説明

接着性樹脂組成物および成型体

【課題】本発明は、低温での積層体の製造が可能で、充分な接着性と常温時の低いタック性を発現することで優れたホットメルト型接着フィルムを提供することを目的とする。
【解決手段】接着性樹脂組成物を(A)成分20〜60重量部および(B)成分80〜40重量部からなるベース樹脂〔ただし、(A)+(B)=100重量部〕100重量部に対し、(C)粘着付与剤30〜60重量部を必須成分とすることにより課題を解決することが出来る。(但し(A)成分は密度が0.87〜0.96g/cm3であり、(a)不飽和カルボン酸又はその誘導体および(b)芳香族ビニル単量体でグラフト変性され、(a) 不飽和カルボン酸又はその誘導体の含量が0.1〜5重量%である。(B)成分はスチレン系熱可塑性エラストマーを示す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はホットメルト接着剤に関する。さらに詳しくはポリオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂などの難接着性材料との接着性に優れたホットメルト接着剤フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性エラストマー、オレフィン系重合体、ビニル系重合体およびエンジニアリングプラスチックス等の熱可塑性樹脂は、物性、成形性および表面特性等に優れているため、目的に応じて塊状、シート状、フィルム状等に加工して自動車、家電、エレクトロニクス、建築、雑貨等の分野で多く使用されている。そして、これらの成形品は、所望形状の製品とするため、あるいは性能の高度化、機能の多様化を図るため複数の成形品を接着させ、複合化することが行われている。中でも、力学的な物性に富む樹脂製の成形品を基材とし、その外層に表面特性、耐候性、装飾性に優れる表皮材、加飾シートを積層することが幅広く行われており、積層体は自動車内装、住宅内装、家電機器の筐体などに多く利用されている。しかしながら、このような積層体は一般に各層間の接着力に乏しく、接着層を設けて積層される例が多い。接着剤としては、溶剤型接着剤とホットメルト型接着剤使用されているが、溶剤型接着剤は、塗布むらが出やすいこと、有機溶剤の使用により環境、衛生上の悪影響を生じるという欠点を有する。一方、ホットメルト接着剤は、加熱することで軟化溶解し冷却すると固化する性質を持つ熱可塑性ポリマーをベースとした接着性混合物から構成され、取扱いが簡単で、無溶剤のため環境への悪影響がなく、しかも極めて短時間で接着が行えるという種々の利点を備えている。そのため、簡便かつ接着強度の優れたホットメルト接着剤が求められている。また、ホットメルト接着剤を用いた上記積層体の成形法は通常、成形品の形状に合わせて表皮材を加熱成形しながら同時に接着も行われることから、接着剤は予め表皮材に均一かつ簡便に加熱ラミネートして使用できるフィルム状が好ましい。
【0003】
このようなホットメルト型接着剤としては、エチレン系共重合体、スチレン系ブロック共重合体およびオレフィン系(共)重合体からなる群から選ばれる1種以上のベースポリマーと粘着付与樹脂、結晶性極性基含有化合物を含有するもの(特許文献1)、アモルファスポリα−オレフィン、粘着付与樹脂およびポリプロピレン系ワックスを必須成分とするもの(特許文献2)、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合ゴムあるいはスチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合ゴムに、粘着付与樹脂成分およびプロセスオイルなどの液状可塑剤を添加してなるもの(特許文献3、4)、変性ポリオレフィンと粘着付与剤を配合してなるもの(特許文献5)、スチレン系ブロック共重合ゴムと酸変性ワックスを配合してなるもの(特許文献6)、酸変性ポリプロピレンと酸変性スチレン系ブロック共重合体を配合してなるもの(特許文献7)、スチレン系ブロック共重合体と粘着付与剤、エチレン系重合体を配合してなるもの(特許文献8、9、10)などが提案されている。
【0004】
しかしながら、一般に、上述のようなスチレン系ブロック共重合体あるいはポリオレフィンをベースポリマーとした接着剤は、ポリオレフィンに対しては一定の接着強度を示すものの、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂などの極性を有する樹脂に対する接着力が乏しい。異種の熱可塑性樹脂の成形品間における接着は、両成形品の極性が異なることが多いことを考慮すると、これらのホットメルト接着剤は実用に耐えないというのが現実である。接着時の加熱温度を比較的高温とし圧力をかけることで、極性樹脂への接着性を高めることができる場合もあるが、積層体の用途が、意匠性を必要とする自動車内装、住宅内装、家電機器筐体など場合には、成形部材が損傷し、意匠性が損なわれるという問題が生じる。このような用途には、低結晶性、あるいは非晶性の樹脂をベースポリマーに粘着付与剤を配合した接着剤が有効であり、短時間の加熱、圧着で積層体を得るには、粘着付与剤量を増量することで達成できる。しかしながら、このような接着剤は、常温タックが強くなりハンドリングが悪いという欠点を有する。特に、自動車内装、住宅内装、家電機器筐用途では、表皮材と成形品を真空圧空成形やホットスタンプ成形により接着するケースが多いが、接着剤の常温タックが強すぎると表皮材の成形品への追従性が悪くなり、表皮材に皺、折り目が生じ、良好な外観の積層体が得られないことにもつながる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−168417号公報
