接着剤層付き半導体ウェハの製造方法、半導体装置の製造方法及び半導体装置
【課題】 ウェハの反りが十分抑制され、ダイシングによって接着剤付き半導体素子を効率よく得ることができる接着剤層付きウェハを製造する方法、信頼性を十分維持しながら半導体装置の更なる薄型化を図ることが可能な半導体装置の製造方法及び半導体装置を提供すること。
【解決手段】 本発明の半導体装置の製造方法は、半導体ウェハの一方面上に、(A)放射線重合性化合物、(B)光重合開始剤及び(C)熱硬化性樹脂を含有する液状感光性接着剤を塗布して感光性接着剤層を設ける工程と、感光性接着剤層を酸素濃度が10%以下の雰囲気下で露光してBステージ化することにより接着剤層付き半導体ウェハを得る工程と、を備える。
【解決手段】 本発明の半導体装置の製造方法は、半導体ウェハの一方面上に、(A)放射線重合性化合物、(B)光重合開始剤及び(C)熱硬化性樹脂を含有する液状感光性接着剤を塗布して感光性接着剤層を設ける工程と、感光性接着剤層を酸素濃度が10%以下の雰囲気下で露光してBステージ化することにより接着剤層付き半導体ウェハを得る工程と、を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着剤層付き半導体ウェハの製造方法、半導体装置の製造方法及び半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体素子の小型薄型化及び高性能化に加えて、多機能化が進み、複数の半導体素子を積層した半導体装置が急増している。これらの半導体素子間、又は最下段の半導体素子と基板(支持部材)間を接着する材料として、フィルム状のダイボンディング材(以下ダイボンディングフィルムという。)が適用されている。
【0003】
ダイボンディングフィルムを使用する半導体装置の組立工程においては、ダイボンディングフィルムの一方の面にダイシングシートを貼り合せた接着シートを用いて、ウェハ裏面への貼り合せプロセスの簡略化も図られている。
【0004】
最近では、半導体装置の更なる薄型化が進み、接着部材においても更に薄膜化することが求められている。しかし、20μmを下回る厚みのフィルム状のダイボンディング材を製造することは困難であり、仮に得られたとしても、巻き取り等の取扱性が低下する傾向にある。
【0005】
一方で、接着剤成分を溶剤に溶解した液状のダイボンディング材を半導体ウェハの裏面に塗布し、加熱により溶剤を揮発させることによりBステージ化した接着剤層を形成する方法が提案されている(例えば、下記特許文献1及び2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−110099号公報
【特許文献2】特開2010−37456号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記の方法では、Bステージ化のための加熱によってウェハ反りが生じやすい。低温で乾燥すると加熱による不具合はある程度抑制され得るが、その場合は残存溶剤が多くなるために、加熱硬化時にボイドやはく離が発生して、信頼性が低下する傾向がある。また、Bステージ化が不十分であると、ダイシングによって接着剤付き半導体素子を作製するときに、ピックアップ不良を引き起こす可能性がある。
【0008】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、ウェハの反りが十分抑制され、ダイシングによって接着剤付き半導体素子を効率よく得ることができる接着剤層付きウェハを製造する方法、信頼性を十分維持しながら半導体装置の更なる薄型化を図ることが可能な半導体装置の製造方法及び半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、半導体ウェハの一方面上に、(A)放射線重合性化合物、(B)光重合開始剤及び(C)熱硬化性樹脂を含有する液状感光性接着剤を塗布して感光性接着剤層を設ける工程と、感光性接着剤層を酸素濃度が10%以下の雰囲気下で露光してBステージ化することにより接着剤層付き半導体ウェハを得る工程と、を備える接着剤層付き半導体ウェハの製造方法を提供する。
【0010】
本明細書において、酸素濃度とは露光される接着剤層の環境下の容量%を意味する。
【0011】
本発明の接着剤層付き半導体ウェハの製造方法によれば、上記特定の液状感光性接着剤を用いることにより、露光によりBステージ化した接着剤剤層を形成することができ、溶剤乾燥のための加熱を必要としないことからウェハが薄い場合であっても反りを十分抑制することができる。また、本発明の方法では、感光性接着剤層の表面において光重合開始剤が酸素阻害を受けることで表面タック力の低減が不十分になることを防止することができ、取り扱い性及びダイシング後のピックアップ性に十分優れた接着剤層を半導体ウェハ上に形成することができる。
【0012】
接着剤層の表面タック力を更に効率よく低減させる観点から、感光性接着剤層の露光を酸素濃度が5%以下の雰囲気下で行うことが好ましい。この場合、接着剤層付き半導体ウェハの製造時間を更に短時間にすることができる。
【0013】
本発明はまた、半導体ウェハの一方面上に、(A)放射線重合性化合物、(B)光重合開始剤及び(C)熱硬化性樹脂を含有する液状感光性接着剤を塗布して感光性接着剤層を設ける工程と、感光性接着剤層を酸素濃度が10%以下の雰囲気下で露光してBステージ化することにより接着剤層付き半導体ウェハを得る工程と、接着剤層付き半導体ウェハを切断して接着剤層付き半導体素子を得る工程と、接着剤層付き半導体素子と、他の半導体素子又は半導体素子搭載用支持部材とを、接着剤層付き半導体素子の接着剤層を挟んで圧着することにより接着する工程と、を備える半導体装置の製造方法を提供する。
【0014】
本発明の半導体装置の製造方法においては、上記特定の液状感光性接着剤を用いることにより、半導体ウェハが薄い場合であってもウェハの反りを十分抑制しつつ表面タック力が十分低減された接着剤層を備える接着剤層付き半導体ウェハが得られる。また、接着剤層の薄膜化も容易に行うことができる。このような接着剤層付き半導体ウェハを用いることにより、信頼性を十分維持しながら半導体装置の更なる薄型化を図ることが可能となる。
【0015】
本発明はまた、本発明の半導体装置の製造方法によって得られる半導体装置を提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ウェハの反りが十分抑制され、ダイシングによって接着剤付き半導体素子を効率よく得ることができる接着剤層付きウェハを製造する方法、信頼性を十分維持しながら半導体装置の更なる薄型化を図ることが可能な半導体装置の製造方法及び半導体装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】半導体装置の製造方法の一実施形態を示す模式図である。
【図2】半導体装置の製造方法の一実施形態を示す模式図である。
【図3】半導体装置の製造方法の一実施形態を示す模式図である。
【図4】半導体装置の製造方法の一実施形態を示す模式図である。
【図5】半導体装置の製造方法の一実施形態を示す模式図である。
【図6】半導体装置の製造方法の一実施形態を示す模式図である。
【図7】半導体装置の製造方法の一実施形態を示す模式図である。
【図8】半導体装置の製造方法の一実施形態を示す模式図である。
【図9】半導体装置の製造方法の一実施形態を示す模式図である。
【図10】半導体装置の製造方法の一実施形態を示す模式図である。
【図11】半導体装置の製造方法の一実施形態を示す模式図である。
【図12】半導体装置の製造方法の一実施形態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。なお、図面中、同一又は相当する要素には同一符号を付すこととし、重複する説明は適宜省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとし、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0019】
図1〜12は、半導体装置の製造方法の一実施形態を示す模式図である。本実施形態に係る製造方法は、以下の工程を備える。
工程1:半導体ウェハ1内に形成された半導体チップ(半導体素子)2の回路面S1上にはく離可能な粘着テープ(バックグラインドテープ)4を積層する(図1を参照)。
工程2:半導体ウェハ1を回路面S1とは反対側の面(裏面)S2から研磨して半導体ウェハ1を薄くする(図2を参照)。
工程3:半導体ウェハ1の回路面S1とは反対側の面S2に液状感光性接着剤5を塗布する(図3を参照)。
工程4:塗布された液状接着剤からなる感光性接着剤層5側から露光を行い、感光性接着剤層5をBステージ化する(図4を参照)。こうして、接着剤層5aを有する接着剤層付き半導体ウェハが得られる。
工程5:接着剤層5a上にはく離可能な粘着テープ(ダイシングテープ)6を積層する(図5を参照)。
工程6:はく離可能な粘着テープ4をはく離する(図6を参照)。
工程7:半導体ウェハ1をダイシングにより複数の半導体チップ(半導体素子)2に切り分ける(図7を参照)。
工程8:半導体チップ2をピックアップして半導体装置用の支持部材(半導体素子搭載用支持部材)7または半導体チップに圧着(マウント)する(図8、9、10を参照)。
工程9:マウントされた半導体チップを、ワイヤ16を介して支持部材7上の外部接続端子と接続する(図11を参照)。
工程10:複数の半導体チップ2を含む積層体を封止材17によって封止して、半導体装置100を得る(図12を参照)。
【0020】
以下、(工程1)〜(工程10)について詳述する。
【0021】
(工程1)
表面に回路を形成した半導体ウェハ1の回路面S1側にはく離可能な粘着テープ4を積層する。粘着テープ4の積層は、予めフィルム状に成形されたフィルムをラミネートする方法により行なうことができる。
【0022】
(工程2)
半導体ウェハ1の粘着テープ4とは反対側の面S2を研磨して、半導体ウェハ1を所定の厚さまで薄くする。研磨は、粘着テープ4によって半導体ウェハ1を研磨用の治具に固定した状態で、グラインド装置8を用いて行う。
【0023】
(工程3)
研磨の後、半導体ウェハ1の回路面S1とは反対側の面S2に液状感光性接着剤5を塗布する。塗布は、ボックス20内で、粘着テープ4が貼り付けられた半導体ウェハ1を治具21に固定した状態で行うことができる。塗布方法は、印刷法、スピンコート法、スプレーコート法、ジェットディスペンス法及びインクジェット法などから選ばれる。これらの中でも、薄膜化及び膜厚均一性の観点から、スピンコート法やスプレーコート法が好ましい。スピンコート装置が有する吸着台には穴が形成されていてもよいし、吸着台がメッシュ状であってもよい。吸着痕が残りにくい点から、吸着台はメッシュ状であることが好ましい。スピンコート法による塗布は、ウェハのうねり、及びエッジ部の盛り上がりを防止するために、500〜5000rpmの回転数で行うことが好ましい。同様の観点から、回転数は1000〜4000rpmがさらに好ましい。液状感光性接着剤の粘度を調整する目的でスピンコート台に温度調節器を備えることもできる。
【0024】
液状感光性接着剤はシリンジなどで保存することができ、スピンコート装置のシリンジセット部分に温度調節器が備えられていてもよい。
【0025】
半導体ウェハに液状感光性接着剤を例えばスピンコート法によって塗布する際、半導体ウェハのエッジ部分に不要な液状感光性接着剤が付着する場合がある。このような不要な接着剤をスピンコート後に溶剤などで洗浄して除去することができる。洗浄方法は特に限定されないが、半導体ウェハをスピンさせながら、不要な接着剤が付着した部分にノズルから溶剤を吐出させる方法が好ましい。洗浄に使用する溶剤は接着剤を溶解させるものであればよく、例えば、メチルエチルケトン、アセトン、イソプロピルアルコール及びメタノールから選ばれる低沸点溶剤が用いられる。
【0026】
塗布される液状感光性接着剤の25℃における粘度は、接着剤層の薄膜化の観点から好ましくは10〜30000mPa・s、より好ましくは30〜10000mPa・s、さらに好ましくは50〜5000mPa・s、より一層好ましくは100〜3000mPa・s、最も好ましくは200〜1000mPa・sである。上記粘度が10mPa・s以下であると液状感光性接着剤の保存安定性が低下したり、塗布された液状感光性接着剤にピンホールが生じやすくなる傾向がある。また、露光によるBステージ化が困難となる傾向がある。粘度が30000mPa・s以上であると、塗布時に薄膜化が困難であったり、吐出が困難となる傾向がある。ここでの粘度は、25℃においてE型粘度計を用いて測定される値である。
【0027】
(工程4)
塗布により液状感光性接着剤から形成された感光性接着剤層5側から露光装置9によって活性光線(典型的には紫外線)を照射して、感光性接着剤層をBステージ化する。これにより感光性接着剤層5が半導体ウェハ1上に固定されるとともに、感光性接着剤層5表面のタックを低減することができる。露光は、酸素濃度が10%以下の雰囲気下で行う必要があり、真空下、又は不活性ガス(例えば、窒素)下の雰囲気下で行なうことが好ましい。
【0028】
本実施形態においては、図4に示されるように、密閉が可能な容器(例えば、アクリルボックス)20内にて露光を行うことができる。容器20は、上方部に通気管22,24を有しており、一方から窒素を吹き込みながら他方から容器内の空気を排出することができる。これにより、酸素濃度が10%以下の雰囲気下で露光を行うことができる。なお、酸素濃度は、容器20内に設置された酸素濃度計26により確認することができる。本実施形態においては、窒素の流量を調整しながら容器内の酸素濃度を一定に保つことが好ましい。
【0029】
接着剤層表面は酸素阻害を受けやすく、酸素濃度が高いと露光により生じたラジカル種が酸素と反応し、接着剤層を十分にBステージ化することができなくなる傾向にある。本実施形態においては、所定の酸素濃度で露光したときの接着剤層表面のタック力をA、酸素濃度0%で露光したときの接着剤層表面のタック力をBとしたときに、A/Bが1.5以下になるような所定の酸素濃度で露光を行うことが好ましい。このような観点から、露光の際の酸素濃度は5%以下が好ましく、3%以下がより好ましく、1%以下が更により好ましい。
【0030】
露光後の接着剤層表面のタック力は以下のように測定される。まず、液状感光性接着剤をシリコンウェハ上にスピンコート(2000rpm/10s、4000rpm/20s)によって塗布し、形成された感光性接着剤層に、離型処理したPETフィルムをラミネートし、高精度平行露光機(オーク製作所製、「EXM−1172−B−∞」(商品名))を用いて1000mJ/cm2で露光を行なう。その後、所定の温度(例えば30℃)における接着剤層表面のタック力をレスカ社製のプローブタッキング試験機を用いて、プローブ直径:5.1mm、引き剥がし速度:10mm/s、接触荷重:100gf/cm2、接触時間:1sの条件で測定する。
【0031】
本実施形態において、露光後の接着剤層表面の30℃におけるタック力(表面タック力)は、200gf/cm2以下であることが好ましい。これにより、露光後の取り扱い性、ダイシングの容易さ、ピックアップ性の点で十分に優れたものとなる。なお、30℃における上記タック力が200gf/cm2を超えると、接着剤層の室温における表面の粘着性が高くなりすぎて、取扱い性が低下する傾向にある他、ダイシング時に接着剤層と被着体との界面に水が浸入してチップ飛びが発生する、ダイシング後のダイシングシートとのはく離性が低下してピックアップ性が低下する、といった問題が生じやすくなる傾向にある。
【0032】
本実施形態において、接着剤層中の未反応の光重合開始剤を低減させる観点から、露光量は50mJ/cm2以上が好ましく、100mJ/cm2以上がより好ましい。
【0033】
また、露光後の接着剤層5aの膜厚は、接着剤層の薄膜化の観点から、好ましくは30μm以下、より好ましくは20μm以下、更に好ましくは10μm以下、より一層好ましくは5μm以下である。露光後の接着剤層5aの膜厚は、例えば、以下の方法によって測定できる。まず、液状感光性接着剤をシリコンウェハ上にスピンコート(2000rpm/10s、4000rpm/20s)によって塗布する。得られた塗膜に、離型処理したPETフィルムをラミネートし、高精度平行露光機(オーク製作所製、「EXM−1172−B−∞」(商品名))により1000mJ/cm2で露光を行なう。その後、表面粗さ測定器(小坂研究所製)を用いて接着剤層の厚みを測定する。
【0034】
Bステージ化された接着剤層5aの5%重量減少温度は、好ましくは120℃以上、より好ましくは150℃以上、更に好ましくは180℃以上、より一層好ましくは200℃以上である。この5%重量減少温度を高めるために、本発明に係る液状感光性接着剤は溶剤を実質的に含有しないことが好ましい。5%重量減少温度が上記下限値よりも低いと、被着体圧着後の熱硬化時もしくはリフローなどの熱履歴時に被着体がはく離し易くなる傾向があるため、熱圧着前に加熱乾燥が必要となる。
【0035】
ここでの5%重量減少温度は以下のように測定される。液状感光性接着剤をシリコンウェハ上にスピンコート(2000rpm/10s、4000rpm/20s)によって塗布し、得られた塗膜に、離型処理したPETフィルムをラミネートし、高精度平行露光機(オーク製作所製、「EXM−1172−B−∞」(商品名))により1000mJ/cm2で露光を行なう。その後、Bステージ化した接着剤層について、示差熱熱重量同時測定装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー社製、商品名「TG/DTA6300」)を用いて、昇温速度10℃/min、窒素フロー(400ml/分)の条件下で5%重量減少温度を測定する。
【0036】
本実施形態においては、酸素阻害を低減するために、離形処理されたPETフィルムやポリプロピレンフィルムなどの基材を感光性接着剤層5上に積層した状態で、露光することもできる。この場合、感光性接着剤層の表面が空気中の酸素と遮断された条件下で露光を行うことができる。また、ポリ塩化ビニル、ポリオレフィンや粘着テープ(ダイシングテープ)を感光性接着剤層上に積層した状態で露光することにより、工程5を簡略化することもできる。また、パターニングされたマスクを介して露光を行うこともできる。パターニングされたマスクを介して露光を行うこともできる。パターニングされたマスクを用いることにより、熱圧着時の流動性が異なる接着剤層を形成させることができたり、現像によって接着剤パターンを得ることができる。露光量は、タック低減及びタクトタイムの観点から、20〜2000mJ/cm2が好ましい。また、Bステージ化後のタック低減及びアウトガス低減を目的に、露光後100℃以下の温度で加熱を行なってもよい。
【0037】
露光後の接着剤層5aの膜厚は50μm以下であることが好ましく、低応力化の観点から30μm以下であることがより好ましく、膜厚均一性の観点から20μm以下であることがさらにより好ましく、パッケージを更に薄くできることから10μm以下であることが最も好ましい。また、良好な熱圧着性と接着性を確保するために上記膜厚は0.5μm以上であることが好ましく、ダストやダイシング時の切断カスによるボイドなどの圧着不良低減のために1μm以上であることがより好ましい。膜厚の測定は上述と同様にして行うことができる。
【0038】
また、チップの取り扱い性、反りなどの応力、熱圧着時のチップ歪み(基材に対して平行に圧着可能であること)、硬化時のチップ保持性(硬化時の熱溶融による歪み)の観点から、ウェハの厚みxと接着剤層の厚みyとの関係がx≧yを満たすことが好ましく、x≧2×yを満たすことがより好ましい。
【0039】
また、露光した後、30℃での表面タック力が200gf/cm2以下となることが好ましく、熱圧着時の粘着性の観点から150gf/cm2以下であることがより好ましく、ダイシングテープのはく離性の観点から100gf/cm2以下であることがさらにより好ましく、ピックアップ性の観点から50gf/cm2以下であることが最も好ましい。また、ダイシング時のチップ飛びなどを抑制するために表面タック力が0.1gf/cm2以上であることが好ましい。表面タック力の測定は上述と同様にして行うことができる。
【0040】
(工程5)
露光後、接着剤層5aにダイシングテープなどのはく離可能な粘着テープ6を貼り付ける。粘着テープ6は、予めフィルム状に成形された粘着テープをラミネートする方法により貼り付けることができる。
【0041】
(工程6)
続いて、半導体ウェハ1の回路面に貼り付けられた粘着テープ4をはく離する。例えば、活性光線(典型的には紫外線)を照射することによって粘着性が低下する粘着テープを使用し、粘着テープ4側から露光した後、これをはく離することができる。
【0042】
(工程7)
ダイシングラインDに沿って半導体ウェハ1を接着剤層5aとともに切断する。このダイシングにより、半導体ウェハ1が、それぞれの裏面に接着剤層5aが設けられた複数の半導体チップ2に切り分けられる。ダイシングは、粘着テープ(ダイシングテープ)6によって全体をフレーム(ウェハリング)10に固定した状態でダイシングブレード11を用いて行われる。
【0043】
(工程8)
ダイシングの後、切り分けられた半導体チップ2を、ダイボンド装置12によって接着剤層5aとともにピックアップし、すなわち接着剤層付き半導体素子をピックアップし、半導体装置用の支持部材(半導体素子搭載用支持部材)7または他の半導体チップ2に圧着(マウント)する。圧着は加熱しながら行なうことが好ましい。
【0044】
圧着により、半導体チップが支持部材又は他の半導体チップに接着される。半導体チップと支持部材又は他の半導体チップとの260℃におけるせん断接着強度は、0.2MPa以上であることが好ましく、0.5MPa以上であることがより好ましい。せん断接着強度が0.2MPa未満であると、リフロー工程などの熱履歴によってはく離が生じ易くなる傾向がある。
【0045】
ここでのせん断接着強度は、せん断接着力試験機「Dage−4000」(商品名)を用いて測定することができる。より具体的には、例えば以下のような方法で測定される。まず、半導体ウェハに塗布された液状感光性接着剤からなる感光性接着剤層全面を露光した後、3×3mm角の半導体チップを切り出す。切り出された接着剤層付きの半導体チップを、予め準備した5×5mm角の半導体チップに載せ、100gfで加圧しながら、120℃で2秒間圧着する。その後、120℃1時間、次いで180℃3時間オーブンで加熱して、半導体チップ同士が接着されたサンプルを得る。得られたサンプルについて、せん断接着力試験機「Dage−4000」(商品名)を用いて260℃におけるせん断接着力を測定する。
【0046】
(工程9)
工程8の後、それぞれの半導体チップ2はそのボンディングパッドに接続されたワイヤ16を介して支持部材7上の外部接続端子と接続される。
【0047】
(工程10)
半導体チップ2を含む積層体を封止材17によって封止することにより、半導体装置100が得られる。
【0048】
以上のような工程を経て、半導体素子同士、及び/又は、半導体素子と半導体素子搭載用支持部材とが接着された構造を有する半導体装置を製造することができる。半導体装置の構成及び製造方法は、以上の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更が可能である。
【0049】
例えば、工程1〜7の順序を必要により入れ替えることが可能である。より具体的には、予めダイシングされた半導体ウェハの裏面に液状感光性接着剤を塗布し、その後、活性光線(典型的には紫外線)を照射して感光性接着剤層をBステージ化することもできる。このとき、パターニングされたマスクを用いることもできる。
【0050】
塗布された液状感光性接着剤を、露光前又は露光後に120℃以下、好ましくは100℃以下、より好ましくは80℃以下に加熱してもよい。これにより、残存している溶剤、水分を低減することができ、また露光後のタックをより低減することができる。
【0051】
光照射によりBステージ化された後、さらに加熱により硬化された接着剤層の5%重量減少温度は、260℃以上であることが好ましい。この5%重量減少温度が260℃以下であると、リフロー工程などの熱履歴によってはく離が生じ易くなる傾向がある。
【0052】
光照射によりBステージ化された後、さらに、120℃1時間、次いで180℃3時間の加熱により硬化されたときの接着剤層からのアウトガスは10%以下であることが好ましく、7%以下であることがより好ましく、5%以下であることがさらに好ましい。アウトガス量が10%以上であると、加熱硬化時にボイドやはく離が発生し易くなる傾向がある。
【0053】
ここでのアウトガスとは以下のように測定される。液状感光性接着剤をシリコンウェハ上にスピンコート(2000rpm/10s、4000rpm/20s)によって塗布し、得られた塗膜に、離型処理したPETフィルムをラミネートし、高精度平行露光機(オーク製作所製、「EXM−1172−B−∞」(商品名))により1000mJ/cm2で露光を行なう。その後、Bステージ化した接着剤層を、示差熱熱重量同時測定装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー社製、商品名「TG/DTA6300」)を用いて、窒素フロー(400ml/分)下で、昇温速度50℃/minで120℃に昇温させ、120℃で1時間ホールドし、更に180℃に昇温させ、180℃で3時間ホールドするプログラムによって加熱したとしたときのアウトガスの量が測定される。
【0054】
光照射によりBステージ化された接着剤層の20℃〜300℃における最低溶融粘度は、30000Pa・s以下であることが好ましい。
【0055】
ここでの最低溶融粘度とは、光量1000mJ/cm2で露光した後の接着剤層を、粘弾性測定装置ARES(レオメトリックス・サイエンティフィック・エフ・イー(株)製)を用いて測定したときの20℃〜300℃における溶融粘度の最低値を指す。溶融粘度は、直径8mmの平行プレート用い、昇温5℃/min、測定温度20℃〜300℃、周波数は1Hzの条件で測定される。
【0056】
上記最低溶融粘度は、20000Pa・s以下であることがより好ましく、18000Pa・s以下であることが更に好ましく、15000Pa・s以下であることが特に好ましい。上記範囲内の最低溶融粘度を有することにより、十分な低温熱圧着性を確保することができ、凹凸がある基板などに対しても良好な密着性を付与することができる。上記最低溶融粘度は、取り扱い性等の点からは10Pa・s以上であることが望ましい。
【0057】
本発明に係る液状感光性接着剤は、(A)放射線重合性化合物、(B)光重合開始剤及び(C)熱硬化性樹脂を含有する。
【0058】
本実施形態の液状感光性接着剤は、25℃で液状であり且つ溶剤の含有量が5質量%以下であることが好ましい。なお、本発明において液状とは、25℃、1atmで流動性を有することを意味する。
【0059】
溶剤とは、光反応性基及び熱反応性基を有さず、分子量が500以下且つ25℃において液状である有機化合物を指す。
【0060】
本発明において放射線とは、電離性放射線や非電離性放射線を指し、例えば、ArF、KrF等のエキシマレーザー光、電子線極端紫外線、真空紫外光、X線、イオンビームやi線やg線等の紫外光が挙げられる。放射線は、量産性の観点から、i線やg線等の紫外光が好ましく用いられる。
【0061】
本実施形態の液状感光性接着剤は、25℃で液状であり且つ溶剤の含有量が5質量%以下であることが好ましい。上記の「無溶剤型」とは、接着剤中に含有される溶剤量が5質量%以下であることを意味する。
【0062】
