説明

採暖装置

【課題】電磁波遮蔽性を有し、且つ、その保温性能によって電気毛布等の発熱体に対する通電時間を短縮できる採暖装置を提供すること。
【解決手段】通電によって発熱する発熱体300と、発熱体300に重ねて使用される蓄熱シート100とを備える採暖装置であって、蓄熱シート100は、袋体とその内部に封入された含水ゲルとを備えることを特徴とする。蓄熱シート100を設けたので、発熱体300への通電を停止した後でも、所定時間は暖かさが保持されるので、電磁波の影響を受けずに採暖でき、且つ通電時間を短縮できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気毛布、電気カーペット、電気座布団、電気あんか、電気足温器、導電層を備える面状発熱体等の発熱体と、含水ゲルを含有する蓄熱シートとを備える採暖装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記発熱体は、使用時に通電して加温されるものである。その通電時には電磁波も発生するが、近年、電磁波による人体への悪影響が問題となってきている。そこで、電化製品が発する電磁波を有効に遮蔽若しくは遮断する技術の開発が急がれている。
【0003】
例えば特許文献1には、炭素又は炭素繊維が混入されたシート状物を備えた採暖装置用のシート構造物が開示されている。当該シート状物は、不織布、紙、布又は織物に、炭素又は炭素繊維を含有させて構成するか、あるいは炭素繊維のみを原料として製造された不織布や紙である。炭素又は炭素繊維は、電磁波をシールドするという効果を示すとともに、採暖装置の発熱体から熱を受け取り、遠赤外線を放出して保温効果を向上させるという効果も示す。
【0004】
一方、現代社会においては、省エネルギーの要請も強い。このような観点から、特許文献2には、使用温度範囲で液体又は半流動体である蓄熱剤(蓄冷剤)が袋体に封入されてなる蓄熱/蓄冷シートであって、蓄熱剤(蓄冷剤)が可撓性を有する網目状支持構造体(例えば吸液性ポリマーシートやハニカム構造体)で保持されて封入されているものが開示されている。この蓄熱/蓄冷シートは、面状発熱体である導電材印刷体と共に使用される。この蓄熱/蓄冷シートを使用すると、例えば自動車等においてエンジン運転中に面状発熱体を発熱させ、その熱を蓄熱/蓄冷シートに蓄えておくことで、エンジン停止後に所定時間が経過しても、蓄熱/蓄冷シートによる温め(与熱)効果が得られるというものである。
【0005】
【特許文献1】特開2001−99432
【特許文献2】特開2000−325384
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載のシート構造物は、電磁波の遮蔽性を主たる目的として開発されたものである。そのため、発熱体への通電停止後の保温性能は十分であるとはいえない。また、当該シート構造物中のシート状物は、不織布、紙、布又は織物製であるため、クッション性能を有しない。
【0007】
一方、特許文献2に記載の蓄熱/蓄冷シートは、保温(保冷)性を主たる目的として開発されたものであり、その開発に際し、電磁波遮蔽性は考慮されていない。
【0008】
本発明の目的は、例えば電気毛布等の機能を有する採暖装置であって、電磁波遮蔽性を有し、且つ、蓄熱シートの保温性能によって電気毛布等の発熱体に対する通電時間を短縮できる採暖装置を提供することにある。
【0009】
本発明の他の目的は、上記性質に加えて、クッション性や低反発性をも併せ持つ採暖装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討し、下記の本発明を完成させた。
【0011】
即ち、本発明は、通電によって発熱する発熱体と、当該発熱体に重ねて使用される蓄熱シートとを備える採暖装置であって、前記蓄熱シートは、袋体とその内部に封入された含水ゲルとを備えることを特徴とする採暖装置に関する。
【0012】
本発明の採暖装置は、更に断熱シートを有するか、又は、前記発熱体がその一方の面に断熱層を有するものであってよい。
【0013】
発熱体には、面状発熱体が包含される。発熱体が面状発熱体である場合、前記断熱シートや断熱層は、その蓄熱シートに対向しない面に配される。
【0014】
面状発熱体には、ワイヤーヒーターで発熱されるものや、電極に結合されている導電層によって発熱されるものが包含される。ワイヤーヒーターによって発熱される面状発熱体の具体例としては、電気毛布、電気カーペット、電気座布団等が挙げられる。また、電極に結合されている導電層によって発熱される面状発熱体の具体例としては、座席シートが挙げられる。
【0015】
当該面状発熱体は、ワイヤーヒーター又は導電層の中、最も外周のものに囲まれて形成される部分の面積が、蓄熱シートの含水ゲルの層の面積の60%以上であるものが好ましい。また、当該面状発熱体は、ワイヤーヒーターの中、最も外周のものに囲まれて形成される部分の面積が、0.2乃至1.5mであるものが好ましい。
【0016】
蓄熱シートは、「発熱体に重ねて使用される」が、これは、発熱体と蓄熱シートとが直接接触している場合にのみ限定する趣旨ではない。例えば、発熱体である電気毛布が包布で被覆されており、その包布で被覆された電気毛布(発熱体)に、蓄熱シートが重ねて使用される場合をも包含するものである。また、蓄熱シートと発熱体とが、別体の保護カバーで被覆されていてもよい。
【0017】
袋体は、柔軟性を有する。そのため、各種ポリマーシートで構成されていたり、複層構造の場合には、その少なくとも一層がポリマーシートで構成されていることが好ましい。
【0018】
また、袋体は、その両面の各々に、JIS Z0208(カップ法;40℃;90%RH)における透湿度が30g/m・24時間以下の水蒸気バリア性シート層を有するものであることが好ましい。
【0019】
含水ゲルの水分含有率は、10乃至99.9重量%であることが好ましい。
【0020】
含水ゲルが、さらに、電磁波遮蔽性を有する物質を、含水ゲル全量を基準として2乃至10重量%含有することが好ましい。
【0021】
発熱体が電気毛布である場合は特に、含水ゲルが、下記の条件で測定して10乃至3,000gのゼリー強度を有することが好ましい:
(ゼリー強度測定条件)
測定器: 圧縮型物性測定器
測定雰囲気条件: 20℃、65%RH
圧縮形状及び面積: 直径30mmの円、7.065cm
圧縮量(変位量): 2mm
圧縮速度: 1mm/秒
測定試料の大きさ: 5cm×5cm×6mm(厚さ)。
【0022】
ゼリー強度10乃至3,000gは、例えば、含水ゲルがポリアクリル酸類の架橋物を含有するものである場合には、含水ゲルを、含水ゲル調製用組成物全量を基準として、ポリアクリル酸類の量は1乃至10重量%であり、架橋剤の量は0.01乃至0.5重量%であり、架橋遅延剤の量は0.02乃至0.2重量%であり、水の量は50乃至95重量%である組成物から調製することによって実現される。
【0023】
発熱体が電気カーペットや電気座布団である場合は特に、含水ゲルが、上記の条件で測定して400乃至5,000gのゼリー強度を有することが好ましい。
【0024】
ゼリー強度400乃至5,000gは、例えば、含水ゲルがポリアクリル酸類の架橋物を含有するものである場合には、含水ゲルを、含水ゲル調製用組成物全量を基準として、ポリアクリル酸類の量は3乃至8重量%であり、架橋剤の量は0.06乃至2.0重量%であり、架橋遅延剤の量は0.02乃至0.5重量%であり、水の量は50乃至95重量%である組成物から調製することによって実現される。
【発明の効果】
【0025】
本発明の採暖装置には、蓄熱シートが備えられているため、本発明の採暖装置を使用すれば、発熱体への通電を停止した後でも、所定時間は温かさが保持される。従って、発熱体への通電時間が短縮され、省エネルギーに貢献する。
【0026】
通電停止後には、発熱体から電磁波は発生しない。本発明の採暖装置は、通電停止後も使用可能であり、従って、本発明の採暖装置により、電磁波の悪影響を受けずに採暖することが可能となる。
【0027】
また、本発明の採暖装置には、電磁波遮蔽性能を有する蓄熱シートが備えられている。従って、本発明の採暖装置を発熱体に通電しつつ使用しても、電磁波の悪影響は受け難い。
【0028】
本発明の採暖装置における蓄熱シートは、加温しない場合には冷感を与え得るものである。即ち、本発明の採暖装置を、夏季等において発熱体に通電しないで使用すれば、冷んやり感が得られる。従って、夏季等において、例えば敷布団の上に本発明の採暖装置を敷いて就寝したり、本発明の採暖装置をカーペットとして使用すれば、冷房装置の使用を省略又はその使用時間を低減できる。よって、この観点からも、本発明の採暖装置は省エネルギーに寄与する。
【0029】
本発明の採暖装置の中で、蓄熱シートがクッション性や低反発性を有するものは、例えばそれを敷布団の上に敷いて用いることにより、就寝時に体圧が分散される。それにより、人体疲労が軽減され、快適に過ごすことができる。より具体的には、腰痛の改善等の効果も得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下に、本発明を、その実施のための最良の形態に基づいて説明する。先ず、本発明の採暖装置の一例を、図面に基づいて説明する。図1は、本発明の採暖装置の一例を示す斜視図であり、図2は、そのx−x線における断面図である。
【0031】
本発明の採暖装置1,000においては、通電によって発熱する発熱体である、温度のコントローラー20とコード30とを有する電気敷毛布300の上に、蓄熱シート100が重ねられている。蓄熱シート100は、面1,3からなる袋体10とその内部に封入された含水ゲル5とを備える。
【0032】
