説明

接着剤組成物およびそれを用いた熱シール接着用材料

【課題】極性および非極性の両基材に対して熱シール性に優れた熱シール層を付与すること。
【解決手段】樹脂粒子が水に分散してなるエマルジョンを含む接着剤組成物であって、前記樹脂粒子は、オレフィン系単量体(a−1)から誘導される構成単位を有するオレフィン系重合体(A)と、極性官能基を有するアクリル系単量体(b)から誘導される構成単位を有するアクリル系重合体(B)と、を同一粒子内に含有することを特徴とする接着剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、極性基材および非極性基材の両者に対して良好な接着性を有する接着剤組成物、および、これを各種プラスチックフィルム、蒸着フィルム、アルミ箔、紙、不織布等の基材に塗布してなる熱シール等による接着機能を有する材料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、各種プラスチックフィルム、蒸着フィルム、アルミ箔、紙、不織布等の基材を張り合わせるため、種々の接着剤組成物が広く用いられている。また、接着剤組成物をプラスチックフィルム、アルミ箔等に塗工・乾燥し、樹脂被膜を形成させたものは、熱シール接着用材料として包装用途等で広く使用されている。
【0003】
プラスチックフィルムの具体例としては、例えば、セロハンフィルム、ポリエチレンフィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体フィルム、アイオノマーフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレン・ビニルアルコール共重合体フィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリアクリロニトリル共重合体フィルム等をあげることができる。また、蒸着フィルムとしては例えばこれらプラスチックフィルム上に、アルミ、金、銀、銅、ニッケル、亜鉛、チタン、コバルト、インジウム、クロム等の金属を蒸着したものや、酸化アルミ、酸化珪素を蒸着したフィルム等があげられる。
【0004】
近年、食品包装、医療包装をはじめとする種々の分野において、より高品質、かつ低価格のラミネート包装体、プラスチックフィルムをラミネートした製品、塗装物品などが求められており、接着剤についても、ポリオレフィン等の非極性基材と、各種金属やポリエステル等の極性基材との両者に対して従来よりも優れた密着性を有することが要望されている。
【0005】
しかし、一般に、オレフィン系重合体の接着剤組成物は、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系基材に代表される非極性基材に対する密着性に優れ、その塗膜は強靱性に優れるが、ナイロン、ポリスチレン、ポリアクリル、ポリエチレンテレフタラート、各種金属といった極性基材に対する密着性に乏しく、また低温での造膜性に劣るという問題がある。
【0006】
また、アクリル系重合体の接着剤組成物は、オレフィン系重合体のそれと相反して、極性基材との密着性および低温での造膜性に優れるが、ポリオレフィン系基材のような非極性基材に対する密着性に乏しく、その塗膜は強靱性に劣るという課題がある。
【0007】
このような課題を解決するため、特開昭57−4054号公報(特許文献1)にはエチレン含有量が5〜30重量%であるエチレン−酢酸ビニル共重合体の水性エマルションの存在下でアクリル系単量体を水性の重合開始剤によって重合させる方法が開示されているが、この方法で得られたエマルション組成物は、エチレン含有量が少なく、酢酸ビニル含有量が多いためポリオレフィンに接着しにくい傾向がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開昭57−4054号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、極性基材および非極性基材の両者に対して良好な接着性を有する水分散系の接着剤組成物、および、これを各種プラスチックフィルム、蒸着フィルム、アルミ箔、紙、不織布等の基材に塗布してなる熱シール等による接着機能を有する材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記の問題を解決すべく鋭意検討した結果、極性基材および非極性基材双方に対して良好な密着性を有する水性の接着剤組成物が、特定のオレフィン系重合を含む樹脂粒子(I)と、特定のアクリル系重合体を含む樹脂粒子(II)とを水に分散したエマルションを含有させることによって得られることを見いだし、本発明を完成させた。
【0011】
