説明

接着性が改善された非線状ポリシロキサン含有コーティング

二成分系コーティング組成物であり得るコーティング組成物は、成膜材料と、架橋剤と、架橋剤と反応性の官能基を有する非線状ポリシロキサンポリマーとを含む。当該コーティング組成物は、優れた引掻き耐性、及び修復コーティング層と、風防封止剤等の封止剤との接着性を示す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着性が改善された非線状ポリシロキサン含有コーティング組成物に関する。
【0002】
[関連出願の相互参照]
該当なし。
【背景技術】
【0003】
ケイ素含有材料をコーティング組成物中に導入すると、表面引掻き及び表面磨耗に対するコーティングの耐性が高まった。しかしながら、ケイ素原子によって生じる低表面張力のためにケイ素含有材料を含むコーティング層は、その後塗工されるコーティング層との接着性が弱いことがある。包括的に、引掻き傷耐性及び磨耗耐性のために、ケイ素含有材料を外側コーティング層に添加する場合には、さらなるコーティング層がこの外側コーティング層上に塗工されないことが意図される。しかしながら、修復コーティング層を塗工することによって外側コーティングの損傷を修復しなければならない場合等には、さらなる層を塗工することが時として必要となる。修復を成功させるには、下位コーティング層に対する修復コーティング層の良好な接着性が必要となり、この接着性は下位コーティング層がケイ素含有材料を含む場合に損なわれるおそれがある。そのため、修復コートの良好な接着性を保証するために追加の工程、例えば、修復コーティング層を塗工する前の下位コーティングの研磨及び清浄を行わなければならない。
【0004】
さらに、風防封止剤又はトップコート及びクリアコート上に塗工される他の封止剤を、トップコート及びクリアコートに接着させなければならない。トップコート層又はクリアコート層中のケイ素含有材料は、封止剤と、封止剤が塗工されるコーティング表面との間の強力な結合の形成を妨げる可能性がある。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0005】
一態様において、本発明は、成膜ポリマーと、架橋剤と、架橋剤と反応性の官能基を有する非線状ポリシロキサンポリマーとを含有するコーティング組成物、及びかかる組成物から生成されるコーティング層を提供する。
【0006】
本発明はさらに、シロキサン重合反応に関して三官能性である少なくとも約20モル%のシロキサンモノマーと、シロキサン重合反応に関して単官能性であり、且つコーティング組成物の別の構成成分と反応性の少なくとも1つの官能基を含有するか又は重合後にコーティング組成物の別の構成成分と反応性になるように誘導体化される少なくとも約10モル%のモノマーと、重合反応に関して四官能性である最大約30モル%のモノマーとを含むモノマー混合物から重合される非線状ポリシロキサンポリマーを含有するコーティング組成物を提供する。非線状ポリシロキサンポリマーは、約500〜約10000の数平均分子量、及び約1000〜約200000の重量平均分子量を有する。本発明はまた、かかる組成物から生成される硬化コーティングを提供する。
【0007】
別の態様において、本発明は、成膜材料、及び官能基を有する非線状ポリシロキサンを含む第1のパッケージと、非線状ポリシロキサンの官能基と反応性且つ成膜材料と反応性の硬化剤を含む硬化剤パッケージとを含む二成分系コーティング組成物、並びにかかる組成物から生成される硬化コーティングを提供する。
【0008】
本発明のコーティングは、優れた引掻き耐性及び磨耗耐性をもたらすと共に、特別な処理又は定着剤を用いなくとも、その後の修復コーティング層及び(風防設備に使用されるような)封止剤に対する接着性をもたらす。
【0009】
本明細書中で使用される場合、単数表現("A" and "an")は、その事物の「少なくとも1つ」が存在することを示し、可能であればこのような事物は複数存在していてもよい。値にあてがわれる場合の「約」は、算出値又は測定値のわずかな値の不正確さを幾らか許容するもの(その値の正確度に対して幾らか近似するもの、おおよそ又はかなりその値に近いもの、ほぼ近いもの)であることを示す。幾つかの理由から、「約」が示す不正確さが、当該技術分野においてその通常の意味を有して理解されない場合には、本明細書中で使用される場合の「約」とは、値の最大5%の可能な変化を示すものとする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
好ましい実施形態(複数可)の以下の説明は、事実上単なる例示に過ぎず、本発明、その用途、又は使用を限定するように意図されるものではない。
【0011】
本発明のコーティング組成物は、成膜材料と、架橋剤(硬化剤としても知られる)と、架橋剤と反応性の官能基を有する非線状ポリシロキサンポリマーとを包含する。