【特許文献2】特開2004−284575号公報
【特許文献3】特開平3−160083号公報
【特許文献4】特開平8−60121号公報
【特許文献5】特開平6−293845号公報
【特許文献6】特開2007−169531号公報
【特許文献7】特開2008−163121号公報
【特許文献8】特開平11−131037号公報
【特許文献9】特開平10-279774号公報
【特許文献10】特開平10−265751号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上述のように、自動車内装、住宅内装、家電機器筐体用の積層体の製造において、意匠性への配慮から比較的に低温で接着させた場合にも、極性、非極性材料のいずれの基材に対しても充分な接着性を持ち、かつ常温において低いタック性を有するホットメルト型接着フィルムを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは鋭意検討の結果、(A)密度が0.87〜0.96g/cm3である変性ポリオレフィン共重合体20〜60重量部および(B)スチレン系熱可塑性エラストマー80〜40重量部からなるベース樹脂〔ただし、(A)+(B)=100重量部〕100重量部に対し、(C)粘着付与剤30〜60重量部を必須成分として含有してなるホットメルト型接着フィルムにより上記課題を解決することを見出した。
すなわち、本願発明は以下の構成を有するものである。
【0008】
1).(A)密度が0.87〜0.96g/cm3である変性ポリオレフィン共重合体20〜60重量部および(B)スチレン系熱可塑性エラストマー80〜40重量部からなるベース樹脂〔ただし、(A)+(B)=100重量部〕100重量部に対し、(C)粘着付与剤30〜60重量部を必須成分として含有してなるホットメルト型接着フィルム。
【0009】
2).(A)成分である変性ブロックポリプロピレン共重合体が、(a)不飽和カルボン酸又はその誘導体および(b)芳香族ビニル単量体でグラフト変性され、(a) 不飽和カルボン酸又はその誘導体の含量が0.1〜5重量%であることを特徴とする1)記載のホットメルト型接着フィルム。
【0010】
3).粘着付与剤の環球法による軟化点が90℃以上である1)または2)に記載のホットメルト型接着フィルム。
【0011】
4).(B)スチレン系熱可塑性エラストマーが、スチレン−イソプレンブロックコポリマー、スチレン−ブタジエンブロックコポリマー、水素添加スチレン−イソプレンブロックコポリマー及び水素添加スチレン−ブタジエンブロックコポリマー、水素添加スチレン-ブタジエンランダムコポリマーから選ばれた少なくとも一種以上ある1)〜3)いずれか1項に記載のホットメルト型接着フィルム。
【0012】
5).1)〜4)のいずれかに記載のホットメルト型接着フィルムによって接着してなる積層体。
【0013】
6).ホットメルト型接着フィルムとポリオレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂および金属製材料からなる群より選ばれた少なくとも1種以上とを積層されることを特徴とする5)に記載の積層体。
【0014】
7).表皮材と成形品からなり1)〜4)のいずれかに記載のホットメルト型接着フィルムを表皮材に加熱ラミネートしておき、ホットスタンピング成形により該ホットメルト型接着フィルムを介して、成形品と積層して得られる5)または6)に記載の積層体。
【0015】
8).ホットメルト型接着フィルムと積層体を構成する材料とを積層する際の温度が、150℃以下であることを特徴とする5)〜7)いずれか一項に記載の積層体。
【0016】
9).1)〜4)のいずれかに記載のホットメルト型接着フィルムを表皮材に加熱ラミネートしておきホットスタンピング成形により該ホットメルト型接着フィルム介して、成形品とを積層する積層体の製造方法。
【発明の効果】
【0017】
本発明の接着性樹脂組成物は、従来困難であったポリオレフィン系樹脂などの非極性樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート樹脂などの極性樹脂いずれに対しても、優れた接着力を確保することができる。特に常温での低いタック性が求められるホットスタンピング成形法による自動車内装、住宅内装、家電機器筐体の成形品加飾用途に好適に用いられる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に本発明の詳細について述べる。
【0019】
(1)変性ポリオレフィン共重合体
