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接着剤組成物およびそれを用いたタイヤ用コード
説明

接着剤組成物およびそれを用いたタイヤ用コード

【課題】接着疲労性およびゴム中耐熱接着性に優れたタイヤ用コードを得ることができる、1浴処理に好適な接着剤組成物およびそれを用いたタイヤ用コードを提供する。
【解決手段】ビニルピリジン・スチレン・ブタジエン共重合体ラテックスと、ブロックドイソシアネート化合物を含む熱硬化性樹脂と、を有し、ビニルピリジン・スチレン・ブタジエン共重合体ラテックスが、ビニルピリジンと、スチレンと、ブタジエンとが、それぞれ5〜15質量%、35〜80質量%、5〜60質量%の割合で含まれる混合溶液で重合を開始し、各成分を5〜20質量%、10〜40質量%、45〜75質量%まで3段階以上または連続的に変化させて重合を終了させて得られたラテックスであり、かつ、ビニルピリジン・スチレン・ブタジエン共重合体ラテックスの固形分100質量部に対して、ブロックドイソシアネート化合物を含む熱硬化性樹脂を固形分で35〜100質量部含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は接着剤組成物およびそれを用いたタイヤ用コード(以下、単に「コード」とも称す)に関し、詳しくは、接着疲労性およびゴム中耐熱接着性に優れたタイヤ用コードを得ることができる、1浴処理に好適な接着剤組成物およびそれを用いたタイヤ用コードに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ポリエステルやアラミドなどの不活性なタイヤ用コードへの接着剤処理としては、エポキシ等によって前処理を施し、次いで、レゾルシン・ホルムアルデヒド・ラテックス(RFL)に浸漬する2浴処理が一般的に用いられてきた。しかしながら、2浴処理は十分な接着力が得られるものの、2浴処理による加工費増大や設備的な制約より全体のコストが高くなりがちで、1浴処理が望まれている。
【0003】
一方、1浴処理では、RFLのみでは接着性の確保が難しいことから、RFL液に変性フェノール樹脂を混合させた接着剤液による1浴処理が提案されている(例えば、特許文献1)。また、あらかじめRFL液に、エポキシやブロックドイソシアネート化合物等の反応性試薬を混合させて用いる1浴処理も提案されている(例えば、特許文献2、3)。さらに、特許文献4には、ラテックスとして分割重合されたビニルピリジン・スチレン・ブタジエン共重合体を用いた接着剤組成物も提案されている(例えば、特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公昭48−8733号公報
【特許文献2】特許第3280826号公報
【特許文献3】特開平10−204780号公報
【特許文献4】特許第3559114号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のように、一浴処理による方法の変性フェノール樹脂を用いる方法では、樹脂の熱可塑性により、高温時の接着力が低下する傾向にある。また、特許文献2および3のように、エポキシやブロックドイソシアネート化合物を1浴で混合する方法では、接着力は得られるものの、接着剤樹脂が硬くなり、接着疲労性が悪化する等の問題がある。そのため、タイヤ用コードにとって必要なゴム中耐熱接着性が十分に確保できない等の理由により、タイヤ用途には必ずしも適していないのが現状である。また、接着剤樹脂が硬い場合は、タイヤ用コードが硬くなるため、タイヤ製造時のハンドリング性や作業性が悪化するといった問題も有している。
【0006】
