説明

接着促進性組成物を基板上に塗布するための方法

本発明は、少なくとも1つの接着促進性物質を含有する接着促進性組成物を基板上に塗布するための方法に関する。このとき、前記接着促進性物質が蒸発させられるとともに、形成された蒸気はキャリアガスによって前記基板に搬送される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着促進性組成物を基板上に塗布するための塗布技術の領域に関する。
【背景技術】
【0002】
接着促進性組成物は、物質、特に接着剤および封止剤の基板への接着を改善するために、従来から用いられている。当業者には、例えばシラン化合物およびチタン酸塩化合物が知られている。当該化合物は、いわゆるプライマ活性剤または接着活性剤として、接着または封止が行われるべき表面の前処理のために使用される。
【0003】
接着促進性組成物を基板上に塗布するための方法としては、様々な方法が提示されている。
【0004】
例えば特許文献1によると、接着促進剤は、ローラを用いるか、噴霧または浸漬といった方法で、該当ワークピースに塗布される。
【0005】
前記方法は、塗布すべき接着促進性組成物の調量が難しいという欠点を有する。さらに、接着促進性組成物の粘性が比較的高い場合には、前記方法の適用範囲は著しく制限される。なぜなら、粗い表面に塗布する場合、当該接着促進性組成物は、微細な穴に完全には侵入せず、したがって当該表面は完全には湿らせられないからである。
【0006】
しばしば、経済的な理由から、かつ、それに加えて最適な接着を得るために、少量の接着促進性組成物のみを基板上に塗布することが所望される。これは、前記方法においては、塗布すべき接着促進性組成物が、特に容易に気化する溶媒で希釈される場合にのみ可能である。しかしながら、揮発性溶媒の使用は、作業の衛生面および安全面から、枠組条件および補足的装置が必要になるので、何倍も不利である。この問題は、接着促進性組成物の塗布が一般的に行われる、密閉した製造現場においては、特に急を要する。
【0007】
前記問題から発し、特許文献2では、接着促進性組成物を基板表面に塗布するために超音波噴霧器を使用することが提案された。当該提案は、塗布するために比較的高度な塗布装置を必要とするという点において不利である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第2006/005606号パンフレット
【特許文献2】国際公開第2007/132013号パンフレット
【特許文献3】欧州特許出願公開第1388470号明細書
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Kirk-Othmer, “Encyclopedia of Chemical Technology”, 4th Ed., John Wiley & Sons, New York, Vol.11, pp.227-241.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、本発明の課題は、少量の接着促進性組成物でも、基板上に均一に塗布することができるような、容易かつ安全な方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
溶媒の気化が必要ではなくなるので、接着促進性物質を塗布した直後に、さらに接着剤または封止剤を塗布することができる。
【0012】
本課題は、請求項1に記載の方法によって解決される。当該方法の好ましい実施形態は、従属請求項2〜10に記載されている。
【0013】
本発明のさらなる態様は、請求項11および12に記載の装置に関する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る装置の実施形態の横断面の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、少なくとも1つの接着促進性物質を含有する接着促進性組成物を基板上に塗布するための方法に関する。当該接着促進性物質は蒸発させられ、形成された蒸気はキャリアガスによって基板に搬送される。
【0016】
一般的に用いられる接着促進性物質は通常、標準圧力において分解点よりも高い沸点を有する。液状接着促進性物質の蒸気圧ゆえに、接着促進性物質の分解点よりも低く、したがって沸点よりも低いような、比較的低い温度でもすでに、液相と気相との間に平衡が生じる。接着促進性物質は、液相から気相へと転移する。連続的に、気相にある接着促進性物質がキャリアガスによって当該平衡から移動することによって、接着促進性物質の液相から気相への連続的な転移が、沸点より低い温度においても保証される。この連続的な「蒸発」によって、接着促進性物質は、キャリアガスに曝露されている基板へと連続的に搬送される。驚くべきことに、所望の接着促進効果を保証するのに十分な量の接着促進性物質を基板の面ごとに塗布するためには、基板の曝露は比較的短時間ですでに十分である。
【0017】
したがって、本発明に係る方法によって、使用する溶媒の量を著しく減少させた場合、または全く溶媒を使用しない場合に、接着促進性組成物もしくは当該組成物に含有される接着促進性物質を少量でも均一に塗布することが可能になる。好ましい実施形態によると、当該接着促進性物質には略溶媒が含まれていない。すなわち、溶媒の割合は、多くても5重量%、好ましくは多くても1重量%、より好ましくは多くても0.5重量%である。それによって、当該接着促進性組成物を塗布している使用者が揮発性溶媒の負荷に曝露されることがなくなるので、より安全な作業が保証される。したがって、揮発性有機化合物に関する規則によって課されている制限は完全に回避することができる。これに加えて、気化時間が省略されるので、接着促進性組成物を塗布した直後でも、処理された基板でさらに作業を行うことができる。したがって、接着促進性物質を塗布した直後に、接着剤または封止剤を塗布することができる。これは例えば、塗布ロボットを用いて行っても良い。当該ロボットのアームには、接着促進性組成物もしくは接着促進性物質を塗布するための装置と、接着剤または封止剤を塗布するための装置とが同時に配置されている。その結果、1つのロボットステーションを要するのみとなり、必要とする場所も小さくなり、タクトタイムも短縮できる。
【0018】
本発明に係る方法のさらなる利点は、接着促進性物質を好条件の下で、したがって良好に制御可能な状態で、基板に搬送できる点にある。それゆえ、当該方法は、接着促進性化合物に反応性プラズマが添加されるような、特許文献3などから知られている方法とは根本的に異なる。
