説明

接着剤フィルム

【課題】優れた半田耐熱性及び打ち抜き加工性を示しつつ、プレスキュア時における流れ出しをも抑制できる接着剤フィルムを提供すること。
【解決手段】(A)アクリル樹脂と、(B)エポキシ樹脂と、(C)ポリアミドアミンとを含み、エポキシ樹脂(B)は、アクリル樹脂(A)100質量部に対して12.5〜40質量部の割合で配合され、ポリアミドアミン(C)は、アクリル樹脂(A)100質量部に対して5〜12.5質量部の割合で配合される接着剤組成物を部分硬化してなる接着剤フィルムであって、90〜98%のゲル分率を有する接着剤フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着剤フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
フレキシブルプリント配線板(FPC:Flexible Printed Circuit)は、その柔軟性を生かしてハードディスク装置や携帯電話などの電子機器によく用いられている。FPCとしては、金属張積層板とカバーレイとを、接着剤フィルムを介して熱圧着したものや、金属張積層板の裏面側に接着剤フィルムを介してポリイミドや金属からなる補強板をさらに設けたFPCも知られている。
【0003】
このようなFPCにおいては、接着剤フィルムとして、半田耐熱性に優れるアクリル系の接着剤組成物を半硬化状態にさせた接着剤フィルムが広く使用されている。例えば下記特許文献1には、アクリル系の接着剤組成物として、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリアミドアミンやジシアンジアミドなどの硬化剤を含むアクリル系接着剤組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−265906号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、FPC用の接着剤フィルムとしては、ポリイミドや金属に対して優れた半田耐熱性を示しつつ、プレスキュア時の接着剤の流れ出しが少ない接着剤フィルムが望ましい。さらには、FPC用の接着剤フィルムは、基板等に接着された状態で打ち抜き加工が行われることが多いため、打ち抜き加工に際してはみ出しがほとんど見られない接着剤フィルム、即ち優れた打ち抜き加工性を示す接着剤フィルムが望ましい。
【0006】
しかし、上述した特許文献1記載の接着剤組成物は、半硬化して接着剤フィルムとしても、その接着剤フィルムがプレスキュア時に熱と圧力によって容易に流れ出し、接着部位より大きく染み出すという問題を有していた。この染み出し部分は、FPCを電子機器に組み込んだ際にその電子機器に不具合を起こすおそれがある。例えば、そのFPCをハードディスク装置の内部に組み込んだ場合、その染み出し部分がFPCから分離してハードディスク上に付着し、ハードディスク装置の正常な動作を妨げるおそれがある。
【0007】
従って、優れた半田耐熱性及び打ち抜き加工性を示しつつ、プレスキュア時における流れ出しをも抑制できる接着剤フィルムが求められていた。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、優れた半田耐熱性及び打ち抜き加工性を示しつつ、プレスキュア時における流れ出しをも抑制できる接着剤フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は上記課題を解決するため鋭意研究を重ねた結果、上記特許文献1に記載の接着剤組成物を半硬化してなる接着剤フィルム(いわゆるBステージの状態の接着剤フィルム)のゲル分率が、上記課題が生じる原因の一つになっているのではないかと考えた。即ち、上記特許文献1に記載の接着剤組成物のゲル分率は大きくても20%であり、このことが、上記課題が生じる原因になっているのではないかと考えた。そこで、本発明者はさらに鋭意研究を重ねた結果、接着剤フィルムのゲル分率を特許文献1の接着剤組成物のゲル分率よりも十分に高くするとともに、接着剤フィルムを製造するための接着剤組成物においてエポキシ樹脂やポリアミドアミンをアクリル樹脂に対して所定の割合で配合することで、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち本発明は、(A)アクリル樹脂と、(B)エポキシ樹脂と、(C)ポリアミドアミンとを含み、前記エポキシ樹脂(B)は、前記アクリル樹脂(A)100質量部に対して12.5〜40質量部の割合で配合され、前記ポリアミドアミン(C)は、前記アクリル樹脂(A)100質量部に対して5〜12.5質量部の割合で配合される接着剤組成物を部分硬化してなる接着剤フィルムであって、90〜98%のゲル分率を有することを特徴とする接着剤フィルムである。
