説明

接触子の製造方法

【課題】100μm以上の高さを有する背の高い接触子を容易に製造することができる接触子の製造方法を提供すること。
【解決手段】本発明の接触子1Aは工程A〜Eを経て製造される。工程Aにおいて絶縁基板11の表面上に背の高い突起22Aを形成し、工程Bにおいて突起22Aをフィルム25を用いて覆い、突起22Aを支柱とする背の高いテント26Aを形成する。そして工程Cにおいて円錐らせん状の金属ばね膜2を形成し、工程DおよびEにおいてフィルム25および突起22Aを除去する。これにより、背の高い接触子1Aを形成することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接触子の製造方法に係り、特に、球状やランド状に形成されたバンプ(突起電極)を有する半導体デバイスと電気的に接続を行うために好適に利用できる接触子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、IC(Integrated Circuit:集積回路)やLSI(Large Scale Integration:素子の集積度が1000個〜10000個のIC)などの半導体デバイスの製造工程においては、製造された半導体デバイスをプローブカードと称される検査用配線板に接続させることによってその半導体デバイスに対する電気信号の入出力検査を行ない、半導体デバイスの不良品をパッケージに組み込んでしまうという無駄を低減させている。
【0003】
ここで、BGA(Ball Grid Array:ボール状格子電極)方式の半導体デバイスやLGA(Land Grid Array:ランド状格子電極)方式の半導体デバイスを検査するプローブカードにおいては、電気信号を通電させる検査用配線がその絶縁基板に形成されているとともに、半導体デバイスに数十μmの狭ピッチで多数形成された外径数十μmの球状バンプ(突起電極)もしくは数十μm幅のランド状バンプと接触させるため、数十μmの狭ピッチで形成された検査用配線の接続端子に中央を頂部とする外径数十μmの円錐らせん状の接触子が接続されている。
【0004】
従来の接触子の製造方法は、主として、接触子を形成する際の型となる円錐状の凸型条部を形成する工程と、その凸型条部の表面上にNi−P合金などの金属ばね膜を形成し、その金属ばね膜を円錐らせん状にパターンニングする工程とを備えている(特許文献1を参照)。従来の凸型条部は種々の方法により製造されるが、製造する接触子の外径が数μm〜数百μmの場合、その凸型条部は、有機系レジスト液を用いてレジスト膜を形成し、そのレジスト膜に対して円錐状のパターンニングを施すことによって形成されていた。
【0005】
【特許文献1】特開2005−50598号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、有機系レジスト液を用いて形成されたレジスト膜の最大膜厚は数十μm程度であるため、有機系レジスト液を用いて円錐状に形成された従来の凸型条部(以下、「レジスト錐」という。)をレジスト膜の膜厚(数十μm)以上の高さに形成することができない。そのため、従来の接触子の製造方法において接触子を数十μm以上の高さに形成することができず、接触子のばね力を大きくすることができないという問題があった。
【0007】
また、膜厚100μm程度のレジスト膜を形成することができる粘度の高いMEMS用レジスト液を用いてレジスト膜を形成し、レジスト錐を形成したとしても、MEMS用レジスト液の粘度が高いことから、レジスト膜の膜厚を均一に形成することが困難であるため、レジスト錐の形成効率が悪いという問題があった。
【0008】
さらに、半導体デバイスに対する電気信号の入出力検査は、半導体デバイスの通常使用温度よりも高い温度(120℃程度)およびその通常使用電圧よりも高い電圧を供給するバーンイン試験である。そのため、仮に、従来の接触子を高く形成することができたとしても、バーンイン試験を繰り返すことにより、永久変形の原因となるすべり変形が接触子に生じやすくなるため、接触子の形状がバンプに対して適切な圧力を加えることができない方向にへたってしまうという問題が生じる。
【0009】
ここで、接触子の材料に形状記憶合金を用いれば良好な形状回復特性および耐熱性を示すのではないかということが考えられる。しかしながら、形状記憶合金をめっきにより形成することはできない。
【0010】
また、形状記憶合金をスパッタすることにより形状記憶合金膜を形成することはできるが、スパッタ後にエッチングで所望の形状を得ようとすれば、形状記憶合金のエッチング液に対して接触子の材料のエッチング選択性が低いため、形状記憶合金のエッチング時に下地(従来の接触子)もエッチング除去されてしまうという欠点があった。
【0011】
さらに、レジストによるリフトオフを行なうとしても、形状記憶合金のスパッタおよびその熱処理は200℃〜500℃程度の高温環境下において行なう必要があるので、有機系レジスト材を用いてパターンニングを施したとしても、その有機系レジスト材がその高温環境下に耐えられず、所望の形状の接触子を得ることができないという問題があった。
【0012】
そこで、本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、100μm以上の高さを有する背の高い接触子を容易に製造することができる接触子の製造方法を提供することをその目的としている。
【0013】
また、本発明は、バーンイン試験を繰り返してもへたらない接触子を製造することができる接触子の製造方法を提供することを他の目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前述した1の目的を達成するため、本発明の接触子の製造方法は、その第1の態様として、絶縁基板の表面上において突起を形成する工程Aと、フィルムを用いて突起を覆うことにより絶縁基板の表面上に突起を支柱とするテントを形成する工程Bと、テントの表面上にテントの頂部を中心とする円錐らせん状もしくは多角錐らせん状の金属ばね膜を形成する工程Cと、フィルムを除去する工程Dと、突起を除去する工程Eと備えていることを特徴としている。
【0015】
本発明の第1の態様の接触子の製造方法によれば、レジスト膜の膜厚よりも高い突起を形成することは容易であることから、その突起をフィルムで覆う(ラッピングする)ことにより、レジスト液を膜状に硬化させてからエッチングして形成されるレジスト錐よりも高いテント(レジスト体)を形成することができる。
【0016】
本発明の第2の態様の接触子の製造方法は、第1の態様の接触子の製造方法において、工程Aは、絶縁基板の表面上に円形状もしくは多角形状の第1シード膜を形成する工程A1と、第1シード膜の表面を電気めっきすることにより突起を形成する工程A2とを有していることを特徴としている。
【0017】
本発明の第2の態様の接触子の製造方法によれば、めっき時間の増加により突起の高さが高くなるので、テントの高さを容易に高くすることができる。また、めっき時間を変化させることにより突起の高さが変化するので、テントの高さを容易に調整することができる。
【0018】
本発明の第3の態様の接触子の製造方法は、第2の態様の接触子の製造方法において、突起は、Cuめっきにより形成されていることを特徴としている。
【0019】
本発明の第3の態様の接触子の製造方法によれば、Cuエッチング液を用いることにより、金属ばね膜や他の部材に悪影響を及ぼさずに突起を取り除くことができる。
【0020】
本発明の第4の態様の接触子の製造方法は、第1の態様の接触子の製造方法において、突起は、ポッティングした樹脂を硬化させることにより形成されていることを特徴としている。
【0021】
本発明の第4の態様の接触子の製造方法によれば、高い粘度の樹脂を用いて突起を形成する工程は、同程度の粘度を有するレジスト液を膜状に形成する従来の工程よりも作業性に優れているので、背の高いレジスト体(テント)を容易に形成することができる。また、Cuめっきによる突起の形成よりも作業工程が簡易であるため、容易に突起を形成することができる。
【0022】
本発明の第5の態様の接触子の製造方法は、第1から第4のいずれか1の態様の接触子の製造方法において、工程Bは、突起が形成された絶縁基板の表面をフィルムにより覆う工程B1と、減圧下において絶縁基板を覆っているフィルムに熱および圧力を加えることにより絶縁基板にフィルムを密着させる工程B2と、フィルムに対してフィルムにおける突起の周辺部を除去するパターンニングを行うことにより絶縁基板の表面上に突起を支柱とするテントを形成する工程B3と、フィルムのパターンニング前またはパターンニング後において絶縁基板の表面に密着させたフィルムの外気を大気圧にする工程B4とを有していることを特徴としている。
