説明

接合強度測定装置および接合強度測定方法

【課題】 複数のバンプを有するチップ部品と回路基板の電極の接合力の測定精度を高め、測定結果から最適な接合条件を求めることができる接合強度測定装置および接合強度測定方法を提供すること。
【解決手段】 チップ部品の回路基板に接合する面と対向する面に、接着材を介して接続されるチップ部品を引き剥がす引き剥がしヘッドと、前記引き剥がしヘッドに、引き剥がし力を付与する引き剥がし力付与手段と、前記引き剥がし力を測定する、引き剥がし力測定手段と、回路基板とチップ部品の平行度を維持したまま、前記引き剥がし力が付与される回路基板を保持する平行度調整機構と、を備えた接合強度測定装置および接合強度測定方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、集積回路素子などチップ部品を回路基板に実装した後、チップ部品と回路基板の接合力を測定する接合強度測定装置および接合強度測定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
フリップチップ実装されたチップ部品の接合状態を評価する方法として、従来、チップ部品を回路基板から剥離して剥離の際の荷重を測定する測定方法が知られている。図16を用いて簡単に測定方法を説明する。図16は、回路基板2の電極3にチップ部品4のバンプ5が接合された状態を示している。まず、チップ部品4の接合された回路基板2を検査台8に固定し、チップ部品4の側方に爪9を配置する。この爪9を、チップ部品4の側面4aに押し当てた状態で、回路基板2と平行な方向(図16の矢印方向)に荷重をかけ、この荷重を増大させて、チップ部品4を回路基板2から引き剥がす。このときの引き剥がし最大荷重からチップ部品4と回路基板2の接合強度を測定している(例えば、特許文献1の図9)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−324825号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
回路基板2の電極3とチップ部品4のバンプ5との接合強度は、一旦、接合した状態の回路基板2からチップ部品4を引き剥がすことにより測定することができる。しかし、引き剥がす際に、引き剥がす力がチップ部品4の複数のバンプ5に均一に付与されないと、部分的に荷重がかかり測定された値がばらついてしまう。そのため、再現性のある接合強度が測定できないという問題がある。
【0005】
例として、図17(a)に、回路基板2の上面側からチップ部品4を参照した状態を示す。チップ部品4の回路基板2側に配置しているバンプ5(上面側から隠れてしまう部分)を点線で示す。図17(a)の座標をXY座標で示す。回路基板2の電極3のパターン(図17の斜線で示す部分)はXY方向それぞれに回路設計に基づいて形成されている。電極3のパターンはチップ部品4の下側で所定のバンプ5と接続されている。
【0006】
このように形成された回路基板2上のチップ部品4に、例えば、引き剥がし力をX+方向にFx+付与した場合、X−方向にFx−付与した場合、Y+方向にFy+付与した場合、Y−方向にFy−付与した場合、それぞれ付与する力を同じ(Fx+=Fx−=Fy+=Fy−)条件で行っても、電極3のパターンの方向の影響や、隣接するバンプ5同士の影響などから、各引き剥がし力の測定結果がばらついてしまい、精度良く測定することができない。
【0007】
具体的に、爪9を用いてチップ部品4の側面4aに荷重をかけようとしている状態の断面図を図17(b)に示す。引き剥がし荷重Fは、バンプ5や、電極3のパターン部分や、バンプ5とチップ部品4の接合部であるパッド7など、様々な箇所に付与されることになる。電極3のパターン部分は、個々のバンプ5ごとに面積や形成されている方向や太さが異なり、回路基板2と電極3のパターンとの接続状態も異なる。そのため、図17(a)のように引き剥がし力の付与する方向によって測定結果がばらついてしまう。
【0008】
