説明

採血管、検体前処理装置、検体前処理方法及び分離剤除去具

【課題】採血管から遠心分離後に生じる中間層としての分離剤を効果的に取り除けるようにする。
【解決手段】採血管における本体12内には予め内筒14及び分離剤32が入れられている。遠心分離後において、内筒14内に分離剤からなる中間層38が位置する。内筒14を上方に取り除けば、それとともに中間層38も除去できる。その上で、下層40に対して吸引を行える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は採血管に関し、特に、遠心分離後の採血管から分離剤を除去することによりその下層に対する分注を可能にする技術に関する。
【背景技術】
【0002】
生体から採取された血液試料を収容する容器として採血管が広く利用されている。かかる採血管は、本体及び栓により構成され、その内部には一般に分離剤が予め入れられてある。血液採取後に、そのような分離剤入りの採血管に対して遠心分離処理を行うと、採血管内部に3つの層が形成される。すなわち、上層、中間層、下層が形成される。上層は血漿(又は血清)からなり、中間層は分離剤からなり、下層は血球(又は血餅)からなる。
【0003】
採血管に対して、血液分析前の処理を行う装置として検体前処理装置(採血管処理装置)が知られている。かかる装置は、ラック搬送ユニット、遠心分離ユニット、開栓ユニット、分注ユニット、閉栓ユニット、等を有する。従来においては、専ら上層(血漿又は血清)が分析対象となっていたが、近時、下層(血球又は血餅)が分析対象なる場合も少なくない。そこで、遠心分離処理後に上層に対する分注処理を行った上で、下層の分注処理に先立って、中間層つまり分離剤を除去する必要がある。かかる分離剤は非常に粘度の高い物質(ペースト状の部材)であり、それを除去するのは容易ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−242164号公報
【特許文献2】特開2003−43032号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1には、棒状の部材が開示されており、その先端には幅広のへら部が形成されている。そのへら部によって、採血管に付着した分離剤等が掻き取られている。特許文献2には、遠心分離後の血清中に生じたフィブリンを捕獲する部材が開示されている。いずれも遠心分離処理後の(つまり層別化された)採血管に対して事後的に差し込まれるものであり、遠心分離処理前に対象物を除去するための事前の仕込みを行っておくものではない。なお、本願に関連する未公開の特許出願として特願2008−80190号、特願2008−189944号がある。
【0006】
本発明の目的は、遠心分離後の採血管から分離剤を容易に除去できるようにすることにある。
【0007】
本発明の他の目的は、分離剤の除去に当たって遠心分離後の多層構造(層別化構造)を不必要に乱すことがないようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る採血管は、分離剤が予め入れられ、生体から採取された血液試料が入れられる本体と、前記本体の上部開口を塞ぐ栓と、前記本体に予め入れられ、当該本体の上部レベルから遠心分離処理後に生じる分離剤からなる中間層の下面レベルを超えて下方へ伸びる長さを有し、前記中間層を構成する分離剤を捕獲する機能を有し、それ自身の引き上げ時に前記中間層を構成する分離剤も一緒に引き上げられるようにする分離剤除去具と、を有することを特徴とする。
【0009】
上記構成によれば、本体の中には、分離剤が入れられており、また、遅くとも遠心分離処理前に、分離剤除去具が入れられる。望ましくは、本体内に分離剤及び分離剤除去具が入れられた後に、本体の上部開口がアルミシール栓やゴム栓等の栓によって封止され、そのような分離剤及び分離剤除去具入りの採血管が採血で利用される。遠心分離後において生じる中間層を構成する分離剤は、上下方向に伸長した分離剤除去具に捕獲され、当該分離剤除去具の上方への引き上げに伴い、捕獲された分離剤も上方に引き上げられる。この取り出し工程は、望ましくは、遠心分離処理後において上層の吸引を行った後に実行される。このように分離剤除去具を事前に入れておけば、高粘度の分離剤を速やかにしかも基本的に全量を簡単に除去することが容易となる。なお、少々の分離剤が残留しても、それが下層の吸引、分析に影響を与えないのであれば、それは問題とならない。
