説明

接触式膜厚測定機およびその使用方法

【課題】 本発明は、シート状電極材上の電極合剤層の表面形状および構成材料に関係なく、所定領域の平均的な膜厚を常に高い精度で測定できる接触式膜厚測定機を提供することを目的とする。
【解決手段】 本発明の接触式膜厚測定機は、平坦な載置表面を含む定盤と、載置表面に平行に延びる平坦な接触表面を含む測定子とを備え、定盤の載置表面と測定子の接触表面で薄膜部材を挟持することにより、薄膜部材の厚みを測定することを特徴とする。定盤は、少なくとも前記載置表面がセラミックからなる

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接触式膜厚測定機およびその使用方法に関し、とりわけ電極合剤層が塗工されたシート状電極材の厚みを測定するための接触式膜厚測定機およびその使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の携帯電話、ラップトップパソコン、およびオーティオビジュアル機器などの電子機器が高機能化するにつれて、これらに使用される電源電池に対し、よりいっそうの小型化、軽量化、大容量化、および高エネルギ密度化が要求されている。そこで、従来のアルカリ蓄電池に代わり、リチウムイオン2次電池を始めとするさまざまな非水電解液電池が提案されている。
【0003】
リチウムイオン2次電池は、一般に、正極集電体と負極集電体に端子電極を取り付け、両電極板の間に短絡を防止するためのセパレータを挟んで捲回し、これを非水電解液で満たした電池ケース容器内に密封して構成される。
さらに詳述すると、リチウムイオン2次電池の各集電体の従来式の製造方法は、概略、
a)長尺で幅広のシート状の集電体金属板を準備する工程と、
b)電極合剤層塗工液を調整する工程と、
c)集電体金属板の両面上に塗工液(電極合剤層)が塗布された領域と塗布されない領域を周期的に形成するために、集電体金属板を所定方向に走行させながら電極合剤層塗工液を間欠的に塗布する工程と、
d)電極合剤層が形成された集電体金属板(単に、ウェブという)を乾燥させる工程と、
e)ウェブを圧延(プレス)する工程と、
f)ウェブを走行方向に短冊状にスリット切断する工程と、
g)短冊状にスリット切断された集電体を巻取ロールに捲回する工程と、
h)巻取ロールに一旦捲回された電極材ロールの最も外側にある一部(最外部)を全体の電極材ロールから切断して、切断された最外部について電極合剤層の膜厚を測定する工程とからなる。
【0004】
集電体金属板上に塗布され、プレスされた電極合剤層の膜厚は、最終的な製品としての電池の歩留まりおよび特性に重大な影響を与えるので、これをサブミクロンオーダの精度で正確に測定して、上記工程、とりわけ塗工液の調整工程と塗工工程にリアルタイムでフィードバックする必要がある。
【0005】
例えば、シート状電極材の厚みを測定するための従来式の装置が、特開2001−126719公報に開示されている。この接触式の厚み測定装置は、シート状電極材の両主面に垂直に当接するように対向配置された一対の接触式変位センサとして構成されている。また、各接触式変位センサは、スプリングを装着した支柱と、これに支持された支持板に固定されたローラ形状を有するセンサ接触子とを有し、センサ接触子の対接位置の移動に応じて、膜厚に対応する信号を出力する。
【0006】
しかし、こうした構成を有する接触式厚み測定装置によれば、スプリングは、使用中、接触子に弾発性を与えるために常に押し縮められた状態にあって、スプリングによる測定圧が経時的に低下しやすく(スプリングが劣化して弾発性が弱くなりやすく)、ローラ形状を有するセンサ接触子は、シート状電極と常に接触して、時間とともに摩滅・摩耗する傾向がある。一方、シート状電極材は、センサ接触子と接触した状態で走行するので、センサ接触子との接触領域において、電極活物質(電極合剤層)に損傷を与え、電池としての製品歩留まりが著しく低減するという問題があった。
【特許文献1】特開2001−126719公報
【0007】
その他の従来技術において、サブミクロンオーダの精度で膜厚を測定する装置として、ユニオンツール株式会社製ミクロファイン(登録商標)が広く用いられている。