[1]樹脂粒子が水に分散してなるエマルジョンを含む接着剤組成物であって、前記樹脂粒子は、オレフィン系単量体(a−1)から誘導される構成単位を有するオレフィン系重合体(A)と、極性官能基を有するアクリル系単量体(b)から誘導される構成単位を有するアクリル系重合体(B)と、を同一粒子内に含有することを特徴とする接着剤組成物。
[2]前記極性官能基は、水酸基、カルボキシル基、グリシジル基、リン酸基、および、アミド基からなる群から選択される1又は2以上の官能基であることを特徴とする[1]に記載の接着剤組成物。
[3]オレフィン系重合体(A)とアクリル系重合体(B)の合計量を100重量%としたとき、オレフィン系重合体(A)の含有量が99〜1重量%、アクリル系重合体の含有量が1〜99重量%であることを特徴とする[1]または[2]に記載の接着剤組成物。
[4]オレフィン系重合体(A)は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ−1−ブテン、ポリ−3−メチル−1−ブテン、ポリ−3−メチル−1−ペンテン、ポリ−4−メチル−1−ペンテン、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・1−ブテン共重合体、エチレン・オクテン共重合体、プロピレン・1−ブテン共重合体、および、プロピレン・1−ブテン・エチレン共重合体からなる群から選択される1または2以上の共重合体を含むことを特徴とする[1]〜[3]いずれかに記載の接着剤組成物。
[5]アクリル系重合体(B)は、前記アクリル系単量体(b−1)を0.1〜100重量%含有する単量体を重合してなる重合体であることを特徴とする[1]〜[4]いずれかに記載の接着剤組成物。
[6]樹脂粒子(I)の重量平均粒子径および樹脂粒子(II)の重量平均粒子径が、いずれも10nm〜500μmであることを特徴とする[1]〜[5]いずれかに記載の接着剤組成物。
[7][1]〜[6]いずれかに記載の接着剤組成物を基材に塗工してなる熱シール接着用材料。
【0012】
上記[1]〜[7]の接着剤組成物は、同一粒子内に特定のオレフィン系重合体と特定のアクリル系重合体を含有した構成を採用している。このため、単にアクリル系重合体およびオレフィン系重合体を併用する技術と異なり、従来技術に比し、極性基材および非極性基材の双方に対して、顕著に優れた密着性を実現することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る接着剤組成物は、各種プラスチックフィルム、金属箔、紙、不織布等、極性および非極性の両基材に対し良好な接着性を有し、また、各種基材に塗工することによって、極性および非極性の両基材に対して熱シール性に優れた熱シール層を付与することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に係る第一の接着剤組成物は、樹脂粒子(I)および樹脂粒子(II)を少なくとも含む樹脂粒子が水に分散してなるエマルションを含有するものである。この接着剤組成物は、樹脂粒子(I)が水に分散してなるエマルションと、樹脂粒子(II)が水に分散してなるエマルションとをそれぞれ別個に調製した後、これらをさらに混合し、さらに所望の添加剤等を添加する方法で製造することができる。樹脂粒子(I)および樹脂粒子(II)を同一バッチで重合し、これらを含むエマルションを作製した後、所望の添加剤等を添加する方法により製造することもできる。
【0015】
樹脂粒子(I)は、オレフィン系単量体(a−1)から誘導される構成単位を有するオレフィン系重合体(A)を含むものであり、オレフィン系重合体(A)から主としてなるものであることが望ましい。ここで、「オレフィン系重合体(A)から主としてなる」とは、オレフィン系重合体(A)を樹脂粒子(I)に含まれる樹脂全体に対し70重量%以上、好ましくは80重量%以上含有することをいう。樹脂粒子(I)が水に分散したエマルションの製造方法は、例えば特公平7−008933号、特公平7−096647号、特公平5−039975号等に開示されている。
【0016】
樹脂粒子(I)は、後述するようにカルボキシル基を含むものとすることができるが、この場合、樹脂粒子(I)に含有されるカルボキシル基は、樹脂粒子(I)に含有される全てのカルボキシル基を基準として、5mol%〜200mol%が塩基性化合物で中和されていることが好ましい。5mol%未満では、水中に樹脂粒子を安定に存在させることが困難になる場合がある。また、200mol%を超える場合にはエマルション組成物が高粘度となり、作業性が低下する場合がある。特に樹脂粒子を水中に安定に分散させるためには、より好ましくは50mol%〜150mol%、さらに好ましくは85mol%〜150mol%である。塩基性化合物としては水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の無機塩基性化合物;アンモニアやトリエチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン等のアミン類で代表される有機塩基性化合物等が挙げられる。