ゴム中耐熱接着性は、コードに塗布する接着剤樹脂量を増やすことで確保は可能であるが、この場合、接着疲労性を悪化させてしまうことになる。一方、接着剤樹脂量を増やさずにゴム中耐熱接着性を確保するための薬剤について、例えば、塩化ビニル樹脂等が提案されている。しかしながら、塩化ビニル樹脂は、安全上好ましいとは言えず、十分な技術が確立されていないというのが現状である。また、特許文献4にて提案されている分割重合したビニルピリジン・スチレン・ブタジエン共重合体を用いた接着剤組成物でも、接着性を向上させるためには熱硬化性樹脂を増やす必要がある。しかしながら、熱硬化性樹脂を一定以上増やすと接着剤が硬く脆くなり、十分な接着性を得ることはできない。
【0007】
そこで、本発明の目的は、接着疲労性およびゴム中耐熱接着性に優れたタイヤ用コードを得ることができる、1浴処理に好適な接着剤組成物およびそれを用いたタイヤ用コードを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解消するために鋭意検討した結果、ゴム中耐熱接着性はブタジエン成分の少ないコアを持つラテックスを用いて架橋反応を適正化することにより確保することができ、これにより接着に必要なイソシアネート化合物を十分に配合しながらも接着剤組成物の柔軟性を確保し、疲労性、耐熱接着力を両立させることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明の接着剤組成物は、ビニルピリジン・スチレン・ブタジエン共重合体ラテックスと、ブロックドイソシアネート化合物を含む熱硬化性樹脂と、を有する接着剤組成物において、
前記ビニルピリジン・スチレン・ブタジエン共重合体ラテックスが、ビニルピリジンと、スチレンと、ブタジエンとの合計に対して、それぞれ5〜15質量%、35〜80質量%および5〜60質量%含まれる混合溶液で重合を開始し、各成分がそれぞれ5〜20質量%、10〜40質量%および45〜75質量%になるまで3段階以上または連続的に各成分の投入量を変化させて重合を終了させて得られたビニルピリジン・スチレン・ブタジエン共重合体ラテックスであり、かつ、
前記ビニルピリジン・スチレン・ブタジエン共重合体ラテックスの固形分100質量部に対して、前記ブロックドイソシアネート化合物を含む熱硬化性樹脂を固形分で35〜100質量部含むことを特徴とするものである。
【0010】
本発明においては、前記ビニルピリジン・スチレン・ブタジエン共重合体ラテックスが、ビニルピリジンと、スチレンと、ブタジエンとの合計に対して、それぞれ5〜15質量%、35〜80質量%および5〜60質量%含まれる混合溶液で重合を開始し、各成分がそれぞれ5〜20質量%、10〜40質量%および45〜75質量%になるまで3〜5段階に各成分の投入量を変化させて重合を終了させて得られたビニルピリジン・スチレン・ブタジエン共重合体ラテックスであることが好ましい。また、本発明においては、前記熱硬化性樹脂がアンモニアを触媒としたレゾルシン‐ホルムアルデヒド樹脂を含み、かつ、前記レゾルシン1molに対して前記アンモニアが0.5〜5.0molの範囲であることが好ましい。
【0011】
本発明のタイヤ用コードは、有機繊維コードに、上記本発明の接着剤組成物を用いた接着剤が塗布、乾燥されてなることを特徴とするものである。
【0012】
本発明においては、前記有機繊維コードはポリエステルコードまたはアラミドコードであることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、接着疲労性およびゴム中耐熱接着性に優れたタイヤ用コードを得ることができる、1浴処理に好適な接着剤組成物およびそれを用いたタイヤ用コードを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の好適な実施の形態について、詳細に説明する。
本発明の接着剤組成物は、ビニルピリジン・スチレン・ブタジエン共重合体ラテックスと、ブロックドイソシアネート化合物を含む熱硬化性樹脂と、を有する接着剤組成物である。本発明においては、ビニルピリジン・スチレン・ブタジエン共重合体ラテックスは、ビニルピリジンと、スチレンと、ブタジエンとの合計に対して、ビニルピリジンが5〜15質量%、スチレンが35〜80質量%、ブタジエンが5〜60質量%含まれる混合溶液で重合を開始し、各成分がそれぞれ5〜20質量%、10〜40質量%および45〜75質量%になるまで3段階以上または連続的に各成分の投入量を変化させて重合を終了させて得られたビニルピリジン・スチレン・ブタジエン共重合体ラテックスであり、このビニルピリジン・スチレン・ブタジエン共重合体ラテックスの固形分100質量部に対して、ブロックドイソシアネート化合物を含む熱硬化性樹脂を固形分で35〜100質量部含むことが肝要である。
