説明

接地構造およびこの接地構造が採用された画像形成装置

【課題】装置本体内に装着された各種の除電解消部材の帯電を確実に除電することができるようにする。
【解決手段】プリンタ本体11内に装着された各種の部材(本実施形態においては返送ローラ対153)に帯電する静電気を当該プリンタ本体11内に配設された線状導体622介して接地するものであり、一端部が静電気を帯電する返送ローラ対153の返送ローラ軸153aに電気的に接続され、他端部が線状導体622に電気的に接続される導電材料製の板バネ片51と、この板バネ片51に互いに平行に形成された一対の導体片52とを備えて構成され、一対の導体片52は、線状導体622が当該一対の導体片52に挟持された状態で弾性変形することによりそれぞれ付勢力が付与され、かつ、一方と他方とで線状導体622押圧挟持している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、装置本体内に装着された各種の部材に帯電する静電気やノイズ電流、さらにはサージ電流等をアース(接地)する接地構造およびこの接地構造が採用された画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1〜3に記載されているような、画像形成装置に設けられた接地構造が知られている。画像形成装置は、読み取ったり、コンピュータ等の外部機器から伝送された画像情報に基づき画像を形成して用紙などの転写材に転写処理するものであり、通常、画像形成装置を構成する各種の部材に静電気が帯電する。かかる静電気を除電するべく装置本体には、その内部に配線されたアース線と、このアース線と各種の部材との間を電気的に接続する接続部材とを備えてなる接地構造が設けられている。
【0003】
従来知られた接地構造としては、例えば、特許文献1〜3に記載されているようなものを挙げることができる。
【0004】
まず、特許文献1に記載の接地構造は、画像形成装置を構成する帯電し易い部材である帯電器を作動位置とこれから後退した不作動位置との間で選択的に位置設定するべく設けられたバネ材を、アース材(接続部材)として使用するというものである。
【0005】
また、特許文献2に記載の接地構造は、画像形成装置の構成要素の1つである帯電し易い部材としての搬送ロールの支軸に対して設置可能な弾性接地片(接続部材)を設け、搬送する用紙の帯電状態や種類に応じてソレノイドの励磁、消磁で当該弾性接地片を接地状態と非接地状態とに切り替え得るようになされている。
【0006】
さらに、特許文献3に記載の接地構造は、画像形成装置の構成要素の1つである密着型原稿読取装置に適用されるものであり、原稿画像を密着状態で読み取るべく移動中の原稿を密着型イメージセンサに押圧する押圧部材の帯電を、回路基材の電気回路およびこの回路基材にバネの付勢力で押圧当接した押圧板(接続部材)を介して接地するように構成されている。
【0007】
これら特許文献1〜3の接地構造はいずれも、帯電しやすい部材とアース線との間に介在される接続部材としてバネ材が使用され、このバネ材の付勢力で当該接続部材をアース線に押圧当接させるという構造になっている。
【特許文献1】特開平8−171308号公報
【特許文献2】特開平10−101243号公報
【特許文献3】特開2005−80128号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、たとえ接続部材がバネ材を備えて構成され、このバネ材の付勢力で接続部材をアース線に押圧当接させるようにしても、単純に接続部材をアース線に押圧当接させるだけでは、画像形成装置の設計誤差や組み付け誤差、さらには稼働中の装置の振動等によって接続部材をアース線に当接し得なくなってしまうことがあり、こうなると、除電対象部材の帯電を取り除くことができなくなるという問題が存在した。
【0009】
本発明は、従来のかかる状況に鑑みなされたものであって、装置本体内に装着された各種の除電対象部材の帯電を確実に除電することができる接地構造およびこの接地構造が採用された画像形成装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1記載の発明は、装置本体内に装着された部材を接地する接地構造であって、前記装置本体内に配設され、所定の接地経路に接続される線状導体部材と、前記部材に電気的に接続されるとともに、前記線状導体部材に電気的に接続される接続部材とを備えて構成され、前記接続部材は、導電性の基体と、前記基体から互いに対向するように突設された一対の導体片とを含み、前記一対の導体片は、それぞれの少なくとも一方の端部で互いに一体化され、かつ、それぞれ付勢力が付与されるように弾性的に撓ませられ、前記線状導体部材を挟んだ状態で当該線状導体部材と接触されることを特徴とするものである。
【0011】
かかる構成によれば、一対の導体片に挟持された線状導体部材は、弾性的に撓ませられた一対の導体片によって押圧挟持された状態になるため、導体片に対する電気的な接続状態が安定する。従って、たとえ多少の設計誤差や組み付け誤差が存在したとしても、線状導体部材が一対の導体片から外れるようなことがなく、これによって除電対象部材で発生した静電気等は、常に確実に接続部材および線状導体部材を介してアースすることができ、除電対象部材で生じた静電気等により除電対象の装置が悪影響を受けるような不都合の発生が常に確実に防止される。
【0012】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記一対の導体片は、一方が表面側を線状導体部材に当接させるとともに、他方が裏面側を線状導体部材に当接させた状態で弾性変形されていることを特徴とするものである。
【0013】
かかる構成によれば、一対の導体片は、一方が表面側を線状導体部材に当接させるとともに、他方が裏面側を線状導体部材に当接させた状態で弾性変形されているため、線状導体部材は、一対の導体片によって千鳥掛け状で押圧挟持された状態になり、これによって線状導体部材と一対の導体片との間の電気的接続状態が確実なものになる。
【0014】
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載の発明において、前記一対の導体片は、一方の端部で互いに一体化されていることを特徴とするものである。
【0015】
かかる構成によれば、一対の一対の導体片は、一方の端部で互いに一体化されていることにより他方の端部は開放状態になっているため、線状導体部材を一対の導体片間に容易に嵌め込むことが可能であり、組み付け作業の作業性が向上する。
【0016】
請求項4記載の発明は、請求項1または2記載の発明において、前記一対の導体片は、両端部で互いに一体化されていることを特徴とするものである。
【0017】
かかる構成によれば、一対の導体片は、両端部で互いに一体化されているため、一旦弾性変形により一対の導体片で線状導体部材を挟持した状態では、大きな押圧挟持力が得られ、これによって導体片の線状導体部材に対するより確実な電気的接続状態が得られる。