【0017】
樹脂粒子(II)は、極性官能基を有するアクリル系単量体(b−1)から誘導される構成単位を有するアクリル系重合体(B)を含むものであり、アクリル系重合体(B)から主としてなるものであることが望ましい。ここで、「アクリル系重合体(B)から主としてなる」とは、アクリル系重合体(B)を樹脂粒子(II)に含まれる樹脂全体に対し70重量%以上、好ましくは90重量%以上含有することをいう。樹脂粒子(II)が水に分散したエマルションは、公知の乳化重合法を用いて極性官能基を有するアクリル系単量体(b−1)を含む単量体を重合することで作製することができる。具体的には、開始剤存在下、各種単量体を一括して、もしくは分割して、あるいは連続的に滴下して加えることで行われる。重合温度は、一般的には0〜100℃、実用的には30〜90℃の温度である。
【0018】
本発明に係る第二の接着剤組成物は、オレフィン系単量体(a−1)から誘導される構成単位を有するオレフィン系重合体(A)と、極性官能基を有するアクリル系単量体(b−1)から誘導される構成単位を有するアクリル系重合体(B)とを同一粒子内に含有する樹脂粒子が分散してなるものである。このエマルションにおいては、各々の樹脂同士がグラフト反応などによって化学的に結合している状態、或いは電気的吸引などによって物理的に結合している状態もその概念に含むことができる。
【0019】
オレフィン系重合体(A)とアクリル系重合体(B)を同一粒子内に含有する樹脂粒子が水に分散したエマルションの製造方法は、特に限定されるものではないが、例えば、オレフィン系エマルション、すなわち、オレフィン系重合体(A)の粒子が水に分散したエマルションの存在下で、アクリル系単量体(b)を重合することにより、オレフィン系重合体(A)の粒子内にアクリル重合体(B)を生成せしめることにより製造することができる。
【0020】
重合に用いる各種の単量体はこれを一括して、又は、分割して、あるいは、連続的に滴下して加え、前記した開始剤存在下に、一般的には0〜100℃で、実用的には30〜90℃で、重合される。
【0021】
[オレフィン系重合体(A)]
本発明において、オレフィン系重合体(A)は、オレフィン系単量体(a−1)から誘導される構成単位を有するものである。すなわち、オレフィン系重合体は、オレフィン系単量体(a−1)の単独重合体、またはオレフィン系単量体(a−1)と他の単量体の共重合体である。オレフィン系重合体(A)は単一の種類の重合体からなるものであってもよく、2種類以上の重合体が混合したものであってもよい。
【0022】
オレフィン系重合体(A)の具体例としては、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ1−ブテン、ポリ3−メチル−1−ブテン、ポリ4−メチル−1−ペンテン、ポリ3−メチル−1−ペンテン;あるいは、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・1−ブテン共重合体、プロピレン・1−ブテン共重合体、プロピレン・1−ブテン・エチレン共重合体で代表されるエチレン、プロピレン、1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−ヘプテン、1−ヘキセン、1−デセン、1−ドデセン等のα−オレフィンの単独重合体、又は、これらのうちの2種類又は3種類以上のランダムあるいはブロック共重合体;
または、エチレン・ブタジエン共重合体、エチレン・エチリデンノルボルネン共重合体で代表されるα−オレフィンと共役ジエンまたは非共役等ジエンとの共重合体;
あるいは、エチレン・プロピレン・ブタジエン3元共重合体、エチレン・プロピレン・ジシクロペンタジエン3元共重合体、エチレン・プロピレン・エチリデンノルボルネン3元共重合体、エチレン・プロピレン・1,5−ヘキサジエン3元共重合体等で代表される2種類以上のα−オレフィンと共役ジエン、又は、非共役ジエンとの共重合体;
あるいは、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・ビニルアルコール共重合体、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体等のオレフィン系単量体と他の熱可塑性単量体との共重合体等、を挙げることができる。
【0023】
特に熱シール接着後に良好な剥離強度を発現するものとして、α−オレフィンと共役ジエンまたは非共役等ジエンとの共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体が挙げられ、好ましくはエチレン・1−ブテン共重合体、エチレン・プロピレン共重合体、プロピレン・1−ブテン共重合体、エチレン・オクテン共重合体、及び、エチレン・1−ブテン・プロピレン共重合体、エチレン・プロピレン・エチリデンノルボルネン共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体であり、さらに好ましくはエチレン・1−ブテン共重合体、エチレン・プロピレン共重合体、プロピレン・1−ブテン共重合体、エチレン・オクテン共重合体、及び、エチレン・1−ブテン・プロピレン共重合体である。