【0015】
まず、ビニルピリジン・スチレン・ブタジエン共重合体ラテックスについて説明する。ビニルピリジン・スチレン・ブタジエン共重合体ラテックスの組成を反応開始時と反応化終了時で変化させた理由は以下の通りである。すなわち、ラテックス粒子中に二重結合を与えるブタジエン成分は、主に加硫工程中、その他の高温下使用時に、配合ゴムから移行・拡散する架橋剤により架橋反応を生じ、架橋の結果、次の作用を示す。第1は、架橋により、架橋の前後で接着剤層の体積およびモジュラス変化が生じ、その変化が大きい程接着力の耐久性を損なう。架橋反応は高温下において特に進行するため、高温下での接着劣化が大きくなる。よって、この点からは、ブタジエン成分は少ない方が好ましい。第2は、加硫初期に、熱により接着剤層と被着ゴムは相溶化し、粒子とゴム中のポリマーが絡み合い、架橋することで接着剤層−ゴム間の界面結合力を得る。よって、この点からは、ブタジエン成分が必要となる。
【0016】
これらの作用に鑑みて、従来のホモ組成構造のビニルピリジン・スチレン・ブタジエン共重合体ラテックスは、ブタジエン含量約70質量%付近のものを広く用いている。ブタジエン含量が少ない共重合体を用いたホモ粒子は、架橋による体積・モジュラス変化の影響が少なく、接着力の耐久性を向上させる作用が期待できるが、一方、被着ゴムへの相溶化で粒子内の共重合体の分子鎖と被着ゴムポリマー間で混合しにくくなり、ブタジエン量が少ないため架橋が少なくなり、接着剤層−ゴム間の界面結合力が小さく、その結果、接着のレベルが低くなって、特にブタジエン含量が40%以下の場合には粒子の被着ゴムへの相溶化が著しく小さくなり、界面結合力がほとんど発生せず、容易に接着剤−ゴム間で接着破壊を起こすという不都合がある。
【0017】
そこで本発明においては、接着力の向上および高温下での接着力低下防止のために、同一粒子内に従来通りのブタジエン含量のシェル部とブタジエン含量が少ないコア部を有しながら、各成分の組成がなだらかに変化する構造としている。すなわち、ブタジエン含量が少ないコア部と、従来レベルのブタジエン含量のシェル部において、ブタジエン含量がなだらかに傾斜するビニルピリジン・スチレン・ブタジエン共重合体ラテックスとすることで、加硫初期に、共重合体ラテックスとゴムポリマー分子鎖の絡み合い、シェル部が共加硫することで、従来と同様の接着剤−ゴム界面結合力が得られる。また同時に、粒子全体ではブタジエン含量が少なくなるため、加硫や製品使用時等で熱的入力が高温または長時間となるとき、架橋反応に伴う体積およびモジュラス変化による影響が少なくなり、接着力、特に耐熱耐久性を向上させることができる。好ましくは、各成分を3〜5段階に分けて、ブタジエン含量が多くなるように各成分の投入量を変化させて、ビニルピリジン・スチレン・ブタジエン共重合体ラテックス重合する。
【0018】
また、反応開始時の組成が、ビニルピリジン5〜15質量%、スチレン35〜80質量%、ブタジエン5〜60質量%である理由は次のとおりである。ビニルピリジンが5質量%未満では、接着剤層全体の接着力が低下してしまい、一方、15質量%を超えると、ラテックスの加硫反応が促進されてしまう。スチレンが35質量%未満では、ラテックス粒子の強度が低下し、接着剤層の強度低下、ひいては接着力の低下に繋がり、一方、80質量%を超えると、ラテックス粒子が硬くなり過ぎ、可撓性が低下し、製品を高歪下で使用した場合の接着力の低下が激しくなってしまう。また、ブタジエンが5質量%未満では、架橋が少なくなって、接着力が低下し、一方、60質量%を超えると、ラテックスの架橋が多くなってしまう。
【0019】