変性ポリオレフィン共重合体とは、オレフィン共重合体に芳香族ビニル単量体と不飽和カルボン酸又はその誘導体をグラフト重合したものである。本発明に使用する(A)成分の変性ポリオレフィン共重合体は密度が0.87〜0.96g/cm3を有するものであり、結晶性を付与することで融点を高くなり、常温時のタック性が低減することができる。オレフィン共重合体として、グラフト変性の際ポリオレフィン上にラジカルが発生しやすくなる点で、ポリプロピレン共重合体であることが好ましく、接着性の観点からより好ましくは、プロピレン単位が多く変性がされやすいブロックポリプロピレン共重合体である。ブロックポリプロピレン共重合体とは、ホモポリプロピレンを連続相としてエチレン−αオレフィンブロックが分散相を形成しているものである。本発明に使用する(A)成分の変性ポリオレフィン共重合体を用いることで、低温加工での難接着樹脂への接着性、さらには得られる積層体中で接着層の耐熱性を併せ持つことが可能となる。さらにはこのような変性ポリオレフィン共重合体は、他のジエン、ビニルエステルなどを第3成分として共重合してもよい。
【0020】
これらの変性ポリオレフィン共重合体は、2種以上を混合して用いることもできる。また、これらは粒子状のものであってもペレット状のものであってもよく、その大きさや形はとくに制限されるものではない。
【0021】
変性ポリオレフィン共重合体の製造には、溶融混練による方法、溶液による方法、懸濁法などの一般的なラジカルグラフト法によって行うことが出来る。この中で、経済的で、簡便かつ生産性に富む点では溶融混練法が好ましい。
【0022】
ラジカル重合開始剤としては、有機過酸化物が一般的に用いられ、例えば水素引き抜き能が高いものとして、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレレート、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタンなどのパーオキシケタール;ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、α,α´−ビス(t−ブチルパーオキシ−m−イソプロピル)ベンゼン、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3などのジアルキルパーオキサイド;ベンゾイルパーオキサイドなどのジアシルパーオキサイド;t−ブチルパーオキシオクテート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジ−t−ブチルパーオキシイソフタレートなどのパーオキシエステルが好ましい。これらは、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0023】
前記ラジカル重合開始剤の添加量は、変性ポリオレフィン共重合体100重量部に対して、0.01〜10重量部の範囲内にあることが好ましく、0.05〜5重量部の範囲内にあることがさらに好ましい。0.01重量部未満では変性が充分に進行せず、10重量部を超えると架橋反応による流動性の低下やゲル分の増加により、接着性が低下する。
【0024】
(a)不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体としては、特に制限されないが、例えば無水物、アミド、イミド、エステルなどであり、単独または2種以上が好適に用いられる。不飽和カルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、エンド−ビシクロ[2.2.1]−5−ヘプテン−2,3−ジカルボン酸(エンディック酸)、フマル酸、テトラヒドロフタル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、ナジック酸等が挙げられ、不飽和カルボン酸の誘導体の具体例としては、塩化マレニル、マレイミド、無水マレイン酸、無水エンディック酸、アクリル酸メチル、アクリル酸アミド、メタクリル酸メチル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸アミド、無水シトラコン酸、無水イタコン酸、無水ナジック酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸ジメチル、フマル酸モノメチル、フマル酸ジメチル等が挙げられる。これら不飽和カルボン酸又はその誘導体のうち、好ましくは、アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、メタクリル酸グリシジルであり、安価な点から、より好ましくは、無水マレイン酸、メタクリル酸グリシジルであり、変性後の乾燥工程での除去が容易な点で、メタクリル酸グリシジルが特に好ましい。
【0025】
(a)不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体の添加量は、変性ポリオレフィン共重合体100重量部に対して、0.2〜50重量部であることが好ましく、0.5〜20重量部であることがさらに好ましい。添加量が少なすぎると接着性が充分に改善されない傾向があり、添加量が多すぎるとグラフトに寄与しないフリーポリマーの副生が増大する傾向や、好適な形状や外観を有するホットメルト型接着フィルムとして取得できない傾向がある。
【0026】
不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体のグラフト率を向上させる目的で、(b)芳香族ビニル単量体を添加することが好ましい。また、芳香族ビニル単量体を共存させることで、ポリオレフィンの主鎖切断による機械的特性が低下するのを抑えることができ、接着剤組成物の耐熱性を保つことができる。