【0024】
本発明において、オレフィン系重合体(A)の態様としては、以下の(1)、(2)及び(3)がある。
(1)オレフィン系単量体(a−1)を重合してなるオレフィン系重合体(A)。
(2)オレフィン系単量体(a−1)と、それ以外の共重合可能な単量体(a−3)を重合してなるオレフィン系重合体(A)。
(3)オレフィン系単量体(a−1)と、カルボキシル基含有単量体(a−2)、それ以外の共重合可能な単量体(a−3)を重合してなるオレフィン系重合体(A)。
【0025】
本発明において、オレフィン系単量体(a−1)は、特に制限されるものではないが、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチルー1−1ヘキセン、4,4ジメチルー1−ヘキセン、1−ノネン、1−オクテン、1−ヘプテン、1−ヘキセン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン等のα−オレフィン;ブタジエン、エチリデンノルボルネン、ジシクロペンタジエン、1,5−ヘキサジエン等の共役ジエン、非共役ジエン等が挙げられ、これらの単量体は、1種類又は2種類以上を選択することができる。
【0026】
本発明において、カルボキシル基含有単量体(a−2)、すなわち、オレフィン系重合体(A)の重合に供するカルボキシル基含有単量体(a−2)は、オレフィン系単量体と共重合可能な単量体であれば、特に制限されるものではない。カルボキシル基含有単量体(a−2)の具体例としては、例えば、メタアクリル酸、アクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、クロトン酸、フマル酸等が挙げられ、これらの単量体は、1種類又は2種類以上を選択することができる。良好なヒートシール性を発現するために、より好ましい単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸である。
【0027】
本発明において、それ以外の共重合可能な単量体(a−3)、すなわち、オレフィン系重合体(A)の重合に供するそれ以外の共重合可能な単量体(a−3)は、オレフィン系単量体と共重合可能な単量体であれば、特に制限されるものではないが、例えば、酢酸ビニル、ビニルアルコール等が挙げられ、これらの単量体は、1種類又は2種類以上を選択することができる。良好なヒートシール性を発現するためのより好ましい単量体とは、酢酸ビニルである。
【0028】
オレフィン系単量体(a−1)、カルボキシル基含有単量体(a−2)、それ以外の共重合可能な単量体(a−3)の比率は、オレフィン系単量体(a−1)、カルボキシル基含有単量体(a−2)、それ以外の共重合可能な単量体(a−3)の合計重量を基準として、好ましくは、オレフィン系単量体(a−1)100〜35.0重量%、カルボキシル基含有単量体(a−2)0〜65.0重量%、それ以外の共重合可能な単量体(a−3)0〜50.0重量%であり、より好ましくは、オレフィン系単量体(a−1)100〜50.0重量%、カルボキシル基含有単量体(a−2)0〜50.0重量%、それ以外の共重合可能な単量体(a−3)0〜20.0重量%であり、さらに好ましくは、オレフィン系単量体(a−1)100〜70.0重量%、カルボキシル基含有単量体(a−2)0〜30.0重量%、それ以外の共重合可能な単量体(a−3)0.0重量%である。オレフィン系単量体(a−1)が、少なすぎると、接着性の低下が生ずる場合がある。
【0029】
[アクリル系重合体(B)]
本発明において、アクリル系重合体(B)は、極性官能基を有するアクリル系単量体(b−1)から誘導される構成単位を有するものである。すなわち、アクリル系重合体(B)は、極性官能基を有するアクリル系単量体(b−1)の単独重合体、または極性官能基を有するアクリル系単量体(b−1)とその他のアクリル系単量体(b−2)の共重合体である。アクリル系重合体(B)は単一の種類の重合体からなるものであってもよく、2種類以上の重合体が混合したものであってもよい。
【0030】
