説明

掘り込み型位相シフトマスクの製造方法

【課題】ドライエッチングする際のパターン寸法が比較的大きい箇所と微細寸法箇所との掘り込み量の差であるRIEラグを低減させることを目的とする。
【解決手段】順に、開口領域を形成した遮光膜を透明基板上に有する基板を準備する工程と、前記基板にポジ型レジストを塗布する工程と、レジスト塗布後、遮光膜の開口領域のうち位相シフタ形成領域をレジストから開口させる描画工程と、現像工程と、現像工程後、開口させた位相シフタ形成領域を、ドライエッチングにて透明基板を掘り込むエッチング工程と、残存したレジストを除去する工程とを備え、前記描画工程は、レジストが位相シフタ形成領域に重ならないように所定のマージンを持つように描画するものであり、前記所定のマージンは、前記ドライエッチングによる掘り込み量の位相シフタ形成領域の寸法による不均一を緩和するように、位相シフタ形成領域の寸法に応じて設定されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LSI等の高密度集積回路の製造に用いられるフォトマスクの製造方法に関し、特に、掘り込み型位相シフトマスクの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子の微細化に伴い、リソグラフィ工程での露光波長の短波長化とともに、位相シフトマスクを用いた位相シフト露光方法が広く使われるようになっている。位相シフトマスクは転写すべきパターンを形成したマスクに、光の位相を変化させる位相シフタと呼ばれる透明膜を設け、位相シフタを通って位相が変わった光と、位相シフタを通らずに位相が変わっていない光との干渉を利用して解像力を向上させることができる。
【0003】
位相シフトマスクにはレベンソン型、ハーフトーン型、アシストパターン型などの各種方式があり、さらにそれぞれの方式において、位相シフタを合成石英ガラス等の透明基板の上に設ける構造と、合成石英ガラスなどの透明基板をエッチングにより掘り込んで位相シフタを形成する、掘り込み型位相シフトマスク等がある。
【0004】
従来の掘り込み型位相シフトマスクの製造方法は、位相シフタとなるエッチング部はドライエッチングとウェットエッチングの組み合わせで加工を行っていた(例えば文献1、文献2)。位相シフタとなるエッチング部は基板を掘り込んだ分、エッチングを入れない非エッチング部のパターンより、掘り込んだ側面の光反射などにより透過光の光量が、落ちてしまうため、ウェットエッチングで側面を後退させることにより光量を稼いでいる。
【0005】
しかし、ウェットエッチングで加工を行うと、必然的に遮光部に庇ができる。近年パターン寸法の微細化が進み、エッチングによって形成される位相シフタ部と非エッチング部の間の遮光膜幅も狭くなり、遮光膜の基板に接地した部分の割合と、庇部分の割合が、庇部分の割り合いが増加してきている。
【0006】
そのため超音波を用いた洗浄の際、遮光膜の庇欠けが問題となり、予めエッチング部と非エッチング部の寸法に差を持たせ、ドライエッチングのみで加工を行うタイプの堀込み型位相シフトマスクが用いられるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平2000−39700号公報
【特許文献2】特開2006−39121号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、ドライエッチングのみでは、反応性イオンをもちいてエッチングする際のパターン寸法が比較的大きい箇所と微細寸法箇所との掘り込み量の差であるRIEラグが転写の際に無視できない程度にまで大きくなり問題となっている。本願発明は掘り込み型の位相シフトマスクを製造する際に、RIEラグを低減させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の掘り込み型位相シフトマスクの製造方法は、順に、開口領域を形成した遮光膜を透明基板上に有する基板を準備する工程と、前記基板にポジ型レジストを塗布する工程と、レジスト塗布後、遮光膜の開口領域のうち位相シフタ形成領域をレジストから開口させる描画工程と、現像工程と、現像工程後、開口させた位相シフタ形成領域を、ドライエッチングにて透明基板を掘り込むエッチング工程と、残存したレジストを除去する工程とを備え、前記描画工程は、レジストが位相シフタ形成領域に重ならないように所定のマージンを持つように描画するものであり、 前記所定のマージンは、前記ドライエッチングによる掘り込み量の位相シフタ形成領域の寸法による不均一を緩和するように、位相シフタ形成領域の寸法に応じて設定されていることを特徴とする。