【0011】
この接着剤フィルムは、90〜98%のゲル分率を有しており、十分に硬くなっている。このため、接着剤フィルムが打ち抜き時にはみ出ることが十分に防止され、打ち抜き加工性にも優れる。また、接着剤フィルムをプレスキュアしても、その流れ出しを十分に抑制することができる。さらに接着剤フィルムは、大きいゲル分率を有し、またアクリル樹脂、エポキシ樹脂およびポリアミドアミンをバランスよく配合した接着剤組成物を一部硬化してなるものであることで、優れた半田耐熱性を示すことが可能となる。さらに、意外なことであるが、ゲル分率が90〜98%と高いにもかかわらず、接着剤フィルムは、金属やポリイミドなどに対して優れた接着性を示す。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、優れた半田耐熱性及び打ち抜き加工性を示しつつ、プレスキュア時における流れ出しをも抑制できる接着剤フィルムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る接着剤フィルムを用いて製造されたフレキシブルプリント配線板の一例を示す断面図である。
【図2】図1のフレキシブルプリント配線板の製造に必要な部品を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。尚、全図中、同一又は同等の構成要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0015】
図1は、本発明に係る接着剤フィルムを用いて製造されたフレキシブルプリント配線板の一例を示す断面図である。図1に示すように、フレキシブルプリント配線板100はベースフィルム1を備えている。ベースフィルム1の表面1a上には接着層2が設けられ、接着層2上には回路を形成する金属層3が設けられ、接着層2の上には、金属層3を覆うように接着層4が設けられ、接着層4上には絶縁フィルム5が設けられている。
【0016】
一方、ベースフィルム1の裏面1b上には接着層6を介して補強板7が設けられている。補強板7はステンレス、ポリイミドなどから構成されている。
【0017】
次に、フレキシブルプリント配線板100の製造方法について図2を参照しながら説明する。図2は、図1のフレキシブルプリント配線板の製造に必要な部品を示す断面図である。
【0018】
まず図2に示すように、カバーレイ10と、金属張積層板20と、補強板7と、金属張積層板20及び補強板7を貼り合わせるための接着剤フィルム30とを準備する。
【0019】
カバーレイ10は、絶縁フィルム5上に接着剤層14を設けてなるものであり、接着剤組成物を含む接着剤溶液を絶縁フィルム5上に塗布し乾燥することにより得ることができる。このため、接着剤層14は、接着剤組成物の一部を硬化させた状態、例えば半硬化の状態となっている。絶縁フィルム5としては、例えば、ポリイミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、アラミド樹脂等からなる厚さ3μm〜50μm程度のフィルム等を用いることができる。
【0020】
金属張積層板20は、ベースフィルム1上に接着剤層22および金属層3を順次設けてなるものであり、接着剤組成物を含む接着剤溶液をベースフィルム1上に塗布し乾燥することにより形成した接着剤層22上に金属層3を貼り付けることによって得ることができる。ここで、接着剤層22は、接着剤組成物の一部を硬化させた状態、例えば半硬化の状態となっている。ベースフィルム1としては、電気絶縁性及び可撓性を有する樹脂フィルムが用いられ、例えば、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン等の樹脂からなるフィルムが挙げられる。金属層3は銅箔等からなる。
【0021】
