説明

接合装置及び接合方法

【課題】簡易な構成で、シール部の寿命の低下を防止し、ひいては装置の稼働率の低下を防止できる接合装置及び接合方法を提供する。
【解決手段】加圧機構14と、加圧機構14からの加圧力の作用方向に複数配置され内部に熱源を有する熱盤部26と、熱盤部26の側方に設けられた枠体30と、加圧力の作用方向に隣接する熱盤部同士が相互に積み重なることにより当該熱盤部間に形成された真空チャンバCと、を有し、真空チャンバC内で貼り合せ用基材同士を熱盤部26により熱圧着させて接合する接合装置10であって、熱盤部26と枠体30との間に設けられ真空チャンバCを気密に封止するシール部34と、枠体30に設けられ枠体30及びシール部34を冷却するための枠体冷却部38と、を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、板状または箔状の貼り合せ用基材を熱圧着により接合させる接合装置及び接合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、上・下治具を結合させるためのシリンダと隔室内で所定のプレス加工を行なうシリンダとを別のものとし、上・下治具の結合は突合密着、即ち水平面接合により行ない、上・下治具の結合によって形成される隔室内の真空引きを行なうと共に、高真空下で上治具をこれと密着する下治具と共に降下させることにより、所定のプレス加工を行なうようにしたプレス装置が提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
上記プレス装置によれば、上・下治具の結合によって形成される隔室内を容易に高真空とすることができ、摺動面のパッキンシール溝部分を精密な高圧縮寸法に狭めてもシール用グリスが逃げたり、シールパッキンの損耗や変形等を生じることもなく、隔室内を迅速に高真空度に上げて製品中の完全脱気を行なうことができ、例えば高真空下での低圧プレス加工も可能である、とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−96199号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、シールパッキンが高温にさらされるため、設定温度によってはシールパッキンの製品寿命が低下する。このため、シールパッキンの頻繁な交換が必要になり、プレス装置の稼働率が低下する問題がある。また、シールパッキンの頻繁な交換に伴い、プレス装置のランニングコストが高くなる問題もある。
【0006】
そこで、本発明は、簡易な構成で、シール部の寿命の低下を防止し、ひいては装置の稼働率の低下を防止できる接合装置及び接合方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、加圧機構と、前記加圧機構からの加圧力の作用方向に複数配置され、内部に熱源を有する熱盤部と、前記熱盤部の側方に設けられた枠体と、前記加圧力の作用方向に隣接する前記熱盤部同士が相互に積み重なることにより当該熱盤部間に形成された真空チャンバと、を有し、前記真空チャンバ内で貼り合せ用基材同士を前記熱盤部により熱圧着させて接合する接合装置であって、前記熱盤部と前記枠体との間に設けられ、前記真空チャンバを気密に封止するシール部と、前記枠体に設けられ、当該枠体及び前記シール部を冷却するための枠体冷却部と、を有することを特徴とする。
【0008】
この場合、前記枠体は、第1辺部と、第1辺部に対向する第2辺部と、第1辺部の一方の端部と第2辺部の一方の端部とを接続する第3辺部と、第1辺部の他方の端部と第2辺部の他方の端部とを接続する第4辺部とにより枠状に構成され、前記枠体冷却部は、前記第1辺部の中央部に設けられた複数の冷却水流入部と、前記第2辺部の中央部に設けられた複数の冷却水流出部と、前記第1辺部から前記第3辺部を経由して前記第2辺部に至り一方の前記冷却水流入部と一方の前記冷却水流出部とを接続する第1冷却水路と、前記第1辺部から前記第4辺部を経由して前記第2辺部に至り他方の前記冷却水流入部と他方の前記冷却水流出部とを接続する第2冷却水路と、を有することが好ましい。