【0019】
さらに、本発明に係る方法によって、接着促進性物質もしくは当該物質を含有する接着促進性組成物を、基板表面の所定の領域に目標を定めて塗布することが可能になる。したがって、接着促進性組成物の塗布が、接着剤または封止剤と接触する領域に限定されるので、特に接着促進性物質の消費と、接着もしくは封止された基板の美観に関しては有利である。
【0020】
基板に塗布された接着促進性組成物における接着促進性物質の量を希望の通りに調節するために、接着促進性物質次第で、蒸発温度、キャリアガスの流れ、液相にある接着促進性物質とキャリアガスとの間の接触面、および/または基板の曝露時間などを対応して変化させても良い。
【0021】
本発明に係る方法にとって特に適している接着促進性物質は、例えば加水分解可能な接着促進性物質などである。
【0022】
少なくとも1つの加水分解可能な接着促進性物質は、有機ケイ素化合物であり得る。基本的に、接着促進剤として使用される、当業者に知られたあらゆる有機ケイ素化合物が適している。好ましくは、当該有機ケイ素化合物は、少なくとも1つの、好ましくは3つのアルコキシ基を有している。当該アルコキシ基は、酸素‐ケイ素結合を介して、ケイ素原子に直接結合されている。さらに、当該有機ケイ素化合物は、少なくとも1つの置換基を有している。当該置換基は、ケイ素‐炭素結合を介してケイ素原子に結合されており、場合によっては官能基を有している。当該官能基は、オキシラン基、ヒドロキシ基、(メタ)アクリルオキシ基、アミノ基、メルカプト基、ビニル基、およびニトリル基から成る群から選択される。
【0023】
有機ケイ素化合物としては、式(I)、式(II)、または式(III)の有機ケイ素化合物が特に適している。
【0024】
【化1】

【0025】
式中、R1は炭素数1〜20の、直鎖状または分岐状の、場合によっては環状の、場合によっては芳香族部分を有する、場合によっては1つまたは複数のヘテロ原子、特に窒素原子を有するアルキレン基である。
【0026】
R2は炭素数1〜5のアルキル基、特にメチル基もしくはエチル基、またはアシル基である。
【0027】
R3は炭素数1〜8のアルキル基、特にメチル基である。
【0028】
XはHまたは、オキシラン基、OH基、(メタ)アクリルオキシ基、アミノ基、SH基、アシルチオ基、およびビニル基から成る群から選択される官能基、好ましくはアミノ基である。完全を期すために言及すると、本明細書においてアシルチオとは、
【化2】

の置換基であると理解される。式中、R4は特に炭素数1〜20のアルキルであり、破線は置換基R1との結合を示す。
【0029】
X1は、NH、S、S2、およびS4から成る群から選択される官能基である。
【0030】
X2は、Nおよびイソシアヌレート基から成る群から選択される官能基であり、aは0、1、または2であり、好ましくは0である。
【0031】
置換基R1は、特にメチレン基、プロピレン基、メチルプロピレン基、ブチレン基、またはジメチルブチレン基である。置換基R1として特に好ましいのは、プロピレン基である。
【0032】
アミノ基、メルカプト基、またはオキシラン基を有する有機ケイ素化合物は、「アミノシラン」、「メルカプトシラン」、または「エポキシシラン」とも称される。「ポリアミノシラン」は、複数のアミノ基を有するケイ素化合物と理解される。「ポリシラン」は、複数のシラン基を有するケイ素化合物と理解される。ここでは、「シラン基」は式(I’)の基と理解される。
【0033】
【化3】

【0034】
残基R2および指数aは、前記で定義された通りである。
【0035】
式(I)の有機ケイ素化合物として適しているのは、特に以下の化合物から成る群から選択される有機ケイ素化合物である:
オクチルトリメトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、ヘキサデシルトリメトキシシラン、メチル‐オクチルジメトキシシラン;
3‐グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、3‐グリシジルオキシプロピルトリエトキシシラン;
3‐メタクリルオキシプロピルトリアルコキシシラン、3‐メタクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、3‐メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン;
3‐アミノプロピルトリメトキシシラン、3‐アミノプロピルトリエトキシシラン、3‐アミノプロピル‐ジメトキシメチルシラン、3‐アミノ‐2‐メチルプロピル‐トリメトキシシラン、N‐(2‐アミノエチル)‐3‐アミノプロピル‐トリメトキシシラン、N‐(2‐アミノエチル)‐3‐アミノプロピル‐トリエトキシシラン、N‐(2‐アミノエチル)‐3‐アミノプロピル‐ジメトキシメチルシラン、4‐アミノブチル‐トリメトキシシラン、4‐アミノブチル‐ジメトキシメチルシラン、4‐アミノ‐3‐メチルブチル‐トリメトキシシラン、4‐アミノ‐3,3‐ジメチルブチル‐トリメトキシシラン、4‐アミノ‐3,3‐ジメチルブチル‐ジメトキシメチルシラン、2‐アミノエチル‐ジメトキシメチルシラン、アミノメチル‐トリメトキシシラン、アミノメチル‐ジメトキシメチルシラン、アミノメチルメトキシジメチルシラン、7‐アミノ‐4‐オキサヘプチルジメトキシメチルシラン、N‐(メチル)‐3‐アミノプロピルトリメトキシシラン、N‐(n‐ブチル)‐3‐アミノプロピルトリメトキシシラン;
3‐メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3‐メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3‐メルカプトプロピル‐メチルジメトキシシラン;
3‐アシルチオプロピルトリメトキシシラン;
ビニルトリメトキシシランおよびビニルトリエトキシシラン。
【0036】
前記有機ケイ素化合物で、そのアルコキシ基をアセトキシ基で置換した、オクチルトリアセトキシシラン(Octyl-Si(O(O=C)CH3)3)などの化合物も好ましい。当該有機ケイ素化合物は、加水分解に際して酢酸を分離する。
【0037】
前記有機ケイ素化合物で好ましいのは、ケイ素原子に結合した有機置換基を有しており、かつ、式(I)に一致する有機ケイ素化合物である。当該置換基はさらに1つの官能基を有しており、すなわち当該置換基はアルキル基ではない。式中XはHではない。
【0038】