【0012】
或る特定の実施形態では、上記組成物が、成膜材料及び非線状ポリシロキサンポリマーを含む第1のパッケージと、使用直前まで別個に保持される、架橋剤を含む第2のパッケージとを含む二パッケージ型(二成分系又は2Kとしても知られる)組成物である。二成分系コーティングは当該技術分野で既知のものである。2つの構成成分を、所望の基材上へのコーティングの塗工直前に混ぜ合わせる。2つの構成成分が混ざりあうと、混合コーティング組成物は限られたポットライフを有するようになる(だがこれは十分に長い)。
【0013】
非線状ポリシロキサンポリマーは、架橋剤と反応性の官能基を有する。非線状ポリシロキサンは、重合反応中に反応する3つ以上の重合性基と、重合反応中に反応しない官能基を有する少なくとも1つのモノマーとを有する少なくとも1つのシロキサンモノマーを用いて調製される。非線状ポリシロキサンは、重合中に反応性の3つの基を有する少なくとも約20モル%のシロキサンモノマー(「三官能性シロキサンモノマー」)、及び重合中に反応性の1つの基を有し、且つコーティングビヒクルの構成成分と反応性の基を有するか又はコーティングビヒクルの構成成分と反応性になるように誘導体化され得る少なくとも約13モル%のシロキサンモノマー(「単官能性シロキサンモノマー」)を用いて調製され得る。架橋剤(closslinker)と反応性の単官能性シロキサンモノマーの特定の例としては、構造−OSiR’2(ROH)(式中、Rはプロピレン基又はイソプロピレン基であり、各R’は独立してヒドロカルビル基、好ましくは脂肪族ヒドロカルビル基から選択され、より好ましくは各R’はメチルである)が挙げられる。架橋剤がヒドロキシルと反応性である場合、例えば、架橋剤がイソシアネート官能性又はアミノプラスト架橋剤である場合、ヒドロキシル基を反応性基として使用することができる。ヒドロキシル基を誘導体化して、架橋剤との後の反応に関する、又はコーティング組成物中の非線状ポリシロキサンの適合性に関する異なる官能基をもたらすこともできる。このような種々の官能基の例としては、カルバメート基(例えば、ヒドロキシアルキルカルバメートとの反応によって)、酸基(例えば、環状無水物との反応によって)、又はエポキシド基(例えば、エピクロロヒドリンとの反応によって)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0014】
実施形態によっては、三官能性シロキサンモノマーが、非線状ポリシロキサンを調製するのに使用されるモノマー混合物の少なくとも約50モル%、より好ましくは少なくとも約65モル%であってもよい。三官能性シロキサンモノマーは、非線状ポリシロキサンを調製するのに使用されるモノマー混合物の最大約90モル%、より好ましくは最大約80モル%であってもよい。好ましい実施形態によっては、非線状ポリシロキサンは、モノマー混合物中、約20モル%〜約90モル%、より好ましくは約50モル%〜約80モル%、さらに好ましくは約65モル%〜約80モル%の三官能性シロキサンモノマーを用いて重合される。
【0015】
実施形態によっては、コーティングビヒクルの構成成分と反応性の基を有するか又はコーティングビヒクルの構成成分と反応性になるように誘導体化され得る単官能性シロキサンモノマーは、非線状ポリシロキサンを調製するのに使用されるモノマー混合物の少なくとも約1モル%、より好ましくは少なくとも約5モル%であってもよい。単官能性シロキサンモノマーは、非線状ポリシロキサンを調製するのに使用されるモノマー混合物の最大約80モル%、より好ましくは最大約30モル%のモノマーであってもよい。好ましい実施形態によっては、非線状ポリシロキサンは、モノマー混合物中、約1モル%〜約80モル%、より好ましくは約5モル%〜約30モル%、さらに好ましくは約10モル%〜約20モル%の単官能性シロキサンモノマーを用いて重合される。
【0016】
非線状ポリシロキサンは、4つの重合性基を有するシロキサンモノマー(「四官能性シロキサンモノマー」)を用いて重合され得る。好ましい実施形態によっては、重合モノマー混合物は、最大30モル%の四官能性シロキサンモノマーを含む。実施形態によっては、重合モノマー混合物は、主に単官能性シロキサンモノマーと、三官能性シロキサンモノマーと、任意選択的に四官能性シロキサンモノマーとを含む。
【0017】
非線状ポリシロキサンのケイ素原子は、引掻き耐性及び磨耗耐性を効率的に改善させるために、好ましくはペンダントフェニル基を有しない。
【0018】
非線状ポリシロキサンは、約500〜約10000の範囲の数平均分子量を有し得る。好ましい実施形態によっては、数平均分子量が約500〜約8000の範囲である。非線状ポリシロキサンは、約1000〜約200000の範囲の重量平均分子量を有し得る。好ましい実施形態によっては、重量平均分子量が約1000〜約80000の範囲である。
