行し、制御装置40は、サージタンク32の出口弁33を閉塞する。これにより、サージタンク32の内部に気相となった媒体が貯留される。そして、制御装置40は、クラッチ37を解放する(S209)。その後、本フローチャートによる制御を終了する。
【0067】
このように、本発明の第2の実施形態では、第1の実施形態と同様に、エンジン10の負荷が低い場合に媒体をサージタンク32に貯留するが、サージタンク32の内圧が十分に高くなったと判断した場合は、この媒体によって膨張器34に回転エネルギーを与えるように制御する。このように構成することによって、エンジン10の負荷が低い場合にも排熱を回収できるとともに、サージタンク32によって熱エネルギーが十分に貯留されていると判断した場合は、これを膨張器34に送ることによって、発電機50による発電を行い、熱エネルギーを電気エネルギーに回生することができる。
【0068】
<第3実施形態>
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。
【0069】
第3の実施形態では、サージタンク32の内圧に応じて、出口弁33の開度とクラッチ37の断続を制御するように構成した。なお、第3の実施形態の基本構成は、第1の実施形態の図1と同様である。
【0070】
図4は、第3の実施形態の制御装置40により実行される制御のフローチャートである。
【0071】
このフローチャートは、所定の周期(例えば1ms間隔)で、制御装置40によって実行される。
【0072】
まず、制御装置40は、ランキンサイクルシステム30が稼働中であるか否かを判定する(S301)。
【0073】
ランキンサイクルシステム30が稼働していると判定した場合はステップS302に移行する。稼働していないと判定した場合はステップS306に移行する。
【0074】
ステップS302では、制御装置40は、クラッチ37を締結する。これによって、膨張器34と発電機50とを接続し、膨張器34の回転エネルギーによって発電機50が発電する。
【0075】
次に、制御装置40は、エンジン10の運転状態が、負荷が低い状態であるか否かを判定する(S303)。
【0076】
エンジン10の負荷が低い場合とは、前述のように、エンジン10の負荷が低く、ファン38やポンプ36の使用電力が発電機50の発電力を上回り、収支がマイナスになることが見込まれる場合である。
【0077】
エンジン10の負荷が低いと判定した場合は、ステップS304に移行する。エンジン10の負荷が低い状態でないと判定した場合は、ステップS305に移行する。
【0078】
ステップS304では、制御装置40は、センサ32aにより計測したサージタンク32の内圧に基づいて、出口弁33の開度と、クラッチ37の断続とを制御する(低負荷時の制御)。このとき制御装置40は、出口弁33を閉塞する場合、ポンプ36を駆動させつつファン38を停止する。
【0079】
また、ステップS305では、制御装置40は、センサ32aにより計測したサージタンク32の内圧に基づいて、出口弁33の開度と、クラッチ37の断続とを制御する(通常運転時の制御)。その後、本フローチャートによる制御を終了する。
【0080】
なお、これらステップS304及びS305の制御は図5で後述する。
【0081】
ステップS301において、ランキンサイクルシステム30が稼働していないと判定した場合は、ステップS306に移行し、制御装置40は、サージタンク32の出口弁33を閉塞する。これにより、サージタンク32の内部に気相となった媒体が貯留される。そして、制御装置40は、クラッチ37を解放する(S307)。その後、本フローチャートによる制御を終了する。
【0082】
図5は、本発明の第3の実施形態の制御装置40により実行されるサージタンク32の制御の説明図である。なお、図5(a)は、図4のステップS304の低負荷時の制御を示し、図5(b)は、図4のステップS305の通常運転時の制御を示す。
【0083】
図5(a)に示す低負荷時の制御では、制御装置40は、センサ32aにより計測したサージタンク32の内圧が所定の圧力以上である場合に、出口弁33の開度をサージタンク32の内圧に応じて開弁し、かつ、クラッチ37を締結する。
【0084】
特に、低負荷時の制御では、出口弁33を開弁するか否かを決定するサージタンク32の内圧を、次に説明する通常運転時の制御と比較して高く設定している。
【0085】
エンジン10の低負荷時には、大幅な排熱の回収は望めないため、ポンプ36を駆動させつつファン38を停止してサージタンク32に熱エネルギーを持った媒体を貯留しておく。このとき、貯留された熱エネルギーを頻繁に放出ししまうと、熱エネルギーを十分に蓄積するまでにさらに時間がかかってしまう。また、次回エンジン10の運転状態が高負荷となったときに、電気エネルギーとして回生させることができれば、エンジン10の負荷を直ちに補助できる。
【0086】
そこで、サージタンク32の内圧が十分に高く、熱エネルギーの一部を放出したとしても貯留されている熱エネルギーを十分に保持できるように、出口弁33の開弁を制御する。
【0087】
このようにすることによって、エンジン10が低負荷時にも排熱を回収し、熱エネルギーが十分蓄積された場合には発電も行うことができる。そして、車両の加速時などエンジン10が高負荷になった場合には、貯留された熱エネルギーによって発電機50を発電させることで、直ちにエンジン10の負荷を補助できる。