【0027】
(b)芳香族ビニル単量体としては、特に制限されないが、好ましくは炭素数4〜20、より好ましくは6〜15の芳香族ビニル単量体である。例示するならば、スチレン;o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、β−メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレンなどのメチルスチレン;o−クロロスチレン、m−クロロスチレン、p−クロロスチレン、α−クロロスチレン、β−クロロスチレン、ジクロロスチレン、トリクロロスチレンなどのクロロスチレン;o−ブロモスチレン、m−ブロモスチレン、p−ブロモスチレン、ジブロモスチレン、トリブロモスチレンなどのブロモスチレン;o−フルオロスチレン、m−フルオロスチレン、p−フルオロスチレン、ジフルオロスチレン、トリフルオロスチレンなどのフルオロスチレン;o−ニトロスチレン、m−ニトロスチレン、p−ニトロスチレン、ジニトロスチレン、トリニトロスチレンなどのニトロスチレン;o−ヒドロキシスチレン、m−ヒドロキシスチレン、p−ヒドロキシスチレン、ジヒドロキシスチレン、トリヒドロキシスチレンなどのビニルフェノール;o−ジビニルベンゼン、m−ジビニルベンゼン、p−ジビニルベンゼンなどのジビニルベンゼン;o−ジイソプロペニルベンゼン、m−ジイソプロペニルベンゼン、p−ジイソプロペニルベンゼンなどのジイソプロペニルベンゼン;などの1種または2種以上が挙げられる。これらのうちスチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレンなどのメチルスチレン、ジビニルベンゼン単量体またはジビニルベンゼン異性体混合物が安価であるという点で好ましい。
【0028】
前記(b)芳香族ビニル単量体の添加量は、変性ポリオレフィン共重合体100重量部に対して、0.1〜50重量部であることが好ましく、0.5〜40重量部であることがさらに好ましく、1〜30重量部であることが特に好ましい。添加量が少なすぎると変性ポリオレフィン共重合体に対する不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体のグラフト率が劣る傾向がある。一方、添加量が50重量部を超えると不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体グラフト効率が飽和域に達するとともに、過剰な架橋反応が進行して、接着性が低下する恐れがある。
【0029】
溶融混練時の添加順序及び方法については、変性ポリオレフィン共重合体とラジカル重合開始剤を溶融混練した混合物に不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体、あるいは芳香族ビニル単量体を加え溶融混練する添加順序がよく、この添加順序で行うことでグラフトに寄与しない低分子量体の生成を抑制することができる。なお、そのほか必要に応じ添加される材料の混合や溶融混練の順序及び方法はとくに制限されるものではない。
【0030】
溶融混練時の加熱温度は、150〜240℃であることが、変性ポリオレフィン共重合体が充分に溶融し、過剰な熱分解あるいは架橋反応が併発しないという点で好ましい。また溶融混練の時間(ラジカル重合開始剤を混合してからの時間)は、通常30秒間〜60分間である。
【0031】
また、前記の溶融混練の装置としては、一軸又は多軸押出機、バンバリーミキサー、プラストミル、加熱ロールニーダー、などを使用することができる。生産性の面から減圧装置を装備した単軸あるいは二軸押出機を用いる方法が好ましい。また、各々の材料を充分に均一に混合するために、前記溶融混練を複数回繰返してもよい。
【0032】
(2)スチレン系熱可塑性エラストマー
本発明の(B)成分のスチレン系熱可塑性エラストマーとは、スチレン、その同族体もしくはその類似体を含有する熱可塑性エラストマーをいう。スチレン系熱可塑性エラストマーとして知られるものは、特に限定されることなく使用できる。具体的な例としては、スチレン、その同族体もしくはその類似体のブロックを、少なくとも一つの末端ブロックとして含み、共役ジエンもしくはその水添物のエラストマーブロックを少なくとも一つ中間ブロックとして含むブロック共重合体または、芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物とのランダム共重合体を挙げることができる。
本発明のスチレン系熱可塑性エラストマーの好ましい具体例として、スチレン−ブタジエンジブロックコポリマー、スチレンーブタジエントリブロックコポリマー、スチレンーイソプレンジブロックコポリマー、スチレンーイソプレントリブロックコポリマー、水素添加スチレン−ブタジエンジブロックコポリマー、水素添加チレンーブタジエントリブロックコポリマー、水素添加スチレンーイソプレンジブロックコポリマー、水素添加スチレンーイソプレントリブロックコポリマー、水素添加スチレンーブタジエンランダムコポリマーなどが挙げられる。さらに、スチレンブロックの中にはスチレンのほかに、スチレンとα−メチルスチレン等の芳香族系ビニル化合物の共重合体が含まれていてもよい。