式(II)の有機ケイ素化合物として適しているのは、例えばビス‐[3‐(トリメトキシシリル)‐プロピル]‐アミン、ビス‐[3‐(トリエトキシシリル)‐プロピル]‐アミン、4,4,15,15‐テトラエトキシ‐3,16‐ジオキサ‐8,9,10,11‐テトラチア‐4‐15‐ジシラオクタデカン(ビス(トリエトキシシリルプロピル)ポリスルフィド、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルファン)、およびビス(トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィドから成る群から選択される有機ケイ素化合物である。
【0039】
式(III)の有機ケイ素化合物として適しているのは、例えばトリス‐[3‐(トリメトキシシリル)‐プロピル]‐アミン、トリス‐[3‐(トリエトキシシリル)‐プロピル]‐アミン、1,3,5‐トリス[3‐(トリメトキシシリル)プロピル]‐1,3,5‐トリアジン‐2,4,6(1H,3H,5H)‐トリオン尿素(=トリス(3‐(トリメトキシシリル)プロピル)イソシアヌレート)、および1,3,5‐トリス[3‐(トリエトキシシリル)プロピル]‐1,3,5‐トリアジン‐2,4,6(1H,3H,5H)‐トリオン尿素(=トリス(3‐(トリエトキシシリル)プロピル)イソシアヌレート)からなる群から選択される有機ケイ素化合物である。
【0040】
好ましくは、当該接着促進性組成物はアルキルシランを含んでいない。すなわち、好ましくは、HはHではない。
【0041】
有機ケイ素化合物として好ましいのはアミノシラン、特にX=NH2またはNH2-CH2-CH2-NH、X1=NH、およびX2=Nのアミノシランである。特に好ましいのは、3‐アミノプロピルトリメトキシシラン、N‐(2‐アミノエチル)‐3‐アミノプロピル‐トリメトキシシラン、ビス[3‐(トリメトキシシリル)‐プロピル]‐アミン、3‐アミノプロピルトリエトキシシラン、N‐(2‐アミノエチル)‐3‐アミノプロピル‐トリエトキシシラン、およびビス[3‐(トリエトキシシリル)‐プロピル]‐アミン、ならびにそれらの混合物である。
【0042】
さらに、少なくとも1つの加水分解可能な接着促進性物質は、有機チタン化合物であっても良い。基本的に、接着促進剤として使用される、当業者に知られたあらゆる有機チタン化合物が適している。
【0043】
特に適しているのは、アルコキシ基、スルホン酸基、カルボキシレート基、ジアルキルリン酸基、ジアルキルピロリン酸基、およびアセチルアセトネート基、またはそれらの混合物から成る群から選択され、かつ、酸素‐チタン‐結合を介して直接チタン原子に結合している少なくとも1つの官能基を有する有機チタン化合物である。
【0044】
特に適しているのは、チタンに結合している全ての置換基が、アルコキシ基、スルホン酸基、カルボキシレート基、ジアルキルリン酸基、ジアルキルピロリン酸基、およびアセチルアセトネート基から成る群から選択される化合物である。全ての置換基は、同一または互いに異なっていても良い。
【0045】
アルコキシ基としては、特にいわゆるネオアルコキシ置換基、特に以下の式(IV)の基がとりわけ適していることが明らかになっている。
【0046】
【化4】

【0047】
スルホン酸としては、特に芳香族スルホン酸で、その芳香族化合物がアルキル基で置換されているスルホン酸がとりわけ適していることが明らかになっている。スルホン酸としては、以下の式(V)の残基が好ましい。
【0048】
【化5】

【0049】
カルボキシレート基としては、特に脂肪酸のカルボキシレートがとりわけ適していることが明らかになっている。カルボキシレートとして好ましいのはデカン酸塩である。
【0050】
前記式(IV)および(V)において、破線で示した結合は、酸素‐チタン結合である。
【0051】
有機チタン化合物は、例えばKenrich Petrochemicals社またはDu Pont社などで製品として入手できる。有機チタン化合物として適しているのは、例えば、Kenrich Petrochemicals社のKen-React(登録商標)KR TTS、KR 7、KR 9S、KR 12、KR 26S、KR 33DS、KR 38S、KR 39DS、KR 44、KR 134S、KR 138S、KR 158FS、KR 212、KR 238S、KR 262ES、KR 138D、KR 158D、KR 238T、KR 238M、KR 238A、KR 238J、KR 262A、LICA 38J、KR 55、LICA 01、LICA 09、LICA 12、LICA 38、LICA 44、LICA 97、LICA 99、KR OPPR、KR OPP2、またはDu Pont社のTyzor(登録商標)ET、TPT、NPT、BTM、AA、AA-75、AA-95、AA-105、TE、ETAM、OGTである。好ましいのは、Ken-React(登録商標)KR 7、KR 9S、KR 12、KR 26S、KR 38S、KR 44、LICA 09、LICA 44、NZ44、またはDu Pont社のTyzor(登録商標)ET、TPT、NPT、BTM、AA、AA-75、AA-95、AA-105、TE、ETAMである。
【0052】
特に好ましいのは、酸素‐チタン結合を介してチタン元素に結合した、式(IV)および/または式(V)の置換基を有する有機チタン化合物である。
【0053】
少なくとも1つの、加水分解可能な接着促進性物質は、さらに有機ジルコニウム化合物であり得る。基本的に、接着促進剤として使用される、当業者に知られたあらゆる有機ジルコニウム化合物が適している。特に適しているのは、アルコキシ基、スルホン酸基、カルボキシレート基、リン酸基、またはそれらの混合物から成る群から選択され、かつ、酸素‐ジルコニウム結合を介して直接ジルコニウム原子に結合している少なくとも1つの官能基を有する有機ジルコニウム化合物である。
【0054】
アルコキシ基としては、特にイソプロポキシ置換基およびいわゆるネオアルコキシ置換基、上述したように特に式(IV)の置換基がとりわけ適していることが明らかになっている。式中、破線で示した結合は、酸素‐ジルコニウム結合である。
【0055】
スルホン酸としては、特に芳香族スルホン酸で、その芳香族化合物がアルキル基で置換されているスルホン酸がとりわけ適していることが明らかになっている。上述したようにスルホン酸としては、以下の式(V)の残基が好ましい。式中、破線で示した結合は、酸素‐ジルコニウム結合である。
【0056】
カルボキシレート基としては、特に脂肪酸のカルボキシレートがとりわけ適していることが明らかになっている。カルボキシレートとして好ましいのはステアレートおよびイソステアレートである。
