説明

接続構造体及びその製造方法

【課題】端子高さが低い電子部品を、異方性導電フィルムを介して配線基板に異方性導電接続する場合に、異方性導電フィルムの硬化物の応力緩和力を十分なものになるようにし、しかも異方性導電フィルムの硬化物と電子部品や配線基板との間の界面で「浮き」や「剥離」が生じないようにする。
【解決手段】第1の電子部品の端子と第2の電子部品の端子とが異方性導電フィルムを介して異方性導電接続されてなる接続構造体は、第1の電子部品として、異方性導電フィルム側の表面に配置された少なくとも一対の端子を有し、該一対の端子の間に第1の絶縁層を有しているものを使用し、第2の電子部品として、第1の電子部品の第1の絶縁層に対向する表面には凹部が形成されており、該凹部の底面には第2の絶縁層が形成されているものを使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体チップやフレキシブル配線板等の電子部品が、配線基板等の他の電子部品に異方性導電フィルムを介して接続されてなる接続構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体チップ等の電子部品の端子(例えば、バンプ)形成に使用される金量の低減を図り、更に、端子高さのバラツキによる接続不良の発生を防止することを目的に、電子部品の端子高さを低くすることが行われている。
【0003】
しかし、端子高さを低くすると、半導体チップ等の電子部品と配線基板等の他の電子部品との間の空間容積が小さくなるため、それらの間に挟持されていた異方性導電フィルムの溶融物もしくは軟化物の多くがそれらの間から外へ押し出され、その結果、それらの間に残された異方性導電フィルムの硬化物量が少なくなり、異方性導電接続の加熱圧着時に発生する応力を十分に緩和できず、異方性導電フィルムの硬化物と半導体チップ等の電子部品と配線基板等の他の電子部品との間の界面で「浮き」や「剥離」が生ずるという問題があった。
【0004】
この問題の解決に寄与できる可能性のある技術として、異なる高さ・形状のバンプを有する複数の半導体装置を、一様の厚みの異方性導電フィルムを介して、一つの配線基板に一括して実装できるように、低い高さのバンプを有する半導体装置の直下の配線基板表面に凹部を形成することが提案されている(特許文献1)。この技術によれば、半導体装置と配線基板との間の空間容積が小さくならないようにできるので、低バンプ化を実現することができる可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−274236号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1は、バンプ高さが低い半導体装置を、異方性導電フィルムを介して配線基板に異方性導電接続する場合に、異方性導電フィルムの硬化物の応力緩和力が不十分になること、それにより異方性導電フィルムの硬化物と半導体装置や配線基板との間の界面で「浮き」や「剥離」が生ずること、という問題に言及しておらず、これらの問題を解決するための具体的手段も示唆してはいない。
【0007】
本発明の目的は、以上の従来の技術の問題点を解決することであり、バンプや電極パッド等の端子の高さが低い半導体装置やフレキシブル配線板等の電子部品を、異方性導電フィルムを介して配線基板等の他の電子部品に異方性導電接続する場合に、異方性導電フィルムの硬化物の応力緩和力を十分なものになるようにし、しかも異方性導電フィルムの硬化物と半導体チップ等の電子部品や配線基板等の他の電子部品との間の界面で「浮き」や「剥離」が生じないようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、半導体チップ等の電子部品の直下の配線基板等の他の電子部品表面に凹部を形成するだけでは上述の目的を達成することができないため、そのような凹部を形成することに加えて、更に、異方性導電フィルムの硬化物を挟持する当該電子部品の端子の内側表面と他の電子部品の凹部底面とにそれぞれ絶縁層、特に、異方性導電フィルムに対して良好な密着性を確保できるような絶縁層を形成することにより、上述の目的を達成できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
