説明

接続装置およびそれを用いた電気デバイス集合体

【課題】 比較的簡単な工程で電極端子同士を接続でき、かつ、腐食による電極端子の損傷を抑制可能な接続装置を提供する。
【解決手段】 フィルム外装電池1は、内部の発電要素から引き出されたシート状の端子3、4を有している。接続装置50は、端子3、4が重なった重ね合せ部を気密封止するシール材40と、上記重ね合せ部をシール材40を介して挟み込む一対の挟持部材21、22と、その一対の挟持部材21、22を互いに位置決め固定すると共に、上記重ね合せ部において端子3、4が互いに押し付けられるように一対の挟持部材21、22を付勢する押し付け部材30とを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート状の電極端子同士を電気的に接続するための接続装置、および、それを用いて複数の電気デバイス同士が電気的に接続された電気デバイス集合体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電気自動車やハイブリッド電気自動車(以下、単に「電気自動車等」という)のモータ駆動用の電源として、軽量かつ薄型の電池の開発が進められている。この種の電池の一例として、複数のフィルム外装電池が重ね合わされて所定の電圧が得られるように構成された組電池が知られている。フィルム外装電池は、薄型の発電要素がラミネートフィルムによって密閉封止されたものであり、密閉封止のためにラミネートフィルムの周縁部は熱融着されている。また、そのラミネートフィルム同士の熱融着部からは、内部の発電要素と電気的に接続された、正極および負極の引き出し端子が延出している。
【0003】
図12は、特許文献1に示された従来の組電池の構成を示す図である。
【0004】
図12(a)に示すように、組電池151は、電気的に直列接続されるように並べられた2つのフィルム外装電池103a、103b(フィルム外装電池103)を有している。各フィルム外装電池103はいずれも同一に構成されており、フィルム外装電池103aを例に挙げて説明すると、フィルム外装電池103aは、外包体104によって密封封止された発電要素105を有しており、熱融着された外包体104の周縁部からは、内部の発電要素105と電気的に接続された正極端子108aが引き出されている。また、図示しないが、フィルム外装電池103aの外包体104の周縁部のうち、正極端子108aが引き出された反対側の周縁部(図面上側の周縁部)からは負極端子(108b)が引き出されている。
【0005】
2つのフィルム外装電池103a、103bは、それぞれの正極端子108aと負極端子108bとが同じ側に位置するように互い違いに重ね合わされており、正極端子108aと負極端子108bとが、重ね合せ部110aにおいて電気的に接続されて直列接続をなしている。なお、図12(a)の構成では、端子同士が互いに接続された重ね合せ部110aが一方側のフィルム外装電池103aの外側面上にくるように折り曲げられている。
【0006】
また、同文献によれば、この重ね合せ部110aにおける端子同士の接続手段としては、例えば、超音波溶接、レーザ溶接といった溶接手段や、ハンダ付け、ビス止め、リベット止め等の手段が挙げられている。
【0007】
次いで、図12(b)の組電池152は、重ね合せ部110bの構成を変えたものであり、重ね合せ部110bは両フィルム外装電池103a、103bの間に設けられている。重ね合せ部110bには、絶縁性材料からなる断面略コ字状の絶縁スペーサ114が取り付けられており、これにより、重ね合せ部110bの先端が接触することによる外包体104の損傷が抑制されたものとなっている。
【特許文献1】特開2003−338275号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら上述したような従来の構成では、フィルム外装電池の端子同士の電気的接続が、超音波溶接やレーザ溶接、あるいははんだ付けなどの手法を用いて行われるものであり、組電池を製造するにあたっては、例えば、フィルム外装電池同士を集合させた状態で端子を引き出して溶接等を行わなければならず、その作業は比較的煩雑なものとなっていた。また、ビス止めやリベット止めなど端子同士を機械的に接続させる手法も挙げられているが、これらの手法においても部品点数の削減、作業工程の簡素化といった点で改善の余地が残されている。
【0009】