極性官能基を有するアクリル系単量体(b―1)の具体例としては、例えば、水酸基を有するヒドロキエチルアクリレート、ヒドロキプロピルアクリレート、ヒドロキエチルメタクリレート、ヒドロキプロピルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート等のヒドロキシアルキルアクリレート類;カルボキシル基を有するアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸等;グリシジル基を有するグリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート等;リン酸基を有するモノ(2−メタクリロイルオキシエチル)アシッドホスフェート、モノ(2−アクリロイルオキシエチル)アシッドホスフェート等;アミド基を有するアクリルアミド、メタクリルアミド等;その他の官能基を有する単量体としてアクリロニトリル、メタクリロニトリル等が挙げられ、これらの1種、又は、2種以上を選択することができる。
【0031】
その他のアクリル系単量体(b−2)の具体例としては、アクリル酸エステル類、メタアクリル酸エステル類、特に炭素原子数1〜12のアルキルエステルが好ましいが、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸i−ブチル、アクリル酸2−エチルへキシル、アクリル酸ラウリル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸i−ブチル、メタクリル酸2−エチルへキシル、メタクリル酸ラウリル等が挙げられ、これらの1種、又は、2種以上を選択することができる。また、これらアクリル系単量体以外に、他の共重合可能な単量体、例えばスチレン、α−メチルスチレン等の芳香族系単量体等を用いてもよい。
【0032】
良好なヒートシール性を発現するため、より好ましい極性官能基を有するアクリル系単量体(b―1)としては、水酸基を有するヒドロキエチルアクリレート、ヒドロキプロピルアクリレート、ヒドロキエチルメタクリレート、ヒドロキプロピルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート等、カルボキシル基を有するアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸等、グリシジル基を有するグリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート等、リン酸基を有するモノ(2−メタクリロイルオキシエチル)アシッドホスフェート、モノ(2−アクリロイルオキシエチル)アシッドホスフェート等、アミド基を有するアクリルアミド、メタクリルアミド等である。
【0033】
より好ましくは、水酸基を有するヒドロキエチルアクリレート、ヒドロキプロピルアクリレート、ヒドロキエチルメタクリレート、ヒドロキプロピルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート等、カルボキシル基を有するアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸等、グリシジル基を有するグリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート等、リン酸基を有するモノ(2−メタクリロイルオキシエチル)アシッドホスフェート、モノ(2−アクリロイルオキシエチル)アシッドホスフェート等である。
【0034】
もっとも好ましくはグリシジル基を有するグリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート等、リン酸基を有するモノ(2−メタクリロイルオキシエチル)アシッドホスフェート、モノ(2−アクリロイルオキシエチル)アシッドホスフェート等である。
【0035】
アクリル系重合体(B)に重合に供することができる他の単量体(b−2)としては、例えば、メチルメタアクリレート、スチレン、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタアクリル酸2−エチルヘキシル、n−ブチルアクリレート、i−ブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、n−ブチルメタアクリレート、i−ブチルメタアクリレート、t−ブチルメタアクリレート、エチルアクリレート、メチルアクリレート、エチルメタアクリレート、メチルメタアクリレートが好ましい。
【0036】
より好ましくは、例えば、メチルメタアクリレート、スチレン、アクリル酸2−エチルヘキシル、n−ブチルアクリレート、i−ブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、エチルアクリレート、メチルアクリレートである。
【0037】
最も好ましくは、メチルメタアクリレート、スチレン、アクリル酸2−エチルヘキシルアクリレート、n−ブチルアクリレート、i−ブチルアクリレート、t−ブチルアクリレートである。
【0038】
本発明において、アクリル系重合体(B)は、アクリル系単量体(b−1)を、好ましくは0.1〜100重量%、より好ましくは1〜80重量%含有する単量体(混合物)を重合してなる重合体であることが好ましい。
【0039】