上記の溶剤とは、放射線重合性基やオキシムエステル基、α−アミノアセトフェノン、ホスフィンオキサイドなどの光反応性基、エポキシ基、フェノール性水酸基、カルボキシル基、アミノ基、酸無水物、イソシアネート、パーオキサイド、ジアゾ基、イミダゾール、アルコキシシランなどの熱反応性基を有さず、分子量が500以下でありかつ室温(25℃)において液状である有機化合物を意味する。このような溶剤としては、例えば、ジメチルホルムアミド、トルエン、ベンゼン、キシレン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、エチルセロソルブ、エチルセロソルブアセテート、ジオキサン、シクロヘキサノン、酢酸エチル、γ−ブチロラクトン及びN−メチル−ピロリジノンなどが挙げられる。
【0063】
溶剤量が上記範囲となることで、光照射によってタック低減させることができ、光照射後の取り扱い性が向上する。更に、熱圧着や加熱硬化時の発泡を抑制することができる。
【0064】
本実施形態においては、(A)成分が、(A1)25℃で液状であり且つ分子内に1つの炭素−炭素二重結合を有する化合物(以下、「A1化合物」という場合もある。)を含むことが好ましい。分子内に2つ以上の炭素−炭素二重結合を有する化合物を配合した感光性組成物の場合、光照射されると架橋構造が形成された状態となり、その後の熱時に溶融しにくく、またタックも発現しにくいため、熱圧着が困難となる傾向がある。これに対して、分子内に1つの炭素−炭素二重結合を有する化合物を含有する場合、熱時流動性を十分得ることができ熱圧着性を向上させることができる。
【0065】
また、本実施形態の液状感光性接着剤には、25℃で液状であり且つ分子内に1つの炭素−炭素二重結合を有する化合物に加えて、更に固形のアクリレートを配合してもよい。この場合の(A)成分の混合物は、25℃で液状であることが好ましい。
【0066】
更に高水準の熱時流動性を得る観点から、放射線重合性化合物として、分子内に1つの炭素−炭素二重結合を有する化合物を単独で接着剤に含有させることが好ましい。なお、分子内に1つの炭素−炭素二重結合を有する化合物を単独で使用した場合、光照射後に得られるポリマーの分子量は数万以上にすることができる。ここで、分子内に2つ以上の炭素−炭素二重結合を有する化合物が含まれると分子量が数万以上のポリマー同士のネットワークが形成され熱時の粘着性や流動性が低下する傾向がある。
【0067】
他方、耐熱性向上や露光後のタック強度低減の目的で、分子内に2つ以上の炭素−炭素二重結合を有する化合物を、分子内に1つの炭素−炭素二重結合を有する化合物に対して0.1〜50質量%の割合で併用することもできる。この場合、併用する分子内に2つ以上の炭素−炭素二重結合を有する化合物としては、熱時流動性の観点から、炭素数10以上の脂肪族系アクリレート、熱時の粘着性の観点から好ましくは官能基当量が200g/eq以上、低応力性の観点から更に好ましくは300g/eq以上の芳香族若しくはイソシアヌル環やシクロヘキシルなどの環状構造を有するアクリレートが好ましい。
【0068】
上記(A)成分は、上記(B)成分及び(C)成分などの他の成分の溶解性の観点から、25℃での粘度が5000mPa・s以下であることが好ましく、更に薄膜化の観点から、3000mPa・s以下であることがより好ましく、2000mPa・s以下であることが更により好ましく、更に固形や高粘度の熱硬化樹脂を多く配合して接着性を向上させる観点から、1000mPa・s以下であることが最も好ましい。ここでの粘度とは、液状感光性接着剤に含まれる(A)成分全体の値であり、東京計器製造所製のEHD型回転粘度計を用い、サンプル量0.4mL、3°コーンの条件下、25℃で測定した粘度の値である。
【0069】
(A)成分の上記粘度が5000mPa・sを超えると、液状感光性接着剤の粘度が上昇して薄膜化が困難となったり、塗布装置などのノズルから吐出させることが困難となる傾向がある。塗布時のピンホール発生を防止することや耐熱性を確保する観点から、(A)成分の25℃での粘度は10mPa・s以上であることが好ましい。
【0070】
また、上記(A)成分は、5%重量減少温度が100℃以上であることが好ましく、120℃以上であることがより好ましく、熱硬化時に未反応の(A)成分が揮発することによって生じるはく離やボイドを抑制できる点で150℃以上であることが更により好ましく、180℃以上であることが最も好ましい。ここでの5%質量減少温度とは、液状感光性接着剤に含まれる(A)成分全体の値であり、(A)成分を示差熱熱重量同時測定装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー製:TG/DTA6300)を用いて、昇温速度10℃/min、窒素フロー(400ml/min)下で測定したときの5%重量減少温度である。
【0071】
また、液状感光性接着剤の低粘度化、塗布後の表面凹凸抑制やBステージ化後の熱時流動性の観点から、有機化合物を主体とした材料設計が好ましいため、上記(A)成分の5%重量減少温度は500℃以下であることが好ましい。
【0072】
また、上記(A)成分は、Bステージ化後の低温熱圧着性、熱時流動性の観点から、上記(A)成分を重合して得られた重合体のTgが100℃以下となるものが好ましく、Bステージ化後の取り扱い性やピックアップ性の観点から、Tgが20℃以上となるものが好ましい。(A)成分の重合体のTgは、(A)成分に光開始剤であるI−379EG(チバ・ジャパン社製)を液状感光性接着剤全量基準で3質量%となる割合で溶解させた組成物を、PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム上に膜厚30μmとなるように塗布し、この塗膜に空気下25℃で高精度平行露光機(オーク製作所製、商品名:EXM−1172−B−∞)によって1000mJ/cm2で露光して得られたフィルムを膜厚150μmとなるように積層した積層体について、粘弾性測定装置(レオメトリックス・サイエンティフィック・エフ・イー(株)製、商品名:ARES)を用いて測定された−50℃〜200℃におけるtanδピーク温度である。なお、測定プレートは、直径8mmの平行プレートを用い、測定条件は、昇温速度5℃/min、測定温度−50℃〜200℃、周波数1Hzとする。
【0073】
本実施形態の液状感光性接着剤は、被着体との密着性、表面タック低減、ダイシング性、硬化後の高温接着性向上の観点から、光照射されたときに重量平均分子量が50000〜1000000である上記(A)成分の重合体が含まれることが好ましい。また、被着体との熱圧着性の観点から、光照射されたときに重量平均分子量が5000〜500000である上記(A)成分の重合体が含まれることが好ましい。なお、上記重量平均分子量とは、島津製作所社製高速液体クロマトグラフィー「C−R4A」(商品名)を用いて、ポリスチレン換算で測定したときの重量平均分子量を意味する。
【0074】
(A)成分の重合体の重量平均分子量は、露光条件(酸素濃度、温度、強度)、光開始剤量やチオール、フェノール性水酸基、アミン又はフェノール系重合禁止剤の添加、アクリレートの種類や熱硬化性樹脂の配合量、接着剤組成物の粘度によって調整することができる。
【0075】
本実施形態で用いる(A)成分としては、例えば、エチレン性不飽和基を有する化合物が挙げられる。エチレン性不飽和基としては、ビニル基、アリル基、プロパギル基、ブテニル基、エチニル基、フェニルエチニル基、マレイミド基、ナジイミド基、(メタ)アクリル基などが挙げられる。反応性の観点から、(A)成分は、上記A1化合物として、単官能(メタ)アクリレートを含むことが好ましい。ここでいう単官能とは、分子内に1つの炭素−炭素二重結合を有することを意味し、それ以外の官能基を有していてもよい。
【0076】
単官能(メタ)アクリレートとしては、5%重量減少温度が100℃以上であるものが好ましく、120℃以上であるものがより好ましく、150℃以上であるものが更により好ましく、180℃以上であるものが最も好ましい。また、液状感光性接着剤の低粘度化、塗布後の表面凹凸抑制やBステージ化後の熱時流動性の観点から、有機化合物を主体とした材料設計が好ましいため、単官能(メタ)アクリレートの5%重量減少温度は500℃以下であることが好ましい。単官能(メタ)アクリレートの5%質量減少温度は、示差熱熱重量同時測定装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー製:TG/DTA6300)を用いて、昇温速度10℃/min、窒素フロー(400ml/min)下で測定したときの5%重量減少温度である。
【0077】
5%重量減少温度が上記の温度範囲にある単官能(メタ)アクリレートを配合することで、露光によってBステージ化した後に残存した未反応単官能(メタ)アクリレートが熱圧着又は熱硬化時に揮発することを抑制できる。
【0078】
上記A1化合物としての単官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、硬化物を強靭化できる点でグリシジル基含有(メタ)アクリレートや4−ヒドロキシフェニルメタクリレートや3,5−ジメチル−4−ヒドロキシベンジルアクリルアミドなどのフェノール性水酸基含有(メタ)アクリレート、2−メタクリロイロキシエチルフタル酸、2−メタクリロイロキシプロピルヘキサヒドロフタル酸、2−メタクリロイロキシメチルヘキサヒドロフタル酸などのカルボキシル基含有(メタ)アクリレートが好ましく、耐熱性を向上できる点でフェノールEO変性(メタ)アクリレート、フェノールPO変性(メタ)アクリレート、ノニルフェノールEO変性(メタ)アクリレート、ノニルフェノールPO変性(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル化フェニルフェノールアクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−メタクリロイロキシエチル2−ヒドロキシプロピルフタレート、フェニルフェノールグリシジルエーテルアクリレートなどの芳香族含有(メタ)アクリレートが好ましく、Bステージ化後の密着性や熱硬化後の接着性を付与できる点で2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、o−フェニルフェノールグリシジルエーテル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイロキシ−2−ヒドロキシプロピルフタレート、2−(メタ)アクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシエチル−フタル酸、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、など下記一般式(A−1)又は(A−2)で示される水酸基含有(メタ)アクリレート、2−(1,2−シクロヘキサカルボキシイミド)エチルアクリレートなど、下記一般式(A−3)又は(A−4)で示されるイミド基含有(メタ)アクリレートが好ましく、液状感光性接着剤を低粘度化できる点でイソボロニル含有(メタ)アクリレート、ジシクロペンタジエニル基含有(メタ)アクリレート、イソボロニル(メタ)アクリレートなどが好ましいものとして挙げられる。
【0079】
【化1】
【0080】
【化2】
【0081】
一般式(A−1)及び(A−2)において、R1は、水素原子又はメチル基を示し、R3は1価の有機基を示し、R2及びR4はそれぞれ2価の有機基を示す。R3は耐熱性の観点から芳香族基を有することが好ましい。R4は耐熱性の観点から芳香族基を有することが好ましい。
【0082】
【化3】
【0083】
【化4】
【0084】
一般式(A−3)及び(A−4)において、R1は、水素原子又はメチル基を示し、R5は2価の有機基を示し、R6、R7、R8、R9はそれぞれ炭素数1〜30の1価の炭化水素基を示し、R6及びR7はそれぞれ互いに結合して環を形成してもよく、R8及びR9はそれぞれ互いに結合して環を形成してもよい。R6及びR7、並びに、R8及びR9が環を形成している場合、例えば、ベンゼン環構造、脂環式構造が挙げられる。ベンゼン環構造及び脂環式構造は、カルボキシル基、フェノール性水酸基、エポキシ基などの熱硬化性基を有していてもよく、またアルキル基などの有機基を有していてもよい。
【0085】
上記一般式(A−3)及び(A−4)で示される化合物は、例えば、単官能酸無水物とエタノールアミンとを反応させて得られるN−ヒドロキシアルキルイミド化合物と、アクリル酸エステル又はアクリル酸エステルとを公知の方法で反応させて合成することができる。この場合、単官能酸無水物として、4−フェニルエチニルフタル酸無水物、無水フタル酸、無水マレイン酸、無水コハク酸、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水化物、2,5−ノルボルナジエン−2,3−ジカルボン酸無水物、マレイン酸無水物、トリメリット酸無水物、シクロヘキサンジカルボン酸無水物、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物、シス−ノルボルネン−エンド−2,3−ジカルボン酸ヘキサヒドロ無水フタル酸無水物、ヘキサヒドロフタル酸無水物、1,2,3,6−テトラヒドロフタル酸無水物、3,4,5,6−テトラヒドロフタル酸無水物、などのジカルボン酸無水物を用いることができる。N−ヒドロキシアルキルイミド化合物としては、例えば、N−ヒドロキシエチルフタルイミド及びN−ヒドロキシエチルコハクイミドなどが挙げられる。
【0086】
上記一般式(A−3)及び(A−4)で示される化合物としては、保存安定性、Bステージ化後の低タック性、Bステージ化後の密着性、熱硬化後の耐熱性、接着性、信頼性の観点から、下記一般式(A−5)〜(A−9)で示される化合物が好ましいものとして用いることができ、低粘度の観点から、下記一般式(A−5)、(A−7)〜(A−9)で示される化合物がより好ましいものとして用いることができる。
【0087】
【化5】
上記式(A−5)〜(A−9)中、R1は、水素原子又はメチル基を示す。
【0088】
また、単官能(メタ)アクリレートとしては、Bステージ化後の被着体との密着性、硬化後の接着性、耐熱性の観点から、ウレタン基、イソシアヌル基、イミド基、フェノール性水酸基、水酸基のいずれかを有することが好ましく、特に分子内にイミド基又は水酸基を有する単官能(メタ)アクリレートであることが好ましい。
【0089】
エポキシ基を有する単官能(メタ)アクリレートは、保存安定性、接着性、組立て加熱時及び組立て後のパッケージの低アウトガス性、耐熱・耐湿性の観点から、5%重量減少温度が、フィルム形成時の加熱乾燥による揮発もしくは表面への偏析を抑制できる点で150℃以上であることが好ましく、熱硬化時のアウトガスによるボイド及びはく離や接着性低下を抑制できる点で180℃以上であることが更に好ましく、熱履歴でのボイド及びはく離を抑制できる点で200℃以上であることが更により好ましく、リフロー時に未反応成分が揮発することによるボイド及びはく離を抑制できる点で260℃以上であることが最も好ましい。このようなエポキシ基を有する単官能(メタ)アクリレートとしては分子内に芳香環を有する化合物が好ましい。また、5%重量減少温度が150℃以上の多官能エポキシ樹脂を原料として用いることで上記耐熱性を満足することができる。
【0090】
エポキシ基を有する単官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、グリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル、4−ヒドロキシブチルメタクリレートグリシジルエーテルの他、エポキシ基と反応する官能基及びエチレン性不飽和基を有する化合物と多官能エポキシ樹脂とを反応させて得られる化合物等が挙げられる。上記エポキシ基と反応する官能基としては、特に限定はしないが、イソシアネート基、カルボキシル基、フェノール性水酸基、水酸基、酸無水物、アミノ基、チオール基、アミド基などが挙げられる。これらの化合物は、1種を単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。より具体的には、例えば、トリフェニルホスフィンやテトラブチルアンモニウムブロミドの存在下、1分子中に少なくとも2つ以上のエポキシ基を有する多官能エポキシ樹脂と、エポキシ基1当量に対し0.1〜0.9当量の(メタ)アクリル酸とを反応させることによって得られる。また、ジブチルスズジラウレートの存在下、多官能イソシアネート化合物とヒドロキシ基含有(メタ)アクリレート及びヒドロキシ基含有エポキシ化合物とを反応させ、又は多官能エポキシ樹脂とイソシアネート基含有(メタ)アクリレートとを反応させることにより、グリシジル基含有ウレタン(メタ)アクリレート等が得られる。
【0091】
更に、エポキシ基を有する単官能(メタ)アクリレートとしては、不純物イオンであるアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、ハロゲンイオン、特には塩素イオンや加水分解性塩素等を1000ppm以下に低減した高純度品を用いることが、エレクトロマイグレーション防止や金属導体回路の腐食防止の観点から好ましい。例えば、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、ハロゲンイオン等を低減した多官能エポキシ樹脂を原料として用いることで上記不純物イオン濃度を満足することができる。全塩素含量はJIS K7243−3に準じて測定できる。
【0092】
上記耐熱性と純度を満たすエポキシ基を有する単官能(メタ)アクリレート成分としては、特に限定はしないが、ビスフェノールA型(又はAD型、S型、F型)のグリシジルエーテル、水添加ビスフェノールA型のグリシジルエーテル、エチレンオキシド付加体ビスフェノールA及び/又はF型のグリシジルエーテル、プロピレンオキシド付加体ビスフェノールA及び/又はF型のグリシジルエーテル、フェノールノボラック樹脂のグリシジルエーテル、クレゾールノボラック樹脂のグリシジルエーテル、ビスフェノールAノボラック樹脂のグリシジルエーテル、ナフタレン樹脂のグリシジルエーテル、3官能型(又は4官能型)のグリシジルエーテル、ジシクロペンタジエンフェノール樹脂のグリシジルエーテル、ダイマー酸のグリシジルエステル、3官能型(又は4官能型)のグリシジルアミン、ナフタレン樹脂のグリシジルアミン等を原料としたものが挙げられる。
【0093】
特に、熱圧着性、低応力性及び接着性を改善するためには、エポキシ基の数が3つ以下であることが好ましい。このような化合物としては特に限定はしないが、下記一般式(A−10)、(A−11)、(A−12)、(A−13)又は(A−14)で表される化合物等が好ましく用いられる。下記一般式(A−10)〜(A−14)において、R12及びR16は水素原子又はメチル基を示し、R10、R11、R13及びR14は2価の有機基を示す。また、R15は、エポキシ基を有する有機基であり、R17及びR18はそれぞれ、1つがエチレン性不飽和基を有する有機基であり、残りがエポキシ基を有する有機基である。更に、(A−13)中のfは、0〜3の整数を示す。
【0094】
【化6】
【0095】
【化7】
【0096】
【化8】
【0097】
【化9】
【0098】
【化10】
【0099】
上記の単官能(メタ)アクリレートの含有量は、(A)成分全量に対して20〜100質量%であることが好ましく、40〜100質量%であることがより好ましく、50〜100質量%であることが最も好ましい。単官能(メタ)アクリレートの配合量を上記範囲とすることでBステージ化後の被着体との密着性及び熱圧着性を向上することができる。
【0100】
本実施形態の液状感光性接着剤において、25℃で液状であり且つ分子内に1つの炭素−炭素二重結合を有する化合物は、1種を単独で又は2種類以上を組み合わせて配合することができる。
【0101】
上記A1化合物は、上記(B)成分及び(C)成分などの他の成分の溶解性の観点から、25℃での粘度が5000mPa・s以下であることが好ましく、更に薄膜化の観点から、3000mPa・s以下であることがより好ましく、2000mPa・s以下であることが更により好ましく、更に固形や高粘度の熱硬化樹脂を多く配合して接着性を向上させる観点から、1000mPa・s以下であることが最も好ましい。ここでの粘度とは、A1化合物についての値であり、東京計器製造所製のEHD型回転粘度計を用い、サンプル量0.4mL、3°コーンの条件下、25℃で測定した粘度の値である。
【0102】
A1化合物の上記粘度が5000mPa・sを超えると、接着剤組成物の粘度が上昇して薄膜化が困難となったり、塗布装置などのノズルから吐出させることが困難となる傾向がある。塗布時のピンホール発生を防止することや耐熱性を確保する観点から、A1化合物の25℃での粘度は10mPa・s以上であることが好ましい。
【0103】
また、A1化合物の上記粘度は、接着剤組成物をノズルなどから吐出する際の吐出性向上、薄膜化の観点から、1000mPa・s以下であることが好ましく、アウトガス低減の観点から、5mPa・s以上であることが好ましい。
【0104】
また、上記A1化合物は、5%重量減少温度が100℃以上であることが好ましく、120℃以上であることがより好ましく、150℃以上であることが更により好ましく、180℃以上であることが最も好ましい。ここでの5%質量減少温度とは、A1化合物を示差熱熱重量同時測定装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー製:TG/DTA6300)を用いて、昇温速度10℃/min、窒素フロー(400ml/min)下で測定したときの5%重量減少温度である。
【0105】
また、液状感光性接着剤の低粘度化、塗布後の表面凹凸抑制やBステージ化後の熱時流動性の観点から、有機化合物を主体とした材料設計が好ましいため、上記A1化合物の5%重量減少温度は500℃以下であることが好ましい。
【0106】
更に、A1化合物は、Bステージ化後の低温熱圧着性、熱時流動性の観点から、A1化合物を重合して得られた重合体のTgが100℃以下となるものが好ましく、Bステージ化後のピックアップ性の観点から、Tgが20℃以上となるものが好ましい。A1化合物の重合体のTgは、A1成分に光開始剤であるI−379EG(チバ・ジャパン社製)をA1成分に対し3質量%となる割合で溶解させた組成物を、PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム上に膜厚30μmとなるように塗布し、この塗膜に、高精度平行露光機(オーク製作所製、商品名:EXM−1172−B−∞)を用いて1000mJ/cm2で露光して得られたフィルムを膜厚150μmとなるように積層した積層体について、粘弾性測定装置(レオメトリックス・サイエンティフィック・エフ・イー(株)製、商品名:ARES)を用いて測定された−50℃〜200℃におけるtanδピーク温度である。なお、測定プレートは、直径8mmの平行プレートを用い、測定条件は、昇温速度5℃/min、測定温度−50℃〜200℃、周波数1Hzとする。
【0107】
本実施形態の液状感光性接着剤は、(A)放射線重合性化合物として、上記A1化合物以外に、2官能以上の(メタ)アクリレートを含有していてもよい。ここでいう2官能以上とは、分子内に2つ以上の炭素−炭素二重結合を有することを意味する。このようなアクリレートとしては、特に制限はしないが、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパンジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、スチレン、ジビニルベンゼン、4−ビニルトルエン、4−ビニルピリジン、N−ビニルピロリドン、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、1,3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロパン、1,2−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロパン、メチレンビスアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、トリス(β−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートのトリアクリレート、下記一般式(A−15)で表される化合物、ウレタンアクリレート若しくはウレタンメタクリレート、及び尿素アクリレート等が挙げられる。
【0108】
【化11】
上記一般式(A−15)中、R19及びR20は各々独立に、水素原子又はメチル基を示し、g及びhは各々独立に、1〜20の整数を示す。
【0109】
また、上記式(A−12)におけるR15が、エチレン性不飽和基を有する有機基である化合物、上記式(A−13)におけるR17のうちの2つ以上がエチレン性不飽和基を有する有機基であり、残りがエポキシ基を有する有機基である化合物、及び、上記式(A−14)におけるR18のうちの2つ以上がエチレン性不飽和基を有する有機基であり、残りがエポキシ基を有する有機基である化合物が挙げられる。
【0110】
また、本実施形態の液状感光性接着剤には、露光後のタック低減や接着性向上を目的に、下記構造式で示される単官能マレイミド化合物を含有させることができる。
【0111】
【化12】
【0112】
(A)成分の含有量は、接着剤全量に対して10〜95質量%であることが好ましく、20〜90質量%であることがより好ましく、40〜90質量%であることが最も好ましい。(A)成分の含有量が10質量%未満であると、露光後の表面タック力が大きくなる傾向があり、95質量%を超えると熱硬化後の接着強度が低下する傾向があるため好ましくない。
【0113】
上記(B)光重合開始剤としては、光照射によってラジカル、酸又は塩基などを生成する化合物を用いることができる。中でもマイグレーションなどの耐腐食性の観点から、光照射によりラジカル及び/又は塩基を生成する化合物を用いることが好ましく、特に、露光後の加熱処理が不要となる点や高感度である点でラジカルを生成する化合物が好ましく用いられる。光照射によって酸又は塩基を生成する化合物は、エポキシ樹脂の重合及び/又は反応を促進する機能を発現することができる。
【0114】
光重合開始剤は、波長365nmの光に対する分子吸光係数が、Bステージ化が可能となる点で100ml/g・cm以上であるものが好ましく、露光後のタックをより低減できる点で200ml/g・cm以上であるものがより好ましく、酸素阻害をより低減できる点で400ml/g・cm以上であるものがさらにより好ましく、低露光量、短時間でBステージ化が可能となる点で1000ml/g・cm以上であるものが最も好ましい。なお、Bステージ化に要する時間は60s以内であることが好ましく、より効率的に半導体材料を製造できる点で30s以内であることがより好ましい。上記の分子吸光係数は、サンプルの0.001質量%アセトニトリル溶液を調製し、この溶液について分光光度計(日立ハイテクノロジーズ社製、「U−3310」(商品名))を用いて吸光度を測定することにより求められる。
【0115】