【0009】
この場合、前記熱盤部は、第1の辺と、前記第1の辺に対向する第2の辺と、前記熱盤部を冷却するための熱盤冷却部と、を有し、前記熱盤冷却部は、前記第1の辺の中央部に設けられた複数の冷却水流入部と、前記第1の辺の両端部に設けられた複数の冷却水流出部と、前記第1の辺と前記第2の辺との間を往復しながら一方の前記冷却水流入部と一方の前記冷却水流出部とを接続する第1冷却水路と、前記第1の辺と前記第2の辺との間を往復しながら他方の前記冷却水流入部と他方の前記冷却水流出部とを接続する第2冷却水路と、を有することが好ましい。
【0010】
この場合、前記枠体に設けられ、前記枠体の温度を検出するための温度検出部と、前記枠体冷却部に対し冷却水を流入、または流入を停止する開閉弁と、前記温度検出部により前記枠体の温度が第1の温度以上であることが検出された場合に、前記開閉弁を開いて前記枠体冷却部へ冷却水を流入し、前記温度検出部により前記枠体の温度が前記第1の温度よりも低い第2の温度以下であることが検出された場合に、前記開閉弁を閉じて前記枠体冷却部への冷却水の流入を停止する制御部と、を有することが好ましい。
【0011】
第2の発明は、真空チャンバ内で貼り合せ用基材同士を加熱加圧して接合する接合方法であって、前記貼り合せ用基材同士の外側の両主面に熱源を有する熱盤部を配置し、前記貼り合せ用基材および前記熱盤部の側方を囲むように枠体を配置し、前記熱盤部と前記枠体の間にシール部を設けることにより、前記貼り合せ用基材の周囲に密閉空間を形成するステップと、前記密閉空間を真空引きすることにより真空チャンバを形成するステップと、前記枠体及び前記シール部を冷却するとともに、前記熱盤部により前記貼り合せ用基材を加熱加圧するステップと、を備えたことを特徴とする接合方法である。
【0012】
この場合、前記真空チャンバ内で前記貼り合せ用基材同士を加熱加圧した後、前記熱盤部を冷却するとともに、前記枠体を冷却するステップを備えたことが好ましい。
【0013】
この場合、前記真空チャンバ内で貼り合せ用基材同士を熱圧着させている際に前記枠体の温度を検出し、前記枠体の温度が第1の温度以上であることが検出された場合に、前記枠体及び前記シール部の冷却を開始し、前記枠体の温度が第2の温度以下であることが検出された場合に、前記枠体及び前記シール部の冷却を停止することが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、簡易な構成で、シール部の寿命の低下を防止し、ひいては装置の稼働率の低下を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1実施形態に係る接合装置の熱盤部が重ね合わされる前の状態を示す構成図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る接合装置の熱盤部が重ね合わされた後の状態を示す構成図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係る接合装置の熱盤部の構成図である。
【図4】本発明の第1実施形態に係る接合装置の熱盤部を保持する枠体の構成図である。
【図5】図4のY1−Y2矢視面である。
【図6】本発明の第2実施形態に係る接合装置の真空チャンバを形成する熱盤部の熱収縮を示した説明図である。
【図7】本発明の第3実施形態に係る接合装置の熱盤部を保持する枠体の構成図である。
【図8】本発明の第3実施形態に係る接合装置の熱盤部の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の第1実施形態に係る接合装置及び接合方法について、図面を参照して説明する。
【0017】
(接合装置)