即ち、本発明は、第1の電子部品の端子と第2の電子部品の端子とが異方性導電フィルムを介して異方性導電接続されてなる接続構造体であって、
第1の電子部品は、表面に第1の絶縁層を有し、第1の絶縁層を表面方向で挟む位置に少なくとも一対の端子が配置されており、
第1の電子部品の第1の絶縁層に対向する第2の電子部品の表面には凹部が形成されており、該凹部の底面には第2の絶縁層が形成されている接続構造体を提供する。
【0010】
また、本発明は、第2の電子部品の端子上に、異方性導電フィルムを介して、第1の電子部品の端子を位置合わせし、当該第1の電子部品を第2の電子部品に対して加熱加圧して異方性導電接続する。工程を有する接続構造体の製造方法において、
第1の電子部品として、異方性導電フィルム側の表面に少なくとも一対の端子を有し、一対の端子間に第1の絶縁層を有するものを使用し、
第2の電子部品として、第1の電子部品の第1の絶縁層に対向する表面に凹部が形成され、該凹部の底面には第2の絶縁層が形成されているものを使用することを特徴とする製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の接続構造体においては、第1の電子部品として、異方性導電フィルム側の表面に少なくとも一対の端子を有し、一対の端子間に第1の絶縁層を有するものを使用し、第2の電子部品として、第1の電子部品の第1の絶縁層に対向する表面に凹部が形成され、該凹部の底面には第2の絶縁層が形成されているものを使用する。このため、第1の電子部品と第2の電子部品との間に、異方性導電接続の際の加熱加圧に対し、十分な応力緩和を示す量の異方性導電フィルムの硬化物を存在せしめることができる。しかも、異方性導電フィルムの硬化物を挟持する第1及び第2の電子部品のそれぞれの面に絶縁層が形成されている。このため、異方性導電フィルムの硬化物と第1の電子部品及び第2の電子部品との間の界面での「浮き」や「剥離」の発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、本発明の接続構造体の好ましい態様である半導体装置の概略断面図である。
【図2A】図2Aは、本発明の製造方法の説明図である。
【図2B】図2Bは、本発明の製造方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
まず、本発明の接続構造体は、第1の電子部品の端子と第2の電子部品の端子とが異方性導電フィルムを介して異方性導電接続されたものである。
【0014】
第1の電子部品としては、半導体チップ、LED素子、フレキシブルプリント配線板等が挙げられる。また、第1の電子部品の端子としては、銅、金、アルミ、ITO(インジウム錫複合酸化物)、IZO(インジウム亜鉛複合酸化物)などの公知の材料から形成された配線、電極パッドあるいはバンプが挙げられる。端子の配列の例としては、少なくとも一対の端子の間に絶縁層が形成できるように離隔して配置する。具体的には、半導体チップの場合、複数のバンプをチップの周縁部に配置するペリフェラル配置、一対のライン状に配置するライン配置等が挙げられる。これらの配置の場合、千鳥配列にしてもよい。また、フレキシブルプリント配線板の場合、2以上の配線をライン状に配置するストレート配線等が挙げられる。
【0015】
第2の電子部品としては、フレキシブルプリント配線基板、ガラス配線基板、ガラスエポキシ配線基板等が挙げられる。特に、ガラス絶縁基板の表面に配線が形成されたガラス配線基板を好ましく使用することができる。また、第2の電子部品の端子としては、銅、金、アルミ、ITO(インジウム錫複合酸化物)、IZO(インジウム亜鉛複合酸化物)などの公知の材料から形成された配線、電極パッドあるいはバンプが挙げられる。端子の配列は、第1の電子部品の端子の配列に対応するように配置される。
【0016】
第1の電子部品の少なくとも一対の端子の間、及び第2の電子部品の凹部の底部に設ける絶縁層としては、SiN、SiON、SiO、ポリイミド、シランカップリング剤等の材料から使用目的に応じて形成した層が挙げられる。
【0017】
本発明の接続構造体の具体例として、COG(Chip on Glass)、FOG(Film on Glass)、FOB(Film on Board)、COB(Chip on Board)、FOF(Film on Film)等と称されるものを好ましく挙げることができる。