【0023】
本発明の第5の態様の接触子の製造方法によれば、減圧下においてフィルムを絶縁基板に密着させていることから、テントの内圧が外気よりも低くなっており、外気がテントに対してテントをしぼませる方向に圧力を加えるので、金属ばね膜を形成する際にテントがたるむことを防止することができる。
【0024】
本発明の第6の態様の接触子の製造方法は、第1から第5のいずれか1の態様の接触子の製造方法において、工程Cは、テントの表面上に第2シード膜を形成する工程C1と、第2シード膜の表面上にレジスト膜を形成した後、レジスト膜にテントの頂部を中心とする円錐らせん状もしくは多角錐らせん状の溝をパターンニングする工程C2と、円錐らせん状もしくは多角錐らせん状の溝から表面に露出している第2シード膜の表面を電気めっきすることにより第2シード膜の表面上に金属ばね膜を形成する工程C3と、レジスト膜を除去する工程C4と、レジスト膜の除去部分から表面に露出している第2シード膜を除去する工程C5とを有していることを特徴としている。
【0025】
本発明の第6の態様の接触子の製造方法によれば、円錐らせん状もしくは多角形らせん状の金属ばね膜が電気メッキにより形成されるので、その膜厚制御を容易に行うことができる。
【0026】
また、前述した他の目的を解決するため、本発明の接触子の製造方法は、その第7の態様として、絶縁基板の表面上および絶縁基板の表面に形成された接続端子の表面上に金属犠牲膜を形成した後、金属犠牲膜に円輪形状もしくは多角輪形状の溝をパターンニングすることにより、円輪形状もしくは多角輪形状の溝から接続端子を表面に露出させる工程Fと、円輪形状もしくは多角輪形状の溝の内側に形成された円形状もしくは多角形状の金属犠牲膜の表面上に突起を形成する工程Gと、フィルムを用いて突起を覆うことにより円形状もしくは多角形状の金属犠牲膜の表面上に突起を支柱とするテントを形成する工程Hと、テントの表面上において、テントの頂部を中心とし、かつ、円輪形状もしくは多角輪形状の溝を底面の周とする円錐らせん状もしくは多角錐らせん状の金属ばね膜を形成する工程Iと、フィルムを除去する工程Dと、突起を除去する工程Eと、突起の除去前または突起の除去後においてマルテンサイト変態温度が室温よりも高温であってマルテンサイト逆変態温度がバーンイン試験の試験温度よりも低温となっている形状記憶合金をスパッタすることにより金属ばね膜の表面上に形状記憶合金膜を形成する工程Jと、形状記憶合金膜に対して形状記憶処理のための熱処理を行なう工程Kと、金属犠牲膜を除去することにより金属犠牲膜の表面に形成された形状記憶合金膜をも併せて除去する工程Lとを備えていることを特徴としている。
【0027】
本発明の第7の態様の接触子の製造方法によれば、レジスト膜の膜厚よりも高い突起を形成することは容易であることから、その突起をフィルムで覆う(ラッピングする)ことにより、レジスト液を膜状に硬化させてからエッチングして形成されるレジスト錐よりも高いテント(レジスト体)を形成することができる。
【0028】
また、本発明の第7の態様の接触子の製造方法によれば、円錐らせん状または多角錐らせん状の金属ばね膜に積層された形状記憶合金膜が前述した変態温度において相変態することにより、その形状記憶合金膜が室温においてマルテンサイト相となり、またバーンイン試験温度下においてオーステナイト相となるので、室温において導入された接触子の変形を形状記憶合金の形状記憶効果により回復させることができるとともに、バーンイン試験温度環境下において導入された接触子の変形を形状記憶合金の超弾性により回復させることができる。
【0029】
本発明の第8の態様の接触子の製造方法は、第7の態様の接触子の製造方法において、形状記憶合金膜は、TiNi合金を用いて形成されていることを特徴としている。
【0030】
第8の態様の接触子の製造方法によれば、TiNi合金は他の形状記憶合金と比較して安定した形状記憶効果および超弾性を発揮することができる。
【0031】
本発明の第9の態様の接触子の製造方法は、第8の態様の接触子の製造方法において、TiNi合金におけるTiサイトの組成は50.0〜51.0mol%となっていることを特徴としている。
【0032】
第9の態様の接触子の製造方法によれば、Tiサイトの組成が50.0〜51.0mol%の場合、そのマルテンサイト変態温度を80℃程度にすることができるので、半導体デバイスの取付を行なう室温においては、形状記憶合金膜が良好な形状記憶効果を発揮することができる。また、そのマルテンサイト逆変態温度(オーステナイト変態温度)を100℃程度にすることができるので、バーンイン試験の試験環境下(120℃程度)においては、形状記憶合金膜が良好な超弾性を発揮することができる。さらに、形状記憶合金は組成に対して敏感であるが、Tiサイトの組成が50.0〜51.0mol%であればその変態温度は一定であるので、スパッタにより組成がずれたとしても同等の変態温度を有する形状記憶合金膜を形成することができる。
【0033】
本発明の第10の態様の接触子の製造方法は、第7の態様の接触子の製造方法において、工程Gは、円輪形状もしくは多角輪形状の溝および金属犠牲膜の表面上に第1レジスト膜を形成した後、円形状もしくは多角形状の金属犠牲膜の表面上に形成された第1レジスト膜に対して円形状もしくは多角形状の金属犠牲膜よりも小さな底面を有する孔をパターンニングにより形成する工程G1と、孔から表面に露出している金属犠牲膜の表面を電気めっきすることにより金属犠牲膜の表面上に突起を形成する工程G2と、突起の形成後に第1レジスト膜を除去する工程G3とを有していることを特徴としている。
【0034】
本発明の第10の態様の接触子の製造方法によれば、金属犠牲膜の表面上における突起の形状や形成位置を自在に選択することができる。また、めっき時間を変化させることにより突起の高さが変化するので、テントの高さを容易に調整することができる。
【0035】
本発明の第11の態様の接触子の製造方法は、第10の態様の接触子の製造方法において、突起は、Cuめっきにより形成されているとともに、形状記憶合金膜の形成後に除去されることを特徴としている。
【0036】
本発明の第11の態様の接触子の製造方法によれば、Cuエッチング液を用いることにより、金属ばね膜や他の部材に悪影響を及ぼさずに突起を取り除くことができる。また、Cuめっきにより形成された突起は耐熱性を有しており、形状記憶合金のスパッタおよびその熱処理後にその突起を除去することができるので、金属犠牲膜がCuにより形成されていれば、Cuエッチング液を用いることにより、その突起を金属犠牲膜とともに除去することができる。
【0037】
本発明の第12の態様の接触子の製造方法は、第7の態様の接触子の製造方法において、突起は、ポッティングした樹脂を硬化させることにより形成されているとともに、形状記憶合金膜の形成前に除去されることを特徴としている。
【0038】
本発明の第12の態様の接触子の製造方法によれば、高い粘度の樹脂を用いて突起を形成する工程は、同程度の粘度を有するレジスト液を膜状に形成する従来の工程よりも作業性に優れているので、背の高いレジスト体(テント)を容易に形成することができる。また、Cuめっきによる突起の形成よりも作業工程が簡易であるため、容易に突起を形成することができる。さらに、
本発明の第13の態様の接触子の製造方法は、第7から第12のいずれか1の態様の接触子の製造方法において、工程Hは、突起が形成された円形状もしくは多角形状の金属犠牲膜の表面をフィルムにより覆う工程H1と、減圧下において円形状もしくは多角形状の金属犠牲膜を覆っているフィルムに熱および圧力を加えることにより円形状もしくは多角形状の金属犠牲膜にフィルムを密着させる工程H2と、フィルムに対してフィルムにおける突起の周辺部を除去するパターンニングを行うことにより円形状もしくは多角形状の金属犠牲膜の表面上に突起を支柱とするテントを形成する工程H3と、フィルムのパターンニング前またはパターンニング後において円形状もしくは多角形状の金属犠牲膜の表面に密着させたフィルムの外気を大気圧にする工程H4とを有していることを特徴としている。
【0039】
本発明の第13の態様の接触子の製造方法によれば、減圧下においてフィルムを金属犠牲膜に密着させていることから、テントの内圧が外気よりも低くなっており、外気がテントに対してテントをしぼませる方向に圧力を加えるので、金属ばね膜を形成する際にテントがたるむことを防止することができる。
【0040】