【0057】
有機ジルコニウム化合物は、例えばKenrich Petrochemicals社で製品として入手できる。有機ジルコニウム化合物として適しているのは、例えば、Ken-React(登録商標)NZ 38J、NZ TPPJ、KZ OPPR、KZ TPP、NZ 01、NZ 09、NZ 12、NZ 38、NZ 44、NZ 97である。
【0058】
さらに、本発明に係る組成の接着促進性物質は、少なくとも1つの有機ケイ素化合物と、少なくとも1つの有機チタン化合物および/または少なくとも1つの有機ジルコニウム化合物との混合物を含有し得る。同じく、少なくとも1つの有機チタン化合物と、少なくとも1つの有機ジルコニウム化合物との混合物も可能である。好ましいのは、少なくとも1つの有機ケイ素化合物と、少なくとも1つの有機チタン化合物との混合物である。
【0059】
特に好ましいのは、複数の有機ケイ素化合物の混合物、または、1つの有機ケイ素化合物と1つの有機チタン化合物もしくは有機ジルコニウム化合物との混合物である。
【0060】
特に好ましいのは、アミノシランとメルカプトシランとの混合物である。
【0061】
特に有利なのは、少なくとも1つのポリアミノシラン、少なくとも1つのポリシラン、特に少なくとも1つのジシラン、および少なくとも1つのメルカプトシランからの混合物であることが明らかになっている。
【0062】
前記混合物は、特に、
A:ポリアミノシラン、好ましくはN‐(2‐アミノエチル)‐3‐アミノプロピルトリメトキシシランと、
B:ポリシラン、好ましくはビス‐(3‐トリメトキシシリルプロピル)アミンと、
C:メルカプトシラン、好ましくは3‐メルカプトプロピルトリメトキシシランと、
から成る混合物である。
【0063】
このとき、A、B、Cの重量比はX:Y:Zで表され、Xは0.1〜10、Yは0.1〜10、Zは0.1〜10の値である。
【0064】
本発明に係る方法によると、接着促進性物質は、蒸発を加速するために加熱され得る。本発明に係る方法において、有機ケイ素化合物、有機チタン化合物、または有機ジルコニウム化合物が接着促進性物質として用いられる場合、蒸発温度は100℃〜250℃に設定することが好ましい。当該温度は、接着促進性物質の分解点よりもはるかに低い。
【0065】
本願において「キャリアガス」は、接着促進性物質に関して不活性なガスとして理解される。キャリアガスとしては、窒素、酸素、空気および/または希ガスなどが好んで使用される。特に、有機ケイ素化合物、有機チタン化合物、または有機ジルコニウム化合物を使用する場合、前記化合物の加水分解を行うためのさらなる成分をキャリアガスに添加することができる。例えば空気を用いる場合、当該空気はさらに、ある程度の量の湿気、特に水を含有していても良い。このとき、空気の湿度は、20℃で20%〜70%が好ましい。好ましくは、水の量は、接着促進性物質が基板上に出現するまで加水分解または部分的な加水分解を行うことができるような量に定められる。さらに、キャリアガスを加熱し、それによって間接的に接着促進性物質を加熱し、その蒸発を早めることも考えられる。
【0066】
溶媒を用いなくても、基板表面の均一かつ十分な湿潤が得られることが本発明の利点だが、本発明には、接着促進性物質を溶媒に溶解させる方法も含まれる。
【0067】
ここで溶媒として適しているのは、特に容易に揮発する溶媒、すなわち、760トルにおける沸点が25℃〜140℃、好ましくは50℃〜120℃、より好ましくは65℃〜99℃の溶媒である。
【0068】
また、揮発性がより低い溶媒も適している。すなわち、760トルにおける沸点が焼付温度を超えるような溶媒である。特に当該溶媒の沸点は100℃以上であり、好ましくは100℃〜200℃、より好ましくは140℃〜200℃である。
【0069】
さらに、特に様々な溶媒の混合物が使用可能であることが明らかになっている。例えば、炭化水素同士の混合物、または、少なくとも1つの炭化水素と、その構造式に少なくとも1つのヘテロ原子を有する少なくとも1つの極性溶媒との混合物が使用される。当該炭化水素は飽和炭化水素または不飽和オレフィン炭化水素または不飽和芳香族炭化水素であり得る。好ましくは、当該炭化水素は飽和炭化水素である。極性溶媒中のヘテロ原子としては、特にO、N、Sが適している。好ましくは、少なくとも1つのヘテロ原子が酸素原子であり、特に好ましくは、例えばエステル基、アミド基、またはカルボキシレート基といった、ヒドロキシル基、カルボニル基、エーテル基、カルボン酸基、またはカルボン酸誘導体基の形態をとり、極性溶媒の構造式を有している。好ましい極性溶媒は水、アルコール、ケトンである。最も好ましい極性溶媒はアルコールであり、特に飽和の、分岐状または直鎖状または環状の、炭素数1〜8のアルコールである。
【0070】
溶媒として好ましいのは、アルコールならびに脂肪族炭化水素および脂環式炭化水素であり、特にエタノール、イソプロパノール、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、またはオクタン、ならびにそれらの混合物である。好ましくは、当該溶剤はイソプロパノールまたはヘプタンである。
【0071】
特に好ましいのは、アルコールと脂肪族炭化水素または脂環式炭化水素との混合溶媒、特にエタノールまたはイソプロパノールとヘキサンまたはシクロヘキサンまたはヘプタンまたはオクタンとの混合溶媒、ならびにそれらの混合物である。特に好ましい混合溶媒は、イソプロパノールとヘプタンとの混合溶媒である。
【0072】
揮発性がより低い溶媒としては、特にトルオール、キシロールなどの炭化水素、または沸点が120℃〜200℃、特に120℃〜140℃の炭化水素混合物が挙げられる。
【0073】
基板上に塗布される接着促進性組成物は、接着促進性物質から構成されていても良いし、または、少なくとも1つのさらなる成分を含有していても良い。接着促進性組成物における接着促進性物質の占める割合は、好ましくは90重量%、より好ましくは95重量%、さらに好ましくは99重量%である。
【0074】
少なくとも1つのさらなる成分は適性に応じて、接着促進性物質のように、または目的に適した従来の方法によって塗布される。
【0075】
