説明

掘削装置

【課題】 軌道下に地下道となる地下構造物を推進、埋設する際に、予め、地下構造物のガイドとなるパイプルーフを形成するための鋼管を埋設施工する掘削装置であって、鋼管前方の切羽地盤や掘削状況を確認しながら鋼管を能率よく計画位置に埋設する。
【解決手段】 鋼管1の前端開口部内にカメラ4とこのカメラ4のレンズ洗浄液噴射ノズル5とを着脱自在に装着しておき、鋼管1内に挿入したスクリューオーガ3によって前方の地盤を掘削しながら鋼管1を地盤中に推進、埋設すると共にその掘削状況や切羽地盤の状態を上記カメラ4によって観察して枕木等の木片などが存在した時に、スクリューオーガ3を引き抜き、木片破砕用刃先に取り替えて再び、このスクリューオーガ3によって前方の地盤を掘削しながら鋼管1を推進、埋設する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軌道下や道路下を横断してこれらの軌道や道路直下の地盤中に地下道となる地下構造物を埋設、構築する際に、予め、上記地下構造物の上床部の高さに相当する位置に埋設して該下構造物の埋設時のガイドとなるパイプルーフ用鋼管等の鋼管を埋設施工するための掘削装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば軌道下の地盤中に、地下道となる地下構造物を推進等によって埋設する場合、特許文献1に記載しているように、まず、軌道を挟んでその軌道下の地下構造物埋設計画域の両側に発進坑と到達坑とを掘削したのち、上面に縁切板を配設している断面矩形状の鋼管を発進坑と到達坑間の地盤中における地下構造物の上床部の位置に複数本、並列状態に推進、埋設してパイプルーフを形成し、しかるのち、地下構造物を発進坑内に設置してその上床部の前端面をパイプルーフの後端に当接させ、地下構造物の前方地盤を掘削しながら該地下構造物を推進して上記縁切板を不動状態で残したまま、この縁切板の下面に沿ってパイプルーフを到達坑側に押し出し、地下構造物を埋設計画域に埋設することが行われている。
【0003】
また、上記のように、上面に縁切板を配設している断面矩形状の鋼管を発進坑と到達坑間の地盤中における地下構造物の上床部の位置に複数本、並列状態に推進、埋設してパイプルーフを形成したのち、発進坑側に地下構造物全体ではなくその上床部に相当する部材を配設して該部材の前端面をパイプルーフの後端に当接させ、この部材を推進させることによって上記パイプルーフとこの部材とを置換し、しかるのち、この部材の下方の地盤を掘削して地下道を構築することも行われている(特許文献2参照)。
【特許文献1】特開昭64−29597号公報
【特許文献2】特開昭63−75288号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記いずれの方法においても、パイプルーフ形成用の断面矩形状鋼管を埋設計画域に推進、埋設するには、先端にオーガヘッドを装着しているスクリューオーガを鋼管内に挿入して、このスクリューオーガにより前方の地盤を掘削しながら推進、埋設している。この際、鋼管の両側面には予め、上下一対の係合突条を全長に亘って突設しておき、先に埋設した鋼管の一側面に突設している上下係合突条に次に埋設すべき鋼管の他側面に突設している上下係合突条を係合させながら所定の方向に鋼管を推進、埋設しているが、推進中における鋼管の前方地盤中に枕木等の木片や転石、岩砕片などの障害物が存在した場合にはオーガヘッドが損傷する虞れがあるばかりでなく、それ以上の推進、埋設が困難となる場合があり、従来から、異常を察知する毎にスクリューオーガを引き抜いたのち、作業員が鋼管内に腹這い状態で切羽まで入ってその原因を調査し、対応しているのが現状である。
【0005】
そのため、狭い鋼管内に作業員が出入りすることは危険を伴うばかりでなく、原因を調査するのに必要な作業ロス時間が長くなって工期が長期化するといった問題点がある。また、掘削すべき地質や掘削状況、オーガヘッドの掘削位置等を経験や勘によって頼らざるを得なく、鋼管埋設作業が安定的に行うことができないといった問題点がある。