[オレフィン系重合体(A)とアクリル系重合体(B)の重量比]
本発明において、オレフィン系重合体(A)とアクリル系重合体(B)の重量比は、オレフィン系重合体(A)とアクリル系重合体(B)の合計重量を基準として、オレフィン系重合体(A)99〜1重量%、アクリル系重合体(B)1〜99重量%が好ましく、さらに好ましくは、オレフィン系重合体(A)90〜5重量%、アクリル系重合体(B)10〜95重量%であり、最も好ましくはオレフィン系重合体(A)90〜30重量%、アクリル系重合体(B)10〜70重量%である。オレフィン系重合体(A)が少なすぎるとオレフィンの特徴が発現されず、例えば非極性基材への接着性が低下する場合がある。逆にオレフィン系重合体(A)が多すぎると極性基材への接着性が低下する場合がある。
【0040】
[樹脂粒子の平均粒子径]
本発明に係る第一の接着剤組成物は、樹脂粒子(I)および樹脂粒子(II)を含み、本発明に係る第二の接着剤組成物は、オレフィン系重合体(A)およびアクリル系重合体(B)を含有する樹脂粒子を含むものである。これらの樹脂粒子の重量平均粒子径は、好ましくは10nm〜500μmが、より好ましくは10nm〜100μm、さらに好ましくは10nm〜10μm、最も好ましくは10nm〜2μmである。粒子径が大きすぎると、長期保存時の粒子分離が顕著になりやすく、さらには透明性や耐水性の低下を起こす場合がある。
【0041】
[開始剤]
本発明において重合時に使用される開始剤は、特に限定されるものではなく、一般に乳化重合に使用されるものを使用することができる。代表的なものを挙げると、過酸化水素;過硫酸アンモニウムや過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩;クメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ラウロイルパーオキサイド等の有機過酸化物;アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物;あるいはこれらと鉄イオン等の金属イオン及びナトリウムスルホキシレート、ホルムアルデヒド、ピロ亜硫酸ソーダ、亜硫酸水素ナトリウム、L−アスコルビン酸、ロンガリット等の還元剤との組み合わせによるレドックス開始剤等が挙げられ、これらの1種類もしくは2種類以上を用いることができる。開始剤の使用量は、通常、単量体の総量に対し0.1〜5重量%とする。
【0042】
また、必要に応じてt−ドデシルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン等のメルカプタン類、アリルスルフォン酸、メタアリルスルフォン酸及びこれ等のソーダ塩等のアリル化合物などを分子量調節剤として使用することも可能である。
【0043】
[界面活性剤]
本発明において、粒子の安定性を向上させるため、通常の乳化重合に使用される界面活性剤を用いることも可能である。かかる界面活性剤の具体例としては、例えば、アニオン系界面活性剤、非イオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、その他反応性界面活性剤などが挙げられ、これらの1種もしくは2種以上を併用することができる。
【0044】
非イオン系界面活性剤非イオン系界面活性剤としては、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、オキシエチレン・オキシプロピレンブロックコポリマー、tert−オクチルフェノキシエチルポリエトキシエタノール、ノニルフェノキシエチルポリエトキシエタノール等が挙げられる。
【0045】
アニオン系界面活性剤アニオン系界面活性剤としては、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム、アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、オレイン酸カリウム、ナトリウムジオクチルスルホサクシネート、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウムジアルキルスルホコハク酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、tert−オクチルフェノキシエトキシポリエトキシエチル硫酸ナトリウム塩等が挙げられる。
【0046】
カチオン系界面活性剤カチオン系界面活性剤としては、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド等が挙げられる。
界面活性剤の使用量は特に制限されないが、通常、重合に用いる単量体の全重量に対し0.02〜5重量%とする。
【0047】
[添加剤]