接合装置について説明する。接合装置は、貼り合せ用基材同士を熱圧着により接合させる装置である。なお、貼り合せ用基材は、貼り合せ前の基板であり、ウエハや集合基板の他に、個片化された子基板も含まれる。本実施形態の接合装置にて複数の貼り合せ用基板を貼り合せ、複合基板を作製する。複合基板を作製するための貼り合せ用基材は、異種でも同種でもよい。作製された複合基板は電子機器の部品として用いられる。
【0018】
図1に示すように、接合装置10は、筐体12を備えている。筐体12の内部には、上下方向に沿って複数の熱盤部26が並んで配置されている。各熱盤部26の間には接合対象物である複数の貼り合せ用基材が配置されている。筐体12の底部には、加圧機構14が配置されている。加圧機構14は、一例として、上下方向に伸縮可能な油圧式のピストンロッド16が適用される。なお、加圧機構14は、図示しない制御部により駆動制御される。
【0019】
加圧機構14のピストンロッド16の先端部には、下側台座部18が接続されている。このため、加圧機構14であるピストンロッド16が上下方向に伸縮すると、下側台座部18が上下方向に移動する。
【0020】
下側台座部18には、熱盤部26A、26B、26C、26D、26E(適宜、「熱盤部26」と称する)に対して加圧力を付与する複数の支柱部材20が取り付けられている。
【0021】
また、筐体12の上部には、上側台座部22が固定されている。上側台座部22には、熱盤部26に対して加圧力を付与する複数の支柱部材24が取り付けられている。なお、下側台座部18の支柱部材20と上側台座部22の支柱部材24との間で、上下方向に積まれた複数の熱盤部26が所定の加圧力で挟持される構造になっている。
【0022】
図3に示すように、熱盤部26は、第1の辺27aと、第1の辺27aに対向する第2の辺27bと、第1の辺27aの一方の端部と第の2辺27bの一方の端部とを接続する第3の辺27cと、第1の辺27aの他方の端部と第2の辺27bの他方の端部とを接続する第4の辺27dと、を有している。
【0023】
熱盤部26には、熱盤冷却部28が設けられている。熱盤冷却部28は、熱盤部26の第1の辺27aの一方の端部に設けられ冷却水を熱盤部26の内部に導くための冷却水流入部28aと、熱盤部26の第1の辺27aの他方の端部に設けられ冷却水を熱盤部26の外部に排出するための冷却水流出部28bと、熱盤部26の内部に設けられ第1の辺27aと第2の辺27bとの間を何度も往復するように方形波状に延びるとともに冷却水流入部28aと冷却水流出部28bを接続する冷却水路28cと、で構成されている。これにより、冷却水流入部28aから流入した冷却水が、冷却水路28cを流れて、冷却水流出部28bから外部に流出していくことにより、熱盤部26が冷却される。
【0024】
熱盤部26に対する冷却水の流出入は、制御部32(図4参照)により制御される。すなわち、制御部32は、開閉弁39を開閉制御することにより、熱盤部26に対する冷却水の流出入が制御される。
【0025】
熱盤部26の側方には、枠体30が設けられている。図4に示すように、枠体30は、第1辺部31aと、第1辺部31aに対向する第2辺部31bと、第1辺部31aの一方の端部と第2辺部31bの一方の端部とを接続する第3辺部31cと、第1辺部31aの他方の端部と第2辺部31bの他方の端部とを接続する第4辺部31dと、で囲まれて形成されている。枠体30の各辺部31a、31b、31c、31dは、熱盤部26の側方に摺動可能に隣接している。
【0026】
熱盤部26と枠体30は、炭素鋼などの同じ材質で構成されている。
【0027】
図5に示すように、貼り合せ用基材の両主面側に熱盤部26が配置されている。熱盤部26の側方には、熱盤部26を囲むように枠体30が設けられている。枠体30の側面と下面には、シール溝34Aが形成されている。シール溝34Aには、シール部34が埋め込まれている。シール部34として、例えば、フッ素ゴムなどで構成されている。枠体30は、圧縮ばね35により下方に付勢される。枠体30には、枠体冷却部38が設けられている。なお、枠体冷却部38の詳細は、後述する。