上記(B)成分としては、例えば、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニループロパンー1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチループロピオニル)−ベンジル]−フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン、オキシ−フェニル−アセチックアシッド2−[2−オキソー2−フェニル−アセトキシ−エトキシ]エチルエステル、フェニルグリオキシリックアシッドメチルエステル、2−ジメチルアミノ−2−(4−メチルーベンジル)−1−(4−モルフォリン−4−イルーフェニル)−ブタンー1−オン、2−エチルヘキシル−4−ジメチルアミノベンゾエート、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−メチル−1−(4−(メチルチオ)フェニル)−2−モルフォリノプロパノン−1、2,4−ジエチルチオキサントン、2−エチルアントラキノン、フェナントレンキノン等の芳香族ケトン、ベンジルジメチルケタール等のベンジル誘導体、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジ(m−メトキシフェニル)イミダゾール二量体、2−(o−フルオロフェニル)−4,5−フェニルイミダゾール二量体、2−(o−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(p−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2,4−ジ(p−メトキシフェニル)−5−フェニルイミダゾール二量体、2−(2,4−ジメトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体等の2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体、9−フェニルアクリジン、1,7−ビス(9,9'−アクリジニル)ヘプタン等のアクリジン誘導体、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6,−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド等のビスアシルフォスフィンオキサイドやマレイミドを有する化合物などが挙げられる。これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0116】
上記の光開始剤の中でも、溶剤を含有しない接着剤組成物での溶解性の点で、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、2−メチル−1−(4−(メチルチオ)フェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オンが好ましく用いられる。
【0117】
(B)成分は、露光によって効率的にBステージ化が可能となる点で、分子内にオキシムエステル骨格、又はモルホリン骨格を有する化合物であることが好ましい。このような化合物としては特に限定はしないが、下記一般式(B−1)で表わされるオキシムエステル基を有する化合物及び/又は下記一般式(B−2)、(B−3)若しくは(B−4)で表わされるモルホリン環を有する化合物であることが好ましい。具体的には、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、2−メチル−1−(4−(メチルチオ)フェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オンが好ましく用いられる。
【0118】
【化13】
【0119】
【化14】
【0120】
【化15】
【0121】
【化16】
式中、R51及びR52はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜7のアルキル基、又は芳香族系炭化水素基を含む有機基を示し、R53及びR54及びR55は、炭素数1〜7のアルキル基、又は芳香族系炭化水素基を含む有機基を示し、R56及びR57は、芳香族系炭化水素基を含む有機基を示す。
【0122】
上記芳香族系炭化水素基としては、特に制限はしないが、例えば、フェニル基及びナフチル基、ベンゾイン誘導体、カルバゾール誘導体、チオキサントン誘導体、ベンゾフェノン誘導体などが挙げられる。また、芳香族系炭化水素基は、置換基を有していてもよい。
【0123】
上記(B)成分として特に好ましいものは、オキシムエステル基及び/又はモルホリン環を有する化合物であって、波長365nmの光に対する分子吸光係数が1000ml/g・cm以上、且つ、5%質量減少温度が150℃以上の化合物である。
【0124】
このような(B)成分としては、例えば、下記構造式(B−5)〜(B−9)で表わされる化合物が挙げられる。
【0125】
【化17】
【0126】
本実施形態の液状感光性接着剤がエポキシ樹脂を含む場合、(B)成分は、放射線の照射によりエポキシ樹脂の重合及び/又は反応を促進する機能を発現する光開始剤を含有していてもよい。このような光開始剤としては、例えば、放射線照射によって塩基を発生する光塩基発生剤、放射線照射によって酸を発生する光酸発生剤などが挙げられ、光塩基発生剤が特に好ましい。
【0127】
光塩基発生剤を用いることにより、接着剤の被着体への高温接着性及び耐湿性を更に向上させることができる。この理由としては、光塩基発生剤から生成した塩基がエポキシ樹脂の硬化触媒として効率よく作用することにより、架橋密度をより一層高めることができるため、また生成した硬化触媒が基板などを腐食することが少ないためと考えられる。また、接着剤に光塩基発生剤を含有させることにより、架橋密度を向上させることができ、高温放置時のアウトガスをより低減させることができる。さらに、硬化プロセス温度を低温化、短時間化させることができる。
【0128】
光塩基発生剤は、放射線照射時に塩基を発生する化合物であればよい。発生する塩基としては、反応性、硬化速度の点から強塩基性化合物が好ましい。より具体的には、光塩基発生剤によって発生する塩基の水溶液中でのpKa値は、7以上であることが好ましく、8以上であることがより好ましい。pKaは、一般的に、塩基性の指標として酸解離定数の対数である。
【0129】
放射線照射時に発生する塩基としては、例えば、イミダゾール、2,4−ジメチルイミダゾール、1−メチルイミダゾール等のイミダゾール誘導体、ピペラジン、2,5−ジメチルピペラジン等のピペラジン誘導体、ピペリジン、1,2−ジメチルピペリジン等のピペリジン誘導体、プロリン誘導体、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン等のトリアルキルアミン誘導体、4−メチルアミノピリジン、4−ジメチルアミノピリジン等の4位にアミノ基またはアルキルアミノ基が置換したピリジン誘導体、ピロリジン、n−メチルピロリジン等のピロリジン誘導体、ジヒドロピリジン誘導体、トリエチレンジアミン、1,8−ジアザビスシクロ(5,4,0)ウンデセン−1(DBU)等の脂環式アミン誘導体、ベンジルメチルアミン、ベンジルジメチルアミン、ベンジルジエチルアミン等のベンジルアミン誘導体等が挙げられる。
【0130】
上記のような塩基を放射線照射によって発生する光塩基発生剤としては、例えば、Journal of Photopolymer Science and Technology 12巻、313〜314項(1999年)やChemistry of Materials 11巻、170〜176項(1999年)等に記載されている4級アンモニウム塩誘導体を用いることができる。これらは、活性光線の照射により高塩基性のトリアルキルアミンを生成するため、エポキシ樹脂の硬化には最適である。
【0131】
光塩基発生剤としては、Journal of American ChemicalSociety 118巻 12925頁(1996年)やPolymer Journal 28巻 795頁(1996年)等に記載されているカルバミン酸誘導体も用いることができる。
【0132】
放射線照射により塩基を発生する光塩基発生剤としては、2,4−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)―,2−(O−ベンゾイルオキシム)]やエタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(O−アセチルオキシム)などのオキシム誘導体や光ラジカル発生剤として市販されている2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、2−メチル−1−(4−(メチルチオ)フェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、ヘキサアリールビスイミダゾール誘導体(ハロゲン、アルコキシ基、ニトロ基、シアノ基等の置換基がフェニル基に置換されていてもよい)、ベンゾイソオキサゾロン誘導体等を用いることができる。
【0133】
光塩基発生剤としては、高分子の主鎖及び/又は側鎖に塩基を発生する基を導入した化合物を用いてもよい。この場合の分子量としては、接着剤としての接着性、流動性及び耐熱性の観点から、重量平均分子量1000〜100000が好ましく、5000〜30000であることがより好ましい。
【0134】
上記の光塩基発生剤は、露光しない状態ではエポキシ樹脂と反応性を示さないため、室温での貯蔵安定性が非常に優れる。
【0135】
(B)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対して0.1〜20質量部であることが好ましく、Bステージ化のタクトやBステージ化後のタックの観点から、0.5〜10質量部であることがより好ましい。この含有量が20質量部を超えると、アウトガスが多くなり接着性が低下したり、保存安定性が低下する傾向がある。一方、上記含有量が0.1質量部未満であると、Bステージ化が困難となる傾向がある。
【0136】
本実施形態の液状感光性接着剤においては、必要に応じて増感剤を併用することができる。この増感剤としては、例えば、カンファーキノン、ベンジル、ジアセチル、ベンジルジメチルケタール、ベンジルジエチルケタール、ベンジルジ(2−メトキシエチル)ケタール、4,4’−ジメチルベンジル−ジメチルケタール、アントラキノン、1−クロロアントラキノン、2−クロロアントラキノン、1,2−ベンズアントラキノン、1−ヒドロキシアントラキノン、1−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、1−ブロモアントラキノン、チオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−ニトロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン、2−クロロ−7−トリフルオロメチルチオキサントン、チオキサントン−10,10−ジオキシド、チオキサントン−10−オキサイド、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、イソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾフェノン、ビス(4−ジメチルアミノフェニル)ケトン、4,4’−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、アジド基を含む化合物などが挙げられる。これらは単独で又は2種類以上併用して使用することができる。
【0137】
上記(C)熱硬化性樹脂としては、熱により架橋反応を起こす反応性化合物からなる成分であれば特に限定されることはなく、例えば、エポキシ樹脂、シアネートエステル樹脂、マレイミド樹脂、アリルナジイミド樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、アクリル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、シリコーン樹脂、レゾルシノールホルムアルデヒド樹脂、キシレン樹脂、フラン樹脂、ポリウレタン樹脂、ケトン樹脂、トリアリルシアヌレート樹脂、ポリイソシアネート樹脂、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌラートを含有する樹脂、トリアリルトリメリタートを含有する樹脂、シクロペンタジエンから合成された熱硬化性樹脂、芳香族ジシアナミドの三量化による熱硬化性樹脂等が挙げられる。中でも、高温での優れた接着力を持たせることができる点で、エポキシ樹脂、マレイミド樹脂、及びアリルナジイミド樹脂が好ましい。なお、熱硬化性樹脂は、単独で又は二種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0138】
エポキシ樹脂としては、分子内に少なくとも2個以上のエポキシ基を含むものが好ましく、熱圧着性や硬化性、硬化物特性の点から、フェノールのグリシジルエーテル型のエポキシ樹脂がより好ましい。このような樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型(又はAD型、S型、F型)のグリシジルエーテル、水添加ビスフェノールA型のグリシジルエーテル、エチレンオキシド付加体ビスフェノールA型のグリシジルエーテル、プロピレンオキシド付加体ビスフェノールA型のグリシジルエーテル、フェノールノボラック樹脂のグリシジルエーテル、クレゾールノボラック樹脂のグリシジルエーテル、ビスフェノールAノボラック樹脂のグリシジルエーテル、ナフタレン樹脂のグリシジルエーテル、3官能型(又は4官能型)のグリシジルエーテル、ジシクロペンタジエンフェノール樹脂のグリシジルエーテル、ダイマー酸のグリシジルエステル、3官能型(又は4官能型)のグリシジルアミン、ナフタレン樹脂のグリシジルアミン等が挙げられる。これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0139】
また、エポキシ樹脂としては、不純物イオンである、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、ハロゲンイオン、特に塩素イオンや加水分解性塩素等を300ppm以下に低減した高純度品を用いることが、エレクトロマイグレーション防止や金属導体回路の腐食防止の観点から好ましい。
【0140】
マレイミド樹脂としては、例えば、下記一般式(I)で表されるビスマレイミド樹脂、下記一般式(II)で表されるノボラック型マレイミド樹脂などが挙げられる。
【0141】
【化18】
[式(I)中、R5は芳香族環及び/又は直鎖、分岐若しくは環状脂肪族炭化水素を含む2価の有機基を示す。]
【0142】
R5は、下記化学式で表される2価の有機基が挙げられる。各式中、nは1〜10の整数である。
【0143】
【化19】
【0144】
【化20】
【0145】
【化21】
[式(II)中、nは0〜20の整数を示す。]
【0146】
中でも、接着剤層の硬化後の耐熱性及び高温接着力を付与できる点で、下記構造式(III)で示されるビスマレイミド樹脂、及び/又は上記一般式(II)で表されるノボラック型マレイミド樹脂が好ましく用いられる。
【0147】
【化22】
【0148】
上記のマレイミド樹脂の硬化のために、アリル化ビスフェノールA、シアネートエステル化合物などを併用、又は過酸化物などの触媒を添加することもできる。上記化合物及び触媒の添加量、及び添加の有無については、目的とする特性を確保できる範囲で適宜調整される。
【0149】
アリルナジイミド樹脂としては、分子内にアリルナイミド基を2個以上含む化合物を用いることができ、例えば、下記一般式(IV)で表されるビスアリルナジイミド樹脂が挙げられる。
【0150】
【化23】
[式(IV)中、R1は芳香族環及び/又は直鎖、分岐若しくは環状脂肪族炭化水素を含む2価の有機基を示す。]
【0151】
R1は、下記化学式で表される2価の有機基が挙げられる。各式中、nは1〜10の整数である。
【0152】
【化24】
【0153】
【化25】
【0154】
中でも、下記構造式(V)で示される液状のヘキサメチレン型ビスアリルナジイミド、及び、下記構造式(VI)で示される低融点(融点:40℃)固体状のキシリレン型ビスアリルナジイミドが、良好な熱時流動性を付与できる点で好ましい。また、固体状のキシリレン型ビスアリルナジイミドは、良好な熱時流動性に加えて、Bステージ化後の粘着性の上昇を抑制でき、取り扱い性、及びピックアップ時のダイシングテープとの易はく離性、ダイシング後の切断面の再融着の抑制の点で、より好ましい。
【0155】
【化26】
【0156】
上記のビスアリルナジイミドは単独で、又は二種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0157】
なお、上記のアリルナジイミド樹脂は、無触媒下での単独硬化では、250℃以上の硬化温度が必要で、実用化に際しては大きな障害となっており、また、触媒を用いる系においても、強酸やオニウム塩など、電子材料においては重大な欠点となる金属腐食性の触媒しか使用できず、かつ最終硬化には250℃前後の温度が必要であるが、上記のアリルナジイミド樹脂と2官能以上のアクリレート化合物、又はメタクリレート化合物、又はマレイミド樹脂のいずれかを併用することによって、200℃以下の低温で硬化が可能である(文献:A.Renner,A.Kramer,“Allylnadic−Imides:A New Class of Heat−Resistant Thermosets”,J.Polym.Sci.,Part A Polym.Chem.,27,1301(1989))。
【0158】
(C)熱硬化性樹脂は、室温で液状、固形を問わず使用することができる。液状熱硬化性樹脂の場合は、より低粘度化が可能となり、固形熱硬化性樹脂の場合は、光照射後のタックをより低減することができる。また、液状熱硬化性樹脂と固形熱硬化性樹脂を併用してもよい。
【0159】
液状の熱硬化性樹脂を用いる場合、その粘度は10000mPa・s以下であることが好ましく、5000mPa・s以下であることがより好ましく、3000mPa・s以下であることが更により好ましく、2000mPa・s以下であることが最も好ましい。粘度が10000mPa・sを超えると接着剤の粘度が上昇し、薄膜化が困難となる傾向がある。このような液状の熱硬化性樹脂としては、特に限定はしないが、接着性、耐熱性の観点からエポキシ樹脂が好ましく、特に3官能型(又は4官能型)のグリシジルアミンやビスフェノールA型(又はAD型、S型、F型)のグリシジルエーテルが好ましく用いられる。
【0160】
固形の熱硬化性樹脂を用いる場合、例えば、(A)成分に溶解させて用いることができる。固形熱硬化性樹脂としては、特に限定はしないが、熱圧着性と粘度の観点から、分子量が2000以下、好ましくは1000以下であることが好ましく、また軟化点が100℃以下、好ましくは80℃以下であることが好ましい。また、接着性、耐熱性の観点から3官能以上のエポキシ樹脂が好ましい。このようなエポキシ樹脂としては、例えば、下記構造のエポキシ樹脂が好ましく用いられる。
【0161】
【化27】
【0162】
【化28】
nは、0〜10の整数を示す。
【0163】
また、(C)熱硬化性樹脂は、5%重量減少温度が150℃以上であるものが好ましく、180℃以上であるものがより好ましく、200℃以上であるものが更により好ましい。ここで、熱硬化性樹脂の5%質量減少温度とは、熱硬化性樹脂を示差熱熱重量同時測定装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー製:TG/DTA6300)を用いて、昇温速度10℃/min、窒素フロー(400ml/min)下で測定したときの5%重量減少温度である。5%重量減少温度が高い熱硬化性樹脂を適用することで、熱圧着又は熱硬化時に揮発することを抑制できる。このような耐熱性を有する熱硬化性樹脂としては、分子内に芳香族基を有するエポキシ樹脂が挙げられ、接着性、耐熱性の観点から特に3官能型(又は4官能型)のグリシジルアミン、ビスフェノールA型(又はAD型、S型、F型)のグリシジルエーテルが好ましく用いられる。
【0164】
(C)熱硬化性樹脂の含有量は、(A)成分100質量部に対して1〜100質量部であることが好ましく、2〜50質量部であることがより好ましい。この含有量が100質量部を超えると、露光後のタックが上昇する傾向がある。一方、上記含有量が2質量部未満であると、十分な高温接着性が得られなくなる傾向がある。
【0165】
本実施形態の液状感光性接着剤においては、硬化促進剤を更に含有することが好ましい。硬化促進剤としては、加熱によってエポキシ樹脂の硬化/重合を促進する化合物あれば特に制限はなく、例えば、フェノール系化合物、脂肪族アミン、脂環族アミン、芳香族ポリアミン、ポリアミド、脂肪族酸無水物、脂環族酸無水物、芳香族酸無水物、ジシアンジアミド、有機酸ジヒドラジド、三フッ化ホウ素アミン錯体、イミダゾール類、ジシアンジアミド誘導体、ジカルボン酸ジヒドラジド、トリフェニルホスフィン、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、2−エチル−4−メチルイミダゾール−テトラフェニルボレート、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7−テトラフェニルボレート、第3級アミン等が挙げられる。これらの中でも溶剤を含有しないときの溶解性、分散性の観点からイミダゾール類が好ましく用いられる。硬化促進剤の含有量は、エポキシ樹脂100質量部に対して0.01〜50質量部が好ましい。また、接着性、耐熱性、保存安定性の観点からもイミダゾール類が特に好ましい。
【0166】
イミダゾール類としては、反応開始温度が50℃以上であることが好ましく、80℃以上であることがより好ましい。反応開始温度が50℃以下であると保存安定性が低下するため、接着剤の粘度が上昇し膜厚の制御が困難となるため好ましくない。
【0167】
イミダゾール類としては、エポキシ樹脂に溶解するイミダゾールを用いることが好ましい。このようなイミダゾールを用いることで凹凸が少ない塗布膜を得ることができる。このようなイミダゾール類としては、特に限定はしないが、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾールなどが挙げられる。保存安定性、接着性、耐熱性の観点から、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾールが特に好ましく用いられる。
【0168】
また、イミダゾール類としては、好ましくは平均粒径10μm以下、より好ましくは8μm以下、最も好ましくは5μm以下に粉砕した化合物を使用することができる。このような粒径のイミダゾール類を用いることで接着剤の粘度変化を抑制することができ、またイミダゾール類の沈降を抑制することができる。また、薄膜形成した際には、表面の凹凸を低減することができ、これにより均一な膜を得ることができる。更に、硬化時には樹脂中の硬化を均一に進行させることができるため、アウトガスを低減することができる。
【0169】
また、本実施形態の液状感光性接着剤は、硬化剤としてフェノール系化合物を含有していてもよい。フェノール系化合物としては分子中に少なくとも2個以上のフェノール性水酸基を有するフェノール系化合物がより好ましい。このような化合物としては、例えばフェノールノボラック、クレゾールノボラック、t−ブチルフェノールノボラック、ジシクロペンタジエンクレゾールノボラック、ジシクロペンタジエンフェノールノボラック、キシリレン変性フェノールノボラック、ナフトール系化合物、トリスフェノール系化合物、テトラキスフェノールノボラック、ビスフェノールAノボラック、ポリ−p−ビニルフェノール、フェノールアラルキル樹脂等が挙げられる。これらの中でも、数平均分子量が400〜4000の範囲内のものが好ましい。これにより、半導体装置組立加熱時に、半導体素子又は装置等の汚染の原因となる加熱時のアウトガスを抑制できる。上記フェノール系化合物は液状であることが好ましく、アリル変性フェノールノボラックが、液状かつ高耐熱であるために好適に用いられる。
【0170】
フェノール系化合物の含有量は、熱硬化性樹脂100質量部に対して50〜100質量部であることが好ましく、60〜95質量部であることがより好ましい。
【0171】
本実施形態の液状感光性接着剤は、(D)熱ラジカル発生剤を更に含有することができる。熱ラジカル発生剤としては、有機過酸化物であることが好ましい。有機過酸化物としては、1分間半減期温度が80℃以上であるものが好ましく、100℃以上であるものがより好ましく、120℃以上であることが最も好ましい。有機過酸化物は、接着剤組成物の調製条件、製膜温度、圧着、硬化条件、その他プロセス条件、貯蔵安定性等を考慮して選択される。使用可能な過酸化物としては、特に限定はしないが、例えば、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシへキサン)、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサネート、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサネート、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネートなどが挙げられ、これらのうちの1種を単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。上記の有機過酸化物を含有させることで、露光後に残存している未反応の放射線重合性化合物を反応させることができ、低アウトガス化、高接着化を図ることができる。
【0172】
1分間半減期温度が80℃以上である熱ラジカル発生剤としては、例えば、パーヘキサ25B(日油社製)、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシへキサン)(1分間半減期温度:180℃)、パークミルD(日油社製)、ジクミルパーオキサイド(1分間半減期温度:175℃)などが挙げられる。
【0173】
(D)熱ラジカル発生剤の含有量は、(A)放射線重合性化合物全量に対して、0.01〜20質量%が好ましく、0.1〜10質量%が更に好ましく、0.5〜5質量%が最も好ましい。熱ラジカル発生剤の含有量が0.01質量%未満であると、硬化性が低下し、添加効果が小さくなり、5質量%を超えると、アウトガス量増加、保存安定性低下が見られる。
【0174】
本実施形態の液状感光性接着剤は、塗布後の膜厚均一性、Bステージ化後の熱圧着性、熱硬化後の低応力性、被着体との密着性を向上させる点から、(E)熱可塑性樹脂を更に含有してもよい。
【0175】
(E)成分のTgは150℃以下であることが好ましく、120℃以下であることがより好ましく、100℃以下であることがさらにより好ましく、80℃以下であることが最も好ましい。このTgが150℃を超える場合、接着剤の粘度が上昇する傾向がある。また、被着体に熱圧着する際に150℃以上の高温を要し、半導体ウェハに反りが発生しやすくなる傾向がある。
【0176】
ここで、(E)成分の「Tg」とは、(E)成分をフィルム化したときの主分散ピーク温度を意味する。具体的には、(E)成分のフィルムについて、レオメトリックス社製粘弾性アナライザー「RSA−2」(商品名)を用いて、フィルム厚100μm、昇温速度5℃/min、周波数1Hz、測定温度−150〜300℃の条件で測定し、Tg付近のtanδピーク温度をTgとして求める。
【0177】
(E)成分の重量平均分子量は、5000〜500000の範囲内で制御されていることが好ましい。更に、(E)成分の重量平均分子量は、熱圧着性と高温接着性とを高度に両立できる点で、10000〜300000であることがより好ましい。ここで、「重量平均分子量」とは、島津製作所社製高速液体クロマトグラフィー「C−R4A」(商品名)を用いて、ポリスチレン換算で測定したときの重量平均分子量を意味する。
【0178】
