説明

接合体の製法

【課題】 少なくとも2つの被接合体が嵌挿部内に補強剛材が嵌挿固定された状態で、所定の位置関係で所定の接合部において接合した接合体を、確実性高く容易に得られる接合体の製法の提供。
【解決手段】
被接合体A・Bに嵌挿部a・bを設け、強磁性ステンレス鋼製の補強剛材Rの補強剛材後半部Raを嵌挿部aに嵌挿固定する。補強剛材Rの両面に接着剤層Dを有する補強剛材前半部Rbを、嵌挿部bに嵌挿し、嵌挿部a及び嵌挿部bが実質上外部に通じない状態とする。外部から補強剛材Rを電磁誘導加熱し、その熱で接着剤層Dを流動化させる。補強剛材Rがその厚さ方向に発振するように被接合体Bの外部に一対の磁極E・Fを配置して周期的に変動する磁場を嵌挿部bに形成する。補強剛材Rの厚さ方向振動により流動性接着剤を嵌挿部b内と補強剛材Rの間に行き渡らせた後、補強剛材Rの振動を停止させて流動性接着剤を固化させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木質部材或いはその他の部材を接合するにあたり、板状、棒状又はその他の形状の鋼製の或いはその他の材料からなる補強剛材を接合部に用いて接合部を補強及び補剛する接合体の製法に関する。
【背景技術】
【0002】
木質部材(或いはその他の部材)を、仕口や継手等により接合するにあたり、従来より、板状、棒状又はその他の形状の鋼製の(或いはその他の材料からなる)補強剛材を接合部に用いて接合部を補強及び補剛することが行われている。
【0003】
その場合、その接合体を用いた建築物やその他の建造物が完成した状態において、外部から補強剛材又は補強剛材を固定するための固定具ができるだけ見えないことが要請されることが多い。
【0004】
特許第3659725号には、「接続すべき姿勢に接続面を当接させた状態で連続する接続孔を複数の被接続材に穿設し、該複数の被接続材に連続する接続孔内に金属製の芯材を挿入して接続すべき姿勢に固定するとともに、被接続材の接続孔内に液状の熱硬化性合成樹脂剤を充填し、被接続材の外表面から前記金属製の芯材位置に磁力発生コイルを接近させ、該磁力発生コイルに高周波電流を通電することによって金属製の芯材を発熱させ、その熱によって接続孔内の熱硬化性合成樹脂剤の硬化を促進することを特徴とする高周波誘導加熱による無磁性材の接続方法」が記載されている。
【0005】
この場合、金属製の芯材と共に被接続材の接続孔内に充填された液状の熱硬化性合成樹脂剤を、外部から金属製の芯材を高周波誘導により加熱することにより硬化させて被接続材を接続するものである。
【0006】
この接続材の接続部に十分な強度や剛性を得るには、金属製の芯材と共に被接続材の接続孔内に充填された液状の熱硬化性合成樹脂剤が前記接続孔内で十分に行き渡る必要があるが、この点は、特に施工現場において実施する場合、必ずしも確実に実現されるとは限らない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3659725号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、従来技術における上記のような課題に鑑み行われたものであって、その目的とするところは、少なくとも2つの被接合体が、それらに設けられた嵌挿部内に補強剛材が嵌挿固定された状態で、所定の位置関係で所定の接合部において接合した接合体を、確実性高く容易に得ることができる接合体の製法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1) 上記目的を達成する本発明の接合体の製法は、
少なくとも2つの被接合体が所定の位置関係で所定の接合部において接合した接合体を得る方法において、
前記接合部を補強及び補剛するための補強剛材であって、前記被接合体の少なくとも1つである被接合体Aに所定部分が固定された補強剛材の他の部分を、前記被接合体のうち被接合体A以外のものである1又は2以上の被接合体Bに設けられた嵌挿部bに嵌挿して被接合体Aと被接合体Bを前記所定の位置関係とすると共に、補強剛材のうち嵌挿部bに嵌挿された部分と嵌挿部bの間に流動性接着剤が介在する状態とし、
前記嵌挿部bに嵌挿された補強剛材を、被接合体の外部から遠隔的に発振させることにより、前記流動性接着剤を嵌挿部b内と補強剛材の間に行き渡らせてその流動性接着剤の接着効果を確実化することを特徴とする。
【0010】
接合部を補強及び補剛するための補強剛材の所定部分が被接合体Aに固定されており、補強剛材の他の部分が1又は2以上の被接合体Bの嵌挿部bに嵌挿されて被接合体Aと被接合体Bが所定の位置関係(被接合体Aと被接合体Bが接合して接合体を構成する位置関係)となり、補強剛材のうち嵌挿部bに嵌挿された部分と嵌挿部bの間に流動性接着剤が介在する状態で、補強剛材のうち嵌挿部bに嵌挿された部分を、被接合体の外部から遠隔的に発振させることにより、前記流動性接着剤を嵌挿部b内と補強剛材の間に行き渡らせるものである。
【0011】
そのため、補強剛材と被接合体Bの嵌挿部bとの接着による被接合体Aと被接合体Bの接合を、補強剛材の所定部分が被接合体Aに固定され他の部分が嵌挿部b内に嵌挿された状態において容易に確実性高く行うことができる。
【0012】
(2) 本発明の接合体の製法は、上記被接合体Aに嵌挿部aが設けられており、上記補強剛材の所定部分が、前記嵌挿部aに嵌挿されて被接合体Aに固定されたものとすることができる。
【0013】
また、上記製法は、上記補強剛材のうち嵌挿部aに嵌挿された部分以外の部分を全て嵌挿部bに嵌挿するものとすることができる。