【0006】
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、鋼管前方の切羽地盤や掘削状況を常時正確に確認しながら鋼管を円滑且つ正確に所定の埋設計画位置に埋設することができる掘削装置を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の掘削装置は、請求項1に記載したように、鋼管内にその前方地盤を掘削するための掘削手段を配設していると共にこの鋼管の前端部内に掘削状況を観察するためのカメラを装着した構造としている。
【0008】
上記掘削装置において、請求項2に係る発明は、鋼管の前端部内にカメラの前面を洗浄するための洗浄液噴射ノズルを装着していることを特徴とする。
【0009】
また、請求項3に係る発明は、上記鋼管は断面矩形状に形成されてあり、この鋼管の両側面における上下部にそれぞれ係合突条を全長に亘って且つ一側面側の上下係合突条と他側面側の上下係合突条とが互いに連結可能な上下間隔を存して平行に突設していると共に一側面側の上下係合突条における一方の係合突条に沿ってカメラに接続したケーブルを収納すると共に洗浄液を供給する保護管を鋼管の後端側から前端部に亘って着脱自在に付設し、この保護管の前端部を鋼管の前端部から鋼管内に導入して該保護管の前端を洗浄液噴射ノズルに、保護管から引き出したケーブルをカメラに接続していることを特徴とする。
【0010】
一方、請求項4に係る発明は、断面矩形状の鋼管の両側面における上下部にそれぞれ係合突条を全長に亘って且つ一側面側の上下係合突条と他側面側の上下係合突条とが互いに連結可能な上下間隔を存して平行に突設していると共に一側面側の上下係合突条における一方の係合突条に沿ってカメラに接続したケーブルと洗浄液を供給するホースとを収納した保護管を鋼管の後端側から前端部に亘って着脱自在に付設し、この保護管の前端部を鋼管の前端部から鋼管内に導入して、該保護管から引き出した洗浄液を供給するホースを洗浄液噴射ノズルに接続すると共に該保護管から引き出したケーブルをカメラに接続することを特徴とする。
【0011】
さらに、請求項5に係る発明は、上記鋼管の前端に先頭管を着脱自在に接続していると共に、この先頭管の開口部内にカメラと洗浄液噴射ノズルとを装着してあり、さらに、カメラに接続しているケーブルと洗浄液噴射ノズルに接続している保護管とを先頭管の後端と鋼管の前端との接続部分で切り離し可能に接続していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る発明によれば、断面矩形状の鋼管内に掘削手段を抜き取り可能に挿入して該掘削手段により前方の地盤を掘削すると共に鋼管の前端開口部内にカメラを装着しているので、このカメラにより上記掘削手段による掘削状況を観察しながら地盤中に鋼管を推進、埋設することができ、鋼管を掘進、埋設中に、その前方の地盤に転石や岩砕片、枕木の木片等が存在する場合には、カメラによって直ちに確認することができ掘削手段の刃先等が損傷するのを未然に防止することができるばかりでなく、掘削手段をその存在物に応じた刃先、即ち、木片切削用刃先や礫用刃先、粘土用刃先等を有する掘削手段に変更して鋼管の埋設作業を円滑に続行することができる。
【0013】
このように、鋼管の掘進埋設中における上記木片や転石等の異物の存在やその他の異常発生の確認が、鋼管内に作業員が入って確認することなくカメラにより直接、確認するものであるから、作業の安全性を保証することができるばかりでなく、その異常の発生に対する対策が迅速且つ正確に行え、鋼管の推進、埋設作業が能率よく行うことができて工期の短縮を図ることができる。
【0014】