このような、バラツキをもった測定結果を用いて、数百バンプから構成されているチップ部品4と回路基板2の接合評価(特に、個々のバンプ5の接合評価)を行おうとしても、信頼性のある評価をすることができないという問題がある。
【0009】
そこで、上記問題点に鑑み、複数のバンプを有するチップ部品と回路基板の電極の接合力の測定精度を高め、測定結果から最適な接合条件を求めることができる接合強度測定装置および接合強度測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以上の課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、
基板ステージに保持された回路基板の電極に、チップ部品が複数のバンプを介して接合されており、このチップ部品と回路基板の接合強度を測定する接合強度測定装置であって、
チップ部品の回路基板に接合する面と対向する面に、接着材を介して接続されるチップ部品を引き剥がす引き剥がしヘッドと、
前記引き剥がしヘッドに、引き剥がし力を付与する引き剥がし力付与手段と、
前記引き剥がし力を測定する、引き剥がし力測定手段と、
回路基板とチップ部品の平行度を維持したまま、前記引き剥がし力が付与される回路基板を保持する平行度調整機構と、
を備えた接合強度測定装置である。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、
前記引き剥がし力付与手段が、
前記引き剥がしヘッドの設けられた枠体と、枠体内部を移動し枠体の内壁に衝突する重量物と、重量物を移動させる駆動手段とから構成され、
前記引き剥がしヘッドに設けられた枠体に、加速された重量物が衝突することにより発生する力を、前記引き剥がしヘッドに付与する構成である接合強度測定装置である。
【0012】
請求項3に記載の発明は、
チップ部品が接合された回路基板を基板ステージに保持し、
チップ部品の回路基板に接合する面と対向する面に、接着剤を介してチップ部品を回路基板から引き剥がす引き剥がしヘッドを接着し、
前記引き剥がしヘッドに回路基板のチップ接合面に対して垂直方向に引き剥がし力を付与し、
引き剥がしヘッドまたは基板ステージに設けられた引き剥がし力測定手段でチップ部品と回路基板の接合強度を測定する接合強度測定方法である。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の発明において、
回路基板にチップ部品を接合した接合条件データを記憶する工程と、
前記引き剥がし力測定手段で測定された引き剥がし力の変化を記憶する工程と、
記憶された引き剥がし力のデータから引き剥がし力の最大値と、引き剥がしエネルギーを計算する工程と、
回路基板のチップ部品の接合条件毎に、前記引き剥がし力と、前記引き剥がし力の最大値と、前記引き剥がしエネルギーとを蓄積し、蓄積されたデータから回路基板とチップ部品の接合状態の良否判断を行う工程と、
を含む接合強度測定方法である。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に記載の発明によれば、チップ部品に引き剥がし力を付与する引き剥がし力付与手段と、回路基板とチップ部品の平行度を維持したまま引き上げることができる平行度調整手段を備えている。
【0015】
そのため、チップ部品の個々のバンプに引き剥がし力を同じ条件で付与する環境を整えることができる。同じ条件で付与する環境とは、個々のバンプを引き伸ばそうとする力が、個々のバンプそれぞれに、同様の環境で掛かる状態とする。図15を用いて説明する。図15に示すように、チップ部品4はパッド7を介してバンプ5が回路基板2の電極3と接合されている。各バンプ5の接合状態は、接合界面5a(図15では点線で示した)が電極3面となるケース(Case1)や、電極3に押し込まれたケース(Case2)や、バンプ5が変形したケース(Case3)など様々ケースが存在する。このように、個々のバンプ5の接合状態が異なっていても、個々のバンプ5に付与される引き剥がし力Fは、個々のバンプ5それぞれに、同じ環境で作用することになる。