【0028】
上下方向に沿って隣接する熱盤部26が加圧力を受けて、貼り合せ用基材X、Yを圧接する際に、上側の熱盤部26Cと、上側の熱盤部26Cの枠体30と、シール部34と、下側の熱盤部26Bとで囲まれた領域に、真空チャンバCが形成される。
【0029】
このように、複数の熱盤部26を備えた接合装置10では、複数の熱盤部26が全て積重ねられた状態になることにより、複数の真空チャンバCが形成され、各真空チャンバCにおいて熱盤部26によって貼り合せ用基材同士X、Yの接合処理が実行される。なお、貼り合せ用基材X、Yは、貼り合せ用治具S、Tで挟まれた状態で接合される。
【0030】
各熱盤部26には、連通路29が形成されている。このため、各熱盤部26でそれぞれ区画形成される複数の真空チャンバCが連通路29を介して連通した構成になる。これにより、全ての真空チャンバCは、全体として一つの真空空間を構成することになる。
【0031】
なお、連通路29には、真空ポンプ(図示省略)が接続されており、真空ポンプの作動により各真空チャンバCが真空状態となる。なお、真空ポンプは、制御部32により駆動制御される。
【0032】
図4に示すように、枠体30の内部には、枠体冷却部38が設けられている。枠体冷却部38は、枠体30の第1辺部31aの略中央に設けられ、冷却水を枠体30の内部に導くための冷却水流入部38aと、枠体30の第1辺部31aの略中央に設けられ冷却水を枠体30の外部に排出するための冷却水流出部38bと、各辺部31a、31b、31c、31dの内部に設けられ冷却水流入部38aと冷却水流出部38bとを接続するとともに冷却水を流すための冷却水路38cと、で構成されている。これにより、冷却水流入部38aから枠体30の内部に流入した冷却水が枠体30の各辺部31a、31b、31c、31dの順に冷却水路38cを流れて枠体30の内部を一巡し、冷却水流出部38bから枠体30の外部に流出することにより、枠体30が冷却される。
【0033】
枠体30には、枠体30の温度を検出するための温度検出器40が設けられている。温度検出器40で検出された枠体30の温度は、検出信号として制御部32に出力される。制御部32は、温度検出器40からの検出信号を受けて、枠体30の現在の温度を特定する。
【0034】
なお、温度検出器40として、例えば、熱電対が用いられる。
【0035】
制御部32は、開閉バルブ39を制御し、開閉バルブ39を介して枠体30の各辺部31a、31b、31c、31dに対する冷却水の流出入を制御する。これにより、制御部32は、枠体30の各辺部31a、31b、31c、31dの内部へ冷却水を流入させたり、あるいは枠体30の各辺部31a、31b、31c、31dの内部に対する冷却水の流入を停止させることが可能になる。
【0036】
制御部32は、ROM(図示省略)を備えている。ROMには、枠体30の温度と冷却水の流入との関係を示すデータが格納されている。このデータにより、制御部32は、例えば、枠体30の温度が200℃以上となる場合に、開閉バルブを開いて枠体30の各辺部31a、31b、31c、31dへの冷却水の流入を開始し、枠体30の温度が150℃以下となる場合に、開閉バルブを閉じて枠体30の各辺部31a、31b、31c、31dへの冷却水の流入を停止する。
【0037】
なお、上記200℃及び150℃は、一例であり、これらの温度に限られるものではない。シール部34の材質や種類によって任意に調整することができる。
【0038】
次に、接合装置10による貼り合せ用基材同士の接合処理について概説する。接合処理は、以下の各処理を有する。
【0039】
(熱盤部の重ね合わせ)
図2に示すように、加圧機構14により筐体12内の各熱盤部26が上昇し、積み重ねられる。複数の熱盤部26が全て積み重ねられることにより、複数の真空チャンバCが形成される。
【0040】
(真空引き)
制御部32により真空ポンプが駆動制御され、真空引きにより各真空チャンバCが真空状態になる。各真空チャンバCは連通した状態となっているので、全体として一つの真空空間を構成することになる。