【0019】
非線状ポリシロキサンは、コーティング組成物中に、ビヒクルの重量に基づき好ましくは約0.1重量%〜約10重量%、より好ましくは約0.4重量%〜約5重量%の量で包含され得る。「ビヒクル」とは、コーティング組成物中の成膜材料を示す。
【0020】
非線状ポリシロキサンポリマーは、成膜材料及び架橋剤と共にコーティング組成物中に包含される。コーティング組成物が二成分系コーティング組成物である場合、架橋剤は成膜材料及び非線状ポリシロキサンと別のパッケージに含有される。個々のパッケージは、混合物を基材へ塗工する直前に混ぜ合わされ、混合コーティング組成物は有限ポットライフを有する。架橋剤はブロッキングされていないポリイソシアネートであってもよい。ブロッキングされていないポリイソシアネートの好適な例としては、1分子当たり2〜5つのイソシアネート基を有するポリイソシアネート(イソシアネート基、ビウレット基、アロファネート基、イミノオキサジアジンジオン基、ウレタン基、尿素基及び/又はウレトジオン基を含有するポリイソシアネートを含む)が挙げられるが、これらに限定されない。ウレタン基を含有するポリイソシアネートは例えば、イソシアネート基のいくつかを、例えばトリメチロールプロパン及びグリセロール等のポリオールと反応させることによって調製される。脂肪族又は脂環式ポリイソシアネート、特にヘキサメチレンジイソシアネート、二量化及び三量化ヘキサメチレンジイソシアネート、イソフォロンジイソシアネート、2−イソシアナトプロピルシクロヘキシルイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン2,4’−ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン4,4’−ジイソシアネート、又は1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(BIC)、Henkelから商標(commercial designation)DDI 1410として市販されている、二量体脂肪酸に由来のジイソシアネート、1,8−ジイソシアナト−4−イソシアナトメチルオクタン、1,7−ジイソシアナト−4−イソシアナトメチルヘプタン若しくは1−イソ−シアナト−2−(3−イソシアナトプロピル)シクロヘキサン、又はこれらのポリイソシアネートの混合物の使用が好ましい。
【0021】
架橋剤がブロッキングされていないポリイソシアネートである場合、成膜材料及び非線状ポリシロキサンポリマーはイソシアネート基と反応性の官能基を有する。イソシアネート基と反応性の官能基としては、ヒドロキシル基、第一級及び第二級アミン基、カルボン酸、アミド、及び活性化メチレン基が挙げられるが、これらに限定されない。或る特定の実施形態では、成膜材料がヒドロキシル基を有するポリマーを包含する。このポリマーは、アクリルポリマー、ポリウレタンポリマー、ポリエステル、及びそれらの組合せであってもよいが、これらに限定されない。ヒドロキシル官能基は、少なくとも1つのヒドロキシル官能性モノマーを共重合することによってポリマーに好適に導入することができる。ヒドロキシ官能性のエチレン性不飽和モノマーは好ましくはアクリル酸又はメタクリル酸のアルキルエステルである(本発明を説明する文脈において、用語「(メタ)アクリレート」は、メタクリレートエステル及びアクリレートエステルの両方が含まれることを示すのに使用される)。ヒドロキシル官能性モノマーの好適な例としては、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、最大約10個の炭素の分枝状又は線状アルキル基を有する他のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、及びこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。ヒドロキシル官能性のエチレン性不飽和モノマーはまた、エポキシド官能性のエチレン性不飽和モノマーとモノカルボン酸との反応生成物、例えば、グリシジル(メタ)アクリレートとネオデカン酸との反応生成物であってもよい。所望であれば、コーティングは、化学線の適用によって硬化する材料、例えば、Baumgart他の米国特許第6,777,090号明細書に開示される任意のものを含んでいてもよい。
【0022】
他の実施形態において、架橋剤は、ブロッキングされたポリイソシアネート、例えば所望の硬化温度でデブロッキングする基でブロッキングされる上述のポリイソシアネートのうちの1つ、アミノプラスト架橋剤、又はエポキシド官能性ポリマーの場合にはポリカルボン酸であっても、これらを包含してもよい。有用なアミノプラスト架橋剤としては、活性メチロール基又はメチルアルコキシ基を有する物質が挙げられるが、これらに限定されない。このような硬化剤化合物の例としては、メラミンホルムアルデヒド架橋剤(モノマー又はポリマーメラミンホルムアルデヒド樹脂、及び部分的に又は完全にアルキル化されたメラミンホルムアルデヒド樹脂、尿素樹脂、並びに尿素ホルムアルデヒド樹脂等のメチロール尿素、ブチル化尿素ホルムアルデヒド樹脂等のアルコキシ尿素を含む)が挙げられる。