【0016】
このような接合強度の測定装置によれば、個々のバンプ5の接合状態に応じて測定結果の違いを得ることができるようになる。例えば、全バンプ5が良好に接合している場合に対して、仮に約半分のバンプ5しか接合されていない様な場合は、引き剥がし力Fの測定結果も約半分となると推定される。言い換えると、正常なバンプ5の接合個数に応じた接合強度が測定できる。
【0017】
従って、チップ部品と回路基板の平行度を維持したまま、チップ部品を上側に引き上げる構成にしているので、個々のバンプの接合評価を精度良く行うことができる。このような測定結果に基づいて、チップ部品と回路基板の接合強度の測定を行っているので、最適な接合条件を求めることができる。
【0018】
請求項2に記載の発明によれば、重量物が加速されて引き剥がしヘッドに設けられた枠体の内壁に衝突する。衝突時に発生する力を利用してチップ部品を回路基板から引き剥がす。そのため、各バンプに瞬間的な力が作用し再現性のある接合強度の測定ができる。
【0019】
請求項3に記載の発明によれば、チップ部品の回路基板に接合する面と対向する面に、接着剤を介してチップ部品を回路基板から引き剥がす引き剥がしヘッドを接着し、引き剥がしヘッドに回路基板のチップ接合面に対して垂直方向に引き剥がし力を付与し、引き剥がし力測定手段でチップ部品と回路基板の接合強度を測定している。
【0020】
そのため、チップ部品の個々のバンプに引き剥がし力を同じ条件で付与する環境を整えることができる。
【0021】
このような接合強度の測定方法によれば、個々のバンプの接合状態に応じて測定結果の違いを得ることができるようになる。
【0022】
従って、引き剥がしヘッドに回路基板のチップ接合面に対して垂直方向に引き剥がし力を付与しているので、個々のバンプの接合評価を精度良く行うことができる。このような測定結果に基づいて、チップ部品と回路基板の接合強度の測定を行っているので、最適な接合条件を求めることができる。
【0023】
請求項4に記載の発明によれば、回路基板とチップ部品の接合条件毎に接合強度測定装置で求められた測定結果とを比較し、接合状態の良否判断をおこなっている。そのため、チップ部品の良好な接合条件を生産条件に採用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施の形態に係る接合強度測定装置の概略側面図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る接合強度測定装置の概略断面図である。
【図3】2軸ステージの構成を示す概略斜視図である。
【図4】接合強度測定装置の運転開始の状態を示す概略側面図である。
【図5】接合強度測定装置のZ軸下降の状態を示す概略側面図である。
【図6】接合強度測定装置の自重加圧の状態を示す概略側面図である。
【図7】接合強度測定装置の接触点サーチの状態を示す概略側面図である。
【図8】接合強度測定装置の動作開始位置移動の状態を示す概略側面図である。
【図9】接合強度測定装置の動作開始の状態を示す概略側面図である。
【図10】接合強度測定装置の運転終了の状態を示す概略側面図である。
【図11】接合強度測定装置のロードセルの測定値を示す概略図である。
【図12】接合強度測定装置の動作を示すフローチャートである。
【図13】アクチュエータヘッドの加減速の速度パターンを説明する図である。
【図14】接合強度の良否判断を説明するブロック図である。
【図15】本発明の回路基板とチップ部品にかかる引き剥がし力を模式的に表した図である。
【図16】従来の接合強度を測定する方法を説明する概略側面図である。
【図17】従来の接合強度を測定する方法を説明する平面図と断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【0026】
図1は、本発明の接合強度測定装置1の概略側面図である。接合強度測定装置1に向かって左右方向をX軸、手前方向をY軸、X軸とY軸で構成されるXY平面に直交する軸をZ軸とする。