一例として、ユニオンツール株式会社製ミクロファインシリーズの型番S−2の接触式膜厚測定機について、図7を参照しながら以下説明する。
【0008】
図7に示すように、接触式膜厚測定機101は、概略、定盤110と測定子120とを備え、定盤110は、載置表面112を含む金属製テーブル114と、これを所定位置に保持する固定治具116とを有し、測定子120は、載置表面112と対向し、連続した曲面(球面)形状または頂点を含む円錐形状に成型された接触表面112を有する。この膜厚測定機101は、定盤110の載置表面112と測定子120の接触表面112の間にシート状電極材130を挟持することにより、シート状電極材130の厚みを測定する。
【0009】
また、測定子120は、シャフト124の下端部に固定され、ばねなどの付勢部材126により下方に定盤110に向かって付勢される。さらに、シャフト124は、レバー128に連結され、これを作業者が押し下げることにより、シャフト124および測定子120を引き上げることができる。すなわち作業者は、レバー128を解放しさえすれば、シート状電極材130を定盤110と測定子120の間に挟持して、その膜厚を測定でき、レバー128を押下することにより、膜厚測定を終了して、シート状電極材130の挟持を解除することができる。
【0010】
測定する前の準備として、測定子120を徐々に降下させて、測定子120が定盤110に触れた時点でのモニタ値を0にリセットした後、さらにモニタ値が所定値(例えば−0.5mm)となった時点で、あらためてモニタ値を0にリセットする(この値を圧下点という)。こうして、モニタ値が0を示すとき、付勢部材126はシャフト124および測定子120をいくぶん下方に付勢するように、膜厚測定機101は初期設定される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、シート状電極材130を微視的に見た場合、図8(a)および(b)に示すように、集電体金属板132上に塗工される電極合剤層134は、必ずしも平坦で均一な厚みを有するとは限らず、むしろ局在的な凹部135を含むことがある。このような電極合剤層134の凹部135に、球面形状または頂点を含む円錐形状に成型された測定子120が当接すると、測定子120は凹部135に潜り込んでしまい、ある範囲の面積をもつ所定領域の平均的な厚みを測定することができない。
また、電極合剤層134が柔らかい材質で構成される場合も同様に、測定子120の接触表面112は電極合剤層134内に食い込んでしまい、特定領域の平均的な膜厚を測定することは困難であった。
【0012】
その他の問題点として、定盤110のテーブル114は、上述の通り、鉄などの金属から形成されるが、定盤110と測定子120間にシート状電極材130を挟持することにより、シート状電極材130の厚み測定を繰り返すうちに(図9(a))、測定子120に対向する定盤110のテーブル114の一部が、図9(b)に示すように摩滅・摩耗して凹所137が形成される。凹所137が形成された後、あらたに膜厚測定機101が、図10(a)に示す位置でリセットされると、図10(b)に示すように凹所137の深さdの分だけ厚みを大きく表示し、正確に厚みを測定することができない。
【0013】
さらに別の解決課題は、上述のように、シート状電極材130の膜厚を測定するためには、作業者はレバー128を単に解放するだけでよいが、性急な作業者によれば、レバー128を押し上げて、必要以上の力を測定子120に加え、必ずしも正確に膜厚が測定されない場合があった。
【0014】
これらの問題を解決するために、本発明は、シート状電極材上の電極合剤層の表面形状および構成材料に関係なく、所定領域の平均的な膜厚を常に高い精度で測定できる接触式膜厚測定機を提供することを目的とする。
【0015】
また、測定子が当接する定盤のテーブルの一部が摩滅して、凹所が形成されることを回避できる接触式膜厚測定機を提供することを目的とする。
【0016】
