説明

接着性に優れたポリエステル系樹脂フィルム

【課題】 強度、透明性、耐熱性、バリア性等を失うことなく、良好な引き裂き性と接着性を具備した、包装用フィルムやテープ用フィルムとして、或いはPTP包装や飲料のパックの開封口として、またはガムやキャンディの外装材として有用なポリエステル延伸フィルムを安価に提供するもの。
【解決手段】 フィルムの接着層が結晶性ポリエステル樹脂と非晶性ポリエステル樹脂の混合物からなる結晶性を有する層からなり、フィルムの端裂抵抗が70N以下であることを特徴とする接着性に優れた易引き裂き性2軸延伸ポリエステルフィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリエステル延伸フィルムに関する。更に詳しくは、ポリエステル延伸フィルムの優れた特性である耐熱性、保香性、耐水性等を失うことなく実用面の特性を維持し、特に接着性に優れ、更に良好な引き裂き性を具備した包装用フィルムとして有用なポリエステル延伸フィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、切断性の優れたフィルムとしては、セロハンが知られている。セロハンは、その優れた透明性と易切断性、ひねり性等の特性により各種包装材料、粘着テープ用として重用されている。しかし、一方ではセロハンは吸湿性を有するため特性が季節により変動し一定の品質のものを常に供給することは困難であった。また、ポリエチレンテレフタレートをベースフィルムとした包装用袋や粘着テープなどは、延伸されたポリエチレンテレフタレートフタレートフィルムの強靱性、耐熱性、耐水性、透明性などの優れた特性の良さを買われて用いられているが、これらの優れた特性を有する反面、切断しにくく、包装用袋の口を引き裂き難い欠点や、粘着テープが切りにくい欠点、及びひねり固定性が劣るためにひねり包装用に用いることができない等の欠点があった。
【0003】
上記問題を解決する方法として、一軸方向に配向させたポリエステルフィルムや、ジエチレングリコール成分などを共重合させたもの、低分子量のポリエステル樹脂を用いるもの、或いはポリエステル樹脂層(A)の少なくとも片面に、ポリエステル樹脂層(A)の融点よりも10℃以上高い融点を有し、かつ全厚みに対し5%以上、60%以下の厚みのポリエステル樹脂層(B)を積層した未延伸積層フィルムを少なくとも一軸延伸後にポリエステル樹脂層(A)の融点より10℃低い温度以上、かつポリエステル樹脂層(B)の融点未満の温度で熱処理することを特徴とする引き裂き性とひねり性を付与したポリエステルフィルムの製造方法などが提案されている(特許文献1〜3参照)。
【特許文献1】特公昭55−8551号公報
【特許文献2】特公昭56−50692号公報
【特許文献3】特公昭55−20514号公報
【0004】
しかしながら、上記従来技術において一軸方向に配向させる方法は、配向方向へは直線的に容易に切れるが配向方向以外には切れ難く、またジエチレングリコール成分などを多量に共重合させる方法は、共重合によりポリエチレンテレフタレート本来の特性が失われるという欠点を有している。また、低分子量のポリエステル樹脂を用いる方法は、延伸工程での膜破れのトラブルが発生しやすくなり実用的でなかった。
【0005】
又、印刷性を改良した易引き裂き性ポリエステルフィルムとして、ポリエステル樹脂層(A)の少なくとも片面に、前厚みに対し5%以上60%以下の厚みの、テレフタル酸を80mol%以上含有する結晶性ポリエステル樹脂(a)98〜70重量%、融点170℃以上の結晶セグメント及び融点または軟化点が100℃以下、分子量が400〜8000の軟質重合体からなるブロック共重合ポリエステル(b)2〜30重量%の混合物からなり、ポリエステル樹脂層(A)の融点よりも10℃以上高い融点を有するポリエステル樹脂混合物層(B)を積層した積層ポリエステルフィルムが提案されている。
【特許文献4】特開2003−337290号公報
【0006】