【0018】
以下、本発明の接続構造体の好ましい態様の一例である半導体装置を図1を参照しながら説明する。この半導体装置は、図1に示すように、第2の電子部品に相当するガラス配線基板1の端子である電極パッド1aと、第1の電子部品に相当する半導体チップ2のペリフェラル配置の端子であるバンプ2aとが異方性導電フィルムを介して異方性導電接続されたものである。異方性導電フィルムは、異方性導電接続後には熱硬化物3となる。
【0019】
この半導体装置においては、半導体チップ2のペリフェラル配置のバンプ2aで囲われた領域2bに対向するガラス配線基板1の表面には凹部1bが形成されている。また、半導体チップ2のペリフェラル配置のバンプ2aで囲われた領域2bには、第1の絶縁層2cが形成されており、ガラス配線基板1の凹部1bの底面には第2の絶縁層1cが形成されている。
【0020】
この半導体装置では、第1の電子部品として半導体チップを適用しているが、それに代わり、集積回路チップ、発光ダイオードチップ等を適用することもできる。また、第2の電子部品としてガラス配線基板を適用しているが、ガラスエポキシ基板等のリジッド配線基板等を好ましく適用することができる。
【0021】
第1の電子部品の端子であるバンプ2aの材質や形成手法は、公知の端子の場合と同様の材質とすることができ、また、その形成手法も同様とすることができる。また、第2の電子部品のガラス配線基板1の凹部1bの形成は、公知の手法により行うことができる。
【0022】
バンプ2aの高さは、金メッキ膜の使用量を低減可能としつつ、初期の導通信頼性を担保するために、好ましくは6〜15μm、より好ましくは9〜12μmに設定する。なお、第1の電子部品としてフレキシブルプリント配線板を使用した場合の端子である配線(好ましくはストレート配線)の高さは、好ましくは1μm〜30μmである。
【0023】
また、半導体チップ2の第1の絶縁層2cは、ペリフェラル配置のバンプ2aで囲われた領域2bだけでなく、バンプ2aの外側の半導体チップ2の表面にも形成されていてもよい。このような第1の絶縁層2cは、既に説明したように、SiN、SiON、SiO、PI(ポリイミド)等から形成されており、いわゆるパッシベーション膜として形成されているものを採用することができる。中でも、異方性導電フィルムに対する接着性とそれ自体の絶縁性の点から、好ましくはSiN、SiON又はSiOから形成する。このような第1の絶縁層2cの厚みは、薄すぎると絶縁性の低下を招き、厚すぎると半導体チップと配線基板との間から異方性導電フィルムを必要以上に押し出してしまう結果となるので、好ましくは0.01〜5μm、より好ましくは0.1〜2.0μmである。
【0024】
なお、半導体チップ2の第1の絶縁層2cの形成は、材質に応じて、スパッタリング、CVD、熱酸化、レーザー系蒸着等の公知の手法により行うことができる。
【0025】
また、半導体チップ2の第1の絶縁層2cとバンプ2aとの形成順は、特に限定されるものではないが、通常、半導体チップの片面に第1の絶縁層を形成した後、バンプを形成すべき位置に形成された第1の絶縁層をフォトリソグラフ法により除去し、その除去した部分に常法によりバンプを形成すればよい。
【0026】
他方、ガラス配線基板1への凹部1bの形成は、ガラス配線基板1の材質等に応じて、公知の手法を利用して行うことができる。例えば、マスクを介してフッ酸でのエッチングにより凹部を形成することができ、エッチング時間を調整することにより、凹部の深さをコントロールすることができる。
【0027】
ガラス配線基板1の凹部1bの深さは、浅すぎると半導体チップ2の浮きを十分に抑制できず、また、圧着時に異方性導電フィルムのはみ出しが顕著となり、深すぎると半導体チップ2の裏面と異方性導電フィルムとの間に空間が形成され、接着面積が少なくなるために接着力が低下する傾向があるので、好ましくは1〜8μm、より好ましくは1〜5μmである。
【0028】
ガラス配線基板1の電極バッド1aは、凹部1bが形成されたガラス配線基板1の表面に、公知の手法により形成することができる。また、第2の絶縁層1cも公知の手法により凹部1bの底面に形成することができる。凹部1b、電極パッド1a及び第1の絶縁層1cの形成順に関し、凹部1bの形成後に第2の絶縁層1cが形成されることを前提に、電極パッド1aを、凹部1bの形成前、凹部1bの形成後であって第2の絶縁層1cの形成前、あるいは第2の絶縁層1cの形成後、に形成することができる。通常は、製造工程の観点から、凹部1bの形成後であって第1の絶縁層1cの形成前に電極パッド1aを形成することが好ましい。