本発明の採暖装置1,000において、蓄熱シート100は、電気敷毛布300の上に載置されているのみでもよいし、電気敷毛布300に粘着剤等によって結合されていてもよい。あるいは、蓄熱シート100と電気敷毛布300との間に、敷布等の介在物があってもよい。
【0033】
ここで、「通電によって発熱する発熱体」とは、発熱することによってその製品の使用目的が果たされる電化製品、具体的には、電気毛布、電気カーペット、電気座布団、電気あんか、電気足温器等をいう。このような発熱体には、ワイヤーヒーターによって発熱する面状発熱体が包含される。ワイヤーヒーターによって発熱する面状発熱体の具体例としては、電気毛布、電気カーペット、電気座布団等が挙げられる。
【0034】
また、「通電によって発熱する発熱体」には、電極に結合されている導電層を備える面状発熱体も包含される。このような面状発熱体の具体例としては、トラック等の自動車のバッテリーと通電させて使用される座席シートが挙げられる。
【0035】
上記した発熱体の構成は、通常の製品の構成に準ずる。電気カーペットの構成は、例えば、不織布層にコード状のヒーター線(即ち、ワイヤーヒーター)が折り返して埋設されており、当該不織布層の一方の面上にはカバーが、他方の面上には断熱材が配されているというものである。なお、カバーは、別体であってもよい。また、電気毛布の構成は、例えば、二枚のフェルト地の間にコード状のヒーター線が折り返して配設されているというものである。
【0036】
自動車のバッテリーと通電させて使用される座席シートの構成は、例えば特開平9−161958号に導電材印刷体として記載されている。具体的には、ポリマーシート等のシート状基板(シート状)上に、印刷によって形成された導電層が設けられており、その導電層の端縁には電極が積層されており、その電極にはリード線がはんだ付けされており、導電層や電極は、ポリマー製被覆板で覆われているというものである。この座席シートの電極には、リード線が自動車のバッテリーと接続されることによって通電され、その結果として導電層が加温される。
【0037】
ここで、発熱体が電気毛布である場合、通常の電気毛布は、上半身に対応する部分にはヒーター線が配設されていない。しかし、本発明の採暖装置の発熱体として使用される電気毛布は、例えば図3に示す電気敷毛布300のように、上半身に対応する部分にもワイヤーヒーター50が配設されてなるものであることが好ましい。蓄熱シートを温めないと、むしろ冷感を与えてしまうので、蓄熱シートの含水ゲル全体が温まるように、発熱体である電気敷毛布300は、上半身に対応する部分にも、ワイヤーヒーター50が存在するものであることが好ましいのである。あるいは、同様の理由により、蓄熱シートの含水ゲル層と対向する部分の大部分には、ワイヤーヒーターや導電層が配設されている面状発熱体を用いることが好ましい。
【0038】
なお、図3に示す電気敷毛布300において、ワイヤーヒーター50の中、その最外周のものに囲まれて形成される部分の面積sは、次の計算式に示すように、電気敷毛布300の一平面の面積tの約70%である:
(732×1125)÷(900×1300)×100=70.4。
【0039】
上記面積sは、上記面積tの65乃至95%であることが好ましい。
【0040】
あるいは、面状発熱体におけるワイヤーヒーターや導電層の中、その最外周のものに囲まれて形成される部分の面積sは、面状発熱体と重ねて使用される蓄熱シートの含水ゲルの層の面積gの60%以上であることが好ましく、70乃至130%であることがさらにこのましく、80乃至120%であることがさらにより好ましく、90乃至110%であることが特に好ましい。これにより、蓄熱シートの含水ゲル全体が発熱体によって暖められ、また、発熱体が発する電磁波の影響も小さなものとなる。なお、面積sは、0.2乃至1.5mであることが好ましい。例えば、発熱体が電気座布団である場合には、面積sは0.2乃至0.25m程度であり、電気毛布や電気カーペットの一単位(大きな電気カーペットは、部分的に温められるように、全体に1本のワイヤーヒーターが張り巡らされているのではなく、ワイヤーヒーターが2以上の単位に分割されていることがある)で1.2乃至1.5m程度となっていることが好ましい。
【0041】
熱効率及び保温性能を高め、省エネルギーに貢献するためには、発熱体、特に面状発熱体は、断熱層を有することが好ましい。当該断熱層は、発熱体の蓄熱シートとは対向しない側に形成される。あるいは、本発明の採暖装置が、発熱体及び蓄熱シートに加え、断熱シートを有することが好ましい。この断熱シートは、例えば面状発熱体の蓄熱シートとは対向しない側に配置して使用される。
【0042】
断熱層や断熱シートを形成する断熱材の例としては、アルミニウム、銀、銅等の金属箔が貼付された、又は、アルミニウム、銀、銅等の金属が蒸着された、発泡ポリエチレン、発泡ポリウレタン、ポリエチレンテレフタレート製のシートや板が挙げられる。この断熱材の向きは、特に限定されないが、金属箔や蒸着層が発熱体と対向しない側にくるように配されることが好ましい。また、耐久性の観点から、金属箔や蒸着層の上に、ポリマーシート層等の被覆層があってもよい。
【0043】
次に、本発明に係る蓄熱シートについて説明する。
【0044】
図4は、本発明に係る蓄熱シートの一例を示す断面図である。蓄熱シート100は、袋体10と、その内部に封入された含水ゲル5とを備える。袋体10は、柔軟性を有する。ここで、「柔軟性を有する」とは、力を加えることによって折り曲げや折り畳みが可能であり、且つ、その力を開放し又は折り畳んだものを開くことにより、ほぼ元に戻すことができるという性質を有していることをいう。袋体10は、一方の面1と他方の面3とを有する。
【0045】
袋体10の面1,3を構成する材料の組み合わせ例は、次のとおりである。
(1)面1,3のいずれもが、水蒸気バリア性シート層;
(2)面1が水蒸気バリア性シート層(内側;含水ゲル5と接触する側)と繊維層(外側)との複合層であり、面3が水蒸気バリア性シート層;
(3)面1,3のいずれもが、水蒸気バリア性シート層(内側;含水ゲル5と接触する側)と繊維層(外側)との複合層;
(4)面1が繊維層(内側;含水ゲル5と接触する側)と水蒸気バリア性シート層(外側)との複合層であり、面3が水蒸気バリア性シート層;
(5)面1,3のいずれもが、繊維層(内側;含水ゲル5と接触する側)と水蒸気バリア性シート層(外側)との複合層;
(6)面1が繊維層(内側;含水ゲル5接触する側)、水蒸気バリア性シート層(中間)及び繊維層(外側)の複合層であり、面3が水蒸気バリア性シート層;
(7)面1が繊維層(内側;含水ゲル5接触する側)、水蒸気バリア性シート層(中間)及び繊維層(外側)の複合層であり、面3が繊維層(内側;含水ゲル5接触する側)と水蒸気バリア性シート層との複合層;及び
(8)面1,3のいずれもが、繊維層(内側;含水ゲル5接触する側)、水蒸気バリア性シート層(中間)及び繊維層(外側)の複合層。
【0046】
袋体10の一方の面1及び/又は他方の面3が複合層である場合、その複合層を構成する各層は、互いに全面にわたって接着又は融着されていてもよいし、外周部(袋体10の縁の部分)のみが接着又は融着されていてもよいし、或いは、外周部(袋体10の縁の部分)は全面的接着又は融着され、その他の部分は部分的に接着又は融着されていてもよい。
【0047】
なお、水蒸気バリア性シート層を用いない場合には特に、各層は、互いに全面にわたって接着又は融着されていることが好ましい。接着剤により、又は融着することで、面1,3の水蒸気透過率が低減され得るからである。
【0048】
袋体10の一方の面1及び/又は他方の面3を構成する材料として、繊維層が使用されている場合、被加熱体(例えばヒトの皮膚)への熱伝導が穏やかである。また、繊維層が内側(含水ゲル5と接触する側)に配されている場合には、含水ゲル5が繊維層に接着し、ずれ難い。
【0049】
本発明の蓄熱シートの袋体は、その両面の各々が、JIS Z0208(カップ法;40℃;90%RH)で測定して、30g/m・24時間以下の透湿度を示すことが好ましい。このような透湿度を実現するために、袋体の両面の各々に、JIS Z0208(カップ法;40℃;90%RH)における透湿度が30g/m・24時間以下の水蒸気バリア性シート層を配することが好ましい。袋体の両面各々の、或いは水蒸気バリア性シート層の透湿度は、20g/m・24時間以下であることが好ましく、10g/m・24時間以下であることがさらに好ましく、8g/m・24時間以下であることがさらにより好ましく、5g/m・24時間以下であることが特に好ましく、ほぼ0g/m・24時間であることが最も好ましい。
【0050】
JIS Z0208(カップ法)の実施にあたり、水蒸気バリア性シートは、含水ゲルに対向する側を上(外側、塩化カルシウムのない方)とする。これにより、含水ゲルから外部に向かっての水及び/又は水蒸気の揮散量が特定される。
【0051】
水蒸気バリア性シート層の厚さは、使用に適する柔軟性を有し且つ必要な強度を示す限り、特に限定されないが、通常は100μm以下、好ましくは10〜70μm、更に好ましくは20〜50μm、特に好ましくは25〜45μmである。
【0052】
水蒸気バリア性シート層がポリマーシートで構成される場合、その原料であるポリマーとして、透湿度の小さいポリマーシートを提供する、ポリ塩化ビニリデン系樹脂類、線状低密度ポリエチレン、ポリエステル類、ポリ塩化ビニル類及びポリアミド類からなる群から選択される一種以上のポリマーを用いるか、及び/又は、ポリマーに水蒸気バリア性付与剤を添加してポリマーシートを製造する。ここで、ポリ塩化ビニリデン系樹脂類の概念には、塩化ビニリデン単独重合体のみならず、塩化ビニリデンと他の単量体との共重合体も包含され、一般的には、加工の容易性から、共重合体が使用される。また、水蒸気バリア性付与剤としては、脂肪酸アミド、ビス脂肪酸アミド、パラフィンロウ、カルナバロウ、モンタンロウ、ポリエチレン系ロウ、石油樹脂等が例示される。