【0014】
この場合、嵌挿部bに嵌挿された補強剛材と被接合体Bの嵌挿部bとの接着による被接合体Aと被接合体Bの接合を、補強剛材のうち嵌挿部aに嵌挿された部分以外の部分が全て嵌挿部bに嵌挿された状態(すなわち補強剛材の全部が嵌挿部a及び嵌挿部b内に嵌挿された状態)において、容易に確実性高く行うことができる。
【0015】
また、上記製法は、被接合体Aと被接合体Bがそれぞれの接合面において当接した状態で接合するものであり、嵌挿部a及び嵌挿部bが、被接合体Aと被接合体Bの接合面にのみ開口し、被接合体Aと被接合体Bが上記所定の位置関係にある場合に嵌挿部a及び嵌挿部bは何れも実質上外部に通じていないものとすることができる。
【0016】
この場合、嵌挿部bに嵌挿された補強剛材と被接合体Bの嵌挿部bとの接着による被接合体Aと被接合体Bの接合を、補強剛材の所定部分とそれ以外の部分(すなわち補強剛材の全部)が嵌挿部a及び嵌挿部b内に嵌挿され、嵌挿部a及び嵌挿部bは何れも実質上外部に通じていない状態において容易に確実性高く行うことができる。
【0017】
また、上記製法は、上記補強剛材の所定部分を、被接合体Aに設けられた嵌挿部aに嵌挿固定する工程を含むものとすることができる。
【0018】
この場合、被接合体Aと被接合体Bの接合の前に、補強剛材の所定部分を、被接合体Aに設けられた嵌挿部aに嵌挿固定するものである。
【0019】
(3) 本発明の接合体の製法は、上記補強剛材を5乃至300Hzの周波数で発振させるものとすることができる。
【0020】
この場合、補強剛材を5乃至300Hzの周波数で発振させることにより、流動性接着剤を嵌挿部b内と補強剛材の間に行き渡らせるものである。
【0021】
(4) 本発明の接合体の製法は、補強剛材が強磁性体を含むものであり、被接合体の外部から、繰返し変動する磁場を嵌挿部bに形成することにより補強剛材を磁力により発振させるものとすることができる。
【0022】
(5) 本発明の接合体の製法は、上記補強剛材のうち嵌挿部bに嵌挿される部分の全部又は部分の表面に常温で固形状をなす接着剤層が形成されており、前記接着剤層と共に嵌挿部bに嵌挿した補強剛材の表面の接着剤層を加熱して流動化させる工程を含むものとすることができる。
【0023】
この場合、上記補強剛材のうち嵌挿部bに嵌挿される部分の全部又は部分の表面に常温で固形状をなす接着剤層が形成されており、前記接着剤層と共に嵌挿部bに嵌挿した補強剛材の表面の接着剤層を加熱して流動化させることにより、補強剛材のうち嵌挿部bに嵌挿された部分と嵌挿部bの間に流動性接着剤が介在する状態とすることができる。
【0024】
上記製法は、上記接着剤層と共に嵌挿部bに嵌挿した補強剛材を電磁誘導加熱し、その熱により、補強剛材の表面の接着剤層の接着剤を流動化させるものとすることができる。
【0025】
この場合、上記接着剤層と共に嵌挿部bに嵌挿した補強剛材を被接合体Bの外部から電磁誘導加熱し得、その熱により、補強剛材の表面の接着剤層の接着剤を流動化させるものであるから、補強剛材のうち嵌挿部bに嵌挿された部分と嵌挿部bの間に流動性接着剤が介在する状態とすることが容易且つ確実である。
【0026】
また上記製法は、上記接着剤層と共に嵌挿部bに嵌挿した補強剛材の表面の接着剤層をマイクロ波により加熱して流動化させるものとすることができる。
【0027】
この場合、上記接着剤層と共に嵌挿部bに嵌挿した補強剛材の表面の接着剤層を被接合体Bの外部からマイクロ波により加熱して流動化させ得るものであるから、補強剛材のうち嵌挿部bに嵌挿された部分と嵌挿部bの間に流動性接着剤が介在する状態とすることが容易且つ確実である。
【0028】
上記製法は、上記補強剛材のうち嵌挿部bに嵌挿される部分の全部又は部分の表面に、上記接着剤の接着効果を高めるための凸部および/または凹部を多数有するものとすることができる。
【0029】
この場合、補強剛材のうち嵌挿部bに嵌挿される部分の全部又は部分の表面の全部又は部分に、接着剤による補強剛材と嵌挿部bの接着効果を高めるための凸部および/または凹部を多数有するので、接着剤による補強剛材と被接合体の接着効果が高まり、接合部の補強及び補剛効果を高めることができる。
【0030】
また上記製法は、上記補強剛材のうち嵌挿部bに嵌挿される部分の全部又は部分の表面に、上記接着剤の接着効果を高めるための凸部および/または凹部を多数有し、
それらの凸部および/または凹部は上記接着剤層により覆われており、その接着剤層の表面は平滑であるものとすることができる。
【0031】
この場合、補強剛材のうち嵌挿部bに嵌挿される部分の全部又は部分に多数有する凸部および/または凹部は接着剤層により覆われており、その接着剤層の表面は平滑であるため、補強剛材のうち嵌挿部bに嵌挿される部分の表面の全部又は部分に凸部および/または凹部を多数有するにも拘わらず、接着剤層と共に補強剛材を嵌挿部bに嵌挿する作業を円滑に行い得、接着剤による接着後は、接着剤による補強剛材と嵌挿部bの接着効果が高まり、接合部の補強及び補剛効果を高めることができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明の接合体の製法によれば、少なくとも2つの被接合体が、少なくとも何れかの被接合体に設けられた嵌挿部内に補強剛材の部分が嵌挿固定された状態で、所定の位置関係で所定の接合部において接合した接合体を、確実性高く容易に得ることができる。
【0033】
そのため、施工現場における木質部材の接合にも好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】第1の例についての斜視図である。