本発明の接着剤組成物には、各種添加剤、例えば硬化剤、架橋剤、造膜助剤、消泡剤、ハジキ防止剤、レベリング剤、粘着付与剤、硬度付与剤、防腐剤、増粘剤、凍結防止剤、分散剤など、また無機顔料、有機顔料などの各種顔料を添加することも可能である。
【0048】
本発明に係る接着剤組成物は、アルミ箔等の金属箔からなる極性基材と、プラスチックフィルム等の非極性基材との接着に好適に用いられる。このような基材間の接着に用いた場合、重合体(A)および重合体(B)の相乗作用により顕著に優れた接着性が発現する。
【0049】
[基材]
本発明の接着剤を塗工する基材の具体例としては、例えば、セロハン、ポリエチレンフィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体フィルム、アイオノマーフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリアミドフィルム(ナイロンフィルム)、ポリエステルフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレン・ビニルアルコール共重合体フィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリアクリロニトリル共重合体フィルム等のプラスチックフィルム;また、これらのプラスチックフィルム上に、アルミ、金、銀、銅、ニッケル、亜鉛、チタン、コバルト、インジウム、クロム等の金属を蒸着したものや、酸化アルミ、酸化珪素等を蒸着した、蒸着フィルム;アルミ箔等の金属箔、紙、不織布、木材、合板等が挙げられる。
【0050】
本発明の接着剤は、アルミ箔等に代表される極性基材と、ポリプロピレンフィルムに代表される非極性基材との双方に良好な密着性を有するため、各種プラスチックフィルム同士の接着や、各種プラスチックフィルムとアルミ箔、紙、不織布、木材、合板、集成材等の接着に好適に使用できる。
【0051】
アルミ箔等の金属箔と、ポリプロピレンフィルムのようなプラスチックフィルムを張り合わせる場合、通常、熱シール接着が用いられる。
本発明に係る接着剤組成物は、基材に塗工・乾燥することで、基材に熱シール接着性を付与することができる。
【0052】
本発明に係る接着剤組成物は、グラビア塗装、ロール塗装、浸漬塗装、噴霧塗装などの適当な方法で、所望の基材へ塗工され、乾燥可能な温度条件、例えば80〜200℃程度の温度で乾燥される。基材との密着性を高めるためにプライマーを予め塗工したり、前処理を行うことも可能である。例えば、プラスチックフィルムに塗工する場合、基材フィルムにコロナ放電処理や化成処理を行ったり、チタネートやポリエチレンイミン等のプライマーを塗布することも可能である。また、プラスチックフィルムはその製造時に、延伸を行うことが多々あるが、接着剤組成物を延伸前のフィルム上に塗工し、その後延伸させることも可能である。また縦方向と横方向の2軸方向での延伸を行う場合、一方の延伸をした後、熱シール接着剤組成物を塗工し、さらにその後、もう一方の延伸を行うことも可能である。
【実施例】
【0053】
次に本発明を実施例により具体的に説明する。実施例中、部数および%は、とくにことわりがない限りすべて重量基準である。
[参考例1]
脱イオン水110部、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ0.1部を反応容器に仕込み、窒素気流下で72℃に昇温した。昇温後、過硫酸カリウム0.5部を反応容器に投じ、これとは別に、スチレン45部、2−エチルヘキシルアクリレート45部、グリシジルメタクリレート10部、n−ドデシルメルカプタン0.1部を脱イオン水40部中にドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ0.4部を使って乳化させた乳化混合物を作り、この乳化混合物を3時間で反応容器に滴下して、その後、更に同温度で3時間保持して重合を完結させた。得られたアクリル系エマルションは不揮発分40%で、8%アンモニア水でpH8に調製した。光散乱測定による重量平均粒子径は100nmであった。
【0054】
上記のように調製したアクリル系エマルション100部と、ポリオレフィン系エマルションとしてプロピレン−ブテン−エチレン共重合体(PBER)エマルション(不揮発分40%、三井化学株式会社製)100部を混合して、エマルションを調製し、接着剤組成物を得た。
【0055】
[参考例2]
グリシジルメタクリレートの代わりにモノ(2−メタクリロイルオキシエチル)アシッドホスフェートを用い、比率をスチレン53部、2―エチルヘキシルアクリレート45部、モノ(2−メタクリロイルオキシエチル)アシッドホスフェート2部とした以外は参考例1と同様にして接着剤組成物を得た。
【0056】
[実施例1]