【0018】
請求項5記載の発明は、画像情報に基づき画像を形成して用紙に転写するように構成された画像形成装置であって、請求項1乃至4のいずれかに記載の接地構造が採用されていることを特徴とするものである。
【0019】
かかる構成によれば、画像形成装置は、請求項1乃至4のいずれかに記載の接地構造が有する優れた作用効果を享受し得るものになる。
【発明の効果】
【0020】
請求項1記載の発明によれば、弾性的に撓まされた一対の導体片に挟持された線状導体部材は、当該一対の導体片によって押圧された状態になるため、導体片に対する電気的な接続状態が安定し、従って、たとえ多少の設計誤差や組み付け誤差が存在したとしても、線状導体部材が一対の導体片から外れるようなことがなく、これによって除電対象部材で発生した静電気等は、常に確実に基体を介してアースすることができ、除電対象の装置について除電対象部材で生じた静電気等により悪影響を受けるような不都合の発生を常に確実に防止することができる。
【0021】
請求項2記載の発明によれば、一対の導体片は、一方が表面側を線状導体部材に当接させるとともに、他方が裏面側を線状導体部材に当接させた状態で弾性変形されているため、線状導体部材は、一対の導体片によって千鳥掛け状で押圧挟持された状態になり、これによって線状導体部材と一対の導体片との間の電気的接続状態を確実なものにすることができる。
【0022】
請求項3記載の発明によれば、一対の一対の導体片は、一方の端部で互いに一体化されていることにより他方の端部は開放状態になっているため、線状導体部材を一対の導体片間に容易に嵌め込むことが可能であり、組み付け作業の作業性を向上させることができる。
【0023】
請求項4記載の発明によれば、一対の導体片は、両端部で互いに一体化されているため、一旦弾性変形により一対の導体片で線状導体部材を挟持した状態では、大きな押圧挟持力を得ることができ、これによって導体片の線状導体部材に対するより確実な電気的接続状態を得ることができる。
【0024】
請求項5記載の発明によれば、画像形成装置に請求項1乃至4のいずれかに記載の接地構造が採用されているため、当該画像形成装置を、請求項1乃至4のいずれかに記載の接地構造が有する優れた作用効果を享受し得るものにすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
図1は、本発明に係る接地構造が採用されたプリンタの一実施形態を示す外観視の斜視図であり、図1(A)は、メンテナンスリッドが閉止された状態、図1(B)は、メンテナンスリッドが開放された状態、図1(C)は、メンテナンスリッドが開放されてトナーコンテナが取り外された状態をそれぞれ示している。なお、図1において、X−X方向を左右方向、Y−Y方向を前後方向といい、特に−X方向を左方、+X方向を右方、−Y方向を前方、+Y方向を後方という。
【0026】
図1に示すように、プリンタ(画像形成装置)10は、カラー印刷が可能に構成されたものであり、外観視で略立方体状を呈した筐体としてのプリンタ本体11内に後述する各種の機器が装着されることによって構成されている。前記プリンタ本体11は、全体的に丸みを帯びた形状とされ、ユーザーに対して視覚的に優しく、かつ、コンパクトな印象を与え得るようにデザインされている。
【0027】
かかるプリンタ本体11は、上面に排紙トレイ161が設けられているとともに、ユーザーが対面する前面上部にメンテナンスリッド112が設けられ、このメンテナンスリッド112の下部に挿脱自在の用紙カセット121が配設されている。かかる配置構成によってプリンタ10は、ユーザビリティを考慮した極めて使用し易いものになっている。
【0028】
前記排紙トレイ161は、印刷処理が施された用紙Pを受けるものであり、プリンタ本体11の上面後方で前方を向いて形成された排紙口162から排出された用紙Pを受け得るように前方に向かって円弧状で先上がりに傾斜した傾斜面によって形成されている。
【0029】
前記メンテナンスリッド112は、普段は図1(A)に示すように閉止され、トナーコンテナ30の交換時に、図1(B)および(C)に示すように、開放されるようになっている。かかるメンテナンスリッド112は、プリンタ本体11の一対の側板111の前方位置間で用紙カセット121より若干上方位置に架設された支持軸122a回りに回動自在に軸支され、当該支持軸122a回りに正逆回動することでプリンタ本体11の前面開口110を閉止した閉止姿勢S1(図1(A))と、プリンタ本体11の前面開口110を開放した開放姿勢S2(図1(B)および(C))との間で姿勢変更可能になっている。
【0030】
このようなメンテナンスリッド112には、前記支持軸122a回りに回動自在に軸支された手差しトレイ122が設けられている。この手差しトレイ122は、印刷用の用紙Pを手差しでプリンタ10へ供給するときに使用されるものであり、メンテナンスリッド112が閉止姿勢S1(図1(A)に実線で表示)に姿勢設定された状態で支持軸122a回りに時計方向に回動されることにより、図1(A)に二点鎖線で示すように、当該メンテナンスリッド112から引き出されるようになっている。
【0031】
前記トナーコンテナ30は、ブラックトナーが充填されたブラック用コンテナ30K、シアントナーが充填されたシアン用コンテナ30C、レッドトナーが充填されたレッド用コンテナ30Rおよびイエロートナーが充填されたイエロー用コンテナ30Yの4種類が採用されている。かかるブラック〜イエロー用コンテナ30K,30C,30R,30Yは、プリンタ本体11内で前面開口110に臨んで左から右へ向かってブラック用コンテナ30K、シアン用コンテナ30C、レッド用コンテナ30Rおよびイエロー用コンテナ30Yの順に並設されている。
【0032】
従って、ユーザーは、メンテナンスリッド112を開放することにより、図1(B)に示すように、ブラック〜イエロー用コンテナ30K,30C,30R,30Yと対面することになる。この状態で交換のためにブラック〜イエロー用コンテナ30K,30C,30R,30Yをプリンタ本体11内から取り除くと、図1(C)に示す状態になる。
【0033】
前記用紙カセット121は、印刷用の用紙Pを貯留するためのものであり、プリンタ本体11に対して前後方向に向けて挿脱可能に装着されている。図1に示す例では、用紙カセット121は1段で設けられているが、1段であることに限定されるものではなく、2段以上であってもよい。
【0034】
図2は、プリンタ10の内部構造の一実施形態を示す側面断面視の説明図である。なお、図2におけるYによる方向表示は、図1の場合と同様(−Y:前方、+Y:後方)である。図2に示すように、プリンタ10は、用紙束として貯留された用紙Pを後述する画像形成部13へ送り込む給紙部12と、この給紙部12から送り込まれた用紙Pを搬送しながら当該用紙Pにトナー像を転写する画像形成部13と、この画像形成部13で用紙Pに転写されたトナー像に対し定着処理を施す定着部14と、定着部14で定着処理の施された用紙Pの排出先を切り換える排出先切換え部15と、印刷処理が完了した用紙Pを排出する排紙部16とがプリンタ本体11に装着されることによって構成されている。