【0033】
これらのスチレン系熱可塑性エラストマーの中でも、耐熱性および耐候性が良好なものとなる点から、その共役ジエンを主体とする重合体ブロックにおける不飽和二重結合の一部または全部が水素添加されていることが好ましく、水素添加スチレン−イソプレントリブロックコポリマー(SEPS)、水素添加スチレン−ブタジエントリブロックコポリマー(SEBS)、水素添加スチレン-ブタジエンランダムコポリマー(HSBR)が挙げられる。変性ポリオレフィン共重合体、粘着付与剤との相溶性に優れ、低温接着性に優れる点から水素添加スチレン-ブタジエンランダムコポリマー(HSBR)特に好ましい。上述のスチレン系熱可塑性エラストマーは市販されているアサプレン、タフプレン、アサフレックス[旭化成工業(株)製];ダイナロン、JSR−TR[JSR(株)製];クレイトン[クレイトンポリマー社製];クインタック[日本ゼオン社製];ハイブラー、セプトン[クラレ(株)製]を例示できる。これらの市販品は、各々単独で又は組み合わせて使用することができる。
【0034】
(3)粘着付与剤
(C)成分の粘着付与剤としては、常温での低タック性を有するには、環球法による軟化点が90℃以上、好ましくは90〜170℃のものである。軟化点が低すぎると、常温でのタック性が高くなり、さらには接着剤組成物の耐熱性が低下するとともに、スチレン系熱可塑性エラストマーや変性ポリオレフィン共重合体との溶融混練が困難となる。このような粘着付与剤としては、種々のものがあるが、例えば、石油樹脂(脂肪族系、脂環族系、芳香族系等)、テルペン樹脂(α−ピネン、β-ピネン、リモネンなどの重合体)、芳香族炭化水素変性テルペン樹脂、ロジン系樹脂(ガムロジン、トール油ロジン、ウッドロジン、水添ロジン、不均化ロジン、重合ロジン、マレイン化ロジン、ロジンエステル等)、テルペンフェノール樹脂などが挙げられ、これらは単独あるいは2種以上をあわせて用いることができる。
【0035】
(4)ホットメルト型接着フィルムの製造方法
本発明の接着剤樹脂組成物の製造方法として、各成分の(A)変性ポリオレフィン共重合体、(B)スチレン系熱可塑性エラストマー、および(C)粘着付与剤を混合する方法は、公知のいずれの方法を用いても良いが、均一に混合するのが容易であるという点からは、特に溶融混錬が好ましい。溶融混錬の装置としては、一軸又は多軸押出機、バンバリーミキサー、プラストミル、加熱ロールニーダー、などを使用することができる。生産性の面から減圧装置を装備した単軸あるいは二軸押出機を用いる方法が好ましい。また、各々の材料を充分に均一に混合するために、前記溶融混練を複数回繰返してもよい。各成分の配合割合としては、(A)変性ポリオレフィン共重合体20〜60重量部および(B)スチレン系熱可塑性エラストマー80〜40重量部[ただし、(A)+(B)=100重量部]のベース樹脂に対し、(C)粘着付与剤30〜60重量部である。より好ましくは、(A)変性ポリオレフィン共重合体30〜50重量部、(B)スチレン系熱可塑性エラストマー70〜50重量部である。(C)成分の粘着付与剤の配合量が、30重量部より少ないと被着体へのぬれ性が乏しくなり接着性が低下し、60重量部より多いと凝集力が乏しくなり接着性が低下するとともに、接着性樹脂組成物のタックが強くなりすぎて、造粒および成形時の取り扱いが困難となる。(A)変性ポリオレフィン共重合体は、ベース樹脂の一部として使用することにより、それ自身が低温での接着に寄与するほか、石油樹脂、テルペン樹脂などの非極性の粘着付与剤から、ロジン系樹脂やテルペンフェノール系樹脂などの極性基を持つ粘着付与剤を用いた場合にも、ベース樹脂との相溶性を向上させ、極性樹脂への接着性を効果的に得ることができる。
【0036】
なお、本発明の接着性樹脂組成物には、接着性を損なわない範囲で、他の熱可塑性樹脂を配合してもかまわない。熱可塑性樹脂としては、特に限定されないが、ポリオレフィン、エチレンと酢酸ビニル、メタクリル酸アルキルエステル、アクリル酸アルキルエステル、芳香族ビニルなどのビニル化合物などとのランダム共重合体などが挙げられ、これらは単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
【0037】
なお、接着性樹脂組成物には必要に応じて、酸化防止剤、金属不活性剤、燐系加工安定剤、紫外線吸収剤、紫外線安定剤、蛍光増白剤、金属石鹸、制酸吸着剤などの安定剤、または架橋剤、連鎖移動剤、核剤、滑剤、可塑剤、充填材、強化材、顔料、染料、難燃剤、帯電防止剤などの添加剤を本発明の効果を損なわない範囲内で添加してもよい。
【0038】
これらの安定剤および添加剤を用いる場合は、予めスチレン系熱可塑性エラストマーまたは、変性ポリオレフィン共重合体に添加されているものであってもよく、これらの溶融変性の際に添加されるものであってもよく、ベース樹脂の(A)と(B)および粘着付与剤の各成分を溶融混錬する際に添加されるものであってもよく、また、接着性樹脂組成物を製造したのちに適宜の方法で添加されるものであってもよい。
【0039】
本発明のホットメルト型接着フィルムは、上記の接着剤組成物を、熱溶着性を有するフィルム状成形体にしたものであり、例えばTダイ押出成形機、カレンダー成形機、ロール成形機、あるいは加熱プレス成形機などを用いて製造される。本発明でいう熱溶着性とは、熱で溶けて被着体と接合する性質のことである。