接着促進性組成物の成分としては、例えばシラン基の加水分解のための触媒が用いられる。すなわち、例えば安息香酸もしくはサリチル酸などの有機カルボン酸、フタル酸無水物もしくはヘキサヒドロフタル酸無水物などの有機カルボン酸無水物、有機カルボン酸のシリルエステル、p‐トルオールスルホン酸もしくは4‐ドデシルベンゼンスルホン酸もしくはメチルスルホン酸などの有機スルホン酸、またはその他の有機酸もしくは無機酸、または前記酸の混合物;ならびにイソシアネート基の反応のための触媒で、例えばスズ(II)‐オクトエート、三塩化モノブチルスズ、二塩化ジブチルスズ、酸化ジブチルスズ、二酢酸ジブチルスズ、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジアセチルアセトネート、ジブチルスズジカルボキシレート、ジオクチルスズジカルボキシレート、アルキルスズチオエステルなどのスズ化合物、ビスマス(III)‐オクトエート、ビスマス(III)‐ネオデカン酸塩などのビスマス化合物、亜鉛(II)‐オクトエートなどの亜鉛化合物、2,2’‐ジモルホリノジエチルエーテル、1,4‐ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、1,8‐ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデス‐7‐エンなどのアミノ基を含有する化合物、ならびに、チタン酸塩およびジルコン酸塩などのさらなる触媒である。
【0076】
さらに、プライマー化学において一般的な湿潤剤および添加剤を使用することができる。
【0077】
さらなる成分としては、紫外線吸収剤および光学的光沢剤も適している。このような光学的光沢剤は、紫外線を吸収し、可視の、通常は青色の光線を放出する。好ましい光学的光沢剤は、Ciba Speciality Chemicals社のCiba Uvitex(登録商標) OBである。さらなる適切な光沢剤は、例えば非特許文献1に記載されている。紫外線吸収剤は、例えばCiba Speciality Chemicals社のTinuvin(登録商標)シリーズなどのような、有機性を有するものであっても良い。
【0078】
表面に接着促進性組成物を塗布される基板は、非常に様々なものであり得る。特に適しているのは、ガラス、ガラスセラミックス、コンクリート、モルタル、れんが、日干しれんが、石膏、および花崗岩または大理石といった天然石などの無機基板;アルミニウム、鋼、非鉄金属、亜鉛めっきを施した金属などの金属または合金;木材、削片板、PVCなどのプラスチック、ポリカーボネート、PMMA、ポリエステル、エポキシ樹脂などの有機基板;粉体塗装された金属または合金などの塗装基板;ならびに塗料およびラッカー、特に自動車塗装用ラッカーである。最も好ましい基板は、ガラス、特にセラミックス塗装ガラス、ラッカー塗装金属フランジなどのラッカー塗装基板、ならびにプラスチック、特にPVCである。
【0079】
本発明は、特に基板表面の前処理を行う際に使用可能である。当該基板表面は、前処理の後、接着剤または封止剤と接合する。このとき前処理として、好ましくは接着促進性物質が前記方法によって塗布される。したがって、用途として適しているのは、例えば地上工事または地表(地下)工事、および工業製品または消費財、特に窓、家庭用機械、水上車もしくは陸上車などの輸送手段、好ましくは乗用車、バス、トラック、列車、もしくは船舶、の製造または修理に際する部材の接着;工業製品の製造もしくは修理、または地上工事もしくは地表(地下)工事における接合部、継ぎ目、もしくは空洞の封止である。本発明が特に適しているのは、好ましくはガラスから成る円板への接着促進性組成物の塗布である。このとき当該円板は、ガラス、木材、ラッカー、またはプラスチック、特にポリ塩化ビニル(PVC)から成る、少なくとも1つのさらなる基板と接合、特に接着されることになる。したがって本発明に係る方法は、好ましくは、ラッカー塗装された車体にガラスを接着する車両製造、または、木材もしくはプラスチックから成るフレームにガラスを接着するドアもしくは窓の製造において使用可能である。
【0080】
さらに、本発明は少なくとも2つの基板表面S1およびS2の接着および/または封止方法に関するものであり、以下のステップを有する:(i)前記方法によって、接着促進性組成物を基板S1および/または基板S2に塗布する;(ii)接着剤もしくは封止剤を、少なくとも1つの基板表面S1および/またはS2上に、または基板S1と基板S2との間に塗布する;(iii)塗布された接着剤または封止剤を介して基板S1および基板S2を接触させる;(iv)塗布された接着剤または封止剤を硬化させる;基板S1と基板S2とは、互いに同じか、または異なっている。
【0081】
封止剤として用いるときは、当該組成物を基板S1と基板S2との間に塗布した後、硬化を行う。一般的に、封止剤は接合部内に押し込まれる。
【0082】
接着剤または封止剤は、均一に塗布されていることが好ましい。
【0083】
両方の用途において、基板S1は基板S2と同じでも異なっていても良い。
【0084】
基板S1または基板S2として適しているのは、例えばガラス、ガラスセラミックス、コンクリート、モルタル、れんが、日干しれんが、石膏、および花崗岩または大理石といった天然石などの無機基板;アルミニウム、鋼、非鉄金属、亜鉛めっきを施した金属などの金属または合金;木材、PVCなどのプラスチック、ポリカーボネート、PMMA、ポリエステル、エポキシ樹脂などの有機基板;粉体塗装された金属または合金などの塗装基板;ならびに塗料およびラッカー、特に自動車塗装用ラッカーである。
【0085】
ポリウレタン接着剤、(メタ)アクリレート接着剤、エポキシ樹脂接着剤、またはアルコキシシラン官能性プレポリマーに基づく接着剤が最も接着に適していることが明らかになっている。
【0086】
ポリウレタン接着剤としては、一方では、単一成分の湿気硬化性接着剤または二成分のポリウレタン接着剤が適している。この種類の接着剤は、特にイソシアネート基を有するプレポリマーの形態のポリイソシアネートを含有する。ポリウレタン接着剤としては、Sika Schweiz AG社のSikaflex(登録商標)、SikaPower(登録商標)、SikaForce(登録商標)などの製品が好ましい。
【0087】
(メタ)アクリレート接着剤として理解されるのは、二成分型接着剤である。当該接着剤は、第1の成分としてアクリル酸および/またはメタクリル酸および/またはそのエステルを含有し、第2の成分としてラジカル開始剤、特に過酸化物を含有する。この種類の接着剤として好ましい、製品として入手できる接着剤は、Sika Schweiz AG社のSikaFast(登録商標)である。
【0088】