【0041】
(加熱・加圧処理)
次に、各熱盤部26により加熱処理が実行される。各熱盤部26には、ヒータが内蔵されているため、制御部32でヒータを駆動することにより、加熱処理が可能になる。なお、熱盤部26は温度調節器により280℃〜300℃に温度設定される。
【0042】
また同時に、上下方向に隣接する熱盤部26が加圧力を受けることで、熱盤部26の間に配置された貼り合せ用基材同士が所定の加圧力で圧接される。また、貼り合せ用基材の圧接処理は、真空チャンバCの内部で実行されるため、ゴミや粉塵が浸入しないクリーンな環境で実行できる。この結果、貼り合せ用基材により作製された複合基板の電気的特性を高品質に維持することができる。
【0043】
ここで、加熱・加圧処理において貼り合せ用基材同士を圧接している際には、枠体30の温度が以下のように制御されている。例えば、枠体30の温度は、常時、温度検出器40によって検出され、その検出結果が制御部32(図4参照)に出力される。これにより、制御部32は、枠体30の現在の温度を特定する。
【0044】
そして、枠体30の温度が200℃以上になる場合には、制御部32(図4参照)が開閉バルブを開ける。これにより、冷却水が枠体30の各辺部31a、31b、31c、31dへ流入する。この結果、枠体30が冷却され、温度が下がる。
【0045】
一方、枠体30の温度が150℃以下になる場合には、制御部32が開閉弁39を閉じる。これにより、枠体30の各辺部31a、31b、31c、31dへの冷却水の流入が停止する。この結果、枠体30に対する冷却効果が薄れ、熱盤部26からの熱が伝達されて、枠体30の温度が上昇する。
【0046】
以上のように、加熱・加圧処理において貼り合せ用基材同士を圧接している際には、枠体30の温度が150℃以上200℃以下となるように制御されている。
【0047】
なお、貼り合せ用基材の圧接処理は、各真空チャンバC内で同時に実行される。
【0048】
(真空チャンバの冷却処理)
貼り合せ用基材同士の圧接が終了した後、真空チャンバCの内部を冷却する。このとき、真空チャンバCの真空度を所定値に維持した状態で冷却する。真空チャンバCの冷却は、熱盤部26の内部の冷却水路28cに冷却水を流すことにより、熱盤部26を冷却して行われる。
【0049】
(真空解除)
次に、真空チャンバCの温度が所定の温度まで下がれば、真空チャンバCの真空状態を解除するために大気を入れ、全ての真空チャンバCが大気開放される。
【0050】
次に、本発明の第1実施形態の接合装置及び接合方法の作用・効果について説明する。
【0051】
図5に示すように、枠体30に冷却水路38cを設けたことにより枠体30を冷却することができる。枠体30を冷却することにより、枠体30のシール溝34A(図5参照)に取り付けられているシール部34を冷却することができる。このため、熱盤部26が加熱されている場合でも、シール部34の温度を一定以上の温度にならないように制御することができ、高温を原因としたシール部34の寿命低下を防止できる。この結果、シール部34の交換回数が減り、接合装置10の稼働率を上げることができる。
【0052】
また、シール部34の温度を下げるように制御するため、高温耐用の高価なシール部が不要になり、接合装置10のランニングコストを下げることができる。
【0053】
特に、加熱・加圧処理において貼り合せ用基材同士を圧接している際には、枠体30の温度が150℃以上200℃以下となるように制御されている。これにより、シール部34の耐熱温度によらず、プレス温度条件を設定できるため、プレス条件の幅を広げることができる。これにより、対象とする貼り合せ用基材の適用範囲を広げることができる。
【0054】
次に、本発明の第2実施形態の接合装置及び接合方法について説明する。なお、第1実施形態の接合装置の構成と重複する構成については、同じ符号を付し、その説明を適宜省略する。
【0055】
