説明

接続方法及び端子付電線

【課題】確実に、かつ、安価に、繊維導体と端子金具との接続を行うことができる接続方法及び当該接続方法を用いて接続された繊維導体と端子金具とを備えた端子付電線を提供する。
【解決手段】端子金具3に対して繊維導体21が浮き沈みして交錯するように、端子金具3に設けられた長手方向Y1に沿って並べられた複数の穴31A1〜31A5に、繊維導体21を挿入して繊維導体21を端子金具3に編みこむことにより、繊維導体21と端子金具3とを接続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接続方法及び端子付電線に係り、特に、繊維の表面に導電性の金属をめっきした導体を複数撚って構成された繊維導体と、端子金具と、を接続する接続方法及び当該接続方法を用いて互いに接続された繊維導体と、端子金具と、を備えた端子付電線に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の電線は、複数本の銅線を撚って芯線としたものが主流である。この芯線として銅線を用いた電線に対して、引っ張り強度、軽量化及び屈曲性を高めるために、繊維の表面に銅等の導電性の金属をめっきした導体を複数本撚って構成された繊維導体を芯線とするものが考えられている。
【0003】
そして、このような繊維導体の端部に端子金具を接続する方法としては、従来の銅線と同様に、繊維導体を端子金具に圧着する方法が考えられる(特許文献1)。しかしながら、繊維電線は、引っ張り方向の力は強いが、一本、一本が極細のため、せん断方向の力に弱い。従って、圧着による接続方法では、圧着時に繊維導体が切れる恐れがある、という問題があった。
【0004】
また、端子金具上に繊維導体を巻き付けた後に、半田付けして接続する接続方法も提案されている(特許文献2)。しかしながら、この接続方法では、繊維導体を巻き付けただけでは繊維導体と端子金具との電気的、機械的な接続ができないため、半田付けにより繊維導体と端子金具との電気的・機械的な接続を行う必要があり、手間がかかり、コスト的に問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−223523号公報
【特許文献2】特表2009−518790号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、確実に、かつ、安価に、繊維導体と端子金具との接続を行うことができる接続方法及び当該接続方法を用いて接続された繊維導体と端子金具とを備えた端子付電線を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するための請求項1記載の発明は、繊維の表面に導電性の金属をめっきした導体を複数撚って構成された繊維導体と、端子金具と、を接続する接続方法において、前記端子金具に対して前記繊維導体が浮き沈みして交錯するように、前記端子金具に設けられた長手方向に沿って並べられた複数の穴に、前記繊維導体を挿入して前記繊維導体を前記端子金具に編みこむことにより、前記繊維導体と前記端子金具とを接続することを特徴とする接続方法に存する。
【0008】
請求項2記載の発明は、繊維の表面に導電性の金属をめっきした導体を複数撚って構成された繊維導体と、前記繊維導体の端部に接続された端子金具と、を備えた端子付電線において、前記端子金具には、長手方向に沿って並べられた複数の穴が設けられ、前記端子金具に対して前記繊維導体が浮き沈みして交錯するように、前記複数の穴に前記繊維導体を挿入して前記繊維導体を前記端子金具に編みことにより、前記繊維導体と前記端子金具とが接続されていることを特徴とする端子付電線に存する。
【0009】
請求項3記載の発明は、前記端子金具には、前記複数の穴の各々から当該端子金具の端部まで延在する複数の連通穴が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の端子付電線に存する。
【0010】
請求項4記載の発明は、前記繊維導体が、前記長手方向の一方に向かって順次、前記複数の穴に挿入された後、折り返されて前記長手方向の他方に向かって順次、前記複数の穴に挿入されていることを特徴とする請求項2又は3に記載の端子付電線に存する。
【発明の効果】
【0011】