【0027】
接合強度測定装置1は、基台10と基台10の背面の支持板11に設けられチップ部品4を回路基板2から引き剥がす引き剥がし部20と、基台10に設けられた回路基板2を固定する基板固定部30と、接合強度測定装置1全体を制御する制御部50とから構成されている。
【0028】
引き剥がし部20には、コの字状のフレーム21がZ方向下側を開放側になるように支持板11に取付設置されている。フレーム21の内側でZ方向に沿ってレール22が左右に設けられている。レール22に沿って、ガイド23を介してロの字状の枠体24が接続されている。枠体24はZ方向上下に移動できるようになっている。枠体24のZ方向下側の中央部にはヘッド25が取り付けられている。ヘッド25は接着材6を介してチップ部品4の上面4bと接続される。チップ部品4の上面4bは、チップ部品4の回路基板2と接合する面の裏面となる。
【0029】
フレーム21のZ方向上側にはZ軸アクチュエータ27が取り付けられている。Z軸アクチュエータ27にはフレーム21をZ方向に貫通するボールねじ28が連結されている。ボールねじ28には連結部材を介してアクチュエータヘッド29が取り付けられている。Z軸アクチュエータ27を駆動することにより、連結されているボールねじ28が回転し、アクチュエータヘッド29がZ方向上下に移動できるようになっている。アクチュエータヘッド29がZ方向上側に移動すると、枠体24の上側で内側の壁24Uに接触する。壁24Uに接触後も継続してアクチュエータヘッド29をZ方向上側に移動すると、レール22に沿って枠体24がZ方向上側に移動できるようになっている。
【0030】
また、アクチュエータ29をZ方向下側に移動すると、壁24Uにアクチュエータヘッド29を接触した状態で、枠体24がZ方向下側に移動する。枠体24の開口部24Kはアクチュエータヘッド29のZ方向のサイズに比べて大きく、アクチュエータヘッド29は開口部24Kの内部をZ方向上下に移動できるようになっている。そのため、枠体24の壁24Uに接触した状態で枠体29がZ方向下側に移動した後、枠体24の下側に取り付けられているヘッド25にチップ部品4の上面4bが接触すると、枠体24のZ方向下側への移動は停止し、アクチュエータヘッド29のみが枠体24の内部(開口部24K)を下降するようになっている。チップ部品4には枠体24の自重がかかるようになる。
【0031】
アクチュエータヘッド29の移動状態を説明するために、図2に接合強度測定装置1の概略断面図を示す。概略断面図は、図1のXZ平面で接合強度測定装置1の中央部A−A’断面図とする。図2に示すように、アクチュエータヘッド29は、Z軸アクチュエータ27に連結されたボールねじ28の回転によって、枠体24の内側をZ方向上下に移動できるようになっている。また、枠体29の壁24Uに接触することより、枠体29をZ方向上下に移動できるようになっている。
【0032】
図1にもどり、基板固定部30は、回路基板2を載置する基板ステージ31と、回路基板2に接合されたチップ部品4の外周部分を基板ステージ31に固定する基板クランプ治具32と、基板ステージ31と基台10との間に設けられている2軸ステージ33と、2軸ステージ33と基板ステージ31の間に設けられているロードセル34とから構成されている。
【0033】
基板ステージ31は、断面がロの字状で、Z方向上側の上部材31Uには、ヒータ35と温度センサ36が内蔵されている。ヒータ35と温度センサ36により、回路基板2を所定の温度に加熱することができる。基板ステージ31のZ方向下側の下部材31Dには、複数の冷却孔37が設けられている。冷却孔37は、下部材30Dの内部でつながっており、下部材30Dの側面に設けられた導入孔38から入力されるエアーを放出し、基板ステージ31の回路基板2を冷却することができるようになっている。導入孔38にはポンプ39がパイプを介して接続されている。
【0034】
