説明

掘削へッド及び杭圧入機

【課題】掘削爪の刃先の磨耗が少ない掘削ヘッド及び掘削ヘッドを有する掘削装置を備えた杭圧入機を提供する。
【解決手段】回転しながら地盤を掘削する掘削装置の掘削ヘッド20である。地盤1を破砕する複数の掘削爪23、25を備え、これら掘削爪23、25は、略円錐螺旋状に配列されており、最上部の掘削爪25から下部中央の掘削爪23までの高低差が、最上部の掘削爪25の回転半径以上であるとともに、掘削爪25の刃先26は、これら掘削爪25の掘削ヘッド20への固定部よりも、外方かつ回転方向に対して前方に突出して設けられており、刃先26のすくい角が正である。掘削爪25の下方及び回転方向前方の地盤1を破断しながら掘削するため、刃先26の磨耗や欠損を大幅に減らすことができる。また、地盤を大きな塊に破砕して除去するため、掘削時間を短くすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、掘削装置の掘削ヘッド、及び掘削装置を備えた杭圧入機に関する。
【背景技術】
【0002】
硬質地盤を掘削して竪穴を形成する装置として、三点式アースオーガが知られている。このアースオーガに設けられているオーガスクリューの下端部には、硬質地盤を掘削する掘削ヘッドが接続されている。
【0003】
掘削ヘッドとしては、例えば、回転軸の下端から、軸に対して略垂直方向に突出した羽を有し、羽に掘削爪が径方向に等間隔に設けられたものがある(例えば特許文献1参照)。従来の三点式アースオーガでは、自重で掘削爪を地盤に押圧し、掘削爪を回転させて地盤を削っていた。
【特許文献1】特開2004−124695号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述の掘削方法では、掘削爪で地盤を削るため、掘削爪の磨耗が多く、交換頻度が高いという問題があった。また、掘削能力を上げるためには掘削爪を下方へ押圧する必要があるが、押圧力を大きくすると前記アースオーガが転倒する恐れがあるため、掘削能力が制限されていた。
【0005】
本発明の課題は、掘削爪の刃先の磨耗が少ない掘削ヘッド及び掘削ヘッドを有する掘削装置を備えた杭圧入機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、例えば図2または図5に示すように、回転しながら地盤1を掘削する掘削装置の掘削ヘッド20であって、地盤1を破砕する複数の掘削爪23、25を備え、これら掘削爪23、25は、下部中央から上部外方へ略円錐螺旋状に配列されており、最上部の掘削爪25から下部中央の掘削爪23までの高低差が、最上部の掘削爪25の回転半径以上であることを特徴とする。
【0007】
請求項1に記載の発明によれば、地盤を破砕する複数の掘削爪23、25が下部中央から上部外方へ略円錐螺旋状に配列されているため、掘削ヘッド20を回転させると、図3に示すように、水平面4aと鉛直面4bとが交互に繰り返す階段状の削孔4が形成される。
【0008】
ここで、最上部の掘削爪25から下部中央の掘削爪23までの高低差が、最上部の掘削爪25の回転半径以上であるため、削孔4の下端部分の勾配は45度以上となる。この削孔4の底部に掘削爪25で下方に圧力を加えると、水平面4aの外周部から下方かつ内側に向かって約45度傾いた亀裂4cが入り、地盤1が断面三角形状に破断される(図4の斜線部)。
【0009】
掘削爪25の下部の地盤1を破断しながら掘削することで、従来の地盤を切削する方法と比較して、掘削爪25の刃先26の磨耗や欠損を大幅に減らすとともに、掘削時間を短縮することができる。
【0010】
また、掘削ヘッド20の全体形状が円錐形となるため、掘削ヘッド20に下方向に力を加えると、地盤1に水平方向に広がる方向に力を加えることができ、地盤1を大きく割って掘削ヘッド20を地盤1に食い込ませることができる。
【0011】