本発明の第14の態様の接触子の製造方法は、第7から第13のいずれか1の態様の接触子の製造方法において、工程Iは、テントの表面上および接続端子の表面上にシード膜を形成する工程I1と、シード膜の表面上に第2レジスト膜を形成した後、第2レジスト膜に対してテントの頂部を中心とし、かつ、円輪形状もしくは多角輪形状の溝を底面の周とする円錐らせん状もしくは多角錐らせん状の溝をパターンニングする工程I2と、円錐らせん状もしくは多角錐らせん状の溝から表面に露出しているシード膜を電気めっきすることにより円錐らせん状もしくは多角錐らせん状の溝に金属ばね膜を形成する工程I3と、金属ばね膜の形成後に第2レジスト膜を除去する工程I4と、第2レジスト膜の除去部分から表面に露出しているシード膜を除去する工程I5とを有していることを特徴としている。
【0041】
本発明の第14の態様の接触子の製造方法によれば、円錐らせん状もしくは多角形らせん状の金属ばね膜が電気メッキにより形成されるので、その膜厚制御を容易に行うことができる。
【0042】
さらに、本発明の第15の態様の接触子の製造方法は、第6および第14のいずれか1の態様の接触子の製造方法において、レジスト膜および第2レジスト膜は、スプレーコーティングにより形成されていることを特徴としている。
【0043】
本発明の第15の態様の接触子の製造方法によれば、高い突起を形成することによって絶縁基板や金属犠牲膜と突起との高低差が大きくなったとしても、レジスト膜および第2レジスト膜の膜厚を均一にすることができる。
【0044】
本発明の第16の態様の接触子の製造方法は、第1から第15のいずれか1の態様の接触子の製造方法において、フィルムは、感光性樹脂フィルムであることを特徴としている。
【0045】
本発明の第16の態様の接触子の製造方法によれば、従来から知られた感光性樹脂フィルムによるプリント配線板のパターンニング方法を応用して、テント形成のための精密なパターンニングを容易に行なうことができる。
【0046】
本発明の第17の態様の接触子の製造方法は、第1から第16のいずれか1の態様の接触子の製造方法において、金属ばね膜は、Ni−P合金めっきにより形成されていることを特徴としている。
【0047】
本発明の第17の態様の接触子の製造方法によれば、金属ばね膜が大きな弾性力を発揮するので、接触子に接触するバンプに大きな圧力を加えることができる。また、第3または第11の態様の接触子の製造方法のように突起をCuめっきにより形成した場合、Cuエッチング液を用いることにより、金属ばね膜のエッチング・レートを突起のエッチング・レートよりも極めて小さくすることができるので、突起の除去の際に金属ばね膜がエッチングされて悪影響を及ぼすことを防止することができる。
【発明の効果】
【0048】
本発明の接触子の製造方法によれば、円錐らせん状もしくは多角錐らせん状の接触子を作るための型となるテント(略錐体状のレジスト体)を高く形成することができるので、バンプに適切な圧力を加えることができる背の高い接触子を容易に形成することができる。
【0049】
また、本発明の接触子の製造方法によれば、その背の高い接触子が金属ばね膜の表面上に形状記憶合金膜を積層させることにより形成されており、その形状記憶合金膜が形状記憶効果および超弾性を示すことによって接触子の変形を回復させるので、バーンイン試験を繰り返してもへたらない接触子を製造することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0050】
以下、図1および図12を用いて、本発明の接触子の製造方法について、その第1から第4の実施形態を説明する。なお、第1から第4の実施形態において共通する工程は同一符号を用いて説明する。
【0051】
はじめに、図1および図4を用いて、第1の実施形態の接触子1Aの製造方法を説明する。図1は第1の実施形態の接触子1Aを示す斜視図であり、図2は第1の実施形態の接触子1Aを示す縦断面図である。
【0052】
第1の実施形態の接触子1Aは、図1に示すように、中央を頂部とした円錐らせん状に形成されており、プローブカード(検査用配線板)10の絶縁基板11に形成された接続端子12に接続されている。また、第1の実施形態の接触子1Aは、金属ばね膜2の形成補助膜として、絶縁基板11と金属ばね膜2との間に第2シード膜4Bを積層させている。
【0053】
図3A〜図3Jは、第1の実施形態の接触子1Aの製造方法を縦断面図により示している。第1の実施形態の接触子1Aの製造方法は工程A〜工程Eまでの5つの工程を主な工程として備えている。
【0054】
工程Aにおいては、図3Aおよび図3Bに示すように、絶縁基板11の表面上に突起22Aを形成する。この突起22Aはどのような形状に形成されていても良く、その高さのみを制御して形成されていればよい。そのため、突起22Aは種々の方法により形成することができる。第1の実施形態の工程Aにおいては、工程A1および工程A2の2つの工程を経て突起22Aが形成される。
【0055】
工程A1においては、図3Aに示すように、絶縁基板11の表面上に外径100μm〜300μm程度の円形状の第1シード膜4Aを形成する。この第1シード膜4Aは、膜厚15nm程度のCr層をスパッタにより形成し、そのCr層の表面に膜厚100nm程度のCu層をスパッタにより積層させ、Cu層の表面上に円形状のレジストパターンニングを行なった後、Cu層およびCr層をイオンミリングすることにより、形成されている。パターンニングは、レジストコートの形成、露光および現像よりなる。
【0056】
工程A2においては、図3Bに示すように、第1シード膜4Aの表面を電気めっきすることにより突起22Aを形成する。第1の実施形態の突起22Aは、Cuめっきにより形成されており、外径100μm〜300μm程度、高さ100μm程度である。突起22Aの高さについては電気めっきを長時間行なうことにより500μm程度まで高くすることができる。
【0057】
工程Bにおいては、図3Cに示すように、フィルム25を用いて突起22Aを覆うことにより絶縁基板11の表面上に突起22Aを支柱とするテント26Aを形成する。第1の実施形態の工程Bについては、工程B1から工程B4の4つの工程からなる。
【0058】
工程B1においては、突起22Aが形成された絶縁基板11の表面をフィルム25により覆う。このフィルム25としては、膜厚25μm〜50μm程度の感光性樹脂フィルム(例えば、デュポン社製リストンFRA517シリーズ・ドライフィルム・フォトレジストなどのドライフィルム)が用いられている。
【0059】
工程B2においては、減圧下において絶縁基板11を覆っているフィルム25に熱および圧力を加えることにより絶縁基板11にフィルム25を密着させる。具体的には、ゴム製のダイヤフラムにより仕切られた二室真空チャンバの一室にフィルム25を重ね合わせた絶縁基板11を入れる。その後、絶縁基板11が入った真空チャンバの一室のみを真空ポンプにより減圧していくと、絶縁基板11とフィルム25との間の空気が抜けていくとともに、真空チャンバの他室の空気がダイヤフラムをその一室側に押しつけてフィルム25と絶縁基板11を密着させる。この密着状態においてフィルム25および絶縁基板11を加熱(100〜200℃)することにより、フィルム25が絶縁基板11に接着(ラミネート)される。
【0060】
工程B3においては、図4に示すように、フィルム25における突起22Aの周辺部(図4の斜線部)を露光した後、1wt%炭酸ナトリウム水溶液(NaCO)により現像することにより、フィルム25に対してその突起22Aの周辺部を除去するパターンニングを行う。これにより、図3Cに示すように、絶縁基板11の表面上に突起22Aを支柱とするテント26Aが形成される。このテント26Aの形状は、フィルム25の組成や厚み、減圧する圧力(真空度)、突起22Aの直径および高さ、加熱温度、加熱保持時間などに応じて変化する。例えば、真空度が悪い(圧力が高い)場合、なだらかな円錐形状(底面の直径に対して高さが低い円錐形状)のテント26Aが形成され、真空度が良い(圧力が低い)場合、急勾配の円錐形状(底面の直径に対して高さが高い円錐形状)のテント26Aが形成される。
【0061】
なお、第1の実施形態の工程Bにおいては、工程B4として、フィルム25のパターンニング前において絶縁基板11の表面に接着させたフィルム25の外気を大気圧にしている。この工程B4は、絶縁基板11に接着させた後であればいつ行なわれても良いので、他の実施形態においては、工程B4をフィルム25のパターンニング後に行なっても良い。
【0062】
工程Cにおいては、図3Hに示すように、テント26Aの表面上にテント26Aの頂部を中心とする円錐らせん状の金属ばね膜2を形成する。第1の実施形態の工程Cについては、図3D〜図3Hに示すように、工程C1から工程C5の5つの工程からなる。
【0063】
工程C1においては、図3Dに示すように、工程Bにおけるテント26Aの形成後、電気伝導度に優れた金属をスパッタすることにより、工程Bの後において露出している各表面、すなわちテント26Aの表面、絶縁基板11の表面および接続端子12の表面に第2シード膜4Bを形成する。第1の実施形態の第2シード膜4Bは、膜厚15nm程度のTi層もしくはCr層を第一層とし、その第一層の表面上に第二層となる膜厚0.1μm程度のCu層を積層させることにより形成されている。