【図2】第1の例についての斜視図である。
【図3】第1の例についての斜視図である。
【図4】第2の例についての正面側斜視図である。
【図5】第2の例についての背面側斜視図である。
【図6】第2の例についての正面側斜視図である。
【図7】第2の例についての正面側斜視図である。
【図8】第3の例についての正面側斜視図である。
【図9】第4の例についての正面図である。
【図10】図9におけるIX−IX線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明の実施の形態を、図面を参照しつつ説明する。
【0036】
(1) 図1乃至図3は、本発明の接合体Gの製法の実施の形態の一例についてのものである。
【0037】
この例は、横断面(軸線方向に対し直交する横断面)の形状が互いに同一である2本の木製角材を被接合体とし、一方の被接合体Aと他方の被接合体Bの軸方向端面部同士(所定の接合部)が、両被接合体の軸線及び横断面が一致すると共にそれらの端面同士が接する位置関係(所定の位置関係)で接合した接合体Gを製造するものである。
【0038】
接合部を補強及び補剛するための補強剛材Rは、強磁性ステンレス鋼製の長方形状のプレートの両面全体に小角柱形状の凸部Rpが多数満遍なく形成されてなるものであり、補強剛材Rの長さは幅の約3倍である。補強剛材Rの両面の凸部Rpは、例えば溶植により設けることができるが、これに限るものではない。
【0039】
補強剛材Rのうち長さ方向の半分である補強剛材前半部Rbの両面は、それぞれに形成されている各凸部Rp全体が、常温で固形状をなし加熱により流動化する接着剤からなる接着剤層Dにより覆われ、その接着剤層Dの表面は平滑状をなす(尤も、接着剤層により覆われていない補強剛材を用いることもできる。)。
【0040】
両被接合体A・Bには、それぞれの前後側面に対し平行状をなし、軸方向端面の中央部を通り帯状に開口するスリット状の穴からなる嵌挿部a・bが設けられている。嵌挿部a・bの開口部の開口長は、何れも接着剤層Dで覆われた補強剛材R全体の幅と同等又はそれよりもやや長目であり、嵌挿部a・bの深さは、補強剛材Rの長さの半分又はそれよりもやや深く形成されている。
【0041】
補強剛材Rのうち接着剤層Dを有しない長さ方向の半分である補強剛材後半部Raは、図2に示されるように、予め被接合体Aの嵌挿部aに嵌挿固定されている。例えば、被接合体Aの嵌挿部aに流動性接着剤が充填され且つ補強剛材Rの長さ方向の半分が嵌挿された状態で、その流動性接着剤を固化させることにより、補強剛材後半部Raが被接合体Aに固定されたものとすることができる。このような嵌挿固定は、設備が整った工場等において行うことが好ましいが、これに限るものではない。
【0042】
被接合体Aと被接合体Bを建築施工現場(これに限るものではない)において接合するには、先ず、被接合体Aに固定された補強剛材Rのうち長さ方向の残部、すなわち両面に前記接着剤層Dが形成された部分である補強剛材前半部Rbを、被接合体Bの嵌挿部bに嵌挿し、被接合体Aと被接合体Bを前記所定の位置関係(被接合体Aと被接合体Bの軸線及び横断面が一致すると共にそれらの軸方向端面同士が接する位置関係)とする。この状態において、補強剛材Rは外部に対し掩蔽されており、嵌挿部a及び嵌挿部bは何れも実質上外部に通じていない。なお、被接合体Aと被接合体Bの接合は、それらの両方又は一方について必要な仮支持を施した状態で行うことができる。
【0043】
次いで、被接合体Bの外部から、電磁誘導加熱装置により補強剛材Rを電磁誘導加熱し、その熱により、補強剛材Rの表面の接着剤層Dの接着剤を流動化させる。これにより、補強剛材Rのうち嵌挿部bに嵌挿された部分と嵌挿部bの間(補強剛材Rのうち嵌挿部bに嵌挿された部分の外側と嵌挿部bの内側の間隙)に流動性接着剤が介在する状態とすることができる(なお、接着剤層により覆われていない補強剛材を用いる場合は、常温で流動性接着剤を被接合体Bの嵌挿部bに充填して補強剛材Rのうち嵌挿部bに嵌挿された部分と嵌挿部bの間に流動性接着剤が介在する状態とする。)。
【0044】
この状態において、図3に示されるように、嵌挿部bに嵌挿された補強剛材Rがその厚さ方向に磁力により発振するように、嵌挿部bに嵌挿された補強剛材Rに平行に被接合体Bの外部に一対の磁極E・Fを配置し、約100Hzで周期的に変動する磁場を嵌挿部bに形成する(磁場形成装置の他の部分は図示を略す)。これにより生じる、補強剛材Rの厚さ方向の振動により、補強剛材Rが外部に対し掩蔽され、嵌挿部a及び嵌挿部bが何れも実質上外部に通じていない状態においても、流動性接着剤を嵌挿部b内と補強剛材Rの間に十分に行き渡らせることができる。なお、必要に応じ、流動性接着剤が外部へ漏出することを防ぐための(例えば粘着テープによる)目止めを行うことができる。
【0045】
その後、補強剛材Rの振動を停止させ、流動性接着剤を固化させることにより、被接合体Aと被接合体Bが前記所定の位置関係で所定の接合部において接合し、補強剛材Rが外部に対し掩蔽され、嵌挿部a及び嵌挿部bは何れも実質上外部に通じていない状態の接合体Gが得られる。流動性接着剤を、補強剛材Rの厚さ方向の振動により、嵌挿部b内と補強剛材Rの間に十分に行き渡らせることができるので、その接着剤による補強剛材Rと被接合体Bとの接着効果を確実化することができる。
【0046】
(2) 図4乃至図7は、本発明の接合体Hの製法の実施の形態の別の例についてのものである。
【0047】