【0029】
電極パッド1aとしては、ITO、IZO、銅、アルミニウムなどの材料から形成することができる。電極パッド1aの厚さは、薄すぎると圧着時に剥離し易くなって接続信頼性が低下する傾向があり、厚すぎると接合体全体の厚さが厚くなり、また金属材料の使用過剰ともなるので、好ましくは、10〜1000nmである。
【0030】
第2の絶縁層1cは、既に説明したように、SiN、SiO、PI(ポリイミド)、シランカップリング剤等から形成することができる。中でも、異方性導電フィルムに対する接着性とそれ自体の絶縁性の点から、好ましくはSiN、SiO又はシランカップリング剤から形成される。このような第1の絶縁層1cの厚みは、薄すぎると絶縁性が低下し、厚すぎると半導体チップ2とガラス配線基板1との間から必要以上に外に押し出されてしまう傾向があるので、好ましくは0.01〜5μm、より好ましくは0.1〜2.0μmである。
【0031】
なお、ガラス配線基板1の第2の絶縁層1cの形成は、材質に応じて、スパッタリング、CVD、熱酸化、レーザー系蒸着等の公知の手法により行うことができる。
【0032】
異方性導電フィルムとしては、熱硬化性接着剤組成物中に導電粒子を分散させてフィルム状に成形した公知のものを使用することができる。熱硬化性接着剤組成物としては、例えば、エポキシ化合物に、成膜性樹脂、硬化剤等を配合したエポキシ系接着剤や、アクリル系モノマーに、成膜性樹脂、硬化剤等を配合したアクリル系接着剤を挙げることができる。これらの接着剤には、必要に応じて、希釈用モノマー、充填剤、軟化剤、着色剤、難燃化剤、チキソトロピック剤、カップリング剤等を配合することができる。また、導電粒子としては、金、ニッケル、ハンダ等の金属粒子、金属メッキ被覆樹脂粒子を使用することができる。更に、ゴム成分、無機フィラーなどを添加してもよい。
【0033】
本発明の好ましい態様である図1の半導体装置は、第1の電子部品として、ペリフェラル配置のバンプが形成され、ペリフェラル配置のバンプで囲われた領域に第1の絶縁層が形成されたものを使用し、且つ第2の電子部品として、第1の電子部品のペリフェラル配置のバンプで囲われた領域に対向する表面に凹部が形成され、その凹部の底部に第2の絶縁層が形成されているガラス基板を使用すること以外、従来の半導体装置と同様に製造することができる。即ち、図2Aに示しように、第2の電子部品(ガラス配線基板1)の端子(電極パッド1a)上に、異方性導電フィルム3′を介して、第1の電子部品(半導体チップ2)の端子(バンプ2a)を位置合わせし、図2Bに示すように、第1の電子部品(半導体チップ2)を第1の電子部品(ガラス配線基板1)に対して加熱加圧ツール4で加熱加圧して異方性導電接続することにより接続構造体として図1の半導体装置を製造することができる。
【0034】
以上説明した本発明の接続構造体は、半導体チップ等の電子部品の端子を低端子化した場合であっても、異方性導電接続時の加熱加圧の際の応力を緩和することができ、しかも異方性導電フィルムの硬化物と電子部品や配線基板との間の界面で「浮き」や「剥離」を生じないようにすることができる。
【実施例】
【0035】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。
【0036】
参考例1(異方性導電フィルムの作成)
成膜成分としてフェノキシ樹脂(YP50、東都化成(株))30質量部に、液状エポキシ化合物としてビスフェノールAエポキシ樹脂(EP828、ジャパンエポキシレジン(株))30質量部と、アミン系硬化剤(PHX3941HP、旭化成(株))39質量部、エポキシシランカップリング剤(A−187、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同株式会社)1質量部、金メッキ被覆樹脂粒子(ブライト、日本化学工業(株))35質量部、及び溶剤としてトルエン50質量部とを均一に混合した。得られた混合物をバーコーターでセパレーレータとしてのポリエチレンテレフタレートフィルムに20μmの乾燥厚となるように塗布し、80℃のオーブン中で5分間加熱乾燥し、熱硬化性の異方性導電フィルムを作成した。