2軸ステージ33の概略斜視図を図3に示す。図3のXYZ座標の表記は、図1におけるXYZ座標に対応する。基台10のXY平面に対応する方向をXY方向とし、接合強度測定装置1のZ方向に対応する方向をZ方向としている。さらに、図3に示すように、X方向の傾斜Xθ方向およびY方向の傾斜Yθ方向を、説明のため座標系に追加する。
【0035】
2軸ステージ33は、図3に示すように、X軸ゴニオステージ40およびY軸ゴニオステージ41がZ方向上下に重なって載置されている。X軸ゴニオステージ40とY軸ゴニオステージ41は、それぞれ、X軸およびY軸の角度調整をステージを回転させることで調整できるようになっている。そのため、X軸ゴニオステージ40のZ方向上側に接続されている基板ステージ31の姿勢調整機能のうち角度調整ができるようになっている。
【0036】
X軸ゴニオステージ40およびY軸ゴニオステージ41の側面両側には、角度調整後の各ステージの角度を保持するために、それぞれX軸ロックシリンダ42とY軸ロックシリンダ43が接続されている。
【0037】
ヘッド25と基板ステージ31の平行度は測定開始前に予め調整が行われる。ヘッド25をZ軸下側に移動させ、ヘッド25と基板ステージ31とを接触させ所定の圧力を付与した状態で行われる。ヘッド25と基板ステージ31の平行度が規定値以下であることを確認した後、X軸ロックシリンダ42とY軸ロックシリンダ44を動作させ、X軸ゴニオステージ40とY軸ゴニオステージ41を固定する。これにより、ヘッド25と回路基板4の平行度が精密に調整され、X軸、Y軸ロックシリンダ42,44で平行度が保持される。
【0038】
ヘッド25と回路基板2の平行度が保たれるので、引き剥がし部20のヘッド25と、回路基板2の平行度が保たれる。そのため、チップ部品4の個々のバンプ5に引き剥がし力を同じ条件で付与する環境を整えることができる。このような引き剥がし部20のヘッド25と回路基板2の構成にすれば、個々のバンプ5の接合状態に応じて測定結果の違いを得ることができるようになる。言い換えると、正常なバンプ5の接合個数に応じた接合強度が測定できる。
【0039】
なお、ロードセル34は、2軸ステージ33と基板ステージ31の間に設けても良いし、ヘッド25と枠体24の間に設けても良い。チップ部品4を回路基板2から引き剥がす際の引き剥がし力が測定できれば、どちら側に設けられていても良い。
【0040】
制御部50は、ハードディスクやメモリなどの記憶部51と、マイクロプロセッサなどの演算部52と、タッチパネルやキーボードなどの入出力部53と、各部分のデータの通信をおこなうインターフェース部54とから構成されている。制御部50は、Z軸アクチュエータ27の制御や、ロードセル34の検出信号の入力、基板ステージ31の温度制御、2軸ステージ33の角度制御などの接合強度測定装置1の全体の制御を行う。
【0041】
次に、本発明の接合強度測定装置1の動作について、図4〜14を用いて説明する。図4〜10は、引き剥がし部20と基板固定部30の位置関係を示す図である。図1と同様に、左右方向をX軸、手前方向をY軸、X軸とY軸で構成されるXY平面に直交する軸をZ軸とする。図11は、図4〜10におけるロードセル34の検出値を、横軸時間とし、縦軸を力の大きさとして表記したものである。図12は、図4〜10の接合強度測定装置1の動作を示すフローチャートである。以下の説明において、フローチャートで使用した動作の概要とステップ番号を、カッコ書きで記載する。図13は、アクチュエータヘッド29の加減速パターンを示した図である。図14は、接合強度の良否判断を示したブロック図である。
【0042】
(運転開始 ステップST01)
先ず、接合強度測定装置1は、図4に示す状態から運転を開始する。具体的には、Z軸アクチュエータ27を駆動しボールねじ28を回転させ、アクチュエータヘッド29をZ軸上方向に移動させる。図4に示す待機位置Ztまでアクチュエータヘッド29が上昇すると、枠体24が持ち上げられた状態となる。そして、枠体24に接続されているヘッド25の下面25Sに接着材6を塗布する。基板固定部30側は、基板ステージ31に、チップ部品4が接合された状態の回路基板2を載置し、回路基板2を基板クランプ治具32を用いて固定する。