エポキシ樹脂接着剤として理解されるのは、グリシジルエーテル、特にビスフェノール‐Aおよび/またはビスフェノール‐Fのジグリシジルエーテルに基づいて形成されている接着剤である。特に適しているのは、二成分型エポキシ樹脂接着剤である。当該接着剤は、第1の成分としてビスフェノール‐Aおよび/またはビスフェノール‐Fのジグリシジルエーテルを含有し、第2の成分としてポリアミンおよび/またはポリマーカプタン(Polymerkaptane)を含有する。Sika Schweiz AG社のSikadur(登録商標)などの製品として入手できる二成分型エポキシ樹脂接着剤が好ましい。フィルムの接着に特に適していると明らかになっているのは、Sika Schweiz AG社の二成分型エポキシ樹脂接着剤Sikadur(登録商標)-Combiflex(登録商標)、Sikadur(登録商標)-31、Sikadur(登録商標)-31DW、Sikadur(登録商標)-33であり、好ましくはSikadur(登録商標)-Combiflex(登録商標)である。
【0089】
アルコキシシラン官能性プレポリマーに基づく接着剤として理解されるのは、特にMSポリマーまたはSPUR(シラン終端ポリウレタン)プレポリマーに基づく接着剤である。この種類のアルコキシシラン官能性プレポリマーは、例えば少なくとも2つの炭素二重結合を有するポリエーテルの、特にアリル終端ポリオキシアルキレンポリマーのヒドロシランでの加水分解反応によって、またはイソシアナートアルキルアルコキシシランのポリオールもしくはヒドロキシ官能性ポリウレタンプレポリマーへの付加反応によって、またはアミノアルキルアルコキシシランのイソシアネート官能性ポリウレタンプレポリマーへの付加反応によって製造される。当該ポリウレタンプレポリマーは、従来の方法における、ポリイソシアネートとポリオールおよび/またはポリアミンとの反応によって得られる。アルコキシシラン官能性プレポリマーに基づく接着剤は湿気硬化性であり、雰囲気温度で反応する。
【0090】
基本的には反応性ホットメルト接着剤も使用可能である。当該接着剤は、例えばSika Schweiz AG社のSikaMelt(登録商標)などの製品として入手できる。しかしながら、雰囲気温度で硬化する接着剤が好ましい。
【0091】
基板は必要に応じて、接着剤または封止剤を塗布する前に、接着促進性組成物の塗布に追加して前処理を行うことができる。当該前処理には、特に物理的および/または化学的洗浄作業が含まれる。当該洗浄作業は、例えば研磨、砂の吹き付け、ブラシかけなど、または洗浄液もしくは溶媒での処理である。
【0092】
基板S1および基板S2を接着または封止すると、接着または封止された物品が得られる。このような物品としては、構造物、特に地上工事もしくは地表(地下)工事での構造物、または輸送手段があり得る。好ましい物品は、例えば水上車もしくは陸上車、特に乗用車、バス、トラック、列車、もしくは船舶などの輸送手段あるいはそれらの付属品である。接着または封止された物品として特に好ましいのは、輸送手段、特に乗用車、または輸送手段の付属品、特に乗用車の付属品である。
【0093】
本発明はさらに、前記方法を実施するための装置にも関する。当該装置はブロックを有する。当該ブロックは、ブロックを貫通するキャリアガス導管と、接着促進性物質をキャリアガス導管に供給するための手段とを有する。当該ブロックは、キャリアガス流入口を有し、流入面を画定する第1の平面部分と、キャリアガス流出口を有し、流出面を画定する第2の平面部分とを有する。当該ブロックは、目的に適合するのであれば、どのような形態を備えていても良い。例えば、直方体であっても良いし、または円柱であっても良い。
【0094】
キャリアガス流入口からキャリアガス流出口に至るまで、キャリアガス導管がブロックを貫通している。当該キャリアガス導管の横断面および線形は、原則的に目的に適合するのであれば、どのような形態を備えていても良い。流入面が流出面に対して直角となる直方体または円柱のブロックの場合には、例えばキャリアガス導管が直接(それゆえ斜めに)、または2つの互いに直角を成すキャリアガス導管部分において、ブロックを貫通することが考えられる。
【0095】
一般的にキャリアガス流入口は、キャリアガス供給部を接続するための手段、例えば流入口接続管と結合されている。さらに、キャリアガス流出口は、接着促進性物質を目標を定めて塗布するための手段、例えばブロックから突出した管、特にノズルまたはソケット(Glocke)と結合されている。例えば、ノズルとキャリアガス流出口との間にホースを配置することも考えられる。ホースは柔軟なので、ブロックを動かすことなくノズルを所望の通り調整することができる。したがって、静止した基板に動きによって塗布する方法、例えば処理対象基板の上方でロボットやノズルを用いて塗布する方法が可能であり、当該方法は実際には非常に有利である。
【0096】
前記装置はさらに、接着促進性物質をキャリアガス導管に供給するための手段を備えている。当該手段は一般的に、キャリアガス導管に合流する接着促進性物質導管を貫通している。当該接着促進性物質導管は一般的に、隔壁によって閉止されている。
【0097】
当該キャリアガス導管は、接着促進性物質とキャリアガスとの間に可能な限り良好な接触が保証されるように形成されていることが好ましい。このために、接着促進性物質によって湿らせられ、それによって接着促進性物質の可能な限り大きな表面を保証するための手段を、キャリアガス導管内に設けても良い。さらに、キャリアガスと接着促進性物質との間に可能な限り良好な接触を保証するために、キャリアガス導管を貫流する気体流に乱流を導入するための手段を、当該キャリアガス導管内に設けても良い。
【0098】
さらなる好ましい実施形態によると、当該装置にはさらに、ブロックを加熱するための手段が配設されている。このとき、当業者に知られているあらゆる手段が考慮の対象になる。例えば、ブロックを加熱板の上に配置する、または、一体的な構成要素として加熱コイルを有する、ということが考えられる。さらに、ブロックと直接接触せずに、例えば誘導によって加熱を行っても良い。ブロックから接着促進性物質への良好な熱伝達を保証するために、ブロックは熱伝導係数の高い材料、例えばアルミニウムで形成されていることが好ましい。
【0099】
図1は、前記装置の実施形態の横断面を概略的に示している。
【0100】
図1によると、装置2は直方体のブロック4を有している。ブロック4は、キャリアガス流入口6を有し、流入面を画定している上面8と、当該流入面に対して垂直な、キャリアガス流出口10を有する流出面12と、を有している。キャリアガス流入口6からキャリアガス流出口10に至るまで、キャリアガス導管14がブロック4を貫通している。キャリアガス導管14は、流入口の側に、第1の、略垂直に走るキャリアガス導管部分14’と、流出口の側に、第2の、略水平に走るキャリアガス導管部分14’’とを有する。キャリアガス流入口6は、キャリアガス供給部18を接続するための流入口接続管16と結合されている。キャリアガス流出口10は、流出面12から略垂直に突出したノズル20と結合されている。