【0035】
前記給紙部12は、プリンタ本体11内の下部に挿脱自在に装着された複数枚の用紙Pが貯留可能な用紙カセット121と、用紙Pを手差しで給紙するときに用いられる前記手差しトレイ122とを備えて構成されている。
【0036】
前記各用紙カセット121の前側上方位置には並設された2つのピックアップローラ123が設けられ、これらのピックアップローラ123の駆動によって用紙カセット121に貯留されている用紙Pが1枚ずつ繰り出され、このピックアップローラ123の下流側に設けられた軸心が左右方向(用紙搬送方向と直交する方向)に延びる大径の給紙ローラ124を介して画像形成部13に向けて送り出されるようになっている。
【0037】
一方、手差しトレイ122の後方位置には、軸心が左右方向(用紙搬送方向と直交する方向)に延びた手差しローラ126が設けられ、手差しトレイ122を介して手差しで給紙された用紙は、この手差しローラ126の駆動で画像形成部13へ向けて送り込まれるようになっている。
【0038】
前記画像形成部13は、感光体ドラム131と、帯電ローラ132と、露光装置133と、回転式現像装置20と、トナーコンテナ30と、転写ベルト134と、一次転写ローラ135と、二次転写ローラ136と、ローラクリーニング装置137と、ベルトクリーニング装置138とを備えて構成されている。
【0039】
前記感光体ドラム131は、周面に静電潜像およびこの静電潜像に沿ってトナー像を形成させるためのものであり、プリンタ本体11の中央部において左右方向(図2の紙面に直行する方向)に延びた軸心回りに回転可能とされている。
【0040】
前記帯電ローラ132は、前記感光体ドラム131の周面に帯電処理を施すことにより同周面に一様な電荷を形成させるためのものである。かかる帯電ローラ132は、図略の電源から印加された高圧電圧によって周面に所定の極性の電荷が形成されるようになっている。かかる帯電ローラ132の周面が感光体ドラム131の周面に当接されていることにより、感光体ドラム131の周面に一様な電荷が形成されるようになっている。
【0041】
前記露光装置133は、前記帯電ローラ132により一様な電荷の付与された感光体ドラム131の周面に画像情報に基づくレーザー光を照射することにより同周面に静電潜像を形成させるものである。
【0042】
かかる露光装置133は、図略のコンピュータ等から入力された画像データに基づくレーザー光を照射するようになっており、このレーザー光の照射によって感光体ドラム131の周面に静電潜像が形成される。かかる静電潜像に回転式現像装置20からのトナーが供給されることにより、感光体ドラム131の周面にトナー像が形成され、このトナー像が周回している転写ベルト134に転写されるようになっている。
【0043】
前記回転式現像装置20は、露光装置133からのレーザー光の照射により静電潜像の形成された感光体ドラム131の周面にトナーを供給することにより同周面にトナー像を形成させるものである。かかる回転式現像装置20へは、前記複数のトナーコンテナ30(ブラック〜イエロー用コンテナ30K,30C,30R,30Y)からそれぞれの色のトナーが供給されるようになっている。
【0044】
前記転写ベルト134は、感光体ドラム131の周面に形成されたトナー像が転写されるものであり、前記一次転写ローラ135は、感光体ドラム131上のトナー像を静電的に引き剥がして転写ベルト134の表面に転写させるものである。
【0045】
前記二次転写ローラ136は、前記転写ベルト134上のトナー像を静電的に引き剥がして給紙部12から送り込まれた用紙Pに転写させるものである。
【0046】
前記ローラクリーニング装置137は、前記転写ベルト134へ転写処理後の感光体ドラム131の周面を清浄化処理するものであり、前記ベルトクリーニング装置138は、用紙Pに対する転写処理後の転写ベルト134の表面に清浄化処理を施すものである。
【0047】
前記回転式現像装置20は、側面視で(図2の紙面に直行する方向から見て)円形に形成された回転枠体21と、この回転枠体21に周方向で等ピッチに装着された4つの現像器22とを備えて構成されている。前記回転枠体21は、感光体ドラム131の後方位置で当該感光体ドラム131の軸心と平行に、かつ、略同一高さレベルで配設された枠体軸211回りに回転可能に軸支されている。かかる回転枠体21は、枠体軸211から径方向に向けて突設された4枚の仕切板212によって周方向に均等に4区画に区分され、各区画に現像器22が装着されている。
【0048】
前記現像器22は、ブラックトナーが充填されるブラック用現像器22Kと、シアントナーが充填されるシアン用現像器22Cと、レッドトナーが充填されるレッド用現像器22Rと、イエロートナーが充填されるイエロー用現像器22Yとの4種類が存在する。そして、感光体ドラム131の周面にイエロートナーでトナー像を形成させるときは、回転枠体21の枠体軸211回りの回転によってイエロー用現像器22Yが感光体ドラム131と対向する位置に設定され、この状態で感光体ドラム131が一周することによりその周面にイエローのトナー像を形成させるようになされている。このイエローのトナー像は、周回している転写ベルト134に直ちに転写される。
【0049】
感光体ドラム131の周面にレッド、シアンおよびブラックのトナー像を形成されるときもイエローのときと同様であり、対象の色のトナーの充填された現像器22が感光体ドラム131の周面と対向され、これによって転写ベルト134への転写処理によりトナー像が消滅した感光体ドラム131の周面には次の色のトナー像が順次転写されていくことになる。そして、転写ベルト134の周回と感光体ドラム131のトナー像形成動作とを適正に同期させることにより、転写ベルト134の表面には、カラー画像が形成されることになる。このカラー画像が給紙部12から給紙された用紙Pに二次転写ローラ136の作用で転写されることにより用紙Pに対しカラー印刷が行われる。
【0050】
なお、二次転写ローラ136の直上流側の位置にはレジストローラ対125が設けられ、給紙部12から画像形成部13へ送り込まれた用紙Pは、このレジストローラ対125によって搬送タイミングが調整されるようになされている。かかるレジストローラ対125による搬送タイミングのタイミング調整によって転写ベルト134上のカラー画像が用紙P上の適正な位置に転写されるようになっている。
【0051】
前記転写ベルト134は、前記一次転写ローラ135と、この一次転写ローラ135の若干後方位置に設けられたアイドルローラ134cと、感光体ドラム131の下方の若干後方側に設けられた図略の駆動モータの駆動で駆動回転する駆動ローラ134aと、感光体ドラム131の下方の前方位置で駆動ローラ134aと対向配置された従動ローラ134bとに掛け回されている。
【0052】