接着剤フィルム30としては、90〜98%のゲル分率を有するものを用いる。接着剤フィルム30のゲル分率が90%未満では、プレスキュア時の接着剤フィルム30の流れ出しを十分に抑制できず、接着剤フィルム30の打ち抜き性も悪くなる。一方、接着剤フィルム30のゲル分率が98%を超えると、接着剤フィルム30が、優れた半田耐熱性を示すことができなくなる。
【0022】
接着剤フィルム30は、次のようにして得ることができる。
【0023】
まず接着剤組成物を準備する。接着剤組成物としては、(A)アクリル樹脂と、(B)エポキシ樹脂と、(C)ポリアミドアミンとを含むものを準備する。ここで、エポキシ樹脂(B)は、アクリル樹脂(A)100質量部に対して12.5〜40質量部の割合で配合し、ポリアミドアミン(C)は、アクリル樹脂(A)100質量部に対して5〜12.5質量部の割合で配合する。
【0024】
そして、この接着剤組成物を溶媒中に溶解し、接着剤溶液を得る。
【0025】
次いで、この接着剤溶液を、離型処理を施したポリエチレンテレフタレートフィルムなどからなる基板上に塗布し乾燥させる。このとき、接着剤溶液を120〜160℃の温度で加熱する。この温度は、ポリアミドアミンの反応開始温度以上の温度であり、接着剤組成物中のポリアミドアミン(C)とエポキシ樹脂(B)とを反応させることができる。このとき、加熱時間は、加熱温度に依存するので一概には言えないが、加熱温度が120〜160℃であれば加熱時間は例えば10分間〜30分間とすればよい。こうして、基板上に、90〜98%のゲル分率を有する接着剤フィルム30が得られる。
【0026】
次に、補強板7の上に、接着剤フィルム30、金属張積層板20、カバーレイ10を順次重ね合わせる。このとき、金属張積層板20のベースフィルム1と接着剤フィルム30とを対向させた状態とし、カバーレイ10の接着剤層14と金属張積層板20の接着剤層22及び金属層3とを対向させた状態とする。また接着剤フィルム30を補強板7に重ね合せる場合、基板付きの接着剤フィルムを補強板7に重ね合わせた後、基板を剥離する。但し、基板付きの接着剤フィルムから接着剤フィルム30を剥離し、これを補強板7の上に重ね合わせてもよい。
【0027】
そして、補強板7、接着剤フィルム30、金属張積層板20及びカバーレイ10を熱圧着させる。これにより、カバーレイ10の接着剤層14、金属張積層板20の接着剤層22及び接着剤フィルム30がプレスキュアされる。このとき、プレスキュアの温度はポリアミドアミンの反応開始温度以上の温度となるようにする。このとき、接着剤フィルム30は、プレスキュアする前に、90〜98%のゲル分率を有しており、十分に硬くなっている。このため、接着剤フォルム30が打ち抜き時にはみ出ることが十分に防止され、打ち抜き加工性に優れる。また接着剤フィルム30をプレスキュアしても、接着剤フィルム30の流れ出しを十分に抑制することができる。さらに接着剤フィルム30は、十分に大きいゲル分率を有し、また、アクリル樹脂、エポキシ樹脂およびポリアミドアミンをバランスよく配合した接着剤組成物を一部硬化してなるものである。その結果、接着剤フィルム30は、優れた半田耐熱性を示すことが可能となる。
【0028】
こうして、カバーレイ10の接着剤層14はさらに硬化されて接着層4となり、金属張積層板20の接着剤層22はさらに硬化されて接着層2となり、接着剤フィルム30はさらに硬化されて接着層6となる。こうしてフレキシブルプリント配線板100が得られる。このフレキシブルプリント配線板100では、接着層6が、優れた半田耐熱性を有することとなる。このため、電子部品等を実装しても、接着層6内に膨れ等がほとんど発生しない。またフレキシブルプリント配線板100は、打ち抜き加工性に優れ、プレスキュア時の流れ出しを抑制できる接着剤フィルム30を使用して製造されたものである。このため、このようなフレキシブルプリント配線板100をハードディスク装置などの電子機器の内部に組み込んでも、接着層6のはみ出し部分によって電子機器の正常動作を妨げることが十分に防止される。
【0029】
次に、接着剤シート30の製造に用いる接着剤組成物についてさらに詳細に説明する。
【0030】
(A)アクリル樹脂