さらに、請求項2に係る発明によれば、鋼管の前端部内にカメラの前面を洗浄するための洗浄液噴射ノズルを装着しているので、掘削土で汚れたカメラレンズを清掃して鮮明な画像を得ることができ、掘削中の前方地盤の状態を常に明確に確認することができる。また、この鋼管の埋設後にはカメラを取り外すと共に保護管を撤去することによって次の鋼管の埋設施工に再び使用することができる。
【0015】
請求項3に係る発明によれば、鋼管の両側面における上下部にそれぞれ係合突条を全長に亘って且つ一側面側の上下係合突条と他側面側の上下係合突条とが互いに連結可能な上下間隔を存して平行に突設しているので、既に埋設した鋼管の一側面側の上下係合突条に次に埋設すべき鋼管の他側面側の上下係合突条を係合させることによって、この鋼管を既に埋設した鋼管に沿って円滑且つ正確に埋設することができるのは勿論、埋設すべき鋼管における埋設時に係合させない一側面側の係合突条を利用して該係合突条に、カメラに接続したケーブルを内装している保護管を撤去可能に付設しているので、鋼管に対するこの保護管の付設が簡単且つ正確に行えると共に埋設時に係合突条によって保護管を保護しておくことができる。
【0016】
さらに、鋼管の前端部側においては、この保護管の前端を鋼管の前端部外側から鋼管内に導入しているので、掘削手段に何等、邪魔されることなく保護管を噴射ノズルに容易に接続することができると共に該保護管の前端から内部に配設しているケーブルを引き出してカメラに簡単に接続することができ、鋼管の埋設準備作業が円滑に行えると共に埋設後においては、噴射ノズルやカメラ及び係合突条からの保護管の撤去が簡単に行え、次の鋼管の埋設に再使用することができる。また、保護管を引き抜くことでケーブルを一体に引き抜くことができ、次の鋼管の埋設に再使用することができる。
【0017】
なお、請求項4に記載したように、保護管内にカメラに接続したケーブルと洗浄液を供給するホースとを収納しておき、この保護管の前端部を鋼管の前端部から鋼管内に導入して、該保護管から引き出した洗浄液を供給するホースを洗浄液噴射ノズルに接続すると共に該保護管から引き出したケーブルをカメラに接続するように構成しておいてもよい。この場合も、保護管を引き抜くことでホースやケーブルも一体的に引き抜くことができ、カメラや噴射ノズルと共に次の鋼管埋設時に再度利用することができる。
【0018】
また、請求項5に係る発明によれば、上記鋼管の前端に先頭管を着脱自在に接続していると共に、この先頭管の開口部内に上記カメラと洗浄液噴射ノズルとを装着してあり、さらに、カメラに接続しているケーブルと洗浄液噴射ノズルに接続している保護管とを先頭管の後端と鋼管の前端との接続部分で切り離し可能に接続しているので、鋼管の埋設後に、この鋼管から先頭管を取り外すことによって先頭管の内部に設けているカメラと洗浄液噴射ノズルとを先頭管と一体的に鋼管側から分離させることができ、この先頭管を次に埋設すべき鋼管の前端に接続することによってカメラと洗浄液噴射ノズルとをそのまま再使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の具体的な実施の形態を図面について説明すると、図4、図5に示すように、道路又は軌道(以下、軌道20とする)の下方地盤24に該軌道20を横断する方向に既製の地下構造物21を埋設する場合、まず、軌道20を挟んでその一側方に地下構造物21の発進立坑22を、他側方に該地下構造物21の到達立坑23を形成する。なお、軌道20が高くなっていてその両側に法面を介して広い空間部が存在する場合には、必ずしも立坑を掘削することなく一側方を発進側に、他側方を到達側にすればよい。
【0020】
次いで、発進立坑22と到達立坑23間における軌道20下の地盤24の地下構造物埋設計画域に、地下構造物21を埋設するためのガイド部材となる帯鋼板からなる縁切板2を載置した複数本の断面矩形状の鋼管1を並列状態に埋設することによって地下構造物21と略同幅のパイプルーフPを形成する。
【0021】