【0010】
また、請求項2に記載の発明は、前記所定のマージンは、位相シフト形成領域の寸法に応じて複数設定されており、寸法が所定の値より小さい位相シフタ形成領域のマージンを、寸法が所定の値より大きい位相シフタ形成領域のマージンより、大きく設定することを特徴とする。
【0011】
また、請求項3に記載の発明は、前記位相シフタ形成領域は、転写露光の際に転写されないアシストパターンと、転写露光の際に転写される本パターンとを有し、前記所定のマージンは、アシストパターンのマージンを、本パターンのマージンより大きく設定していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本願発明は掘り込み型の位相シフトマスクを製造する際に、RIEラグを低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の製造方法に用いるブランクスの図である。
【図2】遮光膜パターンの形成法を説明する図である。
【図3】位相シフタの形成方法を説明する図である。
【図4】従来の位相シフタ形成方法と本発明の位相シフタ形成方法を説明する図で ある。
【図5】レジスト倒れ箇所の対策を説明する図である。
【図6】本発明の別の実施形態を説明する図である。
【図7】実施例と比較例に用いたパターンの図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
発明を実施するための最良の形態について説明する。本発明の製造方法に用いるブランクスとしては図1のようなタイプのものが上げられる。基材となる透明基板100の上に遮光膜110が形成されている。透明基板100は、SiO2などSi系を主成分とする一般的な合成石英基板を用いることができる。遮光膜110はCrに酸素や窒素を含有した一般的なものを用いることができる。遮光膜は単層のものでもよく、複層として基板側の層はCr単体とし、表面側の層は、酸素や窒素の含有量させ低反射層として機能させるものでも良い。また図示はしないが、透明基板と遮光膜の間に透過率調整層などのハーフトーン膜を備えていても良い。
【0015】
次に、遮光膜パターンの形成方法について説明する。図2は、遮光膜パターンの形成方法を説明する図である。まず図2(a)に示すように、電子線描画装置あるいはレーザー描画装置に対応したレジスト120を塗布する。次に、電子線描画装置あるいはレーザー描画装置により、電子線もしくはレーザー光等のエネルギー線で遮光膜パターンを描画する。その後、所定の現像液で現像し、図2(b)に示す状態となり、遮光膜パターン形成用のレジストパターンが形成される。次に、図2(c)に示すように、遮光膜パターン形成用レジストパターンの開口部より露出した遮光膜をエッチングし、遮光膜パターンを形成する。遮光膜のエッチングはウェットでもドライエッチングでもよく、遮光膜の材質に合わせたエッチング液、エッチングガスを用いればよい。次に、図2(d) に示すように、遮光膜上に残存するレジストを灰化除去、または溶解除去などにより剥離し、開口領域を形成した遮光膜の形成が完了する。
掘り込み型の位相シフトマスクにおいては、さらに図2(d)の開口領域を形成した遮光膜の形成が完了した状態から、位相シフタを形成する工程を経て、最終的なフォトマスクが完成する。
【0016】
次に、その位相シフタを形成する工程について説明する。図3は、位相シフタを形成する工程を説明する図である。図3の説明は従来技術と本発明の位相シフタ形成方法ともに共通する説明である。図2(d)の遮光膜のパターニングを完了後、フォトマスクを洗浄し、図3(a)に示すように、位相シフタ形成用のレジスト120を塗布する。
【0017】
次に、図3(b)に示すように、透明基板を掘り込み、位相シフタを形成したい、位相シフタ形成領域(エッチング部)200を描画し、現像し、レジストから開口させる。位相シフタを形成しない非エッチング部210はレジストに覆われたままとなる。この描画の際には、現像後のレジストパターンが、エッチング部に被さらないよう、位相シフタ形成領域のエッジからレジストパターンのエッジまで所定のマージン220を持つように描画する。マージンは位相シフタ形成領域のエッジからレジストパターンのエッジまでの距離として本明細書では用いる。マージンを持たせないと描画の位置ずれによりレジストパターンがエッチング部に被さってしまい、エッチングの障害となり欠陥となってしまう。
【0018】