他方、フィルム外装電池を直列接続する場合には、正極端子と負極端子とを密着させて接続する必要があり、この場合、例えばアルミニウム(正極)と銅(負極)とが接触することとなる。このように異金属同士が接触する構成では、端子同士の間に液体(例えば水)が入り込んだ状態でその電気的接続部に電流が流れると、電蝕現象が起き、端子が腐食してしまうという問題が起こることが知られている。端子の腐食は、組電池の電気的性能の低下や、短寿命化の原因となる。したがって、端子同士の間への液体の浸入を防止することが、組電池を高信頼なものとする点で重要である。
【0010】
また、アルミニウムなどでは、異金属同士でなくても、すなわち同種金属同士であっても電蝕が起こることもあるため、上記のような問題はフィルム外装電池を直列接続する場合に限らず、並列接続する場合にも同様に起こりうる問題である。そして、上記のような問題は、フィルム外装電池に限らず、電極端子同士の電気的接続が行われ、かつ、端子間の電蝕の問題も生じうる電気デバイスに関して同様に起こりうる問題である。
【0011】
そこで本発明の目的は、比較的簡単な工程で電極端子同士を接続でき、かつ、腐食による電極端子の損傷を抑制可能な接続装置を提供することにある。また、本発明の他の目的は、本発明の接続装置を用いることによって、製造工程の簡素化が図られ、かつ、電極端子の損傷が発生しにくい電気デバイス集合体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため本発明による電極端子の接続装置は、シート状の電極端子同士を部分的に重ねて密着させることによって前記電極端子同士の電気的な接続を行う接続装置であって、前記電極端子同士の重ね合せ部を気密封止するシール材と、前記重ね合せ部を、前記シール材を介して挟み込む一対の挟持部材と、前記一対の挟持部材を互いに位置決め固定すると共に、前記重ね合せ部において前記電極端子同士が互いに押し付けられるように前記一対の挟持部材を付勢する押付け部材とを有するものである。
【0013】
このように構成された本発明の接続装置によれば、一対の挟持部材と押付け部材とを用いて電極端子同士の電気的な接続を行うものであるため、従来のビス止め等による接続、あるいは溶接による接続と比較して、比較的簡単な工程で接続作業を行うことが可能となる。また、押付け部材は、一対の挟持部材を互いに固定するための手段であるが、同時に、一対の挟持部材に付勢力を付与する手段でもあり、この付勢力は挟持部材を介して電極端子同士の重ね合せ部に作用する。これにより、端子同士の密着はより確実なものとなり、接続不良の発生が抑えられたものとなる。本発明の接続装置ではさらに、端子同士の重ね合せ部がシール材によって気密封止されているため、例えば水などが、重ね合せ部(特に端子同士の密着面)に浸入しにくいものとなっている。
【0014】
また、上記一対の挟持部材の対向面のそれぞれには、前記重ね合せ部を挟持するための平面状の挟持面が形成されていてもよいし、相補的にかみ合う形状とされた曲面状または凹凸状の挟持面が形成されていてもよい。さらに、一対の挟持部材の対向面のそれぞれには、前記重ね合せ部を、部分的に直接加圧する押圧突部が形成されているものであってもよく、この場合、押圧突起は、重ね合せ部のうちその周縁を除く領域を直接加圧することが好ましい。
【0015】
また、電極端子の引き回しとしては、電極端子が、前記挟持部材の外周面に沿って折り曲げられ、その先端側が前記挟持面によって挟持されるものであってもよい。この場合、外周面の少なくとも一部には、前記シート状の電極端子をなだらかに折り曲げるための構造部(例えば湾曲部または傾斜部)が形成されていることが好ましい。
【0016】
また、上記押付け部材は、略コ字状の断面形状を有し、前記一対の挟持部材を一括して挟み込む付勢部材であってもよい。さらに、押付け部材は導電性材料であって、接続される前記電極端子の双方に接触した状態で前記一対の挟持部材を挟み込むものであってもよい。
【0017】
また、上記シール材は、重ね合せ部の少なくとも周縁を気密封止するものであればよく、重ね合せ部全体を挟み込む2枚のシート状のシール部材からなるものであってもよい。シール材はその他にも、流動性を有する樹脂材料が固化したものであってもよく、特にこのようなシール材を利用する場合には、一対の挟持部材の対向面のそれぞれには、前記流動性の樹脂材料が充填される空間を協働して形成する凹状構造部が形成されていることが好ましい。
【0018】