【0010】
分離剤除去具を開栓後であって遠心分離前に挿入することも可能である。その場合、遠心分離時における採血管の移送等での検体飛散を防止するために、その挿入後に閉栓処理が適用されるのが望ましい。その場合、遠心分離後に再び開栓処理が適用される。分離剤除去具は、少なくとも中間層を構成する分離剤を取り出せる構造を有するものであり、望ましくは、円筒形の部材として構成される。その場合、中間層が存在する範囲をカバーする部分のみが円筒形であれば足り、それ以外の部分については取り出しの便宜を図れる形態とするのが望ましい。当該部分は中間層の上面レベルよりも上方、つまり上部レベルまで伸長した形態を有するものとして構成される。分離剤除去具において、分離剤を捕獲する部分は円筒形でなくてもよく、中間層の下面レベルよりも下方から、中間層を掻き上げる構造体であってもよい。いずれにしても事前にそのような部材を入れておけば分離剤除去作業が従来よりも簡単となる。引き抜き作業を手作業で行うようにしてもよいし、自動化してもよい。
【0011】
望ましくは、前記分離剤除去具は、前記本体の内周面に近接した外周面を有する中空の筒状部材である。これによれば、簡単な構造でありながら、効果的に分離剤を除去できる。メッシュ構造あるいは多孔性を有する中空の筒状部材を利用することもできるが、完全な筒状の部材として構成すれば、分離剤の上に残留する上層液をも除去できるので、その後の下層液の吸引に当たって目的液以外の液体の混入を効果的に防止又は軽減できる。
【0012】
望ましくは、前記分離剤除去具は透明材料により構成される。この構成によれば内部を観察できるので、分離剤の除去の過程を確認できる。勿論、採血管本体を、透明性を有する部材で構成するのが望ましい。
【0013】
望ましくは、前記分離剤除去具の上部には、それを取り出す際に利用される引っ掛け構造が設けられる。引っ掛け構造は、上方から差し込まれるフックに引っ掛けられるものであり、突起、スリット等であってもよい。但し、円筒形状の分離剤除去具の上部開口に対して圧入する部材やその上部開口の中で径方向に膨らむ部材等を利用して分離剤除去具を保持するようにしてもよい。
【0014】
望ましくは、前記本体の上部内において、当該上部の内面と前記分離剤除去具の上部外面との間に両者を隔てる差込用空間が形成され、前記差込用空間は前記分離剤除去具を取り出す機構を挿入可能な大きさを有する。差込用空間によれば、分離剤除去具の上部をその外面を摘んで持つことが容易となるので、汚染の問題を回避できる。望ましくは、前記本体の上部は水平方向に肥大した肥大部を構成し、前記差込用空間が前記肥大部の内面と前記分離剤除去具の上部外面との間に形成される。
【0015】
本発明に係る検体前処理装置は、分離剤、血液試料及び分離剤除去具を収容した採血管に対する遠心分離処理を行う遠心分離処理ユニットと、前記遠心分離処理後の採血管に対して、上層分注処理及び下層分注処理を行う分注処理ユニットと、前記上層分注処理後且つ前記下層分注処理前に前記分離剤除去具を前記採血管から取り出すことによって、前記遠心分離処理後に生じる中間層を構成する分離剤を除去する取り出しユニットと、を含み、前記分離剤除去具は、前記採血管の本体の上部レベルから遠心分離処理後に生じる中間層の下面レベルを超えて下方へ伸びる長さを有し、前記中間層を構成する分離剤を捕獲する構造を有する、ことを特徴とする。
【0016】
上記構成によれば、遠心分離処理後であって、下層分注(吸引)処理前に(望ましくは上層分注処理後に)、取り出しユニットによって本体内から分離剤除去具が自動的に取り出され、その後に下層分注処理が実行される。よって、妨害物質となる分離剤を効果的に除去した上で、下層に対する分注処理を行うことができる。望ましくは、前記分離剤除去具は前記採血管に生体から採取された血液試料を入れる前に当該採血管に予め入れられた部材である。これとは別に、開栓後かつ遠心分離処理前に、分離剤除去具を自動的に挿入する工程を実行するようにしてもよい。