【0023】
コーティング組成物は、硬化反応を高める触媒を包含してもよい。例えば、特にモノマーメラミンを硬化剤として使用する場合、硬化反応を高めるのに強酸触媒を使用することができる。かかる触媒は当該技術分野で既知であり、p−トルエンスルホン酸、ジノニルナフタレンジスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、リン酸フェニル酸(phenyl acid phosphate)、モノブチルマレエート、リン酸ブチル、及びヒドロキシリン酸エステルが挙げられるが、これらに限定されない。強酸触媒は、例えばアミンでブロッキングされていることが多い。ポリイソシアネートと好適な官能基との反応について、他の好適な触媒としては、スズ化合物、例えば、ジラウリン酸ジブチルスズ、二酢酸ジブチルスズ、酸化ジブチルスズ、第三級アミン、亜鉛塩、及びマグネシウム塩が挙げられる。
【0024】
ブロッキングされていないポリイソシアネート架橋剤を含む成膜材料と同様に、ブロッキングされたポリイソシアネート架橋剤及びアミノプラスト架橋剤を含む成膜材料を使用してもよい。アミノプラスト架橋剤を含むカルバメート官能性成膜材料を使用してもよい。かかる材料は、米国特許第6,331,596号明細書、同第6,391,968号明細書、同第6,541,577号明細書、同第6,710,138号明細書及び同第6,858,693号明細書(全てBASF Corporationに譲渡されており、これらは全て参照されて本明細書中の一部とする)等のコーティング特許文献中に広く記載されている。
【0025】
本発明の実施において用いられるコーティング組成物中に溶媒(複数可)を使用してもよい。一般的に、溶媒とは、任意の有機溶媒及び/又は水であり得る。好ましい一実施形態では、溶媒として極性有機溶媒が包含される。より好ましくは、溶媒は、極性脂肪族溶媒又は極性芳香族溶媒から選択される1つ又は複数の有機溶媒を含む。さらにより好ましくは、溶媒は、ケトン、エステル、アセテート、非プロトン性アミド、非プロトン性スルホキシド、非プロトン性アミン、又はこれらの任意のものの組合せを包含する。有用な溶媒の例としては、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、m−アミルアセテート、エチレングリコールブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、キシレン、N−メチルピロリドン、芳香族炭化水素の配合物、及びこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。別の好ましい実施形態において、溶媒は、水、又は水と少量の補助溶媒との混合物である。
【0026】
本発明によるコーティング組成物は、自動車用カラープラスクリア(color-plus-clear)複合コーティングのクリアコートとして有用である。さらに、このコーティング組成物は、木材、金属(コイルコーティングを含む)、合金、セラミック、プラスチック及び石工等の種々の基材に対するコーティングとして有用である。さらなる作用物質、例えば界面活性剤、安定化剤、湿潤剤、レオロジー制御剤、分散剤、定着剤、UV吸収剤、ヒンダードアミン光安定化剤等を、コーティング組成物中に組み込んでもよい。
【0027】
コーティング組成物は、当該技術分野で既知の多数の技法のいずれかによって物品上にコーティングされ得る。かかる技法としては、例えば、スプレーコーティング、浸漬コーティング、ロールコーティング、カーテンコーティング等が挙げられる。自動車用車体パネルには、スプレーコーティングが好ましい。
【0028】
本発明によるコーティング組成物は、カラープラスクリア複合コーティングのクリアコートとして使用することができる。クリアコートが塗工される顔料ベースコート組成物は、当該技術分野で既知の多数の種類のいずれであってもよく、ここで詳細に説明する必要ない。ベースコート組成物に有用な当該技術分野で既知のポリマーとしては、アクリル樹脂、ビニル樹脂、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリエステル、アルキド及びポリシロキサンが挙げられる。好ましいポリマーとしては、アクリル樹脂及びポリウレタンが挙げられる。ベースコートポリマーは、熱可塑性であるが、好ましくは架橋性であり、1種又は複数種の架橋性官能基を包含する。このような基としては、例えば、ヒドロキシ基、イソシアネート基、アミン基、エポキシ基、アクリレート基、ビニル基、シラン基及びアセトアセテート基が挙げられる。これらの基は、所望の硬化条件、一般的に高温下でブロッキングされることなく架橋反応に利用可能なようにマスキング又はブロッキングされていてもよい。有用な架橋性官能基としては、ヒドロキシ基、エポキシ基、酸基、無水物基、シラン基及びアセトアセテート基が挙げられる。好ましい架橋性官能基としては、ヒドロキシ官能基及びアミノ官能基が挙げられる。