アクリル樹脂は、モノマー単位としてアクリル酸エステルを有するもので且つエポキシ樹脂に柔軟性を付与し得るものであれば特に制限なく使用可能である。このようなアクリル樹脂としては、例えばアルキル(メタ)アクリレートの単独重合体、少なくとも1種のアルキル(メタ)アクリレートとアセトニトリルとの共重合体やこれらにカルボキシル基又はエポキシ基などの官能基を導入したアクリル樹脂などが挙げられる。ここで、アルキル(メタ)アクリレートとしては、例えばエチルアクリレート、ブチルアクリレート、メチルメタクリレートなどが挙げられる。上記アクリル樹脂は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。中でも、エポキシ樹脂との反応性を有することから、カルボキシル基を導入したアクリル樹脂が好ましい。カルボキシル基を導入したアクリル樹脂としては、例えばマレイン酸、無水マレイン酸などの酸で変性されたアクリル樹脂が挙げられる。カルボキシル基を導入したアクリル樹脂は、カルボキシル基を含有するものであればよく、水酸基などの他の官能基をさらに導入したものであってもよい。カルボキシル基を導入したアクリル樹脂としては、例えばWS−023(ナガセケムテックス社製)、SG−700−AS(ナガセケムテックス社製)などが挙げられる。エポキシ基を導入したアクリル樹脂としては、例えばSG−P3(ナガセケムテックス社製)などが挙げられる。
【0031】
(B)エポキシ樹脂
エポキシ樹脂は、一分子中にエポキシ基を2個以上有するエポキシ樹脂であれば特に制限なく使用可能である。このようなエポキシ樹脂としては、例えばビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、ヒダントイン型エポキシ樹脂、イソシアヌレート型エポキシ樹脂、アクリル酸変性エポキシ樹脂(エポキシアクリレート)、リン含有エポキシ樹脂、及びこれらのハロゲン化物(臭素化エポキシ樹脂等)や水素添加物等が挙げられる。これらのエポキシ樹脂は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。中でも、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂などのノボラック型エポキシ樹脂が、低吸湿性の点から好ましい。尚、臭素化エポキシ樹脂等は、接着剤に難燃性が要求される場合に、特に有効である。アクリル酸変性エポキシ樹脂(エポキシアクリレート)は、感光性を有するので、接着剤組成物に光硬化性を付与するために有効である。
【0032】
エポキシ樹脂は、アクリル樹脂100質量部に対し12.5〜40質量部の割合で配合される。アクリル樹脂100質量部に対するエポキシ樹脂の配合量が12.5質量部未満では、接着剤フィルム30が、優れた半田耐熱性(湿熱)を示すことができなくなる。一方、アクリル樹脂100質量部に対するエポキシ樹脂の配合量が40質量部を超えると、プレスキュア時の接着剤フィルム30の流れ出しを十分に抑えることができず、接着剤フィルム30が硬くなりすぎて優れた半田耐熱性を示すことができなくなるとともに、接着剤フィルム30の打ち抜き性も悪くなる。尚、アクリル樹脂100質量部に対するエポキシ樹脂の配合量は、半硬化状態で過度な粘着性を示さず、かつ硬化後に粘着性を消失させるという理由から、12.5〜37.5質量部であることが好ましく、20〜30質量部であることがより好ましい。
【0033】
(C)ポリアミドアミン
ポリアミドアミンとしては、骨格中にアミド構造を有し、一分子中に複数の1級アミノ基を有するものであれば、特に制限なく使用することが可能である。ポリアミドアミンとしては、例えばニユーマイド500(ハリマ化成社製、活性水素当量90−100g/eq)、ニューマイド501(ハリマ化成社製、活性水素当量220−250g/eq)、ニユーマイド515−ME(ハリマ化成社製、活性水素当量154−175g/eq)、ニユーマイド522(ハリマ化成社製、活性水素当量315−355g/eq)、ラッカマイドEA−330(DIC社製、活性水素当量95g/eq)、ラッカマイドEA−2020(DIC社製、活性水素当量114g/eq)、ラッカマイドTD−960(DIC社製、活性水素当量77g/eq)、ラッカマイドEA−984(DIC社製、活性水素当量98g/eq)、ラッカマイドEA−982(DIC社製、活性水素当量123g/eq)、エピクロンB−053(DIC社製、活性水素当量77g/eq)などが使用可能である。
【0034】