前記従動ローラ134bは、コイルスプリング等の付勢部材134dの付勢力によって駆動ローラ134aから離間する方向に向けて付勢され、これによって転写ベルト134の緊張状態が維持されるようになっている。そして、前記二次転写ローラ136は、駆動ローラ134aの直下位置で転写ベルト134を介して当該駆動ローラ134aと対向配置されている。
【0053】
前記二次転写ローラ136には、転写ベルト134上のトナー画像を静電的に引き剥がすバイアス電圧が図略の電源から印加されている。従って、転写ベルト134と二次転写ローラ136との間を通過する用紙Pには、転写ベルト134のトナー画像が転写されることになる。
【0054】
そして、駆動ローラ134aとアイドルローラ134cとの間には、用紙Pに対する転写処理後の転写ベルト134の表面を清浄化処理する前記ベルトクリーニング装置138が設けられ、このベルトクリーニング装置138によって清浄化処理が施された転写ベルト134は、次の転写処理を受けるために感光体ドラム131へ向かうことになる。
【0055】
前記定着部14は、画像形成部13で用紙Pに転写された転写画像に定着処理を施すものであり、通電発熱体により加熱される定着ローラ141と、下部でこの定着ローラ141に対向配置され、周面が定着ローラ141の周面に押圧当接される加圧ローラ142とを備えて構成されている。そして、前記画像形成部13で転写ベルト134により転写処理の施された用紙Pは、転写ベルト134と二次転写ローラ136とに挟持された状態で転写ベルト134の周回に誘導されて定着部14に導入され、定着ローラ141と加圧ローラ142との間を通過するときの加熱によりトナー像が当該用紙Pに定着処理されるようになっている。
【0056】
定着処理後の用紙Pは、第1排出ローラ対143の駆動により排紙搬送路101へ導出され、第2排出ローラ対102の順駆動で排紙搬送路101を上昇させられ、排紙口162を通ってプリンタ本体11の頂部に設けられた排紙トレイ161へ排出されるようになっている。
【0057】
前記排出先切換え部15は、用紙Pに対して両面印刷を施す場合に利用されるものであり、片面の定着処理が完了して定着部14から一旦排紙搬送路101へ送り出された用紙Pを表裏逆転させた状態で再度画像形成部13へ返送するようになっている。かかる排出先切換え部15は、排紙搬送路101の下端部に第1排出ローラ対143の下方のものと周面同士が互いに当接するように対向配置された返送ローラ151と、この返送ローラ151の下部から定着部14の下を通ってレジストローラ対125の上流側(図2における右側)へ延びた返送搬送路152とを備えて構成されている。
【0058】
そして、用紙Pに両面印刷を施すに際しては、片面印刷が完了した定着処理後の用紙Pを、その後端が第1排出ローラ対143を通過するまで排紙搬送路101へ導出し、引き続き第2排出ローラ対102を逆駆動させるようになされている。こうすることで片面印刷の完了した用紙Pは、返送ローラ151の駆動に誘導されて返送搬送路152へ逆送され、この返送搬送路152を通って表裏が逆転した状態でレジストローラ対125へ向かわせられるため、以後、画像形成部13において当該用紙Pの裏面側に印刷処理が施されることになる。
【0059】
なお、返送搬送路152における前記レジストローラ対125の下部前方には、返送ローラ対153が設けられ、返送搬送路152を移動中の用紙Pは、この返送ローラ対153の駆動でレジストローラ対125へ向けて確実に返送されるようになっている。
【0060】
そして、本実施形態においては、ピックアップローラ123,給紙ローラ124、レジストローラ対125および二次転写ローラ136等を含む部分が、図2に二点鎖線で示すように給紙ユニット40としてユニット化されている。かかる給紙ユニット40は、プリンタ本体11の前面側を介し当該プリンタ本体11に対して挿脱可能になっており、図1(C)に二点鎖線で示すように、メンテナンスリッド112が最大限に開放された状態でメンテナンス作業のためにプリンタ本体11に対して挿脱し得るようになっている。
【0061】
図3は、給紙ユニット40の一実施形態を示す斜視図である。なお、図3におけるXおよびYによる方向表示は、図1の場合と同様(Xは左右方向(−X:左方、+X:右方)、Yは前後方向(−Y:前方、+Y:後方))である。図3に示すように、給紙ユニット40は、側面視で後方に向けって先下がりに傾斜した枠体41にピックアップローラ123(図2)や給紙ローラ124、さらにはレジストローラ対125、二次転写ローラ136等の部材が装着されることによって構成されている。
【0062】
前記枠体41は、斜辺部分が後方に向かって先下がりに傾斜した左右方向一対の側板42と、これら一対の側板42間の前方位置に架設された上下方向に延びる立設ガイド板43と、一対の側板42の前後方向中央部より前方位置における上縁部間に架設された若干後方に向かって先下がりの上流側用紙搬送板44と、この上流側用紙搬送板44と後述する下流側用紙搬送板46との間で一対の側板42間に架設された中間用紙搬送板45と、一対の側板42の前後方向中央部より後方位置における上縁部間に架設された若干後方に向かって先下がりの下流側用紙搬送板46と、一対の側板42の後部間で、かつ、下流側用紙搬送板46より下方位置に架設された返送用紙搬送板47とを備えて構造的に丈夫に構成されている。
【0063】
立設ガイド板43は、給紙ユニット40における前記ピックアップローラ123(図2)の前方上部に立設され、これによってピックアップローラ123の駆動で用紙カセット121から繰り出された用紙Pは、この立設ガイド板43に案内されつつ上方へ向かって搬送されるようになっている。
【0064】
前記給紙ローラ124は、周面上部が上方に突出した状態で立設ガイド板43と上流側用紙搬送板44との間に左右方向一対で介設されている。かかる給紙ローラ124は、一対の側板42間に架設された給紙ローラ軸124a回りに同心で一体回転可能に軸支され、図略の駆動モータの駆動による給紙ローラ軸124aの軸心回りの駆動回転で回転するようになっている。
【0065】
前記レジストローラ対125は、上流側用紙搬送板44と中間用紙搬送板45との間に設けられている。かかるレジストローラ対125は、上下で対向して周面同士が互いに当接するように、一対の側板42間に架設された一対のレジストローラ軸125aに同心で軸支されている。これら一対のレジストローラ軸125aの内の一方は、図略の駆動モータの駆動で駆動回転するようになされており、これによるレジストローラ対125の一方のローラの駆動回転が周面を介して他方のローラに伝達され、他方のローラが従動回転するようになされている。かかるレジストローラ対125に用紙Pが供給されると、当該用紙Pは、搬送タイミングがとられた上でレジストローラ対125に押圧挟持されて確実に搬送され得るようになっている。
【0066】