しかしながら、結晶性ポリエステル樹脂にブロック共重合ポリエステルを添加する方法は、ブロック共重合ポリエステルが結晶性ポリエステルの中に分散する「海島構造」を有しており、結晶性ポリエステルとブロック共重合ポリエステルの界面で剥離が生じやすく、ラミネート加工を行なった際に接着力より層内の凝集力が劣り層内での凝集破壊が生じ、ラミネート強度が悪化する事があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は従来技術の課題を背景になされたもので、特に易切断性及び接着性に注目し、これらの特性を有し、さらにポリエステルフィルムの優れた特性である耐熱性、防湿性、透明性、保香性等を合わせて有する積層フィルムを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記課題を解決する為、鋭意研究した結果、遂に本発明を完成するに至った。すなわち本発明は、フィルムの接着層が結晶性ポリエステル樹脂と非晶性ポリエステル樹脂の混合物からなる結晶性を有する層からなり、フィルムの端裂抵抗が70N以下であることを特徴とする接着性に優れた易引き裂き性2軸延伸ポリエステルフィルムである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によるポリエステル系樹脂フィルムは、耐熱性、耐寒性、防湿性、透明性、保香性等のポリエステル本来の特性を有しながらも、手切れ性に優れ、且つ接着性に優れた積層フィルムである。接着性が改善されることにより、開封時にラミネートが剥離し、シーラント層が切断できなくなるという開封性の悪化を防止することができ、良好な開封性を得る事ができるという利点を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明に於けるポリエステル系樹脂フィルムは、接着層が結晶性ポリエステル樹脂と非晶性ポリエステル樹脂の混合物からなる結晶性を有する層からなり、フィルムの端裂抵抗が70N以下であることを特徴とする接着性に優れた易引き裂き性2軸延伸ポリエステルフィルムである。
【0011】
本発明に用いられる結晶性ポリエステル樹脂としては、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、あるいはそれらの構成成分を主成分とする共重合体等が挙げられる。
【0012】
好ましくは、その結晶性ポリエステル樹脂全体に対し、90mol%以上がテレフタル酸を主たる酸成分とし、90mol%以上がエチレングリコールを主たるグリコール成分とするポリエステルであり、更に好ましくはテレフタル酸が95mol%以上、エチレングリコールが95mol%以上からなる結晶性ポリエステル樹脂を、混合に用いる結晶性ポリエステル樹脂全体に対して90重量%以上含むことであり、より好ましくはテレフタル酸が98mol%以上、エチレングリコールが97mol%以上からなる結晶性ポリエステル樹脂を結晶性ポリエステル樹脂全体に対して95重量%以上含有することである。
【0013】
テレフタル酸及び、又はエチレングリコールの含有量が90mol%未満の場合、結晶性が低下してフィルムの剛性を確保することが困難となり、また、非晶性樹脂との混合・押出しの際のエステル交換反応により均一樹脂となりやすい為好ましくない。
【0014】
また、非晶性ポリエステル樹脂としては、テレフタル酸−イソフタル酸−エチレングリコール共重合体、テレフタル酸−エチレングリコール−ネオペンチルグリコール共重合体、或いはテレフタル酸−エチレングリコール−シクロヘキサンジメタノール等のテレフタル酸およびエチレングリコールを主成分とし、他の酸成分および/または他のグリコール成分を共重合成分として含有するポリエステルが好ましい。
【0015】
例えば、酸成分としては、脂肪族の二塩基酸(例えば、アジピン酸、セバチン酸、アゼライン酸)や芳香族の二塩基酸(例えば、ジフェニルジカルボン酸、5−第3ブチルイソフタル酸、2,2,6,6−テトラメチルビフェニル−4,4−ジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,1,3−トリメチル−3−フェニルインデン−4,5−ジカルボン酸)が用いられる。グリコール成分としては、脂肪族ジオール(例えば、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール)、脂環族ジオール(例えば、1,4−シクロヘキサンジメタノール)または芳香族ジオール(例えば、キシリレングリコール、ビス(4−β−ヒドロキシフェニル)スルホン、2,2−(4−ヒドロキシフェニル)プロパン誘導体)が用いられる。
【0016】
本発明に於いて、フィルムの端裂抵抗は70N以下であり、好ましくは50N以下である。70Nを超えた場合、フィルムの強度が強くなり、手で引き裂くことが困難となり好ましくない。
【0017】
また、端裂抵抗が著しく小さい場合、フィルムが脆くなり、製膜時や加工時により一層の注意が必要となり、例えばスリットや継ぎ足しの際の張力の変動やフィルムのズレにより破断の原因となりうる。従って実用上25N以上である事が好ましい。