また、本発明の電気デバイス集合体は、シート状の電極端子が延出した電気デバイスが複数集合した電気デバイス集合体であって、前記電気デバイスの前記シート状の電極端子と、他の前記電気デバイスの前記シート状の電極端子とが上述のような本発明の接続装置によって接続されているものである。この場合、前記電気デバイスは収納ケースに収納されたものであって、前記接続装置の前記挟持部材は、前記収納ケースの外周面に一体的に形成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
上述したような本発明によれば、一対の挟持部材と押付け部材とを用いて比較的簡単な工程で電極端子同士を接続することができ、しかも、端子同士の重ね合せ部はシール材によって気密封止されているため、端子同士の密着面に水などが浸入しにくく、その結果、端子同士の密着部における電蝕の問題が発生しにくいものとなり、腐食による電極端子の損傷を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
(第1の実施形態)
図1は、フィルム外装電池の構成を示す外観斜視図である。
【0021】
図1のフィルム外装電池1は、従来公知のものであり、所定の起電力を出力する薄型の発電要素2がフィルム外包体7によって密封封止されると共に、それぞれ発電要素2と電気的に接続された、シート状の正極端子3および負極端子4がフィルム外包体7の熱融着部7aから引き出されている。なお、フィルム外包体7の輪郭形状は長方形となっており、正極端子3は、2つの短辺のうちの一方から引き出されており、負極端子4は、反対側の短辺から引き出されている。また、正極端子3と負極端子4とは、互いに異なる材質からなるものであり、例えば、正極端子3がアルミニウムからなり、負極端子4が銅または銅にニッケルメッキを施したものからなっている。
【0022】
図2を参照して、まず本実施形態の接続装置50の全体の構成について説明する。図2は、本実施形態の接続装置を示す図であり、図1に示すフィルム外装電池1が直列接続された状態を示している。すなわち、一方のフィルム外装電池1の正極端子3と、他方のフィルム外装電池1の負極端子4とが接続された状態が示されている。
【0023】
本実施形態の接続装置50は、図2に示すように、正極端子3と負極端子4とを重ね合せた重ね合せ部を挟み込むための一対の挟持部材21、22と、その一対の挟持部材21、22を互いに位置決め固定するための押付け部材30と、端子3、4の重ね合せ部を気密封止して電蝕の発生を抑えるためのシール材40とを有している。
【0024】
次に、図3〜図5を参照して、これら接続装置の各構成要素について詳細に説明する。ここで、図3は、図2の接続装置を拡大して示す断面図であり、端子同士が接続装置によって接続されている完成状態を示ししている。また、図4は、主に挟持部材およびシール材の構成を示す分解斜視図であり、図5は、図2の押付け部材を単体で示す斜視図である。
【0025】
一対の挟持部材21、22は、図4に示すように、シール部材40a、40bを介して端子3、4の重ね合せ部5を挟み込む部材であり、左右対称形ではあるが実質的に同一の構成となっている。各挟持部材21、22は、重ね合せ部5をその幅方向(図示奥行き方向)の全体にわたって挟み込めるように、重ね合せ部5の幅よりも長く形成されている。各挟持部材21、22の、互いに対向する対向面21a、22aのそれぞれには、シール部材40a、40bを配置するための挟持部21d、22dが形成されている。一方の挟持部22dを例に挙げて説明すると、挟持部22dは、対向面22aのうちの両側と下部側を残すようにして、対向面22aから僅かに掘り込まれた凹状構造部であり、平面状の挟持面を有している。
【0026】
各挟持部材21、22は、それぞれ外側の側面に係合溝21e、22eを有している。図3の断面図に示すように、各係合溝21e、22eは、後述する押付け部材30の係合部30aが引っ掛けられる構造部であり、本実施形態では半円形状となっている。また、各挟持部材21、22の外側上方の角部には、湾曲したR状部21c、22cが形成されている。このようにR状部21c、22cが形成されていることにより、端子3、4を挟持部材21、22の外周に良好に沿わせることができるようになっている。つまり、端子3、4は急な角度で折り曲げられるのではなく、R状部21c、22cに沿ってなだらかに曲げられるため、外周面に対する端子3、4の浮きや、端子の折曲げ部における電気的特性の劣化または機械的強度の劣化といった問題が発生しにくいものとなっている。
【0027】