【0064】
工程C2においては、図3Eに示すように、第2シード膜4Bの表面上にレジスト膜23を形成する。第1の実施形態のレジスト膜23は、ノボラック系レジスト材を用いてスプレーコーティングにより形成されている。レジスト膜23の形成後、そのレジスト膜23に対し、円錐らせん状の溝23aをパターンニングする。この円錐らせん状の溝23aは、テント26Aの頂部(突起22Aの頂部)を中心としており、その円錐らせん状の溝23aの底面の周から接続端子12の表面上に形成された第2シード膜4Bが表面に露出している。
【0065】
工程C3においては、図3Fに示すように、円錐らせん状の溝23aから表面に露出している第2シード膜4Bの表面を電気めっきする。これにより、第2シード膜4Bの表面上に金属ばね膜2が形成される。第1の実施形態の金属ばね膜2は、ばね性に優れたNi−X合金(X=P、W、Mn、Ti、Beのいずれか1元素)のうちの1種であるNi−P合金を電気めっきすることにより形成されており、その膜厚は10〜30μmとなっている。
【0066】
工程C4においては、図3Gに示すように、金属ばね膜2の形成後にレジスト膜23を除去する。第1の実施形態のレジスト除去剤としては、N−メチル−2−ピロリドン(分子式:CNO、商品名:NMP)が用いられる。
【0067】
工程C5においては、図3Hに示すように、レジスト膜23の除去後に表面に露出している第2シード膜4Bを除去する。第2シード膜4Bの除去はイオンミリングにより行なわれる。
【0068】
工程Dにおいては、図3Iに示すように、第2シード膜4Bの除去後にその第2シード膜4Bの除去部分からフィルム除去剤を供給し、フィルム25を除去する。第1の実施形態のフィルム除去剤としては、2.5wt%水酸化ナトリウム水溶液(NaOH)が用いられている。
【0069】
そして、最後の工程となる工程Eにおいては、図3Jに示すように、フィルム25の除去後にエッチング液を供給し、突起22Aおよび第1シード膜4Aを除去する。第1の実施形態のエッチング液としては、突起22Aおよび第1シード膜4AのCu層(上層)に対して硫酸鉄(III)(別名:硫酸第二鉄、組成式:Fe(SO)水溶液に硫酸を加えて得た水溶液が用いられており、第1シード膜4AのCr層(下層)に対してフェリシアン化カリウム(分子式:KFe(CN))水溶液が用いられている。
【0070】
次に、図3を用いて、第1の実施形態の接触子1Aの製造方法について、その作用を説明する。
【0071】
この接触子1Aは、工程Aから工程Eを経て製造されている。ここで、工程Aによれば、テント26Aの支柱となる突起22Aが形成されている。この突起22Aは、その高さのみを制御して形成されていればよく、レジスト膜のように均一の膜厚に形成する困難さがないので、その突起22Aの高さを高くしやすい。また、工程Bによれば、フィルム25が突起22Aを覆っているので、円錐らせん状の接触子1Aの形成に用いられる円錐型、すなわち円錐状のテント26Aを形成することができる。これにより、従来の接触子の製造方法に用いられるレジスト錐よりも高いテント(レジスト体)26Aを形成することができる。
【0072】
ここで、第1の実施形態の工程Aにおいては、図3Aおよび図3Bに示すように、工程A1(図3A)および工程A2(図3B)を経て突起22Aが形成されている。そのため、第1シード膜4Aに電気めっきする時間(めっき時間)の増加により突起22Aの高さを容易に高くすることができるので、その結果、その突起22Aを支柱とするテント26Aの高さを容易に高くすることができる。さらに、めっき時間を変化させることにより1μm程度の単位で突起22Aの高さを調整することができるので、テント26Aの高さを容易に調整することもできる。
【0073】
この突起22Aは、Cuめっきにより形成されている。そのため、Cu用エッチング液を用いることにより、突起22Aに対するエッチング・レートを他の部材に対するエッチング・レートよりも大きくすることができるので、絶縁基板11やNi−P合金を用いて形成された第1の実施形態の金属ばね膜2に悪影響を及ぼさずに突起22Aを取り除くことができる。
【0074】
また、第1の実施形態の工程Bにおいては、図3Cに示すように、前述した工程B1から工程B4を経てテント26Aが形成されている。テント26Aの覆いとなるフィルム25は減圧下において絶縁基板11に接着されていることから、テント26Aの内圧が外圧(大気圧)よりも低くなっている。そのため、テント26Aの外気がテント26Aに対してテント26Aをしぼませる方向に圧力を加えるので、金属ばね膜2を形成する際にテント26Aがたるんでしまうことを防止することができる。
【0075】
さらに、このフィルム25は、感光性樹脂フィルムであることから、公知の感光性樹脂フィルムによるプリント配線板のパターンニング方法を応用して、テント26Aの形成のための精密なパターンニングを容易に行なうことができる。
【0076】
そして、第1の実施形態の工程Cにおいては、図3Fに示すように、電気めっきにより金属ばね膜2が形成されている。これにより、金属ばね膜2の膜厚制御を容易に行うことができるので、金属ばね膜2の弾性力を制御して接触子1Aを形成することができる。
【0077】
第1の実施形態の金属ばね膜2は、Ni−P合金めっきにより形成されているので、金属ばね膜2が大きな弾性力を発揮しやすい。そのため、この金属ばね膜2は、接触子1Aに接触するバンプに大きな圧力を加えることができる。さらに、第1の実施形態においては、突起22AがCuめっきにより形成されているので、金属ばね膜2に対するエッチング・レートを突起22Aに対するエッチング・レートよりも極めて小さくすることができる。
【0078】
また、第1の実施形態の工程C2においては、レジスト膜23がスプレーコーティングにより形成されている。レジスト膜23の形成面となる絶縁基板11に突起22Aが形成されている場合、絶縁基板11と突起22Aとの高低差が大きいので、レジスト膜23の膜厚をスピンコーティングよって均一に形成することができず、テント26Aの表面上にレジスト膜23を形成することができない。そのため、レジスト膜23をスプレーコーティングによって形成することにより、絶縁基板11と突起22Aとの高低差が大きくなったとしても、レジスト膜23の膜厚を均一にすることができる。
【0079】
すなわち、第1の実施形態の接触子1Aによれば、円錐らせん状の接触子1Aを作るための型となるテント(略錐体状のレジスト体)26Aを高く形成することができるので、バンプに適切な圧力を加えることができる背の高い接触子1Aを形成することができる。
【0080】
次に、図5を用いて、第2の実施形態の接触子1Bの製造方法を説明する。第2の実施形態の接触子1Bの製造方法は、図5A〜図5Eに示すように、工程A〜工程Eまでの5つの工程を主な工程として備えている。
【0081】
工程Aにおいては、図5Aに示すように、絶縁基板11の表面上に突起22Bを形成する。この突起22Bはどのような形状に形成されていても良く、その高さのみを制御して形成されていればよい。そのため、突起22Bは種々の方法により形成することができる。第2の実施形態の工程Aにおいて、この突起22Bは、粘度の高い樹脂をポッティングした後、そのポッティングした樹脂を硬化させることにより形成されている。また、この突起22Bの外径は100μm〜300μm程度、その高さは100μm程度となっている。ポッティングする樹脂としては、ノボラック系レジスト材であって粘度が高いものが用いられている。
【0082】
また、第2の実施形態において、テント26Bを形成する工程B(図5B)、金属ばね膜2を形成する工程C(図5C)およびテント26Bのフィルム25を除去する工程D(図5D)は、前述した第1の実施形態の工程B(図3B)、工程C(図3C〜図3H)および工程D(図3I)と同様である。
【0083】
そして、工程Eにおいては、図5Eに示すように、フィルム25の除去後に絶縁基板11から突起22Bを除去する。第2の実施形態の突起22Bの除去剤としては、N−メチル−2−ピロリドンが用いられる。
【0084】
次に、図5を用いて、第2の実施形態の接触子1Bの製造方法について、その作用を説明する。
【0085】
第2の実施形態の突起22Bは、工程Aにおいて、ポッティングした樹脂を硬化させることにより形成されている。この突起22Bについては、その高さのみを制御して形成されていればよく、レジスト膜のように均一の膜厚に形成する困難さがないので、粘度の高いレジスト液を絶縁基板11の表面上に均一の厚さで膜状に形成するよりも簡易に形成することができる。つまり、第2の実施形態の工程Aは、従来の工程のような粘度の高いレジスト液を膜状に形成する工程よりも作業性に優れており、背の高いテント26Bを容易に形成することができる。また、第1の実施形態の工程AのようなCuめっきによる突起22Bの形成工程よりも作業工程が簡易であり、その突起22Bの形成に時間を要しないので、突起22Bを容易に形成することができる。