【0017】
本発明に係る検体前処理方法は、採血管に対して、生体から採取された血液試料を採血管に入れる前に、あるいは、生体から採取された血液試料を入れた後に、前記採血管に分離剤除去具を入れる準備工程と、前記分離剤除去具が入れられた採血管に対して遠心分離処理を行う遠心分離処理工程と、前記遠心分離処理後の採血管から前記分離剤除去具を取り出すことによって、前記遠心分離処理後に生じた中間層を構成する分離剤を除去する取り出し工程と、を含むことを特徴とする。
【0018】
本発明に係る分離剤除去具は、採血管に対する遠心分離処理前に当該採血管内に生体から採取された血液試料と共に入れられる部材であって、透明性を有する材料により構成され、前記採血管における本体の内周面に近接した外周面を有し、前記採血管における本体の上部レベルから、前記遠心分離処理後に生じる分離剤からなる中間層の下面レベルよりも低いレベルまで達する長さを有し、前記中間層を構成する分離剤を捕獲する構造をもった下端部を有し、それ自身の前記採血管からの取り出しにより、前記下端部に捕獲された分離剤が取り出される、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、遠心分離後の採血管から分離剤を容易に除去できる。あるいは、分離剤の除去に当たって遠心分離後の多層構造(層別化構造)を不必要に乱すことがないという利点を得られる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る採血管の好適な実施形態を示す斜視図である。
【図2】図1に示す採血管の断面図である。
【図3】検体前処理装置の構成を示す概念図である。
【図4】検体前処理における各工程を示す図である。
【図5】他の実施形態に係る採血管を示す斜視図である。
【図6】図5に示す採血管の断面図である。
【図7】内筒の他の例を示す図である。
【図8】内筒の更に他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の好適な実施形態を図面に基づいて説明する。
【0022】
図1には、本発明に係る採血管の好適な実施形態が示されており、図1はその斜視図である。この採血管10は、人体から採取された血液(検体)を収容する真空式容器である。
【0023】
図1において、採血管10は、本体12、内筒14及び栓16によって構成されている。本体12は、図示されるように下端部が閉じている円筒形状を有する容器であり、その上部には上部開口12Aがある。本体12はプラスチックあるいはガラスなどの透明な容器により構成されている。
【0024】
内筒14は、本実施形態において分離剤除去具として機能するものであり、内筒14は円筒形を有している。内筒14は上部開口14A及び下部開口14Bを有する。内筒14の外径は、本体12の内径に対応しており、本体12の中に内筒14が差し込まれた場合に、本体12の内周面と内筒14の外周面とが微小隙間を介して対面する程度の大きさに設定されている。内筒14は、本体12と同様の部材で構成され、すなわちプラスチックあるいはガラス等の透明部材により構成されている。本体12の内部が先細の形態を有する場合、内筒14も同じく先細の形態として構成される。本体12内において内筒14は単純に上方から落とし込まれており、本体12における下部のテーパー部分において内筒14の最下端部が当たり、それによって本体12内における内筒14の位置が定められる。そのような当接により両者間の嵌め合いが生じて、後に説明するように、内筒14の上方の引き上げが円滑に行われない可能性があるならば、内筒14の下端部を丸みをもった形状として加工するようにしてもよいし、あるいは、本体12における所定の高さに内筒14が保持される構成を採用してもよい。
【0025】
内筒14の上部には、内外を貫通する2つのスリット18A,18Bが形成されている。それらは中心軸を間に挟んで互いに反対側の位置に形成され、それらは引っ掛け構造として機能するものである。すなわち内筒14を本体12から引き出す場合において、上方からフック(図示せず)が差し込まれ、そのフックの先が2つのスリット18A,18Bに差し込まれ、それを引き上げることにより内筒14が外部に取り出される。もちろん、その場合においては内筒14の本来の機能である分離剤除去が達成される。