(E)成分としては、例えば、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリウレタンイミド樹脂、ポリウレタンアミドイミド樹脂、シロキサンポリイミド樹脂、ポリエステルイミド樹脂、これらの共重合体、これらの前駆体(ポリアミド酸等)の他、ポリベンゾオキサゾール樹脂、フェノキシ樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、重量平均分子量が1万〜100万の(メタ)アクリル共重合体、ノボラック樹脂、フェノール樹脂などが挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。また、これらの樹脂の主鎖及び/又は側鎖に、エチレングリコール、プロピレングリコールなどのグリコール基、カルボキシル基及び/又は水酸基が付与されたものであってもよい。
【0179】
これらの中でも、高温接着性、耐熱性の観点から、(E)成分はイミド基を有する樹脂であることが好ましい。イミド基を有する樹脂としては、例えば、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリウレタンイミド樹脂、ポリウレタンアミドイミド樹脂、シロキサンポリイミド樹脂、ポリエステルイミド樹脂、これらの共重合体、イミド基を有するモノマーの重合体が挙げられる。
【0180】
ポリイミド樹脂及び/又はポリアミドイミド樹脂は、例えば、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとを公知の方法で縮合反応させて得ることができる。すなわち、有機溶媒中で、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとを等モルで、又は、必要に応じてテトラカルボン酸二無水物の合計1.0molに対して、ジアミンの合計を好ましくは0.5〜2.0mol、より好ましくは0.8〜1.0molの範囲で組成比を調整(各成分の添加順序は任意)し、反応温度80℃以下、好ましくは0〜60℃で付加反応させる。反応が進行するにつれ反応液の粘度が徐々に上昇し、ポリイミド樹脂の前駆体であるポリアミド酸が生成する。なお、樹脂組成物の諸特性の低下を抑えるため、上記のテトラカルボン酸二無水物は無水酢酸で再結晶精製処理したものであることが好ましい。
【0181】
上記縮合反応におけるテトラカルボン酸二無水物とジアミンとの組成比については、テトラカルボン酸二無水物の合計1.0molに対して、ジアミンの合計が2.0molを超えると、得られるポリイミド樹脂に、アミン末端のポリイミドオリゴマーの量が多くなる傾向があり、ポリイミド樹脂の重量平均分子量が低くなり、樹脂組成物の耐熱性を含む種々の特性が十分でなくなる傾向がある。一方、テトラカルボン酸二無水物の合計1.0molに対してジアミンの合計が0.5mol未満であると、酸末端のポリイミド樹脂オリゴマーの量が多くなる傾向があり、ポリイミド樹脂及び/又はポリアミドイミド樹脂の重量平均分子量が低くなり、樹脂組成物の耐熱性を含む種々の特性が十分でなくなる傾向がある。
【0182】
ポリイミド樹脂及び/又はポリアミドイミド樹脂は、上記反応物(ポリアミド酸)を脱水閉環させて得ることができる。脱水閉環は、加熱処理する熱閉環法、脱水剤を使用する化学閉環法等で行うことができる。
【0183】
ポリイミド樹脂の原料として用いられるテトラカルボン酸二無水物としては、例えば、ピロメリット酸二無水物、線膨張係数を低下できる点で3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,4,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物などのビフェニル骨格を有する酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物などのナフチル骨格を有する酸二無水物が好ましく用いられる。また、Bステージ化の感度を向上できる点で、3,4,3’,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3,2’,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3,3’,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物などのベンゾフェノン骨格を有する酸二無水物が好ましく用いられる。また、透明性の観点から1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸二無水物、デカヒドロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、4,8−ジメチル−1,2,3,5,6,7−ヘキサヒドロナフタレン−1,2,5,6−テトラカルボン酸二無水物、シクロペンタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、ビス(エキソ−ビシクロ[2,2,1]ヘプタン−2,3−ジカルボン酸二無水物、ビシクロ−[2,2,2]−オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物などの脂環式骨格を有する酸二無水物や2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,2−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェニル)フェニル]ヘキサフルオロプロパン二無水物、1,4−ビス(2−ヒドロキシヘキサフルオロイソプロピル)ベンゼンビス(トリメリット酸無水物)、1,3−ビス(2−ヒドロキシヘキサフルオロイソプロピル)ベンゼンビス(トリメリット酸無水物)などのフルオロアルキル基を有する酸二無水物が好ましく用いられる。
【0184】
また、365nmに対する透明性の観点から下記一般式(1)で表されるテトラカルボン酸二無水物等が好ましく用いられる。下記一般式(1)中、aは2〜20の整数を示す。
【0185】
【化29】
【0186】
上記一般式(1)で表されるテトラカルボン酸二無水物は、例えば、無水トリメリット酸モノクロライド及び対応するジオールから合成することができ、具体的には1,2−(エチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,3−(トリメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,4−(テトラメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,5−(ペンタメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,6−(ヘキサメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,7−(ヘプタメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,8−(オクタメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,9−(ノナメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,10−(デカメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,12−(ドデカメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,16−(ヘキサデカメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,18−(オクタデカメチレン)ビス(トリメリテート無水物)等が挙げられる。これらの化合物は耐熱性を損なうことなくTgを低下させることができる。
【0187】
また、テトラカルボン酸二無水物としては、(A)成分への良好な溶解性、365nm光に対する透明性、熱圧着性を付与する観点から、下記一般式(2)又は(3)で表されるテトラカルボン酸二無水物が好ましい。
【0188】
【化30】
【0189】
以上のようなテトラカルボン酸二無水物は、1種を単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0190】
(E)成分は、さらに、接着強度を上昇させる点でカルボキシル基及び/又はフェノール性水酸基含有ポリイミド樹脂を用いることができる。上記カルボキシル基及び/又は水酸基含有ポリイミド樹脂の原料として用いられるジアミンは、下記一般式(4)、(5)、(6)又は(7)で表される芳香族ジアミンを含むことが好ましい。
【0191】
【化31】
【0192】
上記ポリイミド樹脂の原料として用いられるその他のジアミンとしては特に限定されないが、ポリマのTg及び溶解性を調整するために以下のジアミンを用いることができる。例えば、耐熱性及び接着性を向上できる点で、o−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、ビス(4−アミノ−3,5−ジメチルフェニル)メタン、ビス(4−アミノ−3,5−ジイソプロピルフェニル)メタン、2,2−ビス(3−アミノフェニル)プロパン、2,2’−(3,4’−ジアミノジフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、3,3’−(1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン))ビスアニリン、3,4’−(1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン))ビスアニリン、4,4’−(1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン))ビスアニリン、2,2−ビス(4−(3−アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノフェノキシフェニル)プロパンが好ましく用いられる。線膨張係数を低下できる点で3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテメタン、3,3’−ジアミノジフェニルスルフォン、3,4’−ジアミノジフェニルスルフォン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフォン、ビス(4−(3−アミノエノキシ)フェニル)スルフォン、ビス(4−(4−アミノエノキシ)フェニル)スルフォン、3,3’−ジヒドロキシ−4,4’−ジアミノビフェニルが好ましく用いられる。金属などの被着体との密着性を向上できる点で、3,3’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、ビス(4−(3−アミノエノキシ)フェニル)スルフィド、ビス(4−(4−アミノエノキシ)フェニル)スルフィド好ましく用いられる。また、Tgを低下させることができるジアミンとして、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、下記一般式(8)で表される脂肪族エーテルジアミン、下記一般式(9)で表されるシロキサンジアミン等が挙げられる。
【0193】
【化32】
一般式(8)中、R1、R2及びR3は各々独立に、炭素数1〜10のアルキレン基を示し、bは2〜80の整数を示す。
【0194】
【化33】
一般式(9)中、R4及びR9は各々独立に、炭素数1〜5のアルキレン基又は置換基を有してもよいフェニレン基を示し、R5、R6、R7及びR8は各々独立に、炭素数1〜5のアルキル基、フェニル基又はフェノキシ基を示し、dは1〜5の整数を示す。
【0195】
上記ジアミンの中でも、他成分との相溶性を付与する点で、一般式(8)で表される脂肪族エーテルジアミンが好ましく、エチレングリコール及び/又はプロピレングリコール系ジアミンがより好ましい。
【0196】
このような脂肪族エーテルジアミンとして具体的には、サンテクノケミカル(株)製ジェファーミンD−230,D−400,D−2000,D−4000,ED−600,ED−900,ED−2000,EDR−148、BASF(製)ポリエーテルアミンD−230,D−400,D−2000等のポリオキシアルキレンジアミン等の脂肪族ジアミンが挙げられる。これらのジアミンは、全ジアミンの20モル%以上であることが好ましく、(A)放射線重合性化合物や(C)熱硬化性樹脂などの他配合成分との相溶性、また熱圧着性と高温接着性とを高度に両立できる点で50モル%以上であることがより好ましい。
【0197】
また、上記ジアミンとしては、室温での密着性、接着性を付与する点で、上記一般式(9)で表されるシロキサンジアミンが好ましい。
【0198】
これらのジアミンは、全ジアミンの0.5〜80モル%とすることが好ましく、熱圧着性と高温接着性とを高度に両立できる点で1〜50モル%とすることが更に好ましい。0.5モル%を下回るとシロキサンジアミンを添加した効果が小さくなり、80モル%を上回ると他成分との相溶性、高温接着性が低下する傾向がある。
【0199】
上述したジアミンは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0200】
また、上記ポリイミド樹脂は、1種を単独で又は必要に応じて2種以上を混合(ブレンド)して用いることができる。
【0201】
また、上述のように、ポリイミド樹脂の組成を決定する際には、そのTgが150℃以下となるように設計することが好ましく、ポリイミド樹脂の原料であるジアミンとして、上記一般式(8)で表される脂肪族エーテルジアミンを用いることが特に好ましい。
【0202】
上記ポリイミド樹脂の合成時に、下記一般式(10)、(11)又は(12)で表される化合物のような単官能酸無水物及び/又は単官能アミンを縮合反応液に投入することにより、ポリマー末端に酸無水物又はジアミン以外の官能基を導入することができる。また、これにより、ポリマーの分子量を低くし、接着剤の粘度を低下させ、熱圧着性を向上させることができる。
【0203】
【化34】
【0204】
(E)熱可塑性樹脂は、その主鎖及び/又は側鎖に、イミダゾールなどのエポキシ樹脂の硬化を促進する機能を有する官能基を有していてもよい。イミダゾール含有のポリイミドは、例えば、上記に示したジアミン成分として、その一部を下記構造式に示されるようなイミダゾール基含有のジアミンを用いて得ることができる。このようなイミダゾールを側鎖に有するポリマーは相溶性や保存安定性を向上できるため好ましい。
【0205】
【化35】
【0206】
【化36】
【0207】
上記ポリイミド樹脂は、均一にBステージ化できる点から、30μmに成形した時の365nmに対する透過率が10%以上であることが好ましく、より低露光量でBステージ化できる点で20%以上であることがより好ましい。このようなポリイミド樹脂は、例えば、上記一般式(2)で表される酸無水物と、上記一般式(8)で表される脂肪族エーテルジアミン及び/又は上記一般式(9)で表されるシロキサンジアミンとを反応させることで合成することができる。
【0208】
また、(E)熱可塑性樹脂としては、粘度上昇を抑制し、更に接着剤組成物中のとけ残りを低減する点で、常温(25℃)で液状である液状熱可塑性樹脂を用いることが好ましい。このような熱可塑性樹脂は溶剤を用いることなく、加熱して反応させることが可能となり本発明のような溶剤を適用しない接着剤組成物では溶剤除去の工程削減、残存溶剤の低減、再沈殿工程の削減の点で有用である。また液状熱可塑性樹脂は、反応炉からの取り出しも容易である。このような液状熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリブタジエン、アクリロニトリル・ブタジエンオリゴマー、ポリイソプレン、ポリブテンなどのゴム状ポリマー、ポリオレフィン、アクリルポリマー、シリコーンポリマー、ポリウレタン、ポリイミド、ポリアミドイミドなどが挙げられる。中でもポリイミド樹脂が好ましく用いられる。
【0209】
液状のポリイミド樹脂は、例えば、上記の酸無水物と、脂肪族エーテルジアミンやシロキサンジアミンとを反応させることによって得られる。合成方法としては、溶剤を加えずに、脂肪族エーテルジアミンやシロキサンジアミン中に酸無水物を分散させ、加熱する方法が挙げられる。
【0210】
(E)熱可塑性樹脂の含有量は、(A)成分に対して、0.1〜50質量%が好ましく、成膜性や膜厚均一性、粘度上昇抑制の観点から0.5〜20質量%がより好ましい。熱可塑性樹脂の含有量が0.1質量%未満であると、添加の効果が見られなくなる傾向があり、50質量%を超えると、溶け残りなどによって膜厚均一性が低下したり、粘度が上昇し薄膜化が困難となる傾向がある。
【0211】
本実施形態の液状感光性接着剤には、保存安定性、プロセス適応性又は酸化防止性を付与するために、キノン類、多価フェノール類、フェノール類、ホスファイト類、イオウ類等の重合禁止剤又は酸化防止剤を、硬化性を損なわない範囲で更に添加してもよい。
【0212】
また、本実施形態の液状感光性接着剤には、適宜フィラーを含有させることもできる。フィラーとしては、例えば、銀粉、金粉、銅粉、ニッケル粉等の金属フィラー、アルミナ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、結晶性シリカ、非晶性シリカ、窒化ホウ素、チタニア、ガラス、酸化鉄、セラミック等の無機フィラー、カーボン、ゴム系フィラー等の有機フィラー等が挙げられ、種類・形状等にかかわらず特に制限なく使用することができる。
【0213】
上記フィラーは、所望する機能に応じて使い分けることができる。例えば、金属フィラーは、接着剤に導電性、熱伝導性、チキソ性等を付与する目的で添加され、非金属無機フィラーは、接着剤層に熱伝導性、低熱膨張性、低吸湿性等を付与する目的で添加され、有機フィラーは接着剤層に靭性等を付与する目的で添加される。
【0214】
これら金属フィラー、無機フィラー又は有機フィラーは、1種を単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。中でも、半導体装置用接着材料に求められる、導電性、熱伝導性、低吸湿特性、絶縁性等を付与できる点で、金属フィラー、無機フィラー、又は絶縁性のフィラーが好ましく、無機フィラー又は絶縁性フィラーの中では、接着剤に対する分散性が良好でかつ、熱時の高い接着力を付与できる点でシリカフィラーがより好ましい。
【0215】
上記フィラーは、平均粒子径が10μm以下、且つ、最大粒子径が30μm以下であることが好ましく、平均粒子径が5μm以下、且つ、最大粒子径が20μm以下であることがより好ましい。平均粒子径が10μmを超える、または、最大粒子径が30μmを超えると、破壊靭性向上の効果が十分に得られない傾向がある。また、平均粒子径及び最大粒子径の下限は特に制限はないが、どちらも0.001μm以上であることが好ましい。
【0216】
上記フィラーの含有量は、付与する特性又は機能に応じて決められるが、フィラーを含む接着剤全量に対して50質量%以下となることが好ましく、1〜40質量%がより好ましく、3〜30質量%がさらに好ましい。フィラーを増量させることにより、低アルファ化、低吸湿化、高弾性率化が図れ、ダイシング性(ダイサー刃による切断性)、ワイヤボンディング性(超音波効率)、熱時の接着強度を有効に向上させることができる。フィラーを必要以上に増量させると、粘度が上昇したり、熱圧着性が損なわれる傾向にあるため、フィラーの含有量は上記の範囲内に収めることが好ましい。求められる特性のバランスをとるべく、最適フィラー含有量を決定することができる。フィラーを用いた場合の混合・混練は、通常の撹拌機、らいかい機、三本ロール、ボールミル等の分散機を適宜、組み合わせて行うことができる。
【0217】
本実施形態の液状感光性接着剤には、異種材料間の界面結合を良くするために、各種カップリング剤を添加することもできる。カップリング剤としては、例えば、シラン系、チタン系、アルミニウム系等が挙げられ、中でも効果が高い点で、シラン系カップリング剤が好ましく、エポキシ基などの熱硬化性基やメタクリレート及び/又はアクリレートなどの放射線重合性基を有する化合物がより好ましい。
【0218】
また、上記シラン系カップリング剤の沸点及び/又は分解温度は150℃以上であることが好ましく、180℃以上であることより好ましく、200℃以上であることがさらにより好ましい。特に、200℃以上の沸点及び/又は分解温度で、かつエポキシ基などの熱硬化性基やメタクリレート及び/又はアクリレートなどの放射線重合性基を有するシラン系カップリング剤が最も好ましく用いられる。
【0219】
上記カップリング剤の使用量は、その効果や耐熱性及びコストの面から、接着剤全量100質量部に対して、0.01〜20質量部とすることが好ましい。
【0220】
本実施形態の液状感光性接着剤には、イオン性不純物を吸着して、吸湿時の絶縁信頼性を良くするために、イオン捕捉剤を更に添加することもできる。このようなイオン捕捉剤としては、特に制限はなく、例えば、トリアジンチオール化合物、フェノール系還元剤等の銅がイオン化して溶け出すのを防止するための銅害防止剤として知られる化合物、粉末状のビスマス系、アンチモン系、マグネシウム系、アルミニウム系、ジルコニウム系、カルシウム系、チタン系、ズズ系及びこれらの混合系等の無機化合物が挙げられる。具体例としては、東亜合成(株)製の無機イオン捕捉剤、商品名、IXE−300(アンチモン系)、IXE−500(ビスマス系)、IXE−600(アンチモン、ビスマス混合系)、IXE−700(マグネシウム、アルミニウム混合系)、IXE−800(ジルコニウム系)、IXE−1100(カルシウム系)等がある。これらは単独あるいは2種以上混合して用いることができる。上記イオン捕捉剤の使用量は、添加による効果や耐熱性、コスト等の点から、接着剤全量100質量部に対して、0.01〜10質量部が好ましい。
【実施例】
【0221】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0222】
<液状感光性接着剤の調製>
下記表1に示す割合(質量部)で、まず熱硬化性樹脂と放射線重合性化合物を、オイルバスに設置した4つ口セパラブルフラスコにて、窒素雰囲気下で60℃に加熱しながら攪拌し、溶解させた。次に、得られた溶液に、下記表1に示す割合(質量部)で硬化促進剤と光重合開始剤を加え、さらに攪拌し溶解させた。こうして、調製例1〜3の液状感光性接着剤をそれぞれ得た。
【0223】
<感光性接着剤層の形成>
得られた液状感光性接着剤を、スピンコーター(ミカサ株式会社製、MS−200(商品名))を用いて、5インチΦシリコンウェハの裏面上に塗布した。液状感光性接着剤の様子を目視にて確認したところ、かすれ等無く、均一な20μm厚の感光性接着剤層を設けることができた。
【0224】
<感光性接着剤層のBステージ化>
アクリルボックス内に感光性接着剤層が形成されたシリコンウェハを入れ、平行露光機(ミカサ社(株)製、マスクアライナ ML−210FM(商品名))を用い、酸素濃度0%、3%、5%、10%、及び大気中の条件下でそれぞれ、感光性接着剤層に1000mJ/cm2の露光を行い、感光性接着剤層をBステージ化した。なお、酸素濃度は、アクリルボックス内に設置した酸素濃度計にて確認した。
【0225】
次に、Bステージ化した感光性接着剤層の表面に、Lami.Corplation.Inc社製のHotdog 12DXを用いて、ラミネート温度30℃にてダイシングテープをラミネートした。更に、このダイシングテープ上に、日立化成工業(株)社製の感圧型DCテープSD−3000を30℃でラミネートした。
こうして得られた積層体について、(株)島津製作所製AUTO GRAPH AGS−X 100Nを用いて、試験片幅10mm、試験速度300mm/分の条件でピール強度(ダイシングテープ90°引き剥がしピール強度)を測定することにより、Bステージ化した感光性接着剤層の表面タック力を求めた。結果を表2に示す。
【0226】
【表1】
【0227】
表1中における、それぞれの記号は下記の意味である。
M−140:「アロニックスM−140」、東亞合成(株)、2−(1,2−シクロヘキサカルボキシイミド)エチルアクリレート(イミド基含有単官能アクリレート、5%重量減少温度:200℃、25℃での粘度:450mPa・s)。
AMP−20GY:新中村化学工業社製、フェノキシジエチレングリコールアクリレート(単官能アクリレート、5%重量減少温度:175℃、25℃での粘度:16mPa・s)。
1032H60:JER(株)、ジャパンエポキシレジン株式会社製、α−2,3−エポキシプロポキシフェニル−ω−ヒドロポリ(n=1〜7)[2−(2,3−エポキシプロポキシ)ベンジリデン−2,3−エポキシプロポキシフェニレン](トリス(ヒドロキシフェニル)メタン型固形エポキシ樹脂。
I−651:チバ・ジャパン(株)、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(5%重量減少温度:170℃、i線吸光係数:400ml/gcm)。
I−819:チバ・ジャパン(株)、2−ジメチルアミノ−2−(4−メチルーベンジル)−1−(4−モルフォリン−4−イルーフェニル)−ブタンー1−オン(5%重量減少温度:260℃、i線吸光係数:8000ml/gcm)。
I−379EG:チバ・ジャパン(株)、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モノホニリル)フェニル]−1−ブタノン。
1B2PZ:四国化成工業(株)、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール。
【0228】
【表2】
【0229】
調製例1〜3の液状感光性接着剤から形成した感光性接着剤層はいずれも、酸素濃度10%以下で露光を行うことにより、感光性接着剤層の表面タックを十分低減することができた。
【符号の説明】
【0230】
1…半導体ウェハ、2…半導体チップ、4…粘着テープ(バックグラインドテープ)、5…感光性接着剤層、5a…接着剤層、6…粘着テープ(ダイシングテープ)、7…支持部材、8…グラインド装置、9…露光装置、10…ウェハリング、11…ダイシングブレード、12…ダイボンド装置、14…熱盤、16…ワイヤ、17…封止材、20…容器、22,24…通気管、26…酸素濃度計、100…半導体装置、S1…半導体ウェハの回路面、S2…半導体ウェハの裏面。
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着剤層付き半導体ウェハの製造方法、半導体装置の製造方法及び半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体素子の小型薄型化及び高性能化に加えて、多機能化が進み、複数の半導体素子を積層した半導体装置が急増している。これらの半導体素子間、又は最下段の半導体素子と基板(支持部材)間を接着する材料として、フィルム状のダイボンディング材(以下ダイボンディングフィルムという。)が適用されている。
【0003】
ダイボンディングフィルムを使用する半導体装置の組立工程においては、ダイボンディングフィルムの一方の面にダイシングシートを貼り合せた接着シートを用いて、ウェハ裏面への貼り合せプロセスの簡略化も図られている。
【0004】
最近では、半導体装置の更なる薄型化が進み、接着部材においても更に薄膜化することが求められている。しかし、20μmを下回る厚みのフィルム状のダイボンディング材を製造することは困難であり、仮に得られたとしても、巻き取り等の取扱性が低下する傾向にある。
【0005】
一方で、接着剤成分を溶剤に溶解した液状のダイボンディング材を半導体ウェハの裏面に塗布し、加熱により溶剤を揮発させることによりBステージ化した接着剤層を形成する方法が提案されている(例えば、下記特許文献1及び2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−110099号公報