本発明は、このパイプルーフPを形成するための上記鋼管1を埋設、施工する際に使用する掘削装置の構造に特徴を有するものであり、この掘削装置は、図1、図2に示すように、一定長さを有する断面矩形状の鋼管1の前端に、この鋼管1と同一断面形状を有し、且つ、開口前端面が斜め方向に切断されて刃口1bに形成されている短い先頭管1aを着脱自在に接続してあり、この鋼管1内に、前端にオーガヘッドよりなる刃先3aを着脱自在に装着しているスクリューコンベアからなるスクリューオーガ3を抜き取り可能に挿入していると共に先頭管1aの開口端部内に前方の地盤の掘削状況を確認するための照明機付きカメラ4と、このカメラ4のレンズ4aを洗浄するための洗浄液噴射ノズル5を装着してなるものである。
【0022】
さらに、鋼管1の一側面における上下部に、等辺山形鋼からなる係合突条6a、6bを互いに平行にしてその水平部の端面を全長に亘って溶接等により固着することにより突設してあり、同様に、この鋼管1の他側面における上下部に、上下一側面側の係合突条6a、6bに係合可能な上下間隔を存して同じく等辺山形鋼からなる係合突条7a、7bを互いに平行にしてその水平部端面を全長に亘って溶接等により固着することにより突設している。この場合、一側面側の係合突条6a、6bにおいては、その水平部に対して直角に屈折している垂直部を互いに対向する方向に向けた状態で固着している一方、他側面側の係合突条7a、7bにおいては、その水平部に対して直角に屈折している垂直部を互いに相反する方向に向けた状態で固着してあり、隣接する鋼管1同士を並列状に連結する際に、一方の鋼管1の一側面側の上下係合突条6a、6bに、他方の鋼管1の他側面側の上下係合突条7a、7bを係合させるように構成している。
【0023】
鋼管1の一側面に互いに平行にして突設している上記上下係合突条6a、6bにおいて、垂直部が下向きになっている上側の係合突条6aの内部、即ち、鋼管1の一側面とこの係合突条6aの水平部及び垂直部とで囲まれた断面逆U字状の空間部によって形成している条溝9内には、上記洗浄液噴射ノズル5に洗浄液を供給するための保護管8が鋼管1の後方側からこの鋼管1の全長に亘って引き抜き撤去可能に収納、配設されてあり、必要に応じて取り外し可能な粘着テープ等を使用して保護管8の適所を条溝9内に保持させている。保護管8は軟質塩化ビニル等の可撓性を有する軟質合成樹脂管からなり、その内部に上記カメラ4に接続したケーブル10を収納している。なお、洗浄液の供給は、保護管8を通じて行うのではなく、保護管8内に洗浄液を供給するホースを挿通して、該ホースを通じて供給することもできる。この場合、保護管8はカメラのケーブルと洗浄液供給ホースとを収納し、これらを土砂による磨耗から保護する機能をする。
【0024】
さらに、条溝9から前方に突出した保護管8の前端部は先頭管1aの一側面後端上部に固定している短い鞘管11内に挿入されて地盤と接触しないように保護されていると共に、鞘管11の開口前端部は先頭管1aの一側面後端部における上部に設けている保護管8の導入孔12に臨ませていて鞘管11の前端から引き出した保護管8の前端部をこの導入孔12を通じて先頭管1a内に導入し、先頭管1a内で保護管8の管壁を貫通して保護管8内から導出したケーブル10の前端を上記カメラ4に接続している一方、保護管8を上記洗浄液噴射ノズル5に連結、連通させている。なお、上記鞘管11の前端開口部から導入孔12に亘って排土カバー13を配設し、この排土カバー13によって保護管8の前端部を被覆、保護している。
【0025】
鋼管1の先頭管1aの開口部内周面における四方内隅部にはフランジ14が内径方向に向かって突設していると共にこれらの下方フランジ部14の突出端面(内端面)によって上記スクリューオーガ3の螺旋羽根の正面形状に略等しい円形孔15を形成してあり、この円形孔15にスクリューオーガ3の刃先3aを前方に向かって臨ませている。また、これらの四方フランジ14における上記保護管8を配設している係合突条6a側のフランジ14に、図3に示すように、上記カメラ4を先頭管1aの開口端中心部に向けて挿通状態で着脱自在に取付けていると共に上記フランジ14におけるカメラ4の下方部に上記洗浄液噴射ノズル5を同じく挿通状態で且つその噴射口をカメラ4の強化ガラス板よりなるレンズ4aの前面に向けた状態にして着脱自在に取付けている。