【0026】
栓16は、本体12の上部開口12Aに装着されるものである。栓16は図1に示す例においてゴム栓であるが、もちろんアルミシール栓等を利用するようにしてもよい。栓16は肥大した上部16Aとやや細く形成された下部16Bとからなり、下部16Bが上部開口12A内に差し込まれる。ちなみに栓16の中央部は針を突き通すことが可能な構造となっている。
【0027】
図1に示す採血管10はいわゆる真空採血管であり、その製造段階において、栓16が本体12へ装着される前に、本体12内に内筒14が落とし込まれる。また、その前あるいはその後に分離剤が本体12内に注入される。この分離剤は高粘度の液体であり、遠心分離処理後において上層と下層とを分離する比重をもった材料である。図1においてはそのような分離剤が図示省略されている。
【0028】
図2には、図1に示した採血管10の断面図が示されている。上述したように本体12の内部には、内筒14が落とし込まれている。本体12の上部には栓16が装着されている。図2においても分離剤は図示省略されている。このような採血管10を利用して生体から採取される血液が本体12の中に取り込まれる。
【0029】
図3には、本実施形態に係る検体前処理装置が概念図として示されている。この検体前処理装置は、ラック22を搬送する搬送ユニット20と、遠心分離ユニット24、開栓ユニット26、分注/取出しユニット28及び閉栓ユニット30を有している。ラック22は、複数本の採血管10をその起立状態において搬送するものである。
【0030】
遠心分離ユニット24は、採血管に対して遠心分離処理を実行するものである。この遠心分離処理により、採血管内部が3つの層に分けられ、後に説明するように上層、中間層としての分離剤層及び下層に分かれる。開栓ユニット26は、採血管における本体から栓を取り除く自動ユニットである。
【0031】
分注/取出しユニット28は、分注部及び取出し部を有する。分注部は、ノズルによって採血管内の検体を吸引し、他の容器に吸引された液体を移す機能を有する。取出し部は、上述した分離剤除去具としての内筒を本体から取出して廃棄する機能を有する。その場合においては、本体が内筒と一緒に上方に引き上げられないように本体を押さえ込む部材を設けるのが望ましい。内筒の取出しにあたっては内筒の上部あるいはいずれかの箇所に形成された引っ掛け構造を利用してそれを上方に持ち上げる手法が利用される。
【0032】
閉栓ユニット30は必要に応じて設けられるものであり、分注処理が完了した後の検体を保存検体として保存しておく場合に採血管に対して栓を装着するものである。なお、図3に示される各ユニットの動作は自動的に実行されており、すなわち遠心分離から閉栓までの各工程が自動化されている。
【0033】
図4には、本実施形態に係る装置において実行されるプロセスが説明図として示されている。(a)に示す工程から順次各工程が実行される。(a)に示す工程は初期工程であり、それは未使用の採血管を表している。採血管は本体12と内筒14とを含むものであり、本体12の内部、具体的にはその下部には分離剤32が固まった状態で収容されている。次に、(b)に示すように、採血管内に血液が取り込まれる。ここで符号34が血液層を示している。次に(c)に示すように、遠心分離処理が実行される。すると、本体12の内部に3つの層が形成され、すなわち上層36、中間層38及び下層40が形成される。ここで、中間層38は分離剤により構成されるものであり、それは完全に内筒14内(特にその下部)に取り込まれている。すなわち、内筒14はその上端が本体12における上部レベルに位置しており、その下端が分離剤38の下面レベルよりも低い位置、すなわち下部レベルまで達している。少なくとも中間層38の全体が内筒14内に取り込まれるのが望ましい。ちなみにH1は分離剤からなる中間層38の上面レベルを示しており、H2は、その下面レベルを示しており、H3は内筒14の下端レベルを示している。ここで留意すべきことはH2の方がH3よりも高いということである。もちろん、採取される血液試料の量はまちまちであることから、内筒14としてはできるだけ上下方向に長いものを用いるのが望ましい。