さらに、性急な作業者が必要以上の力を測定子に加えることを防止して、付勢部材による安定的な力でシート状電極材上の電極合剤層を挟持することにより、作業者に起因するばらつきが生じることなく、膜厚を正確に測定できる接触式膜厚測定機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
請求項1に記載の本発明の接触式膜厚測定機は、平坦な載置表面を含む定盤と、前記載置表面に平行に延びる平坦な接触表面を含む測定子とを備え、前記定盤の前記載置表面と前記測定子の前記接触表面で薄膜部材を挟持することにより、該薄膜部材の厚みを測定することを特徴とする。
【0018】
請求項2に記載の本発明の接触式膜厚測定機において、前記定盤は、少なくとも前記載置表面がセラミックからなる。
【0019】
請求項3に記載の本発明の接触式膜厚測定機において、前記接触表面は、これを載置表面から見たとき円形または矩形形状を有する。
【0020】
請求項4に記載の本発明の接触式膜厚測定機において、前記接触表面は、これを載置表面から見たとき直径が2mm〜4mmの円形形状を有する。
【0021】
請求項5に記載の本発明の接触式膜厚測定機において、前記薄膜部材は、電極合剤層が塗工されたシート状金属集電体である。
【0022】
請求項6に記載の本発明の接触式膜厚測定機は、前記定盤の前記載置表面と前記測定子の前記接触表面で前記薄膜部材を挟持するように前記測定子を付勢する付勢部材と、前記定盤の前記載置表面と前記測定子の前記接触表面で挟持された前記薄膜部材を解放するように作動するアクチュエータとをさらに有する。
【0023】
請求項7に記載の本発明の接触式膜厚測定機を使用する方法によれば、前記薄膜部材が圧延された後、巻取コアに捲回されるまでに、膜厚測定機を用いて、薄膜部材の厚みを測定することを特徴とする。
【0024】
請求項8に記載の本発明の接触式膜厚測定機を使用する方法によれば、プレスローラの下流側に隣接して配置された膜厚測定機を用いて、前記薄膜部材の厚みを測定する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、添付図面を参照して本発明に係る接触式膜厚測定機の実施の形態を説明する。本発明に係る接触式膜厚測定機1は、図1に示すように、概略、定盤10と測定子20とを備える。本発明の定盤10は、載置表面12を含むセラミック製テーブル14を備え、これを所定位置に保持する固定治具16をさらに備える。一方、本発明の測定子20は、載置表面12と対向し、所定の接触面積を有する平坦な接触表面22を備える。本発明の測定子20の接触表面22は、好適には、円形形状を有するが、円形または矩形形状などの任意の平面形状を有していてもよい。そして膜厚測定機1は、定盤10のセラミック製テーブル14の載置表面12と測定子20の平坦な接触表面22との間にシート状電極材30を挟持することにより、シート状電極材30の厚みを測定する。なお、シート状電極材30は、集電体金属板32と、その上に塗工された電極合剤層34を含む(図2参照)。
【0026】
セラミック製テーブル14は鉄製テーブルより格段に剛性が高いので、測定子20の接触表面22が繰り返して当接しても、セラミック製テーブル14の載置表面12は、従来の鉄製テーブルのように摩滅することがない。したがって、従来技術で説明したように、セラミック製テーブル14の載置表面12に凹所が形成されることなく、シート状電極材30の厚みを正確に測定することができる。
【0027】
一方、測定子20は、シャフト24の下端部に固定され、シャフト24の上端部にはレバー28が連結されている。レバー28は、ばねなどの付勢部材26により図1の左上方へ付勢される。すなわち、測定子20は、付勢部材26により、シャフト24およびレバー28を介して下方に定盤10に向かって付勢され、付勢部材26の付勢力より大きい力でレバー28を押し下げると、シャフト24および測定子20が引き上げられる。さらに本発明の膜厚測定機1は、レバー28を上下方向に作動させるためのアクチュエータ40を備え、アクチュエータ40はレバー28に当接した状態で上下伸縮可能なロッド42と、これを駆動するシリンダ44とを有する。
【0028】