位相シフタ形成領域のエッジとレジストパターンのエッジにマージンを持たせる方法としては、遮光膜の形成に用いた描画パターンデータのうち、位相シフタを形成したいエッチング部のパターンデータを抽出し、一定幅だけパターンの寸法を太らせるバイアス補正を施した描画パターンデータで描画を行えば良い。
【0019】
エッチング部を描画、現像後、図3(c)に示すように、ドライエッチングにて、レジストと遮光膜から露出している透明基板のエッチング部を所望の位相分だけエッチングして、位相シフタを形成する。非エッチング部210である遮光膜の開口部と、エッチング部200である位相シフタの位相差が略180度になる深さで掘り込むと、位相が反転した光の干渉でパターンの解像力が向上する。半導体ウェハー上へ露光する波長がArF光源を用いた193nmの場合は、透明基板の掘り込み量は172nmである。
【0020】
次に、図3(d) に示すように、残存するレジストを除去し、掘り込み型の位相シフトマスクが完成する。以上は従来技術と本発明の共通する工程である。
【0021】
次に、従来技術の位相シフタを形成する方法と、本発明の位相シフタを形成する方法の違いを図4を用いて説明する。図4は、図3(b)の加工段階の基板を上面から見た場合の概念図である。図4(a)は従来の位相シフタ形成方法、図4(b)は本発明の位相シフタ形成方法を説明する図である。図の一点鎖線の矩形はエッチング部300,350または非エッチング部310,360であり、一点鎖線の矩形の内側の遮光膜が開口しており、遮光膜のエッジが一点鎖線に相当する。エッチング部、非エッチング部ともに寸法の異なるパターンを有しており、図の上段は小寸法パターンであり、下段は小寸法パターンより太い寸法を有するパターンである。図の実線枠330はレジストパターンのエッジを示しており、実践枠330の内側はレジストが開口している領域であり、実践枠の外側はレジストに覆われている領域である。エッチング部300はレジストに覆われておらず、非エッチング部310,360はレジストに覆われている。
【0022】
図4(a)の従来の位相シフタ形成方法は、エッチング部の寸法に関わらず、一律にマージン320を設定している。従来のマージンの設定は、描画の位置精度に合わせ、描画位置ずれによりエッチング部にレジストが被らない最小値で設定している。つまり、エッチング部の寸法によらずに、描画の位置精度により一律にマージンを設定している。最小の値で設定するのは、エッチングにウェットを用いる場合、レジストが充分な面積で遮光膜を覆っていないと、エッチング液が遮光膜とレジスト界面、またはレジストに染み込んで、非エッチング部が削れてしまう可能性があるためである。
【0023】
従来方法では、エッチング部の寸法が小さくなればなるほど、レジストの開口領域の寸法370も小さくなってしまう。この従来方法の場合、所望の位相差をドライエッチングのみで掘り込むと、パターン寸法の小さい箇所と、パターン寸法の大きい箇所でドライエッチングのされ易さが異なるため、同じ時間だけエッチングを行っても、パターン寸法の小さい箇所ほど浅く、一方、パターン寸法の大きい箇所ほど深くエッチングされる。つまり寸法によってエッチングの深さがバラついてしまう。このドライエッチングの際の掘り込み深さのバラつきを本明細書ではリアクティブイオンエッチングラグ(以下RIEラグ)と呼ぶ。RIEラグが生じると、寸法ごとにエッチング深さがバラついてしまい正確な転写露光結果が得られなくなる。
【0024】
この掘り込み型位相シフトマスクの位相シフタを形成する際のRIEラグの要因としてはレジストの存在があげられる。エッチング部の周りにレジストが存在することによってエッチングを促進させるイオンがレジストに阻まれ、エッチングが進行しづらくなるのである。これはレジスト厚みが厚いほど、また、レジスト開口領域の寸法が小さければ小さいほどより顕著に現れる。
【0025】
そこで、本発明は、図4(b)に示すように位相シフタ形成用のパターンを描画する際に、エッチング部の寸法幅に応じて、露出さる遮光膜のマージンを設定している。従来技術図4(a)の説明と重複する部分は同じ番号を付している。図の一点鎖線の矩形はエッチング部300,350または非エッチング部310,360であり、矩形の内側の遮光膜が開口しており、遮光膜のエッジが一点鎖線を示している。エッチング部、非エッチング部ともに寸法の異なるパターンを有しており、図の上段は小寸法パターンであり、下段は小寸法パターンより大きい寸法を有するパターンである。図の実線枠330はレジストパターンのエッジを示しており、実践枠330の内側はレジストが開口している領域であり、実践枠330の外側はレジストに覆われている領域である。エッチング部300はレジストに覆われておらず、非エッチング部310,360はレジストに覆われている。