【0053】
水蒸気バリア性シート層を構成するポリマーシートは、ポリマーのみで構成されていてもよく、また、上記の水蒸気バリア性付与剤をはじめとする各種添加剤を含有していてもよい。各種添加剤の例としては、可塑剤、熱安定剤等の安定剤、抗酸化剤、滑剤、分散助剤、紫外線吸収剤、界面活性剤等が挙げられる。
【0054】
水蒸気バリア性シート層を構成するポリマーシートは、通常の方法で製造することができる。例えばポリ塩化ビニリデン系樹脂や線状低密度ポリエチレンを主たる構成ポリマーとするポリマーシートの製造は、ポリマーと各種添加剤とを含有するコンパウンドを用い、溶融押出し成形と一軸又は二軸延伸とを行う。なお、このようなポリマーシートの製造方法に関しては、特開2003−26882、特開2003−192861及び特開2004−202752等を参照されたい。
【0055】
水蒸気バリア性シート層は、単層に限定されず、異なる材質の2層以上のポリマーシートが融着又は接着されてなる複層構造のものであってもよい。このような複層構造の水蒸気バリア性シートの構成は、使用上問題のない柔軟性や強度を有する限り、特に限定されない。例として、複数の層の中の少なくとも一層が、低い透湿度を示すポリ塩化ビニリデン系樹脂又は線状低密度ポリエチレンを主成分とするものであるものが挙げられる。この場合、他の層の主成分であるポリマーの例としては、強度に優れるポリエチレンテレフタレート(PET)、各種ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド等が挙げられる。その他、PET以外のポリエステル類、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリアセタール、ポリビニルアルコール、ポリスチレン等のポリマーも、ポリマーシートの材料として使用することが出来る。
【0056】
なお、ポリ塩化ビニリデン系のポリマーシートは、他の材質のポリマーシートとの接着性が乏しい傾向にあるので、他の材質のポリマーシートと積層させて複層構造とする場合には、ポリ塩化ビニリデン系ポリマーシートの表面であって、他のポリマーシートと対向する面を、コロナ処理することが好ましい。
【0057】
水蒸気バリア性シート層は、ポリマーシート以外のものを含んでいてもよい。一例を挙げると、ポリマーシートと、金属箔とが積層されてなるものがある。このような金属箔を含む水蒸気バリア性シート層は、透湿度(JIS Z0208;カップ法;40℃;90%RH)がほぼ0g/m・24時間である。また、金属箔を構成する金属の種類としては、アルミニウム、金、銀、銅、鉄、ニッケル、パラジウム、プラチナ等及びこれらの合金が挙げられる。このような金属箔を有する水蒸気バリア性シート層は、電磁波遮蔽性も示す。なお、金属箔の厚さは、特に限定されないが、10nm乃至500μm程度が好ましい。金属箔が厚くなると柔軟性が低下することを考慮し、その厚さを選択する。
【0058】
ポリマーシートと金属箔とが積層されてなる水蒸気バリア性シート層において、金属箔が最外層を構成してもよいが、水蒸気バリア性シート層と繊維層等の他の層との接着の観点からは、最外層はポリマーシートであること、例えば図5に示すように、ポリマーシート61,63が金属箔65を挟む構造が好ましい。
【0059】
ポリマーシート以外のものを含んでいる水蒸気バリア性シート層の他の例としては、金属系又は無機物蒸着層を外側の少なくとも一方に有するポリマーシートが挙げられる。例えば図6に示すように、ポリマーシート71の一方の面に、金属系又は無機物蒸着層75を有する金属系又は無機物蒸着ポリマーシート70である。このような構成の水蒸気バリア性シート層は、その透湿度(JIS Z0208;カップ法;40℃;90%RH)が、0g/m・24時間にかなり近い。
【0060】
ここで、蒸着される金属系物質の例としては、金、銀、銅、パラジウム、プラチナ、アルミニウム、ニッケル、鉄、スズやこれらの合金(例えば銀−パラジウム合金)、これらの酸化物(例えば酸化アルミニウム、酸化スズ、酸化インジウムスズ、酸化アンチモンスズ)が挙げられる。また、蒸着される無機物としては、セラミック、シリカ等が挙げられる。金属を蒸着させた場合、水蒸気バリア性シート層は、電磁波遮蔽性をも示す。
【0061】
蒸着層の厚さは、水蒸気バリア性シート層が所望の透湿度を示すように、また、水蒸気バリア性シート層の柔軟性が著しく低下することがないように、通常は1乃至100nm程度である。また、蒸着層の作製方法は限定されず、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、化学蒸着法、プラズマ化学蒸着法等を適用すればよい。
【0062】
例えば、袋体10の面3として、金属系蒸着ポリマーシート70を金属系蒸着層75が外側(含水ゲルと接触しない側)に配置されるように用い、そして、製造された蓄熱シートが人体と接するように、また、蓄熱シートの金属系蒸着層75が電気毛布等の発熱体と対向するような配置で、本発明の採暖装置を構成すると、電気毛布から発せられる電磁波を金属系蒸着層75が遮蔽し、電磁波の人体への到達が大きく減衰される。
【0063】
なお、本明細書において、「ポリマーシート」という用語は、「ポリマーシート」のみならず、「ポリマーフィルム」をも包含する意味で使用されている。
【0064】
本発明の蓄熱シートの袋体に使用される繊維層は、例えば、不織布、織布、編物及び紙からなる群から選択される一種以上で構成されている。これらの繊維層は、特に袋体の最外層に使用される場合には、防黴剤が付着されていることが好ましい。
【0065】
繊維層が不織布製である場合、その素材は、例えば、レーヨン、ナイロン、ポリエステル、アクリル、ポリプロピレン、ビニロン、ポリエチレン、ウレタン、木綿、セルロース等であり、その厚さは、通常は20g/m乃至150g/m、好ましくは30g/m乃至100g/m、さらに好ましくは40g/m乃至70g/mである。また、不織布の種類としては、メルトブロー不織布、スパンボンド不織布、スパンニードル不織布、スパンレース不織布等が挙げられるが、本発明ではいずれも使用することができる。
【0066】
含水ゲル層と接触する不織布、即ち水蒸気バリア性シート層等のポリマーシート層の内側に配される不織布に関しては、その素材は、レーヨン、ナイロン、ポリエステル又は木綿が好ましく、ポリエステルが特に好ましい。また、不織布の種類としては、スパンレース不織布、スパンニードル不織布又はスパンボンド不織布が好ましく、スパンレース不織布が特に好ましい。
【0067】
繊維層が織布製である場合、その素材は、例えば、綿、レーヨン、ポリエステル、ポリプロピレン、ナイロン、アクリル等であり、その厚さは、通常は50g/m乃至150g/m、好ましくは60g/m乃至120g/m、さらに好ましくは70g/m乃至100g/mである。繊維層が編物製である場合、その素材は、例えば、レーヨン、ポリエステル、ポリプロピレン、ナイロン、アクリル等であり、その厚さは、通常は80g/m乃至200g/m、好ましくは100g/m乃至180g/m、さらに好ましくは120g/m乃至150g/mである。
【0068】
袋体の最外層に使用される繊維層に使用される防黴剤として、トリアゾール系防黴剤、ピリチオン系防黴剤、ベンズイミダゾール系防黴剤、ベンズチアゾール系防黴剤、イソチアゾリン系防黴剤、及びチアベンダゾール系防黴剤からなる群から選択される1種以上が好ましく、また、防黴剤は、少なくとも繊維層の両面に付着されていることが好ましく、且つ、その使用量は、0.1乃至40g/mであることが好ましい。
【0069】
トリアゾール系防黴剤の例としては、2−(4−クロロフェニル)−3−シクロプロピル−1−(1H−1,2,4−トリアゾール−イル)−ブタン−2−オール、カルボキシベンゾトリアゾール、{1−(4−クロロフェノキシ)−3,3−ジメチル−1−(1,2,4−トリアゾール)−1−イル}ブタン−2−オン等がある。ピリチオン系防黴剤の例としては、2−ピリジンチオール−1−オキサイドのナトリウム塩や亜鉛塩等がある。ベンズイミダゾール系防黴剤の例としては、2−(4−チアゾリル)ベンズイミダゾール、2−(カルボメトキシアミノ)ベンズイミダゾール、2−ベンズイミダゾールカルバミン酸メチル、1−ブチルカルバモイル−2−ベンズイミダゾールカルバミン酸メチル、6−ベンゾイル−2−ベンズイミダゾールカルバミン酸メチル、6−(2−チオフェンカルボニル)−2−ベンズイミダゾールカルバミン酸メチル、2−チオシアノメチルチオベンズイミダゾール、1−ジメチルアミノスルフォニル−2−シアノ−4−ブロモ−6−トリフルオロメチルベンズイミダゾール、2−(2−クロロフェニル)ベンズイミダゾール、2−(1−(3,5−ジメチルピラゾリル)ベンズイミダゾール、2−(2−フリル)ベンズイミダゾール、パーベンダゾール、5,6−ジクロロ−1−フェノキシカルボニル−2−トリフルオロメチルベンズイミダゾール、4,5,6,7−テトラクロロ−2−トリフルオロメチルベンズイミダゾール等がある。
【0070】
ベンズチアゾール系防黴剤の例としては、2−(4−チオシアノメチルチオ)ベンズチアゾール、2−メルカプトベンズチアゾールのナトリウム塩、2−メルカプトベンズチアゾールの亜鉛塩、2−(チオシアノメチルスルホニル)ベンズチアゾール等がある。イソチアゾリン系防黴剤の例としては、2−(n−オクチル)−4−イソチアゾリン−3−オン、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン、5−クロロー2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、4,5−ジクロロ−2−シクロヘキシル−4−イソチアゾリン−3−オン等がある。また、チアベンダゾール系防黴剤の例としては、チアベンダゾール等がある。