【0026】
なお、保護管8は鞘管11の後方近傍部において、引張力によって鞘管11側の前部保護管8の後端から分離可能に適宜な接続金具(図示せず)によって接続していると共にケーブル10もその部分で引張力によって鞘管11側のケーブル10から分離可能に適宜な接続金具(図示せず)によって接続している。
【0027】
また、埋設すべき鋼管1の埋設距離が長い場合には、その埋設距離を数分割した長さを有する鋼管1を順次、直列状に継ぎ足すように構成していると共に、保護管8やこの保護管8内に収納しているケーブル10の長さもその分割した鋼管1の長さに略等しい長さにし且つ上記接続金具と同じ接続金具によって継ぎ足し可能に該鋼管1内に挿入、収納している。この場合、分割した各鋼管1の上面にそれぞれの鋼管1の長さに等しい縁切板2が載置されてあり、先頭管1aに接続する最前端側の鋼管1上の縁切板2の前端部のみ、先頭管1aの上面またはこの鋼管1の前端上面に溶接、又はボルト等によって固着する一方、この最前端側の鋼管1に順次、接続する鋼管1上の縁切板2は、互いに溶接によって一体に連結するように構成している。
【0028】
最前端側の上記鋼管1の前端と上記先頭管1aの後端とは互いに着脱可能に接続してあり、その接続構造としては、鋼管1の前端開口部と先頭管1aの後端開口部とにおける四隅部に凹部からなる継手ボックス部16、17を設けて対向する継手ボックス部16、17の開口端に突設しているフランジ部16a 、17a を面接合させ、これらフランジ部16a 、17a 間をボルト・ナット18によって連結、固定した構造としている。
【0029】
このように構成した鋼管1を複数本、軌道20の下方地盤における地下構造物21の上床部埋設位置に並列状に埋設施工してパイプルーフPを形成するには、前端に先頭管1aを装着し且つ上面に縁切板2を載置している鋼管1を発進立坑22側から到達立坑23に向かって軌道20の下方地盤に推進、埋入させる。この際、鋼管1内に配設しているスクリューオーガ3を回転させてその刃先3aにより前方の地盤を掘削し且つその掘削状況をカメラ4によって観察しながら発進立坑22側から該鋼管1の後端面を推進ジャッキ等を使用して推進させる。スクリューオーガ3によって掘削された土砂は、鋼管1内を該スクリューオーガ3の螺旋羽根によって発進立坑22側に搬出、排除される。
【0030】
こうして鋼管1が掘進して先頭管1aと共にその前端部が到達立坑23側に貫通すると、到達立坑23側において縁切板2の前端を該鋼管1の前端から切り離すと共に鋼管1の前端から先頭管1aのボルト・ナット18による接続を解いて該先頭管1aを鋼管1から分離させる。この際、この先頭管1aの一側面上に固定している鞘管11の後方から引き出している保護管8部分を、その部分の接続金具による接続を解くことによって分離させると共にその部分のケーブル10も同様にしてその接続を解いたのち、先頭管1aを鋼管1から取り外すことにより、該先頭管1a内に装着しているカメラ4と洗浄液噴射ノズル5とを先頭管1aと一体的に取り外す。一方、前側の保護管8とケーブル10とから切り離された条溝9内の保護管8は、発進立坑22側に突出している鋼管1の後端側から引き戻すことによって撤去し、次の鋼管1の埋設時に該鋼管1の条溝9内に挿入、収納する。同様に掘削手段であるスクリューオーガ3も鋼管1内から発進立坑22側に引き抜いて撤去し、次の鋼管1の埋設時に該鋼管1内に挿入する。
【0031】