【0034】
次に(d)に示すように、栓16が除去され、そして(e)に示すように上層36に対してノズル42を利用した分注すなわち吸引が実行される。これにより上層36を構成する液体が実質的に全て吸引される。ただし一部が残留してもよい。
【0035】
次に(f)に示すように、取出しユニットの機能により分離剤除去具としての内筒14が上方に取り上げられる。その際、内筒14によって保持された分離剤としての中間層38もそのまま除去されることになる。それと同時に、分離剤38の上部に残留していた上部液体も取り除くことが可能である。分離剤は極めて高粘度の液体であるため、このように筒状の部材の中に中間層を位置させれば、その筒状の部材の除去と同時に中間層それ自体を取り除くことが容易である。よって、(f)に示すように、容器12内には分離剤が実質的に存在しないことになり、(g)に示すようにその後における下層へのノズル42を利用した分注を確実に行うことができるという利点がある。すなわち下層40の吸引にあたって上層液体が混入したり分離剤がノズル42の栓体開口につまりを生じさせたりする問題を効果的に防止することが可能である。ちなみに分離剤が若干残留していても、それが次の下層の液体の吸引に影響を与えない程度であればそれは問題とならない。したがって分離剤除去部としては内筒14以外にも各種の形態が考えられる。いずれにしても遠心分離処理前に挿入される部材であって、それが遠心分離後に生じる中間層を確実に除去できる構造を有するものであればよい。
【0036】
図5には他の実施形態が示されている。採血管50は、本体52、内筒54及び栓56により構成される。本体52は下部58と上部60とを有し、符号62はそれらの連絡部すなわちテーパー部を示している。下部58の直径よりも上部60の直径の方が大きく、すなわち上部60は水平方向に肥大している。符号52Aは上部開口を示している。内筒54は図1に示した実施形態における内筒14と同様の形態を有し、本体52内に落とし込まれる。内筒54の外径は下部58の内径に対応している。栓56は上部開口52Aに装着されるものである。
【0037】
図6には、図5に示した採血管50の断面図が示されている。図示されるように上部60において、その内面と内筒54の上部外面との間に空間60Aが存在している。すなわち、内筒54の取り外し時において、そのような空間60Aを使って上方から内筒54をつまみ上げる部材を差し込むことができ、内筒54の上部外面を持ってそれを上方に取り出せるという利点がある。したがって取り出すための部材の血液による汚染を極力防止できるという利点がある
【0038】
図7には内筒の変形例が示されている。内筒14Aの下端部62は内側に折り返されている。これによって仮に流動性が高い分離剤38であっても、それを下側からかき上げあげあるいは引き上げながら内筒14Aとともに分離剤38を除去することが可能である。図8に示す別の変形例においては、内筒14Bの下面にメッシュ状の部材64が設けられており、そのような部材により中間層38に仮に流動性があってもそれを確実に上方に引き上げることが可能である。
【0039】
但し、図7及び図8に示したような構成によると、下層を構成する液体が内筒の下端部に付着し易く、内筒の取出し時において液滴の飛散といった問題が生じ易い。これに対し、図1及び図2に示した実施形態あるいは、図5及び図6に示した実施形態においては、内筒がストレートな筒状形態を有し、すなわちその下端部もそのまま筒状の形態を有しているため、液滴の落下という問題を軽減できるという利点がある。それでも内筒の引き上げ時点において下層を構成する液体の付着あるいは落下が予想されるため、液滴を捕獲する構成や振動により液滴を下に落とす構成等を採用してもよい。
【符号の説明】
【0040】
10 採血管、12 本体、14 内筒、16 栓。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分離剤が予め入れられ、生体から採取された血液試料が入れられる本体と、