【0040】
(5)本接着性樹脂組成物を含む積層体
本発明のホットメルト型接着フィルムを用いれば、比較的低い処理温度で種々の基材を接着させて多層積層体を得ることが可能になる。本発明の積層体を構成する材料としては、紙、木綿,麻,布、木板などのセルロース系高分子材料、ポリプロピレン,ポリエチレンなどのポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン,スチレン−ブタジエンブロック共重合体(SBS樹脂),スチレン−アクリロニトリル共重合体(AS樹脂),アクリロニトリル−エチレン/プロピレン−スチレン共重合体(AES樹脂)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)などのスチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ナイロン、ポリウレタンなどのポリアミド系樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂等の合成高分子材料、金、銀、銅、鉄、錫、鉛、アルミニウムなどの金属材料が挙げられる。基材の材料として、異なる2種類以上の材料を混合、複合してもよい。また、積層体が本発明の接着性フィルムを介して、異なる2つの被着体が接着してなるものである場合、2つの基材を構成する材料は、同じ種類の材料でも異なる種類の材料のいずれでもよい。本発明のホットメルト型接着フィルムは、特に基材の表面処理をすることなく、強力な接着が可能であるが、必要に応じて、プラズマやレーザーなどによる表面改質、表面酸化、エッチングなどの表面処理等を実施してもよい。
【0041】
本発明の積層体の用途の具体例としては特に限定されないが、基材として表皮材及び成形品を使用する用途、例えば自動車等の内装材料(自動車内装用天井材,自動車内装用ドア部材,自動車内装用ダッシュボード部材、インパネ等)、家電部品(パソコン筺体、薄型テレビのフレーム等)、住居資材(内装壁板、化粧フィルム等)として好適に使用することができる。ここで用いられる表皮材とは、予めフィルム、シート、発泡体、各種不織物、織物に成形されたものであり、例えば、ポリ塩化ビニル、各種ポリオレフィン、ABSから製造される高分子製加飾シート、ポリエステル不織布、起毛ニット、ファブリック、ポリウレタンレザー、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブチレン、およびこれらオレフィンの共重合体を主成分として製造されるポリオレフィン系発泡体などが挙げられる。また、ここで用いられる成形品としては、ABS、PC/ABS、ポリオレフィン、ガラス繊維強化ポリオレフィン、ガラス繊維強化ナイロンなどの各種高分子材料の射出成形品、木材チップ、木質粉などを熱硬化性樹脂やポリオレフィン樹脂で熱プレス成形により固めた木質成形品や木質ボードが挙げられる。
【0042】
積層体を構成する各成分の厚みは、特に限定されないが、接着フィルムの厚みとしては25μm〜600μm好ましく、表皮材と成形品との接着においては、30μm〜100μmの厚みがより好ましい。この範囲の厚みの接着フィルムを用いることで、深絞りの成形品を被着体とした積層体を製造する場合にも、その形状に表皮材が追従し、良好な外観の積層体が得られる。
【0043】
(7)積層体の製造方法
本発明に関わる多層積層体を製造するにあたっては、熱ラミネート、真空成形、真空圧空成形、熱プレス、熱ロール、ホットスタンピング成形など、種々の成形方法を採用することができる。なかでも、真空成形、真空圧空成形、ホットスタンピング成形は、成形品の形状に沿って表皮材を追従させることができる成形として好ましく、比較的簡易な装置により成形品を工業的に安価に供給できるホットスタンピング成形が特に好ましい。本発明のホットメルト型接着フィルムは、130℃程度の比較的低い温度で強力な接着が可能であり、表皮材及び成形品の素材の風合い、感触等を損なうことなく製造でき、加飾シートを表皮材とする成形品加飾の用途に好適である。接着フィルムと被着体との積層方法として、例えば、表皮材と成形品との接着では、成形品を所定の温度に加熱して成形機にセットし、本発明のホットメルト接着剤を置き、次いで予め所定の温度に加熱した表皮材を重ねて圧着する方法;表皮材及び成形品の間に接着フィルムを挟み、加熱圧着する方法;さらには、表皮材の接着側にホットメルト型接着フィルムを予め加熱ラミネートしておき、各種成形方法で加熱圧着する方法等が挙げられる。
【実施例】
【0044】
以下に具体的な実施例および比較例によって本発明をさらに詳細に示すが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。下記実施例および比較例中「部」および「%」は、それぞれ「重量部」および「重量%」を表す。
【0045】
1)ホットメルト型接着フィルムの製造
(実施例1)