【0071】
上記防黴剤は、いずれも皮膚への刺激が少ないという特徴を有する。上記の中で、トリアゾール系防黴剤、ピリチオン系防黴剤、ベンズチアゾール系防黴剤、イソチアゾリン系防黴剤、及びチアベンダゾール系防黴剤からなる群から選択される1種以上の防黴剤を使用することが好ましく、トリアゾール系防黴剤を含む1種以上の防黴剤を使用することが特に好ましい。
【0072】
防黴剤が、「少なくとも繊維層の両面に付着されている」とは、防黴剤を例えば印刷や塗工で繊維層を構成する織布や不織布に付与した場合には、その織布や不織布の表面と裏面の両方に防黴剤が存在することを意味する。従って、この「少なくとも両面」の概念には、例えば布を防黴剤の入った液体に浸漬して乾燥した場合のような、繊維層全体に防黴剤が存在する場合を包含する。
【0073】
防黴剤の量は、0.1乃至40g/mであり、好ましくは1乃至40g/mであり、さらに好ましくは2乃至20g/mであり、さらにより好ましくは4乃至10g/mであり、最も好ましくは6乃至8g/mである。
【0074】
繊維層である織布や不織布への防黴剤の付着方法は、特に限定されない。例を挙げると、防黴剤を含有する溶液(バインダーを含有していてもよい)に織布等を浸漬させ、絞り、乾燥させて溶媒を気散させる方法、(2)防黴剤とバインダーとを含有する液体を用いた印刷、(3)防黴剤とバインダーとを含有する液体の塗布、(4)防黴剤を含有する溶液(バインダーを含有していてもよい)を織布等に噴霧し、乾燥させて溶媒を気散させる方法等がある。なお、後記するように、バインダーがモノマーである場合には、上記の方法の各々において、乾燥工程として又は別途の工程として加熱工程を加え、モノマーを重合させる。また、防黴剤の付着の際に、顔料を併用してもよい。
【0075】
防黴剤を繊維層に確実に定着させるためには、防黴剤とバインダーとを含有する液体を用いることが好ましい。ここで、バインダーとして使用される物質は、水溶性又は水不溶性のモノマー、ポリマー、樹脂である。例えば、防黴剤が水溶性である場合には、その水溶液を調製するが、その際に水溶性又は水分散性のモノマー、ポリマー又は樹脂も用いる。また、防黴剤が水不溶性である場合には、その防黴剤を水に分散させたり、その防黴剤を溶解できるアルコール等の有機溶媒を用いるが、その際に、モノマー、ポリマー又は樹脂も用いる。
【0076】
上記水溶性又は水分散性のポリマーや樹脂の例としては、ポリビニルアルコール、セルロース系化合物(具体的には、天然セルロースに、硫酸化、リン酸化、硝酸化、カルボキシメチル化、カルボキシプロピル化、ヒドロキシエチル化等の化学処理を施したもの)、及びデンプン系化合物(具体的には、リン酸エステル化デンプン、エーテル化デンプン、カルボキシメチル化デンプン、ヒドロキシエチル化デンプン等)がある。上記有機溶媒に溶解又は分散するポリマーや樹脂の例としては、ウレタン系高分子化合物、スチレン−ブタジエン系高分子化合物及びアクリル系高分子化合物がある。
【0077】
自己架橋により高分子化合物となるモノマーの使用が好ましい。そのようなモノマーを含む溶液やエマルジョンに、防黴剤を加え、得られた溶液やエマルジョンを繊維層に付与した後、加熱してモノマーの重合を行わせる。そのようなモノマーから得られた高分子化合物は、繊維層に強く結合し、その結果、防黴剤を繊維層にきちんと付着させることとなり、よって、防黴剤の耐久性が高まるからである。溶液重合に適するものとしては、アクリルモノマーと重合開始剤とを含有するものが、また、エマルジョン重合に適するものとしては、耐溶剤性・耐磨耗性アクリルエマルジョン、高耐候性アクリルシリコンエマルジョン、コロイド安定型微粒子性アクリルシリコンエマルジョン、常温一液架橋型性アクリルエマルジョン、アルカリ硬化型カチオン微粒子アクリルシリコン、ハイブリッドアクリルエポキシエマルジョン等が知られている。
【0078】
防黴剤及びバインダーを含有する溶液又は分散液中の防黴剤の濃度は、好ましくは0.1乃至50重量%、さらに好ましくは1乃至40重量%、さらにより好ましくは2乃至30重量%である。また、バインダーの濃度は、好ましくは2乃至30重量%、さらに好ましくは4乃至20重量%、さらにより好ましくは6乃至15重量%である。
【0079】
例えば図4に示される蓄熱シート100において、袋体10の一方の面1及び/又は他方の面3がポリマーシートと不織布とで構成されている場合、ポリマーシートの不織布と接触する面は、コロナ処理されていることが好ましい。また、ポリマーシートと不織布とは、ドライ・ラミネーション法、ホット・メルト接着法又は押出しサンドイッチ・ラミネーション法によって接着されていることが好ましい。このような構成であると、ポリマーシートと不織布とが、剥離することなくきちんと接着される。なお、ドライ・ラミネーションでは、ポリマーシートに有機溶剤に溶かした接着剤や水エマルジョン型の接着剤を塗布し、溶媒を熱風で蒸発させた後、不織布をラミネートする。
【0080】
袋体10の面1,3を構成する層の中、含水ゲル5と接触している二層の外周部、即ち四周は、含水ゲル5が露出しないように処理されていればよく、従って、接着剤で接着されていてもよいし、熱等によって融着されていてもよい。
【0081】
含水ゲル5は、ポリマーや樹脂が、水を円滑且つ大量に吸収してゲル化したものである。含水ゲルを構成するポリマーとしては、ポリアクリル酸類、ビニルポリマー類、ウレタンポリマー類、アガロース、がラクトース、コラーゲン、マンノース等がある。含水ゲルは、好ましくは高分子ゲルである。「高分子ゲル」とは、高分子が架橋されることによって三次元的な網目構造を形成し、その内部に溶媒(含水ゲルの場合は主として水)を吸収して膨潤したものである。
【0082】
高分子ゲルは、モノマーやポリマーを、水その他の成分の存在下で架橋剤で架橋して形成される。高分子ゲルの形成に使用されるモノマーの例としては、ビニルモノマーが挙げられ、これは、ジビニル化合物(例えばN,N´−メチレンビスアクリルアミドやエチレングリコールジメタクリレート)を架橋剤として、反応開始剤(例えばアゾビスイソブチロニトリル、過酸化ベンゾイル、過硫酸塩)の存在下で、要すれば反応促進剤(例えばテトラメチルエチレンジアミン)を添加して、網目構造体を形成させる。また、高分子ゲルの形成に使用されるモノマー/ポリマーの例としては、アクリル酸類/ポリアクリル酸類が挙げられる。ポリアクリル酸類の例としては、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸の塩、ポリアクリル酸部分中和物(アクリル酸とアクリル酸塩との共重合体)、ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸の塩及びメタクリル酸部分中和物(メタアクリル酸とメタアクリル酸塩との共重合体)を挙げることができる。また、塩の具体例としては、ナトリウム塩、カリウム塩、モノエタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩、アンモニウム塩等が挙げられる。ポリアクリル酸類の量は、含水ゲル用組成物全量中の好ましくは1乃至10重量%、さらに好ましくは3乃至8重量%である。なお、ポリアクリル酸類は、高吸水性高分子化合物であるため、架橋しないで使用することも可能である。
【0083】
本発明では、好ましくはポリアクリル酸類の架橋物と水で、含水ゲルを形成する。架橋剤の例として、多価金属類が挙げられる。なお、多価金属類には、多価金属、その塩及び多価金属化合物が包含される。これらの多価金属類として、二価以上であってポリアクリル酸類等を架橋できるものであれば、いずれも使用することもできる。
【0084】
多価金属類としては、マグネシウム、カルシウム、亜鉛、カドミウム、アルミニウム、チタン、マンガン、コバルト、ニッケル等の多価金属、それらの塩又はそれらの化合物が例示される。安全性、生産性、ゲル特性の観点から、アルミニウム、マグネシウム、カルシウム又はそれらを含む多価金属化合物が好ましく、特にアルミニウム化合物が好ましい。
【0085】
ここで、アルミニウム化合物の例としては、水酸化アルミニウムゲル、水酸化アルミニウムマグネシウムのような水酸化物;塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、ジヒドロキシアルミニウムアミノアセテート、カオリン、ステアリン酸アルミニウムのような無機又は有機酸の正塩もしくはそれらの塩基性塩;アルミニウムみょうばんのような複塩;それにアルミン酸ナトリウムのようなアルミン酸塩、無機性アルミニウム錯塩及び有機性アルミニウムキレート化合物;合成ヒドロタルサイト、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、硝酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、EDTA−アルミニウム、アルミニウムアラントイネート、酢酸アルミニウム、アルミニウムグリシナール等が挙げられる。多価金属類の量は、含水ゲル用組成物全量中の好ましくは0.01乃至2.0重量%、さらに好ましくは0.01乃至0.5重量%、さらにより好ましくは0.02乃至0.5重量%、特に好ましくは0.06乃至0.2重量%である。
【0086】