前記二次転写ローラ136は、中間用紙搬送板45と下流側用紙搬送板46との間で上側の周面を上部に突出させた状態で設けられている。かかる二次転写ローラ136は、一対の側板42間に架設された二次転写ローラ軸136a回りに同心で一体回転可能に軸支されている。このような二次転写ローラ136は、図略の駆動モータの駆動で二次転写ローラ軸136aが軸心回りに駆動回転されることにより当該二次転写ローラ軸136aと一体回転し、これによって転写ベルト134とで挟持している用紙Pに転写処理を施しつつ当該用紙Pを下流側へ向けて搬送するようになっている。
【0067】
前記下流側用紙搬送板46は、下流端(後方端)が定着部14(図2)に対向されている。従って、転写処理後の用紙Pは、この下流側用紙搬送板46に案内されつつ前進して定着部14に給紙されることになる。
【0068】
前記返送用紙搬送板47は、前記返送搬送路152の一部を構成するものであり、定着部14の下方位置に設けられている。裏面側への印刷処理のために返送ローラ151の駆動で返送された用紙Pは、この返送用紙搬送板47に案内されつつ返送搬送路152を通ってレジストローラ対125へ向けて送り込まれるようになっている。
【0069】
本実施形態においては、このように構成された給紙ユニット40に、各所で帯電した静電気等を除電するべく本発明に係る接続部材(設置構造)50が設けられている。以下、図4および図5を基に本発明に係る接地構造の構成要素である接続部材50が適用される状況について説明する。図4は、本発明に係る接続部材50が適用された状況を説明するための斜視説明図であり、図5は、接続部材50が実際に適用された状態を示す給紙ユニット40の左面後方の部分斜視図である。なお、図4におけるXおよびYによる方向表示は、図1の場合と同様(Xは左右方向(−X:左方、+X:右方)、Yは前後方向(−Y:前方、+Y:後方))である。
【0070】
まず、本実施形態に係る接地構造は、給紙ユニット40の枠体(装置本体)41内に配設され、所定の接地経路に接続される導体部材(線状導体部材)60と、一方の端部が枠体41内の各種の部材に電気的に接続されるとともに、他方の端部が前記導体部材60に電気的に接続される接続部材50とを備えた基本構成を有している。
【0071】
図4に示す例では、搬送される用紙Pとの摺接によって静電気により帯電し易く、かつ、静電気の帯電で画像形成処理に影響を及ぼす部材として、手差しローラ126、給紙ローラ124、レジストローラ対125および返送ローラ対153を挙げることができる。これらはいずれもゴムや合成樹脂等の誘電材料性の部材が採用されているため、用紙Pが搬送される度に当該用紙Pと摺擦されて静電気が発生し易く、かつ、これらに静電気が発生すると、相手方の用紙Pにも静電気が生じるため、かかる静電気が帯電した用紙Pには画像が適正に転写され難くなるのである。
【0072】
このような不都合を解消するべく、本実施形態においては、図4および図5に示すように、給紙ユニット40の枠体41の左側面に線状導体部材60が配設され、手差しローラ126,給紙ローラ124,返送ローラ対153およびレジストローラ対125で発生した静電気等をこの線状導体部材60を介してアースするようになされている。
【0073】
前記線状導体部材60は、本実施形態においては、図4に示すように、最前部に設けられた上下方向に延びる第1板状導体61と、この第1板状導体61の下端部に連設された後方に向かって延びるスプリング導体62と、このスプリング導体62の後端部に連設された後方に向かって延びる第2板状導体63と、この第2板状導体63の後端部に連設された後方に向かって延びる第3板状導体64と、この第3板状導体64の後端部に連設された後方に向かって延びる導線65と、この導線65の後端部に連設された下方に向かって延びる第4板状導体66とが互いに電気的な接続状態を確保した上で順次連結されて構成されている。
【0074】
前記第4板状導体66は、先端が接地された図略のアース線に接続され、これによって手差しローラ126,給紙ローラ124,返送ローラ対153およびレジストローラ対125で発生した静電気等が除電されるようになされている。
【0075】
前記第1板状導体61は、手差しローラ126の直下位置に設けられ、所定の導線を介して当該手差しローラ126の中心位置に設けられた手差しローラ軸126aに電気的に接続され、手差しローラ126で発生した静電気等は、この第1板状導体61を介し線状導体部材60を通ってアースされるようになっている。
【0076】
前記スプリング導体62は、コイルスプリング621と、このコイルスプリング621の前後の端部から互いに反対方向に向けて突設された前後方向一対の線状導体(線状導体部材)622とを備えて構成されている。一対の線状導体622には、各先端部にフック623が設けられ、コイルスプリング621が伸長弾性変形された状態で前方の線状導体622はフック623に係合されているとともに、後方の線状導体622は第2板状導体63に係合され、これによる緊張状態でスプリング導体62は、第1板状導体61および第2板状導体63に対し確実な電気的接続状態を確保し得るようになっている。
【0077】
このようなスプリング導体62のコイルスプリング621には、前記給紙ローラ軸124aが接続片67を介して電気的に接続されている。接続片67は、給紙ローラ軸124aが摺接状態で嵌入される導電性の軸受部材671と、この軸受部材671に電気的に接続された板状導体672とを備えている。板状導体672の上縁部には、前記コイルスプリング621が圧入されるU字状片673が設けられ、コイルスプリング621が圧縮弾性変形した状態でU字状片673に圧入されることにより、コイルスプリング621と接続片67との間の確実な電気的接続状態を確保し得るようになっている。
【0078】
第2板状導体63は、前記レジストローラ対125で生じた静電気等を除電するためのものであり、側面視でU字状を呈している。かかる第2板状導体63には、所定の導電性部材を介してレジストローラ軸125aが電気的に接続され、レジストローラ対125で発生した静電気等は、この第2板状導体63、第3板状導体64、導線65および第4板状導体66を介してアースされるようになっている。
【0079】
なお、本実施形態においては、前記導線65に非線形抵抗素子であるバリスタ(varistor)651が介設され、これによって手差しローラ126,給紙ローラ124,返送ローラ対153およびレジストローラ対125の接地電位が全くの「0」になるのを防止している。
【0080】
そして、本実施形態においては、返送ローラ対153で発生した静電気等をアースするべく、本発明に係る接続部材50が適用されている。返送ローラ対153のアースに接続部材50が適用されたのは、レイアウト的な制約から返送ローラ対153のアース処理をスプリング導体62の後方の線状導体622を介してしか行うことができないため、線状導体622に対する電気的な接続状態を確実なものにするためである。
【0081】