この例は、横断面(軸線方向に対し直交する横断面)の形状が互いに同一である木製角材からなる下柱部材10と上柱部材12、並びに、横断面(軸線方向に対し直交する横断面)の形状が互いに同一である木製角材からなる左梁部材14、右梁部材16、及び前梁部材18が、被接合体として接合した接合体Hを製造するものである。
【0048】
下柱部材10と上柱部材12は、軸方向端面部同士(所定の接合部)が、両者の軸線及び横断面が一致すると共にそれらの端面同士が接する位置関係(所定の位置関係)で接合される。
【0049】
左梁部材14の軸方向端面部及び右梁部材16の軸方向端面部と下柱部材10の上端部(所定の接合部)は、左梁部材14と右梁部材16の軸線及び横断面が一致し且つそれらの軸線と下柱部材10の軸線が直交すると共に左梁部材14の軸方向端面と右梁部材16の軸方向端面がそれぞれ下柱部材10の上端部の左右側面に接する位置関係(所定の位置関係)で接合される。
【0050】
前梁部材18の軸方向端面部と下柱部材10の上端部(所定の接合部)は、前梁部材18の軸線が下柱部材10の軸線並びに左梁部材14の軸線及び右梁部材16の軸線と直交する状態で前梁部材18の軸方向端面が下柱部材10の上端部の前側面に接する位置関係(所定の位置関係)で接合される。
【0051】
接合部を補強及び補剛するための補強剛材Sは、強磁性ステンレス鋼製であり、横長長方形状をなす下部S11と当該下部S11の中央部から上方に突出した上部S12からなる垂直の横方向プレート部S10と、横方向プレート部S10の下部S11中央の前後に上下方向の交線に沿って直交状に溶接された垂直の縦方向プレート部S20からなり、横方向プレート部S10の下部S11と縦方向プレート部S20の上下方向の幅及び位置は一致している。
【0052】
補強剛材Sの横方向プレート部S10の左側部分及び右側部分の長さ並びに縦方向プレート部S20の前側部分S21の長さ(横方向プレート部S10と縦方向プレート部S20の交線から端部までの長さ)は、それぞれ横方向プレート部S10の下部S11及び縦方向プレート部S20の上下方向幅の1.5倍程度であり、横方向プレート部S10の上部S12の上下方向長さは、横方向プレート部S10の上部S12の水平方向幅と同程度であり、縦方向プレート部S20の後側部分S22の長さ(横方向プレート部S10と縦方向プレート部S20の交線から端部までの長さ)は、縦方向プレート部S20の上下方向幅の0.5倍程度である。
【0053】
補強剛材Sの横方向プレート部S10と縦方向プレート部S20のそれぞれの両面全体には小角柱形状の凸部Spが多数満遍なく形成されている。これらの凸部Spは、例えば溶植により設けることができるが、これに限るものではない。
【0054】
下柱部材10の上端部には、横方向プレート部S10の下部S11及び縦方向プレート部S20の上下方向幅と同等であるかやや深い横方向スリット部10a及び縦方向スリット部10bが、それぞれ下柱部材10の縦横側面に平行に十字状をなすように形成されており、下柱部材10の上端部の上端面並びに左右及び前側面に開口し、後側面には開口していない。
【0055】
これらの横方向スリット部10a及び縦方向スリット部10bからなる中央嵌挿部に、補強剛材Sの横方向プレート部S10の下部S11及び縦方向プレート部S20のうち、それらの交線を中心とした部分である交差部が嵌挿固定される。
【0056】
補強剛材Sの横方向プレート部S10のうち交差部の左方、右方及び上方がそれぞれ左挿入部Sl、右挿入部Sr及び上挿入部Su、縦方向プレート部S20のうち交差部の前方が前挿入部Sfである。
【0057】
補強剛材Sの左挿入部Sl、右挿入部Sr、上挿入部Su及び前挿入部Sfのそれぞれ両面は、それぞれに形成されている凸部Sp全体が、常温で固形状をなし加熱により流動化する接着剤からなる接着剤層(図示せず)により覆われ、その接着剤層の表面は平滑状をなす(尤も、接着剤層により覆われていない補強剛材を用いることもできる。)。
【0058】
左梁部材14、右梁部材16及び上柱部材12には、それぞれの前後側面に対し平行状をなし、軸方向端面の中央部を通り帯状に開口するスリット状の穴からなる左嵌挿部14a、右嵌挿部16a及び上嵌挿部12aが設けられている。また前梁部材18には、左右側面対し平行状をなし、軸方向端面の中央部を通り帯状に開口するスリット状の穴からなる前嵌挿部18aが設けられている。
【0059】
左嵌挿部14a、右嵌挿部16a、上嵌挿部12a及び前嵌挿部18aの開口部の開口長は、それぞれ、対応する左挿入部Sl、右挿入部Sr、上挿入部Su及び前挿入部Sfの幅と同等又はやや長目であり、左嵌挿部14a、右嵌挿部16a、上嵌挿部12a及び前嵌挿部18aの深さは、それぞれ対応する左挿入部Sl、右挿入部Sr、上挿入部Su及び前挿入部Sfの長さと同等に又はやや深く形成されている。
【0060】
補強剛材Sのうち接着剤層を有しない部分である交差部は、図6に示されるように、予め、下柱部材10の中央嵌挿部に対し、横方向プレート部S10と縦方向プレート部S20の交線と下柱部材10の軸線が一致する状態で嵌挿固定されている。例えば、下柱部材10の横方向スリット部10a及び縦方向スリット部10bからなる中央嵌挿部に流動性接着剤が充填され且つ補強剛材Sの前記交差部が嵌挿された状態で、その流動性接着剤を固化させることにより、補強剛材Sの交差部が、下柱部材10の上端部に固定されたものとすることができる。この嵌挿固定は、設備が整った工場等において行うことが好ましいが、これに限るものではない。必要に応じ、固化前の流動性接着剤が中央嵌挿部から側方等へ漏出することを防ぐための(例えば粘着テープによる)目止めを行うことができる。