【0018】
本発明に於いて。両外層は結晶性ポリエステル樹脂/非晶性ポリエステル樹脂=60/40〜90/10重量%の割合で混合されており、好ましくは70/30〜80/20重量%である。結晶性ポリエステル樹脂の割合が60重量%未満の場合、結晶性が不充分なものとなりフィルムの強度、剛性、耐熱性が不足する為好ましくない。
【0019】
或いは、90重量%を超える場合は充分な接着性が得られなくなり好ましくない。
【0020】
本発明に於ける接着性向上の原理は、接着層に非晶性ポリエステル樹脂が混合されることにより、接着剤を塗布した際に該非晶性ポリエステル樹脂が溶け出し、ポリエステル樹脂フィルムと接着剤樹脂との凝集を強固なものにしていると考えられる。また、製膜工程の熱処理により該非晶性ポリエステル樹脂が溶融し、フィルム厚み方向の配向が著しく増加する、これにより、フィルム内部での凝集破壊を防止することが出来る為と考えられる。
【0021】
本発明に於いて、フィルムの厚み方向の屈折率Nzは1.490以上、更に好ましくは1.495以上である。Nzが1.490未満の場合、接着剤を用いてラミネートした際に、接着剤とフィルム表面との接着力及びフィルム層の厚み方向の凝集力が不足し、剥離や層内での凝集破壊の原因となる。
【0022】
本発明の屈折率の測定にはアッベ屈折計を用いて測定する。アッベ屈折計は屈折率の異なる層が積層されている場合、測定する方向に最も屈折率の低い層の屈折を示すという特性を有している。従って、本発明の実質的に分子配向がない層と、分子配向を有している層との積層体を測定した場合、縦及び横方向の測定値Nx及びNyは分子配向がない層の屈折率を示す。
【0023】
また、厚み方向の屈折率Nzは、分子配向を有した層の屈折率を測定することとなる。即ち、延伸により全ての層は縦方向、横方向にそれぞれ配向し、厚み方向の配向が著しく減少する。次いで熱固定ゾーンに於いて、分子配向を有する層は結晶化が進行し、縦・横そして厚み方向全ての屈折率が増加する。しかしながら実質的に分子配向がない層は熱固定ゾーンに於いて溶融状態となることで縦横方向の配向が概ね消滅し、厚み方向の配向が著しく増加するという挙動をとる為、厚み方向の配向のみが分子配向を有した層より大きくなり、分子配向を有した層の屈折率を測定することができることとなる。
【0024】
即ち、アッベ屈折系を用いて測定することで、易引き裂き性の指標となる実質的に分子配向がない層の分子配向が崩壊した状態と、接着性の指標となる分子配向を有している層の結晶化度を測定することができる。
【0025】
尚、接着層以外のポリエステル樹脂フィルム層に、印刷、ラミネート等、加工時の柔軟性を維持させる為にエラストマー成分を添加する事ができる。
【0026】
なお、上記ポリエステルの固有粘度は、好ましくは0.55〜1.3dl/gであり、さらに好ましくは0.60〜0.75dl/gである。これらの範囲内の固有粘度より選ばれたポリエステル樹脂が、製膜性、加工性から好ましく、また、積層構成とする際には各層の固有粘度が近い事が好ましく、固有粘度差を0.3以下にすることが好ましい。
【0027】
各層間で、固有粘度差が著しい場合、特にフィードブロック方式に於いては、幅方向で各層の厚さに差が生じ、均一な特性が得られない事があり好ましくない。
【0028】
さらに、本発明のフィルムの層構成は、縦延伸工程でのロールへの融着や粘着、また、横延伸工程での破断の際のテンターへの粘着等の製膜性より、両外層が結晶性を有することが好ましい。
【0029】
本発明の延伸フィルムの厚みは本発明の目的とする用途である包装用袋などで使用されるフィルム厚みは12μから30μであるが、特に限定されるものではない。
【0030】
本発明のポリエステルフィルムは、本発明の効果を阻害しない範囲で、公知の各種添加材、例えば滑剤、顔料、酸化防止剤、帯電防止剤等が添加されていてもよい。
【0031】
次に本発明フィルムの製造方法の一例を説明する。
【0032】
水分が50ppm以下となるように真空乾燥した結晶性ポリエステル樹脂と非晶性ポリエステル樹脂を混合して外層用混合原料、中間層用混合原料とし、それぞれ別の2台の押出機に供給し、結晶性ポリエステル樹脂の融点+10℃以上の温度で溶融押し出しし、フィードブロック方式により積層し、外層/中間層/外層からなる2種3層として押し出し、冷却固化させて未延伸積層シートを成形する。
【0033】
このようにして得られた未延伸積層シートを結晶性ポリエステル樹脂のガラス転移温度以上、ガラス転移温度+30℃以下の範囲の温度で縦方向に3〜5倍延伸し、結晶化が進行しないよう、すぐに20〜40℃に冷却する。