再び図4を参照し、シール部材40a、40bは、上述した挟持部21d、22dと略同一の輪郭形状を有するシート状の部材である。シール部材40a、40bは、例えば加熱されることによって互いに溶融すると共に、溶融後は一体部材(シール材40、図3参照)となって、端子同士の重ね合せ部5の気密封止を行うものである。一体となったシール材40はこのように端子同士の重ね合せ部5を気密封止するものであるため、図6に示すように、重ね合せ部5の周囲を包囲するような形状となっていることが好ましい。
【0028】
なお、シール部材40a、40bは、加熱によって一体化するものの他にも、例えば、互いに押し付けられることによって一体化するようなものであってもよいし、押し付けられないとしても、接触することによって一体化するようなものであってもよい。このような材料としては、例えば樹脂材料からなる、接着剤またはコーキング用材料であってもよく、溶着後に重ね合せ部5を良好に嫌気できるものであることが好ましい。
【0029】
樹脂材料を利用する場合、シール部材40a、40bを利用するのではなく、上記挟持部21d、22dが協働して形成する1つの空間27(図6参照)内に、流動性を有する樹脂材料を流し込み、それを固化させて最終的なシール材40を得るようにすることもできる。この場合、シール材40の輪郭形状は空間27の形状の依存することとなる。このことからすれば、各挟持部21d、22dの幅寸法L22dは、図6に示すように重ね合せ部5の幅寸法L5より大きいことが好ましい。
【0030】
また、重ね合せ部5における電蝕の問題が、一般に、端子3、4の密着面に水などが侵入することに起因して生じることを考慮すれば、図6(b)に示すように、重ね合せ部5の側端5aおよび下端5bがシール材40によって気密封止されるようになっていることが好ましい。さらには、図3において、端子3、4の上面と押付け部材30の内側面との間にもシール材を配することが好ましい。つまり、電蝕防止のための気密封止としては、端子同士の密着面を気密封止することが重要であり、その他の部位では、シール材40の厚さが薄くなっていてもよいし、あるいは場合によってはシール材40が存在しないものであってもよい。
【0031】
図6(c)はそのような構成の一例を示しており、重ね合せ部5の中央部5cにおいて、シール材40の厚さが部分的に薄くなっている。このような構成によれば、重ね合せ部5の中央部5cにおいてシール材40の厚さが薄くなっているため、重ね合せ部5を両側から良好に押圧できる点で好ましい。すなわち、端子3、4同士がより確実に密着するものとなるため、接続不良等の問題がより発生しにくいものとなる。なお、上述のような、シール材40の形状変更は、挟持部21d、22dの形状を変更することで実施可能である。
【0032】
次に、押付け部材30について説明する。押付け部材30は、図5に示すように、略コ字状の断面形状を有しており、具体的には、上面30bとその上面に繋がる2つの側面30cとを有している。
【0033】
各側面30cの下端には、挟持部材21、22の係合溝21e、22eに係合するロール状の係合部30aが形成されている。押付け部材30は、挟持部材21、22の上面側から差し込まれるようして取り付けられるものであり、係合部30aがこのようにロール状となっていることは、押付け部材30の差込みを容易に行うことができる点、および、係合溝21e、22eからの抜けを防止できる点、さらには、差込みの際に端子3、4を傷つけにくい点で利点を有している。
【0034】
押付け部材30の材質は、一対の挟持部材21、22を固定することができ、かつ、端子3、5同士を密着させるための所定の付勢力を挟持部材21、22に付与できるものであれば、樹脂材料であってもよいし金属材料であってもよい。また、絶縁性を有するか否かについても特に限定されるものではない。
【0035】
例えば絶縁性樹脂材料の場合、押付け部材30はカバーとして機能し、外部に対する端子3、4の絶縁が実現される。もっとも、樹脂材料に限らず、金属材料からなる押付け部材30の表面に絶縁コーティングを施したものであってもこのような絶縁に関する同様の効果を得ることは可能である。
【0036】
次に、導電性材料の場合、端子3、4は、重ね合せ部5における電気的な接続に加えて、押付け部材30を介して互いに電気的に接続されることとなる。これにより、端子3、4同士の電気的な接続はより確実なものとなる。
【0037】