【0101】
当該ブロックはさらに、接着促進性物質導管22を有している。当該導管は、ブロック4の流出面12の反対側24から、キャリアガス導管14に至る。このとき、接着促進性物質導管22は、キャリアガス導管の第2の部分14’’の延長部分で走っているので、キャリアガス導管14と接着促進性物質導管22とは、断面において略逆T字形を成している。
【0102】
当該装置はさらに、接着促進性物質をキャリアガス導管14に導入するための手段を備えている。図1によると、当該手段は接着促進性物質導管22を貫通する中空針26に該当する。このとき、接着促進性物質導管22は、隔壁28によって閉止されている。
【0103】
キャリアガス導管14に導入された接着促進性物質の可能な限り大きい表面積と、接着促進性物質およびキャリアガスの間の可能な限り大きい接触表面積とを保証するために、例えばキャリアガス導管の第2の部分14’’内に、接着促進性物質で湿らせたグラスウールが導入される(図示せず)。当該グラスウールによって、キャリアガスと接着促進性物質との間の接触をさらに改善する乱流がキャリアガスの流れに導入される。
【0104】
ブロック4はその底面30で加熱板32に載置されている。当該加熱板は、ブロック4と、したがってキャリアガス導管14に導入された接着促進性物質とを加熱するために用いられる。
【0105】
キャリアガスは、キャリアガス供給部18と、当該供給部に接続された流入口接続管16とを経由して、加熱板32によって加熱されたブロック4のキャリアガス導管14に誘導され、接着促進性物質は、中空針26によって、接着促進性物質導管22を経由して、キャリアガス導管14に導入され、蒸発させられる。形成された接着促進性物質の蒸気は、キャリアガスによって、流出面12の方向に搬送され、ノズル20を介して基板に塗布される。
【0106】
キャリアガス導管の経路としては、図1の他にも、流入面から流出面まで斜め下に向かう経路が特に考えられる。これは、加熱板からの距離が減少するにつれて増大する温度勾配がブロック内に存在するときに、特に有利である。このような実施形態において、液状接着促進性物質が、キャリアガス導管内を連続的に下方に流れることによって、その蒸気圧が、キャリアガス流出口への方向において、またそれゆえに気体状接着促進性物質の濃度が増大する方向において、連続的に増大する。
【0107】
さらに、キャリアガス導管内に、接着促進性物質のためのシンクとして機能する凹所を設けることも考えられる。当該凹所も、接着促進性物質の表面と、したがってキャリアガスおよび接着促進性物質の接触面とが可能な限り大きくなるように構成されることが好ましい。
【0108】
図1に示した装置を用いて、以下に実施例を説明する。自明のことながら、本発明は、図示および説明された実施例には限定されない。本発明の前記特徴は、記載されたそれぞれの組み合わせにおいてだけではなく、その他の修正を加えて、その他の組み合わせにおいて、その他の変更を加えて、または単独で、本発明の範囲を逸脱することなく使用可能である、と理解される。
【実施例1】
【0109】
接着促進性組成物の基板上への塗布
図1に示したアルミニウム製の、高さ約15cmのブロックを、150℃まで加熱した。ブロックを貫通する、横断面面積約12.5mm2のキャリアガス導管によって、ガスフロー1.5〜2リットル/分の窒素ガスが誘導された。t10s、t1min、もしくはt4minの時点、表1に記載の組成物1もしくは組成物2をキャリアガス導管内へ噴射(噴霧器、特殊鋼中空針)した後10秒、1分、もしくは4分の後、平面ガラス(スズの面)から成る試験用基板は、キャリアガス流出口から所定の間隔に、もしくは当該流出口と結合したノズルから所定の間隔に配置され、流出方向に対して横に動かされた。
【0110】
当該ガラスには、接着促進性物質を伴うキャリアガスが蒸着した。当該ガラスは、速度10cm/秒で、約5〜6cmの間隔で、キャリアガス流出口もしくはノズルに沿って動かされた。
【0111】
次に、10分間の待機時間の後、製品として入手可能な単一成分型湿気硬化性ポリウレタン接着剤(Sika Schweiz AG社のSikaflex(登録商標)250-DM-2)を低温で(25℃)塗布した。
【0112】
【表1】

【0113】
次に、当該接着剤を7日間、23℃かつ50%の相対湿度(雰囲気温度保管:KL)で硬化し、ビードの3分の1を以下に説明する接着試験でテストした。その後、サンプルをさらに7日間、23℃の水中で保管した(水中保管:WL)。続いて、ビードのさらなる3分の1について、ビードテストによって接着がテストされた。次に、基板を100%の相対湿度で70℃のカタプラズマクリマ(Cataplasmaklima)(CP)に曝露した後、ビードの最後の3分の1について接着をテストした。
【0114】
「ビードテスト」では、ビードの端部に、接着面すれすれに切り込みが入れられる。ビードの切り込みが入れられた端部は、円先ペンチに把持されるとともに、基板から引っ張られる。これは、ビードをペンチの先端に注意深く巻き取ることと、むきだしの基板を含む一片を、ビードを引く方向に対して垂直に配置することとによって行われる。ビードを剥離する速度としては、約3秒毎に一片が形成される速度が選択される。テスト区間は少なくとも8cmが必要である。ビードの剥離後に基板に残存する接着剤が評価される(凝集破壊)。接着特性の評価は、接着面における付着割合の評価によって行われる:
1=95%より多い凝集破壊
2=75%〜95%の凝集破壊
3=25%〜75%の凝集破壊
4=25%より少ない凝集破壊
5=0%の凝集破壊(純粋な凝集破壊)
【0115】
比較のために、組成1を5部とイソプロパノールを95部とから成る組成物、ならびにSika Schweiz AG社のSika Aktivator(登録商標)を、接着促進性組成物として、従来のワイプオン/オフ法によって、参考例1もしくは参考例2として塗布した。ワイプオン/オフ法では、布(Tela-Kimberly Switzerland GmbH社のTela(登録商標))に接着促進性組成物をしみこませ、ガラスに沿って拭うことで、ガラス表面に塗布する(ワイプオン)。塗布直後に、当該箇所の上で乾いた布を動かし、余分な接着促進性組成物を除去する(ワイプオフ)。10分の待機時間の後、説明したように接着剤を塗布し、テストを行った。