【特許文献2】特開2010−37456号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記の方法では、Bステージ化のための加熱によってウェハ反りが生じやすい。低温で乾燥すると加熱による不具合はある程度抑制され得るが、その場合は残存溶剤が多くなるために、加熱硬化時にボイドやはく離が発生して、信頼性が低下する傾向がある。また、Bステージ化が不十分であると、ダイシングによって接着剤付き半導体素子を作製するときに、ピックアップ不良を引き起こす可能性がある。
【0008】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、ウェハの反りが十分抑制され、ダイシングによって接着剤付き半導体素子を効率よく得ることができる接着剤層付きウェハを製造する方法、信頼性を十分維持しながら半導体装置の更なる薄型化を図ることが可能な半導体装置の製造方法及び半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、半導体ウェハの一方面上に、(A)放射線重合性化合物、(B)光重合開始剤及び(C)熱硬化性樹脂を含有する液状感光性接着剤を塗布して感光性接着剤層を設ける工程と、感光性接着剤層を酸素濃度が10%以下の雰囲気下で露光してBステージ化することにより接着剤層付き半導体ウェハを得る工程と、を備える接着剤層付き半導体ウェハの製造方法を提供する。
【0010】
本明細書において、酸素濃度とは露光される接着剤層の環境下の容量%を意味する。
【0011】
本発明の接着剤層付き半導体ウェハの製造方法によれば、上記特定の液状感光性接着剤を用いることにより、露光によりBステージ化した接着剤剤層を形成することができ、溶剤乾燥のための加熱を必要としないことからウェハが薄い場合であっても反りを十分抑制することができる。また、本発明の方法では、感光性接着剤層の表面において光重合開始剤が酸素阻害を受けることで表面タック力の低減が不十分になることを防止することができ、取り扱い性及びダイシング後のピックアップ性に十分優れた接着剤層を半導体ウェハ上に形成することができる。
【0012】
接着剤層の表面タック力を更に効率よく低減させる観点から、感光性接着剤層の露光を酸素濃度が5%以下の雰囲気下で行うことが好ましい。この場合、接着剤層付き半導体ウェハの製造時間を更に短時間にすることができる。
【0013】
本発明はまた、半導体ウェハの一方面上に、(A)放射線重合性化合物、(B)光重合開始剤及び(C)熱硬化性樹脂を含有する液状感光性接着剤を塗布して感光性接着剤層を設ける工程と、感光性接着剤層を酸素濃度が10%以下の雰囲気下で露光してBステージ化することにより接着剤層付き半導体ウェハを得る工程と、接着剤層付き半導体ウェハを切断して接着剤層付き半導体素子を得る工程と、接着剤層付き半導体素子と、他の半導体素子又は半導体素子搭載用支持部材とを、接着剤層付き半導体素子の接着剤層を挟んで圧着することにより接着する工程と、を備える半導体装置の製造方法を提供する。
【0014】
本発明の半導体装置の製造方法においては、上記特定の液状感光性接着剤を用いることにより、半導体ウェハが薄い場合であってもウェハの反りを十分抑制しつつ表面タック力が十分低減された接着剤層を備える接着剤層付き半導体ウェハが得られる。また、接着剤層の薄膜化も容易に行うことができる。このような接着剤層付き半導体ウェハを用いることにより、信頼性を十分維持しながら半導体装置の更なる薄型化を図ることが可能となる。
【0015】
本発明はまた、本発明の半導体装置の製造方法によって得られる半導体装置を提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ウェハの反りが十分抑制され、ダイシングによって接着剤付き半導体素子を効率よく得ることができる接着剤層付きウェハを製造する方法、信頼性を十分維持しながら半導体装置の更なる薄型化を図ることが可能な半導体装置の製造方法及び半導体装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】半導体装置の製造方法の一実施形態を示す模式図である。
【図2】半導体装置の製造方法の一実施形態を示す模式図である。
【図3】半導体装置の製造方法の一実施形態を示す模式図である。
【図4】半導体装置の製造方法の一実施形態を示す模式図である。
【図5】半導体装置の製造方法の一実施形態を示す模式図である。
【図6】半導体装置の製造方法の一実施形態を示す模式図である。
【図7】半導体装置の製造方法の一実施形態を示す模式図である。
【図8】半導体装置の製造方法の一実施形態を示す模式図である。
【図9】半導体装置の製造方法の一実施形態を示す模式図である。
【図10】半導体装置の製造方法の一実施形態を示す模式図である。
【図11】半導体装置の製造方法の一実施形態を示す模式図である。
【図12】半導体装置の製造方法の一実施形態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。なお、図面中、同一又は相当する要素には同一符号を付すこととし、重複する説明は適宜省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとし、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0019】
図1〜12は、半導体装置の製造方法の一実施形態を示す模式図である。本実施形態に係る製造方法は、以下の工程を備える。
工程1:半導体ウェハ1内に形成された半導体チップ(半導体素子)2の回路面S1上にはく離可能な粘着テープ(バックグラインドテープ)4を積層する(図1を参照)。
工程2:半導体ウェハ1を回路面S1とは反対側の面(裏面)S2から研磨して半導体ウェハ1を薄くする(図2を参照)。
工程3:半導体ウェハ1の回路面S1とは反対側の面S2に液状感光性接着剤5を塗布する(図3を参照)。
工程4:塗布された液状接着剤からなる感光性接着剤層5側から露光を行い、感光性接着剤層5をBステージ化する(図4を参照)。こうして、接着剤層5aを有する接着剤層付き半導体ウェハが得られる。
工程5:接着剤層5a上にはく離可能な粘着テープ(ダイシングテープ)6を積層する(図5を参照)。
工程6:はく離可能な粘着テープ4をはく離する(図6を参照)。
工程7:半導体ウェハ1をダイシングにより複数の半導体チップ(半導体素子)2に切り分ける(図7を参照)。
工程8:半導体チップ2をピックアップして半導体装置用の支持部材(半導体素子搭載用支持部材)7または半導体チップに圧着(マウント)する(図8、9、10を参照)。
工程9:マウントされた半導体チップを、ワイヤ16を介して支持部材7上の外部接続端子と接続する(図11を参照)。
工程10:複数の半導体チップ2を含む積層体を封止材17によって封止して、半導体装置100を得る(図12を参照)。
【0020】
以下、(工程1)〜(工程10)について詳述する。
【0021】
(工程1)
表面に回路を形成した半導体ウェハ1の回路面S1側にはく離可能な粘着テープ4を積層する。粘着テープ4の積層は、予めフィルム状に成形されたフィルムをラミネートする方法により行なうことができる。
【0022】
(工程2)
半導体ウェハ1の粘着テープ4とは反対側の面S2を研磨して、半導体ウェハ1を所定の厚さまで薄くする。研磨は、粘着テープ4によって半導体ウェハ1を研磨用の治具に固定した状態で、グラインド装置8を用いて行う。
【0023】
(工程3)
研磨の後、半導体ウェハ1の回路面S1とは反対側の面S2に液状感光性接着剤5を塗布する。塗布は、ボックス20内で、粘着テープ4が貼り付けられた半導体ウェハ1を治具21に固定した状態で行うことができる。塗布方法は、印刷法、スピンコート法、スプレーコート法、ジェットディスペンス法及びインクジェット法などから選ばれる。これらの中でも、薄膜化及び膜厚均一性の観点から、スピンコート法やスプレーコート法が好ましい。スピンコート装置が有する吸着台には穴が形成されていてもよいし、吸着台がメッシュ状であってもよい。吸着痕が残りにくい点から、吸着台はメッシュ状であることが好ましい。スピンコート法による塗布は、ウェハのうねり、及びエッジ部の盛り上がりを防止するために、500〜5000rpmの回転数で行うことが好ましい。同様の観点から、回転数は1000〜4000rpmがさらに好ましい。液状感光性接着剤の粘度を調整する目的でスピンコート台に温度調節器を備えることもできる。
【0024】
液状感光性接着剤はシリンジなどで保存することができ、スピンコート装置のシリンジセット部分に温度調節器が備えられていてもよい。
【0025】
半導体ウェハに液状感光性接着剤を例えばスピンコート法によって塗布する際、半導体ウェハのエッジ部分に不要な液状感光性接着剤が付着する場合がある。このような不要な接着剤をスピンコート後に溶剤などで洗浄して除去することができる。洗浄方法は特に限定されないが、半導体ウェハをスピンさせながら、不要な接着剤が付着した部分にノズルから溶剤を吐出させる方法が好ましい。洗浄に使用する溶剤は接着剤を溶解させるものであればよく、例えば、メチルエチルケトン、アセトン、イソプロピルアルコール及びメタノールから選ばれる低沸点溶剤が用いられる。
【0026】
塗布される液状感光性接着剤の25℃における粘度は、接着剤層の薄膜化の観点から好ましくは10〜30000mPa・s、より好ましくは30〜10000mPa・s、さらに好ましくは50〜5000mPa・s、より一層好ましくは100〜3000mPa・s、最も好ましくは200〜1000mPa・sである。上記粘度が10mPa・s以下であると液状感光性接着剤の保存安定性が低下したり、塗布された液状感光性接着剤にピンホールが生じやすくなる傾向がある。また、露光によるBステージ化が困難となる傾向がある。粘度が30000mPa・s以上であると、塗布時に薄膜化が困難であったり、吐出が困難となる傾向がある。ここでの粘度は、25℃においてE型粘度計を用いて測定される値である。
【0027】
(工程4)
塗布により液状感光性接着剤から形成された感光性接着剤層5側から露光装置9によって活性光線(典型的には紫外線)を照射して、感光性接着剤層をBステージ化する。これにより感光性接着剤層5が半導体ウェハ1上に固定されるとともに、感光性接着剤層5表面のタックを低減することができる。露光は、酸素濃度が10%以下の雰囲気下で行う必要があり、真空下、又は不活性ガス(例えば、窒素)下の雰囲気下で行なうことが好ましい。
【0028】
本実施形態においては、図4に示されるように、密閉が可能な容器(例えば、アクリルボックス)20内にて露光を行うことができる。容器20は、上方部に通気管22,24を有しており、一方から窒素を吹き込みながら他方から容器内の空気を排出することができる。これにより、酸素濃度が10%以下の雰囲気下で露光を行うことができる。なお、酸素濃度は、容器20内に設置された酸素濃度計26により確認することができる。本実施形態においては、窒素の流量を調整しながら容器内の酸素濃度を一定に保つことが好ましい。
【0029】
接着剤層表面は酸素阻害を受けやすく、酸素濃度が高いと露光により生じたラジカル種が酸素と反応し、接着剤層を十分にBステージ化することができなくなる傾向にある。本実施形態においては、所定の酸素濃度で露光したときの接着剤層表面のタック力をA、酸素濃度0%で露光したときの接着剤層表面のタック力をBとしたときに、A/Bが1.5以下になるような所定の酸素濃度で露光を行うことが好ましい。このような観点から、露光の際の酸素濃度は5%以下が好ましく、3%以下がより好ましく、1%以下が更により好ましい。
【0030】
露光後の接着剤層表面のタック力は以下のように測定される。まず、液状感光性接着剤をシリコンウェハ上にスピンコート(2000rpm/10s、4000rpm/20s)によって塗布し、形成された感光性接着剤層に、離型処理したPETフィルムをラミネートし、高精度平行露光機(オーク製作所製、「EXM−1172−B−∞」(商品名))を用いて1000mJ/cm2で露光を行なう。その後、所定の温度(例えば30℃)における接着剤層表面のタック力をレスカ社製のプローブタッキング試験機を用いて、プローブ直径:5.1mm、引き剥がし速度:10mm/s、接触荷重:100gf/cm2、接触時間:1sの条件で測定する。
【0031】
本実施形態において、露光後の接着剤層表面の30℃におけるタック力(表面タック力)は、200gf/cm2以下であることが好ましい。これにより、露光後の取り扱い性、ダイシングの容易さ、ピックアップ性の点で十分に優れたものとなる。なお、30℃における上記タック力が200gf/cm2を超えると、接着剤層の室温における表面の粘着性が高くなりすぎて、取扱い性が低下する傾向にある他、ダイシング時に接着剤層と被着体との界面に水が浸入してチップ飛びが発生する、ダイシング後のダイシングシートとのはく離性が低下してピックアップ性が低下する、といった問題が生じやすくなる傾向にある。
【0032】
本実施形態において、接着剤層中の未反応の光重合開始剤を低減させる観点から、露光量は50mJ/cm2以上が好ましく、100mJ/cm2以上がより好ましい。
【0033】
また、露光後の接着剤層5aの膜厚は、接着剤層の薄膜化の観点から、好ましくは30μm以下、より好ましくは20μm以下、更に好ましくは10μm以下、より一層好ましくは5μm以下である。露光後の接着剤層5aの膜厚は、例えば、以下の方法によって測定できる。まず、液状感光性接着剤をシリコンウェハ上にスピンコート(2000rpm/10s、4000rpm/20s)によって塗布する。得られた塗膜に、離型処理したPETフィルムをラミネートし、高精度平行露光機(オーク製作所製、「EXM−1172−B−∞」(商品名))により1000mJ/cm2で露光を行なう。その後、表面粗さ測定器(小坂研究所製)を用いて接着剤層の厚みを測定する。
【0034】
Bステージ化された接着剤層5aの5%重量減少温度は、好ましくは120℃以上、より好ましくは150℃以上、更に好ましくは180℃以上、より一層好ましくは200℃以上である。この5%重量減少温度を高めるために、本発明に係る液状感光性接着剤は溶剤を実質的に含有しないことが好ましい。5%重量減少温度が上記下限値よりも低いと、被着体圧着後の熱硬化時もしくはリフローなどの熱履歴時に被着体がはく離し易くなる傾向があるため、熱圧着前に加熱乾燥が必要となる。
【0035】
ここでの5%重量減少温度は以下のように測定される。液状感光性接着剤をシリコンウェハ上にスピンコート(2000rpm/10s、4000rpm/20s)によって塗布し、得られた塗膜に、離型処理したPETフィルムをラミネートし、高精度平行露光機(オーク製作所製、「EXM−1172−B−∞」(商品名))により1000mJ/cm2で露光を行なう。その後、Bステージ化した接着剤層について、示差熱熱重量同時測定装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー社製、商品名「TG/DTA6300」)を用いて、昇温速度10℃/min、窒素フロー(400ml/分)の条件下で5%重量減少温度を測定する。
【0036】
本実施形態においては、酸素阻害を低減するために、離形処理されたPETフィルムやポリプロピレンフィルムなどの基材を感光性接着剤層5上に積層した状態で、露光することもできる。この場合、感光性接着剤層の表面が空気中の酸素と遮断された条件下で露光を行うことができる。また、ポリ塩化ビニル、ポリオレフィンや粘着テープ(ダイシングテープ)を感光性接着剤層上に積層した状態で露光することにより、工程5を簡略化することもできる。また、パターニングされたマスクを介して露光を行うこともできる。パターニングされたマスクを介して露光を行うこともできる。パターニングされたマスクを用いることにより、熱圧着時の流動性が異なる接着剤層を形成させることができたり、現像によって接着剤パターンを得ることができる。露光量は、タック低減及びタクトタイムの観点から、20〜2000mJ/cm2が好ましい。また、Bステージ化後のタック低減及びアウトガス低減を目的に、露光後100℃以下の温度で加熱を行なってもよい。
【0037】
露光後の接着剤層5aの膜厚は50μm以下であることが好ましく、低応力化の観点から30μm以下であることがより好ましく、膜厚均一性の観点から20μm以下であることがさらにより好ましく、パッケージを更に薄くできることから10μm以下であることが最も好ましい。また、良好な熱圧着性と接着性を確保するために上記膜厚は0.5μm以上であることが好ましく、ダストやダイシング時の切断カスによるボイドなどの圧着不良低減のために1μm以上であることがより好ましい。膜厚の測定は上述と同様にして行うことができる。
【0038】
また、チップの取り扱い性、反りなどの応力、熱圧着時のチップ歪み(基材に対して平行に圧着可能であること)、硬化時のチップ保持性(硬化時の熱溶融による歪み)の観点から、ウェハの厚みxと接着剤層の厚みyとの関係がx≧yを満たすことが好ましく、x≧2×yを満たすことがより好ましい。
【0039】
また、露光した後、30℃での表面タック力が200gf/cm2以下となることが好ましく、熱圧着時の粘着性の観点から150gf/cm2以下であることがより好ましく、ダイシングテープのはく離性の観点から100gf/cm2以下であることがさらにより好ましく、ピックアップ性の観点から50gf/cm2以下であることが最も好ましい。また、ダイシング時のチップ飛びなどを抑制するために表面タック力が0.1gf/cm2以上であることが好ましい。表面タック力の測定は上述と同様にして行うことができる。
【0040】
(工程5)
露光後、接着剤層5aにダイシングテープなどのはく離可能な粘着テープ6を貼り付ける。粘着テープ6は、予めフィルム状に成形された粘着テープをラミネートする方法により貼り付けることができる。
【0041】
(工程6)
続いて、半導体ウェハ1の回路面に貼り付けられた粘着テープ4をはく離する。例えば、活性光線(典型的には紫外線)を照射することによって粘着性が低下する粘着テープを使用し、粘着テープ4側から露光した後、これをはく離することができる。
【0042】
(工程7)
ダイシングラインDに沿って半導体ウェハ1を接着剤層5aとともに切断する。このダイシングにより、半導体ウェハ1が、それぞれの裏面に接着剤層5aが設けられた複数の半導体チップ2に切り分けられる。ダイシングは、粘着テープ(ダイシングテープ)6によって全体をフレーム(ウェハリング)10に固定した状態でダイシングブレード11を用いて行われる。
【0043】
(工程8)
ダイシングの後、切り分けられた半導体チップ2を、ダイボンド装置12によって接着剤層5aとともにピックアップし、すなわち接着剤層付き半導体素子をピックアップし、半導体装置用の支持部材(半導体素子搭載用支持部材)7または他の半導体チップ2に圧着(マウント)する。圧着は加熱しながら行なうことが好ましい。
【0044】
圧着により、半導体チップが支持部材又は他の半導体チップに接着される。半導体チップと支持部材又は他の半導体チップとの260℃におけるせん断接着強度は、0.2MPa以上であることが好ましく、0.5MPa以上であることがより好ましい。せん断接着強度が0.2MPa未満であると、リフロー工程などの熱履歴によってはく離が生じ易くなる傾向がある。
【0045】
ここでのせん断接着強度は、せん断接着力試験機「Dage−4000」(商品名)を用いて測定することができる。より具体的には、例えば以下のような方法で測定される。まず、半導体ウェハに塗布された液状感光性接着剤からなる感光性接着剤層全面を露光した後、3×3mm角の半導体チップを切り出す。切り出された接着剤層付きの半導体チップを、予め準備した5×5mm角の半導体チップに載せ、100gfで加圧しながら、120℃で2秒間圧着する。その後、120℃1時間、次いで180℃3時間オーブンで加熱して、半導体チップ同士が接着されたサンプルを得る。得られたサンプルについて、せん断接着力試験機「Dage−4000」(商品名)を用いて260℃におけるせん断接着力を測定する。
【0046】
(工程9)
工程8の後、それぞれの半導体チップ2はそのボンディングパッドに接続されたワイヤ16を介して支持部材7上の外部接続端子と接続される。
【0047】
(工程10)
半導体チップ2を含む積層体を封止材17によって封止することにより、半導体装置100が得られる。
【0048】
以上のような工程を経て、半導体素子同士、及び/又は、半導体素子と半導体素子搭載用支持部材とが接着された構造を有する半導体装置を製造することができる。半導体装置の構成及び製造方法は、以上の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更が可能である。
【0049】
例えば、工程1〜7の順序を必要により入れ替えることが可能である。より具体的には、予めダイシングされた半導体ウェハの裏面に液状感光性接着剤を塗布し、その後、活性光線(典型的には紫外線)を照射して感光性接着剤層をBステージ化することもできる。このとき、パターニングされたマスクを用いることもできる。
【0050】
塗布された液状感光性接着剤を、露光前又は露光後に120℃以下、好ましくは100℃以下、より好ましくは80℃以下に加熱してもよい。これにより、残存している溶剤、水分を低減することができ、また露光後のタックをより低減することができる。
【0051】
光照射によりBステージ化された後、さらに加熱により硬化された接着剤層の5%重量減少温度は、260℃以上であることが好ましい。この5%重量減少温度が260℃以下であると、リフロー工程などの熱履歴によってはく離が生じ易くなる傾向がある。
【0052】
光照射によりBステージ化された後、さらに、120℃1時間、次いで180℃3時間の加熱により硬化されたときの接着剤層からのアウトガスは10%以下であることが好ましく、7%以下であることがより好ましく、5%以下であることがさらに好ましい。アウトガス量が10%以上であると、加熱硬化時にボイドやはく離が発生し易くなる傾向がある。
【0053】
ここでのアウトガスとは以下のように測定される。液状感光性接着剤をシリコンウェハ上にスピンコート(2000rpm/10s、4000rpm/20s)によって塗布し、得られた塗膜に、離型処理したPETフィルムをラミネートし、高精度平行露光機(オーク製作所製、「EXM−1172−B−∞」(商品名))により1000mJ/cm2で露光を行なう。その後、Bステージ化した接着剤層を、示差熱熱重量同時測定装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー社製、商品名「TG/DTA6300」)を用いて、窒素フロー(400ml/分)下で、昇温速度50℃/minで120℃に昇温させ、120℃で1時間ホールドし、更に180℃に昇温させ、180℃で3時間ホールドするプログラムによって加熱したとしたときのアウトガスの量が測定される。
【0054】
光照射によりBステージ化された接着剤層の20℃〜300℃における最低溶融粘度は、30000Pa・s以下であることが好ましい。
【0055】
ここでの最低溶融粘度とは、光量1000mJ/cm2で露光した後の接着剤層を、粘弾性測定装置ARES(レオメトリックス・サイエンティフィック・エフ・イー(株)製)を用いて測定したときの20℃〜300℃における溶融粘度の最低値を指す。溶融粘度は、直径8mmの平行プレート用い、昇温5℃/min、測定温度20℃〜300℃、周波数は1Hzの条件で測定される。
【0056】
上記最低溶融粘度は、20000Pa・s以下であることがより好ましく、18000Pa・s以下であることが更に好ましく、15000Pa・s以下であることが特に好ましい。上記範囲内の最低溶融粘度を有することにより、十分な低温熱圧着性を確保することができ、凹凸がある基板などに対しても良好な密着性を付与することができる。上記最低溶融粘度は、取り扱い性等の点からは10Pa・s以上であることが望ましい。
【0057】
本発明に係る液状感光性接着剤は、(A)放射線重合性化合物、(B)光重合開始剤及び(C)熱硬化性樹脂を含有する。
【0058】
本実施形態の液状感光性接着剤は、25℃で液状であり且つ溶剤の含有量が5質量%以下であることが好ましい。なお、本発明において液状とは、25℃、1atmで流動性を有することを意味する。
【0059】
溶剤とは、光反応性基及び熱反応性基を有さず、分子量が500以下且つ25℃において液状である有機化合物を指す。
【0060】
本発明において放射線とは、電離性放射線や非電離性放射線を指し、例えば、ArF、KrF等のエキシマレーザー光、電子線極端紫外線、真空紫外光、X線、イオンビームやi線やg線等の紫外光が挙げられる。放射線は、量産性の観点から、i線やg線等の紫外光が好ましく用いられる。
【0061】
本実施形態の液状感光性接着剤は、25℃で液状であり且つ溶剤の含有量が5質量%以下であることが好ましい。上記の「無溶剤型」とは、接着剤中に含有される溶剤量が5質量%以下であることを意味する。
【0062】
上記の溶剤とは、放射線重合性基やオキシムエステル基、α−アミノアセトフェノン、ホスフィンオキサイドなどの光反応性基、エポキシ基、フェノール性水酸基、カルボキシル基、アミノ基、酸無水物、イソシアネート、パーオキサイド、ジアゾ基、イミダゾール、アルコキシシランなどの熱反応性基を有さず、分子量が500以下でありかつ室温(25℃)において液状である有機化合物を意味する。このような溶剤としては、例えば、ジメチルホルムアミド、トルエン、ベンゼン、キシレン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、エチルセロソルブ、エチルセロソルブアセテート、ジオキサン、シクロヘキサノン、酢酸エチル、γ−ブチロラクトン及びN−メチル−ピロリジノンなどが挙げられる。
【0063】
溶剤量が上記範囲となることで、光照射によってタック低減させることができ、光照射後の取り扱い性が向上する。更に、熱圧着や加熱硬化時の発泡を抑制することができる。
【0064】
本実施形態においては、(A)成分が、(A1)25℃で液状であり且つ分子内に1つの炭素−炭素二重結合を有する化合物(以下、「A1化合物」という場合もある。)を含むことが好ましい。分子内に2つ以上の炭素−炭素二重結合を有する化合物を配合した感光性組成物の場合、光照射されると架橋構造が形成された状態となり、その後の熱時に溶融しにくく、またタックも発現しにくいため、熱圧着が困難となる傾向がある。これに対して、分子内に1つの炭素−炭素二重結合を有する化合物を含有する場合、熱時流動性を十分得ることができ熱圧着性を向上させることができる。
【0065】
また、本実施形態の液状感光性接着剤には、25℃で液状であり且つ分子内に1つの炭素−炭素二重結合を有する化合物に加えて、更に固形のアクリレートを配合してもよい。この場合の(A)成分の混合物は、25℃で液状であることが好ましい。
【0066】
更に高水準の熱時流動性を得る観点から、放射線重合性化合物として、分子内に1つの炭素−炭素二重結合を有する化合物を単独で接着剤に含有させることが好ましい。なお、分子内に1つの炭素−炭素二重結合を有する化合物を単独で使用した場合、光照射後に得られるポリマーの分子量は数万以上にすることができる。ここで、分子内に2つ以上の炭素−炭素二重結合を有する化合物が含まれると分子量が数万以上のポリマー同士のネットワークが形成され熱時の粘着性や流動性が低下する傾向がある。
【0067】