ポリアミドアミン(C)は、アクリル樹脂100質量部に対して5〜12.5質量部の割合で配合される。ポリアミドアミンの配合量が5質量部未満では、プレスキュア時の接着剤フィルム30の流れ出しを十分に抑えることができず、優れた半田耐熱性(湿熱)を示すことができなくなるとともに、接着剤フィルム30の打ち抜き性も悪くなる。一方、ポリアミドアミンの配合量が12.5質量部を超えると、優れた半田耐熱性(湿熱)を示すことができなくなり、接着剤フィルム30の打ち抜き性も悪くなる。尚、アクリル樹脂100質量部に対するポリアミドアミンの配合量は、エポキシ樹脂の反応状態を適当な半硬化状態に保つことから、5〜10質量部であることが好ましい。
【0035】
接着剤シート30の製造に用いる接着剤組成物は、硬化促進剤をさらに含むことが好ましい。このような硬化促進剤としては、例えば3フッ化ホウ素・アミン錯体、イミダゾール、芳香族アミンなどが使用可能である。
【0036】
硬化促進剤は、アクリル樹脂100質量部に対し、0.2〜0.8質量部の割合で配合されることが、プレスキュア時にエポキシ樹脂の硬化を十分に進めるという理由から好ましい。
【0037】
本発明の接着剤組成物は、必要に応じて、添加剤等を含有してもよい。添加剤としては、例えば、シリカ、マイカ、クレー、タルク、酸化チタン、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等のフィラーや、シランカップリング剤等の分散剤などが挙げられる。
【0038】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば上記実施形態では、接着剤フィルム30のみが、上記(A)〜(D)を有する接着剤組成物を用いて製造されているが、カバーレイ10の接着剤層14、金属張積層板20の接着剤層22も、上記(A)〜(D)を有する接着剤組成物を用いて製造されてもよい。
【0039】
また上記製造方法では、補強板7、接着剤フィルム30、金属張積層板20及びカバーレイ10を重ね合わせて一括して接着剤層14,22及び接着剤フィルム30を硬化させているが、フレキシブルプリント基板100を得るためには、接着剤層14,22及び接着剤フィルム30を必ずしも一括して硬化させる必要はない。例えば補強板7、接着剤フィルム30及び金属張積層板20を重ね合わせ、接着剤層22及び接着剤フィルム30を硬化させ、積層体を得た後、この積層体と、カバーレイ10とを重ね合わせ、接着剤層14を硬化させてもフレキシブルプリント配線板100を得ることができる。
【実施例】
【0040】
以下、本発明の内容を、実施例及び比較例を挙げてより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。尚、表1〜3において、特に指定しない限り、数値の単位は質量部を表す。
【0041】
(実施例1〜5及び比較例1〜8)
まず(A)アクリル樹脂、(B)エポキシ樹脂、(C)ポリアミドアミン、(D)フェノール樹脂、(E)硬化促進剤及び(F)充填剤を表1〜3に示す割合で配合して接着剤組成物を得た。そして、接着剤組成物を、メチルエチルケトンからなる溶媒中に溶解させ、接着剤溶液を得た。
【0042】
得られた接着剤溶液を、非シリコン系材料で離型処理をしたPETフィルムの表面に塗工し、160℃で10分間加熱して乾燥させた。こうして、PETフィルム上に、表1〜3に示すゲル分率を有する接着剤フィルムを得た。このとき、接着剤フィルムの厚さが25μmとなるようにした。こうして得られたPETフィルム付き接着剤フィルムのうち接着剤フィルムから、100mg程度の重さの小片を切り出してメチルエチルケトン中に浸漬した。そして、浸漬前と後の重量から、溶媒に対するゲル分率を測定した。結果を表1〜3に示す。
【0043】
上記(A)アクリル樹脂、(B)エポキシ樹脂、(C)ポリアミドアミン、(D)フェノール樹脂、(E)硬化促進剤及び(F)充填剤としては、具体的には下記のものを使用した。
(A)アクリル樹脂
カルボキシル基を導入したエチルアクリレート(EA)−ブチルアクリレート(BA)−メチルメタクリレート(MMA)−アセトニトリル(AN)共重合体(ナガセケムテックス社製WS−023)
(B)エポキシ樹脂
フェノールノボラック型エポキシ樹脂(油化シェルエポキシ社製エピコート152)
(C)ポリアミドアミン
(C−1)ポリアミドアミン(DIC社製TD−984)
反応開始温度:70℃
活性水素当量(g/eq):98
(C−2)ポリアミドアミン(DIC社製EA−2020)
反応開始温度:20℃
活性水素当量(g/eq):114
(D)フェノール樹脂
フェノール樹脂(群栄化学社製PSM−4326)
反応開始温度:120℃
活性水素当量(g/eq):120