【0034】
次いで、縦方向の延伸温度以上、結晶性ポリエステル樹脂の冷結晶化温度未満の温度で横方向に3.5〜4.5倍延伸する。
【0035】
2軸延伸後のフィルムを中間層の融点又は軟化温度以上、外層の融点−20℃以下の温度で熱処理を行なう。また、熱処理の際に弛緩処理を行なう事が、後の印刷、ラミネーション等の加工の最に寸法変化が無くなる為好ましい。
【0036】
以上の工程により、両外層は、フィルムの強度、剛性を保持させながら、優れた接着性を有する層となり、中間層は優れた易切断性を有しつつ、剛性を有する層であるという、接着性に優れた易引き裂き性2軸延伸ポリエステルフィルムが得られる。
【実施例】
【0037】
次に実施例、及び比較例を用いて本発明を具体的に説明する。実施例および比較例における評価の方法については(a)〜(d)の方法で行った。
【0038】
(a)屈折率:アッベ屈折計を用い、厚み方向の屈折率Nzを求めた。
【0039】
(b)端裂抵抗:JIS−C2318(1975)に準じて測定した。結果は長手方向、幅方向の数値の大きい方とした。
【0040】
(c)ラミ強度
ラミネート:東洋モートン社製2液硬化型ポリエステル−ポリウレタン系接着剤TM590及び同硬化剤CAT56を用い、固形分が3g/m2となるように塗布した後60℃にてシーラントと貼り合わせ、40℃で48時間硬化後測定した。尚、シーラントとして東洋紡績社製L6102 40μmを用いた。
【0041】
測定:長手方向200mm、幅方向15mmの短冊を切り出し、島津製作所社製オートグラフを用い、ラミネート部分をシーラント側に折り曲げるような形で200mm/minの速度で剥離し、そのときの強度を測定した。各サンプル5回測定し、その平均を得た。
【0042】
評価:ラミネート強度によって次の4段階にて評価した
◎:剥離不能(シーラント又は基材の破断)
○:5N/15mm以上
△:3N/15mm以上、2N/15mm未満
×:3N/15mm未満
【0043】
(d)手切れ性:官能テストで行ない、当該ポリエステルフィルム/上記接着剤/9μmアルミニウム箔/15μm押出しLDPEとラミネートして積層体を作成した後、ヒートシールにて製袋し、シール部分を手で切断した時の開封性で評価した。尚、袋を両手で持つ際には、3mm程度の間隔を持ち、長手方向、幅方向の両方で行った。
○:爪を立てることなく容易に開封できる
△:爪を立てることで容易に開封できる
×:爪を立てても容易に開封できない
【0044】
(実施例1)
結晶性ポリエステル樹脂として、テレフタル酸とエチレングリコールからなるポリエチレンテレフタレート樹脂(東洋紡績社製ポリエステルRE553、PES−Aと記す)を用いた。該ポリエチレンテレフタレート樹脂は融点が255℃、極限粘度0.64dl/gであった。
【0045】
非晶性ポリエステル樹脂として、酸成分としてテレフタル酸を用い、グリコール成分としてエチレングリコール70mol%、シクロヘキサンジメタノール30mol%を共重合した共重合ポリエステル樹脂(東洋紡績社製共重合ポリエステルFP301、PES−Bと記す)を用いた。該共重合ポリエステル樹脂は極限粘度0.74dl/gであり、明確な結晶化温度、融点を示さなかった。
【0046】
両外層にPES−A70重量%、PES−B30重量%を混合し用いた。中間層としてPES−A20重量%、PES−B80重量%を混合し用いた。おのおの275℃の温度で別々の押出し機により溶融し、滞留時間約3分にてこの溶融体をマルチマニホールドダイで合流させた後に押出し、30℃に調温した冷却ドラムで急冷して、外層/中間層/外層構成の3層の未延伸積層シートを得た。
【0047】
該未延伸積層シートを縦方向に95℃で4.0倍、次いで横方向に105℃で4.1倍に延伸した後、2.5%の弛緩を行ないつつ230℃の温度で熱処理をした後接着層側にコロナ放電処理を行ない、層比率が1/2/1である14μmのフィルムを得た。得られたフィルムの特性を表1に示す。
【0048】
(実施例2)
【0049】
両外層にPES−A65重量%、PES−B35重量%を混合し用いた以外は実施例1と同様にして厚さ14μmのフィルムを得た。得られたフィルムの特性を表1に示す。
【0050】
(実施例3)
中間層として、酸成分としてテレフタル酸87.5mol%、イソフタル酸12.5mol%、グリコール成分としてエチレングリコールを共重合した共重合ポリエステル樹脂(東洋紡績社製共重合ポリエステルRF130、PES−Cと記す)を用いた以外は実施例1と同様にして厚さ14μmのフィルムを得た。得られたフィルムの特性を表1に示す。尚、該ポリエチレンテレ/イソフタレート樹脂は融点が221℃、極限粘度0.65dl/gであった。