請求項2に記載の発明は、回転しながら地盤を掘削する掘削装置の掘削ヘッド20であって、地盤1を破砕する複数の掘削爪23、25を備え、これら掘削爪23、25は、略円錐螺旋状に配列されており、図4に示すように、掘削爪25の刃先26は、掘削爪25の掘削ヘッド20への固定部から、外方かつ回転方向に対して前方に突出して設けられており、刃先26のすくい角θが正であることを特徴とする。
【0012】
ここで、すくい角とは、掘削爪25の刃先26の進行方向に垂直な直線(図4では刃先26と回転中心とを結ぶ径方向の直線L)と、刃先26の進行方向前方の面26bとのなす角θである。刃先26の進行方向前方の面26bが、進行方向に垂直な直線よりも後方にあるときに、すくい角が正であるという。
【0013】
請求項2に記載の発明によれば、掘削爪25の刃先26が、掘削爪25の掘削ヘッド20への固定部から、外方かつ回転方向に対して前方に突出して設けられており、刃先26のすくい角が正であるため、図4に示すように、掘削爪25を回転させると、回転方向前方の地盤1(図4の斜線部)に亀裂4dが生じ、地盤1を破断しながら掘削することができ、従来の地盤を切削する方法と比較して、掘削爪25の刃先26の磨耗や欠損を大幅に減らすとともに、掘削時間を短縮することができる。
【0014】
請求項3に記載の発明は、回転しながら地盤を掘削する掘削装置の掘削ヘッド20であって、地盤1を破砕する複数の掘削爪23、25を備え、これら掘削爪23、25は、略円錐螺旋状に配列されており、最上部の掘削爪25から下部中央の掘削爪23までの高低差が、最上部の掘削爪25の回転半径以上であるとともに、掘削爪25の刃先26は、これら掘削爪25の掘削ヘッド20への固定部よりも、外方かつ回転方向に対して前方に突出して設けられており、刃先26のすくい角が正であることを特徴とする。
【0015】
請求項4に記載の発明は、図1に示すように、請求項1〜3のいずれか一項に記載の掘削ヘッド20を有する掘削装置を備えた杭圧入機10であって、既設の杭2を掴持する掴持手段(クランプ11)と、該掴持手段により既設の杭を掴持することにより反力を取って杭を圧入する圧入手段(チャック部14)とを備え、前記圧入手段は、前記掘削ヘッド20を備えた掘削装置で地盤1を掘削することに補助させて杭2を圧入することを特徴とする。
【0016】
従来の方法では、掘削ヘッド20には装置重量以上の力を加えることができなかったが、請求項4に記載の発明によれば、掘削ヘッド20を有する掘削手段を圧入手段(チャック部14)で掴持し、掴持手段により既設の杭を掴持することにより反力を取って掘削ヘッド20に下方に力を加えるため、転倒する恐れがなく、装置重量以上の力を加えることができ、安全でより効率よく掘削作業を行うことができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、地盤を破断しながら掘削することができ、掘削爪の磨耗や欠損を大幅に減らすとともに、掘削時間を短縮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。図1は本発明の実施の形態の杭圧入機により、地盤1に鋼管杭2を圧入する様子を示す立断面図である。杭圧入機10は、先に圧入した鋼管杭2を内側から着脱自在に掴んで該鋼管杭2から反力をとるクランプ11(掴持手段)と、クランプ11を操作するサドル12と、サドル12に対して前後方向(鋼管杭2の列方向)に移動自在に設けられマスト部15を保持するスライドベース13と、圧入すべき鋼管杭2を着脱自在に掴むとともに、昇降して掴んだ鋼管杭2を圧入するチャック部14(圧入手段)と、スライドベース13に対して左右に向きを変えられるように旋回自在に設けられるとともに、チャック部14を昇降自在に支持するマスト部15とにより、主要部が構成されている。
【0019】
鋼管杭2の内部にはオーガスクリュー3が挿入されている。鋼管杭2を掴むチャック部14には、オーガスクリュー3を回転させる図示しない駆動装置が設けられている。オーガスクリュー3の下端には、掘削ヘッド20が取り付けられており、オーガスクリュー3を回転させることで、鋼管杭2を圧入する地盤1を削孔することができる。