さらに、押付け部材30を例えば金属板で構成する場合、係合部30aはロール曲げ加工によって形成可能であり、中空の構造を有することとなる。このように係合部30aが中空構造となっている場合、この中空部を利用した、押付け部材30の取付け治具を利用することもできる。すなわち、取付け治具は、例えば、対向する2つの係合部30aの各中空部に棒状の挿入部を差し込んで、押付け部材30を押し広げることができるものである。このような取付け治具を用いれば、押付け部材30を摺動させながら差し込むのではなく、係合部30a同士を押し広げた状態で押し付け部材30を取付け位置まで移動させることができるため、押付け部材30を取り付ける際に端子3、4を損傷させてしまうような不具合がより生じにくくなる。
【0038】
なお、対向する係合部30aの間の距離L30a(図5参照)は、押し付け力を増すことで端子同士の密着をより確実なものとするため、係合溝21eと22eとの間の距離Le(図3参照)よりも若干短く形成されている。また、図5では、各側面30cの両端に1つずつ係合部30aが形成されている例が示されているが、本発明はこれに限られるものではない。
【0039】
押付け部材30の上面30bは、図5に示すように平面状に形成されていてもよいし、図3に示すように湾曲状に形成されていてもよい。特に、図3のように、上面30bが挟持部材21、22側に向かって凸となるように湾曲し、押付け部材30を取り付けた際に上面30bの内側面が端子3、4の双方に接触するような構成とされていてもよい。このような上面30bによれば、端子3、4を挟持部材21、22の上面に押し付けることで、端子3、4をより確実に固定することができる。
【0040】
次に、以上のように構成された本実施形態の接続装置50を用いて、一方のフィルム外装電池1の正極端子3と他方のフィルム外装電池1の負極端子4とを接続する方法の一例について説明する。
【0041】
まず、各挟持部材21、22の挟持部21d、22dに、シート状のシール部材40a、40bを配置する。次いで、各端子3、4を、それぞれの挟持部材21、22の外周面に沿わせて折り曲げる。次いで、折り曲げた各端子3、4の先端部同士が密着するように、一対の挟持部材21、22を対向配置する。この状態では、各端子3、4の先端部同士が密着して例えば図6に示すような重ね合せ部5となっており、また、重ね合せ部5の外側では、シート状のシール部材40a、40b同士が部分的に互いに密着した状態となっている。次いで、シール部材40a、40b同士を一体化させるための所定の処理を行う。この所定の処理とは、選択されたシール部材40a、40bの材質によって異なるものであり、例えば前述したような加熱や加圧(押圧)といった処理である。次いで、押付け部材30を取り付けることで、端子3、4同士の接続が完了する(図3参照)。
【0042】
図3に示すように、押付け部材30を取り付けられた状態では、挟持部材21、22が互いに押付けられる。押付け部材30による付勢力は、シール材40を介して端子同士の重ね合せ部5に対し略垂直に作用する。これにより、正極端子3と負極端子4とが密着し、この密着面において電気的な接続が行われるものとなる。また、シール材40は、端子同士の重ね合せ部5に密着して包囲する形状となっており、これにより、重ね合せ部5の気密封止が実現される。
【0043】
以上説明したような本実施形態の接続装置50では、一対の挟持部材21、22と押付け部材30とを用いて端子3、4同士の電気的な接続を行うものであるため、従来のビス止め等による接続、あるいは溶接による接続と比較して、比較的簡単な工程で接続作業を行うことできる。また、重ね合せ部5においては、端子3、4同士は互いに押し付けられた状態で密着しているため、電気的な接続はより確実なものとなっている。さらには、重ね合せ部5にはシール材40が設けられているため、重ね合せ部5(特に端子3、4の密着面)に水などの液体が浸入しにくいものとなっている。
【0044】
以上、第1の実施形態として図3、図4に挟持部材21、22の一例を示したが、挟持部材はそれらの形状に限定されるものではなく、例えば図7に示すようなものであってもよい。ここで、図7は、挟持部材の変形例を示す断面図である。
【0045】
上述した挟持部材21、22は、その対向面21a、22aに、シート状のシール部材40a、40bを配置するための挟持部21d、22dが形成されたものであったが、図7(a)に示すように、挟持部材23は挟持部が形成されていないものであってもよく、この場合、端子同士の重ね合せ部5は対向する平面状の対向面23a同士によって挟まれることとなる。このような構成であったとしても、例えばシート状のシール部材40a、40bを用いて重ね合せ部5を包囲することによって重ね合せ部5の気密封止を行うことは可能である。
【0046】