【0043】
図4に示す状態で、制御部50に入力されているロードセル34の信号を初期化する。具体的には、図11のt01に示すように、制御部50で使用するロードセル34の値を0(ゼロ)にする。
【0044】
(Z軸下降 ステップST02)
次に、図5に示すように、Z軸アクチュエータ27を駆動しボールねじ28を回転させ、アクチュエータヘッド29をZ軸下方向に移動させる。これにともない、枠体24もZ軸下方向に下降する。
【0045】
図5に示す状態では、図11のt02〜t03に示すように、ロードセル34の値は変化しない。
【0046】
(自重加圧 ステップST03)
次に、図6に示すように、枠体24に接続されたヘッド25の下面25Sが、チップ部品4の上面4bに接触する。その後、Z軸アクチュエータ27がアクチュエータヘッド29を接着位置Zcまで下降させ停止する。接着位置Zcにアクチュエータヘッド29が停止している状態では、アクチュエータヘッド29は、枠体24の壁24Uには接触していない。枠体24は、ヘッド25を介してチップ部品4により支えられている状態となる。すなわち、枠体24の自重がチップ部品4の上面4bに付与されている状態となる。
【0047】
(接着時間待機 ステップST04)
ヘッド25の下面25Sに塗布されていた接着剤6は、チップ部品4の上面4bに貼り付き、ヘッド25とチップ部品4は接着材6を介して接続されることになる。接着力を促進させるため、基板ステージ31に設けてあるヒータ35を所定の温度まで昇温する。その後、ヒータ35をオフし、ポンプ39を駆動し、導入孔38を介して冷却孔37よりエアーが基板ステージ31に付与される。これにより、基板ステージ31上の回路基板2が冷却される。エアーの吹き出しは基板ステージ31に埋め込まれている温度センサ36が所定の温度になるまで行われる。この段階で、ヘッド25の下面25Sと、チップ部品4の上面4bとの接着が完了した状態となる。
【0048】
図11のt03〜t04に示すロードセル34の値は、枠体24の自重がチップ部品4にかかり始めてから接着材6の硬化が完了するまでの状態を示している。ロードセル34の値は、自重圧力Fjとなる。接着材6の硬化が完了すると、さらに、制御部50に入力されているロードセル34の信号を初期化する。具体的には、制御部50で使用するロードセル34の値を0(ゼロ)にする。
【0049】
(接触点サーチ ステップST05)
次に、図7に示すように、Z軸アクチュエータ27を駆動しボールねじ28を回転させアクチュエータヘッド29を上昇させる。アクチュエータヘッド29が枠体24の壁24Uに接触すると、枠体24が引き上げられ、それに伴い接着されているチップ部品4も引き上げられ、ロードセル34の検出信号に変化が生じる。具体的には、図11のt04〜t05における引き剥がし力の変化として検出される。予め設定されているトルク圧Ftにロードセル34の検出信号が達すると、アクチュエータヘッド29が枠体24の壁24Uに接触したと判断する。接着材6でヘッド25の下面25Sとチップ部品4の上面4bを接着しているので、接合面の厚みが接着のたびに微妙に変化する。そのため、ロードセル34の検出信号を用いて、接着が完了した状態の枠体24の位置を正確に測定する。アクチュエータヘッド29が枠体24の壁24Uに接触したと判断した位置を接触位置Zsとする。接触位置Zsで、Z軸アクチュエータ27の駆動を停止する。
【0050】
(動作開始位置移動 ステップST06)
次に、図8に示すように、Z軸アクチュエータ27を駆動しボールねじ28を回転させ、Z軸方向下側にアクチュエータヘッド29を所定量下降させる。アクチュエータヘッド29の降下した位置を助走開始位置Zhとする。助走開始位置Zhは、アクチュエータヘッド29が、枠体24の下側の壁24Dに接触しない位置で、アクチュエータヘッド29が枠体24の壁24Uに向けて所定の速度に加速できる位置となる。所定の速度への加速については後述する。
【0051】
(動作開始 ステップST07)