【0026】
位相シフタ形成用の描画パターンデータの準備は、位相シフタ形成用の描画パターンデータから、ドライエッチングする際に寸法の細りとともに掘り込み量が浅くなる所定の寸法以下のパターンを抽出する。位相シフタ形成用の描画パターンデータから、所定の寸法以下のパターンを抽出する方法はマスクルールチェック(以下MRC)などの公知の技術を用いてコンピューターにより抽出が可能である。ドライエッチングする際に寸法の細りとともに掘り込み量が浅くなる所定の寸法は、従来技術にて実際にマスクを作成し、AFMなどにて寸法ごとの深さを測定しておく。そして許容値以上に浅くなる寸法領域を予め決定しておく。
【0027】
エッチング部300が所定の寸法以下であり、エッチング部350が所定の寸法より大きい場合について説明する。エッチング部300が所定の寸法以下の場合、レジストがエッチングの障壁になるのを緩和するためマージン321を、描画位置精度を考慮しレジストがエッチング部に被さらない最小の値より大きく設定する。設定するマージンの値は、大きいほどレジストの影響は低減されるが一定以上大きいと効果が上限値に達する。またマージンは隣接するパターンの配置により制限をうけることもあり、マージンの最大量としてはパターンの片側づつに、それぞれエッチング部の寸法幅の1/2〜1倍程度の幅のマージンを設定するのが好ましい。1/2未満だとレジストのエッチング障壁としての影響が大きく、1倍以上になると残存するレジスト寸法が細まり、レジスト倒れの生じる箇所が増え、追加のデータ処理数が増加するからである。また遮光膜のダメージを受ける領域も増加する。以上によりレジストの開口寸法380を大きくさせることができRIEラグを低減させることができる。
【0028】
また図5(a)に示すようにパターンの配置によりエッチング部300同士が隣合い、間のレジスト400が現像後、細すぎるために倒れてしまうような場合は、図5(b)のように、エッチング部同士が隣合う側のマージンをさらに大きくし、二つのレジスト開口領域を繋げて一つの開口領域410とすれば良い。図5(b)の方法によりレジスト倒れ箇所の対策も可能である。
【0029】
図4(b)所定の寸法より大きい寸法であるエッチング部350のマージン320は、エッチング部300と同じマージン321を設定しても良いが、エッチング部の微小パターン300のマージンより小さく設定しておいても良い。特に、所定の寸法より大きい寸法であるエッチング部においてもレジストの存在がエッチング障壁となり掘り込み深さに影響する寸法領域においては、微小パターン300よりマージンを小さくすることでレジストがエッチング障壁となり、350の掘り込み深さを抑えることができ、微小パターンとの深さの差を調節することができる。またマージンの値は寸法に応じて複数に設定することができる。レジストの存在がエッチング障壁となり掘り込み深さに影響する寸法領域とは、本明細書ではレジストが存在しない状態でのエッチングと、レジスト厚1500Å〜3000Åの厚みにおいて、マージンを描画位置精度を考慮した最小値に設定した場合のエッチングとで、1nm以上の掘り込み深さが生じる領域を指すものとする。
【0030】
また所定の寸法以上のパターンは、従来技術同様、描画の位置精度に合わせ、描画位置ずれによりエッチング部にレジストが被らない最小値で設定しておいても良い。残存するレジスト面積を稼げるため、レジスト倒れが生じる箇所の発生を抑えることができデータの加工箇所を減らすことができるためである。
【0031】
なお、レジストの開口領域を増やすという視点では、レジストをネガとし、非エッチング部だけを覆うことによりRIEラグを低減する方法も考えられるが、ネガレジストを用いた場合、描画部分しかレジストが残らないため、露出する遮光膜の領域が格段に増え、遮光膜上層の低反射層がエッチングによりダメージを受けることで表面反射率が上昇し、転写露光の際、迷光が生じてしまう問題がある。またレジスト面積を増やそうとすると描画面積が増大し、マスク製造に多大な時間がかってしまう問題がある。本発明においては、エッチンブ部周辺部のみ、露出する遮光膜の面積が増えるので、遮光膜がダメージを受けたとしても迷光の問題もマスク製造時間の問題も発生しない。
【0032】