【0086】
すなわち、第2の実施形態の接触子1Bによれば、円錐らせん状の接触子1Bを作るための型となるテント(略錐体状のレジスト体)26Bを簡単に高く形成することができるので、バンプに適切な圧力を加えることができる背の高い接触子1Bを容易に形成することができる。
【0087】
次に、図6および図7を用いて、第3の実施形態の接触子1Cの製造方法を説明する。ここで、図6は第3の実施形態の接触子1Cを示している。また、図7は、第3の実施形態の接触子1Cの製造方法について、図7Aから図7Lの順に縦断面図を用いて示している。
【0088】
第3の実施形態の接触子1Cは、図6に示すように、中央を頂部とした円錐らせん状に形成されており、プローブカード10の絶縁基板11に形成された接続端子12上に接続されている(図1参照)。この接触子1Cは、金属ばね膜2および形状記憶合金膜3を積層させることにより形成されている。また、第3の実施形態の接触子1Cは、金属ばね膜2の形成補助膜として、絶縁基板11もしくは接続端子12と金属ばね膜2との間にシード膜4を積層させている。
【0089】
この接触子1Cの製造方法は、工程F、工程G、工程H、工程I、工程D、工程J、工程K、工程Eおよび工程Lの順に、その9つの工程を主な工程として備えている。
【0090】
工程Fにおいては、図7Aに示すように、絶縁基板11の表面上および絶縁基板11の表面に形成された接続端子12の表面上に金属犠牲膜21を形成する。第3の実施形態の金属犠牲膜21は、厚さ15nmのCr層をスパッタにより形成し、そのCr層の表面に厚さ1μmのCu層をスパッタにより積層させることにより形成されている。そして、金属犠牲膜21に円輪形状の溝21aをパターンニングする。このパターンニングにより、円輪形状の溝21aから接続端子12を表面に露出させている。
【0091】
工程Gにおいては、図7Cに示すように、円輪形状の溝21aの内側に形成された円形状の金属犠牲膜21Aの表面上に突起22Cを形成する。第3の実施形態の工程Gは、工程G1〜工程G3よりなる。
【0092】
工程G1においては、円輪形状の溝21aおよび金属犠牲膜21の表面上に第1レジスト膜23Aを形成する。この第1レジスト膜23Aとしては、ノボラック系レジスト材が用いられており、その膜厚は90μm程度である。この第1レジスト膜23Aの形成後、円形状の金属犠牲膜21Aの表面上に形成された第1レジスト膜23Aに対して、その円形状の金属犠牲膜21Aよりも小さな底面を有する円柱孔23bをパターンニングする。このパターンニングの現像液としては、TMAH(水酸化テトラメチルアンモニウム)水溶液が用いられている。
【0093】
工程G2においては、図7Bに示すように、円柱孔23bから表面に露出している金属犠牲膜21Aの表面を電気めっきすることにより、金属犠牲膜21Aの表面上に突起22Cを形成する。第3の実施形態の突起22Cは、Cuめっきにより形成されており、その外径は100μm程度、その高さは100μmとなっている。
【0094】
工程G3においては、図7Cに示すように、突起22Cの形成後に第1レジスト膜23Aを除去する。第3の実施形態のレジスト除去剤としては、N−メチル−2−ピロリドンが用いられる。
【0095】
工程Hにおいては、図7Dに示すように、フィルム25を用いて突起22Cを覆うことにより、円形状の金属犠牲膜21Aの表面上に突起22Cを支柱とするテント26Cを形成する。第3の実施形態の工程Hについては、工程H1から工程H3によりなる。
【0096】
工程H1においては、フィルム25を用いて、突起22Cが形成された円形状の金属犠牲膜21Aの表面を覆う。第3の実施形態のフィルム25としては、第1の実施形態のフィルム25と同様の感光性樹脂フィルムが用いられている(工程B1参照)。
【0097】
工程H2においては、減圧下において、円形状の金属犠牲膜21Aを覆っているフィルム25に熱および圧力を加えることにより、円形状の金属犠牲膜21Aにフィルム25を接着させる。第3の実施形態におけるフィルム25と絶縁基板11との接着方法(ラッピング方法)は、第1の実施形態の接着方法と同様である(工程B2参照)。
【0098】
工程H3においては、フィルム25における突起22Cの周辺部(図4参照)を露光した後、1wt%炭酸ナトリウム水溶液により現像することにより、フィルム25に対し、その突起22Cの周辺部を除去するパターンニングを行う。これにより、図7Dに示すように、絶縁基板11の表面上に突起22Cを支柱とするテント26Cが形成される。このテント26Cの形状は、第1の実施形態と同様、フィルム25の組成や厚み、減圧する圧力(真空度)、突起22Cの直径および高さ、加熱温度、加熱保持時間などに応じて変化する。
【0099】
なお、第1の実施形態の工程Bおよび工程B4と同様、第3の実施形態の工程Hにおいては、工程H4として、フィルム25のパターンニング前において絶縁基板11の表面に接着させたフィルム25の外気を大気圧にしている。この工程H4は、絶縁基板11に接着させた後であればいつ行なわれても良いので、他の実施形態においては、工程H4をフィルム25のパターンニング後に行なっても良い。
【0100】
工程Iにおいては、図7Iに示すように、テント26Cの表面上において、テント26Cの頂部を中心とし、かつ、円輪形状の溝21aを底面の周とする円錐らせん状の金属ばね膜2を形成する。第3の実施形態の工程Iについては、図7E〜図7Iに示すように、工程I1から工程I5の5つの工程からなる。
【0101】
工程I1においては、図7Eに示すように、工程Hにおけるテント26Cの形成後、電気伝導度に優れた金属をスパッタすることにより、工程Hの後において露出している各表面、すなわちテント26Cの表面、絶縁基板11の表面および接続端子12の表面にシード膜4を形成する。第3の実施形態のシード膜4は、第1の実施形態の第2シード膜4Bと同様、膜厚15nm程度のTi層もしくはCr層を第一層とし、その第一層の表面上に第二層となる膜厚0.1μm程度のCu層を積層させることにより形成されている。
【0102】
工程I2においては、図7Fに示すように、シード膜4の表面上に第2レジスト膜23Bを形成する。第3の実施形態の第2レジスト膜23Bは、ノボラック系レジスト材をスプレーコーティングすることにより形成されている。そして、その第2レジスト膜23Bに対して円錐らせん状の溝23aをパターンニングする。この円錐らせん状の溝23aは、テント26Cの頂部(突起22Cの頂部)を中心とし、かつ、円輪形状の溝21aを底面の周としており、その底面の周(円輪形状の溝21a)から接続端子12の表面上に形成されたシード膜4が表面に露出している。
【0103】
工程I3においては、図7Gに示すように、円錐らせん状の溝23aから表面に露出しているシード膜4の表面を電気めっきする。これにより、シード膜4の表面上に金属ばね膜2が形成される。第3の実施形態の金属ばね膜2は、ばね性に優れたNi−X合金(X=P、W、Mn、Ti、Beのいずれか1元素)のうちの1種であるNi−P合金を電気めっきすることにより形成されており、その膜厚は10〜30μmとなっている。
【0104】
工程I4においては、図7Hに示すように、金属ばね膜2の形成後に第2レジスト膜23Bを除去する。第3の実施形態のレジスト除去剤としては、N−メチル−2−ピロリドンが用いられる。
【0105】
工程I5においては、図7Iに示すように、第2レジスト膜23Bの除去後に表面に露出しているシード膜4を除去する。このシード膜4の除去はイオンミリングにより行なわれる。
【0106】
工程Dにおいては、図7Jに示すように、シード膜4の除去後にそのシード膜4の除去部分からフィルム除去剤を供給し、フィルム25を除去する。第3の実施形態のフィルム除去剤としては、第1の実施形態のフィルム除去剤と同様、2.5wt%水酸化ナトリウム水溶液が用いられている。
【0107】
工程Jにおいては、図7Kに示すように、突起22Cの除去前において、マルテンサイト変態温度(Ms点)が室温(例えば25℃程度)よりも高温であってマルテンサイト逆変態温度(オーステナイト変態温度、Af点)がバーンイン試験の試験温度(例えば120℃程度)よりも低温に設定されている形状記憶合金をスパッタすることにより、表面に露出している金属ばね膜2、突起22Cおよび金属犠牲膜21の表面上に形状記憶合金膜3を形成する。スパッタ処理条件としては、加熱温度230℃、Arガス圧0.46Paであり、成膜された形状記憶合金膜3の膜厚は6μmである。