鋼管1の前端から切り離された上記先頭管1aは到達立坑23側から発進立坑22側に転送され、再び、埋設すべき鋼管1の前端にボルト・ナット18によって連結すると共にこの先頭管1aの一側面上の後端上部に固定した上記鞘管11から引き出している前側保護管8の後端と、この保護管8内に収納されている前側ケーブル10の後端とを上記同様にして接続金具によって接続したのち、この鋼管1を上記同様にして発進立坑22側から到達立坑23に向かって掘進、埋設する。なお、保護管やケーブルやホースは鋼管1の外側に付設するようにしているので、保護管8が可撓性を有すれば、必ずしも、継ぎ足し可能な構造にする必要はなく、鋼管1の埋設距離以上の長さであってもよい。
【0032】
埋設すべき鋼管1は、先に埋設した鋼管1の一側面側に突設している上下係合突条6a、6bにその対向側面(他側面)側に突設している上下係合突条7a、7bを係合させ、埋設している上記鋼管1側の上下係合突条6a、6bをガイドとしてこの鋼管1の一側面に沿って上述したように、スクリューオーガ3により前方の地盤を掘削しながら推進、埋設される。この際、埋設すべき鋼管1の一側面、即ち、先に埋設した鋼管1に係合させる他側面側とは反対側の面に突設されている上下係合突条6a、6bのうちの上側係合突条6aによって形成された条溝9内に上述したように保護管8を収納しておき、この保護管8内のケーブル9を発進立坑23側に引き出してモニター(図示せず)に接続し、カメラ4により映し出される先頭管1aの前方地盤の状況を発進立坑23側でモニターで確認する。
【0033】
また、発進立坑23側に引き出されている保護管8の後端に開閉弁19を設けた給水ホース25を接続し、このホース25を給水ポンプ(図示せず)に接続して該ホース25を通じて保護管8に洗浄液である水を供給し、洗浄液噴射ノズル5からカメラ4のレンズ4aに噴射してレンズ4aを洗浄し、掘削中における切羽地盤の状況をカメラ4を通じて鮮明に映し出させるようにする。
【0034】
鋼管1の掘進、埋設中にカメラ4によりその前方地盤に異物、例えば、枕木の木片が存在するのを確認すると、スクリューオーガ3を鋼管1内から発進立坑22側に引き抜き、その刃先3aを木片切削用刃先と交換したのち、再び、鋼管1内に挿入して該刃先により木片を切削、排除する。
【0035】
こうして、複数本の鋼管1を順次、先に埋設した鋼管1の側面に沿って該鋼管1に並列するように軌道20下の地盤中における地下構造物21の上床部埋設計画部分に埋設、施工してパイプルーフPを形成すると共に各鋼管1の上面に載置している縁切板2の後端を発進立坑22側の適宜不動地点に固定して全ての縁切板2を不動にする。なお、到達立坑23側に突出している各鋼管1の前端部上面から、縁切板2の前端を切り離す作業は、全ての鋼管1の埋設によるパイプルーフPの形成後に行ってもよく、或いは、パイプルーフPの形成中に行ってもよい。
【0036】
パイプルーフPの形成後、図4、図5に示すように、既製の地下構造物21の埋設作業に移る。この作業は公知のように、発進立坑22側において、前端開口部にパイプルーフPの下方地盤24を掘削する枠状刃口26を装着してなる上記地下構造物21を設置し、その上床部21a の上面がパイプルーフP上の縁切板2の下面に接するように該上床部21a の前端面をパイプルーフPの後端面に押し付けると共に、この地下構造物21の後端と発進立坑22の後壁面間に複数本の推進ジャッキ27を介在させる。
【0037】
この状態にして推進ジャッキ27のピストンロッドを伸長させると共に地下構造物21の前方地盤を掘削しながら地下構造物21を軌道20下の地盤中に推進、埋設させる。地下構造物21が一定長、推進すると、パイプルーフPを形成している全ての鋼管1がその長さに応じた長さだけ到達立坑23側に押し出されるので、その長さ部分を切断、撤去する。また、地下構造物21が一定長、推進させられる毎に、推進ジャッキ27のピストンロッドを収縮させてその間にスペーサ部材を介在させて再び推進ジャッキ27を伸長させることにより地下構造物21を推進させる。
【0038】