【0029】
ベースコートポリマーは、自己架橋性であってもよく、又はポリマーの官能基と反応性の別個の架橋剤を必要としてもよい。例えばポリマーがヒドロキシ官能基を含む場合、架橋剤は、アミノプラスト樹脂、イソシアネート及びブロッキングされたイソシアネート(イソシアヌレートを含む)、並びに酸又は無水物官能性架橋剤であってもよい。
【0030】
クリアコートコーティング組成物は一般的に、産業分野において広範に行われるように、ベースコートコーティング組成物上にウェットオンウェット塗工される。本明細書中に記載のコーティング組成物は好ましくは、コーティング層を硬化させるような条件に付される。種々の硬化方法を使用することができるが、熱硬化が好ましい。一般的に、熱硬化は、コーティングされた物品を、放射熱源によって主に供給される高熱、一般的に90℃〜180℃の温度に曝すことによって行われる。或る特定の実施形態では、硬化温度は115℃〜150℃であり、典型的には115℃〜140℃の温度がブロッキングされた酸触媒系に使用される。ブロッキングされていない酸触媒系では、硬化温度が典型的に80℃〜100℃であり得る。硬化時間は、使用される特定の要素、及び例えば層厚等の物理パラメータに応じて変わるが、典型的な硬化時間は15分〜60分、より一般的には、ブロッキングされた酸触媒系で15分〜25分の範囲であり、ブロッキングされていない酸触媒系では10分〜20分の範囲である。また硬化時間は、金属温度が焼成温度(「金属温度」)に達した後の時間として表されることがある。例えば、硬化時間は、金属温度において5分〜30分、好ましくは10分〜20分であり得る。
【0031】
自動車用コーティングのクリアコート層を修復する方法では、本発明のクリアコート層を研磨し、必要であれば損傷を取り除いた後、新たなベースコート層及び本発明のクリアコートコーティング組成物をクリアコート層の少なくとも一部上に塗工し第2のクリアコート層を形成して、その後硬化させる。新たなベースコート層及び第2のクリアコート層を上述の時間及び温度で硬化することができる。本発明のクリアコート組成物は、修復コートを塗工する前に第1のクリアコートの研磨がない場合に一般的に修復コートの接着性が損なわれやすい2K(例えば、ブロッキングされていないポリイソシアネート架橋剤)系についてさえ、第1の(オリジナルの)クリアコート層を研磨しなくとも、続く修復コーティングの接着性を十分に改善させる。この接着性は、例えば、152℃90分間のオリジナルのクリアコート層の硬化、及び132℃15分間の修復クリアコート層の硬化によって試験されるような、オリジナルのクリアコートの厳しい過焼成条件/修復コートの不十分な焼成条件においても優れている。
【0032】
シロキサンポリマーを含有するコーティング組成物は、優れた引掻き耐性、及び修復コーティング層と、風防封止剤等の封止剤との接着性を示す。
【実施例】
【0033】
本発明を以下の実施例によって示す。これらの実施例は単なる例示に過ぎず、説明及び請求される本発明の範囲を限定するものではない。全ての部は特に指定のない限り重量部である。
【0034】
67.22重量部のアクリル樹脂(65重量%の溶液、302ヒドロキシル当量)、22.0重量部の有機溶媒の混合物、3.68部のコーティング添加剤の混合物、8.52重量部のレオロジー制御添加剤、及び7.87重量部のシリコーン樹脂(25モル%の−OSi(CH32(CH22CH2OH)、72.7モル%の
【0035】
【化1】

【0036】
、残余−OSi(CH32O−)を混ぜ合わせて第1のパッケージを生成することによって、第1のパッケージと硬化剤パッケージとを有する2K(二液型)クリアコートコーティング組成物を調製する。29.39重量部の有機溶媒、49.32重量部のDesmodur N−3390(Bayer製)、及び21.29重量部のDesmophen Z−4470(Bayer製)を混ぜ合わせることによって、硬化剤パッケージを調製する。
【0037】
100重量部の第1のパッケージと33.64重量部の硬化剤パッケージとを混ぜ合わせることによって、クリアコートコーティング材料を調製する。クリアコートコーティング材料を、下塗り処理したスチールパネルに事前に塗工しフラッシュ乾燥した0.7ミルの水系黒色ベースコート層上にクリアコート層として塗工する。クリアコート組成物を、おおよそ2.0ミルの厚みになるまでベースコート上に噴霧塗工する。次にこのクリアコートを周囲温度で10分間フラッシュし、140℃で20分間硬化する。得られるクリアコート−ベースコート複合コーティングは、優れた引掻き耐性及び磨耗耐性を有する。