【0020】
図2は本発明の掘削ヘッド20の第1の実施の形態を示す立断面図である。掘削ヘッド20は、軸部21と、スクリュー24と、掘削爪25とから構成されている。
軸部21の上端には、上から見て反時計回りに上がるように形成されたオーガスクリュー3に接続される接続部22が設けられている。軸部21の下端には、先端掘削爪23が設けられている。軸部の外周部には、スクリュー24が設けられている。
【0021】
スクリュー24は軸部の外周部に形成された円錐螺旋形状の面材であり、下端から上方へ向かうにつれてその径が大きくなるように形成されている。図2において、スクリュー24は、上から見て反時計回りに上がるように形成されており、オーガスクリュー3と連続している。掘削ヘッド20が時計回りに回転すると、スクリュー24は掘削された土砂を上方へ運搬する。運搬された土砂は、オーガスクリュー3の上方から地上へ排土される。
【0022】
スクリュー24の外周部には、下方に向かって突出する掘削爪25が設けられている。図1において、掘削爪25は、その下端に設けられた刃先26を、上から見て時計回りの方向かつ下側外方へ突出させている。掘削爪25は、連続した円錐螺旋を描くように配列され、その頂点位置には上述の先端掘削爪23が配置される。最上部の掘削爪25から先端掘削爪23までの高低差は、最上部の掘削爪25から軸部21の中心までの半径以上となっている。
【0023】
このような掘削ヘッド20を上から見て時計回りに回転させると、図2に示すように、地盤1にはすり鉢状の削孔4が形成される。最上部の掘削爪25から先端掘削爪23までの高低差が、最上部の掘削爪25から軸部21の中心までの半径以上であるため、すり鉢状の削孔4の円錐角度αは90度以下になり、削孔4の下端部分の勾配は45度以上になる。
【0024】
図3は削孔4内の掘削爪25の刃先26が当接する部分を示す鉛直断面図である。刃先26の下面26aは略水平に形成されている。掘削爪25により、削孔4は水平面4aと鉛直面4bとが交互に繰り返す階段状に形成されている。削孔4の下端部分の勾配は45度以上となっているため、水平面4aの幅は、鉛直面4bの高さよりも狭い。
【0025】
刃先26の下面を削孔4の水平面4aに当接させ、下方に押圧すると、地盤1には、刃先26の下面26aの外側端部が当接する位置から削孔4の内側に向かって斜め下方に亀裂4cが生じる。亀裂4cは約45度傾いて生じるため、亀裂4cの下端は一段下の鉛直面4bまで到達し、地盤が断面三角形状に破断される。破断された地盤(斜線部)は削孔4の内部に落ち、スクリュー24により地上に排土される。
【0026】
このように、掘削爪25の下部の地盤1を破断しながら掘削するため、従来の地盤を切削して小さな掘削粒にして除去する方法と比較して、刃先26の磨耗や欠損を大幅に減らすことができる。また、地盤1を大きな塊に破断して除去するため、切削して掘削粒を除去する場合よりも掘削時間を短くすることができる。
【0027】
図4は削孔4内の掘削爪25の刃先が当接する部分を示す水平断面図である。図4において、掘削爪25の刃先26が時計回りに回転しており、地盤1が削られて削孔4の鉛直面4bが形成されている。刃先26のすくい角は正である。すなわち、刃先26の回転方向前方の面26bは、刃先26の先端及び回転中心を通る直線Lに対し、後退する側に所定の角度をなしている。
【0028】
このため、掘削爪25を時計回りに回転させると、地盤1には、刃先26の回転方向前方の面26bの最外端部が当接する位置から回転方向前方かつ削孔4の内側に向かって斜めに亀裂4dが生じる。この亀裂4dが削孔4の刃先26よりも前方の鉛直面4bに到達すると、地盤が断面三角形状に破断される。破断された地盤(斜線部)は削孔4の内部に落ち、スクリュー24により地上に排土される。
【0029】
このように、掘削爪25の回転方向前方の地盤1を破断しながら掘削するため、従来の地盤を切削する方法と比較して、刃先26の磨耗や欠損を大幅に減らすことができる。また、地盤を大きな塊に破砕して除去するため、切削して掘削粒を除去する場合よりも掘削時間を短くすることができる。