位相シフタ形成用のレジストパターンを形成した後は、図3(c)、図3(d)に示すようにドライエッチングによりエッチング部を所望の深さまでエッチングし、位相シフタを形成し、その後、残存したレジストを除去し、洗浄工程、検査工程を経ることにより、掘り込み型の位相シフトマスクが完成する。なお、位相シフタ形成しレジストを除去した後、再度レジストを塗布し、描画し、部分的に不要な箇所の遮光膜をエッチング除去して、掘り込み型の位相シフトマスクとしても良い。
<別の実施形態>
図6は本発明の別の実施形態を説明する図であり、図4(b)同様なものについては図4(b)と同じ番号を付してあり、説明を省略する。図7の実施形態のパターンは、転写露光により転写される本パターン510、350、360と、転写露光により転写されないアシストーパターン500とを有している。エッチン部500は転写露光により転写されないアシストーパターンであり、非エッチング部である本パターン510の解像力を上げる為のパターンである。アシストパターンは本パターンの解像力を上げる為のパターンであり、アシストパターン自体はウェハーなどの被転写基板のレジスト上には解像しない微小寸法を有している。本パターンはウェハーなどの被転写基板のレジスト上に実際に解像し、パターンを形成するものである。
【0033】
解像限界以下のアシストパターンは寸法が細く、特にドライエッチングが入り難く、本パターンのエッチング部350との掘り込み深さに差ができRIEラグが生じる。RIEラグを低減させるため、アシストパターンのマージンをパターンの片側づつに、それぞれエッチング部の寸法幅の、1/2〜1倍の幅のマージンを設定する。本パターンエッチング部のマージンは、アシストパターンのマージンと同じとしても良いが、本パターンもレジストの存在がエッチング障壁となり掘り込み深さに影響する寸法領域である場合、アシストパターンのマージンより小さく設定し、エッチングの掘り込みを押さえ、アシストパターンとのRIEラグをより低減させることができる。
【0034】
位相シフタ形成用のレジストパターンを形成した後は、図3(c)、図3(d)に示すようにドライエッチングによりエッチング部を所望の深さまでエッチングし、位相シフタを形成し、その後、残存したレジストを除去し、洗浄工程、検査工程を経ることにより、掘り込み型の位相シフトマスクが完成する。なお、位相シフタ形成しレジストを除去した後、再度レジストを塗布し、描画し、部分的に不要な箇所の遮光膜をエッチング除去して、掘り込み型の位相シフトマスクとしても良い。
【実施例】
【0035】
次に、より具体的な実施例を示して本発明を更に詳細に説明する。
<実施例>
掘りこみ型位相シフトマスク用のブランクスとして、合成石英ガラスからなる透明基板の上にCr層と、反射防止膜として機能する酸化Cr層を順次積層してなる遮光膜を、膜厚70nmで形成したブランクスを用意した。本実施例で用いる描画パターンは、図7に示すように縦寸法a、横寸法b、パターン間の遮光膜寸法をcとして、エッチング部300と非エッチング部310を同一形状としそれぞれ交互に五本づつ、計10本並べたパターンを用いた。さらに、図7のパターンをaを600nmで、cを200nmで両方を固定値として、bの値を表1の設計寸法のように120nm,180nm,260nmと値を振り、値を変えたパターンを並べ、評価用のモニタパターンとして配置した。
【0036】
用意したブランクスに化学増幅型ポジ型レジストを膜厚約2500Åで塗布し、電子線描画装置により所定の領域に、図7の評価用のモニタパターンを含む所定のパターンの描画を行った。描画後、プリベークをし、アルカリ水溶液で現像処理を行って遮光膜パターニング用のレジストパターンを形成した。次に、Cr系の遮光膜をCl系のガスによりプラズマエッチングし加工を行った。遮光膜の加工後、レジストを灰化除去、洗浄し、遮光膜をパターニングしたフォトマスクを得た。
【0037】
次に位相シフタ形成のため位相シフタ形成用の描画パターンデータを、描画装置の位置精度を考慮して片側20nm、両側で40nm太らせるバイアス補正を入れた。次にMRC用のソフトにかけ、縦横少なくともどちらか一方の寸法が120nmより大きく180nm以下のパターンを抽出した。抽出した寸法が120nmより大きく180nm以下のパターンは、データを太らせる幅を片側一辺で90nm、両側合計で180nmとした。さらにMRC用のソフトにかけ、縦横少なくともどちらか一方の寸法が120nm以下のパターンを抽出した。抽出した寸法が120nm以下のパターンは、データを太らせる幅を片側一辺で120nm、両側合計で240nmとした。表1にの片側のマージンをマージン片側として記載した。
【0038】