以上説明したように請求項1記載の発明によれば、端子金具に対して繊維導体が浮き沈みして交錯するように、端子金具に設けられた複数の穴に繊維導体を挿入して繊維導体を端子金具に編みこむことにより、繊維導体と端子との間に摩擦が生じて、この摩擦力により、繊維導体と端子金具とが機械的、電気的に接続される。従って、半田付などをしなくても、確実に、かつ、安価に繊維導体と端子金具との接続を行うことができる。また、繊維導体は屈曲性が高いため、編みこんだときに締まりやすく、また、編みこんだ後にほどこうとする力もほとんど発生しないため、より確実に繊維導体と端子金具との接続を行うことができる。
【0012】
請求項2記載の発明によれば、端子金具に対して繊維導体が浮き沈みして交錯するように、端子金具に設けられた複数の穴に繊維導体を挿入して繊維導体を前記端子金具に編みこむことにより、繊維導体と端子との間に摩擦が生じて、この摩擦力により、繊維導体と端子金具とが機械的、電気的に接続される。従って、半田付などをしなくても、確実に、かつ、安価に繊維導体と端子金具との接続が接続される。
【0013】
請求項3記載の発明によれば、端子金具の端部まで延在する連通穴を通って、繊維導体を複数の穴の中に挿入することができるため、簡単に繊維導体を編みこむことができる。
【0014】
請求項4記載の発明によれば、折り返して編みこむことにより、繊維導体と端子金具との機械的、電気的接続をより強固に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】(A)は本発明の端子付電線の一実施形態における上面図であり、(B)は(A)のA−A線断面図である。
【図2】(A)は図1に示す電線の斜視図であり、(B)は(A)の正面図であり、(C)は、(B)に示す導体の斜視図である。
【図3】他の実施形態における端子付電線の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の接続方法及び端子付電線を図1及び図2に基づいて説明する。図1に示すように、本発明の端子付電線1は、電線2と、この電線2の端末に接続された端子金具3と、を備えている。
【0017】
上記電線2は、移動体としての自動車などに配索されるワイヤハーネスを構成する。上記電線2は、図2に示すように、導電性の繊維導体21と、絶縁性の被覆部22と、を備えている。前記繊維導体21は、複数の導体23が撚られて構成されている。この導体23は、例えばパラ系アラミドやポリアリレートなど樹脂から成る繊維23Aと、この繊維23Aの表面にめっきされた導電性の金属としての銅23Bと、から構成されている。
【0018】
なお、本実施形態では、導電性の金属として銅23Bを用いているが、本発明はこれに限ったものではなく、繊維23の表面にめっきできるものであればよい。また、繊維23Aとしては、樹脂からなる化学繊維を用いているが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば天然繊維であってもよい。
【0019】
上記端子金具3は、図1に示すように、導電性の金属板をプレス加工することにより形成されていて、上述した繊維導体21が編みこまれる平板状の電線接続部31と、相手側コネクタの端子金具が接続される端子接続部32と、長手方向Y1に並んで一体に設けられている。上記電線接続部31には、その長手方向Y1に沿って並べられた複数の穴31A1〜31A5が設けられている。
【0020】
本実施形態では、例えば5つの穴31A1〜31A5が長手方向Y1に沿って互いに間隔を空けて設けられている。また、電線接続部31には、これら複数の穴31A1〜31A5の各々から端子金具3の短手方向Y2の一端部まで延在する複数の連通穴31B1〜31B5が設けられている。
【0021】
次に、上述した電線2と、端子金具3と、の接続方法について以下説明する。まず、電線2の端末の被覆部22を剥いて、繊維導体21を露出させる。次に、図1に示すように、端子金具3に対して繊維導体21が浮き沈みして交錯するように、端子金具3に設けられた長手方向Y1に沿って並べられた複数の穴31A1〜31A5に、繊維導体21を挿入して繊維導体21を端子金具3に編みこむ。
【0022】
詳しくは、図1(B)に示すように、繊維電線21は、長手方向Y1の最も後端側(図面右側)に位置する穴31A1よりも長手方向Y1後端側の電線接続部31上側に配置され、次に、上記穴31A1を通って、穴31A1−穴31A2間の電線接続部31下側に配置される。また、繊維電線21は、穴31A2を通って、穴31A2−穴31A3間の電線接続部31の上側に配置され、次に、穴31A3を通って、穴31A3−穴31A4間の電線接続部31の下側に配置され、さらに、穴31A4を通って、穴31A4−穴31A5間の電線接続部31の上側に配置されている。