なお、含水ゲルの層を展膏によって製造する場合であって、例えばメタケイ酸アルミン酸マグネシウムのような即効性の架橋剤を使用する場合には、架橋を制御する(即ち、ある程度遅延させる)必要があるため、EDTA−2Na等のエデト酸類の架橋遅延剤も使用する。架橋遅延剤の量は、含水ゲル用組成物全量中の好ましくは0.02乃至0.5重量%、さらに好ましくは0.02乃至0.2重量%、更により好ましくは0.03乃至0.1重量%である。
【0087】
含水ゲルの形成には、水、上記のゲル化するポリマー(好ましくはポリアクリル酸類)及び架橋剤に加え、グリセリンやプロピレングリコール等の多価アルコール類や、ポリアクリル酸類以外のポリマーが使用されてもよい。そのような他のポリマーをも配合することにより、ゲルの安定性が向上する。
【0088】
ポリアクリル酸類以外のポリマーには、セルロース誘導体、デンプン誘導体、ビニル系ポリマーが包含される。具体的には、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシメチルエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースフタレートメチルセルロース、酢酸セルロース、酢酸セルロースヒドロキシメチルエチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロースまたはそれらのアルカリ金属塩等のセルロース誘導体;カルボキシメチルデンプンやヒドロキシプロピルデンプン等のデンプン誘導体;ポリビニルアルキルエーテル、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、メチルビニルエーテル/無水マレイン酸共重合体、ポリビニルピロリドン、カルボキシルビニルポリマー、ビニルピロリドン/酢酸ビニルアルキルアミノアクリル酸共重合体、、スチレンマレイン酸共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、酢酸ビニル−ポリビニルアルコール共重合体等のビニル系ポリマーを挙げることができる。これらの中で、セルロース誘導体が好ましく、カルボキシメチルセルロース又はそのアルカリ金属塩が更に好ましい。セルロース誘導体等のポリアクリル酸類以外のポリマーの量は、含水ゲル用組成物全量中の好ましくは0.5乃至10重量%、さらに好ましくは1乃至5重量%である。また、多価アルコール類の量は、含水ゲル用組成物全量中の好ましくは6乃至25重量%、さらに好ましくは8乃至22重量%である。
【0089】
含水ゲルは、電磁波遮蔽性を有する物質を含有していてもよい。電磁波遮蔽性を有する物質の例としては、フェライト、ゲルマニウム、カーボンブラック、炭、酸化スズ、酸化アンチモンスズ、酸化インジウムスズ、金、銀、銅、アルミニウム、鉄、ニッケル、パラジウム、プラチナ等が挙げられる。電磁波遮蔽性を有する物質は、含水ゲルの物性に悪影響を及ぼさない粒径、太さ、形状、長さのものを、含水ゲルの物性に悪影響を与えない範囲の量で用いる。その量は、含水ゲル全量中の好ましくは2乃至10重量%、さらに好ましくは3乃至8重量%である。
【0090】
含水ゲルの形成には、その物性に影響を及ぼさない範囲で、上記各成分に加え、防腐剤、防黴剤、保存剤、安定剤、着色料、pH調整剤、保型剤、増粘剤等を使用してもよい。
【0091】
含水ゲルの形成に当たり、常温で液体の油脂を、界面活性剤とともに使用してもよい。油脂の使用により、含水ゲルの電気伝導性が改良され、短時間で含水ゲルが温まる。
【0092】
常温で液体の油脂の例を挙げると、オリブ油、胡麻油、紅花油、大豆油、とうもろこし油、菜種油、綿実油等の各種植物油がある。油脂の量は、含水ゲル全量中の、好ましくは3乃至15重量%、更に好ましくは5乃至10重量%である。
【0093】
前記油脂を含水ゲル中に分散させるための界面活性剤としては、非イオン性界面活性剤が適する。非イオン性界面活性剤の例を挙げると、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル等のエーテル型非イオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル等のエーテルエステル型非イオン性界面活性剤、ソルビタン脂肪酸エステル等のエステル型非イオン性界面活性剤がある。本発明においては、エーテル型非イオン性界面活性剤を使用することが好ましい。また、非イオン性界面活性剤の量は、油脂の量を基準にして、好ましくは0.5乃至5重量%、更に好ましくは1乃至4重量%である。
【0094】
含水ゲルの水分含有量は、含水ゲルの全重量を基準として10乃至99.9重量%であることが好ましい。ここで、含水ゲルが前記油脂を含有しない場合には、水分含有量は、20乃至99重量%であることが更に好ましく、30乃至98重量%であることが更により好ましく、40乃至97重量%であることが特に好ましく、50乃至95重量%であることが最も好ましい。一方、前記油脂を含有する場合には、水分含有量は、20乃至95重量%であることが更に好ましく、30乃至90重量%であることが更により好ましく、40乃至85重量%であることが特に好ましく、50乃至75重量%であることが最も好ましい。また、水以外に、多価アルコールの量も、前記油脂の有無の影響を受ける。多価アルコールの量は、含水ゲルの全重量を基準として、含水ゲルが前記油脂を含有しない場合には6乃至12重量%程度であるが、含水ゲルが前記油脂を含有する場合には、15乃至25重量%程度である。
【0095】
本発明に係る蓄熱シートにおいて、含水ゲルは、袋体内に収納されており、露出していない。なお、含水ゲルは、二以上に区画されていてもよい。換言すると、複数の含水ゲルの層の間に、袋体の両面が結合されている個所があってもよい。含水ゲルの層が複数ある場合、含水ゲルの層の面積gに対する面状発熱体のワイヤーヒーター等によって囲まれている部分の面積sの割合は、含水ゲルの層毎に算出される。
【0096】
本発明において、含水ゲルの硬さや弾力性は、特に規定されない。しかし、発熱体が電気敷毛布や座席シートである場合は特に、含水ゲルが、下記の条件で測定して10乃至3,000gのゼリー強度を有することが好ましい:
(ゼリー強度測定条件)
測定器: 圧縮型物性測定器
測定雰囲気条件: 20℃、65%RH
圧縮形状及び面積: 直径30mmの円、7.065cm
圧縮量(変位量): 2mm
圧縮速度: 1mm/秒
測定試料の大きさ: 5cm×5cm×6mm(厚さ)。
【0097】
ゼリー強度10乃至3,000gは、例えば、含水ゲルがポリアクリル酸類の架橋物を含有するものである場合には、含水ゲルを、含水ゲル調製用組成物全量を基準として、ポリアクリル酸類の量は1乃至10重量%であり、架橋剤の量は0.01乃至0.5重量%であり、架橋遅延剤の量は0.02乃至0.2重量%であり、水の量は50乃至95重量%である組成物から調製することによって実現される。なお、この場合、ゼリー強度は、200乃至3,000gが更に好ましく、500乃至2,000gが更により好ましく、800乃至1,500gが特に好ましい。
【0098】
発熱体が電気カーペットや電気座布団である場合は特に、含水ゲルが、上記の条件で測定して400乃至5,000gのゼリー強度を有することが好ましい。
【0099】
ゼリー強度400乃至5,000gは、例えば、含水ゲルがポリアクリル酸類の架橋物を含有するものである場合には、含水ゲルを、含水ゲル調製用組成物全量を基準として、ポリアクリル酸類の量は3乃至8重量%であり、架橋剤の量は0.06乃至2.0重量%であり、架橋遅延剤の量は0.02乃至0.5重量%であり、水の量は50乃至95重量%である組成物から調製することによって実現される。なお、この場合、ゼリー強度は、500乃至5,000gがさらに好ましく、700乃至4,000gがさらにより好ましく、1,000乃至3,500gが特に好ましい。
【0100】
含水ゲルのゼリー強度測定の概要は、図7に示すとおりである。即ち、アダプター(押付ける部分の形状及び大きさ:直径30mmの円である)41を、試料用架台45上に載置したゲル試料43に、圧縮速度1mm/秒にて変位量が2mmとなるように押し付け、その際の荷重を測定する。
【0101】
含水ゲルのゼリー強度は、ゲルが形成された後、ポリマーの架橋の進展に伴って上昇し、一定時間経過後に安定な数値となる。従って、上記ゼリー強度の数値は、少なくとも消費者が本発明にかかる製品を使用する際(通常は製造から5日以上経過後)に充足されるべき数値である。
【0102】
本発明における含水ゲルがポリアクリル酸類の架橋物を含有するものである場合には、ポリマーが架橋されているために、形状保持性に優れると共に、上記のようなゼリー強度を有して低反発性を示す。
【0103】
なお、ゼリー強度の測定法は、膠及びゼラチンを対象として、JIS K6503−1996に定められているが、本発明で採用する方法とは、測定条件が異なる。
【0104】
含水ゲルの重量は、0.5乃至15kg/mであることが好ましく、1乃至15kg/mであることがさらに好ましく、2乃至10kg/mであることがさらにより好ましく、3乃至6kg/mであることが特に好ましい。
【0105】
本発明の蓄熱シートは、面1又は3の外側に、更に、粘着層を具備してもよい。そして、この粘着層により、発熱体に粘着されているものであってよい。
【0106】
粘着層を形成させるための粘着剤組成物の例としては、ゴム系粘着剤組成物、アクリル系粘着剤組成物、その他の熱可塑性樹脂(例えば、ポリアミド系、ポリエチレン系、セルロース系樹脂)を主成分とする粘着剤組成物等が挙げられる。
【0107】