【0037】
参考例2(凹部付き配線基板の作成)
厚さ0.7mm、縦2cm、横8cmのガラス基板(品名:コーニング#1737、コーニング社製)のほぼ中央に、18mm×1mm角で深さ2μmの凹部を以下に説明するように形成した。
【0038】
まず、ガラス基板にエッチングマスクとしてワックス系樹脂塗料を塗布し、60℃で乾燥した。露出しているガラス面に対し、25℃の0.4%希釈のフッ酸水溶液を30分間シャワリングして凹部を形成した。
【0039】
次に、純水でフッ酸を洗浄除去し、更に、有機溶剤を用いてエッチングマスクを除去し、再び純水で洗浄し、乾燥した。
【0040】
配線基板の凹部の周囲に、実装する電子部品のペリフェラル配置の端子に対応した厚さ8μmの銅配線を、無電解メッキに続き電解メッキを行うことにより形成した。
【0041】
次に、凹部以外の配線基板表面をポリイミドマスキング塗料でコートし、表1の材料からなる第2の絶縁層をスパッタリング法もしくはスピンコート法で500nm厚に堆積させた。
【0042】
最後に、ポリイミドマスキング塗料を有機溶剤で剥離することにより、第2の絶縁層が形成された凹部を有する配線基板を得た。
【0043】
参考例3(電子部品の作成)
電子部品の回路形成面に、スパッタリング法により厚さ500nmの表1の材料から第1の絶縁層としてパッシベーション膜を形成した。このパッシベーション膜の端子形成位置対応箇所をフォトリソグラフ法により除去し、その端子形成位置に、30×85μmの矩形のペリフェラル配置で高さ12μmの金バンプを形成することにより、第1の絶縁層を備えた電子部品を作成した。
【0044】
実施例1〜6
加熱加圧ボンディング装置のステージに参考例2で作成した配線基板を置き、その上に参考例1で作成した異方性導電フィルムを置き、更にその上に参考例3で作成した電子部品を置き、加熱加圧ボンディングヘッドで、190℃の圧着温度、80Pa/バンプ層面積の圧力で、15秒間加熱加圧することにより半導体装置を製造した。
【0045】
比較例1
凹部を形成していない配線基板であって、その電極側表面に第2の絶縁層として窒化ケイ素膜を形成した配線基板を使用した以外は、実施例1と同様に半導体装置を作成した。
【0046】
比較例2
凹部を形成せず、しかも電極側表面に第2の絶縁層を形成しない配線基板を使用した以外は、実施例1と同様に半導体装置を作成した。
【0047】
比較例3
凹部は形成されているが、その底部に第2の絶縁層が形成されていない配線基板を使用する以外は、実施例1と同様に半導体装置を作成した。
【0048】
比較例4
端子側表面に第1の絶縁層を形成していない電子部品を使用する以外は、実施例1と同様に半導体装置を作成した。
【0049】
比較例5
凹部を形成していない配線基板であって、その電極側表面に第2の絶縁膜を形成していない配線基板を使用し、端子側表面に第1の絶縁層を形成していない電子部品を使用し、それ以外は実施例1と同様に半導体装置を作成した。
【0050】
<浮き・剥離評価>
半導体装置の異方性導電フィルムの硬化物と電子部品との界面(電子部品側界面)並びに異方性導電フィルムの硬化物と配線基板との界面(配線基板側界面)について、浮きや剥離が発生しているか否かを、ガラス基板側から目視観察し、以下の基準に従って評価した。得られた結果を表1に示す。ランクAの場合、電子部品と配線基板との間に挟持された異方性導電フィルムの硬化物の応力緩和力が十分であることを意味し、ランクBの場合、その応力緩和力が不十分であることを意味し、ランクCは、その応力緩和力が非常に不十分であることを意味する。
【0051】
ランク: 評価基準
A: 界面に浮きや剥離が全く観察されない場合。
B: 界面にわずかに浮き又は剥離が観察された場合。
C: 界面の全体に亘って浮き又は剥離が観察された場合。
【0052】
<接続信頼性評価>
製造直後の半導体装置及び湿熱試験(85℃、85%RH、500時間放置)後の半導体装置の接続信頼性について、半導体装置と配線基板との間の導通抵抗を、 を用いて測定し、以下の基準により評価した。
【0053】
ランク: 評価基準
AA: 導通抵抗が0.1以上1.0Ω未満である場合。
A: 導通抵抗が1.0以上10Ω未満である場合。
B: 導通抵抗が10以上50Ω未満である場合。
C: 導通抵抗が50Ω以上〜オープンである場合。