図7(b)に示す挟持部材24は、対向面24aの上部側、すなわち、端子3、4が巻き込まれる側に傾斜部24fが形成されている。このような挟持部材24を用いて端子3、4を挟持した状態を図9に示す。図示するように、端子3、4は、傾斜部24fに沿って挟み込まれるため、前述したR部21c、22cと同様の作用効果を得ることができる。また、一対の挟持部材24が対向配置された状態では、各部材の傾斜部24fが協働して1つの凹部を形成することとなる。この場合、押付け部材31に凸部31aを設けることが好ましい。凸部31aは、2つの傾斜部24fによって形成された凹部に対して相補的に対応するような形状となっており、これにより、押付け部材31を取り付けると、凸部31aは、傾斜部24fにおける端子3、4に接触すると共にそれらを傾斜部24fに対して押付けるようになっている。なお、図9の構成では、押付け部材31の凸部31aと端子3、4との間に、空隙28が形成されているが、必要に応じて、シール材をこの空隙28内に充填してもよい。これにより重ね合せ部5の気密封止がより確実なものとなる。
【0047】
図7(c)に示す挟持部材25は、対向面25aの一部に、相補的に対応する形状であって互いにかみ合うように形成された曲面状のかみ合い部25gが形成されている。このようなかみ合い部25gが形成されていることによって、一対の挟持部材25を対向配置させたときの両部材の位置決め精度が向上する。また、このかみ合い部25gで端子3、4の重ね合せ部5を挟持することによって、重ね合せ部5は抜けにくいものとなり、また、端子3、4同士の接触面積を広く確保できるものとなる。なお、かみ合い部25gで重ね合せ部5を挟持する場合であっても、電蝕防止のためには重ね合せ部5をシール材で気密封止することが重要である。前述のようなシート状のシール部材40a、40bを利用するのであれば、シール部材40a、40bをかみ合い部25gの表面に沿って貼り付けることができるようになっていることが好ましい。このことから、かみ合い部25gの表面形状は比較的なだらかに形成されていることが好ましい。すなわち、かみ合い部25gの形状は、シール材による重ね合せ部5の気密封止に悪影響を及ぼさないものであることが望ましい。また、図示は省略するが、かみ合い部は図7(c)のような曲面状のものに限らず、他にも、例えば断面台形状の凹凸部が互いにかみ合うようなものであってもよい。
【0048】
さらに、上記の他にも、挟持部材21、22は図8に示すようなものであってもよい。図8に示す挟持部材21、22は、それぞれの対向面(対向面22aのみを示す)に形成された挟持部(挟持部22d、図2参照)のところに押圧突部21b、22bを有している。一方の挟持部材22を例に挙げて説明すると、押圧突部22bは挟持部材22の長手方向に並べて複数設けられており、その輪郭形状は一例として円形となっている。また、押圧突部22bの前面は平面となっており、この面が、端子同士の重ね合せ部5に対する挟持面となる。すなわち、図8の挟持部材21、22で端子同士の重ね合せ部5を挟み込むと、押圧突部21b、22bの挟持面のそれぞれが重ね合せ部5に直接に接触して、同重ね合せ部5を両面から押圧することとなる。したがって、端子同士の密着がより確実なものとなる。なお、このような構成の場合、シート状のシール部材40cは押圧突起22bのところが予めくり抜かれたものであってもよい。シール部材40cは、少なくとも重ね合せ部5の周縁(図6の符号5a、符号5bに示す3辺)を気密封止するようになっていることが好ましく、したがって、押圧突起21b、22bは、その領域を除く、重ね合せ部5の略中央部に配置されていることが好ましい。
【0049】
押圧突部21b、22bは、端子同士の重ね合せ部5を直接押圧できるものであれば種々変更可能である。例えば、図8では押圧突部22bが一列に並んだものであるが、押圧突部を上下2列に並べて配置してもよい。また、それぞれの押圧突部がリブ状に形成されていてもよい。
【0050】
(第2の実施形態)
本発明の接続装置は、より実用的には、挟持部材がフィルム外装電池1を保持するケースに設けられているものであってもよい。
【0051】
図10に示すように、ケース60a、60bは、フィルム外装電池1を1つずつ保持するためのものであり、フィルム外装電池1の外周を囲む枠体65を有している。枠体65は例えば樹脂材料からなる成形品として構成されており、フィルム外装電池1の各端子3、4は枠体65を貫通して外側に向かって延びている。図示するケース60a、60bは同一のものであり、一方のケース60aを例に挙げて説明すると、枠体65の上部側の外周面には、第1の実施形態における挟持部材22に相当する挟持部材62が枠体65と一体的に形成されており、枠体65の下部側の外周面には、第1の実施形態における挟持部材21に相当する挟持部材61と同じく一体的に形成されている。