【0061】
下柱部材10と、左梁部材14、右梁部材16、上柱部材12、及び前梁部材18とを建築施工現場(これに限るものではない)において接合するには、それらの左嵌挿部14a、右嵌挿部16a、上嵌挿部12a及び前嵌挿部18aに、それぞれ補強剛材Sの左挿入部Sl、右挿入部Sr、上挿入部Su及び前挿入部Sfを嵌挿し、それらの部材を前記所定の位置関係とする。各部材同士が密接して中央嵌挿部の上方及び各側方開口が塞がれるようにすることにより、補強剛材Sが外部に対し掩蔽され、各嵌挿部は何れも実質上外部に通じない状態となる。
【0062】
次いで、各部材における左嵌挿部14a、右嵌挿部16a、上嵌挿部12a及び前嵌挿部18aの外部から、電磁誘導加熱装置によりそれぞれ補強剛材Sの左挿入部Sl、右挿入部Sr、上挿入部Su及び前挿入部Sfを電磁誘導加熱し、その熱により、補強剛材Sの各挿入部の表面の接着剤層の接着剤を流動化させる。これにより、補強剛材Sのうち各嵌挿部に嵌挿された部分と各嵌挿部の間(補強剛材Sの各挿入部の外側と、対応する各嵌挿部の内側との間隙)に流動性接着剤が介在する状態とすることができる(接着剤層により覆われていない補強剛材を用いる場合は、常温で流動性接着剤を各嵌挿部に充填することにより同様に補強剛材のうち各嵌挿部に嵌挿された部分と各嵌挿部の間に流動性接着剤が介在する状態とする。)。なお、各被接合体同士の接合は、それらの何れか1以上について必要な仮支持を施した状態で行うことができる。
【0063】
この状態において、各部材の嵌挿部に嵌挿された補強剛材Sの各挿入部がその厚さ方向に磁力により発振するように、各部材の外部から、約100Hzで周期的に変動する磁場を各挿入部に形成する。これにより生じる、補強剛材Sの厚さ方向の磁力による振動により、補強剛材Sが外部に対し掩蔽され、各嵌挿部が何れも実質上外部に通じていない状態においても、流動性接着剤を各嵌挿部内と補強剛材Sの各挿入部の間に十分に行き渡らせることができる。なお、必要に応じ、流動性接着剤が外部へ漏出することを防ぐための(例えば粘着テープによる)目止めを行うことができる。
【0064】
その後、補強剛材Sの振動を停止させ、流動性接着剤を固化させることにより、図7に示されるように、下柱部材10と、左梁部材14、右梁部材16、上柱部材12、及び前梁部材18が前記所定の位置関係で所定の接合部において接合し、補強剛材Sが外部に対し掩蔽され、各嵌挿部は何れも実質上外部に通じていない状態の接合体Hが得られる。流動性接着剤を、補強剛材Sの厚さ方向の振動により、各嵌挿部内と補強剛材Sの各挿入部の間に十分に行き渡らせることができるので、その接着剤による補強剛材Sと各部材との接着効果を確実化することができる。接着剤による接着は、各被接合体同士の接合面についても行うことができる。
【0065】
なお、各嵌挿部に対する各挿入部の嵌挿、各嵌挿部に嵌挿された挿入部の電磁誘導加熱、及び各挿入部の発振は、一つ一つの挿入部毎に順次行うものとすることができるほか、二以上の挿入部又は全挿入部について同時に行うことも可能である。
【0066】
(3) 図8は、本発明の接合体の製法の実施の形態の更に別の例についてのものである。
【0067】
この例は、補強剛材Sにおける横方向プレート部S10の下部S11及び縦方向プレート部S20のうち、それらの交線を中心とした部分である交差部が、下柱部材10の横断面の縦横寸法より小さい範囲で下方に延設された延設交差部Scが二点鎖線で示され、それに対応して、下柱部材10の内部における横方向スリット部10a及び縦方向スリット部10bの下方に、延設交差部Scが嵌挿され得るように交差スリット部(図示せず。交差スリット部は下柱部材10の側面に開放されていない。)が形成されている点と、
両側に開放したスリット状の斜材嵌挿部20aを下端部に備えた斜材20が被接合体として接合される点と、
横方向プレート部S10が右上方に拡張されて下部S11と上部S12にわたる右上部S13に形成され、斜材20の斜材嵌挿部20aに右上部S13を嵌挿して上柱部材12等と同様に接合される点と、
右嵌挿部16aが右梁部材16の上側面に開放すると共に上嵌挿部12aが上柱部材12の右側面に開放(図示せず)してそれらの開放箇所に横方向プレート部S10の右上部S13と上部S12及び下部S11との境界部が位置している点
を除き、
上記(2)の例と同様である。
【0068】
(4) 図9及び図10は、本発明の接合体の製法の実施の形態の更に別の例についてのものである。
【0069】
この例は、
補強剛材Sにおける横方向プレート部S10が、前後平行状に二重に設けられ、それに対応して、下柱部材10における方形横断面の上端部に、横方向スリット部10aが前後平行状に二重に設けられると共に、左梁部材14及び右梁部材16にそれぞれスリット状の穴からなる左嵌挿部14a及び右嵌挿部16aが前後平行状に二重に設けられている点、
下柱部材10における横方向スリット部10a及び縦方向スリット部10bを有する方形横断面の上端部の下方が丸太状部10gであり上端部よりも横断面が大きいある点、及び
下柱部材10の上端部よりも上柱部材12の横断面が小さく、横方向スリット部10a及び縦方向スリット部10bの上方開口が上柱部材12によっても一部塞がれない点を除き、
上記(2)の例と同様である。
【0070】
(5) 本発明における被接合体は、主に木質部材(集成材等も含む)からなるものを対象とするが、必ずしもこれに限るものではない。
【0071】