【0054】
【表1】

【0055】
表1から分かるように、配線基板に凹部を設け、その凹部底面と電子部品の端子側表面に絶縁層を設けた実施例1〜6の半導体装置は、電子部品と配線基板との間に挟持された異方性導電フィルムの硬化物の応力緩和能が十分であり、しかも、接続信頼性についても、初期並びに湿熱試験後にも良好な結果を示した。
【0056】
それに対し、凹部を形成していない配線基板を使用した比較例1、2及び5の半導体装置は、絶縁層の形成の有無に拘わらず、異方性導電フィルムの硬化物の応力緩和力において非常に不十分であった。しかも湿熱試験後だけでなく初期の接続信頼性についても、低評価であった。
【0057】
比較例3及び4の半導体装置は、凹部が形成された配線基板を使用したが、絶縁層が形成されていない界面で異方性導電フィルムの硬化物の接着性が低下し、それに伴い接続信頼性も低下した。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明の半導体装置においては、電子部品と配線基板との間に挟持された異方性導電フィルムが異方性導電接続の際の加熱加圧に対し十分な応力緩和を示すことができる。しかも、異方性導電フィルムの硬化物を挟持する面である、電子部品の端子で囲まれた領域と、配線基板の表面に形成された凹部の底面とに、それぞれ絶縁層が形成されているため、異方性導電フィルムの硬化物と電子部品及び配線基板との間の界面での「浮き」や「剥離」の発生を防止することができる。従って、本発明の半導体装置の構成は、端子高さが低い電子部品を使用する半導体装置に有用である。
【符号の説明】
【0059】
1 ガラス配線基板
1a 電極パッド
1b 凹部
1c 第2の絶縁層
2 半導体チップ
2a バンプ
2b ペリフェラル配置のバンプ2aで囲われた領域
2c 第1の絶縁層
3 熱硬化物
3′異方性導電フィルム
4 加熱加圧ツール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の電子部品の端子と第2の電子部品の端子とが異方性導電フィルムを介して異方性導電接続されてなる接続構造体であって、
第1の電子部品は、異方性導電フィルム側の表面に配置された少なくとも一対の端子を有し、該一対の端子の間に第1の絶縁層を有しており、
第1の電子部品の第1の絶縁層に対向する第2の電子部品の表面には凹部が形成されており、該凹部の底面には第2の絶縁層が形成されている接続構造体。
【請求項2】
第1の電子部品が、半導体チップまたはフレキシブルプリント配線板である請求項1記載の接続構造体。
【請求項3】
第1の電子部品が、半導体チップであって、その端子がペリフェラル配置のバンプである請求項1記載の接続構造体。
【請求項4】
第1の絶縁層が、SiN、SiON又はSiOから形成されている請求項1〜3のいずれかに記載の接続構造体。
【請求項5】
第2の絶縁層が、SiN、SiO又はシランカップリング剤から形成されている請求項1〜4のいずれかに記載の接続構造体。
【請求項6】
第2の電子部品が、ガラス絶縁基板の表面に配線が形成されたものである請求項1〜5のいずれかに記載の接続構造体。
【請求項7】
第2の電子部品の端子上に、異方性導電フィルムを介して、第1の電子部品の端子を位置合わせし、当該第1の電子部品を第2の電子部品に対して加熱加圧して異方性導電接続する。工程を有する接続構造体の製造方法において、
第1の電子部品として、異方性導電フィルム側の表面に少なくとも一対の端子を有し、一対の端子間に第1の絶縁層を有するものを使用し、
第2の電子部品として、第1の電子部品の第1の絶縁層に対向する表面に凹部が形成され、該凹部の底面には第2の絶縁層が形成されているものを使用することを特徴とする製造方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【公開番号】特開2010−239156(P2010−239156A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【公開請求】
【出願番号】特願2010−153835(P2010−153835)
【出願日】平成22年7月6日(2010.7.6)
【出願人】(000108410)ソニーケミカル&インフォメーションデバイス株式会社 (595)
【Fターム(参考)】