第2実施形態の接合装置及び接合方法では、真空チャンバの冷却処理において、貼り合せ用基材同士の加熱・加圧が終了した後、熱盤部26を冷却すると同時に、枠体30も冷却する。冷却温度については、熱盤部26と同じ温度となるように枠体30を冷却する。
【0056】
(課題と解決策)
図6に示すように、280℃〜300℃に加熱した熱盤部26を冷却水により30℃程度の常温まで急冷する場合、加熱により膨張していた熱盤部26は図中矢印方向に急速に収縮する。一方、枠体30を冷却しなければ、枠体30は高温(200℃〜260℃)を維持し収縮しない。そのため、熱盤部26と枠体30の隙間が広がり、シール部34の気密に支障をきたすことになる。それによって、例えば、100Pa〜500Paを維持していた真空チャンバCの真空度が10、000Pa程度まで劣化する課題がある。
【0057】
上記課題を解決するため、熱盤部26の冷却と同時に枠体30の冷却を行うことにより、熱盤部26と枠体30との隙間の広がりを抑制できるため、冷却時において真空チャンバCの真空度の劣化を阻止することができる。
【0058】
なお、熱盤部26及び枠体30の冷却方法は、第1実施形態の接合装置10及び接合方法による方法と同じ方法であるため、説明を省略する。
【0059】
冷却時に常温まで真空度を保つ目的は、貼り合せ用基材によっては50℃〜60℃以上で酸化するものがあるため、貼り合せ用基材の温度が下がるまで真空度を維持しなければならないためである。
【0060】
第2実施形態の接合装置及び接合方法によれば、熱盤部26の冷却時において、真空チャンバCの真空度の劣化を防ぐことができ、酸化防止などの目的で冷却完了時まで高い真空度を維持しなければならない貼り合せ用基材に対しても、本実施形態の接合装置10で処理することができる。
【0061】
次に、本発明の第3実施形態の接合装置について説明する。なお、第1実施形態の接合装置の構成と重複する構成については、同じ符号を付し、その説明を適宜省略する。
【0062】
第3実施形態の接合装置では、枠体30に設けられている枠体冷却部38及び熱盤部26に設けられている熱盤冷却部28の構成に工夫が施されている。
【0063】
図7に示すように、枠体冷却部38は、枠体30の第1辺部31aの中央部に設けられた2個の冷却水流入部38a1、38a2と、第1辺部31aに対向する第2辺部31bの中央部に設けられた2個の冷却水流出部38b1、38b2と、第1辺部31aから第3辺部31cを経由して第2辺部31bに至り一方の冷却水流入部38a1と一方の冷却水流出部38b1とを接続する第1冷却水路38c1と、第1辺部31aから第4辺部31dを経由して第2辺部31bに至り他方の冷却水流入部38a2と他方の冷却水流出部38b2とを接続する第2冷却水路38c2と、で構成されている。
【0064】
これにより、枠体30を冷却する場合には、一方の冷却水流入部38a1から枠体30の内部に流入した冷却水は、第1辺部31aから第3辺部31cを経由して第2辺部31bに至り、一方の冷却水流出部38b1から枠体30の外部に流出する。また、他方の冷却水流入部38a2から枠体30の内部に流入した冷却水は、第1辺部31aから第4辺部31dを経由して第2辺部31bに至り、他方の冷却水流出部38b2から枠体30の外部に流出する。
【0065】
第1実施形態(図4参照)の枠体側冷却部の構成と比較して、第3実施形態では、冷却水は、枠体30内部の冷却水路の約半分の距離だけを流れて外部に排出される。
【0066】
図8に示すように、熱盤冷却部28は、熱盤部26の第1の辺27aの中央部に設けられた2個の冷却水流入部28a1、28b2と、第1の辺27aの両端部に設けられた2個の冷却水流出部28b1、28b2と、第1の辺27aと第2の辺27bとの間を往復しながら一方の冷却水流入部28a1と一方の冷却水流出部28b1とを接続する第1冷却水路28c1と、第1の辺27aと第2の辺27bとの間を往復しながら他方の冷却水流入部28a2と他方の冷却水流出部28b2とを接続する第2冷却水路28c2と、で構成されている。