また、反応終了時の組成が、ビニルピリジン5〜20質量%、スチレン10〜40質量%、ブタジエン45〜75質量%である理由は次のとおりである。ビニルピリジンが5質量%未満では、接着剤層全体の接着力が低下してしまい、一方、20質量%を超えると、接着剤が脆くなってしまう。スチレンが10質量%未満では、ラテックス粒子、接着剤層の強度低下を引き起こし、接着力が低下し、40質量%を超えると、接着剤層と被着ゴムとの共加硫性が低下し、やはり接着力が低下してしまう。ブタジエンが45質量%未満では、架橋が少なすぎ、75質量%を超えると、架橋が多くなり、体積およびモジュラス変化による耐久性の低下を引き起こしてしまう。
【0020】
また、コア部とシェル部の組成の変化は重合時の原材料投入時における原材料の成分の変化を3段階以上または連続的に変化させることで、加硫や製品使用時等で熱的入力が高温または長時間となるとき、架橋反応に伴う体積およびモジュラス変化による影響が少なくなり、接着力、特に耐熱耐久性を向上させることができる。原材料の成分の変化が2段階ではゴム中耐熱接着を向上させる効果が低いため、エポキシやブロックドイソシアネート化合物を1浴で混合する方法では十分なゴム中耐熱接着力を得られない。
【0021】
本発明の効果を良好に得るためには、ビニルピリジン7〜13質量%、スチレン43〜77質量%およびブタジエン10〜50質量%で重合を開始し、3段階以上または連続的にビニルピリジンを7〜18質量%、スチレン15〜35質量%およびブタジエンを47〜73質量%まで変化させてビニルピリジン・スチレン・ブタジエン共重合体ラテックスを合成する。
【0022】
本発明に係るビニルピリジン・スチレン・ブタジエン共重合体は、次のようにして製造することができる。例えば、水にロジン酸カリウム等の乳化剤を溶解させた後、これにビニルピリジンと、スチレンと、ブタジエンとの合計に対して、それぞれ5〜15質量%、35〜80質量%および5〜60質量%の割合で含まれるように各成分を添加する。さらに、リン酸ナトリウム等の電解質および過酸化物類等を開始剤として加え、重合を行う。その後、所定の転化率に達した後、3段階以上または連続的にビニルピリジンを5〜20質量%、スチレンを10〜40質量%およびブタジエンを45〜75質量%まで変化させて、重合を続ける。その後、所定の転化率に達した後、反応停止剤を加え、重合を停止させ、さらに、残留する単量体を除去することによって、組成比の異なる重合体からなる構造のビニルピリジン・スチレン・ブタジエン共重合体を得ることができる。
【0023】
次に、熱硬化性樹脂について説明する。本発明に係る熱硬化性樹脂は、ブロックドイソシアネート化合物を含む。かかる熱硬化性樹脂は、接着性を博保するためには不可欠であるが、その添加量が多くなると、接着剤層が硬く脆くなり、十分な接着性を得ることはできなくなってしまう。しかしながら、本発明に係るビニルピリジン・スチレン・ブタジエン共重合体ラテックスであれば、ブロックドイソシアネート化合物を含む熱硬化性樹脂を35〜100質量部、好適には50〜80質量部配合しても、接着剤層の過剰な硬化を抑制することができる。これにより、1浴処理であっても接着疲労性や耐熱接着性を確保することができる。
【0024】
ブロックドイソシアネート化合物を含む熱硬化性樹脂の添加量を、ビニルピリジン・スチレン・ブタジエン共重合体ラテックスの固形分100質量部に対して、固形分で35〜100質量部とした理由は以下の通りである。すなわち、ブロックドイソシアネート化合物を含む熱硬化性樹脂の量が35質量部未満であると、有機繊維コードに十分な接着力を与えることはできず、一方、100質量部を超えると、接着性は十分に得られるものの、接着剤樹脂が硬くなってしまい、タイヤ用コードの疲労性を確保できず、また、コスト的にも好ましくないからである。なお、上記効果を十分に得るためには、熱硬化性樹脂に対するブロックドイソシアネート化合物の含有量は50〜80質量%とするのが好ましい。
【0025】