ゴム系粘着剤組成物に使用される粘着剤としては、ジエン系高分子化合物、具体的には天然ゴム、合成ゴム、あるいはこれらの混合物が挙げられる。また、合成ゴムとしては、スチレン−イソプレンブロック共重合体ゴム、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体ゴム、スチレン−イソブチレン−スチレンブロック共重合体ゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ポリイソプレンゴム、ブチルゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、ポリサルファイドゴム、シリコーンゴム等が挙げられる。
【0108】
アクリル系粘着剤組成物に使用される粘着剤としては、従来から使用されている(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸トリデシルのような(メタ)アクリル酸エステル1種類以上と、当該エステルと共重合可能な(メタ)アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、アクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、アクリルアミド、ジメチルアクリルアミド、メタクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸メトキシエチルのような官能性モノマー又はアクリロニトリル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルモノマーとのコポリマー等が挙げられる。
【0109】
粘着層を形成するために使用される粘着剤組成物の性状は、エマルジョン、溶剤溶液、水溶液、ホットメルト型等、被塗工面に容易に塗工することができるものである限り、特に限定されない。
【0110】
粘着剤組成物によって構成される粘着層の厚さは、通常は10〜70μm、好ましくは20〜40μmである。
【0111】
本発明の蓄熱シートは、発熱体が例えば電気カーペット、電気座布団、電気敷毛布、座席シート等である場合には、面1又は3の外側に、更に、植物材料及び/又は植物材料に模したポリマー材料の編織物の層を有していてもよい。
【0112】
ここで、「植物材料及び/又は植物材料に模したポリマー材料の編織物」とは、例えば、畳表(い草を緯糸とする織物)、筵(い草を緯糸とする織物)、籐あじろ、籐むしろ等の籐編織物、ヨシ(葦ともいう)製すだれ等のヨシ編織物、竹や木(例えば桜や檜)の薄皮の編織物等をいう。また、畳表は、その緯糸がい草100%のものに限定されず、合成畳表(い草に模したポリマー製茎状物を編んだ畳表)や、い草の一部をポリマー製茎状物で代替したものであってもよい。なお、合成畳表の製造に使用されるポリマーの代表例としては、ポリプロピレンが挙げられる。
【0113】
畳表等の植物材料や植物材料に模したポリマー材料の編織物は、袋体を構成するポリマーシートに、粘着剤を用いて結合させることが好ましい。粘着剤の例としては、天然ゴムを初めとする各種ゴム系、(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体系、シリコーン系等の公知の粘着剤が挙げられる。また、粘着剤の塗工方式は、使用する粘着剤の形態(溶剤型、エマルジョン型、熱延展型、照射無溶剤型、水溶液型)に応じて、適する方法が選択される。
【0114】
畳表等の植物材料や植物材料に模したポリマー材料の編織物とポリマーシートとは、縫製によって接合されていてもよい。即ち、それらの外周部のみならず、内部も、適当な間隔をあけて例えば縦横に縫製することにより、両者を接合する。なお、この縫製は、前記編織物とポリマーシート等の袋体の構成材料を接合するものであってもよいし、含水ゲルの層も含む蓄熱シートの全構成要素を接合するものであってもよい。
【0115】
次に、本発明の蓄熱シートの製造方法について説明する。図4に示す蓄熱シート100において、袋体10の一方の面1が、水蒸気バリア性シート層(内側;含水ゲル5と接触する側)と繊維層(外側)との複合層であり、他方の面3が水蒸気バリア性シート層である場合には、蓄熱シート100は、例えば、次のようにして製造される。
【0116】
繊維層となる不織布と、水蒸気バリア性のポリマーシートであって、不織布と対向する面にコロナ処理がなされているものとを、接着剤を用いて又は熱融着によって、好ましくはドライ・ラミネーション法又はホット・メルト接着法によって、全面に亘って又は部分的に接着し、複合体xを製造しておく。
【0117】
ここで、ドライ・ラミネーション用接着剤の例を挙げると、ポリエステル系及びアクリル共重合体系のものがある。
【0118】
含水ゲル用組成物を常法によって調製する。調製された含水ゲル層用組成物を、他方の面3となる水蒸気バリア性のポリマーシート上に展膏し、所望の厚さを有する含水ゲル層を形成する。この際、蓄熱シート100の四周となる部分や、ポリマーシートが長尺物である場合には少なくともその両側は、含水ゲル層を形成しない。
【0119】
展膏された含水ゲル層用組成物の表面を、その展膏とほぼ同時に、前記複合体xで被覆する。この際、ポリマーシートの面をゲルに向ける。
【0120】
含水ゲルが袋体10から露出しないように、蓄熱シート100の四周を、接着、融着、縫製等の手段によって閉じる。このとき、外周の切断面が露出しないように、巻縫い等を行ってもよい。
【0121】
袋体10の一方の面1及び他方の面3が、いずれも水蒸気バリア性シート層(内側;含水ゲル5と接触する側)と繊維層(外側)との複合層である場合には、前記複合体xを二つ調製し、一方の複合体xの水蒸気バリア性ポリマーシートの面上に含水ゲル層を形成すること以外は、袋体10の一方の面1が、水蒸気バリア性シート層(内側;含水ゲル5と接触する側)と繊維層(外側)との複合層であり、他方の面3が水蒸気バリア性シート層である場合と同様である。
【0122】
繊維層(内側;含水ゲル5接触する側)、水蒸気バリア性シート層(中間)及び繊維層(外側)の複合層を面1,3として用いて蓄熱シート100を製造する際には、先ず、繊維層(内側)となる不織布と、水蒸気バリア性シート層となるポリマーシートと、繊維層(外側)となる織布とを、接着剤を用いて又は熱融着によって、全面に亘って又は部分的に接着し、複合体zを製造する。この複合体zは、二つ用意する。なお、複合体zの製造に際し、ポリマーシートは、その両面がコロナ処理されているものであることが好ましい。また、接着方法として、ドライ・ラミネーション法、ホット・メルト接着法又は押出しサンドイッチ・ラミネーション法の採用が好ましい。
【0123】
一方の複合体wの不織布(内側となる)上に、含水ゲル層用組成物を展膏し、所望の厚さを有する含水ゲル5の層を形成する。この際、蓄熱シート100の四周となる部分や、複合体wが長尺物である場合には少なくともその両側は、含水ゲル層を形成しない。
【0124】
展膏された含水ゲル層用組成物の表面を、その展膏とほぼ同時に、他方の複合体zで被覆する。この際、不織布の面がゲルに対向する。次いで、蓄熱シート100の四周を、接着、融着、縫製等の手段によって閉じる。このとき、外周の切断面が露出しないように、巻縫い等を行ってもよい。
【0125】
本発明に係る蓄熱シートの製造に際し、含水ゲル5の層は、含水ゲル層用組成物の展膏によるのではなく、流し込みによって製造することもできる。例えば、袋体10の一方の面1及び他方の面3が、いずれも水蒸気バリア性シート層(内側;含水ゲル5と接触する側)と繊維層(外側)との複合層である場合には、次のように製造することもできる。
【0126】
前記二つの複合体x(長尺物)を、ポリマーシート同士が向かい合うように配置し、その幅方向をヒートシール又は接着する。次に、それらの長尺物の両側をヒートシール又は接着し、袋状部分を形成する。この袋状部分に含水ゲル層用組成物を流し込み、押圧によってシート状とし、前記長尺物の幅方向をヒートシール又は接着する。幅方向に形成されたヒートシール又は接着部(後で形成した方)の長さ方向のほぼ中央部で切断し、蓄熱シート一つを得る。以下、同様にして、蓄熱シートを連続的に製造する。
【0127】
以下に、実施例により、本発明を具体的に説明する。
【0128】
実施例1 蓄熱シートの製造
以下のようにして蓄熱シートを製造し、また、その含水ゲルのゼリー強度を測定した。
【0129】
(a)各層を構成する材料
[袋体の一方の面]
(繊維層a) ポリエステル製スパンレース不織布; 坪量:45g/m
(水蒸気バリア性シート層a) 線状低密度ポリエチレン系シート; 厚さ:40μm; 透湿度(JIS Z0208;カップ法;40℃;90%RH): 6.8g/m・24時間
[含水ゲルの層] 表1に示す処方の組成物を使用して調製; 厚さ:6mm
[袋体の他方の面]
(水蒸気バリア性シート層b) 線状低密度ポリエチレン系シート; 厚さ:40μm; 透湿度(JIS Z0208;カップ法;40℃;90%RH): 6.8g/m・24時間
(繊維層b) ポリエステル製スパンレース不織布; 坪量:45g/m
【0130】
なお、ポリエステル製スパンレース不織布(繊維層a又はb)と線状低密度ポリエチレン系シート(水蒸気バリア性シート層a又はb)とは、ポリエステル系のドライ・ラミネーション用接着剤によってその全面が貼り合わされていた。
【0131】
(b)含水ゲル用組成物の調製
ここに、本発明の冷却又は加温用シートの製造に用いる含水ゲル用組成物の製造方法の概略を述べる。なお、その処方は、表1に示すとおりである。
【0132】
【表1】

【0133】
(1)先ず、D(グリセリン)の一部にカルボキシメチルセルロースナトリウムを溶解させる。これに酒石酸とE(水)のほぼ全量とを加え、溶液とする。
(2)Bの混合物を調製し、これを(1)で調製した溶液に加える。
(3)D(グリセリン)の残りにCを加え、溶液を調製する。