【0023】
このとき、連通穴31A1〜31A5から穴31A1〜31A5に繊維導体21を挿入する。その後、繊維導体21の先端を長手方向Y1先端側(図面右側)に向けて引っ張ると、繊維導体21と端子金具3の電線接続部31との間に摩擦が生じ、この摩擦力により、繊維導体21と端子金具3とが機械的、電気的に接続される。
【0024】
上述した実施形態によれば、端子金具3に対して繊維導体21が浮き沈みして交錯するように、端子金具3に設けられた複数の穴31A1〜31A5に繊維導体21を挿入して繊維導体21を端子金具3に編みこむことにより、繊維導体21と端子金具3との間に摩擦が生じて、この摩擦力により、繊維導体21と端子金具3とが機械的、電気的に接続される。従って、半田付などをしなくても、確実に、かつ、安価に繊維導体21と端子金具3との接続を行うことができる。また、繊維導体21は屈曲性が高いため、編みこんだときに締まりやすく、また、編みこんだ後にほどこうとする力もほとんど発生しないため、より確実に繊維導体21と端子金具3との接続を行うことができる。
【0025】
また、上述した実施形態によれば、端子金具4には、複数の穴31A1〜31A5の各々からその端子金具3の端部まで延在する複数の連通穴31B1〜31B5が設けられている。これにより端子金具3の端部まで延在する連通穴31B1〜31B5を通って、繊維導体21を複数の穴31A〜31A5の中に挿入することができるため、簡単に繊維導体21を編みこむことができる。
【0026】
なお、上述した実施形態によれば、長手方向Y1の先端側に向かって繊維導体21を電線接続部31に編みこんでいたが本発明はこれに限ったものではない。例えば、図3に示すように、繊維導体が、長手方向Y1の先端側に向かって複数の穴31A1〜31A5に挿された後、折り返されて長手方向Y1の後端側に向かって複数の穴31A〜31A5に挿入されている。このように折り返して編みこむことにより、繊維導体21と端子金具3との機械的、電気的接続をより強固に行うことができる。
【0027】
また、上述した実施形態によれば、連結部31B1〜31B5を設けていたが、本発明はこれに限ったものではない。連結部31B1〜31B5については設けなくてもよい。
【0028】
また、前述した実施形態は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0029】
1 端子付電線
3 端子金具
21 繊維導体
23A 繊維
23B 銅(導電性の金属)
31A1〜31A5 穴
31B1〜31B5 連通穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維の表面に導電性の金属をめっきした導体を複数撚って構成された繊維導体と、端子金具と、を接続する接続方法において、
前記端子金具に対して前記繊維導体が浮き沈みして交錯するように、前記端子金具に設けられた長手方向に沿って並べられた複数の穴に、前記繊維導体を挿入して前記繊維導体を前記端子金具に編みこむことにより、前記繊維導体と前記端子金具とを接続する
ことを特徴とする接続方法。
【請求項2】
繊維の表面に導電性の金属をめっきした導体を複数撚って構成された繊維導体と、前記繊維導体の端部に接続された端子金具と、を備えた端子付電線において、
前記端子金具には、長手方向に沿って並べられた複数の穴が設けられ、
前記端子金具に対して前記繊維導体が浮き沈みして交錯するように、前記複数の穴に前記繊維導体を挿入して前記繊維導体を前記端子金具に編みことにより、前記繊維導体と前記端子金具とが接続されている
ことを特徴とする端子付電線。
【請求項3】
前記端子金具には、前記複数の穴の各々から当該端子金具の端部まで延在する複数の連通穴が設けられている
ことを特徴とする請求項1に記載の端子付電線。
【請求項4】
前記繊維導体が、前記長手方向の一方に向かって順次、前記複数の穴に挿入された後、折り返されて前記長手方向の他方に向かって順次、前記複数の穴に挿入されている
ことを特徴とする請求項2又は3に記載の端子付電線。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−43668(P2012−43668A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−184610(P2010−184610)
【出願日】平成22年8月20日(2010.8.20)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】