こうして構成されたアクチュエータ40(ロッド42およびシリンダ44)は、作業者のスイッチ操作などにより自動的にレバー28を上下方向に作動させることができる。したがって、本発明によれば、作業者の直接的な作用によることなく、ばねなどの付勢部材26による安定した付勢力により、シート状電極材30を接触表面22および載置表面12の間に挟持することができるので、作業者の作業形態に起因するばらつきの少ない厚み測定を実現することができる。
【0029】
上述のように、本発明の測定子20が有する平坦な接触表面22は、研磨技術および切削技術などの任意の技術を用いて成型することができる。したがって、図8(a)および(b)で示すように、シート状電極材30上に塗工された電極合剤層34が局所的に凹部を有する場合、あるいは電極合剤層34が柔らかい材質で構成される場合であっても、本発明の測定子20は、その接触表面22が平坦であるので、図2に示すように、電極合剤層34内に食い込むことなく、電極合剤層34と面で接し、所定範囲の面積領域の平均的な厚みが正確に測定される。
【0030】
なお、シート状電極材30は、図3(a)および(b)に示すように、うねり(浮き)36が生じ、定盤10との間に微少な隙間38が形成されることがあるが、通常、測定子20がシート状電極材30を押圧することで、図3(a)に示すように、定盤10とシート状電極材30の間の隙間38は解消される。ところが、測定子20の接触面積が大きすぎると、付勢部材26による単位面積あたりの付勢力が小さくなるため(力が分散するため)、図3(b)に示すように、隙間38が解消されない。この状態で、シート状電極材30の厚みを測定すると、隙間38の厚み分だけ大きく表示され、シート状電極材30の厚みを正確に測定することができなくなってしまう。
【0031】
すなわち、測定子20の接触表面22は、従来技術のように曲面または円錐形状を有する場合、電極合剤層34内に食い込むので、正確に測定することができず、一方、接触表面22があまりに広い接触面積を有する場合、シート状電極材30が接触表面22から浮いた状態で測定されるので、同様に、正確な測定を阻害する。したがって、測定子20の接触表面22は、以下の実施例でより詳細に説明するが、約2mm〜約4mmの直径を含む円形形状を有することが好ましく、さらに好適には約3mmの直径を含む円形形状を有する。
【0032】
ところで、膜厚測定機は、従来、製造ラインとは独立した品質検査工程に配置され、上述のように、巻取ロールに一旦捲回された電極材ロールの最外部を全体の電極材ロールから切り離して、品質検査工程における膜厚測定機まで搬送し、切断されたシート状電極材の厚みを測定していた。こうして切断されたシート状電極材は、厚みが測定された後、破棄されていたが、相当の長さ(例えば、数メートル)に及び、その単位長さ当たりの単価が高価であるため、生産コストを著しく増大させていた。
【0033】
そこで、本発明の膜厚測定機1は、製造ライン中、すなわちシート状電極材30がプレスされた後、巻取コアに捲回されるまでの工程中に配置され、シート状電極材30の厚みをインラインで測定するように改善される。より好ましくは、図示しないプレスローラの下流側に隣接して配置された膜厚測定機1を用いて、シート状電極材30の厚みを測定する。なお、シート状電極材30の厚みを測定する時、シート状電極材30の走行は一時停止される。
【0034】
したがって、シート状電極材30の厚みを測定するために、一旦捲回された電極材ロールの一部を切り離して測定する必要がなく、すべてのシート状電極材30を後工程である電池アセンブリ工程において有効に活用することができ、生産性を格段に向上させることができる。
また、シート状電極材30の厚みを随時測定し、測定結果をリアルタイムで関連する前工程にフィードバックすることができるので、より精度よく厚み管理を実現することができる。
【実施例1】
【0035】
以下の5種類の測定子を用意して、ユニオンツール株式会社製ミクロファインシリーズの型番TH−R1(セラミックテーブル付き)を用いてシート状電極材の厚みを測定した。
測定子S1:連続した球面形状の接触表面を有する(未加工)。