参考例1で用いたものと同様のPBERエマルション200部、脱イオン水165部を反応容器に仕込み、窒素気流下で80℃に昇温した。これとは別に、スチレン22.5部、2−エチルヘキシルアクリレート22.5部、グリシジルメタクリレート5部、ベンゾイルパーオキサイド2.0部を脱イオン水20部中にドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ0.2部を使って乳化させた乳化混合物を作り、この乳化混合物を3時間で反応容器に滴下して、その後、更に同温度で4時間保持して重合を完結させた。得られたエマルションは不揮発分30%、pH10で、光散乱測定による重量平均粒子径は0.85μmであった。
【0057】
参考例1、2および実施例1で得られた接着剤組成物について、それぞれ、85000rpm、1時間の条件で超遠心分離を行った。その結果、参考例1のものはオレフィン樹脂層、水層、アクリル樹脂層の3層に分離したのに対し、実施例1のものは、水層と樹脂層の2層に分離した。実施例1のものはアクリル樹脂とオレフィン樹脂が同一粒子内に存在しているために分離しなかったものと考えられる。
【0058】
[比較例1]
グリシジルメタクリレートを用いず、スチレン55部、2―エチルヘキシルアクリレート45部としたこと以外は参考例1と同様にして接着剤組成物を得た。
【0059】
[比較例2]
アクリル系エマルションを用いず、PBERエマルションのみを用いて接着剤組成物を得た。
得られた接着剤組成物を以下の方法で評価した。
【0060】
[評価例]
アルミ箔に乾燥膜厚が3μmになるようにワイヤーバーで接着剤組成物を塗布し、200℃で2分間乾燥した。得られた塗工済みアルミ箔を一昼夜常温放置後、15mm幅の短冊状に切り出し、同形状に切り出したポリプロピレンフィルム(厚さ300μm、住友ベークライト株式会社製、商品名スミライト)と重ね合わせて、200℃の温度で、1kg/cm2の圧力、1秒の時間で熱シールを行った。この試験片を用い、引っ張り速度200mm/分の速度で剥離強度を測定した。評価結果を下記表に示す。
【0061】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂粒子が水に分散してなるエマルジョンを含む接着剤組成物であって、前記樹脂粒子は、オレフィン系単量体(a−1)から誘導される構成単位を有するオレフィン系重合体(A)と、極性官能基を有するアクリル系単量体(b)から誘導される構成単位を有するアクリル系重合体(B)と、を同一粒子内に含有することを特徴とする接着剤組成物。
【請求項2】
前記極性官能基は、水酸基、カルボキシル基、グリシジル基、リン酸基、および、アミド基からなる群から選択される1又は2以上の官能基であることを特徴とする請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項3】
オレフィン系重合体(A)とアクリル系重合体(B)の合計量を100重量%としたとき、オレフィン系重合体(A)の含有量が99〜1重量%、アクリル系重合体の含有量が1〜99重量%であることを特徴とする請求項1または2に記載の接着剤組成物。
【請求項4】
オレフィン系重合体(A)は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ−1−ブテン、ポリ−3−メチル−1−ブテン、ポリ−3−メチル−1−ペンテン、ポリ−4−メチル−1−ペンテン、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・1−ブテン共重合体、エチレン・オクテン共重合体、プロピレン・1−ブテン共重合体、および、プロピレン・1−ブテン・エチレン共重合体からなる群から選択される1または2以上の共重合体を含むことを特徴とする請求項1〜3いずれかに記載の接着剤組成物。
【請求項5】
アクリル系重合体(B)は、前記アクリル系単量体(b−1)を0.1〜100重量%含有する単量体を重合してなる重合体であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の接着剤組成物。
【請求項6】
樹脂粒子(I)の重量平均粒子径および樹脂粒子(II)の重量平均粒子径が、いずれも10nm〜500μmであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の接着剤組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の接着剤組成物を基材に塗工してなる熱シール接着用材料。

【公開番号】特開2010−132911(P2010−132911A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−3964(P2010−3964)
【出願日】平成22年1月12日(2010.1.12)
【分割の表示】特願2000−294014(P2000−294014)の分割
【原出願日】平成12年9月27日(2000.9.27)
【出願人】(000005887)三井化学株式会社 (2,318)
【Fターム(参考)】