他方、耐熱性向上や露光後のタック強度低減の目的で、分子内に2つ以上の炭素−炭素二重結合を有する化合物を、分子内に1つの炭素−炭素二重結合を有する化合物に対して0.1〜50質量%の割合で併用することもできる。この場合、併用する分子内に2つ以上の炭素−炭素二重結合を有する化合物としては、熱時流動性の観点から、炭素数10以上の脂肪族系アクリレート、熱時の粘着性の観点から好ましくは官能基当量が200g/eq以上、低応力性の観点から更に好ましくは300g/eq以上の芳香族若しくはイソシアヌル環やシクロヘキシルなどの環状構造を有するアクリレートが好ましい。
【0068】
上記(A)成分は、上記(B)成分及び(C)成分などの他の成分の溶解性の観点から、25℃での粘度が5000mPa・s以下であることが好ましく、更に薄膜化の観点から、3000mPa・s以下であることがより好ましく、2000mPa・s以下であることが更により好ましく、更に固形や高粘度の熱硬化樹脂を多く配合して接着性を向上させる観点から、1000mPa・s以下であることが最も好ましい。ここでの粘度とは、液状感光性接着剤に含まれる(A)成分全体の値であり、東京計器製造所製のEHD型回転粘度計を用い、サンプル量0.4mL、3°コーンの条件下、25℃で測定した粘度の値である。
【0069】
(A)成分の上記粘度が5000mPa・sを超えると、液状感光性接着剤の粘度が上昇して薄膜化が困難となったり、塗布装置などのノズルから吐出させることが困難となる傾向がある。塗布時のピンホール発生を防止することや耐熱性を確保する観点から、(A)成分の25℃での粘度は10mPa・s以上であることが好ましい。
【0070】
また、上記(A)成分は、5%重量減少温度が100℃以上であることが好ましく、120℃以上であることがより好ましく、熱硬化時に未反応の(A)成分が揮発することによって生じるはく離やボイドを抑制できる点で150℃以上であることが更により好ましく、180℃以上であることが最も好ましい。ここでの5%質量減少温度とは、液状感光性接着剤に含まれる(A)成分全体の値であり、(A)成分を示差熱熱重量同時測定装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー製:TG/DTA6300)を用いて、昇温速度10℃/min、窒素フロー(400ml/min)下で測定したときの5%重量減少温度である。
【0071】
また、液状感光性接着剤の低粘度化、塗布後の表面凹凸抑制やBステージ化後の熱時流動性の観点から、有機化合物を主体とした材料設計が好ましいため、上記(A)成分の5%重量減少温度は500℃以下であることが好ましい。
【0072】
また、上記(A)成分は、Bステージ化後の低温熱圧着性、熱時流動性の観点から、上記(A)成分を重合して得られた重合体のTgが100℃以下となるものが好ましく、Bステージ化後の取り扱い性やピックアップ性の観点から、Tgが20℃以上となるものが好ましい。(A)成分の重合体のTgは、(A)成分に光開始剤であるI−379EG(チバ・ジャパン社製)を液状感光性接着剤全量基準で3質量%となる割合で溶解させた組成物を、PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム上に膜厚30μmとなるように塗布し、この塗膜に空気下25℃で高精度平行露光機(オーク製作所製、商品名:EXM−1172−B−∞)によって1000mJ/cm2で露光して得られたフィルムを膜厚150μmとなるように積層した積層体について、粘弾性測定装置(レオメトリックス・サイエンティフィック・エフ・イー(株)製、商品名:ARES)を用いて測定された−50℃〜200℃におけるtanδピーク温度である。なお、測定プレートは、直径8mmの平行プレートを用い、測定条件は、昇温速度5℃/min、測定温度−50℃〜200℃、周波数1Hzとする。
【0073】
本実施形態の液状感光性接着剤は、被着体との密着性、表面タック低減、ダイシング性、硬化後の高温接着性向上の観点から、光照射されたときに重量平均分子量が50000〜1000000である上記(A)成分の重合体が含まれることが好ましい。また、被着体との熱圧着性の観点から、光照射されたときに重量平均分子量が5000〜500000である上記(A)成分の重合体が含まれることが好ましい。なお、上記重量平均分子量とは、島津製作所社製高速液体クロマトグラフィー「C−R4A」(商品名)を用いて、ポリスチレン換算で測定したときの重量平均分子量を意味する。
【0074】
(A)成分の重合体の重量平均分子量は、露光条件(酸素濃度、温度、強度)、光開始剤量やチオール、フェノール性水酸基、アミン又はフェノール系重合禁止剤の添加、アクリレートの種類や熱硬化性樹脂の配合量、接着剤組成物の粘度によって調整することができる。
【0075】
本実施形態で用いる(A)成分としては、例えば、エチレン性不飽和基を有する化合物が挙げられる。エチレン性不飽和基としては、ビニル基、アリル基、プロパギル基、ブテニル基、エチニル基、フェニルエチニル基、マレイミド基、ナジイミド基、(メタ)アクリル基などが挙げられる。反応性の観点から、(A)成分は、上記A1化合物として、単官能(メタ)アクリレートを含むことが好ましい。ここでいう単官能とは、分子内に1つの炭素−炭素二重結合を有することを意味し、それ以外の官能基を有していてもよい。
【0076】
単官能(メタ)アクリレートとしては、5%重量減少温度が100℃以上であるものが好ましく、120℃以上であるものがより好ましく、150℃以上であるものが更により好ましく、180℃以上であるものが最も好ましい。また、液状感光性接着剤の低粘度化、塗布後の表面凹凸抑制やBステージ化後の熱時流動性の観点から、有機化合物を主体とした材料設計が好ましいため、単官能(メタ)アクリレートの5%重量減少温度は500℃以下であることが好ましい。単官能(メタ)アクリレートの5%質量減少温度は、示差熱熱重量同時測定装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー製:TG/DTA6300)を用いて、昇温速度10℃/min、窒素フロー(400ml/min)下で測定したときの5%重量減少温度である。
【0077】
5%重量減少温度が上記の温度範囲にある単官能(メタ)アクリレートを配合することで、露光によってBステージ化した後に残存した未反応単官能(メタ)アクリレートが熱圧着又は熱硬化時に揮発することを抑制できる。
【0078】
上記A1化合物としての単官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、硬化物を強靭化できる点でグリシジル基含有(メタ)アクリレートや4−ヒドロキシフェニルメタクリレートや3,5−ジメチル−4−ヒドロキシベンジルアクリルアミドなどのフェノール性水酸基含有(メタ)アクリレート、2−メタクリロイロキシエチルフタル酸、2−メタクリロイロキシプロピルヘキサヒドロフタル酸、2−メタクリロイロキシメチルヘキサヒドロフタル酸などのカルボキシル基含有(メタ)アクリレートが好ましく、耐熱性を向上できる点でフェノールEO変性(メタ)アクリレート、フェノールPO変性(メタ)アクリレート、ノニルフェノールEO変性(メタ)アクリレート、ノニルフェノールPO変性(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル化フェニルフェノールアクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−メタクリロイロキシエチル2−ヒドロキシプロピルフタレート、フェニルフェノールグリシジルエーテルアクリレートなどの芳香族含有(メタ)アクリレートが好ましく、Bステージ化後の密着性や熱硬化後の接着性を付与できる点で2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、o−フェニルフェノールグリシジルエーテル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイロキシ−2−ヒドロキシプロピルフタレート、2−(メタ)アクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシエチル−フタル酸、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、など下記一般式(A−1)又は(A−2)で示される水酸基含有(メタ)アクリレート、2−(1,2−シクロヘキサカルボキシイミド)エチルアクリレートなど、下記一般式(A−3)又は(A−4)で示されるイミド基含有(メタ)アクリレートが好ましく、液状感光性接着剤を低粘度化できる点でイソボロニル含有(メタ)アクリレート、ジシクロペンタジエニル基含有(メタ)アクリレート、イソボロニル(メタ)アクリレートなどが好ましいものとして挙げられる。
【0079】
【化1】
【0080】
【化2】
【0081】
一般式(A−1)及び(A−2)において、R1は、水素原子又はメチル基を示し、R3は1価の有機基を示し、R2及びR4はそれぞれ2価の有機基を示す。R3は耐熱性の観点から芳香族基を有することが好ましい。R4は耐熱性の観点から芳香族基を有することが好ましい。
【0082】
【化3】
【0083】
【化4】
【0084】
一般式(A−3)及び(A−4)において、R1は、水素原子又はメチル基を示し、R5は2価の有機基を示し、R6、R7、R8、R9はそれぞれ炭素数1〜30の1価の炭化水素基を示し、R6及びR7はそれぞれ互いに結合して環を形成してもよく、R8及びR9はそれぞれ互いに結合して環を形成してもよい。R6及びR7、並びに、R8及びR9が環を形成している場合、例えば、ベンゼン環構造、脂環式構造が挙げられる。ベンゼン環構造及び脂環式構造は、カルボキシル基、フェノール性水酸基、エポキシ基などの熱硬化性基を有していてもよく、またアルキル基などの有機基を有していてもよい。
【0085】
上記一般式(A−3)及び(A−4)で示される化合物は、例えば、単官能酸無水物とエタノールアミンとを反応させて得られるN−ヒドロキシアルキルイミド化合物と、アクリル酸エステル又はアクリル酸エステルとを公知の方法で反応させて合成することができる。この場合、単官能酸無水物として、4−フェニルエチニルフタル酸無水物、無水フタル酸、無水マレイン酸、無水コハク酸、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水化物、2,5−ノルボルナジエン−2,3−ジカルボン酸無水物、マレイン酸無水物、トリメリット酸無水物、シクロヘキサンジカルボン酸無水物、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物、シス−ノルボルネン−エンド−2,3−ジカルボン酸ヘキサヒドロ無水フタル酸無水物、ヘキサヒドロフタル酸無水物、1,2,3,6−テトラヒドロフタル酸無水物、3,4,5,6−テトラヒドロフタル酸無水物、などのジカルボン酸無水物を用いることができる。N−ヒドロキシアルキルイミド化合物としては、例えば、N−ヒドロキシエチルフタルイミド及びN−ヒドロキシエチルコハクイミドなどが挙げられる。
【0086】
上記一般式(A−3)及び(A−4)で示される化合物としては、保存安定性、Bステージ化後の低タック性、Bステージ化後の密着性、熱硬化後の耐熱性、接着性、信頼性の観点から、下記一般式(A−5)〜(A−9)で示される化合物が好ましいものとして用いることができ、低粘度の観点から、下記一般式(A−5)、(A−7)〜(A−9)で示される化合物がより好ましいものとして用いることができる。
【0087】
【化5】
上記式(A−5)〜(A−9)中、R1は、水素原子又はメチル基を示す。
【0088】
また、単官能(メタ)アクリレートとしては、Bステージ化後の被着体との密着性、硬化後の接着性、耐熱性の観点から、ウレタン基、イソシアヌル基、イミド基、フェノール性水酸基、水酸基のいずれかを有することが好ましく、特に分子内にイミド基又は水酸基を有する単官能(メタ)アクリレートであることが好ましい。
【0089】
エポキシ基を有する単官能(メタ)アクリレートは、保存安定性、接着性、組立て加熱時及び組立て後のパッケージの低アウトガス性、耐熱・耐湿性の観点から、5%重量減少温度が、フィルム形成時の加熱乾燥による揮発もしくは表面への偏析を抑制できる点で150℃以上であることが好ましく、熱硬化時のアウトガスによるボイド及びはく離や接着性低下を抑制できる点で180℃以上であることが更に好ましく、熱履歴でのボイド及びはく離を抑制できる点で200℃以上であることが更により好ましく、リフロー時に未反応成分が揮発することによるボイド及びはく離を抑制できる点で260℃以上であることが最も好ましい。このようなエポキシ基を有する単官能(メタ)アクリレートとしては分子内に芳香環を有する化合物が好ましい。また、5%重量減少温度が150℃以上の多官能エポキシ樹脂を原料として用いることで上記耐熱性を満足することができる。
【0090】
エポキシ基を有する単官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、グリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル、4−ヒドロキシブチルメタクリレートグリシジルエーテルの他、エポキシ基と反応する官能基及びエチレン性不飽和基を有する化合物と多官能エポキシ樹脂とを反応させて得られる化合物等が挙げられる。上記エポキシ基と反応する官能基としては、特に限定はしないが、イソシアネート基、カルボキシル基、フェノール性水酸基、水酸基、酸無水物、アミノ基、チオール基、アミド基などが挙げられる。これらの化合物は、1種を単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。より具体的には、例えば、トリフェニルホスフィンやテトラブチルアンモニウムブロミドの存在下、1分子中に少なくとも2つ以上のエポキシ基を有する多官能エポキシ樹脂と、エポキシ基1当量に対し0.1〜0.9当量の(メタ)アクリル酸とを反応させることによって得られる。また、ジブチルスズジラウレートの存在下、多官能イソシアネート化合物とヒドロキシ基含有(メタ)アクリレート及びヒドロキシ基含有エポキシ化合物とを反応させ、又は多官能エポキシ樹脂とイソシアネート基含有(メタ)アクリレートとを反応させることにより、グリシジル基含有ウレタン(メタ)アクリレート等が得られる。
【0091】
更に、エポキシ基を有する単官能(メタ)アクリレートとしては、不純物イオンであるアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、ハロゲンイオン、特には塩素イオンや加水分解性塩素等を1000ppm以下に低減した高純度品を用いることが、エレクトロマイグレーション防止や金属導体回路の腐食防止の観点から好ましい。例えば、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、ハロゲンイオン等を低減した多官能エポキシ樹脂を原料として用いることで上記不純物イオン濃度を満足することができる。全塩素含量はJIS K7243−3に準じて測定できる。
【0092】
上記耐熱性と純度を満たすエポキシ基を有する単官能(メタ)アクリレート成分としては、特に限定はしないが、ビスフェノールA型(又はAD型、S型、F型)のグリシジルエーテル、水添加ビスフェノールA型のグリシジルエーテル、エチレンオキシド付加体ビスフェノールA及び/又はF型のグリシジルエーテル、プロピレンオキシド付加体ビスフェノールA及び/又はF型のグリシジルエーテル、フェノールノボラック樹脂のグリシジルエーテル、クレゾールノボラック樹脂のグリシジルエーテル、ビスフェノールAノボラック樹脂のグリシジルエーテル、ナフタレン樹脂のグリシジルエーテル、3官能型(又は4官能型)のグリシジルエーテル、ジシクロペンタジエンフェノール樹脂のグリシジルエーテル、ダイマー酸のグリシジルエステル、3官能型(又は4官能型)のグリシジルアミン、ナフタレン樹脂のグリシジルアミン等を原料としたものが挙げられる。
【0093】
特に、熱圧着性、低応力性及び接着性を改善するためには、エポキシ基の数が3つ以下であることが好ましい。このような化合物としては特に限定はしないが、下記一般式(A−10)、(A−11)、(A−12)、(A−13)又は(A−14)で表される化合物等が好ましく用いられる。下記一般式(A−10)〜(A−14)において、R12及びR16は水素原子又はメチル基を示し、R10、R11、R13及びR14は2価の有機基を示す。また、R15は、エポキシ基を有する有機基であり、R17及びR18はそれぞれ、1つがエチレン性不飽和基を有する有機基であり、残りがエポキシ基を有する有機基である。更に、(A−13)中のfは、0〜3の整数を示す。
【0094】
【化6】
【0095】
【化7】
【0096】
【化8】
【0097】
【化9】
【0098】
【化10】
【0099】
上記の単官能(メタ)アクリレートの含有量は、(A)成分全量に対して20〜100質量%であることが好ましく、40〜100質量%であることがより好ましく、50〜100質量%であることが最も好ましい。単官能(メタ)アクリレートの配合量を上記範囲とすることでBステージ化後の被着体との密着性及び熱圧着性を向上することができる。
【0100】
本実施形態の液状感光性接着剤において、25℃で液状であり且つ分子内に1つの炭素−炭素二重結合を有する化合物は、1種を単独で又は2種類以上を組み合わせて配合することができる。
【0101】
上記A1化合物は、上記(B)成分及び(C)成分などの他の成分の溶解性の観点から、25℃での粘度が5000mPa・s以下であることが好ましく、更に薄膜化の観点から、3000mPa・s以下であることがより好ましく、2000mPa・s以下であることが更により好ましく、更に固形や高粘度の熱硬化樹脂を多く配合して接着性を向上させる観点から、1000mPa・s以下であることが最も好ましい。ここでの粘度とは、A1化合物についての値であり、東京計器製造所製のEHD型回転粘度計を用い、サンプル量0.4mL、3°コーンの条件下、25℃で測定した粘度の値である。
【0102】
A1化合物の上記粘度が5000mPa・sを超えると、接着剤組成物の粘度が上昇して薄膜化が困難となったり、塗布装置などのノズルから吐出させることが困難となる傾向がある。塗布時のピンホール発生を防止することや耐熱性を確保する観点から、A1化合物の25℃での粘度は10mPa・s以上であることが好ましい。
【0103】
また、A1化合物の上記粘度は、接着剤組成物をノズルなどから吐出する際の吐出性向上、薄膜化の観点から、1000mPa・s以下であることが好ましく、アウトガス低減の観点から、5mPa・s以上であることが好ましい。
【0104】
また、上記A1化合物は、5%重量減少温度が100℃以上であることが好ましく、120℃以上であることがより好ましく、150℃以上であることが更により好ましく、180℃以上であることが最も好ましい。ここでの5%質量減少温度とは、A1化合物を示差熱熱重量同時測定装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー製:TG/DTA6300)を用いて、昇温速度10℃/min、窒素フロー(400ml/min)下で測定したときの5%重量減少温度である。
【0105】
また、液状感光性接着剤の低粘度化、塗布後の表面凹凸抑制やBステージ化後の熱時流動性の観点から、有機化合物を主体とした材料設計が好ましいため、上記A1化合物の5%重量減少温度は500℃以下であることが好ましい。
【0106】
更に、A1化合物は、Bステージ化後の低温熱圧着性、熱時流動性の観点から、A1化合物を重合して得られた重合体のTgが100℃以下となるものが好ましく、Bステージ化後のピックアップ性の観点から、Tgが20℃以上となるものが好ましい。A1化合物の重合体のTgは、A1成分に光開始剤であるI−379EG(チバ・ジャパン社製)をA1成分に対し3質量%となる割合で溶解させた組成物を、PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム上に膜厚30μmとなるように塗布し、この塗膜に、高精度平行露光機(オーク製作所製、商品名:EXM−1172−B−∞)を用いて1000mJ/cm2で露光して得られたフィルムを膜厚150μmとなるように積層した積層体について、粘弾性測定装置(レオメトリックス・サイエンティフィック・エフ・イー(株)製、商品名:ARES)を用いて測定された−50℃〜200℃におけるtanδピーク温度である。なお、測定プレートは、直径8mmの平行プレートを用い、測定条件は、昇温速度5℃/min、測定温度−50℃〜200℃、周波数1Hzとする。
【0107】
本実施形態の液状感光性接着剤は、(A)放射線重合性化合物として、上記A1化合物以外に、2官能以上の(メタ)アクリレートを含有していてもよい。ここでいう2官能以上とは、分子内に2つ以上の炭素−炭素二重結合を有することを意味する。このようなアクリレートとしては、特に制限はしないが、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパンジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、スチレン、ジビニルベンゼン、4−ビニルトルエン、4−ビニルピリジン、N−ビニルピロリドン、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、1,3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロパン、1,2−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロパン、メチレンビスアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、トリス(β−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートのトリアクリレート、下記一般式(A−15)で表される化合物、ウレタンアクリレート若しくはウレタンメタクリレート、及び尿素アクリレート等が挙げられる。
【0108】
【化11】
上記一般式(A−15)中、R19及びR20は各々独立に、水素原子又はメチル基を示し、g及びhは各々独立に、1〜20の整数を示す。
【0109】
また、上記式(A−12)におけるR15が、エチレン性不飽和基を有する有機基である化合物、上記式(A−13)におけるR17のうちの2つ以上がエチレン性不飽和基を有する有機基であり、残りがエポキシ基を有する有機基である化合物、及び、上記式(A−14)におけるR18のうちの2つ以上がエチレン性不飽和基を有する有機基であり、残りがエポキシ基を有する有機基である化合物が挙げられる。
【0110】
また、本実施形態の液状感光性接着剤には、露光後のタック低減や接着性向上を目的に、下記構造式で示される単官能マレイミド化合物を含有させることができる。
【0111】
【化12】
【0112】
(A)成分の含有量は、接着剤全量に対して10〜95質量%であることが好ましく、20〜90質量%であることがより好ましく、40〜90質量%であることが最も好ましい。(A)成分の含有量が10質量%未満であると、露光後の表面タック力が大きくなる傾向があり、95質量%を超えると熱硬化後の接着強度が低下する傾向があるため好ましくない。
【0113】
上記(B)光重合開始剤としては、光照射によってラジカル、酸又は塩基などを生成する化合物を用いることができる。中でもマイグレーションなどの耐腐食性の観点から、光照射によりラジカル及び/又は塩基を生成する化合物を用いることが好ましく、特に、露光後の加熱処理が不要となる点や高感度である点でラジカルを生成する化合物が好ましく用いられる。光照射によって酸又は塩基を生成する化合物は、エポキシ樹脂の重合及び/又は反応を促進する機能を発現することができる。
【0114】
光重合開始剤は、波長365nmの光に対する分子吸光係数が、Bステージ化が可能となる点で100ml/g・cm以上であるものが好ましく、露光後のタックをより低減できる点で200ml/g・cm以上であるものがより好ましく、酸素阻害をより低減できる点で400ml/g・cm以上であるものがさらにより好ましく、低露光量、短時間でBステージ化が可能となる点で1000ml/g・cm以上であるものが最も好ましい。なお、Bステージ化に要する時間は60s以内であることが好ましく、より効率的に半導体材料を製造できる点で30s以内であることがより好ましい。上記の分子吸光係数は、サンプルの0.001質量%アセトニトリル溶液を調製し、この溶液について分光光度計(日立ハイテクノロジーズ社製、「U−3310」(商品名))を用いて吸光度を測定することにより求められる。
【0115】
上記(B)成分としては、例えば、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニループロパンー1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチループロピオニル)−ベンジル]−フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン、オキシ−フェニル−アセチックアシッド2−[2−オキソー2−フェニル−アセトキシ−エトキシ]エチルエステル、フェニルグリオキシリックアシッドメチルエステル、2−ジメチルアミノ−2−(4−メチルーベンジル)−1−(4−モルフォリン−4−イルーフェニル)−ブタンー1−オン、2−エチルヘキシル−4−ジメチルアミノベンゾエート、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−メチル−1−(4−(メチルチオ)フェニル)−2−モルフォリノプロパノン−1、2,4−ジエチルチオキサントン、2−エチルアントラキノン、フェナントレンキノン等の芳香族ケトン、ベンジルジメチルケタール等のベンジル誘導体、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジ(m−メトキシフェニル)イミダゾール二量体、2−(o−フルオロフェニル)−4,5−フェニルイミダゾール二量体、2−(o−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(p−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2,4−ジ(p−メトキシフェニル)−5−フェニルイミダゾール二量体、2−(2,4−ジメトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体等の2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体、9−フェニルアクリジン、1,7−ビス(9,9'−アクリジニル)ヘプタン等のアクリジン誘導体、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6,−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド等のビスアシルフォスフィンオキサイドやマレイミドを有する化合物などが挙げられる。これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0116】
上記の光開始剤の中でも、溶剤を含有しない接着剤組成物での溶解性の点で、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、2−メチル−1−(4−(メチルチオ)フェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オンが好ましく用いられる。
【0117】