測定子S2:直径2mmの円形平面形状を有するように接触表面を切削加工した。
測定子S3:直径3mmの円形平面形状を有するように接触表面を切削加工した。
測定子S4:直径4mmの円形平面形状を有するように接触表面を切削加工した。
測定子S5:直径5mmの円形平面形状を有するように接触表面を切削加工した。
【0036】
各測定子S1〜S5による測定する前の準備作業として、測定子を徐々に降下させて、測定子が定盤に触れた時点でのモニタ値を0にリセットした後、さらにモニタ値が所定値(例えば−0.5mm)となった時点で、あらためてモニタ値を0にリセットした。
被測定用のシート状電極材として、正極用シート状電極材サンプルを作製し、同一サンプルに対してそれぞれ10回ずつ連続して厚みを測定し、その結果として、測定値の標準偏差を以下のように算出した。
【表1】

【0037】
測定子の接触表面の直径を横軸にとり、各測定子S1〜S5を用いて測定した測定値の標準偏差(表1)を縦軸にプロットして、図4に示すグラフを得た。
【0038】
上記説明したように、測定子の接触表面が連続的な球面形状を有する場合(測定子S1)、電極合剤層の局所的な凹部または柔らかい構成材料に起因して、電極合剤層34内に食い込むことがあるため、厚みの繰り返し測定値に対するばらつき(標準偏差)が大きい(σ=0.45μm)のに対し、測定子の接触表面が2mm〜4mm直径の円形平面形状に切削加工されたとき(測定子S2〜S4)、標準偏差が測定子S1に比して約半分以下となり、好適にも、ばらつきの小さい測定結果が得られた。とりわけ、測定子の接触表面が3mm直径の円形平面形状を有するとき、繰り返し測定値に対するばらつきが最も少ない測定を行うことができた。
【0039】
また、測定子の接触表面の直径が5mm以上になると、上述のように、付勢力が分散され、図3(a)に示すように隙間38が残ったまま厚み測定するため、繰り返し測定値のばらつきに悪影響を及ぼす。
【0040】
したがって、上記実施例1によれば、測定子20の接触表面22は、直径が約2mm〜約4mmの円形形状を有することが好ましく、約3mm直径の円形形状を有することがより好ましいと結論付けられた。
【実施例2】
【0041】
次に、3mm直径の円形形状の接触表面を有する測定子およびセラミックテーブル付き定盤を用いると、測定結果が誤差因子による変動の影響を受けにくいことを、田口メソッドによる品質工学手法を用いて以下のように実証した。
【0042】
一般に、膜厚測定機を日々使用するにつれて、付勢部材(ばね)は劣化して、その付勢力は弱くなり、圧下点(−0.5mmにリセットした場合)は徐々に−0.5mmから0mmへとシフトする傾向がある。このように付勢力および圧下点が変動しても、これに影響を受けることなく、厚み測定値に対するばらつきが小さいまま維持されることが好ましい。
【0043】
そこで、未加工の測定子およびセラミックテーブルなしの定盤を用いた場合(A1)と、3mm直径の円形形状の接触表面を有する測定子およびセラミックテーブル付き定盤を用いた場合(A2)に関し、ばねの付勢力および圧下点に対して意図的な変動を与えた以下の2つの条件(N1,N2)において、厚みの測定結果のばらつきの大小を評価した。
条件N1:未使用のばねを用い、圧下点が−0.5mmとなるように初期設定した。
(測定値がより小さく表示されるように付勢力および圧下点を変動させる条件)
条件N2:劣化したばねを用い、圧下点が−0.1mmとなるように初期設定した。
(測定値がより大きく表示されるように付勢力および圧下点を変動させる条件)
【0044】
測定用サンプルとして、次の4種類のサンプル(M1〜M4)を作製し、別の標準測定機を用いて、以下のように、それぞれのサンプルの膜厚の真値を得た。
サンプルM1:142.8μm
サンプルM2:147.4μm
サンプルM3:152.5μm
サンプルM4:156.4μm
【0045】
そして、未加工の測定子およびセラミックテーブルなしの定盤を用いて(A1)、条件N1において、サンプルM1〜M4の厚みを複数回測定して、その平均値を求めた。同様に、未加工の測定子およびセラミックテーブルなしの定盤を用いて(A1)、条件N2において、サンプルM1〜M4の厚みを複数回測定して、その平均値を求めた。