すなわち、従来、直線状の導体に対して電気的な接続を行うに際しては、上述の特許文献1〜3に記載されているように、板バネ材からなる接続部材を介して行われ、当該接続部材を弾性変形させた状態で直線状の導体に当接されるのが一般的であるが、かかる接地構造を用いた場合には、たとえ接続部材としてバネ材が採用され、このバネ材の付勢力で除電対象部材と直線状導体とを押圧当接させるようにしても、単にバネ材の付勢力にのみ依存しているため、設計誤差や組み付け誤差、さらにはプリンタ10の使用中の振動等によってバネ材の付勢力が当該接続部材の直線状導体に対して当接し得なくなってしまうことがあり、こうなると、除電対象部材の帯電を取り除くことができなくなるという不都合が存在したのである。
【0082】
かかる不都合を解消するべく、本実施形態においては、返送ローラ対153で発生した静電気等を、線状導体622を介して確実に除電するべく、接続部材50が採用されているのである。
【0083】
図6は、本発明に係る接続部材50の第1実施形態を示す図であり、図6(A)は、板バネ片51が線状導体622に接続される前の状態を示す斜視図、図6(B)は、板バネ片51が線状導体622に接続された状態を示す斜視図、図6(C)は、図6(B)のI線視図である。なお、図6におけるXおよびYによる方向表示は図1の場合と同様(−X:左方、+X:右方、−Y:前方、+Y:後方)である。
【0084】
まず、図6(A)に示すように、第1実施形態に係る接続部材50は、全体が平板状の導電性金属材料によって形成され、上端部が線状導体622に接続されるとともに、下端部が返送ローラ対153の一方のローラの返送ローラ軸153aに接続されるようになっている。かかる接続部材50は、板バネ片(基体)51と、この板バネ片51の上端部側にスリット53を介して二股状に並設された一対の導体片52とを備えた基本構成を有している。
【0085】
前記板バネ片51は、L字状を呈し、横方向に延びる横向きバネ片511と、縦方向に延びる縦向きバネ片512とからなっている。前記一対の導体片52は、縦向きバネ片512の上部において、上縁部からスリット53が切り込まれることにより、当該スリット53を挟んで前後位置に並設されている。本実施形態においては、一方の導体片52が根本部分から左右方向に向けて曲折され、これによって板バネ片51から上方に向けて斜めに立設された状態になっている。図6に示す例では、前方の導体片52が左方に向けて折り曲げられている。なお、本発明は、導体片52を折り曲げることに限定されるものではなく、後方の導体片52と同様に上方に向けて真っ直ぐに立設されていてもよい。
【0086】
前記横向きバネ片511の後端部には、上縁部から右方に向かって折り曲げられた状態の接続突片513が設けられているとともに、前記縦向きバネ片512には、スリット53の直下位置に装着孔514が穿設され、さらにこの装着孔514の下部には逃がし孔515が穿設されている。
【0087】
前記接続突片513は、板バネ片51が前記枠体41の側板42(図3)に装着された状態で返送ローラ軸153aの端面に当接されて返送ローラ軸153aとの間の電気的な接続を確保するものである。かかる接続突片513は、接続突片513が側板42に装着された状態で所定の保持部材54(図4)により保持されることで返送ローラ軸153aとの当接状態が確保されるようになされている。
【0088】
前記装着孔514は、ネジ止めによって板バネ片51を枠体41の側板42固定するときに当該ネジを通すためのものである。また、前記逃がし孔515は、板バネ片51を側板42へ装着するに際し干渉する部材を逃がすためのものである。なお、かかる逃がし孔515については、相手方である干渉部材の位置に応じて設置位置が適宜設定される。
【0089】
そして、このような板バネ片51は、線状導体622がスリット53に嵌め込まれた状態で、図6(B)および図6(C)に示すように、線状導体622を挟んで一方の導体片52(図6(B)に示す例では後方の導体片52)が左方に向けて弾性的に撓まされている一方、他方の導体片52(図6(B)に示す例では前方の導体片52)が右方に向けて弾性的に撓まされた状態となっている。
【0090】
従って、一対の導体片52に挟持された線状導体622は、図6(C)に示すように、弾性変形した各導体片52の付勢力によって当該一対の導体片52に常に安定した状態で押圧当接されるため、設計誤差や組み付け誤差等によって板バネ片51が線状導体622と接触しなくなるような不都合の発生を確実に防止することができる。
【0091】
図7は、板バネ片51の線状導体622に対する装着方法を説明するための斜視説明図であり、(A)は、一対の導体片52間のスリット53に線状導体622を嵌め込んだ状態、(B)は、板バネ片51の線状導体622に対する装着が完了した状態をそれぞれ示している。なお、図7におけるXおよびYによる方向表示は図1の場合と同様(−X:左方、+X:右方、−Y:前方、+Y:後方)である。
【0092】
板バネ片51を線状導体622に装着するに際しては、まず、図7(A)に示すように、板バネ片51を、その上縁の延びる方向が線状導体622の延びる方向と略直交するように姿勢設定し、この状態で線状導体622を一対の導体片52間に形成されたスリット53に嵌め込む。
【0093】
ついで、図7(B)に示すように、板バネ片51を線状導体622と直交する方向に延びる縦向きバネ片512の中心線L回りに略90°回動させる。因みに、図7(B)に示す例では、板バネ片51を中心線L回りに時計方向に向けて回動している。こうすることによって線状導体622を介して後方の導体片52が左方に向けて撓む一方、前方の導体片52が右方に撓み、線状導体622は、これら一対の導体片52によって押圧挟持された状態になる。そして、板バネ片51は、この状態で枠体41の側板42に固定される。
【0094】
図8は、本発明に係る接続部材50′の第2実施形態を示す図であり、図8(A)は、板バネ片51が線状導体622に接続される前の状態を示す斜視図、図8(B)は、板バネ片51が線状導体622に接続された状態を示す斜視図である。なお、図8におけるXおよびYによる方向表示は図1の場合と同様(−X:左方、+X:右方、−Y:前方、+Y:後方)である。
【0095】
第2実施形態の接続部材50′は、図8(A)に示すように、板バネ片51の縦向きバネ片512の上部に先のスリット53に代えて上下方向に延びる長孔55が穿設され、この長孔55の前後にそれぞれ導体片52′が形成されている。
【0096】
かかる第2実施形態の接続部材50′によれば、線状導体622を長孔55に挿通した状態で板バネ片51を、縦向きバネ片512の上下方向に延びた中心線L回りにと時計方向に向けて略90°回動させることにより、接続部材50′は、図8(B)に示した状態になる。
【0097】
そして、図8(B)に示す状態においては、後方の導体片52′が左方に向けて膨出している一方、前方の導体片52′が右方に向けて膨出し、線状導体622は、これら一対の膨出により弾性変形した導体片52′によって押圧挟持されているため、各導体片52′と線状導体622とはより安定した状態で電気的に接続されることになる。
【0098】