【0067】
これにより、熱盤部26を冷却する場合には、一方の冷却水流入部28a1から熱盤部26の内部に流入した冷却水は、第1の辺27aと第2の辺27bとの間の往復を繰り返しながら第1の辺27aの一方の端部側に流れ、一方の冷却水流出部28b1から熱盤部26の外部に流出する。また、他方の冷却水流入部28a2から熱盤部26の内部に流入した冷却水は、第1の辺27aと第2の辺27bとの間の往復を繰り返しながら第1の辺27aの他方の端部側に流れ、他方の冷却水流出部28b2から熱盤部26の外部に流出する。
【0068】
第1実施形態(図3参照)の熱盤部側冷却部の構成と比較して、第3実施形態では、冷却水は、熱盤部26内部の冷却水路の約半分の距離だけを流れて外部に排出される。
【0069】
(課題と解決策)
熱盤部26を冷却する際、図3に示すような冷却方法であれば、冷却中の熱盤部26の左右方向の温度差が大きくなってしまう。そうすると、熱盤部26の左右の収縮率の違いにより、相対的にズレが生じて熱盤部26と枠体30との隙間が広がる。
【0070】
熱盤部26と同様の理由により、枠体30の冷却時においても、図4に示す冷却方法であれば、枠体30の冷却中に、枠体30の左右方向に温度差が生じ、枠体30の左右の収縮率の違いにより、真空チャンバCの真空度が劣化しうる。
【0071】
そこで、図7に示すように、枠体30を冷却する場合には、冷却水が、枠体30の第1辺部31aの中央から枠体30の内部に流入し、反対側になる第2辺部31bの中央から枠体30の外部に流出するように構成することにより、枠体30の左右方向(図7矢印X方向)の温度分布を均一にすることができる。
【0072】
また、図8に示すように、熱盤部26を冷却する場合には、冷却水が、熱盤部26の第1の辺27aの中央側から熱盤部26の内部に流入し、第1の辺27aの両端部側から熱盤部26の外部に流出するように構成することにより、熱盤部26の左右方向(図8矢印X方向)の温度分布を均一にすることができる。この冷却方法によれば、熱盤部26の冷却時において、枠体30及び熱盤部26の左右温度差によるズレが原因で発生する真空度劣化を防ぐことができる。これにより、シール部34の交換回数が減り、接合装置10の稼働率を上げることができる。
【0073】
なお、枠体30及び熱盤部26の左右方向(図7及び図8矢印X方向)に関する温度分布の均一化を検討したのは、枠体30及び熱盤部26の左右方向の寸法が前後方向(図7及び図8矢印Y方向)に比べて長く、温度差による悪影響が顕著にあらわれるためである。
【符号の説明】
【0074】
10 接合装置
14 加圧機構
26 熱盤部
27a 第1の辺
27b 第2の辺
27c 第3の辺
27d 第4の辺
28 熱盤冷却部
28a1 冷却水流入部
28a2 冷却水流入部
28b1 冷却水流出部
28b2 冷却水流出部
28c1 第1冷却水路
28c2 第2冷却水路
30 枠体
31a 第1辺部
31b 第2辺部
31c 第3辺部
31d 第4辺部
32 制御部
34 シール部
38 枠体冷却部
38a1 冷却水流入部
38a2 冷却水流入部
38b1 冷却水流出部
38b2 冷却水流出部
38c1 第1冷却水路
38c2 第2冷却水路
39 開閉弁
40 温度検出器(温度検出部)
X 貼り合せ用基材
Y 貼り合せ用基材
C 真空チャンバ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
加圧機構と、
前記加圧機構からの加圧力の作用方向に複数配置され、内部に熱源を有する熱盤部と、
前記熱盤部の側方に設けられた枠体と、
前記加圧力の作用方向に隣接する前記熱盤部同士が相互に積み重なることにより当該熱盤部間に形成された真空チャンバと、
を有し、前記真空チャンバ内で貼り合せ用基材同士を前記熱盤部により熱圧着させて接合する接合装置であって、
前記熱盤部と前記枠体との間に設けられ、前記真空チャンバを気密に封止するシール部と、