次に、図9に示すように、Z軸アクチュエータ27を駆動しボールねじ28を回転させ、アクチュエータヘッド29を枠体24の壁24Uに衝突させる。衝突すると、回路基板2とチップ部品4の接合部であるバンプ5と電極3に引き剥がし力が付与される。引き剥がし力は、回路基板2を保持している基板ステージを経由してロードセル34で検出される。
【0052】
このときのアクチュエータ29の速度の変化を図13に示す。図13は、横軸を時間とし、縦軸を速度とした。図13に示すように、アクチュエータヘッド29は、ボールねじ28の回転速度を上げることにより、停止状態(助走開始位置Zh)から加速時間Taccで所定の引き剥がし速度Vhまで加速される。その後、保持時間Tvだけ経過後、枠体24の壁24Uに衝突する。衝突後、測定時間Tsだけ速度Vhを維持し、その後、減速して停止する。このようにアクチュエータヘッド29が動作するようにZ軸アクチュエータ27が制御されている。
【0053】
測定時間Tsにロードセル34で測定された引き剥がし力の変化を、図11のt06からt07に示す。測定された引き剥がし力のデータから、接合強度の良否判断を行う方法について、図14のブロック図を用いて説明する。まず、回路基板2とチップ部品4の接合条件データ(加圧条件や加熱条件)を記憶部51に記憶する(ブロックB01)。次に、ステップST07で測定した引き剥がし力の変化を記憶部51に記憶する(ブロックB02)。制御部50では、記憶された引き剥がし力のデータから引き剥がし力の最大値Fp(図11のFp)を計算し(ブロックB03)、引き剥がしエネルギーPh(図11のPh)を計算する(ブロックB04)。また、測定された破断時間、破断曲線のデータ(ブロックB05)は、記憶部51に記憶する。記憶部51には、同一の回路基板2毎に接合条件の異なる引き剥がし力の測定テータが蓄積される。これら、蓄積されたデータと、引き剥がし力の最大値Fpと、引き剥がしエネルギーPhとからチップ部品4の接合状態の良否判断を行う(ブロックB06)。良否判断結果に基づいて、回路基板4の生産時の接合条件を確定する(ブロックB07)。
【0054】
上述したように、チップ部品4と回路基板2を平行に保ち、チップ部品4を回路基板2のチップ接合面に対して垂直方向に引き剥がし力を付与し、ロードセル26でチップ部品4と回路基板2の接合強度を測定している。そのため、チップ部品4の個々のバンプ5に引き剥がし力を同じ条件で付与する環境を整えることができる。
【0055】
そのため、個々のバンプ5の接合評価を精度良く行うことができる。このような測定結果に基づいて、チップ部品4と回路基板2の接合強度の良否判定を行っているので、最適な接合条件を求めることができる。
【0056】
アクチュエータヘッド29は、所定の速度Vhに到達してから枠体24の壁24Uに衝突している。このような構成にすることにより、引き剥がし力の付与の条件は再現性のある状態になる。さらに、引き剥がし方法が、衝突による瞬間のせん断力を用いているので、チップ部品4と回路基板2の接合強度を正確に測定することができる。チップ部品4と回路基板2を停止状態のヘッド25に徐々に引き剥がし力を付与して測定すると、破断の状態のバラツキにより再現性のある接合強度の測定が困難となる。本発明は、チップ部品4と回路基板2の平行度を一定して瞬間で破断を発生させているので、バンプ5と電極3にかかる接合強度を正確に測定することができる。
【0057】
(運転終了 ステップST08)
次に、図10に示すように、Z軸アクチュエータ27が停止し、アクチュエータヘッド29が引き剥がし終了位置Zfで停止する。一連の回路基板2とチップ部品4との接合強度の測定作業が終了する。
【0058】
回路基板2とチップ部品4の接合強度の測定は、接合条件毎に測定を行う。例えば、チップ部品2の接合加圧条件、加熱条件など、違ったサンプル毎に測定を行う。そして、測定された接合強度のデータに基づきステップST07の方法を用いて最適な接合条件を求める。
【符号の説明】
【0059】
1 接合強度測定装置
2 回路基板
3 電極