【0108】
ここで、第3の実施形態の形状記憶合金膜3においては、多種の形状記憶合金の中でも形状回復可能な双晶変形が最も安定して起こるTiNi合金(TiNi二元合金のほか、TiNiZr、TiNiCuなどのTiNi基合金も含む。第3の実施形態においてはTiNi二元合金)が用いられている。
【0109】
また、第3の実施形態のTiNi合金におけるTiサイトの組成(Tiの組成にTiと置換する元素の組成を合計した組成。第3の実施形態においてはTiの組成)は50.0〜51.0mol%に設定されており、TiリッチのTiNi合金となっている。そのため、そのマルテンサイト変態温度は80℃程度になっており、そのマルテンサイト逆変態温度、すなわちオーステナイト変態温度は100℃程度になっている。
【0110】
工程Kにおいては、図7Kに示された形状記憶合金膜3に熱処理を行なう。この熱処理は形状記憶合金膜3に対する形状記憶処理であり、その条件は420℃、30分の焼鈍である。
【0111】
工程Eにおいては、図7Lに示すように、形状記憶合金膜3の形成後にエッチング液を供給し、突起22Cを除去する。第3の実施形態のエッチング液としては、突起22CがCuめっきにより形成されていることから、硫酸鉄(III)水溶液に硫酸を加えて得た水溶液が用いられている。
【0112】
なお、第3の実施形態の突起22CはCuめっきにより形成されており、その突起22Cが耐熱性を有しているので、形状記憶合金膜3の形成後に除去される。そのため、突起が樹脂により形成されており、その突起が耐熱性を有していない場合、突起の除去後に形状記憶合金のスパッタおよびその熱処理を行なうことが好ましい(第4の実施形態の工程Eを参照)。
【0113】
そして、最後の工程となる工程Lにおいては、図7Lに示すように、形状記憶合金膜3の形成後にエッチング液を供給し、金属犠牲膜21を除去(リフトオフ)する。これにより、金属犠牲膜21の表面上に形成された形状記憶合金膜3をも併せて除去する。第3の実施形態のエッチング液としては、金属犠牲膜21のCu層(上層)に対して硫酸鉄(III)水溶液に硫酸を加えて得た水溶液が用いられており、そのCr層(下層)に対してフェリシアン化カリウム水溶液が用いられている。
【0114】
なお、第3の実施形態の突起22Cおよび金属犠牲膜21のCu層(上層)はCuを用いて形成されているため、第3の実施形態においては、その工程Eおよび工程Lを同時に行なうことができる。
【0115】
次に、図1および図6から図11を用いて、第3の実施形態の接触子1Cの製造方法について、その作用を説明する。ここで、図8はマルテンサイト変態温度以下の温度における形状記憶合金膜3の応力−ひずみ線図を示し、図9は、マルテンサイト逆変態温度以上の温度における形状記憶合金膜3の応力−ひずみ線図を示している。また、図10および図11は、第3の実施形態の接触子1Cがボール状バンプ15Aまたはランド状バンプ15Bに接触して下方に圧力が生じた状態を示している。
【0116】
第3の実施形態の接触子1Cは、前述した工程F、工程G、工程H、工程I、工程D、工程J、工程K、工程Eおよび工程Lの順に、その9つの工程を経て製造される。
【0117】
ここで、工程Jにおいては、円錐らせん状の金属ばね膜2の表面上に形状記憶合金膜3が積層されており、この形状記憶合金膜3のマルテンサイト逆変態温度は、バーンイン試験の試験温度(例えば120℃程度)よりも低温であって室温よりも高温に設定されている。
【0118】
図8に示すように、形状記憶合金は、マルテンサイト変態温度(MS点)以下の環境下においてマルテンサイト相であり、その環境下(例えば室温)おける変形に対し、マルテンサイト逆変態温度(Af点)以上の加熱により、形状記憶効果を発揮する。また、図9に示すように、形状記憶合金は、マルテンサイト逆変態温度以上の環境下においてオーステナイト相であり、その環境下(例えばバーンイン試験の試験温度)おける変形に対し、除荷のみによりその変形を回復させる超弾性を示す。いずれも形状記憶合金の双晶変形によるものであり、永久変形の原因となるすべり変形は生じない。
【0119】
したがって、第3の実施形態の接触子1Cにおいては、室温において検査対象の半導体デバイスをプローブカード10に取付ける際、図10および図11に示すように、その半導体デバイスのバンプ15A、15Bにより、プローブカード10に取付けられた接触子1Cがそのらせん形状をその下方に収縮変形するともに、その外側に拡大させる方向に変形したとしても、バーンイン試験の試験環境下において、その変形を形状記憶効果により回復させることができる。また、バーンイン試験の試験環境下において、その接触子1Cが変形したとしても、変形応力の除去後にその変形を超弾性により回復させることができる。
【0120】
つまり、第3の実施形態の接触子1Cにおいては、永久変形の原因となるすべり変形が生じるのではなく、加熱もしくは除荷により形状回復可能な双晶変形が生じるので、従来の接触子のように、バーンイン試験の繰り返しにより接触子1Cがすべり変形を起こし、その形状を変化させてしまうことがない。
【0121】
特に、工程Hにより形成されるテント26Cの高さが100μm程度(最大500μm程度まで形成可能である。)となっていることから、第3の実施形態の接触子1Cの高さは100μm以上になり、従来の接触子の高さ(50μm程度)よりも2倍以上も高くなっている。したがって、金属ばね膜2のみにより接触子1Cを形成した場合、バーンイン試験の繰り返しによりすべり変形が生じ、接触子1Cがへたりやすい。つまり、第3の実施形態の接触子1Cのおいては、形状回復可能な形状記憶合金膜3が金属ばね膜2の表面上に形成されている効果、すなわち形状記憶合金膜3が接触子1Cの変形を回復する効果が顕著に現われやすい。
【0122】
ここで、第3の実施形態の形状記憶合金膜3においては、TiNi合金が用いられているため、Cu系形状記憶合金やFe系形状記憶合金などの他の形状記憶合金と比較して、安定した形状記憶効果および超弾性を発揮することができる。
【0123】
このTiNi合金は、そのTiサイトの組成が50.0〜51.0mol%となっているので、そのマルテンサイト変態温度を80℃程度にすることができ、半導体デバイスの取付を行なう室温においては良好な形状記憶効果を発揮することができる。また、そのマルテンサイト逆変態温度(オーステナイト変態温度)を100℃程度にすることができるので、バーンイン試験の試験環境下(120℃程度)においては良好な超弾性を示すことができる。
【0124】
また、TiNi合金は、Niサイトの組成が50.0〜51.0mol%においてその変態温度が100℃も変化するほどに組成に対して敏感な合金であることが知られているが、Tiサイトの組成が50.0〜51.0mol%であれば、その変態温度は一定であることも知られている。すなわち、Tiサイトの組成がスパッタによりわずかにずれたとしても、その組成が50.0〜51.0mol%の範囲内であれば、その変態温度は変化せずに同等の特性を有する形状記憶合金膜3を成膜することができる。
【0125】
さらに、第1の実施形態の工程Aおよび工程Bと同様、第3の実施形態の工程Fから工程Hによれば、背の高いテント26Cを容易に形成することができる。そのため、その背の高いテント26Cを型として利用し、100μm以上の背の高い接触子1Cを形成することができる。
【0126】
また、工程Gにおいては、第1の実施形態の工程Aと同様、突起22Cが電気めっきにより形成されているので、その突起22Cを支柱とするテント26Cの高さを容易に高くすることができる。
【0127】
また、工程G1においては、レジスト膜の任意の位置に任意の形状の孔(第3の実施形態においては円柱孔23b)を形成し、その孔23bから露出している金属犠牲膜21Aの表面上に突起22Cをめっき形成しているので、金属犠牲膜21Aの表面上における突起22Cの形状や形成位置を自在に選択することができる。
【0128】
さらに、そのめっき時間を変化させることにより1μm程度の単位で突起22Cの高さを調整することができるので、テント26Cの高さを容易に調整することもできる。
【0129】
この突起22CはCuめっきにより形成されていることから、突起22Cに対するエッチング・レートを他の部材に対するエッチング・レートよりも大きくすることができる。これにより、絶縁基板11、金属ばね膜2、形状記憶合金膜3、その他の部材に悪影響を及ぼさずに突起22Cを取り除くことができる。
【0130】
また、第3の実施形態においては、突起22Cが耐熱性を有しており、その突起22Cおよび金属犠牲膜21が同一の材料(Cu)を用いて形成されている。そのため、図7Lに示すように、形状記憶合金膜3の形成およびその熱処理後において、突起22Cおよび金属犠牲膜21の両方を同時に除去することができる。