本発明においては、熱硬化性樹脂としては、レゾルシン−ホルムアルデヒド樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、ウレア−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂、フェノール誘導体−ホルムアルデヒド樹脂等、具体的には、m−3,5−キシレノール−ホルムアルデヒド樹脂、5−メチルレゾルシン−ホルムアルデヒド樹脂等の、加熱により、または、熱とメチレンドナーを与えることにより、硬化あるいは高分子量化する熱硬化型樹脂のうち1種または2種以上を用いることができる。
【0026】
かかる樹脂は、好ましくはアルカリ触媒下で合成されたレゾルシン−ホルムアルデヒド縮合物、同じくアルカリ触媒下で合成されたウレア−ホルムアルデヒド縮合物、または同じくアルカリ触媒下で合成されたレゾルシン−ホルムアルデヒド縮合物と酸性または中性下で合成されたフェノール誘導体−ホルムアルデヒド縮合物との混合物である。
【0027】
本発明においては、ブロックドイソシアネート化合物としては、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)やトリレンジイソシアネート(TDI)等の有機ポリイソシアネート化合物を、ブロック剤でブロックしたものが好ましい。ブロック剤としては、例えば、フェノール、チオフェノール、クロルフェノール、クレゾール、レゾルシノール、p−sec−ブチルフェノール、p−tert−ブチルフェノール、p−sec−アミルフェノール、p−オクチルフェノール、p−ノニルフェノール等のフェノール類;イソプロピルアルコール、tert−ブチルアルコール等の第2級または第3級のアルコール;ジフェニルアミン等の芳香族第2級アミン類;フタル酸イミド類;δ−バレロラクタム等のラクタム類;ε−カプロラクタム等のカプロラクタム類;マロン酸ジアルキルエステル、アセチルアセトン、アセト酢酸アルキルエステル等の活性メチレン化合物;アセトキシム、メチルエチルケトキシム、シクロヘキサノンオキシム等のケトオキシム類;3−ヒドロキシピリジン等の塩基性窒素化合物および酸性亜硫酸ナトリウム等を上げることができる。ブロック剤としてはフェノール、ε−カプロラクタムおよびケトオキシムが好適である。
【0028】
本発明においては、熱硬化性樹脂がアンモニアを触媒としたレゾルシン−ホルムアルデヒド樹脂を含み、かつ、レゾルシン1molに対してアンモニアが0.5〜5.0molの範囲であることが好ましい。レゾルシン1.0molに対して、アンモニアが0.5mol未満ではレゾルシン樹脂触媒としての効果が十分でなく、熟成反応に時間を要してしまい、熟成反応が十分に進行せず、接着性を確保できない場合がある。また、アンモニアレゾールの量が少ないため、RFL液が硬化してしまうおそれがある。一方、5.0molを超えると、反応系を促進してしまうため、RFL液の柔軟性を損なうおそれがある。
【0029】
さらに、レゾルシンとホルムアルデヒドの縮合反応の触媒として、水酸化ナトリウム等の金属触媒を用いずにアンモニアを用いているのは、水酸化ナトリウムのような金属化合物触媒は、RFL液の硬化を促進するため、RFL液の柔軟性を確保するのに適さないためである。また、金属化合物触媒は、強塩基性であるため、ゴムやコードの劣化を促進しやすいためである。これに対して、アンモニアは弱塩基性であるため、硬化反応が適切な速度で進行する。これにより、RFL液の柔軟性を保持することができる。また、アンモニアレゾール型樹脂からアンモニアは気化させることにより系中から脱離させることができるため、物理的な軟化および塩基によるゴム劣化を抑制することができる。
【0030】
本発明の接着剤組成物は、有機繊維コードとゴムとの接着性に優れており、タイヤ用コードの接着剤として好適である。本発明の接着剤組成物を用いてタイヤ用コードを製造する場合、接着剤を塗布した有機繊維コードを乾燥させて製造することになるが、この乾燥温度は通常、180℃〜210℃である。乾燥温度とブロックドイソシアネートのブロック剤乖離温度を同程度とすることにより、熱硬化樹脂の網目密度を低下させ、さらに接着剤樹脂組成物の柔軟性を確保することができる。そこで、本発明の接着剤組成物においては、ブロック剤乖離温度が180〜210℃であるブロックドイソシアネート化合物を用いることが好ましい。