(B)成分は、露光によって効率的にBステージ化が可能となる点で、分子内にオキシムエステル骨格、又はモルホリン骨格を有する化合物であることが好ましい。このような化合物としては特に限定はしないが、下記一般式(B−1)で表わされるオキシムエステル基を有する化合物及び/又は下記一般式(B−2)、(B−3)若しくは(B−4)で表わされるモルホリン環を有する化合物であることが好ましい。具体的には、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、2−メチル−1−(4−(メチルチオ)フェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オンが好ましく用いられる。
【0118】
【化13】
【0119】
【化14】
【0120】
【化15】
【0121】
【化16】
式中、R51及びR52はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜7のアルキル基、又は芳香族系炭化水素基を含む有機基を示し、R53及びR54及びR55は、炭素数1〜7のアルキル基、又は芳香族系炭化水素基を含む有機基を示し、R56及びR57は、芳香族系炭化水素基を含む有機基を示す。
【0122】
上記芳香族系炭化水素基としては、特に制限はしないが、例えば、フェニル基及びナフチル基、ベンゾイン誘導体、カルバゾール誘導体、チオキサントン誘導体、ベンゾフェノン誘導体などが挙げられる。また、芳香族系炭化水素基は、置換基を有していてもよい。
【0123】
上記(B)成分として特に好ましいものは、オキシムエステル基及び/又はモルホリン環を有する化合物であって、波長365nmの光に対する分子吸光係数が1000ml/g・cm以上、且つ、5%質量減少温度が150℃以上の化合物である。
【0124】
このような(B)成分としては、例えば、下記構造式(B−5)〜(B−9)で表わされる化合物が挙げられる。
【0125】
【化17】
【0126】
本実施形態の液状感光性接着剤がエポキシ樹脂を含む場合、(B)成分は、放射線の照射によりエポキシ樹脂の重合及び/又は反応を促進する機能を発現する光開始剤を含有していてもよい。このような光開始剤としては、例えば、放射線照射によって塩基を発生する光塩基発生剤、放射線照射によって酸を発生する光酸発生剤などが挙げられ、光塩基発生剤が特に好ましい。
【0127】
光塩基発生剤を用いることにより、接着剤の被着体への高温接着性及び耐湿性を更に向上させることができる。この理由としては、光塩基発生剤から生成した塩基がエポキシ樹脂の硬化触媒として効率よく作用することにより、架橋密度をより一層高めることができるため、また生成した硬化触媒が基板などを腐食することが少ないためと考えられる。また、接着剤に光塩基発生剤を含有させることにより、架橋密度を向上させることができ、高温放置時のアウトガスをより低減させることができる。さらに、硬化プロセス温度を低温化、短時間化させることができる。
【0128】
光塩基発生剤は、放射線照射時に塩基を発生する化合物であればよい。発生する塩基としては、反応性、硬化速度の点から強塩基性化合物が好ましい。より具体的には、光塩基発生剤によって発生する塩基の水溶液中でのpKa値は、7以上であることが好ましく、8以上であることがより好ましい。pKaは、一般的に、塩基性の指標として酸解離定数の対数である。
【0129】
放射線照射時に発生する塩基としては、例えば、イミダゾール、2,4−ジメチルイミダゾール、1−メチルイミダゾール等のイミダゾール誘導体、ピペラジン、2,5−ジメチルピペラジン等のピペラジン誘導体、ピペリジン、1,2−ジメチルピペリジン等のピペリジン誘導体、プロリン誘導体、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン等のトリアルキルアミン誘導体、4−メチルアミノピリジン、4−ジメチルアミノピリジン等の4位にアミノ基またはアルキルアミノ基が置換したピリジン誘導体、ピロリジン、n−メチルピロリジン等のピロリジン誘導体、ジヒドロピリジン誘導体、トリエチレンジアミン、1,8−ジアザビスシクロ(5,4,0)ウンデセン−1(DBU)等の脂環式アミン誘導体、ベンジルメチルアミン、ベンジルジメチルアミン、ベンジルジエチルアミン等のベンジルアミン誘導体等が挙げられる。
【0130】
上記のような塩基を放射線照射によって発生する光塩基発生剤としては、例えば、Journal of Photopolymer Science and Technology 12巻、313〜314項(1999年)やChemistry of Materials 11巻、170〜176項(1999年)等に記載されている4級アンモニウム塩誘導体を用いることができる。これらは、活性光線の照射により高塩基性のトリアルキルアミンを生成するため、エポキシ樹脂の硬化には最適である。
【0131】
光塩基発生剤としては、Journal of American ChemicalSociety 118巻 12925頁(1996年)やPolymer Journal 28巻 795頁(1996年)等に記載されているカルバミン酸誘導体も用いることができる。
【0132】
放射線照射により塩基を発生する光塩基発生剤としては、2,4−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)―,2−(O−ベンゾイルオキシム)]やエタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(O−アセチルオキシム)などのオキシム誘導体や光ラジカル発生剤として市販されている2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、2−メチル−1−(4−(メチルチオ)フェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、ヘキサアリールビスイミダゾール誘導体(ハロゲン、アルコキシ基、ニトロ基、シアノ基等の置換基がフェニル基に置換されていてもよい)、ベンゾイソオキサゾロン誘導体等を用いることができる。
【0133】
光塩基発生剤としては、高分子の主鎖及び/又は側鎖に塩基を発生する基を導入した化合物を用いてもよい。この場合の分子量としては、接着剤としての接着性、流動性及び耐熱性の観点から、重量平均分子量1000〜100000が好ましく、5000〜30000であることがより好ましい。
【0134】
上記の光塩基発生剤は、露光しない状態ではエポキシ樹脂と反応性を示さないため、室温での貯蔵安定性が非常に優れる。
【0135】
(B)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対して0.1〜20質量部であることが好ましく、Bステージ化のタクトやBステージ化後のタックの観点から、0.5〜10質量部であることがより好ましい。この含有量が20質量部を超えると、アウトガスが多くなり接着性が低下したり、保存安定性が低下する傾向がある。一方、上記含有量が0.1質量部未満であると、Bステージ化が困難となる傾向がある。
【0136】
本実施形態の液状感光性接着剤においては、必要に応じて増感剤を併用することができる。この増感剤としては、例えば、カンファーキノン、ベンジル、ジアセチル、ベンジルジメチルケタール、ベンジルジエチルケタール、ベンジルジ(2−メトキシエチル)ケタール、4,4’−ジメチルベンジル−ジメチルケタール、アントラキノン、1−クロロアントラキノン、2−クロロアントラキノン、1,2−ベンズアントラキノン、1−ヒドロキシアントラキノン、1−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、1−ブロモアントラキノン、チオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−ニトロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン、2−クロロ−7−トリフルオロメチルチオキサントン、チオキサントン−10,10−ジオキシド、チオキサントン−10−オキサイド、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、イソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾフェノン、ビス(4−ジメチルアミノフェニル)ケトン、4,4’−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、アジド基を含む化合物などが挙げられる。これらは単独で又は2種類以上併用して使用することができる。
【0137】
上記(C)熱硬化性樹脂としては、熱により架橋反応を起こす反応性化合物からなる成分であれば特に限定されることはなく、例えば、エポキシ樹脂、シアネートエステル樹脂、マレイミド樹脂、アリルナジイミド樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、アクリル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、シリコーン樹脂、レゾルシノールホルムアルデヒド樹脂、キシレン樹脂、フラン樹脂、ポリウレタン樹脂、ケトン樹脂、トリアリルシアヌレート樹脂、ポリイソシアネート樹脂、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌラートを含有する樹脂、トリアリルトリメリタートを含有する樹脂、シクロペンタジエンから合成された熱硬化性樹脂、芳香族ジシアナミドの三量化による熱硬化性樹脂等が挙げられる。中でも、高温での優れた接着力を持たせることができる点で、エポキシ樹脂、マレイミド樹脂、及びアリルナジイミド樹脂が好ましい。なお、熱硬化性樹脂は、単独で又は二種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0138】
エポキシ樹脂としては、分子内に少なくとも2個以上のエポキシ基を含むものが好ましく、熱圧着性や硬化性、硬化物特性の点から、フェノールのグリシジルエーテル型のエポキシ樹脂がより好ましい。このような樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型(又はAD型、S型、F型)のグリシジルエーテル、水添加ビスフェノールA型のグリシジルエーテル、エチレンオキシド付加体ビスフェノールA型のグリシジルエーテル、プロピレンオキシド付加体ビスフェノールA型のグリシジルエーテル、フェノールノボラック樹脂のグリシジルエーテル、クレゾールノボラック樹脂のグリシジルエーテル、ビスフェノールAノボラック樹脂のグリシジルエーテル、ナフタレン樹脂のグリシジルエーテル、3官能型(又は4官能型)のグリシジルエーテル、ジシクロペンタジエンフェノール樹脂のグリシジルエーテル、ダイマー酸のグリシジルエステル、3官能型(又は4官能型)のグリシジルアミン、ナフタレン樹脂のグリシジルアミン等が挙げられる。これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0139】
また、エポキシ樹脂としては、不純物イオンである、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、ハロゲンイオン、特に塩素イオンや加水分解性塩素等を300ppm以下に低減した高純度品を用いることが、エレクトロマイグレーション防止や金属導体回路の腐食防止の観点から好ましい。
【0140】
マレイミド樹脂としては、例えば、下記一般式(I)で表されるビスマレイミド樹脂、下記一般式(II)で表されるノボラック型マレイミド樹脂などが挙げられる。
【0141】
【化18】
[式(I)中、R5は芳香族環及び/又は直鎖、分岐若しくは環状脂肪族炭化水素を含む2価の有機基を示す。]
【0142】
R5は、下記化学式で表される2価の有機基が挙げられる。各式中、nは1〜10の整数である。
【0143】
【化19】
【0144】
【化20】
【0145】
【化21】
[式(II)中、nは0〜20の整数を示す。]
【0146】
中でも、接着剤層の硬化後の耐熱性及び高温接着力を付与できる点で、下記構造式(III)で示されるビスマレイミド樹脂、及び/又は上記一般式(II)で表されるノボラック型マレイミド樹脂が好ましく用いられる。
【0147】
【化22】
【0148】
上記のマレイミド樹脂の硬化のために、アリル化ビスフェノールA、シアネートエステル化合物などを併用、又は過酸化物などの触媒を添加することもできる。上記化合物及び触媒の添加量、及び添加の有無については、目的とする特性を確保できる範囲で適宜調整される。
【0149】
アリルナジイミド樹脂としては、分子内にアリルナイミド基を2個以上含む化合物を用いることができ、例えば、下記一般式(IV)で表されるビスアリルナジイミド樹脂が挙げられる。
【0150】
【化23】
[式(IV)中、R1は芳香族環及び/又は直鎖、分岐若しくは環状脂肪族炭化水素を含む2価の有機基を示す。]
【0151】
R1は、下記化学式で表される2価の有機基が挙げられる。各式中、nは1〜10の整数である。
【0152】
【化24】
【0153】
【化25】
【0154】
中でも、下記構造式(V)で示される液状のヘキサメチレン型ビスアリルナジイミド、及び、下記構造式(VI)で示される低融点(融点:40℃)固体状のキシリレン型ビスアリルナジイミドが、良好な熱時流動性を付与できる点で好ましい。また、固体状のキシリレン型ビスアリルナジイミドは、良好な熱時流動性に加えて、Bステージ化後の粘着性の上昇を抑制でき、取り扱い性、及びピックアップ時のダイシングテープとの易はく離性、ダイシング後の切断面の再融着の抑制の点で、より好ましい。
【0155】
【化26】
【0156】
上記のビスアリルナジイミドは単独で、又は二種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0157】
なお、上記のアリルナジイミド樹脂は、無触媒下での単独硬化では、250℃以上の硬化温度が必要で、実用化に際しては大きな障害となっており、また、触媒を用いる系においても、強酸やオニウム塩など、電子材料においては重大な欠点となる金属腐食性の触媒しか使用できず、かつ最終硬化には250℃前後の温度が必要であるが、上記のアリルナジイミド樹脂と2官能以上のアクリレート化合物、又はメタクリレート化合物、又はマレイミド樹脂のいずれかを併用することによって、200℃以下の低温で硬化が可能である(文献:A.Renner,A.Kramer,“Allylnadic−Imides:A New Class of Heat−Resistant Thermosets”,J.Polym.Sci.,Part A Polym.Chem.,27,1301(1989))。
【0158】
(C)熱硬化性樹脂は、室温で液状、固形を問わず使用することができる。液状熱硬化性樹脂の場合は、より低粘度化が可能となり、固形熱硬化性樹脂の場合は、光照射後のタックをより低減することができる。また、液状熱硬化性樹脂と固形熱硬化性樹脂を併用してもよい。
【0159】
液状の熱硬化性樹脂を用いる場合、その粘度は10000mPa・s以下であることが好ましく、5000mPa・s以下であることがより好ましく、3000mPa・s以下であることが更により好ましく、2000mPa・s以下であることが最も好ましい。粘度が10000mPa・sを超えると接着剤の粘度が上昇し、薄膜化が困難となる傾向がある。このような液状の熱硬化性樹脂としては、特に限定はしないが、接着性、耐熱性の観点からエポキシ樹脂が好ましく、特に3官能型(又は4官能型)のグリシジルアミンやビスフェノールA型(又はAD型、S型、F型)のグリシジルエーテルが好ましく用いられる。
【0160】
固形の熱硬化性樹脂を用いる場合、例えば、(A)成分に溶解させて用いることができる。固形熱硬化性樹脂としては、特に限定はしないが、熱圧着性と粘度の観点から、分子量が2000以下、好ましくは1000以下であることが好ましく、また軟化点が100℃以下、好ましくは80℃以下であることが好ましい。また、接着性、耐熱性の観点から3官能以上のエポキシ樹脂が好ましい。このようなエポキシ樹脂としては、例えば、下記構造のエポキシ樹脂が好ましく用いられる。
【0161】
【化27】
【0162】
【化28】
nは、0〜10の整数を示す。
【0163】
また、(C)熱硬化性樹脂は、5%重量減少温度が150℃以上であるものが好ましく、180℃以上であるものがより好ましく、200℃以上であるものが更により好ましい。ここで、熱硬化性樹脂の5%質量減少温度とは、熱硬化性樹脂を示差熱熱重量同時測定装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー製:TG/DTA6300)を用いて、昇温速度10℃/min、窒素フロー(400ml/min)下で測定したときの5%重量減少温度である。5%重量減少温度が高い熱硬化性樹脂を適用することで、熱圧着又は熱硬化時に揮発することを抑制できる。このような耐熱性を有する熱硬化性樹脂としては、分子内に芳香族基を有するエポキシ樹脂が挙げられ、接着性、耐熱性の観点から特に3官能型(又は4官能型)のグリシジルアミン、ビスフェノールA型(又はAD型、S型、F型)のグリシジルエーテルが好ましく用いられる。
【0164】
(C)熱硬化性樹脂の含有量は、(A)成分100質量部に対して1〜100質量部であることが好ましく、2〜50質量部であることがより好ましい。この含有量が100質量部を超えると、露光後のタックが上昇する傾向がある。一方、上記含有量が2質量部未満であると、十分な高温接着性が得られなくなる傾向がある。
【0165】
本実施形態の液状感光性接着剤においては、硬化促進剤を更に含有することが好ましい。硬化促進剤としては、加熱によってエポキシ樹脂の硬化/重合を促進する化合物あれば特に制限はなく、例えば、フェノール系化合物、脂肪族アミン、脂環族アミン、芳香族ポリアミン、ポリアミド、脂肪族酸無水物、脂環族酸無水物、芳香族酸無水物、ジシアンジアミド、有機酸ジヒドラジド、三フッ化ホウ素アミン錯体、イミダゾール類、ジシアンジアミド誘導体、ジカルボン酸ジヒドラジド、トリフェニルホスフィン、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、2−エチル−4−メチルイミダゾール−テトラフェニルボレート、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7−テトラフェニルボレート、第3級アミン等が挙げられる。これらの中でも溶剤を含有しないときの溶解性、分散性の観点からイミダゾール類が好ましく用いられる。硬化促進剤の含有量は、エポキシ樹脂100質量部に対して0.01〜50質量部が好ましい。また、接着性、耐熱性、保存安定性の観点からもイミダゾール類が特に好ましい。
【0166】
イミダゾール類としては、反応開始温度が50℃以上であることが好ましく、80℃以上であることがより好ましい。反応開始温度が50℃以下であると保存安定性が低下するため、接着剤の粘度が上昇し膜厚の制御が困難となるため好ましくない。
【0167】
イミダゾール類としては、エポキシ樹脂に溶解するイミダゾールを用いることが好ましい。このようなイミダゾールを用いることで凹凸が少ない塗布膜を得ることができる。このようなイミダゾール類としては、特に限定はしないが、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾールなどが挙げられる。保存安定性、接着性、耐熱性の観点から、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾールが特に好ましく用いられる。
【0168】
また、イミダゾール類としては、好ましくは平均粒径10μm以下、より好ましくは8μm以下、最も好ましくは5μm以下に粉砕した化合物を使用することができる。このような粒径のイミダゾール類を用いることで接着剤の粘度変化を抑制することができ、またイミダゾール類の沈降を抑制することができる。また、薄膜形成した際には、表面の凹凸を低減することができ、これにより均一な膜を得ることができる。更に、硬化時には樹脂中の硬化を均一に進行させることができるため、アウトガスを低減することができる。
【0169】
また、本実施形態の液状感光性接着剤は、硬化剤としてフェノール系化合物を含有していてもよい。フェノール系化合物としては分子中に少なくとも2個以上のフェノール性水酸基を有するフェノール系化合物がより好ましい。このような化合物としては、例えばフェノールノボラック、クレゾールノボラック、t−ブチルフェノールノボラック、ジシクロペンタジエンクレゾールノボラック、ジシクロペンタジエンフェノールノボラック、キシリレン変性フェノールノボラック、ナフトール系化合物、トリスフェノール系化合物、テトラキスフェノールノボラック、ビスフェノールAノボラック、ポリ−p−ビニルフェノール、フェノールアラルキル樹脂等が挙げられる。これらの中でも、数平均分子量が400〜4000の範囲内のものが好ましい。これにより、半導体装置組立加熱時に、半導体素子又は装置等の汚染の原因となる加熱時のアウトガスを抑制できる。上記フェノール系化合物は液状であることが好ましく、アリル変性フェノールノボラックが、液状かつ高耐熱であるために好適に用いられる。
【0170】
フェノール系化合物の含有量は、熱硬化性樹脂100質量部に対して50〜100質量部であることが好ましく、60〜95質量部であることがより好ましい。
【0171】
本実施形態の液状感光性接着剤は、(D)熱ラジカル発生剤を更に含有することができる。熱ラジカル発生剤としては、有機過酸化物であることが好ましい。有機過酸化物としては、1分間半減期温度が80℃以上であるものが好ましく、100℃以上であるものがより好ましく、120℃以上であることが最も好ましい。有機過酸化物は、接着剤組成物の調製条件、製膜温度、圧着、硬化条件、その他プロセス条件、貯蔵安定性等を考慮して選択される。使用可能な過酸化物としては、特に限定はしないが、例えば、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシへキサン)、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサネート、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサネート、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネートなどが挙げられ、これらのうちの1種を単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。上記の有機過酸化物を含有させることで、露光後に残存している未反応の放射線重合性化合物を反応させることができ、低アウトガス化、高接着化を図ることができる。
【0172】
1分間半減期温度が80℃以上である熱ラジカル発生剤としては、例えば、パーヘキサ25B(日油社製)、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシへキサン)(1分間半減期温度:180℃)、パークミルD(日油社製)、ジクミルパーオキサイド(1分間半減期温度:175℃)などが挙げられる。
【0173】
(D)熱ラジカル発生剤の含有量は、(A)放射線重合性化合物全量に対して、0.01〜20質量%が好ましく、0.1〜10質量%が更に好ましく、0.5〜5質量%が最も好ましい。熱ラジカル発生剤の含有量が0.01質量%未満であると、硬化性が低下し、添加効果が小さくなり、5質量%を超えると、アウトガス量増加、保存安定性低下が見られる。
【0174】
本実施形態の液状感光性接着剤は、塗布後の膜厚均一性、Bステージ化後の熱圧着性、熱硬化後の低応力性、被着体との密着性を向上させる点から、(E)熱可塑性樹脂を更に含有してもよい。
【0175】
(E)成分のTgは150℃以下であることが好ましく、120℃以下であることがより好ましく、100℃以下であることがさらにより好ましく、80℃以下であることが最も好ましい。このTgが150℃を超える場合、接着剤の粘度が上昇する傾向がある。また、被着体に熱圧着する際に150℃以上の高温を要し、半導体ウェハに反りが発生しやすくなる傾向がある。
【0176】
ここで、(E)成分の「Tg」とは、(E)成分をフィルム化したときの主分散ピーク温度を意味する。具体的には、(E)成分のフィルムについて、レオメトリックス社製粘弾性アナライザー「RSA−2」(商品名)を用いて、フィルム厚100μm、昇温速度5℃/min、周波数1Hz、測定温度−150〜300℃の条件で測定し、Tg付近のtanδピーク温度をTgとして求める。
【0177】
(E)成分の重量平均分子量は、5000〜500000の範囲内で制御されていることが好ましい。更に、(E)成分の重量平均分子量は、熱圧着性と高温接着性とを高度に両立できる点で、10000〜300000であることがより好ましい。ここで、「重量平均分子量」とは、島津製作所社製高速液体クロマトグラフィー「C−R4A」(商品名)を用いて、ポリスチレン換算で測定したときの重量平均分子量を意味する。
【0178】
(E)成分としては、例えば、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリウレタンイミド樹脂、ポリウレタンアミドイミド樹脂、シロキサンポリイミド樹脂、ポリエステルイミド樹脂、これらの共重合体、これらの前駆体(ポリアミド酸等)の他、ポリベンゾオキサゾール樹脂、フェノキシ樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、重量平均分子量が1万〜100万の(メタ)アクリル共重合体、ノボラック樹脂、フェノール樹脂などが挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。また、これらの樹脂の主鎖及び/又は側鎖に、エチレングリコール、プロピレングリコールなどのグリコール基、カルボキシル基及び/又は水酸基が付与されたものであってもよい。
【0179】
これらの中でも、高温接着性、耐熱性の観点から、(E)成分はイミド基を有する樹脂であることが好ましい。イミド基を有する樹脂としては、例えば、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリウレタンイミド樹脂、ポリウレタンアミドイミド樹脂、シロキサンポリイミド樹脂、ポリエステルイミド樹脂、これらの共重合体、イミド基を有するモノマーの重合体が挙げられる。
【0180】
ポリイミド樹脂及び/又はポリアミドイミド樹脂は、例えば、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとを公知の方法で縮合反応させて得ることができる。すなわち、有機溶媒中で、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとを等モルで、又は、必要に応じてテトラカルボン酸二無水物の合計1.0molに対して、ジアミンの合計を好ましくは0.5〜2.0mol、より好ましくは0.8〜1.0molの範囲で組成比を調整(各成分の添加順序は任意)し、反応温度80℃以下、好ましくは0〜60℃で付加反応させる。反応が進行するにつれ反応液の粘度が徐々に上昇し、ポリイミド樹脂の前駆体であるポリアミド酸が生成する。なお、樹脂組成物の諸特性の低下を抑えるため、上記のテトラカルボン酸二無水物は無水酢酸で再結晶精製処理したものであることが好ましい。
【0181】