描画後、現像処理をし、開口領域に露出しているエッチング部をF系のガスでエッチングをした。エッチングガスはCF4とCHF3を1対1とし、圧力を2mTorrとした。エッチング部と非エッチングの位相差がArF光源の波長193nmで露光したときにちょうど180度になるようにエッチング時間を設定した。エッチング終了後、レジストを灰化除去、洗浄し、位相シフトマスクを完成させた。
【0039】
次に、本発明の効果を評価するために、図7の評価パターンの寸法を走査型電子顕微鏡(SEM)により測定した。評価パターンの遮光膜の寸法を測定した値が表1のX1である。
【0040】
透明基板の掘り込み量の測定には原子間力顕微鏡(AFM)を用いて行った。AFMでエッチング部と隣接する非エッチング部をAFMの探針で走査し、非エッチング部の表面から、エッチング部のエッチングされた底面の差を測定したのが表1のY1である。表3には、掘り込み量Y1の、全寸法の平均値と、全寸法内での最大最小値と、最大最小値の差であるレンジと、レンジの大きさの平均値に対する%を表示した。
<比較例>
次に比較例について説明する。実施例と同じブランクスを用意し、遮光膜をパターニングは実施例と全く同様に行った。次に位相シフタ形成のためエッチング部描画用のパターンデータは、寸法によらず一律に太らせた。太らせる幅は、片側一辺で20nm、両側合計で40nmとした。実施例同様にレジストを塗布し、描画現像、プラズマエッチングを続けて行った。
【0041】
掘り込み量の評価も実施例と同様に行った。評価パターンの遮光膜の寸法を測定した値が表2のX2である。AFMでエッチング部と隣接する非エッチング部をAFMの探針で走査し、非エッチング部の表面から、エッチング部のエッチングされた底面の差を測定したのが表2のY2である。表3には、掘り込み量Y2の、全寸法の平均値と、全寸法内での最大最小値と、最大最小値の差であるレンジと、レンジの大きさの平均値に対する%を表示した。
【0042】
【表1】

【0043】
【表2】

【0044】
【表3】

<実施例と比較例の比較>
実施例と比較例を比較すると、表3から、パターン寸法120nmから260nmの掘り込み深さのバラつきがレンジは値にして4.1nm、%にして2.2%、RIEラグが改善していることが分かる。
【符号の説明】
【0045】
100透明基板
110遮光膜
120 レジスト
200、300、350、500 エッチング部
210、310、510 非エッチング部
220、320、321マージン
330、410 レジストパターンのエッジ
370、380 レジスト開口寸法

【特許請求の範囲】
【請求項1】
掘り込み型位相シフトマスクの製造方法であって、順に、
開口領域を形成した遮光膜を透明基板上に有する基板を準備する工程と、
前記基板にポジ型レジストを塗布する工程と、
レジスト塗布後、遮光膜の開口領域のうち位相シフタ形成領域をレジストから開口させる描画工程と、現像工程と、
現像工程後、開口させた位相シフタ形成領域を、ドライエッチングにて透明基板を掘り込むエッチング工程と、
残存したレジストを除去する工程とを備え、
前記描画工程は、レジストが位相シフタ形成領域に重ならないように所定のマージンを持つように描画するものであり、
前記所定のマージンは、前記ドライエッチングによる掘り込み量の位相シフタ形成領域の寸法による不均一を緩和するように、位相シフタ形成領域の寸法に応じて設定されていることを特徴とする掘り込み型位相シフトマスクの製造方法。
【請求項2】
前記所定のマージンは、位相シフト形成領域の寸法に応じて複数設定されており、
寸法が所定の値より小さい位相シフタ形成領域のマージンを、寸法が所定の値より大きい位相シフタ形成領域のマージンより、大きく設定することを特徴とする請求項1に記載の掘り込み型位相シフトマスクの製造方法。
【請求項3】
前記位相シフタ形成領域は、転写露光の際に転写されないアシストパターンと、転写露光の際に転写される本パターンとを有し、前記所定のマージンは、アシストパターンのマージンを、本パターンのマージンより大きく設定していることを特徴とする請求項1に記載の掘り込み型位相シフトマスクの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−88514(P2013−88514A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−226933(P2011−226933)
【出願日】平成23年10月14日(2011.10.14)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】