【0031】
本発明の接着剤組成物は、上記条件で合成されたビニルピリジン・スチレン・ブタジエン共重合体ラテックス100質量部に対して、ブロックドイソシアネート化合物を含む熱硬化性樹脂が固形分で35〜100質量部含有することのみが重要であり、それ以外については、特に制限はない。例えば、ビニルピリジンとしては、2−ビニルピリジン、3−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、2−メチル−5−ビニルピリジン、5−エチル−2−ビニルピリジン等を挙げることができ、これらのうち1種または2種以上を用いることができる。
【0032】
また、スチレンとしては、α−メチルスチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、2,4−ジイソプロピルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、4−t−ブチルスチレン、ヒドロキシメチルスチレン等の芳香族ビニル化合物を挙げることができ、これらのうち1種または2種以上を用いることができる。
【0033】
また、ブタジエンとしては1,3−ブタジエンの以外にも、2−メチル−1,3−ブタジエン等の脂肪族共役ジエン系モノマーの1種または2種以上を挙げることができ、これらのうち1種または2種以上を用いることができる。
【0034】
さらに、本発明の共重合体ラテックスの重合に際しては、公知の乳化剤、重合開始剤、連鎖移動剤等を用いてもよい。また、本発明の共重合体ラテックスは上記以外に必要に応じてスチレン化フェノール類、ヒンダートフェノール類などの老化防止剤、シリコン系、高級アルコール系、鉱物油系の消泡剤、その他反応停止剤、凍結防止剤等の添加剤を使用してもよい。
【0035】
乳化剤としては、脂肪酸のアルカリ金属塩、ロジン酸のアルカリ金属塩、ホルムアルデヒド縮合ナフタレンスルホン酸ナトリウム、高級アルコールの硫酸エステル、アルキルベンゼンスルホン酸塩、脂肪族スルホン酸塩等のアニオン性界面活性剤あるいはポリエチレングリコールのアルキルエステル型、アルキルエーテル型、アルキルフェニルエーテル型等のノニオン性界面活性剤の1種または2種以上を用いることができる。このような乳化剤の使用量は、通常全単量体100質量部に対し0.1〜8質量部であり、好適には1〜5質量部である。
【0036】
重合開始剤としては過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等の水溶性開始剤、レドックス系開始剤、または過酸化ベンゾイル等の油溶性開始剤を用いることができる。
【0037】
連鎖移動剤としてはt−ドデシルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、オクチルメルカプタン、n−テトラデシルメルカプタン、t−ヘキシルメルカプタン、n−ヘキシルメルカプタン等の単官能アルキルメルカプタン類、例えば、1,10−デカンジチオール、エチレングリコールジチオグリコレート等の2官能メルカプタン類、1,5,10−カンジトリチオール、トリメチロールプロパントリスチオグリコレート等の3官能メルカプタン類、例えば、ペンタエリスリトールテトラキスチオグリコレート等の4官能メルカプタン類、ジスルフィド類、例えば、四塩化炭素、四臭化炭素、臭化エチレンなどのハロゲン化合物、α−メチルスチレンダイマー、ターピノーレン、α−テルピネン、ジペンテン、アリルアルコール等を用いることができ、これらは1種または2種以上を組み合わせて用いてもよい。このような分子量調整剤の使用量は、通常全単量体100質量部に対し0.01〜5質量部であり、好適には0.1〜3質量部である。
【0038】