上記縮合反応におけるテトラカルボン酸二無水物とジアミンとの組成比については、テトラカルボン酸二無水物の合計1.0molに対して、ジアミンの合計が2.0molを超えると、得られるポリイミド樹脂に、アミン末端のポリイミドオリゴマーの量が多くなる傾向があり、ポリイミド樹脂の重量平均分子量が低くなり、樹脂組成物の耐熱性を含む種々の特性が十分でなくなる傾向がある。一方、テトラカルボン酸二無水物の合計1.0molに対してジアミンの合計が0.5mol未満であると、酸末端のポリイミド樹脂オリゴマーの量が多くなる傾向があり、ポリイミド樹脂及び/又はポリアミドイミド樹脂の重量平均分子量が低くなり、樹脂組成物の耐熱性を含む種々の特性が十分でなくなる傾向がある。
【0182】
ポリイミド樹脂及び/又はポリアミドイミド樹脂は、上記反応物(ポリアミド酸)を脱水閉環させて得ることができる。脱水閉環は、加熱処理する熱閉環法、脱水剤を使用する化学閉環法等で行うことができる。
【0183】
ポリイミド樹脂の原料として用いられるテトラカルボン酸二無水物としては、例えば、ピロメリット酸二無水物、線膨張係数を低下できる点で3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,4,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物などのビフェニル骨格を有する酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物などのナフチル骨格を有する酸二無水物が好ましく用いられる。また、Bステージ化の感度を向上できる点で、3,4,3’,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3,2’,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3,3’,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物などのベンゾフェノン骨格を有する酸二無水物が好ましく用いられる。また、透明性の観点から1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸二無水物、デカヒドロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、4,8−ジメチル−1,2,3,5,6,7−ヘキサヒドロナフタレン−1,2,5,6−テトラカルボン酸二無水物、シクロペンタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、ビス(エキソ−ビシクロ[2,2,1]ヘプタン−2,3−ジカルボン酸二無水物、ビシクロ−[2,2,2]−オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物などの脂環式骨格を有する酸二無水物や2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,2−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェニル)フェニル]ヘキサフルオロプロパン二無水物、1,4−ビス(2−ヒドロキシヘキサフルオロイソプロピル)ベンゼンビス(トリメリット酸無水物)、1,3−ビス(2−ヒドロキシヘキサフルオロイソプロピル)ベンゼンビス(トリメリット酸無水物)などのフルオロアルキル基を有する酸二無水物が好ましく用いられる。
【0184】
また、365nmに対する透明性の観点から下記一般式(1)で表されるテトラカルボン酸二無水物等が好ましく用いられる。下記一般式(1)中、aは2〜20の整数を示す。
【0185】
【化29】
【0186】
上記一般式(1)で表されるテトラカルボン酸二無水物は、例えば、無水トリメリット酸モノクロライド及び対応するジオールから合成することができ、具体的には1,2−(エチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,3−(トリメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,4−(テトラメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,5−(ペンタメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,6−(ヘキサメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,7−(ヘプタメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,8−(オクタメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,9−(ノナメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,10−(デカメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,12−(ドデカメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,16−(ヘキサデカメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,18−(オクタデカメチレン)ビス(トリメリテート無水物)等が挙げられる。これらの化合物は耐熱性を損なうことなくTgを低下させることができる。
【0187】
また、テトラカルボン酸二無水物としては、(A)成分への良好な溶解性、365nm光に対する透明性、熱圧着性を付与する観点から、下記一般式(2)又は(3)で表されるテトラカルボン酸二無水物が好ましい。
【0188】
【化30】
【0189】
以上のようなテトラカルボン酸二無水物は、1種を単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0190】
(E)成分は、さらに、接着強度を上昇させる点でカルボキシル基及び/又はフェノール性水酸基含有ポリイミド樹脂を用いることができる。上記カルボキシル基及び/又は水酸基含有ポリイミド樹脂の原料として用いられるジアミンは、下記一般式(4)、(5)、(6)又は(7)で表される芳香族ジアミンを含むことが好ましい。
【0191】
【化31】
【0192】
上記ポリイミド樹脂の原料として用いられるその他のジアミンとしては特に限定されないが、ポリマのTg及び溶解性を調整するために以下のジアミンを用いることができる。例えば、耐熱性及び接着性を向上できる点で、o−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、ビス(4−アミノ−3,5−ジメチルフェニル)メタン、ビス(4−アミノ−3,5−ジイソプロピルフェニル)メタン、2,2−ビス(3−アミノフェニル)プロパン、2,2’−(3,4’−ジアミノジフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、3,3’−(1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン))ビスアニリン、3,4’−(1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン))ビスアニリン、4,4’−(1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン))ビスアニリン、2,2−ビス(4−(3−アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノフェノキシフェニル)プロパンが好ましく用いられる。線膨張係数を低下できる点で3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテメタン、3,3’−ジアミノジフェニルスルフォン、3,4’−ジアミノジフェニルスルフォン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフォン、ビス(4−(3−アミノエノキシ)フェニル)スルフォン、ビス(4−(4−アミノエノキシ)フェニル)スルフォン、3,3’−ジヒドロキシ−4,4’−ジアミノビフェニルが好ましく用いられる。金属などの被着体との密着性を向上できる点で、3,3’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、ビス(4−(3−アミノエノキシ)フェニル)スルフィド、ビス(4−(4−アミノエノキシ)フェニル)スルフィド好ましく用いられる。また、Tgを低下させることができるジアミンとして、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、下記一般式(8)で表される脂肪族エーテルジアミン、下記一般式(9)で表されるシロキサンジアミン等が挙げられる。
【0193】
【化32】
一般式(8)中、R1、R2及びR3は各々独立に、炭素数1〜10のアルキレン基を示し、bは2〜80の整数を示す。
【0194】
【化33】
一般式(9)中、R4及びR9は各々独立に、炭素数1〜5のアルキレン基又は置換基を有してもよいフェニレン基を示し、R5、R6、R7及びR8は各々独立に、炭素数1〜5のアルキル基、フェニル基又はフェノキシ基を示し、dは1〜5の整数を示す。
【0195】
上記ジアミンの中でも、他成分との相溶性を付与する点で、一般式(8)で表される脂肪族エーテルジアミンが好ましく、エチレングリコール及び/又はプロピレングリコール系ジアミンがより好ましい。
【0196】
このような脂肪族エーテルジアミンとして具体的には、サンテクノケミカル(株)製ジェファーミンD−230,D−400,D−2000,D−4000,ED−600,ED−900,ED−2000,EDR−148、BASF(製)ポリエーテルアミンD−230,D−400,D−2000等のポリオキシアルキレンジアミン等の脂肪族ジアミンが挙げられる。これらのジアミンは、全ジアミンの20モル%以上であることが好ましく、(A)放射線重合性化合物や(C)熱硬化性樹脂などの他配合成分との相溶性、また熱圧着性と高温接着性とを高度に両立できる点で50モル%以上であることがより好ましい。
【0197】
また、上記ジアミンとしては、室温での密着性、接着性を付与する点で、上記一般式(9)で表されるシロキサンジアミンが好ましい。
【0198】
これらのジアミンは、全ジアミンの0.5〜80モル%とすることが好ましく、熱圧着性と高温接着性とを高度に両立できる点で1〜50モル%とすることが更に好ましい。0.5モル%を下回るとシロキサンジアミンを添加した効果が小さくなり、80モル%を上回ると他成分との相溶性、高温接着性が低下する傾向がある。
【0199】
上述したジアミンは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0200】
また、上記ポリイミド樹脂は、1種を単独で又は必要に応じて2種以上を混合(ブレンド)して用いることができる。
【0201】
また、上述のように、ポリイミド樹脂の組成を決定する際には、そのTgが150℃以下となるように設計することが好ましく、ポリイミド樹脂の原料であるジアミンとして、上記一般式(8)で表される脂肪族エーテルジアミンを用いることが特に好ましい。
【0202】
上記ポリイミド樹脂の合成時に、下記一般式(10)、(11)又は(12)で表される化合物のような単官能酸無水物及び/又は単官能アミンを縮合反応液に投入することにより、ポリマー末端に酸無水物又はジアミン以外の官能基を導入することができる。また、これにより、ポリマーの分子量を低くし、接着剤の粘度を低下させ、熱圧着性を向上させることができる。
【0203】
【化34】
【0204】
(E)熱可塑性樹脂は、その主鎖及び/又は側鎖に、イミダゾールなどのエポキシ樹脂の硬化を促進する機能を有する官能基を有していてもよい。イミダゾール含有のポリイミドは、例えば、上記に示したジアミン成分として、その一部を下記構造式に示されるようなイミダゾール基含有のジアミンを用いて得ることができる。このようなイミダゾールを側鎖に有するポリマーは相溶性や保存安定性を向上できるため好ましい。
【0205】
【化35】
【0206】
【化36】
【0207】
上記ポリイミド樹脂は、均一にBステージ化できる点から、30μmに成形した時の365nmに対する透過率が10%以上であることが好ましく、より低露光量でBステージ化できる点で20%以上であることがより好ましい。このようなポリイミド樹脂は、例えば、上記一般式(2)で表される酸無水物と、上記一般式(8)で表される脂肪族エーテルジアミン及び/又は上記一般式(9)で表されるシロキサンジアミンとを反応させることで合成することができる。
【0208】
また、(E)熱可塑性樹脂としては、粘度上昇を抑制し、更に接着剤組成物中のとけ残りを低減する点で、常温(25℃)で液状である液状熱可塑性樹脂を用いることが好ましい。このような熱可塑性樹脂は溶剤を用いることなく、加熱して反応させることが可能となり本発明のような溶剤を適用しない接着剤組成物では溶剤除去の工程削減、残存溶剤の低減、再沈殿工程の削減の点で有用である。また液状熱可塑性樹脂は、反応炉からの取り出しも容易である。このような液状熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリブタジエン、アクリロニトリル・ブタジエンオリゴマー、ポリイソプレン、ポリブテンなどのゴム状ポリマー、ポリオレフィン、アクリルポリマー、シリコーンポリマー、ポリウレタン、ポリイミド、ポリアミドイミドなどが挙げられる。中でもポリイミド樹脂が好ましく用いられる。
【0209】
液状のポリイミド樹脂は、例えば、上記の酸無水物と、脂肪族エーテルジアミンやシロキサンジアミンとを反応させることによって得られる。合成方法としては、溶剤を加えずに、脂肪族エーテルジアミンやシロキサンジアミン中に酸無水物を分散させ、加熱する方法が挙げられる。
【0210】
(E)熱可塑性樹脂の含有量は、(A)成分に対して、0.1〜50質量%が好ましく、成膜性や膜厚均一性、粘度上昇抑制の観点から0.5〜20質量%がより好ましい。熱可塑性樹脂の含有量が0.1質量%未満であると、添加の効果が見られなくなる傾向があり、50質量%を超えると、溶け残りなどによって膜厚均一性が低下したり、粘度が上昇し薄膜化が困難となる傾向がある。
【0211】
本実施形態の液状感光性接着剤には、保存安定性、プロセス適応性又は酸化防止性を付与するために、キノン類、多価フェノール類、フェノール類、ホスファイト類、イオウ類等の重合禁止剤又は酸化防止剤を、硬化性を損なわない範囲で更に添加してもよい。
【0212】
また、本実施形態の液状感光性接着剤には、適宜フィラーを含有させることもできる。フィラーとしては、例えば、銀粉、金粉、銅粉、ニッケル粉等の金属フィラー、アルミナ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、結晶性シリカ、非晶性シリカ、窒化ホウ素、チタニア、ガラス、酸化鉄、セラミック等の無機フィラー、カーボン、ゴム系フィラー等の有機フィラー等が挙げられ、種類・形状等にかかわらず特に制限なく使用することができる。
【0213】
上記フィラーは、所望する機能に応じて使い分けることができる。例えば、金属フィラーは、接着剤に導電性、熱伝導性、チキソ性等を付与する目的で添加され、非金属無機フィラーは、接着剤層に熱伝導性、低熱膨張性、低吸湿性等を付与する目的で添加され、有機フィラーは接着剤層に靭性等を付与する目的で添加される。
【0214】
これら金属フィラー、無機フィラー又は有機フィラーは、1種を単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。中でも、半導体装置用接着材料に求められる、導電性、熱伝導性、低吸湿特性、絶縁性等を付与できる点で、金属フィラー、無機フィラー、又は絶縁性のフィラーが好ましく、無機フィラー又は絶縁性フィラーの中では、接着剤に対する分散性が良好でかつ、熱時の高い接着力を付与できる点でシリカフィラーがより好ましい。
【0215】
上記フィラーは、平均粒子径が10μm以下、且つ、最大粒子径が30μm以下であることが好ましく、平均粒子径が5μm以下、且つ、最大粒子径が20μm以下であることがより好ましい。平均粒子径が10μmを超える、または、最大粒子径が30μmを超えると、破壊靭性向上の効果が十分に得られない傾向がある。また、平均粒子径及び最大粒子径の下限は特に制限はないが、どちらも0.001μm以上であることが好ましい。
【0216】
上記フィラーの含有量は、付与する特性又は機能に応じて決められるが、フィラーを含む接着剤全量に対して50質量%以下となることが好ましく、1〜40質量%がより好ましく、3〜30質量%がさらに好ましい。フィラーを増量させることにより、低アルファ化、低吸湿化、高弾性率化が図れ、ダイシング性(ダイサー刃による切断性)、ワイヤボンディング性(超音波効率)、熱時の接着強度を有効に向上させることができる。フィラーを必要以上に増量させると、粘度が上昇したり、熱圧着性が損なわれる傾向にあるため、フィラーの含有量は上記の範囲内に収めることが好ましい。求められる特性のバランスをとるべく、最適フィラー含有量を決定することができる。フィラーを用いた場合の混合・混練は、通常の撹拌機、らいかい機、三本ロール、ボールミル等の分散機を適宜、組み合わせて行うことができる。
【0217】
本実施形態の液状感光性接着剤には、異種材料間の界面結合を良くするために、各種カップリング剤を添加することもできる。カップリング剤としては、例えば、シラン系、チタン系、アルミニウム系等が挙げられ、中でも効果が高い点で、シラン系カップリング剤が好ましく、エポキシ基などの熱硬化性基やメタクリレート及び/又はアクリレートなどの放射線重合性基を有する化合物がより好ましい。
【0218】
また、上記シラン系カップリング剤の沸点及び/又は分解温度は150℃以上であることが好ましく、180℃以上であることより好ましく、200℃以上であることがさらにより好ましい。特に、200℃以上の沸点及び/又は分解温度で、かつエポキシ基などの熱硬化性基やメタクリレート及び/又はアクリレートなどの放射線重合性基を有するシラン系カップリング剤が最も好ましく用いられる。
【0219】
上記カップリング剤の使用量は、その効果や耐熱性及びコストの面から、接着剤全量100質量部に対して、0.01〜20質量部とすることが好ましい。
【0220】
本実施形態の液状感光性接着剤には、イオン性不純物を吸着して、吸湿時の絶縁信頼性を良くするために、イオン捕捉剤を更に添加することもできる。このようなイオン捕捉剤としては、特に制限はなく、例えば、トリアジンチオール化合物、フェノール系還元剤等の銅がイオン化して溶け出すのを防止するための銅害防止剤として知られる化合物、粉末状のビスマス系、アンチモン系、マグネシウム系、アルミニウム系、ジルコニウム系、カルシウム系、チタン系、ズズ系及びこれらの混合系等の無機化合物が挙げられる。具体例としては、東亜合成(株)製の無機イオン捕捉剤、商品名、IXE−300(アンチモン系)、IXE−500(ビスマス系)、IXE−600(アンチモン、ビスマス混合系)、IXE−700(マグネシウム、アルミニウム混合系)、IXE−800(ジルコニウム系)、IXE−1100(カルシウム系)等がある。これらは単独あるいは2種以上混合して用いることができる。上記イオン捕捉剤の使用量は、添加による効果や耐熱性、コスト等の点から、接着剤全量100質量部に対して、0.01〜10質量部が好ましい。
【実施例】
【0221】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0222】
<液状感光性接着剤の調製>
下記表1に示す割合(質量部)で、まず熱硬化性樹脂と放射線重合性化合物を、オイルバスに設置した4つ口セパラブルフラスコにて、窒素雰囲気下で60℃に加熱しながら攪拌し、溶解させた。次に、得られた溶液に、下記表1に示す割合(質量部)で硬化促進剤と光重合開始剤を加え、さらに攪拌し溶解させた。こうして、調製例1〜3の液状感光性接着剤をそれぞれ得た。
【0223】
<感光性接着剤層の形成>
得られた液状感光性接着剤を、スピンコーター(ミカサ株式会社製、MS−200(商品名))を用いて、5インチΦシリコンウェハの裏面上に塗布した。液状感光性接着剤の様子を目視にて確認したところ、かすれ等無く、均一な20μm厚の感光性接着剤層を設けることができた。
【0224】
<感光性接着剤層のBステージ化>
アクリルボックス内に感光性接着剤層が形成されたシリコンウェハを入れ、平行露光機(ミカサ社(株)製、マスクアライナ ML−210FM(商品名))を用い、酸素濃度0%、3%、5%、10%、及び大気中の条件下でそれぞれ、感光性接着剤層に1000mJ/cm2の露光を行い、感光性接着剤層をBステージ化した。なお、酸素濃度は、アクリルボックス内に設置した酸素濃度計にて確認した。
【0225】
次に、Bステージ化した感光性接着剤層の表面に、Lami.Corplation.Inc社製のHotdog 12DXを用いて、ラミネート温度30℃にてダイシングテープをラミネートした。更に、このダイシングテープ上に、日立化成工業(株)社製の感圧型DCテープSD−3000を30℃でラミネートした。
こうして得られた積層体について、(株)島津製作所製AUTO GRAPH AGS−X 100Nを用いて、試験片幅10mm、試験速度300mm/分の条件でピール強度(ダイシングテープ90°引き剥がしピール強度)を測定することにより、Bステージ化した感光性接着剤層の表面タック力を求めた。結果を表2に示す。
【0226】
【表1】
【0227】
表1中における、それぞれの記号は下記の意味である。
M−140:「アロニックスM−140」、東亞合成(株)、2−(1,2−シクロヘキサカルボキシイミド)エチルアクリレート(イミド基含有単官能アクリレート、5%重量減少温度:200℃、25℃での粘度:450mPa・s)。
AMP−20GY:新中村化学工業社製、フェノキシジエチレングリコールアクリレート(単官能アクリレート、5%重量減少温度:175℃、25℃での粘度:16mPa・s)。
1032H60:JER(株)、ジャパンエポキシレジン株式会社製、α−2,3−エポキシプロポキシフェニル−ω−ヒドロポリ(n=1〜7)[2−(2,3−エポキシプロポキシ)ベンジリデン−2,3−エポキシプロポキシフェニレン](トリス(ヒドロキシフェニル)メタン型固形エポキシ樹脂。
I−651:チバ・ジャパン(株)、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(5%重量減少温度:170℃、i線吸光係数:400ml/gcm)。
I−819:チバ・ジャパン(株)、2−ジメチルアミノ−2−(4−メチルーベンジル)−1−(4−モルフォリン−4−イルーフェニル)−ブタンー1−オン(5%重量減少温度:260℃、i線吸光係数:8000ml/gcm)。
I−379EG:チバ・ジャパン(株)、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モノホニリル)フェニル]−1−ブタノン。
1B2PZ:四国化成工業(株)、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール。
【0228】
【表2】
【0229】
調製例1〜3の液状感光性接着剤から形成した感光性接着剤層はいずれも、酸素濃度10%以下で露光を行うことにより、感光性接着剤層の表面タックを十分低減することができた。
【符号の説明】
【0230】
1…半導体ウェハ、2…半導体チップ、4…粘着テープ(バックグラインドテープ)、5…感光性接着剤層、5a…接着剤層、6…粘着テープ(ダイシングテープ)、7…支持部材、8…グラインド装置、9…露光装置、10…ウェハリング、11…ダイシングブレード、12…ダイボンド装置、14…熱盤、16…ワイヤ、17…封止材、20…容器、22,24…通気管、26…酸素濃度計、100…半導体装置、S1…半導体ウェハの回路面、S2…半導体ウェハの裏面。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体ウェハの一方面上に、(A)放射線重合性化合物、(B)光重合開始剤及び(C)熱硬化性樹脂を含有する液状感光性接着剤を塗布して感光性接着剤層を設ける工程と、
前記感光性接着剤層を酸素濃度が10%以下の雰囲気下で露光してBステージ化することにより接着剤層付き半導体ウェハを得る工程と、
を備える、接着剤層付き半導体ウェハの製造方法。
【請求項2】
前記感光性接着剤層の露光を酸素濃度が5%以下の雰囲気下で行う、請求項1に記載の接着剤層付き半導体ウェハの製造方法。
【請求項3】
半導体ウェハの一方面上に、(A)放射線重合性化合物、(B)光重合開始剤及び(C)熱硬化性樹脂を含有する液状感光性接着剤を塗布して感光性接着剤層を設ける工程と、
前記感光性接着剤層を酸素濃度が10%以下の雰囲気下で露光してBステージ化することにより接着剤層付き半導体ウェハを得る工程と、
前記接着剤層付き半導体ウェハを切断して接着剤層付き半導体素子を得る工程と、
前記接着剤層付き半導体素子と、他の半導体素子又は半導体素子搭載用支持部材とを、前記接着剤層付き半導体素子の接着剤層を挟んで圧着することにより接着する工程と、
を備える、半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記感光性接着剤層の露光を酸素濃度が5%以下の雰囲気下で行う、請求項3に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の方法によって得られる、半導体装置。
【請求項1】
半導体ウェハの一方面上に、(A)放射線重合性化合物、(B)光重合開始剤及び(C)熱硬化性樹脂を含有する液状感光性接着剤を塗布して感光性接着剤層を設ける工程と、
前記感光性接着剤層を酸素濃度が10%以下の雰囲気下で露光してBステージ化することにより接着剤層付き半導体ウェハを得る工程と、
を備える、接着剤層付き半導体ウェハの製造方法。
【請求項2】
前記感光性接着剤層の露光を酸素濃度が5%以下の雰囲気下で行う、請求項1に記載の接着剤層付き半導体ウェハの製造方法。
【請求項3】
半導体ウェハの一方面上に、(A)放射線重合性化合物、(B)光重合開始剤及び(C)熱硬化性樹脂を含有する液状感光性接着剤を塗布して感光性接着剤層を設ける工程と、
前記感光性接着剤層を酸素濃度が10%以下の雰囲気下で露光してBステージ化することにより接着剤層付き半導体ウェハを得る工程と、
前記接着剤層付き半導体ウェハを切断して接着剤層付き半導体素子を得る工程と、
前記接着剤層付き半導体素子と、他の半導体素子又は半導体素子搭載用支持部材とを、前記接着剤層付き半導体素子の接着剤層を挟んで圧着することにより接着する工程と、
を備える、半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記感光性接着剤層の露光を酸素濃度が5%以下の雰囲気下で行う、請求項3に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の方法によって得られる、半導体装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−238700(P2012−238700A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−106324(P2011−106324)
【出願日】平成23年5月11日(2011.5.11)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年5月11日(2011.5.11)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】
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