(4)(2)で調製した溶液に(3)で調製した溶液を加えて撹拌し、必要であれば(水分の揮発等によって、総量が設計量よりも少ない場合には)、必要量の水を加えてバランスする。
【0134】
(c)製造方法
(i)ポリエステル製スパンレース不織布(繊維層b)と線状低密度ポリエチレン系シート(水蒸気バリア性シート層b)とが貼り合わされてなるベース基材の線状低密度ポリエチレン系シート上に、表1に示す処方の組成物(発明例1乃至6)各々を、厚さが6mmとなるように展膏した。
【0135】
(ii)展膏とほぼ同時に、ポリエステル製スパンレース不織布(繊維層a)と線状低密度ポリエチレン系シート(水蒸気バリア性シート層a)とが貼り合わされてなるオーバーラップ基材の線状低密度ポリエチレン系シートの面をゲルに向け、そのオーバーラップ基材でゲル表面を被覆し、四周を縫製した。
【0136】
(iii)このように製造した冷却又は加温用シート試料(20cm×30cm×6mm)を、40℃の恒温室に2日間放置して含水ゲル層中のポリマーの架橋を促進させた後、20℃の恒温室に放置した。
【0137】
(d)ゼリー強度の測定
展膏後14日目及び30日目に、オーバーラップ基材を剥がし、(株)サン化学製の簡易型物性測定器レオテックスSD−700DPを用い、下記の条件にて、ゲルのゼリー強度を測定した。なお、測定の概要は、図7に示すとおりである。即ち、アダプター41を、試料用架台45上に載置したゲル試料43に押し付け、その際の荷重を測定した。
【0138】
測定は、発明例1乃至6の各々につき、3枚のゲル試料について行った。結果(最小値、最大値及び平均値)を表2に示す。
【0139】
(測定条件)
測定雰囲気条件: 20℃、65%RH
圧縮形状及び面積: 直径30mmの円、7.065cm
圧縮量(変位量): 2mm
圧縮速度: 1mm/秒
【0140】
【表2】

【0141】
実施例2 蓄熱シートの袋体に用いられる材料の透湿度と、含水ゲル中の水分保持性との関係の試験
(a)袋体に用いられる材料の構成と透湿度
ポリ塩化ビニリデン系シート(厚さ:25μm)、線状低密度ポリエチレンシート(厚さ: 40μm)、2層の線状低密度ポリエチレンシートの間にアルミ箔(厚さ:7μm)が挟持されてなる複層構造のシート(総厚:41μm)、株式会社麗光製ファインバリヤー(登録商標)KW(ポリエステル系水蒸気バリアフィルム;厚さ:40μm)、凸版印刷株式会社製GXフィルム(PETフィルムにセラミックを蒸着させたもの;厚さ:40μm)とを用意した。これらについて、JIS Z0208に従い、温度40℃における透湿度を測定した。なお、GXフィルムに関しては、透湿度を測定する際のシートの向きは、蒸着面が外側となるようにした。結果を表3に示す。
【0142】
(b)蓄熱シートの製造及び高温保存による含水ゲル中の水分の減少率の測定
(a)で使用した各種素材(104cm×104cm)の上に、表1に示された発明例2の処方の組成物6kgを、周囲約2cmを残して展膏した。展膏とほぼ同時に、同じ素材でゲル表面を被覆し、前記組成物が展膏されていない四周を接着剤で接着した。
【0143】
このように製造したもの各々の重量を測定した後、40℃の恒温室に一週間放置した。恒温室から取り出し、各々の重量を測定した。なお、蓄熱シートの製造前に、袋体構成素材として使用した各種素材の重量と接着剤の重量も測定した。
【0144】
一週間の放置によって減少した重量を求め、その値を試験前の含水ゲルの重量で除して、含水ゲルの重量減少率(%)を求めた。なお、この実験では、減少した重量は、すべて、ゲル中の水分の揮散によるものとした。結果を表3に示す。
【0145】
【表3】

【0146】
実施例3 電場遮蔽性能の測定
電気毛布から出る電場の、本発明に係る蓄熱シートによる遮蔽性能を測定した。試験材としては、電気毛布のみ(対照)、キルト製ベッドパッド(比較)、本発明に係る蓄熱シートから含水ゲル層を除去したもの(ブランク)、本発明に係る蓄熱シートI及び本発明に係る蓄熱シートIIを用いた。
【0147】
ブランクは、表面が、綿生地(外側)、線状低密度ポリエチレンシート(厚さ:40μm)及びポリエステル不織布(坪量:45g/m)をこの順にドライ・ラミネートしたものであり、裏面が、ポリエステル/綿(65/35)混紡生地(外側)、線状低密度ポリエチレンシート(厚さ:40μm)及びポリエステル不織布(坪量:45g/m)をこの順にドライ・ラミネートしたものであり、表面と裏面の外周部は接着されているという構成であった。これは、本発明に係る蓄熱シートI及びIIの含水ゲル以外の部分の構成と同様である。
【0148】
また、本発明に係る蓄熱シートI及びIIの含水ゲルの処方は、表4に示すとおりであった。含水ゲルの量は、約6kg/mとした。
【0149】
【表4】

【0150】
ここに、本発明に係る蓄熱シートIIの含水ゲルの製造方法の概略を述べる。なお、蓄熱シートIの含水ゲルの製造方法は、C群とE群原料を用いないこと以外は、蓄熱シートIIの含水ゲルの製造方法と同様である。
(1)先ず、F(グリセリン)の一部にカルボキシメチルセルロースナトリウムを溶解させる。これに酒石酸とG(水)のほぼ全量とを加え、溶液とする。
(2)Bの混合物を調製し、これを(1)で調製した溶液に加える。
(3)Cの混合物を、(2)で調製した溶液に加える。
(4)Eの混合物を、(3)で調製した分散液に加える。
(5)F(グリセリン)の残りにDを加え、溶液を調製する。
(6)(5)で調製した溶液を(4)で調製した分散液に加え、全体が均一になるまで撹拌する。
(7)裏面となる三層複合体の不織布の面上に、(6)で調製した分散液を展膏し、次いで、ゲル表面を、表面となる三層複合体を不織布の面をゲルに向けて使用して覆う。
(8)外周部を接着剤で接着した後、ポリマーが架橋するまで放置する。
【0151】
電場の測定は、次のようにして行なった。図8に示すように、敷布団81の上に市販の電気敷毛布83を敷き、その上に試験材85を敷いた。試験材85の中央に測定器87を置き、さらに、測定器87と試験材85とを、その内面を銅テープとアルミ箔で覆った簡易シールド箱89で覆った。なお、簡易シールド箱89と試験材85とを確実に密着させるため、簡易シールド箱89の上に約1.8kgの錘を載せた。また、簡易シールド箱89はアースをして用いた。
【0152】
測定器87は、アナログ式トリフィールドメータであり、その測定周波数範囲は30Hz乃至100kHz、電場測定範囲は1乃至1000V/m、磁場測定範囲は0乃至100mGであった。
【0153】
測定の際は、電気毛布のヒータをONとした。また、電気敷毛布のみ(対照)と、ブランクを使用した場合については、測定位置を合わせるために、電気敷毛布から8mm上で測定を行った。結果を表5に示す。
【0154】
【表5】

【0155】
電場は、一般的に機能障害、神経障害を引き起こすといわれている。表5から明らかなように、本発明に係る蓄熱シートI及びIIは、電磁波中の電場を大きく遮蔽する効果があった。なお、一般家庭用電気機器から発せられる電磁波は50乃至60Hzであり、波長は5,000乃至6,000kmと非常に長い。
【0156】
実施例4 採暖装置の製造及び蓄熱シートの温度下降特性の測定
(1)蓄熱シートの製造
図4に示す構成の蓄熱シート100を製造した。
【0157】
(a)各層を構成する材料
[袋体10の面1及び3]
(繊維層a) ポリエステル/綿(65%/35%)製織布(45番/45番;110本/76本);顔料染(防黴加工)品
(ポリマーシート層a) 低密度ポリエチレンシート;厚さ:30μm
(ポリマーシート層b) 線状低密度ポリエチレンシート; 厚さ:30μm
(繊維層b) ポリエチレンテレフタレート製スパンレース不織布; 坪量:45g/m
[含水ゲル5の層] 表6に示された処方の組成物を使用して調製;
展膏量: 5kg/m
【0158】
なお、ポリマーシート層a(低密度ポリエチレンシート;厚さ:30μm)とポリマーシート層b(線状低密度ポリエチレンシート;厚さ:30μm)とを共押出しして得られる複合ポリエチレンシート(水蒸気バリア性シート)の透湿度(JIS Z0208)は、2.0g/m・24時間であった。
【0159】
【表6】

【0160】
(b)含水ゲル用組成物の調製
以下のようにして、含水ゲル用組成物を調製した。
(1)A成分を水(E成分)のほぼ全量に溶解させ、1液を得る。
(2)1液にB成分を添加し、撹拌し、B成分を分散させ、2液を得る。
(3)Cの混合物を調製する。これを3液とする。
(4)2液に3液を添加し、撹拌し、4液を得る。
(5)Dの混合物を調製する。これを5液とする。
(6)4液に5液を添加し、撹拌し、全体を均一化する。
【0161】
(c)袋体10の面1及び3となる複合体(繊維層a、ポリマーシート層a及びb、繊維層bがこの順に積層されてなるもの)の製造方法
先ず、繊維層bとなる不織布とポリマーシート層bとなる線状低密度ポリエチレンシートとを、ドライラミネーション法にて貼りあわせ、予備複合体を製造した。次いで、予備複合体の線状低密度ポリエチレンシート上に、低密度ポリエチレンを押し出してポリマーシート層aを形成するとともに、当該ポリマーシート層a上にポリエステル/綿織布をラミネート加工し、複合体を得た。
【0162】
(d)蓄熱シートの製造方法
(i)複合体(ベース基材となるもの)のポリエチレンテレフタレート製スパンレース不織布(繊維層b)上に、表6に示された処方の組成物を、展膏量が5kg/mとなるように展膏した。
【0163】
(ii)展膏とほぼ同時に、複合体(オーバーラップ基材となるもの)のポリエチレンテレフタレート製スパンレース不織布(繊維層b)の面をゲルに向け、その複合体でゲル表面を被覆し、次いで四周を縫製した。