【0131】
そのうえ、工程Hにおいては、図7Dに示すように、前述した工程H1から工程H4を経てテント26Cが形成されている。テント26Cの覆いとなるフィルム25は減圧下において絶縁基板11に接着されていることから、テント26Cの内圧が外圧(大気圧)よりも低くなっている。そのため、テント26Cの外気がテント26Cに対してテント26Cをしぼませる方向に圧力を加えるので、金属ばね膜2を形成する際にテント26Cがたるんでしまうことを防止することができる。
【0132】
さらに、このフィルム25は、感光性樹脂フィルムであることから、従来から知られた感光性樹脂フィルムによるプリント配線板のパターンニング方法を応用して、テント26Cの形成のための精密なパターンニングを容易に行なうことができる。
【0133】
そして、工程Iにおいては、図7Gに示すように、電気めっきにより金属ばね膜2が形成されている。これにより、金属ばね膜2の膜厚制御を容易に行うことができるので、金属ばね膜2の弾性力を制御して接触子1Cを形成することができる。
【0134】
この金属ばね膜2は、Ni−P合金めっきにより形成されているので、その膜厚を厚くしやすく、大きな弾性力を発揮しやすい。そのため、この金属ばね膜2は、接触子1Cに接触するバンプ15A、15Bに大きな圧力を加えることができる。
【0135】
また、工程I2においては、レジスト膜がスプレーコーティングにより形成されている。そのため、絶縁基板11と突起22Cとの高低差が大きくなったとしても、レジスト膜の膜厚を均一にすることができる。
【0136】
すなわち、第3の実施形態の接触子1Cによれば、円錐らせん状の接触子1Cを作るための型となるテント26C(略錐体状のレジスト体)を高く形成することができるので、バンプ15A、15Bに適切な圧力を加えることができる背の高い接触子1Cを形成することができる。
【0137】
また、第3の接触子1Cの製造方法によれば、その背の高い接触子1Cが金属ばね膜2の表面上に形状記憶合金膜3を積層させることにより形成されており、その形状記憶合金膜3が形状記憶効果および超弾性を示すことによって接触子1Cの変形を回復させるので、バーンイン試験を繰り返してもへたらない接触子1Cを製造することができるという効果を奏する。
【0138】
次に、図12を用いて、第4の実施形態の接触子1Dの製造方法を説明する。ここで、図12は、第4の実施形態の接触子1Dの製造方法について、図12Aから図12Hの順に縦断面図を用いて示している。
【0139】
第4の実施形態の接触子1Dは、第3の実施形態の接触子1Cと同様、中央を頂部とした円錐らせん状に形成されており、プローブカード10の絶縁基板11に形成された接続端子12上に接続されている(図1参照)。この接触子1Dは、図6に示すように、金属ばね膜2および形状記憶合金膜3を積層させることにより形成されている。また、第4の実施形態の接触子1Dは、金属ばね膜2の形成補助膜として、絶縁基板11もしくは接続端子12と金属ばね膜2との間にシード膜4を積層させている。
【0140】
この接触子1Dの製造方法は、工程F、工程G、工程H、工程I、工程D、工程E、工程J、工程Kおよび工程Lの順に、その9つの工程を主な工程として備えている。ここで、第4の実施形態において、突起22Dを形成する工程G(図12B)および突起22Dを除去する工程E(図12F)が第3の実施形態における工程G(図7B、図7C)および工程E(図7L)と異なっている。
【0141】
一方、金属犠牲膜21を形成する工程F(図12A)、テント26Dを形成する工程H(図12C)、金属ばね膜2を形成する工程I(図12D)、フィルム25を除去する工程D(図12F)、形状記憶合金膜3をスパッタにより形成する工程J(図12G)、形状記憶合金膜3を熱処理する工程K(図12G)および金属犠牲膜21を除去する工程L(図12H)は第3の実施形態におけるそれら各工程と同様である。
【0142】
したがって、第4の実施形態における工程G(図12B)および工程E(図12F)のみを詳細に説明する。
【0143】
工程Gにおいては、図12Bに示すように、円輪形状の溝21aの内側に形成された円形状の金属犠牲膜21Aの表面上に突起22Dを形成する。この突起22Dはどのような形状に形成されていても良く、その高さのみを制御して形成されていればよい。第4の実施形態の突起22Dは、粘度の高い樹脂を円形状の金属犠牲膜21Aの表面上にポッティングした後、そのポッティングした樹脂を硬化させることにより形成されており、この突起22Dの外径は100μm〜300μm程度、その高さは100μm程度となっている。ポッティングする樹脂としては、ノボラック系レジスト材であって粘度が高いものが用いられている。
【0144】
また、工程Eにおいては、図12Fに示すように、フィルム25の除去(工程D)後であって形状記憶合金膜3の形成(工程J)前においてエッチング液を供給し、突起22Dを除去する。第4の実施形態の突起22Dの除去剤としては、N−メチル−2−ピロリドンが用いられる。
【0145】
次に、図1および図6から図11を用いて、第4の実施形態の接触子1Dの製造方法について、その作用を説明する。
【0146】
第4の実施形態の突起22Dは、工程Gにおいて、円形状の金属犠牲膜21Aの表面上に樹脂をポッティングし、そのポッティングした樹脂を硬化させることにより形成されている。この突起22Dは高く形成されていればよいので、粘度の高いレジスト液を絶縁基板11の表面上に均一の厚さで膜状に形成するよりも簡易に形成することができる。また、第3の実施形態の工程GのようなCuめっきによる突起22Dの形成工程よりも作業工程が簡易であり、その突起22Dの形成に時間を要しないので、突起22Dを容易に形成することができる。
【0147】
また、その突起22Dは樹脂を用いて形成されていることから、形状記憶合金膜3のスパッタ形成前に除去されている。もし、形状記憶合金膜3のスパッタ形成時に突起22Dが残っていたとすると、形状記憶合金のスパッタ温度は230℃程度であることから、突起22Dが揮発し、形状記憶合金膜3に不純物が溶解して、形状記憶合金膜3の形状回復効果が適切に発揮されないおそれがある。したがって、形状記憶合金膜3のスパッタ形成前に突起22Dを除去することにより、最適な形状記憶合金膜3を形成することができる。
【0148】
すなわち、第4の実施形態の接触子1Dによれば、円錐らせん状もしくは多角錐らせん状の接触子1Dを作るための型となるテント26D(略錐体状のレジスト体)を高く形成することができるので、バンプに適切な圧力を加えることができる背の高い接触子1Dを容易に形成することができる。
【0149】
また、第4の実施形態の接触子1Dの製造方法によれば、その背の高い接触子1Dが金属ばね膜2の表面上に形状記憶合金膜3を積層させることにより形成されており、その形状記憶合金膜3が形状記憶効果および超弾性を示すことによって接触子1Dの変形を回復させるので、バーンイン試験を繰り返してもへたらない接触子1Dを製造することができるという効果を奏する。
【0150】
なお、本発明は、前述した実施形態などに限定されるものではなく、必要に応じて種々の変更が可能である。
【0151】
例えば、本発明の接触子は円錐らせん状に限られず、中央部が突出したらせん状であればよい。そのため、他の実施形態においては、図13に示すように、その接触子1Eが多角錐らせん状に形成されていても良い。その際、多角形錐状のテントを形成するとともに、第3および第4の実施形態においては、金属犠牲膜に多角輪形状の溝をパターンニングする。そして、テントの表面上に多角錐らせん状の溝をレジスト膜にパターンニングして、多角錐らせん状の金属ばね膜を電気めっきにより形成することが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0152】
【図1】第1の実施形態の接触子を示す斜視図
【図2】第1の実施形態の接触子を示す縦断面図
【図3】第1の実施形態の接触子の製造方法をA〜Jの順に示す縦断面図
【図4】第1の実施形態の接触子の製造方法における工程Bのフィルム密着状態を上方から示す平面図
【図5】第2の実施形態の接触子の製造方法をA〜Eの順に示す縦断面図
【図6】第3の実施形態の接触子を示す縦断面図
【図7】第3の実施形態の接触子の製造方法をA〜Lの順に示す縦断面図
【図8】マルテンサイト変態温度以下の温度における形状記憶合金膜の応力−ひずみ線図
【図9】マルテンサイト逆変態温度以上の温度における形状記憶合金膜の応力−ひずみ線図
【図10】第3の実施形態の接触子がボール状バンプに接触して下方に圧力が生じた状態を示す正面図
【図11】第3の実施形態の接触子がランド状バンプに接触して下方に圧力が生じた状態を示す正面図