次に、本発明のタイヤ用コードについて説明する。
本発明のタイヤ用コードは、上記本発明の接着剤組成物を用いた接着剤が塗布された有機繊維コードを乾燥させてなるタイヤ用コードである。本発明の接着剤組成物を用いることにより、一浴処理であっても接着疲労性およびゴム中耐熱接着性を有するタイヤ用コードを得ることができる。本発明のタイヤ用コードにおいては、接着剤を180〜210℃で乾燥させることが好ましい。先にも述べたとおり、コードの乾燥温度とブロックドイソシアネートのブロック剤乖離温度を同程度とすることにより、熱硬化樹脂の網目密度を低下させ、さらに接着剤組成物の柔軟性を確保することができるからである。なお、乾燥時におけるコード張力等のその他の条件は、既知の方法に従い適宜選択することができる。
【0039】
本発明においては、有機繊維コードの材質としては特に制限はなく、木綿、レーヨン、ポリアミド(ナイロン−6、ナイロン−6,6等)、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等)、アラミド(m−フェニレンイソフタルアミド、p−フェニレンテレフタルアミド等)等のコードを挙げることができるが、タイヤ用コードとしては、好適にはポリエステルまたはポリアミドのコードである。また既知の方法に従い、コロナ処理、プラズマ処理、エポキシ処理などの表面活性処理されたコードも使用することができる。
【0040】
本発明のタイヤ用コードは、乾燥後に210〜250℃でベーキングがなされていることが好ましい。これにより、接着剤組成物中でブロックドイソシアネート化合物のブロック剤を乖離させ、熱硬化性樹脂とタイヤ用コードとの反応を充分に進行させることができ、良好な接着疲労性および耐熱接着性を得ることができる。なお、ベーキング時のコードの張力等のその他の条件は、既知の方法に従って適宜選択することができる。
【0041】
本発明のタイヤ用コードは、上記本発明の接着剤組成物を用いた接着剤液用いることのみが重要であり、それ以外ついては特に制限はなく、公知の方法を用いることができる。例えば、接着剤を塗布するにあたっては、浸漬、はけ塗り、流延、噴霧、ロール塗布、ナイフ塗布等の手段を挙げることができる。なお、接着剤を塗布する際のコード張力等のその他の条件は既知の方法に従い適宜選択することができる。
【実施例】
【0042】
以下、本発明を、実施例を用いてより詳細に説明する。
(実施例1〜10および比較例1〜3)
下記表1および2に示す材質からなるコードを用意した。次に、同表に示す配合で実施例1〜10および比較例1〜3の接着剤組成物を調製し、この接着剤組成物を同表に示す配合比率を維持しつつ、20質量%の接着剤水溶液を調整した。ブロックドイソシアネート化合物としては、第一工業製薬社製:エラストロンBN69(ブロック剤乖離温度120℃)およびBN27(ブロック剤乖離温度180℃)を用いた。これらのブロックドイソシアネート化合物を、RFL接着剤液を配合し、20℃で24時間熟成させた後、使用直前に添加した。ラテックス共重合体は乳化重合により試作した。
【0043】
なお、表中の重合時組成変化の欄の1段階とは、重合開始から重合終了まで各成分の投入量が一定であること意味し、2段階とは、重合時間を2等分割し、中間時間で各成分の投入量を切り替えたことを意味し、3段階とは、重合時間を3等分割し、2段階目に重合開始時と重合終了における各成分の投入量を中間の値としたことを意味し、5段階とは、重合時間を5等分割し、3段階目は重合開始時と重合終了における各成分の投入量を中間の値とし、2段階目、4段階目はさらに3段階目の中間の値としたことを意味する。
【0044】
得られた各接着剤液および各有機繊維コードを用いて、タイヤ用コードを作製した。乾燥温度は表1および2に示す温度であり、乾燥時間は2分間とした。その後、同表に示す温度でベーキング処理を施した。なお、ベーキング時間は1分間とし、コード張力は1kg/本とした。
【0045】
上記手順で得られた各有機繊維コードをカーカスプライ材として用いて、2層のカーカスプライを有するタイヤサイズ225/45R17のタイヤを作製した。