【0116】
最後に、さらなる比較のために参考例3として、接着剤を無処理のガラスに塗布し、説明したようにテストを行った。
【0117】
得られた結果を表2に示す。
【0118】
【表2】

【0119】
表2によると、基板に前処理を行わなかった場合(参考例3)は、十分な接着が得られず、全てのサンプルは0%の凝集破壊を示した。表2からはさらに、従来のワイプオン/オフ法で前処理を行い、雰囲気温度保管および水中保管を行ったサンプルについては、十分な結果が得られなかったことが明らかである。
【0120】
一連の測定では、組成2の場合にブロックの温度を変更した。間隔は5cm〜6cmであった。噴射後の時間は1分であった。結果を表3に示す。
【0121】
【表3】

【0122】
さらなる一連の測定では、組成2のブロック温度150℃において、キャリアガス流出口もしくは当該流出口と結合しているノズルと基板との間隔を変更した。ここでは、噴射後の時間は4分であった。前記条件のもとで、組成2は間隔5cm〜6cmのときが最も良い結果を得られる傾向であった。結果を表4に示す。
【0123】
【表4】

【符号の説明】
【0124】
2 装置
4 ブロック
6 キャリアガス流入口
8 流入面
10 キャリアガス流出口
12 流出面
14 キャリアガス導管
14’ キャリアガス導管の第1の部分
14’’ キャリアガス導管の第2の部分
16 流入口接続管
18 キャリアガス供給部
20 ノズル
22 接着促進性物質導管
24 流出面とは反対の面
26 中空針
28 隔壁
30 底面
32 加熱板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの接着促進性物質を含有する接着促進性組成物を基板上に塗布するための方法において、前記接着促進性物質が蒸発させられるとともに、形成された蒸気がキャリアガスによって前記基板に搬送されることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記接着促進性物質の蒸発が、前記接着促進性物質の分解点より低い温度に加熱することによって行われることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記接着促進性物質には溶媒が実質的に含まれていないことを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記接着促進性物質が加水分解可能であることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記接着促進性物質が有機ケイ素化合物、有機チタン化合物、および/または有機ジルコニウム化合物であることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記有機ケイ素化合物が式(I)または(II)または(III)の化合物であり、
【化1】

式中、R1は炭素数1〜20の、直鎖状または分岐状の、場合によっては環状の、場合によっては芳香族部分を有する、場合によっては1つまたは複数のヘテロ原子、特に窒素原子を有するアルキレン基であり、
R2は炭素数1〜5のアルキル基、特にメチル基もしくはエチル基、またはアシル基であり、
R3は炭素数1〜8のアルキル基、特にメチル基であり、
XはHまたは、オキシラン基、OH基、(メタ)アクリルオキシ基、アミノ基、SH基、アシルチオ基、およびビニル基から成る群から選択される官能基、好ましくはアミノ基であり、
X1は、NH、S、S2、およびS4から成る群から選択される官能基であり、
X2は、Nおよびイソシアヌレート基から成る群から選択される官能基であり、aは0、1、または2であり、好ましくは0であることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記接着促進性組成物における前記接着促進性物質の占める割合は、90重量%、好ましくは95重量%、より好ましくは99重量%であることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記接着促進性組成物は、
A:ポリアミノシラン、好ましくはN‐(2‐アミノエチル)‐3‐アミノプロピルトリメトキシシランと、
B:ポリシラン、好ましくはビス‐(3‐トリメトキシシリルプロピル)アミンと、
C:メルカプトシラン、好ましくは3‐メルカプトプロピルトリメトキシシランと、
から成る混合物を含有しており、
A、B、Cの重量比は特にX:Y:Zで表され、Xは0.1〜10、Yは0.1〜10、Zは0.1〜10の値であることを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記キャリアガスは前記接着促進性物質に関して不活性であることを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
窒素、酸素、空気および/または希ガスがキャリアガスとして使用されることを特徴とする請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
ブロック(4)を貫通するキャリアガス導管(14)を有する前記ブロック(4)と、接着促進性物質を前記キャリアガス導管内に供給するための手段(26)と、を備えた、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法を実施するための装置。
【請求項12】
前記ブロック(4)には、前記ブロックを加熱するための手段(32)が配設されていることを特徴とする請求項11に記載の装置。

【図1】
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【公表番号】特表2011−516257(P2011−516257A)
【公表日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−503447(P2011−503447)
【出願日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際出願番号】PCT/EP2009/054279
【国際公開番号】WO2009/124992
【国際公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【出願人】(504274505)シーカ・テクノロジー・アーゲー (227)
【Fターム(参考)】