【図12】第4の実施形態の接触子の製造方法をA〜Hの順に示す縦断面図
【図13】他の実施形態の接触子を示す斜視図
【符号の説明】
【0153】
1 接触子
2 金属ばね膜
3 形状記憶合金膜
4 シード膜
12 接続端子
22A、22B、22C、22D 突起
23a 円錐らせん状の溝
25 フィルム
26A、26B、26C、26D テント

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁基板の表面上において突起を形成する工程Aと、
フィルムを用いて前記突起を覆うことにより前記絶縁基板の表面上に前記突起を支柱とするテントを形成する工程Bと、
前記テントの表面上に前記テントの頂部を中心とする円錐らせん状もしくは多角錐らせん状の金属ばね膜を形成する工程Cと、
前記フィルムを除去する工程Dと、
前記突起を除去する工程Eと
を備えていることを特徴とする接触子の製造方法。
【請求項2】
前記工程Aは、
前記絶縁基板の表面上に円形状もしくは多角形状の第1シード膜を形成する工程A1と、
前記第1シード膜の表面を電気めっきすることにより前記突起を形成する工程A2と
を有していることを特徴とする請求項1に記載の接触子の製造方法。
【請求項3】
前記突起は、Cuめっきにより形成されている
ことを特徴とする請求項2に記載の接触子の製造方法。
【請求項4】
前記突起は、ポッティングした樹脂を硬化させることにより形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の接触子の製造方法。
【請求項5】
前記工程Bは、
前記突起が形成された前記絶縁基板の表面を前記フィルムにより覆う工程B1と、
減圧下において前記絶縁基板を覆っている前記フィルムに熱および圧力を加えることにより前記絶縁基板に前記フィルムを密着させる工程B2と、
前記フィルムに対して前記フィルムにおける前記突起の周辺部を除去するパターンニングを行うことにより前記絶縁基板の表面上に前記突起を支柱とするテントを形成する工程B3と、
前記フィルムのパターンニング前またはパターンニング後において前記絶縁基板の表面に密着させた前記フィルムの外気を大気圧にする工程B4と
を有していることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の接触子の製造方法。
【請求項6】
前記工程Cは、
前記テントの表面上に第2シード膜を形成する工程C1と、
前記第2シード膜の表面上にレジスト膜を形成した後、前記レジスト膜に前記テントの頂部を中心とする円錐らせん状もしくは多角錐らせん状の溝をパターンニングする工程C2と、
前記円錐らせん状もしくは多角錐らせん状の溝から表面に露出している前記第2シード膜の表面を電気めっきすることにより前記第2シード膜の表面上に前記金属ばね膜を形成する工程C3と、
前記レジスト膜を除去する工程C4と、
前記レジスト膜の除去部分から表面に露出している前記第2シード膜を除去する工程C5と
を有していることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の接触子の製造方法。
【請求項7】
絶縁基板の表面上および前記絶縁基板の表面に形成された接続端子の表面上に金属犠牲膜を形成した後、前記金属犠牲膜に円輪形状もしくは多角輪形状の溝をパターンニングすることにより、前記円輪形状もしくは多角輪形状の溝から前記接続端子を表面に露出させる工程Fと、
前記円輪形状もしくは多角輪形状の溝の内側に形成された円形状もしくは多角形状の前記金属犠牲膜の表面上に突起を形成する工程Gと、
フィルムを用いて前記突起を覆うことにより前記円形状もしくは多角形状の金属犠牲膜の表面上に前記突起を支柱とするテントを形成する工程Hと、
前記テントの表面上において、前記テントの頂部を中心とし、かつ、前記円輪形状もしくは多角輪形状の溝を底面の周とする円錐らせん状もしくは多角錐らせん状の金属ばね膜を形成する工程Iと、
前記フィルムを除去する工程Dと、
前記突起を除去する工程Eと、
前記突起の除去前または前記突起の除去後においてマルテンサイト変態温度が室温よりも高温であってマルテンサイト逆変態温度がバーンイン試験の試験温度よりも低温となっている形状記憶合金をスパッタすることにより前記金属ばね膜の表面上に形状記憶合金膜を形成する工程Jと、
前記形状記憶合金膜に対して形状記憶処理のための熱処理を行なう工程Kと、
前記金属犠牲膜を除去することにより前記金属犠牲膜の表面に形成された前記形状記憶合金膜をも併せて除去する工程Lと
を備えていることを特徴とする接触子の製造方法。
【請求項8】
前記形状記憶合金膜は、TiNi合金を用いて形成されている
ことを特徴とする請求項7に記載の接触子。
【請求項9】
前記TiNi合金におけるTiサイトの組成は50.0〜51.0mol%となっている
ことを特徴とする請求項8に記載の接触子。
【請求項10】
前記工程Gは、
前記円輪形状もしくは多角輪形状の溝および前記金属犠牲膜の表面上に第1レジスト膜を形成した後、前記円形状もしくは多角形状の金属犠牲膜の表面上に形成された前記第1レジスト膜に対して前記円形状もしくは多角形状の金属犠牲膜よりも小さな底面を有する孔をパターンニングにより形成する工程G1と、
前記孔から表面に露出している前記金属犠牲膜の表面を電気めっきすることにより前記金属犠牲膜の表面上に前記突起を形成する工程G2と、
前記突起の形成後に前記第1レジスト膜を除去する工程G3と
を有していることを特徴とする請求項7に記載の接触子の製造方法。
【請求項11】
前記突起は、Cuめっきにより形成されているとともに、前記形状記憶合金膜の形成後に除去される
ことを特徴とする請求項10に記載の接触子の製造方法。
【請求項12】
前記突起は、ポッティングした樹脂を硬化させることにより形成されているとともに、前記形状記憶合金膜の形成前に除去される
ことを特徴とする請求項7に記載の接触子の製造方法。
【請求項13】
前記工程Hは、
前記突起が形成された前記円形状もしくは多角形状の金属犠牲膜の表面を前記フィルムにより覆う工程H1と、
減圧下において前記円形状もしくは多角形状の金属犠牲膜を覆っている前記フィルムに熱および圧力を加えることにより前記円形状もしくは多角形状の金属犠牲膜に前記フィルムを密着させる工程H2と、
前記フィルムに対して前記フィルムにおける前記突起の周辺部を除去するパターンニングを行うことにより前記円形状もしくは多角形状の金属犠牲膜の表面上に前記突起を支柱とするテントを形成する工程H3と、
前記フィルムのパターンニング前またはパターンニング後において前記円形状もしくは多角形状の金属犠牲膜の表面に密着させた前記フィルムの外気を大気圧にする工程H4と
を有していることを特徴とする請求項7から請求項12のいずれか1項に記載の接触子の製造方法。
【請求項14】
前記工程Iは、
前記テントの表面上および前記接続端子の表面上にシード膜を形成する工程I1と、
前記シード膜の表面上に第2レジスト膜を形成した後、前記第2レジスト膜に対して前記テントの頂部を中心とし、かつ、前記円輪形状もしくは多角輪形状の溝を底面の周とする円錐らせん状もしくは多角錐らせん状の溝をパターンニングする工程I2と、
前記円錐らせん状もしくは多角錐らせん状の溝から表面に露出している前記シード膜を電気めっきすることにより前記円錐らせん状もしくは多角錐らせん状の溝に金属ばね膜を形成する工程I3と、
前記金属ばね膜の形成後に前記第2レジスト膜を除去する工程I4と、
前記第2レジスト膜の除去部分から表面に露出している前記シード膜を除去する工程I5と
を有していることを特徴とする請求項7から請求項13のいずれか1項に記載の接触子の製造方法。
【請求項15】
前記レジスト膜および前記第2レジスト膜は、スプレーコーティングにより形成されている
ことを特徴とする請求項6または請求項14の接触子の製造方法。
【請求項16】
前記フィルムは、感光性樹脂フィルムである
ことを特徴とする請求項1から請求項15のいずれか1項に記載の接触子の製造方法。
【請求項17】
前記金属ばね膜は、Ni−X合金めっき(Xは、P、W、Mn、Ti、Beのうちのいずれか1元素である。)により形成されている
ことを特徴とする請求項1から請求項16のいずれか1項に記載の接触子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2008−41430(P2008−41430A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−214336(P2006−214336)
【出願日】平成18年8月7日(2006.8.7)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】