軌道20下に該地下構造物21によって築造すべき地下道の長さが長い場合には、地下道の長さを複数分割した長さを有する地下構造物21を順次、接続かながら推進、埋設させればよい。こうして、縁切板2の下面に沿って軌道20下の地盤中に発進立坑22側から到達立坑23に貫通した地下構造物21を埋設して地下道を構築するものである。なお、以上の実施の形態において、鋼管1の前端に、カメラ4や洗浄液噴射ノズル5を内部に装着した先頭管1aを着脱自在に接続したが、このような先頭管1aを採用することなく、鋼管1の前端部内にカメラ4や洗浄液噴射ノズル5を取り外し可能に装着しておいてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】鋼管の一部を断面した簡略側面図。
【図2】その正面図。
【図3】カメラと洗浄液噴射ノズルを装着した部分の拡大断面図。
【図4】軌道下に地下構造物を埋設している状態の簡略縦断側面図。
【図5】パイプルーフの簡略正面図。
【符号の説明】
【0040】
P パイプルーフ
1 鋼管
1a 先頭管
2 縁切板
3 スクリューオーガ
4 カメラ
5 洗浄液噴射ノズル
6a、6b、7a、7b 係合突条
8 保護管
10 ケーブル
20 軌道
21 地下構造物
22 発進立坑
23 到達立坑

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼管内にその前方地盤を掘削するための掘削手段を配設していると共にこの鋼管の前端部内に掘削状況を観察するためのカメラを装着していることを特徴とする掘削装置。
【請求項2】
鋼管の前端部内にカメラの前面を洗浄するための洗浄液噴射ノズルを装着していることを特徴とする請求項1に記載の掘削装置。
【請求項3】
鋼管は断面矩形状に形成されてあり、この鋼管の両側面における上下部にそれぞれ係合突条を全長に亘って且つ一側面側の上下係合突条と他側面側の上下係合突条とが互いに連結可能な上下間隔を存して平行に突設していると共に一側面側の上下係合突条における一方の係合突条に沿ってカメラに接続したケーブルを収納すると共に洗浄液を供給する保護管を鋼管の後端側から前端部に亘って着脱自在に付設し、この保護管の前端部を鋼管の前端部から鋼管内に導入して該保護管の前端を洗浄液噴射ノズルに、保護管から引き出したケーブルをカメラに接続していることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の掘削装置。
【請求項4】
鋼管は断面矩形状に形成されてあり、この鋼管の両側面における上下部にそれぞれ係合突条を全長に亘って且つ一側面側の上下係合突条と他側面側の上下係合突条とが互いに連結可能な上下間隔を存して平行に突設していると共に一側面側の上下係合突条における一方の係合突条に沿ってカメラに接続したケーブルと洗浄液を供給するホースとを収納した保護管を鋼管の後端側から前端部に亘って着脱自在に付設し、この保護管の前端部を鋼管の前端部から鋼管内に導入して、該保護管から引き出した洗浄液を供給するホースを洗浄液噴射ノズルに接続すると共に該保護管から引き出したケーブルをカメラに接続することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の掘削装置。
【請求項5】
鋼管の前端に先頭管を着脱自在に接続していると共にこの先頭管の開口部内にカメラと洗浄液噴射ノズルとを装着してあり、さらに、カメラに接続しているケーブルと洗浄液噴射ノズルに接続している保護管とを先頭管の後端と鋼管の前端との接続部分で切り離し可能に接続していることを特徴とする請求項1、請求項2又は請求項3に記載の掘削装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−104743(P2006−104743A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−291832(P2004−291832)
【出願日】平成16年10月4日(2004.10.4)
【出願人】(000140292)株式会社奥村組 (469)
【Fターム(参考)】