本発明における接合体は、被接合体として例えば柱、梁、土台等の部材のうち同種部材同士又は異種部材同士の少なくとも2つの部材が接合したものとすることができ、3以上の部材が接合したものであってもよい。
【0072】
接合される被接合体の位置関係としては、例えば、被接合体が一定の軸線を有する部材である場合、被接合体同士の軸線が一致(若しくはほぼ一致)するもの又は平行であるもの、及び、被接合体同士の軸線が直交又はその他の角度で交差するものを挙げることができる。被接合体同士の軸線が平行であるものとしては、例えば、横断面の大きさが異なる被接合体の端面同士が、それらの被接合体の軸線が平行にずれた状態で接して接合するものを挙げることができる。
【0073】
被接合体が接合される接合部としては、例えば、被接合体が一定の軸線を有する部材である場合、軸線方向における端部の軸方向端面、端部の側面、又は中間部の側面を挙げることができ、接合される被接合体の同じ位置同士又は異なる位置同士が接合されるものとすることができる。被接合体同士の接合は、各被接合体の所定の接合面同士が接する状態で行われることが望ましい。
【0074】
接合部を補強及び補剛するための補強剛材の材料としては、例えばステンレス鋼やその他の鋼、炭素繊維強化プラスチックその他の複合材料等を用いることができる。補強剛材の材料として好ましいものの例としては、強磁性ステンレス鋼その他の強磁性鋼、強磁性材料を含む複合材料を挙げることができ、補強剛材の全体が強磁性材料製又は強磁性材料を含むもののほか、必要部分のみが強磁性材料製又は強磁性材料を含むものとすることもできる。
【0075】
補強剛材は、例えば、全体が板状、棒状(角棒若しくは丸棒等)、筒状(角筒若しくは円筒等)、格子状、網状、又は、枠状部若しくは格子状部に網状体が張設固定された構造であるもの、或いは、板状部、棒状部、筒状部、格子状部、網状部、及び枠状部若しくは格子状部に網状体が張設固定された構造部分の1種又は2種以上が直交状に或いはその他の角度で交差した状態で溶接又は一体成形等により一体化したものとすることができる。なお、枠状部若しくは格子状部に網状体が張設固定された構造としては、例えば、枠状部若しくは格子状部の内側の全体又は一部に網状体が張設固定された構造、及び、枠状部若しくは格子状部の外側(両側又は片側)の全体又は一部に網状体が張設固定された構造を挙げることができる。より具体的には、枠状部若しくは格子状部及び網状体が前記のような強磁性材料製であり、枠状部若しくは格子状部に対し網状体が溶接により張設固定されたものを挙げることができる。
【0076】
補強剛材のうち、被接合体に設けられた嵌挿部に嵌挿され、嵌挿部の間に流動性接着剤が介在する状態でその流動性接着剤を固化させることにより嵌挿部に接着固定する部分の全部又は部分の表面には、接着剤による補強剛材と被接合体の接着効果を高めるための凸部、凹部、透孔、スリット等を多数有するものとすることが好ましい。そのような凸部、凹部、透孔、スリット等は、例えば、多数の小凸部の溶植、補強剛材を構成すべき板状体を波形状に形成し若しくは透孔やスリットを形成するプレス加工、又は、補強剛材を構成すべき板状体に対する多数の小突起の切り起こし等により形成することができる。なお、補強剛材の剛性が被接合体に比し過大である場合(例えば補強剛材が鋼製で被接合体が木製であって補強剛材の剛性が被接合体に比し過大である場合)、補強剛材の剛性を、透孔やスリット等を設けることにより適度に低下させることができる。また、補強剛材のうち、被接合体に設けられた嵌挿部に嵌挿され、嵌挿部の間に流動性接着剤が介在する状態でその流動性接着剤を固化させることにより嵌挿部に接着固定する部分が、格子状、網状、又は、枠状部若しくは格子状部に網状体が張設固定された構造である場合も、接着剤による補強剛材と被接合体の接着効果を高めることができ、且つ、補強剛材の剛性を適度に低下させることができる。
【0077】
被接合体に設ける嵌挿部は、他の被接合体との接合面(又はその他の接合部)に臨むスリット状の穴とすることができる。嵌挿部は、接合面(又はその他の接合部)に臨む開口部以外の開口部を有しないものであることが好ましいが、両方又は一方の側方等に開口したものとすることもできる。被接合体に設けられた嵌挿部に対する補強剛材の嵌挿を接合面(又はその他の接合部)の側からではなく、接合面(又はその他の接合部)に対し直交する方向等の側方から行う必要がある場合(例えば、隣接柱間に梁を架設する際に、梁部材を上方、下方又は側方から隣接柱間に嵌め込むようにする必要がある場合)や、被接合体に設けられた嵌挿部に補強剛材が嵌挿された状態において補強剛材が側方等にはみ出す場合は、嵌挿部が接合面(又はその他の接合部)に臨む開口部以外に側方等にも開口したものとする必要が生じる。嵌挿部は、補強剛材(補強剛材が接着剤層により覆われている場合は接着剤層を含む全体)の外形寸法と同等又はそれよりやや大き目とすることができる。
【0078】
被接合体の少なくとも1つである被接合体A(被接合体Aを複数とすることもできる)に対する補強剛材の所定部分の固定は、被接合体のうち被接合体A以外のものである1又は2以上の被接合体Bにそれぞれ設けられた嵌挿部bに対する補強剛材の他の部分の嵌挿固定に先立って行うことができる。この場合の嵌挿固定は、設備が整った工場等において行うものとすることが好ましいがこれに限るものではない。
【0079】