【0030】
図5は本発明の掘削ヘッド20の第2の実施の形態を示す立断面図である。本実施の形態が第1の実施の形態と異なるのは、スクリュー24のピッチが下部では小さく、上部に行くほど大きくなっている点である。このため、地盤1には下端部分が断面放物線形状の削孔4が形成される。
本実施の形態の掘削ヘッド20でも、第1の実施の形態と同様に、掘削爪25の下方及び回転方向前方の地盤1を破断しながら効率よく地盤を掘削することができる。
【0031】
なお、以上の実施の形態においては、杭圧入機10とともに掘削ヘッド20を取り付けたオーガスクリュー3を用いたが、本発明はこれに限らず、掘削ヘッド20を取り付けたオーガスクリュー3のみを単独で用いてもよい。また、最上部の掘削爪25から下部中央の掘削爪23までの高低差が、最上部の掘削爪25から中心までの半径以上であれば、掘削ヘッド20の形状も任意である。その他、掘削爪25のスクリュー3への取付構造等、具体的な細部構造についても適宜変更可能であることはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の実施の形態の杭圧入機を示す立断面図である。
【図2】本発明の掘削ヘッドを示す立断面図である。
【図3】図2の掘削ヘッドの掘削爪の刃先が削孔内に当接する部分を示す図であり、鉛直断面図である。
【図4】同、水平断面図である。
【図5】本発明の掘削ヘッドを示す立断面図である。
【符号の説明】
【0033】
1 地盤
2 杭
4 削孔
4a 水平面
4b 鉛直面
4c、4d 亀裂
10 杭圧入機
11 クランプ
14 チャック部
20 掘削ヘッド
23 先端掘削爪
25 掘削爪
26 刃先

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転しながら地盤を掘削する掘削装置の掘削ヘッドであって、地盤を破砕する複数の掘削爪を備え、これら掘削爪は、下部中央から上部外方へ略円錐螺旋状に配列されており、
最上部の掘削爪から下部中央の掘削爪までの高低差が、最上部の掘削爪の回転半径以上であることを特徴とする掘削ヘッド。
【請求項2】
回転しながら地盤を掘削する掘削装置の掘削ヘッドであって、地盤を破砕する複数の掘削爪を備え、これら掘削爪は、略円錐螺旋状に配列されており、
掘削爪の刃先は、掘削爪の掘削ヘッドへの固定部から、外方かつ回転方向に対して前方に突出して設けられており、すくい角が正であることを特徴とする掘削へッド。
【請求項3】
回転しながら地盤を掘削する掘削装置の掘削ヘッドであって、地盤を破砕する複数の掘削爪を備え、
これら掘削爪は、下部中央から上部外方へ略円錐螺旋状に配列されており、
最上部の掘削爪から下部中央の掘削爪までの高低差が、最上部の掘削爪の回転半径以上であるとともに、
掘削爪の刃先は、これら掘削爪の掘削ヘッドへの固定部よりも、外方かつ回転方向に対して前方に突出して設けられており、刃先のすくい角が正であることを特徴とする掘削へッド。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の掘削ヘッドを有する掘削装置を備えた杭圧入機であって、
既設の杭を掴持する掴持手段と、該掴持手段により既設の杭を掴持することにより反力を取って杭を圧入する圧入手段とを備え、
前記圧入手段は、前記掘削ヘッドを備えた掘削装置で地盤を掘削することに補助させて杭を圧入することを特徴とする杭圧入機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−22594(P2006−22594A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−203114(P2004−203114)
【出願日】平成16年7月9日(2004.7.9)
【出願人】(000141521)株式会社技研製作所 (83)
【Fターム(参考)】