【0051】
(実施例4)
非晶性ポリエステル樹脂として酸成分としてテレフタル酸、グリコール成分としてエチレングリコール70mol%、ネオペンチルグリコール30mol%からなる共重合ポリエステル樹脂(東洋紡績社製共重合ポリエステルSR173、PES−Dと記す)を用いた以外は実施例1と同様にして厚さ14μmのフィルムを得た。得られたフィルムの特性を表1に示す。尚、該共重合ポリエステル樹脂は極限粘度0.74dl/gであり、明確な結晶化温度、融点を示さなかった。
【0052】
(実施例5)
両外層にPES−A85重量%、PES−B15重量%を混合し用いた以外は実施例1と同様にして厚さ14μmのフィルムを得た。得られたフィルムの特性を表1に示す。
【0053】
(比較例1)
両外層にPES−Aのみを用いた以外は実施例1と同様にして厚さ14μmのフィルムを得た。得られたフィルムの特性を表2に示す。
【0054】
(比較例2)
中間層にPES−Aのみを用いた以外は実施例1と同様にして厚さ14μmのフィルムを得た。得られたフィルムの特性を表2に示す。
【0055】
(比較例3)
それぞれの押出機にPES−A20重量%、PES−B80重量%を混合した同一原料を用いたところ、熱処理過程で溶融してフィルムが得られなかった。当該フィルムの未延伸積層シートをDSCにて熱特性を確認したところ、明確な結晶化ピーク、融解ピークは観察されなかった。
【0056】
(比較例4)
それぞれの押出機にPES−A80重量%、PES−B20重量%を混合した同一原料を用いた以外は実施例1と同様にして厚さ14μmのフィルムを得た。得られたフィルムの特性を表2に示す。
【0057】
(比較例5)
両外層にPES−Aのみを用い、中間層にPES−Cのみを用い、両外層、中間層の比を2/6/2とした以外は実施例1と同様にして厚さ14μmのフィルムを得た。得られたフィルムの特性を表2に示す。
【0058】
実施例1〜5、比較例1〜5で得られたフィルムの評価結果を表1、2に示す。
【0059】
【表1】

【0060】
【表2】

【0061】
実施例1〜5、比較例1〜5より明らかなように、フィルムの接着層が結晶性ポリエステル樹脂と非晶性ポリエステル樹脂の混合物からなり結晶性を有する層からなり、フィルムの端裂抵抗が70N以下であることを特徴とする接着性に優れた易引き裂き性2軸延伸ポリエステルフィルムは、優れた手切れ性と接着性を有することが解る。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明のポリエステル系樹脂フィルムは、優れた手切れ性と接着性を有し、包装袋用フィルムやテープ用フィルムとして、或いはPTP包装や飲料のパックの開封口として、またはガムやキャンディの外装材として幅広い用途分野に利用する事ができ、産業界に寄与する事が大である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層と接着層からなるフィルムであって、フィルムの接着層が結晶性ポリエステル樹脂と非晶性ポリエステル樹脂の混合物からなる結晶性を有する層からなり、フィルムの端裂抵抗が70N以下であり、且つ接着層の厚み方向の屈折率Nzが1.490以上であることを特徴とする接着性に優れた易引き裂き性2軸延伸ポリエステルフィルム。
【請求項2】
請求項1に記載の2軸延伸ポリエステルフィルムであって、少なくとも接着層の結晶性ポリエステル樹脂と非晶性ポリエステル樹脂の割合が、結晶性ポリエステル樹脂/非晶性ポリエステル樹脂=60/40〜90/10重量%の割合で混合され、且つ結晶性を有する事を特徴とする接着性に優れた易引き裂き性2軸延伸ポリエステルフィルム。
【請求項3】
請求項1或いは2に記載の2軸延伸ポリエステルフィルムであって、少なくとも3層からなり、中間層が配向を有しないポリエステル樹脂層からなることを特徴とする接着性に優れた易引き裂き性2軸延伸ポリエステルフィルム。

【公開番号】特開2006−341423(P2006−341423A)
【公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−167886(P2005−167886)
【出願日】平成17年6月8日(2005.6.8)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】