以上詳述したように、第1本実施形態に係る接地構造は、プリンタ本体11内に装着された各種の部材(本実施形態においては返送ローラ対153)に生じる静電気等を当該プリンタ本体11内に配設された線状導体622と、この線状導体622に電気的に接続される接続部材50とを備えて構成されている。
【0099】
そして、前記接続部材50は、一端部が静電気等が生じる返送ローラ対153の返送ローラ軸153aに電気的に接続され、他端部が線状導体622に電気的に接続される導電材料製の板バネ片51と、この板バネ片51に互いに平行に形成された一対の導体片52とを備えて構成され、一対の導体片52は、弾性変形されることにより一方と他方とで線状導体622を押圧挟持している。
【0100】
従って、一対の導体片52に挟持された線状導体622は、当該一対の導体片52によって両側から押圧された状態になるため、導体片52に対する電気的な接続状態が安定し、従って、たとえ多少の設計誤差や組み付け誤差が存在したとしても、線状導体622が一対の導体片52から外れるようなことがなく、これによって返送ローラ対153で発生した静電気等は、常に確実に板バネ片51を介してアースすることができ、プリンタ10が返送ローラ対153で生じた静電気により悪影響を受けるような不都合の発生を常に防止することができる。
【0101】
そして、板バネ片51は、一対の導体片52間の隙間に線状導体622が嵌め込まれた後に各導体片52がそれぞれ弾性変形する方向に向けて所定角度回動された状態でプリンタ本体11に固定されているため、板バネ片51を特殊な形状にするなどの方策を採用することなく、単に板バネ片51を回動操作することにより常に一対の導体片52で線状導体622を押圧挟持することが可能になり、接続部材50を極めて簡単なものにすることができ、接続部材50の製造コストの低減化に貢献することができる。
【0102】
また、第2実施形態の接続部材50′は、一対の導体片52′が両端部で互いに一体化されている(すなわち、板バネ片51に長孔55を穿設した状態で当該長孔55の両側部にそれぞれ導体片52′が形成されている)ため、線状導体622を長孔55に差し通した上で、板バネ片51を線状導体622と直交する中心線回りに回動することにより、一対の導体片52′は、線状導体622との干渉でその中央部が互いに反対方向に向けて膨出するように弾性変形する。すなわち、各導体片52′は、その両端部が同時に弾性変形することになり、これによる相当大きな弾性変形量によって大きな付勢力が発生するため、各導体片52′を線状導体622に対してさらに確実に電気的に接続させることができる。
【0103】
また、線状導体622は、長孔55に差し通されているため、板バネ片51が線状導体622から外れることはなく、板バネ片51が線状導体622から外れることによる導通不良は生じることはない。
【0104】
そして、このような接続部材50,50′が採用された本発明に係るプリンタ10は、接続部材50,50′が有する前記のような静電気を除電するための優れた電気的接続状態を確保することができるため、プリンタ10は、当該プリンタ10を構成する各種の部材が静電気を帯電することにより画像形成処理に悪影響を及ぼすような不都合が生じないものになる。
【0105】
本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、以下の内容をも包含するものである。
【0106】
(1)上記の実施形態においては、本発明に係る接続部材50,50′が採用された本発明に係る画像形成装置としてプリンタ10を例に挙げて説明したが、本発明に係る画像形成装置は、プリンタ10であることに限定されるものではなく、読み取った画像情報に基づき当該画像情報を用紙に複写する複写機であってもよいし、通信回線を介して伝送された画像情報に基づき当該画像を用紙に印刷出力するファクシミリ装置であってもよい。
【0107】
(2)上記の実施形態においては、プリンタ10内における返送ローラ対153で発生した静電気を除電するべく接続部材50,50′が適用されているが、本発明は、接続部材50,50′を返送ローラ対153で発生した静電気の除電に適用することに限定されるものではなく、給紙ローラ124、レジストローラ対125あるいは手差しローラ126の除電やこれら以外の部材で発生する静電気の除電に適用してもよい。
【0108】
(3)上記の実施形態においては、板バネ片51は、横向きバネ片511と縦向きバネ片512とからなるL字形状を呈したものが採用されているが、本発明は、板バネ片51がL字形状を呈するものであることに限定されるものではなく、単なる長方形状の板体や、円形、楕円形あるいは接地する相手方の部材の形状に合わせた各種の異形であってもよい。
【0109】
(4)上記の実施形態においては、板バネ片51が装着される線状導体部材として線状導体622が採用されているが、本発明は、線状導体部材が線状導体622であることに限定されるものではなく、板状のものであってもよい。
【0110】
(5)図9〜図11は、第1実施形態に係る接続部材50の第1〜第3変形形態を示す斜視図であり、それぞれにおいて(A)は、接続部材が線状導体622に装着される前の状態、(B)は、接続部材が線状導体622に装着された状態をそれぞれ示している。
【0111】
まず、図9に示す第1変形例においては、接続部材50aは、図9(A)に示すように、板バネ片51が若干厚手の材料が採用されているとともに、一対の導体片52a間に形成されるスリット53の隙間寸法が線状導体622の直径寸法より大きく設定されている。
【0112】
かかる変形例の接続部材50aによれば、線状導体622を導体片52a間のスリット53に嵌め込んでいくことにより、各導体片52aは互いに反対方向に向けて弾性的に撓むため、この撓んだ一対の導体片52aの付勢力によって線状導体622は押圧挟持された状態になり、これによって接続部材50aと線状導体622との間で安定した電気的接続状態を得ることができる。
【0113】
ついで、図10に示す第2変形形態においては、接続部材50bを、図10(A)に示すように、厚手の板体56と、この板体56の端面から突設された互いに平行な2本の円柱状導体片52bとを備えて構成されている。この変形形態の接続部材50bにあっては、先の第1実施形態と同様に、スリット53に線状導体622を挟み込んだ状態で接続部材50bを略90°ねじることにより、一対の円柱状導体片52bが、図10(B)に示すように、互いに反対方向に撓んで線状導体622を保持することになる。
【0114】
また、図11に示す第3変形形態においては、接続部材50cを、図11(A)に示すように、厚手の板体56と、この板体56の端面から突設された互いに平行な2本の三角柱状導体片52cとを備えて構成されている。この変形形態の接続部材50cにあっては、先の第1実施形態と同様に、スリット53に線状導体622を挟み込んだ状態で接続部材50cを略90°ねじることにより、一対の三角柱状導体片52cが、図11(B)に示すように、互いに反対方向に撓んで線状導体622を保持することになる。