【0046】
<新品タイヤ剥離抗力>
得られた各タイヤにつき、1層目のカーカスプライと2層目のカーカスプライ間の接着力を測定し、これを剥離抗力とした。接着力は、JIS K 6854−2(1999年)に準拠して行った。得られた結果を表1および2に併記する。
【0047】
<ドラム走行タイヤ剥離抗力>
得られた各タイヤにつき、JATMAの最大荷重条件にてドラム上を60km/hの速度で2万km走行させた後、1層目のカーカスプライと2層目のカーカスプライ間の接着力を測定し、これを剥離抗力とした。接着力は、JIS K 6854−2(1999年)に準拠して行った。得られた結果を表1および2に併記する。
【0048】
<ドラム走行後の故障>
上記ドラム試験の後に、故障が発生しているか否かにつき調査した。得られた結果を表1および2に併記する。
【0049】
【表1】

【0050】
【表2】

【0051】
上記表1および2より、本発明の接着剤組成物によれば、1浴処理で接着疲労性およびゴム中耐熱接着性を有するタイヤ用コードを製造することができることがわかる。なお、比較例1は、新品タイヤ剥離強力およびドラム走行タイヤ剥離強力のいずれも向上しているが、ビニルピリジン・スチレン・ブタジエン共重合体ラテックスを2段階で重合しているため、重合開始時の組成と重合終了時の組成との組成差が大きい。そのため、ドラム走行における高速走行中のように発熱が生じた場合、接着劣化が起こりやすく、結果的に故障に至ってしまった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビニルピリジン・スチレン・ブタジエン共重合体ラテックスと、ブロックドイソシアネート化合物を含む熱硬化性樹脂と、を有する接着剤組成物において、
前記ビニルピリジン・スチレン・ブタジエン共重合体ラテックスが、ビニルピリジンと、スチレンと、ブタジエンとの合計に対して、それぞれ5〜15質量%、35〜80質量%および5〜60質量%含まれる混合溶液で重合を開始し、各成分がそれぞれ5〜20質量%、10〜40質量%および45〜75質量%になるまで3段階以上または連続的に各成分の投入量を変化させて重合を終了させて得られたビニルピリジン・スチレン・ブタジエン共重合体ラテックスであり、かつ、
前記ビニルピリジン・スチレン・ブタジエン共重合体ラテックスの固形分100質量部に対して、前記ブロックドイソシアネート化合物を含む熱硬化性樹脂を固形分で35〜100質量部含むことを特徴とする接着剤組成物。
【請求項2】
前記ビニルピリジン・スチレン・ブタジエン共重合体ラテックスが、ビニルピリジンと、スチレンと、ブタジエンとの合計に対して、それぞれ5〜15質量%、35〜80質量%および5〜60質量%含まれる混合溶液で重合を開始し、各成分がそれぞれ5〜20質量%、10〜40質量%および45〜75質量%になるまで3〜5段階に各成分の投入量を変化させて重合を終了させて得られたビニルピリジン・スチレン・ブタジエン共重合体ラテックスである請求項1記載の接着剤組成物。
【請求項3】
前記熱硬化性樹脂がアンモニアを触媒としたレゾルシン‐ホルムアルデヒド樹脂を含み、かつ、前記レゾルシン1molに対して前記アンモニアが0.5〜5.0molの範囲である請求項1または2記載の接着剤組成物。
【請求項4】
有機繊維コードに、請求項1〜3のうちいずれか一項記載の接着剤組成物を用いた接着剤が塗布、乾燥されてなることを特徴とするタイヤ用コード。
【請求項5】
前記有機繊維コードがポリエステルコードまたはアラミドコードである請求項4記載のタイヤ用コード。

【公開番号】特開2013−82923(P2013−82923A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−219540(P2012−219540)
【出願日】平成24年10月1日(2012.10.1)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】