ブロックポリプロピレン共重合体(密度:0.88g/cm3、ビカット軟化点:70℃、MFR:10g/10分(230℃、荷重2.16kg))100部、1,3−ジ(t-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン(1分間半減期175℃)0.5部をシリンダー温度200℃、回転数150rpmに設定した二軸押出機(44mmφ、L/D=38.5、(株)日本製鋼所製、製品名TEX44XCT)に供給して溶融混練した後、次いで、シリンダー途中よりメタクリル酸グリシジル5部、スチレン5部加え溶融混練して変性ブロックポリプロピレン共重合体(変性エチレン-フ゜ロヒ゜レン共重合体A(密度:0.88g/cm3))を得た。
【0046】
得られた変性ブロックポリプロピレン共重合体(変性エチレン-フ゜ロヒ゜レン共重合体A)40部と水素添加スチレンイソプレントリブロックコポリマー60部(スチレン含量13%)、テルペンフェノール粘着付与剤(軟化点100℃)50部を、シリンダー温度180℃に設定した上記二軸押出機で溶融混練して、接着性樹脂組成物を得た。この接着樹脂組成物をTダイによって厚み50μmのフィルム状に成形し、ホットメルト型接着フィルム1を得、下記接着評価と粘着評価結果は表1に記載した。
【0047】
(実施例2)
実施例1で得た変性ブロックポリプロピレン共重合体(変性エチレン-フ゜ロヒ゜レン共重合体A)40部と水素添加スチレンイソプレントリブロックコポリマー60部(スチレン含量13%)、テルペンフェノール粘着付与剤(軟化点130℃)50部を、シリンダー温度180℃に設定した上記二軸押出機で溶融混練して、接着性樹脂組成物を得た。この接着樹脂組成物をTダイによって厚み50μmのフィルム状に成形し、ホットメルト型接着フィルム2を得、下記接着評価と粘着評価結果は表1に記載した。
【0048】
(実施例3)
実施例1で得た変性ブロックポリプロピレン共重合体(変性エチレン-フ゜ロヒ゜レン共重合体A)40部と水素添加スチレンイソプレントリブロックコポリマー60部(スチレン含量13%)、石油樹脂系粘着付与剤(軟化点140℃)50部を、シリンダー温度180℃に設定した上記二軸押出機で溶融混練して、接着性樹脂組成物を得た。この接着樹脂組成物をTダイによって厚み50μmのフィルム状に成形し、ホットメルト型接着フィルム3を得、下記接着評価と粘着評価結果は表1に記載した。
【0049】
(比較例1)
エチレン−プロピレンランダム共重合体(密度:0.86g/cm3、ビカット軟化点:48℃、MFR:18g/10分(230℃、荷重2.16kg))100部、1,3−ジ(t-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン(1分間半減期175℃)0.5部をシリンダー温度200℃、回転数150rpmに設定した二軸押出機(44mmφ、L/D=38.5、(株)日本製鋼所製、製品名TEX44XCT)に供給して溶融混練した後、次いで、シリンダー途中よりメタクリル酸グリシジル5部、スチレン5部加え溶融混練して変性エチレン−プロピレンランダム共重合体(変性エチレン−プロピレン共重合体B(密度:0.86g/cm3))を得た。
得られた変性エチレン−プロピレンランダム共重合体(変性エチレン−プロピレン共重合体B) 40部と水素添加スチレンイソプレントリブロックコポリマー60部(スチレン含量13%)、テルペンフェノール粘着付与剤(軟化点100℃)50部を、シリンダー温度180℃に設定した上記二軸押出機で溶融混練して、接着性樹脂組成物を得た。この接着樹脂組成物をTダイによって厚み50μmのフィルム状に成形し、ホットメルト型接着フィルム4を得、下記接着評価と粘着評価結果は表1に記載した。
【0050】
(比較例2)
比較例1で得た変性エチレン−プロピレンランダム共重合体(変性エチレン−プロピレン共重合体B)40部と水素添加スチレンイソプレントリブロックコポリマー60部(スチレン含量13%)、テルペンフェノール粘着付与剤(軟化点130℃)50部を、シリンダー温度180℃に設定した上記二軸押出機で溶融混練して、接着性樹脂組成物を得た。この接着樹脂組成物をTダイによって厚み50μmのフィルム状に成形し、ホットメルト型接着フィルム5を得、下記接着評価と粘着評価結果は表1に記載した。
【0051】
(比較例3)
ブロックポリプロピレン共重合体(密度:0.88g/cm3、ビカット軟化点:70℃、MFR:10g/10分(230℃、荷重2.16kg))100部、1,3−ジ(t-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン(1分間半減期175℃)0.5部をシリンダー温度200℃、回転数150rpmに設定した二軸押出機(44mmφ、L/D=38.5、(株)日本製鋼所製、製品名TEX44XCT)に供給して溶融混練した後、次いで、シリンダー途中よりメタクリル酸グリシジル5部、スチレン5部加え溶融混練して変性ブロックポリプロピレン共重合体(変性エチレン−プロピレン共重合体A)を得た。
【0052】
得られた変性ブロックポリプロピレン共重合体(変性エチレン−プロピレン共重合体A)80部と水素添加スチレンイソプレントリブロックコポリマー20部(スチレン含量13%)、テルペンフェノール粘着付与剤(軟化点130℃)50部を、シリンダー温度180℃に設定した上記二軸押出機で溶融混練して、接着性樹脂組成物を得た。この接着樹脂組成物をTダイによって厚み50μmのフィルム状に成形し、ホットメルト型接着フィルム6を得、下記接着評価と粘着評価結果は表1に記載した。
【0053】
(比較例4)