被接合体Aに対する補強剛材の所定部分の固定は任意の手段により行い得るが、被接合体Aに嵌挿部aを設け、その嵌挿部aに対し補強剛材の所定部分を嵌挿して固定することが望ましい。例えば、被接合体Aの嵌挿部aに流動性接着剤が充填され補強剛材の所定部分が嵌挿された状態で、その流動性接着剤(好ましくは熱硬化性接着剤等の、硬化後の耐熱性に優れた接着剤。例えば常温で流動性を有するものを用いることもでき、常温で固体であり加熱により流動性となるものを用いることもできる。)を固化させることにより、補強剛材の所定部分が被接合体Aに固定されたものとすることができる。流動性接着剤は、被接合体Aにおける嵌挿部aの開口部から充填することができる他、被接合体Aに別途設けた注入孔を通じて嵌挿部aに充填し、必要に応じ後でその注入孔を閉塞するようにすることもできる。必要に応じ、流動性接着剤が漏出することを防ぐための(例えば粘着テープによる)目止めを行うことができる。なお、嵌挿固定は、接着剤以外の固定手段により行うことも可能である。
【0080】
被接合体のうち被接合体A以外のものである1又は2以上の被接合体Bにそれぞれ設けられた嵌挿部bに、補強剛材のうち被接合体Aに固定された所定部分以外の部分(好ましくは所定部分以外の部分の全部)を嵌挿し、補強剛材のうち嵌挿部bに嵌挿された部分と嵌挿部bの間に流動性接着剤(好ましくは熱硬化性接着剤等の、硬化後の耐熱性に優れた接着剤。例えば常温で流動性を有するものを用いることもでき、常温で固体であり加熱により流動性となるものを用いることもできる。)が介在する状態とし、嵌挿部bに嵌挿された補強剛材を、被接合体の外部から遠隔的に発振させることにより、前記流動性接着剤を嵌挿部b内と補強剛材の間に行き渡らせてその流動性接着剤の接着効果を確実化することができる。流動性接着剤は、被接合体Bにおける嵌挿部bの開口部から充填することができる他、被接合体Bに別途設けた注入孔を通じて嵌挿部bに充填し、必要に応じ後でその注入孔を閉塞するようにすることもできる。尤も、流動性接着剤を嵌挿部b内と補強剛材の間に行き渡らせるというのは、必ずしも、嵌挿部b内と補強剛材の間の全空間に行き渡らせることを要するものではなく、接着効果を確実化する上で十分な程度に行き渡らせることができればよい。補強剛材自体が透孔等の空間部を有する場合は、その透孔等の空間部内にも前記発振により接着剤が行き渡る状態とすることができる。補強剛材が格子状、網状、又は、枠状部若しくは格子状部に網状体が張設固定された構造である場合、それらの格子の目、網の目、枠の内側、枠状部の両側に網状体が張設固定された場合の両網状体の間等の空間部にも前記発振により接着剤が行き渡る状態とすることができる。必要に応じ、流動性接着剤が漏出することを防ぐための(例えば粘着テープによる)目止めを行うことができる。なお、各被接合体同士の接合は、それらの何れか1以上について必要な仮支持を施した状態で行うことができる。
【0081】
補強剛材の発振は、5乃至300Hzの周波数とすることができる。好ましくは10乃至150Hzである。周波数は一定とすることができるが、これに限らず、例えば、順次2通り以上の周波数で補強剛材を発振させることもできる。
【0082】
嵌挿部bに嵌挿された補強剛材を、被接合体の外部から遠隔的に発振させるには、例えば、少なくともその部分の補強剛材が強磁性材料製又は強磁性材料を含有するものとし、被接合体の外部から、繰返し(例えば周期的に)変動する磁場を当該嵌挿部bに形成することによりその嵌挿部bに嵌挿された補強剛材を磁力により発振させるものとすることができる。尤も、その他の手段も適宜採用し得る。
【0083】
被接合体のうち被接合体A以外のものである1又は2以上の被接合体Bにそれぞれ設けられた嵌挿部bに嵌挿固定すべき補強剛材の部分のうち全部又は部分の表面には、常温で固形状をなし、加熱により流動化する接着剤層(好ましくは熱硬化性接着剤等の、硬化後の耐熱性に優れた接着剤の層)が形成されていることが好ましい。また、補強剛材の表面に凸部および/または凹部が多数設けられている場合、これらの凸部および/または凹部は、この接着剤層により覆われていることが望ましく、その接着剤層の表面は平滑であることが望ましい。補強剛材が格子状、網状、又は、枠状部若しくは格子状部に網状体が張設固定された構造である場合も、それらの表面部はこの接着剤層により覆われていることが望ましく、その接着剤層の表面は平滑であることが望ましい。また、補強剛材が透孔を有するものであったり、格子状、網状、又は、枠状部若しくは格子状部に網状体が張設固定された構造である等、補強剛材自体が空間部を有する場合は、その空間部内にも前記接着剤が行き渡る状態とすることができる。補強剛材が格子状、網状、又は、枠状部若しくは格子状部に網状体が張設固定された構造である場合、それらの格子の目、網の目、枠の内側、枠状部の両側に網状体が張設固定された場合の両網状体の間等の空間部にも前記の常温で固形状をなし、加熱により流動化する接着剤が存在し又は充填されているものとすることができる。
【0084】
補強剛材の全部又は部分の表面に形成された接着剤層を加熱して流動化させるのは、被接合体Bの外部から行うことが望ましい。例えば、嵌挿部bに嵌挿した補強剛材を電磁誘導加熱し、その熱により、補強剛材の表面の接着剤層の接着剤を流動化させることや、接着剤層と共に嵌挿部bに嵌挿した補強剛材の表面の接着剤層をマイクロ波により加熱して流動化させること等の手段を適宜とることができる。
【0085】