【0052】
また、上部側の挟持部材62は、枠体65の図示右側に設けられており、一方、下部側の挟持部材61は枠体65の図示左側に設けられている。言い換えれば、一方の挟持部材62と他方の挟持部材61とは、枠体65の厚さ方向において互いに反対側の位置に設けられている。このように、1つのケースにおいて挟持部材61、62が厚さ方向の反対側に設けられていることによって、図10に示すような状態で、2つのケース60a、60bを隣接させて並べるとケース60aの挟持部材62とケース60bの挟持部材61とが対向することとなる。したがって、この一対の挟持部材61、62を利用して、第1の実施形態同様に、端子3、4を挟持する1つの接続装置を構成することができ、2つのフィルム外装電池1を直列接続することができる。なお、同様にして、ケース60a、60bのそれぞれに隣接させて他のケース(不図示)を並べて他のフィルム外装電池1をさらに接続することが可能であり、これにより、幾つかのフィルム外装電池1が集合した組電池が構成される。
【0053】
このような本実施形態の構成によれば、挟持部材61、62を介して端子3、4を押圧密着させる押付け部材30が、ケース60a、60b同士を固定する手段としても機能するため、ケース同士の固定がより安定したものとなる。場合によっては、他の固定手段を用いなくてもケース同士の固定を行うことができるため、組電池の部品点数を少なくできる点で利点を有している。
【0054】
なお、上記のようなケース60a、60bを利用して、図11に示すように、フィルム外装電池1を並列接続することもできる。図11の構成のうち、中央の2つのケース60が本発明を適用したものとなっており、一方のケース60の挟持部材61と他方のケース60挟持部材61とが対向した状態となっている。各ケース60、66から引き出された、4枚の同じ極性の端子3は、一対の挟持部材61によって挟まれることによって、密着して積層した状態となっており、これにより電気的な接続が実現されている。なお図示しないが、この4枚の端子3の重ね合せ部はシール材によって気密封止されている。
【0055】
以上、第1および第2の実施形態について説明し、本発明の接続装置がフィルム外装電池1同士の端子の接続に有用であることを述べたが、フィルム外装電池1はより詳細には次のようなものであってもよい。すなわち、フィルム外装電池1の発電要素2は、不図示のセパレータを介して積層された正極側活電極と負極側活電極とからなる積層型であってもよいし、帯状の正極側活電極と負極側活電極とをセパレータを介して重ねこれを捲回した後、扁平状に圧縮することによって正極側活電極と負極側活電極とが交互に積層された構造の捲回型であってもよい。また、発電要素2としては、一般的なリチウムイオン二次電池用として構成されたものであってもよく、具他的には、リチウム・マンガン複合酸化物、コバルト酸リチウム等の正極活物質をアルミニウム箔などの両面に塗布した正極板と、リチウムをドープ・脱ドープ可能な炭素材料を銅箔などの両面に塗布した負極板とを、セパレータを介して対向させ、それにリチウム塩を含む電解液を含浸させたものであってもよい。発電要素はこの他にも、ニッケル水素電池、ニッケルカドミウム電池、リチウムメタル一次電池あるいは二次電池、リチウムポリマー電池等、他の種類の化学電池の発電要素であってもよい。本発明は、さらに、電気二重層キャパシタなどのキャパシタあるいは電解コンデンサなどに例示されるキャパシタ要素のような、電気エネルギを内部に蓄積した電気デバイス要素から引き出された端子同士の接続に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】フィルム外装電池の構成を示す外観斜視図である。
【図2】第1の実施形態の接続装置を示す図であり、図1に示すフィルム外装電池1が直列接続された状態を示している。
【図3】図2の接続装置を拡大して示す断面図であり、端子同士が接続装置によって接続された完成状態を示ししている。
【図4】挟持部材およびシール材の構成を示す分解斜視図である。
【図5】図2の押付け部材を単体で示す斜視図である。
【図6】端子同士の重ね合せ部とそれを気密封止するシール材とを示す図である。
【図7】挟持部材の変形例を示す断面図である。
【図8】挟持部材のさらに他の変形例を示す斜視図である。
【図9】図7(b)の挟持部材を用いて端子同士を接続した状態を示す図である。