水素添加スチレンイソプレントリブロックコポリマー100部(スチレン含量13%)、テルペンフェノール粘着付与剤(軟化点100℃)50部を、シリンダー温度180℃に設定した上記二軸押出機で溶融混練して、接着性樹脂組成物を得た。この接着樹脂組成物をTダイによって厚み50μmのフィルム状に成形し、ホットメルト型接着フィルム7を得、下記接着評価と粘着評価結果は表1に記載した。
【0054】
2)接着評価
得られた接着フィルムを、厚み0.3mmのABS−PC樹脂シート上にフジプラ(株)製ラミネーターLAMIPACKER LPD3204にて、加熱温度130℃、速度1.0m/minの条件で、ラミネートして接着剤付表皮材とした後、この表皮材を120〜130℃に加熱し、ホットスタンピング成形によってABSプレートと接着した。得られた積層体を25mm幅にカットし、引張り速度100mm/分で23℃雰囲気中において、表皮材を成形品に対して90度方向に剥離し、T字剥離強度(N/25mm)と破壊状態を試験した。破壊状態としては、材破(表皮材のABS-PC樹脂シートの破壊)、界面剥離(成形品のABSプレート界面からの接着層の剥離)で表記した。
【0055】
3)タック性評価
得られた接着フィルムの表面を指で軽くなぞった時のタック性を官能評価にて次の3段階で評価した。
◎:タックフリー(全く抵抗感がない)
○:低タック(抵抗感がほとんどない)
× :高タック(抵抗感がある)
【0056】
4)成形性評価
接着評価の際にホットスタンピング成形によって得られた成形品を目視で観察を行い、ホットスタンピング成形性を次の3段階で評価した。
◎:気泡の抱きこみ、しわ等全くない
○:気泡の抱きこみ、しわ等ほとんどない
× :気泡の抱きこみ、しわ等がある。
【0057】
【表1】

【0058】
実施例1〜3は本発明の接着性樹脂組成物を用いており、130℃程度の低温加熱で強固な接着強度を示した。また、常温でのタック性は作業性や気泡による成形不良に問題が生じない程度に十分に低かった。さらに実施例1〜3を比較すると、高軟化点の粘着付与剤を用いることで、より低いタック性を有することができた。
一方、比較例に記載した請求項以外のホットメルト型接着フィルムを用いた場合には、接着強度が弱いまたは、タック性が高く、接着強度と低いタック性の両者を満たすフィルムを得ることができなかった。また、実施例2と比較例3からブロックポリプロピレンの配合割合を過度に増加すると、接着強度が低下した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)密度が0.87〜0.96g/cm3である変性ポリオレフィン共重合体20〜60重量部および(B)スチレン系熱可塑性エラストマー80〜40重量部からなるベース樹脂〔ただし、(A)+(B)=100重量部〕100重量部に対し、(C)粘着付与剤30〜60重量部を必須成分として含有してなるホットメルト型接着フィルム。
【請求項2】
(A)成分である変性ブロックポリプロピレン共重合体が、(a)不飽和カルボン酸又はその誘導体および(b)芳香族ビニル単量体でグラフト変性され、(a) 不飽和カルボン酸又はその誘導体の含量が0.1〜5重量%であることを特徴とする請求項1記載のホットメルト型接着フィルム。
【請求項3】
粘着付与剤の環球法による軟化点が90℃以上である請求項1または請求項2に記載のホットメルト型接着フィルム。
【請求項4】
(B)スチレン系熱可塑性エラストマーが、スチレン−イソプレンブロックコポリマー、スチレン−ブタジエンブロックコポリマー、水素添加スチレン−イソプレンブロックコポリマー及び水素添加スチレン−ブタジエンブロックコポリマー、水素添加スチレン-ブタジエンランダムコポリマーから選ばれた少なくとも一種以上ある請求項1〜3いずれか1項に記載のホットメルト型接着フィルム。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれかに記載のホットメルト型接着フィルムによって接着してなる積層体。
【請求項6】
ホットメルト型接着フィルムとポリオレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂および金属製材料からなる群より選ばれた少なくとも1種以上とを積層されることを特徴とする請求項5に記載の積層体。
【請求項7】
表皮材と成形品からなり請求項1〜請求項4のいずれかに記載のホットメルト型接着フィルムを表皮材に加熱ラミネートしておき、ホットスタンピング成形により該ホットメルト型接着フィルムを介して、成形品と積層して得られる請求項5または請求項6に記載の積層体。
【請求項8】
ホットメルト型接着フィルムと積層体を構成する材料とを積層する際の温度が、150℃以下であることを特徴とする請求項5〜請求項7いずれか一項に記載の積層体。
【請求項9】
請求項1〜請求項4のいずれかに記載のホットメルト型接着フィルムを表皮材に加熱ラミネートしておきホットスタンピング成形により該ホットメルト型接着フィルム介して、成形品とを積層する積層体の製造方法。

【公開番号】特開2012−233066(P2012−233066A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−102113(P2011−102113)
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】