【0164】
(iii)このようにして、幅90cm、長さ120cmであり、含水ゲル5の層の大きさが、幅80cm、長さ114cmの蓄熱シートを製造した。
【0165】
(2)採暖装置の製造
発熱体として、図3に示す構成の電気敷毛布300(100v/50W;サンヨー電気製)を使用した。この電気敷毛布300の生地(表及び裏)の材料等は、次のとおりであった。
生地仕様: 経糸 ポリエステル100%
緯糸 ポリエステル(50%)/アクリル(50%)
織密度: 経糸 58本/インチ
緯糸 30本/インチ
【0166】
下から順に、断熱シートであるアルミ箔貼り発泡ポリエチレンシート(アルミ箔の厚さ:7μm;ポリエチレンの厚さ:4mm;ポリエチレンシートの側を電気敷毛布300に対向させる)、電気敷毛布300及び(1)で製造した蓄熱シート100をこの順に重ね、採暖装置を得た。ワイヤーヒーター50の最も外周のものに囲まれて形成される部分の面積sは、蓄熱シート100の含水ゲル5の層の面積の約90.3%であった。
【0167】
(3)蓄熱シートの温度下降特性の測定
12℃に設定された室内に敷布団(ポリエステル綿50%/羊毛50%;5kg入り)を敷き、その上に(2)で製造した採暖装置を、アルミ箔が敷布団と対向するように置き、蓄熱シートを綿ブロード製のシーツで覆った。その上に、ポリエステル綿(1.5kg)の入った掛布団を掛けた。この状態で、蓄熱シートの表面温度を測定した。
【0168】
電気敷毛布に通電させ(ヒーター強度:強)、90分後に通電を停止させた。この際にも、同じ場所で蓄熱シートの表面温度を測定した。
【0169】
66歳の男性(体温:35.8℃)が、採暖装置の蓄熱シートの上に横臥し、掛布団を掛けて就寝した。翌朝、同じ場所で蓄熱シートの表面温度を測定した。
【0170】
以上の実験を、3回行った。結果を表7に示す。なお、就寝時間は、約8時間であった。
【0171】
【表7】

【0172】
表7から明らかなように、人体の体温も相俟って、約8時間の就寝中、電気敷毛布への通電が為されていないにもかかわらず、蓄熱シートの表面温度は殆ど低下することなく保持され、又は温度の上昇が見られた。即ち、本発明の採暖装置を用いれば、電気敷毛布の電源を切った後も長時間にわたって暖を取ることができる。また、電気敷毛布の電源を切った後においては、電気敷毛布は電磁波を発生しない。従って、本発明の採暖装置は、省エネルギーに寄与すると共に、電磁波の悪影響を受けずに暖を取る手段を提供するという効果も示す。
【0173】
実施例5 採暖装置における蓄熱シートの温度上昇及び下降特性の測定
実施例4で使用した採暖装置と、断熱シート(アルミ箔貼り発泡ポリエチレンシート)のアルミ箔を電気敷毛布に対向させてなる電気敷毛布を使用した採暖装置と、断熱シートを使用しない採暖装置を用い、蓄熱シートの温度上昇及び下降特性を測定した。具体的には、次のようにして蓄熱シートの表面温度を測定した。
【0174】
(1)布団及び採暖装置の構成
図9に示すように、(a)実施例4で使用した採暖装置(断熱シート93aは、アルミ箔の側を敷布団81に対向させた)、(b)断熱シート93bは、アルミ箔の側を電気敷毛布83に対向させたこと以外は、実施例4の採暖装置と同様のもの、及び(c)断熱シートを使用しなかったこと以外は、実施例4の採暖装置と同様のものを用意した。
【0175】
実施例4と同様の敷布団81の上に、採暖装置を敷き、その上に実施例4と同様の掛布団91を載せた。電気敷毛布83に通電させ(ヒーター強度:強)、蓄熱シート95の表面温度を温度センサー97で経時的に測定した。この際の室温は15℃であった。結果を表8及び図10に示す。
【0176】
【表8】

【0177】
電気敷毛布83への通電を停止し、蓄熱シート95の表面温度が自然に低下するのを待った。約30℃となった時点から、蓄熱シート95の表面温度を経時的に測定した。結果を表9及び図11に示す。
【0178】
【表9】

【0179】
表8及び9、図10及び11に示された結果より、断熱シート93(アルミ箔貼り発泡ポリエチレンシート)を使用することにより、保温性能が高まることが明らかとなった。また、断熱シート93の配置方向も、保温性能に影響を与え、アルミ箔の側を採暖装置の最外層に配置する(敷布団81と対向させる)ことにより、より高い効果が得られることが明らかとなった。
【0180】
実施例6 反発性試験
実施例3で製造した蓄熱シートIに関し、反発性能を試験した。具体的には、重さ5.7kg、直径3/16インチのJIS規定鋼球を、高さ20cmから自然落下させ、鋼球の跳ね返り高さを測定した。比較のため、市販の軟質ウレタンフォームについても同様の試験を行った。結果を表10に示す。
【0181】
【表10】

【0182】
表10から明らかなように、本発明に係る蓄熱シートIの含水ゲルは、軟質ウレタンフォームと比べて低反発性であった。
【図面の簡単な説明】
【0183】
【図1】本発明の採暖装置の一例を示す斜視図である。
【図2】図1の採暖装置のx−x線における断面図である。
【図3】本発明の採暖装置で使用される電気敷毛布の一例を示す線図である。
【図4】本発明に係る蓄熱シートの一例を示す断面図である。
【図5】水蒸気バリア性シート層として使用することが出来る、二層のポリマーシートとそれらの間に位置する金属箔からなる積層体を示す断面図である。
【図6】水蒸気バリア性シート層として使用することが出来る、金属系又は無機物蒸着層を有する金属系又は無機物蒸着ポリマーシートを示す断面図である。
【図7】含水ゲルのゼリー強度の測定方法を示す模式図である。
【図8】電磁波の測定方法を示す模式図である。
【図9】本発明の採暖装置における蓄熱シートの保温性能を調べる実験方法を説明するための線図である。
【図10】蓄熱シートの温度上昇特性を示すグラフである。
【図11】蓄熱シートの温度下降特性を示すグラフである。
【符号の説明】
【0184】
1 一方の面
3 他方の面
5 含水ゲル
10 袋体
20 コントローラー
30 コード
41 アダプター
43 ゲル試料
45 試料用架台
50 ワイヤーヒーター
60 積層体
61,63,71 ポリマーシート
65 金属箔
70 金属系又は無機物蒸着ポリマーシート
75 金属系又は無機物蒸着層
81 敷布団
83,300 電気敷毛布
85 試験材
87 測定器
89 簡易シールド箱
91 掛布団け簡易シールド箱
93a 断熱シート(アルミ箔ラミネート発泡ポリエチレン;アルミ箔は敷布団側)
93b 断熱シート(アルミ箔ラミネート発泡ポリエチレン;アルミ箔は電気敷毛布側)
95,100 蓄熱シート
97 温度センサー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通電によって発熱する発熱体と、当該発熱体に重ねて使用される蓄熱シートとを備える採暖装置であって、前記蓄熱シートは、袋体とその内部に封入された含水ゲルとを備えることを特徴とする採暖装置。
【請求項2】
更に断熱シートを有するか、又は、発熱体がその一方の面に断熱層を有する、請求項1に記載の採暖装置。
【請求項3】
発熱体が面状発熱体である、請求項1又は2に記載の採暖装置。
【請求項4】
面状発熱体が、ワイヤーヒーター、又は、電極に結合されている導電層によって発熱するものである、請求項2又は3に記載の採暖装置。
【請求項5】
ワイヤーヒーター又は導電層の中、最も外周のものに囲まれて形成される部分の面積が、蓄熱シートの含水ゲルの層の面積の60%以上である、請求項4に記載の採暖装置。
【請求項6】
袋体は、その両面の各々に、JIS Z0208(カップ法;40℃;90%RH)における透湿度が30g/m・24時間以下の水蒸気バリア性シート層を有する、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の採暖装置。
【請求項7】
含水ゲルの水分含有率が10乃至99.9重量%である、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の採暖装置。
【請求項8】
含水ゲルが、さらに、電磁波遮蔽性を有する物質を、含水ゲル全量を基準として2乃至10重量%含有する、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の採暖装置。
【請求項9】
含水ゲルは、ポリアクリル酸類の架橋物を含有し、含水ゲル調製用組成物全量を基準として、ポリアクリル酸類の量は1乃至10重量%であり、架橋剤の量は0.01乃至0.5重量%であり、架橋遅延剤の量は0.02乃至0.2重量%であり、水の量は50乃至95重量%である組成物から調製されたものである、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の採暖装置。
【請求項10】
含水ゲルは、ポリアクリル酸類の架橋物を含有し、含水ゲル調製用組成物全量を基準として、ポリアクリル酸類の量は3乃至8重量%であり、架橋剤の量は0.06乃至2.0重量%であり、架橋遅延剤の量は0.02乃至0.5重量%であり、水の量は50乃至95重量%である組成物から調製されたものである、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の採暖装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−2154(P2010−2154A)
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−163066(P2008−163066)
【出願日】平成20年6月23日(2008.6.23)
【出願人】(397007011)株式会社オーシンエムエルピー (12)
【Fターム(参考)】