【0038】
このクリアコート−ベースコート複合コーティングの一部を、上記と同様に、同じベースコートの別の層を塗工した後、上記クリアコート材料の別の層を塗工し、140℃で20分間再度硬化させることによって高温焼成して修復する。Paul N. Gardner Company, Inc.による2mm接着性試験ブレードを用いて修復コートの接着性について修復部分を試験する。修復部分は優れた接着性を有している。
【0039】
本発明の説明は、事実上単なる例示に過ぎず、本発明の趣旨を逸脱しない変形形態は、本発明の範囲内であると意図されるものとする。このような変形形態は、本発明の精神及び範囲を逸脱するとみなされるものではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コーティング組成物であって、
成膜材料と、
架橋剤と、
シロキサン重合反応に関して三官能性であるシロキサンモノマーと、該シロキサン重合反応に関して単官能性であり且つ前記架橋剤と反応性の少なくとも1つの官能基を含有するモノマーと、任意選択的に、該シロキサン重合反応に関して四官能性であるモノマーとを含むモノマー混合物から重合される非線状ポリシロキサンポリマーと、
を含む、コーティング組成物。
【請求項2】
前記非線状ポリシロキサンを調製するのに使用される前記単官能性モノマーが、少なくとも1つのヒドロキシル官能基を含有する、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項3】
前記非線状ポリシロキサンポリマーが、シロキサン重合反応に関して三官能性である少なくとも約20モル%のシロキサンモノマーと、該シロキサン重合反応に関して単官能性であり、且つコーティング組成物の別の構成成分と反応性の少なくとも1つの官能基を含有するか又は重合後に該コーティング組成物の別の構成成分と反応性になるように誘導体化される少なくとも約10モル%のモノマーと、該シロキサン重合反応に関して四官能性である最大約30モル%のモノマーとを含むモノマー混合物から重合される、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項4】
前記非線状ポリシロキサンポリマーが、約500〜約10000の数平均分子量、及び約1000〜約200000の重量平均分子量を有する、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項5】
コーティング組成物ビヒクルの重量に基づき約0.1重量%〜約10重量%の前記非線状ポリシロキサンポリマーを含む、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項6】
前記コーティング組成物が、前記成膜材料及び前記非線状ポリシロキサンポリマーを含む第1のパッケージと、前記架橋剤を含む第2のパッケージとを含む二成分系コーティング組成物である、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項7】
前記非線状ポリシロキサンポリマーが、ケイ素原子上にペンダントフェニル基を含まない、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項8】
前記非線状ポリシロキサンが、構造−OSiR’2−(ROH)(式中、Rはプロピレン基またはイソプロピレン基であり、各R’は独立してヒドロカルビル基から選択される)を含むモノマーを用いて重合される、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項9】
各R’がメチルである、請求項8に記載のコーティング組成物。
【請求項10】
請求項1に記載の組成物から生成されるコーティング層を上部に有する物品。
【請求項11】
請求項2に記載の組成物から生成されるコーティング層を上部に有する物品。
【請求項12】
請求項6に記載の組成物から生成されるコーティング層を上部に有する物品。

【公表番号】特表2009−531521(P2009−531521A)
【公表日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−502915(P2009−502915)
【出願日】平成19年3月23日(2007.3.23)
【国際出願番号】PCT/US2007/007421
【国際公開番号】WO2007/112086
【国際公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【出願人】(596012272)ダウ・コーニング・コーポレイション (347)
【Fターム(参考)】