【0088】
一方、図5(b)に示す通常運転時では、制御装置40は、サージタンク32の内圧が極端に低い場合を除き、クラッチ37を締結して、センサ32aにより計測したサージタンク32の内圧に応じて出口弁33の開度を制御する。
【0089】
このように、サージタンク32の内圧に応じて出口弁33の開度をリニアに制御することによって、運転状態の変動による媒体の圧力の変動を抑えることができるので、運転状態に左右されにくい安定した排熱の回生を行える。
【0090】
以上のように、本発明の実施形態では、エンジン10の排熱を回生するランキンサイクルシステム30において、蒸発器31において熱交換を行い気相となった媒体を一時的に貯留するサージタンク32と、貯留された媒体を膨張器34へと流通させるかを制御する出口弁33と、を備えた。このように構成することによって、エンジン10の負荷が低い場合にも、熱交換を行った媒体を貯留しておくことができ、エンジン10の排熱を無駄なく回収することができる。
【0091】
また、回収された熱エネルギーは、エンジン10の負荷に応じて出口弁33を制御することにより、膨張器34に送られ、発電機50によって電気エネルギーへと回生することができる。このように、エンジン10の排熱を効率よく回生することによって、エンジン10の燃費を向上させることができる。
【0092】
なお、本発明の実施形態では、膨張器34の回転エネルギーを発電機50に伝え、発電により電気エネルギーとして回生する構成を示したが、その他のエネルギーに回生するように構成してもよい。例えば、膨張器34の回転エネルギーをエアコンのコンプレッサに接続して、コンプレッサの動力を補助してもよい。また、膨張器34の回転エネルギーをエンジン10のクランクシャフトに伝え、直接エンジン10の駆動トルクを補助するように構成してもよい。
【0093】
また、本発明の実施形態では、凝縮器35のファン38とラジエタ21のファン24とを別々に設けたが、これら凝縮器35とラジエタ21とを近接させて、一つのファンで共有しても構わない。この場合は、エンジンの負荷が低い状態でも、ラジエタ21で冷却水の冷却を促進する必要がない場合だけファンを停止する。すなわち、エンジンの負荷が低い状態でも、ラジエタ21で冷却水の冷却を促進する必要がある場合、冷却水の冷却を優先するためにファンを回転させる。
【0094】
10 エンジン(内燃機関)
20 エンジン冷却システム
23 排熱回収器
30 ランキンサイクルシステム(排熱回生システム)
31 蒸発器
32 サージタンク(貯留部)
32a センサ(圧力測定手段)
33 出口弁
34 膨張器
35 凝縮器
36 ポンプ
37 クラッチ(断続手段)
40 制御装置
50 発電機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の排熱によって媒体を昇温する蒸発器と、前記昇温された媒体によって回転エネルギーを発生する膨張器と、前記昇温された媒体を冷却する凝縮器と、前記媒体を循環させるポンプと、を備え、前記内燃機関の排熱を回生する排熱回生システムであって、
前記蒸発器によって昇温された媒体を一時的に貯留する貯留部と、
前記貯留部に貯留された媒体を前記膨張器に流通させるか否かを制御する出口弁と、
を備えることを特徴とする排熱回生システム。
【請求項2】
前記膨張器と同軸に備えられる発電機と、
前記出口弁の開閉を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、前記内燃機関の負荷が低い場合に、前記出口弁を閉弁することを特徴とする請求項1に記載の排熱回生システム。
【請求項3】
前記貯留部に貯留された媒体の圧力を測定する圧力測定手段を備え、
前記制御装置は、
前記貯留部の圧力が所定値以上である場合に、前記出口弁を開弁することを特徴とする請求項2に記載の排熱回生システム。
【請求項4】
前記貯留部に貯留された媒体の圧力を測定する圧力測定手段を備え、
前記制御装置は、
前記貯留部の圧力に応じて、前記出口弁の開度を制御することを特徴とする請求項2に記載の排熱回生システム。
【請求項5】
前記凝縮器の媒体の冷却を促進するファンを備え、
前記制御装置は、前記内燃機関の負荷が低い場合に、前記ポンプを駆動するとともに、前記ファンを停止することを特徴とする請求項2に記載の排熱回生システム。
【請求項6】
前記内燃機関の冷却水を冷却するラジエタと、
前記凝縮器の媒体の冷却を促進するファンと共有であって、前記内燃機関の冷却水の冷却を促進するファンと、を備え、
前記制御装置は、前記内燃機関の冷却水の冷却を促進する必要がないとする場合であって、前記内燃機関の負荷が低い場合に、前記ポンプを駆動するとともに、前記ファンを停止することを特徴とする請求項5に記載の排熱回生システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−229999(P2010−229999A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−41764(P2010−41764)
【出願日】平成22年2月26日(2010.2.26)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【出願人】(000001845)サンデン株式会社 (1,791)
【Fターム(参考)】