なお、接合部を補強及び補剛するための補強剛材の所定部分が被接合体Aの嵌挿部aに嵌挿されると共に補強剛材の他の部分(好ましくは他の全部)が1又は2以上の被接合体Bの嵌挿部bに嵌挿されて被接合体Aと被接合体Bが所定の位置関係(被接合体Aと被接合体Bが接合して接合体を構成する位置関係)となり、補強剛材のうち嵌挿部aに嵌挿された部分と嵌挿部aの間及び補強剛材のうち嵌挿部bに嵌挿された部分と嵌挿部bの間にそれぞれに流動性接着剤が介在する状態で、嵌挿部a及び嵌挿部bに嵌挿された補強剛材を、被接合体の外部から遠隔的に発振させることにより、前記流動性接着剤を嵌挿部a内及び嵌挿部b内と補強剛材の間に行き渡らせる(尤も、流動性接着剤を嵌挿部a内及び嵌挿部b内と補強剛材の間の全空間に行き渡らせることまでは必ずしも要しない。)こともできる。この場合、補強剛材と被接合体Aの嵌挿部a及び被接合体Bの嵌挿部bとの接着による被接合体Aと被接合体Bの接合を、補強剛材が嵌挿部a及び嵌挿部b内に嵌挿された状態において確実性高く容易に行うことができる。なお、被接合体同士の接合面についても接着剤による接着を行うことができる。
【0086】
以上の実施の形態についての記述における上下位置関係は、単に図に基づいた説明の便宜のためのものであって、実際の使用状態等を限定するものではない。
【符号の説明】
【0087】
A 被接合体
a 嵌挿部
B 被接合体
b 嵌挿部
D 接着剤層
E 磁極
F 磁極
G 接合体
H 接合体
R 補強剛材
Ra 補強剛材後半部
Rb 補強剛材前半部
Rp 凸部
S 補強剛材
S10 横方向プレート部
S11 下部
S12 上部
S13 右上部
S20 縦方向プレート部
S21 前側部分
S22 後側部分
Sc 延設交差部
Sf 前挿入部
Sl 左挿入部
Sp 凸部
Sr 右挿入部
Su 上挿入部
10 下柱部材
10a 横方向スリット部
10b 縦方向スリット部
10g 丸太状部
12 上柱部材
12a 上嵌挿部
14 左梁部材
14a 左嵌挿部
16 右梁部材
16a 右嵌挿部
18 前梁部材
18a 前嵌挿部
20 斜材
20a 斜材嵌挿部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つの被接合体が所定の位置関係で所定の接合部において接合した接合体を得る方法において、
前記接合部を補強及び補剛するための補強剛材であって、前記被接合体の少なくとも1つである被接合体Aに所定部分が固定された補強剛材の他の部分を、前記被接合体のうち被接合体A以外のものである1又は2以上の被接合体Bに設けられた嵌挿部bに嵌挿して被接合体Aと被接合体Bを前記所定の位置関係とすると共に、補強剛材のうち嵌挿部bに嵌挿された部分と嵌挿部bの間に流動性接着剤が介在する状態とし、
前記嵌挿部bに嵌挿された補強剛材を、被接合体の外部から遠隔的に発振させることにより、前記流動性接着剤を嵌挿部b内と補強剛材の間に行き渡らせてその流動性接着剤の接着効果を確実化することを特徴とする接合体の製法。
【請求項2】
上記被接合体Aに嵌挿部aが設けられており、上記補強剛材の所定部分が、前記嵌挿部aに嵌挿されて被接合体Aに固定されたものである請求項1記載の接合体の製法。
【請求項3】
上記補強剛材のうち嵌挿部aに嵌挿された部分以外の部分を全て嵌挿部bに嵌挿する請求項2記載の接合体の製法。
【請求項4】
被接合体Aと被接合体Bがそれぞれの接合面において当接した状態で接合するものであり、嵌挿部a及び嵌挿部bは、被接合体Aと被接合体Bの接合面にのみ開口し、被接合体Aと被接合体Bが上記所定の位置関係にある場合に嵌挿部a及び嵌挿部bは何れも実質上外部に通じていない請求項3記載の接合体の製法。
【請求項5】
上記補強剛材の所定部分を、被接合体Aに設けられた嵌挿部aに嵌挿固定する工程を含む請求項2乃至4の何れか1項に記載の接合体の製法。
【請求項6】
補強剛材を5乃至300Hzの周波数で発振させる請求項1乃至5の何れか1項に記載の接合体の製法。
【請求項7】
補強剛材が強磁性体を含むものであり、被接合体の外部から、繰返し変動する磁場を嵌挿部bに形成することにより補強剛材を発振させる請求項1乃至6の何れか1項に記載の接合体の製法。
【請求項8】
上記補強剛材のうち嵌挿部bに嵌挿される部分の全部又は部分の表面に常温で固形状をなす接着剤層が形成されており、前記接着剤層と共に嵌挿部bに嵌挿した補強剛材の表面の接着剤層を加熱して流動化させる工程を含む請求項1乃至7の何れか1項に記載の接合体の製法。
【請求項9】
上記接着剤層と共に嵌挿部bに嵌挿した補強剛材を電磁誘導加熱し、その熱により、補強剛材の表面の接着剤層の接着剤を流動化させる請求項8記載の接合体の製法。
【請求項10】
上記接着剤層と共に嵌挿部bに嵌挿した補強剛材の表面の接着剤層をマイクロ波により加熱して流動化させる請求項8記載の接合体の製法。
【請求項11】
上記補強剛材のうち嵌挿部bに嵌挿される部分の全部又は部分の表面に、上記接着剤の接着効果を高めるための凸部および/または凹部を多数有する請求項8、9又は10記載の接合体の製法。
【請求項12】
上記補強剛材のうち嵌挿部bに嵌挿される部分の全部又は部分の表面に、上記接着剤の接着効果を高めるための凸部および/または凹部を多数有し、
それらの凸部および/または凹部は上記接着剤層により覆われており、その接着剤層の表面は平滑である請求項8、9又は10記載の接合体の製法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−188916(P2012−188916A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−131705(P2011−131705)
【出願日】平成23年6月13日(2011.6.13)
【出願人】(511046449)株式会社ファイブストレージ (1)
【Fターム(参考)】