前記枠体に設けられ、当該枠体及び前記シール部を冷却するための枠体冷却部と、
を有することを特徴とする接合装置。
【請求項2】
前記枠体は、第1辺部と、第1辺部に対向する第2辺部と、第1辺部の一方の端部と第2辺部の一方の端部とを接続する第3辺部と、第1辺部の他方の端部と第2辺部の他方の端部とを接続する第4辺部とにより枠状に構成され、
前記枠体冷却部は、
前記第1辺部の中央部に設けられた複数の冷却水流入部と、
前記第2辺部の中央部に設けられた複数の冷却水流出部と、
前記第1辺部から前記第3辺部を経由して前記第2辺部に至り一方の前記冷却水流入部と一方の前記冷却水流出部とを接続する第1冷却水路と、
前記第1辺部から前記第4辺部を経由して前記第2辺部に至り他方の前記冷却水流入部と他方の前記冷却水流出部とを接続する第2冷却水路と、
を有することを特徴とする請求項1に記載の接合装置。
【請求項3】
前記熱盤部は、第1の辺と、前記第1の辺に対向する第2の辺と、前記熱盤部を冷却するための熱盤冷却部と、を有し、
前記熱盤冷却部は、
前記第1の辺の中央部に設けられた複数の冷却水流入部と、
前記第1の辺の両端部に設けられた複数の冷却水流出部と、
前記第1の辺と前記第2の辺との間を往復しながら一方の前記冷却水流入部と一方の前記冷却水流出部とを接続する第1冷却水路と、
前記第1の辺と前記第2の辺との間を往復しながら他方の前記冷却水流入部と他方の前記冷却水流出部とを接続する第2冷却水路と、
を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の接合装置。
【請求項4】
前記枠体に設けられ、前記枠体の温度を検出するための温度検出部と、
前記枠体冷却部に対し冷却水を流入、または流入を停止する開閉弁と、
前記温度検出部により前記枠体の温度が第1の温度以上であることが検出された場合に、前記開閉弁を開いて前記枠体冷却部へ冷却水を流入し、前記温度検出部により前記枠体の温度が前記第1の温度よりも低い第2の温度以下であることが検出された場合に、前記開閉弁を閉じて前記枠体冷却部への冷却水の流入を停止する制御部と、
を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の接合装置。
【請求項5】
真空チャンバ内で貼り合せ用基材同士を加熱加圧して接合する接合方法であって、
前記貼り合せ用基材同士の外側の両主面に熱源を有する熱盤部を配置し、前記貼り合せ用基材および前記熱盤部の側方を囲むように枠体を配置し、前記熱盤部と前記枠体の間にシール部を設けることにより、前記貼り合せ用基材の周囲に密閉空間を形成するステップと、
前記密閉空間を真空引きすることにより真空チャンバを形成するステップと、
前記枠体及び前記シール部を冷却するとともに、前記熱盤部により前記貼り合せ用基材を加熱加圧するステップと、
を備えたことを特徴とする接合方法。
【請求項6】
前記真空チャンバ内で前記貼り合せ用基材同士を加熱加圧した後、前記熱盤部を冷却するとともに、前記枠体を冷却するステップを備えたことを特徴とする請求項5に記載の接合方法。
【請求項7】
前記真空チャンバ内で貼り合せ用基材同士を熱圧着させている際に前記枠体の温度を検出し、
前記枠体の温度が第1の温度以上であることが検出された場合に、前記枠体及び前記シール部の冷却を開始し、
前記枠体の温度が第2の温度以下であることが検出された場合に、前記枠体及び前記シール部の冷却を停止することを特徴とする請求項5又は6に記載の接合方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−749(P2013−749A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−130881(P2011−130881)
【出願日】平成23年6月13日(2011.6.13)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】