(E)硬化促進剤
3フッ化ホウ素・アミン錯体(和光純薬社製BF−MEA)
(F)充填剤
水酸化アルミニウム(昭和電工社製H−43S)
【0044】
[特性評価]
PETフィルム付き接着剤フィルムを、CCLのベース面(回路とは反対側の面)にロールラミネートした後、PETフィルムを剥離した。そして、接着剤フィルムに、鏡面処理したステンレス(SUS)板を載せ、160℃で1時間、25kgf/cmの圧力をかけてプレスキュアを行い、CCLにSUS板を接着させ、特性評価用の試料を得た。そして、この試料について以下の特性を評価した。
【0045】
(接着剤層の流れ出し性)
この試料について、その端部からの接着剤フィルムの流れ出し量の最大値を目視にて測定した。結果を表1〜3に示す。尚、接着剤の流れ出し量は、60μm以下であれば接着剤の流れ出しが十分に抑制されているとして「合格」とし、60μmを超えた場合には接着剤の流れ出しが十分に抑制されていないとして「不合格」とした。
【0046】
(半田耐熱性)
(1)半田耐熱性(常態)
上記のようにして得られた試料を、260℃で融解したはんだ槽に3分間フロートし、膨れの発生の有無を観察した。尚、3分以上膨れが生じない試料については半田耐熱性に優れるとして「A」と表示し、10秒超3分未満で膨れが生じた試料については半田耐熱性に劣るとして「B」と表示することとした。尚、「B」と表示した試料については、試料をフロートした後、膨れが生じるまでの時間も表記した。また10秒超3分未満で膨れが生じた試料10秒以下で膨れが生じた試料については半田耐熱性にさらに劣るとして「C」と表示することとした。結果を表1〜3に示す。
(2)半田耐熱性(湿熱)
上記のようにして得られた試料を、40℃、90%RHの恒温槽に96時間置いた後、260℃で融解したはんだ槽に3分間浸漬し、膨れの発生の有無を観察した。尚、半田耐熱性(湿熱)の評価基準は、半田耐熱性(常態)と同様とした。結果を表1〜3に示す。
【0047】
(打ち抜き性)
上記PETフィルム付き接着剤フィルムに対し、打ち抜き加工装置(シオデコーポレーション社製150tプレス)を用いて打ち抜き加工を行った。その際、接着剤フィルムからのはみ出しが見られなかったものについては、打ち抜き性に優れるとして「○」と表示し、接着剤フィルムからのはみ出しが見られたものについては、打ち抜き性に劣るとして「×」と表示することとした。結果を表1〜3に示す。
【0048】
(ピール強度)
上記のようにして得られた試料について、90°ピール強度を測定した。結果を表1〜3に示す。尚、表1〜3において、ピール強度が10N/cm以上の強度を有する試料は密着性に特に優れるものである。
【表1】

【表2】

【表3】

【0049】
表1〜3に示す結果より、実施例1〜5の接着剤フィルムは、プレスキュア時の接着剤の流れ出し性、吸湿後の半田耐熱性及び打ち抜き性の全てについて合格基準に達することが分かった。これに対し、比較例1〜8の接着剤組成物は、プレスキュア時の接着剤の流れ出し性、吸湿後の半田耐熱性及び打ち抜き性の少なくとも一つが合格基準に達しないことが分かった。
【0050】
以上のことから、本発明の接着剤フィルムによれば、優れた半田耐熱性及び打ち抜き加工性を示しつつ、プレスキュア時における流れ出しをも抑制できることが確認された。
【符号の説明】
【0051】
30…接着剤フィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)アクリル樹脂と、
(B)エポキシ樹脂と、
(C)ポリアミドアミンとを含み、
前記エポキシ樹脂(B)は、前記アクリル樹脂(A)100質量部に対して12.5〜40質量部の割合で配合され、
前記ポリアミドアミン(C)は、前記アクリル樹脂(A)100質量部に対して5〜12.5質量部の割合で配合される接着剤組成物を部分硬化してなる接着剤フィルムであって、
90〜98%のゲル分率を有すること、
を特徴とする接着剤フィルム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−12526(P2012−12526A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−151302(P2010−151302)
【出願日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】