【図10】第2の実施形態の接続装置を示す図であり、端子同士が直列接続された状態を示している。
【図11】第2の実施形態の接続装置を用いて端子同士を並列接続した状態を示す図である。
【図12】従来の組電池における端子同士の接続を示す図である。
【符号の説明】
【0057】
1 フィルム外装電池
2 発電要素
3 正極端子
4 負極端子
5 重ね合せ部
5a 側端
5b 下端
5c 中央部
7 フィルム外包体
7a 熱融着部
21、22、23、24、25、61、62 挟持部材
21a、22a、23a、24a、25a 対向面
21c、22c R状部
21d、22d 挟持部
21e、22e 係合溝
24f 傾斜部
25g かみ合い部
27 空間
28 空隙
30、31 押付け部材
30a 係合部
30b 上面
30c 側面
31a 凸部
40 シール材
40a、40b シール部材
50 接続装置
60、60a、60b、66 ケース
65 枠体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状の電極端子同士を部分的に重ねて密着させることによって前記電極端子同士の電気的な接続を行う接続装置であって、
前記電極端子同士の重ね合せ部を気密封止するシール材と、
前記重ね合せ部を、前記シール材を介して挟み込む一対の挟持部材と、
前記一対の挟持部材を互いに位置決め固定すると共に、前記重ね合せ部において前記電極端子同士が互いに押し付けられるように前記一対の挟持部材を付勢する押付け部材とを有する接続装置。
【請求項2】
前記一対の挟持部材の対向面のそれぞれには、前記重ね合せ部を挟持するための平面状の挟持面が形成されている、請求項1に記載の接続装置。
【請求項3】
前記一対の挟持部材の対向面のそれぞれには、相補的にかみ合う形状とされた、曲面状または凹凸状の挟持面が形成されている、請求項1に記載の接続装置。
【請求項4】
前記一対の挟持部材の対向面のそれぞれには、前記重ね合せ部を、部分的に直接加圧する押圧突部が形成されている、請求項1に記載の接続装置。
【請求項5】
前記押圧突起は、前記重ね合せ部のうち該重ね合せ部の周縁を除く領域を直接加圧する、請求項4に記載の接続装置。
【請求項6】
前記シート状の電極端子は、前記挟持部材の外周面に沿って折り曲げられ、その先端側が前記挟持面によって挟持される、請求項2から5のいずれか1項に記載の接続装置。
【請求項7】
前記外周面の少なくとも一部には、前記シート状の電極端子をなだらかに折り曲げるための湾曲部および傾斜部の少なくとも一方が形成されている、請求項6に記載の接続装置。
【請求項8】
前記押付け部材は略コ字状の断面形状を有し、前記一対の挟持部材を一括して挟み込む付勢部材である、請求項1から7のいずれか1項に記載の接続装置。
【請求項9】
前記押付け部材は導電性材料であって、接続される前記電極端子の双方に接触した状態で前記一対の挟持部材を挟み込む、請求項8に記載の接続装置。
【請求項10】
前記シール材は、前記重ね合せ部の少なくとも周縁を気密封止するものである、請求項1に記載の接続装置。
【請求項11】
前記シール材は、前記重ね合せ部を略全体をわたって挟み込む2枚のシート状のシール部材からなるものである、請求項10に記載の接続装置。
【請求項12】
前記シール材は、流動性を有する樹脂材料が固化したものであって、
前記一対の挟持部材の対向面のそれぞれには、前記流動性の樹脂材料が充填される空間を協働して形成する凹状構造部が形成されている、請求項10に記載の接続装置。
【請求項13】
シート状の電極端子が延出した電気デバイスが複数集合した電気デバイス集合体であって、
前記電気デバイスの前記シート状の電極端子と、他の前記電気デバイスの前記シート状の電極端子とが、請求項1から12のいずれか1項に記載の接続装置よって接続されている電気デバイス集合体。
【請求項14】
前記電気デバイスは収納ケースに収納されたものであって、前記接続装置の前記挟持部材は、前記収納ケースの外周面に一体的に形成されている、請求項13に記載の電気デバイス集合体。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2006−127964(P2006−127964A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−316038(P2004−316038)
【出願日】平成16年10月29日(2004.10.29)
【出願人】(302036862)NECラミリオンエナジー株式会社 (37)
【Fターム(参考)】