【0115】
そして、各三角柱状導体片52cの平面視における三角形の頂点が、接続部材50cをねじった状態で線状導体622に対向するように予め各三角柱状導体片52cを方向設定しておくことにより、接続部材50cが線状導体622に装着された状態で、図11(B)に示すように、各三角柱状導体片52cの三角形の頂点部分が線状導体622に食い込んだ状態になるため、三角柱状導体片52cと線状導体622との間のさらに確実な電気的接続状態を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0116】
【図1】本発明に係る接地構造が採用されたプリンタの一実施形態を示す外観視の斜視図であり、(A)は、メンテナンスリッドが閉止された状態、(B)は、メンテナンスリッドが開放された状態、(C)は、メンテナンスリッドが開放されてトナーコンテナが取り外された状態をそれぞれ示している。
【図2】プリンタの内部構造の一実施形態を示す側面断面視の説明図である。
【図3】給紙ユニットの一実施形態を示す斜視図である。
【図4】本発明に係る接地構造が適用された状況を説明するための斜視説明図である。
【図5】接地構造が給紙ユニットの実機に適用された状態を示す給紙ユニットの左面後方の部分斜視図である。
【図6】本発明に係る接地構造の第1実施形態を示す図であり、(A)は、板バネ片が線状導体に接続される前の状態を示す斜視図、(B)は、板バネ片が線状導体に接続された状態を示す斜視図、(C)は、(B)のI線視図である。
【図7】板バネ片の線状導体に対する装着方法を説明するための斜視説明図であり、(A)は、一対の導体片間のスリットに線状導体を嵌め込んだ状態、(B)は、板バネ片の線状導体に対する装着が完了した状態をそれぞれ示している。
【図8】本発明に係る接地構造の第2実施形態を示す図であり、(A)は、板バネ片が線状導体に接続される前の状態を示す斜視図、(B)は、板バネ片が線状導体に接続された状態を示す斜視図である。
【図9】第1実施形態に係る接地構造の第1変形形態を示す斜視図であり、(A)は、接続部材が線状導体に装着される前の状態、(B)は、接続部材が線状導体に装着された状態をそれぞれ示している。
【図10】第1実施形態に係る接地構造の第2変形形態を示す斜視図であり、(A)は、接続部材が線状導体に装着される前の状態、(B)は、接続部材が線状導体に装着された状態をそれぞれ示している。
【図11】第1実施形態に係る接地構造の第3変形形態を示す斜視図であり、(A)は、接続部材が線状導体に装着される前の状態、(B)は、接続部材が線状導体に装着された状態をそれぞれ示している。
【符号の説明】
【0117】
10 プリンタ(画像形成装置)
101 排紙搬送路 102 排出ローラ対
11 プリンタ本体(装置本体)
110 前面開口 111 側板
112 メンテナンスリッド 12 給紙部
121 用紙カセット 122 手差しトレイ
122a 支持軸 123 ピックアップローラ
124 給紙ローラ 124a 給紙ローラ軸
125 レジストローラ対 125a レジストローラ軸
126 手差しローラ 126a 手差しローラ軸
13 画像形成部 131 感光体ドラム
132 帯電ローラ 133 露光装置
134 転写ベルト 134a 駆動ローラ
134b 従動ローラ 134c アイドルローラ
134d 付勢部材 135 一次転写ローラ
136 二次転写ローラ 136a 二次転写ローラ軸
137 ローラクリーニング装置
138 ベルトクリーニング装置
14 定着部 141 定着ローラ
142 加圧ローラ 143 排出ローラ対
15 排出先切換え部 151 返送ローラ
152 返送搬送路 153 返送ローラ対
153a 返送ローラ軸 16 排紙部
161 排紙トレイ 162 排紙口
20 回転式現像装置 21 回転枠体
211 枠体軸 212 仕切板
22 現像器 22C シアン用現像器
22K ブラック用現像器 22R レッド用現像器
22Y イエロー用現像器 30 トナーコンテナ
30C シアン用コンテナ 30K ブラック用コンテナ
30R レッド用コンテナ 30Y イエロー用コンテナ
40 給紙ユニット 41 枠体
42 側板 43 立設ガイド板
44 上流側用紙搬送板 45 中間用紙搬送板
46 下流側用紙搬送板 47 返送用紙搬送板
50 接続部材 50a 接続部材
50b 接続部材 50c 接続部材
51 板バネ片(基体) 511 横向きバネ片
512 縦向きバネ片 513 接続突片
514 装着孔 515 逃がし孔
52 導体片 52a 導体片
52b 円柱状導体片 52c 三角柱状導体片
53 スリット 54 保持部材
55 長孔 56 板体
60 線状導体部材 61 第1板状導体
62 スプリング導体 621 コイルスプリング
622 線状導体(線状導体部材)
623 フック 63 第2板状導体
64 第3板状導体 65 導線
651 バリスタ 66 第4板状導体
67 接続片 671 軸受部材
672 板状導体 673 U字状片
L 中心線 P 用紙
S1 閉止姿勢 S2 開放姿勢

【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置本体内に装着された部材を接地する接地構造であって、
前記装置本体内に配設され、所定の接地経路に接続される線状導体部材と、
前記部材に電気的に接続されるとともに、前記線状導体部材に電気的に接続される接続部材とを備えて構成され、
前記接続部材は、導電性の基体と、前記基体から互いに対向するように突設された一対の導体片とを含み、
前記一対の導体片は、それぞれの少なくとも一方の端部で互いに一体化され、かつ、それぞれ付勢力が付与されるように弾性的に撓ませられ、前記線状導体部材を挟んだ状態で当該線状導体部材と接触されることを特徴とする接地構造。
【請求項2】
前記一対の導体片は、一方が表面側を線状導体部材に当接させるとともに、他方が裏面側を線状導体部材に当接させた状態で弾性変形されていることを特徴とする請求項1記載の設置構造。
【請求項3】
前記一対の導体片は、一方の端部で互いに一体化されていることを特徴とする請求項1または2記載の接地構造。
【請求項4】
前記一対の導体片は、両端部で互いに一体化されていることを特徴とする請求項1または2記載の接地構造。
【請求項5】
画像情報に基づき画像を形成して用紙に転写するように構成された画像形成装置であって、請求項1乃至4のいずれかに記載の接地構造が採用されていることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2007−264169(P2007−264169A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−87236(P2006−87236)
【出願日】平成18年3月28日(2006.3.28)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】