前記本体の上部開口を塞ぐ栓と、
前記本体に予め入れられ、当該本体の上部レベルから遠心分離処理後に生じる分離剤からなる中間層の下面レベルを超えて下方へ伸びる長さを有し、前記中間層を構成する分離剤を捕獲する機能を有し、それ自身の引き上げ時に前記中間層を構成する分離剤も一緒に引き上げられるようにする分離剤除去具と、
を有することを特徴とする採血管。
【請求項2】
請求項1記載の採血管において、
前記分離剤除去具は、前記本体の内周面に近接した外周面を有する中空の筒状部材である、ことを特徴とする採血管。
【請求項3】
請求項1又は2記載の採血管において、
前記分離剤除去具は透明材料により構成された、ことを特徴とする採血管。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の採血管において、
前記分離剤除去具の上部には、それを取り出す際に利用される引っ掛け構造が設けられた、ことを特徴とする採血管。
【請求項5】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の採血管において、
前記本体の上部内において、当該上部の内面と前記分離剤除去具の上部外面との間に両者を隔てる差込用空間が形成され、
前記差込用空間は前記分離剤除去具を取り出す機構を挿入可能な大きさを有する、
ことを特徴とする採血管。
【請求項6】
請求項5記載の採血管において、
前記本体の上部は水平方向に肥大した肥大部を構成し、
前記差込用空間が前記肥大部の内面と前記分離剤除去具の上部外面との間に形成された、ことを特徴とする採血管。
【請求項7】
分離剤、血液試料及び分離剤除去具を収容した採血管に対する遠心分離処理を行う遠心分離処理ユニットと、
前記遠心分離処理後の採血管に対して、上層分注処理及び下層分注処理を行う分注処理ユニットと、
前記上層分注処理後且つ前記下層分注処理前に前記分離剤除去具を前記採血管から取り出すことによって、前記遠心分離処理後に生じる中間層を構成する分離剤を除去する取り出しユニットと、
を含み、
前記分離剤除去具は、前記採血管の本体の上部レベルから遠心分離処理後に生じる中間層の下面レベルを超えて下方へ伸びる長さを有し、前記中間層を構成する分離剤を捕獲する構造を有する、ことを特徴とする検体前処理装置。
【請求項8】
請求項7記載の装置において、
前記分離剤除去具は前記採血管に生体から採取された血液試料を入れる前に当該採血管に予め入れられた部材である、ことを特徴とする検体前処理装置。
【請求項9】
採血管に対して、生体から採取された血液試料を採血管に入れる前に、あるいは、生体から採取された血液試料を入れた後に、前記採血管に分離剤除去具を入れる準備工程と、
前記分離剤除去具が入れられた採血管に対して遠心分離処理を行う遠心分離処理工程と、
前記遠心分離処理後の採血管から前記分離剤除去具を取り出すことによって、前記遠心分離処理後に生じた中間層を構成する分離剤を除去する取り出し工程と、
を含むことを特徴とする検体前処理方法。
【請求項10】
採血管に対する遠心分離処理前に当該採血管内に生体から採取された血液試料と共に入れられる部材であって、
透明性を有する材料により構成され、
前記採血管における本体の内周面に近接した外周面を有し、
前記採血管における本体の上部レベルから、前記遠心分離処理後に生じる分離剤からなる中間層の下面レベルよりも低いレベルまで達する長さを有し、
前記中間層を構成する分離剤を捕獲する構造をもった下端部を有し、
それ自身の前記採血管からの取り出しにより、前記下端部に捕獲された分離剤が取り出される、ことを特徴とする分離剤除去具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−249674(P2010−249674A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−99682(P2009−99682)
【出願日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【出願人】(390029791)アロカ株式会社 (899)
【Fターム(参考)】