4 チップ部品
4a チップ部品の側面
4b チップ部品の上面
5 バンプ
5a 接合界面
6 接着剤
7 パッド
8 検査台
9 爪
10 基台
11 支持板
20 引き剥がし部
21 フレーム
22 レール
23 ガイド
24 枠体
24U 枠体の上側で内側の壁
24D 枠体の下側で内側の壁
24K 枠体の開口部
25 ヘッド
25S ヘッドの下面
26 ロードセル
27 Z軸アクチュエータ
28 ボールねじ
29 アクチュエータヘッド
30 基板固定部
31 基板ステージ
31U 基板ステージの上部材
31D 基板ステージの下部材
32 基板クランプ治具
33 2軸ステージ
34 ロードセル
35 ヒータ
36 温度センサ
37 冷却孔
38 導入孔
39 ポンプ
40 X軸ゴニオステージ
41 Y軸ゴニオステージ
42 X軸ロックシリンダ
43 Y軸ロックシリンダ
50 制御部
51 記憶部
52 演算部
53 入出力部
54 インターフェース部
Zt 待機位置
Zc 接着位置
Zs 接触位置
Zh 助走開始位置
Zf 引き剥がし終了位置
Vh 引き剥がし速度
Tacc 加速時間
Tv 保持時間
Ts 測定時間
Ph 引き剥がしエネルギー
Fp 引き剥がし力の最大値

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板ステージに保持された回路基板の電極に、チップ部品が複数のバンプを介して接合されており、このチップ部品と回路基板の接合強度を測定する接合強度測定装置であって、
チップ部品の回路基板に接合する面と対向する面に、接着材を介して接続されるチップ部品を引き剥がす引き剥がしヘッドと、
前記引き剥がしヘッドに、引き剥がし力を付与する引き剥がし力付与手段と、
前記引き剥がし力を測定する、引き剥がし力測定手段と、
回路基板とチップ部品の平行度を維持したまま、前記引き剥がし力が付与される回路基板を保持する平行度調整機構と、
を備えた接合強度測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の発明において、
前記引き剥がし力付与手段が、
前記引き剥がしヘッドの設けられた枠体と、枠体内部を移動し枠体の内壁に衝突する重量物と、重量物を移動させる駆動手段とから構成され、
前記引き剥がしヘッドに設けられた枠体に、加速された重量物が衝突することにより発生する力を、前記引き剥がしヘッドに付与する構成である接合強度測定装置。
【請求項3】
チップ部品が接合された回路基板を基板ステージに保持し、
チップ部品の回路基板に接合する面と対向する面に、接着剤を介してチップ部品を回路基板から引き剥がす引き剥がしヘッドを接着し、
前記引き剥がしヘッドに回路基板のチップ接合面に対して垂直方向に引き剥がし力を付与し、
引き剥がしヘッドまたは基板ステージに設けられた引き剥がし力測定手段でチップ部品と回路基板の接合強度を測定する接合強度測定方法。
【請求項4】
請求項3に記載の発明において、
回路基板にチップ部品を接合した接合条件データを記憶する工程と、
前記引き剥がし力測定手段で測定された引き剥がし力の変化を記憶する工程と、
記憶された引き剥がし力のデータから引き剥がし力の最大値と、引き剥がしエネルギーを計算する工程と、
回路基板のチップ部品の接合条件毎に、前記引き剥がし力と、前記引き剥がし力の最大値と、前記引き剥がしエネルギーとを蓄積し、蓄積されたデータから回路基板とチップ部品の接合状態の良否判断を行う工程と、
を含む接合強度測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2010−238905(P2010−238905A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−85082(P2009−85082)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000219314)東レエンジニアリング株式会社 (505)
【Fターム(参考)】