さらに、3mm直径の円形形状の接触表面を有する測定子およびセラミックテーブル付き定盤を用いて(A2)、条件N1およびN2において、サンプルM1〜M4の厚みを複数回測定して、その平均値を求めた。
こうして、表2の厚み測定結果を得た。
【表2】

【0046】
ここで、表2の測定結果から、A1およびA2に関する信号変動(S)、有効除数(r)、線形式(L)、線形式(L)、比例項の変動(Sβ)、比例項の差の変動(SN×β)、誤差変動(S)、誤差分散(V)、調合誤差分散(V)、および標準偏差(σ)を算出した。
【表3】

【0047】
一方、表2の測定結果から、未加工の測定子およびセラミックテーブルなしの定盤を用いた場合(A1)と、3mm直径の円形形状の接触表面を有する測定子およびセラミックテーブル付き定盤を用いた場合(A2)に関し、上記条件N1およびN2における真値と測定値の関係をプロットしたところ、図5および図6のグラフを得た。ここで、条件N1の測定値を一点鎖線で、条件N2の測定値を直線で示し、真値と測定値が一致する理想的な場合を破線で示した。
【0048】
表3に示すように、3mm直径の円形形状の接触表面を有する測定子およびセラミックテーブル付き定盤を用いた場合(A2)のSN比は、未加工の測定子およびセラミックテーブルなしの定盤を用いた場合(A1)のSN比よりも著しく改善されており(−0.27dbから5.59db)、上記A2の測定値のばらつき(σ)も同様に上記A1の場合より格段に小さくなっている。すなわち、本発明のように、3mm直径の円形形状の接触表面を有する測定子およびセラミックテーブル付き定盤を用いると、ばねの付勢力および圧下点に変動があっても、その影響を受けにくい、ばらつきの少ない測定が実現されることを意味している。
【0049】
同様に、図5および図6に示すグラフにおいて、上記A1の場合よりA2の場合において、測定値を示す直線および一点鎖線が理想的な場合を示す破線により接近していることから、3mm直径の円形形状の接触表面を有する測定子およびセラミックテーブル付き定盤を用いると、測定結果が誤差因子(付勢力および圧下点)による変動の影響を受けにくいことが実証された。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の接触式膜厚測定機の概略正面図である。
【図2】図1に示す膜厚測定機を用いて、凹部を含む電極合剤層を有するシート状電極材の厚みを測定する状態を示す拡大正面図である。
【図3】図1に示す膜厚測定機を用いて、うねりを有するシート状電極材を測定する状態を示す正面図である。
【図4】測定子の接触表面の直径と測定値の標準偏差の関係を示すグラフである。
【図5】未加工の測定子およびセラミックテーブルなしの定盤を用いた場合の、誤差要因を与える2つの条件における測定結果と真値の関係を示すグラフである。
【図6】3mm直径の円形形状の接触表面を有する測定子およびセラミックテーブル付き定盤を用いた場合の、誤差要因を与える2つの条件における測定結果と真値の関係を示すグラフである。
【図7】従来技術による接触式膜厚測定機の概略正面図である。
【図8】凹部を含む電極合剤層を有するシート状電極材と、これを従来の膜厚測定機を用いて厚み測定する状態を示す拡大正面図である。
【図9】従来式の金属製テーブルが測定子と繰り返し当接することにより、摩滅して形成された凹所を示す概略図である。
【図10】凹所が形成された状態でリセットされた後に、厚み測定されるシート状電極材を示す概略図である。
【符号の説明】
【0051】
1 接触式膜厚測定機、10 定盤、12 載置表面、14 セラミック製テーブル、16 固定治具、20 測定子、22 接触表面、24 シャフト、26 付勢部材(ばね)、28 レバー、30 シート状電極材、32 集電体金属板、34 電極合剤層、36 うねり(浮き)、38 隙間、40 アクチュエータ、42 ロッド、44 シリンダ44。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
平坦な載置表面を含む定盤と、
前記載置表面に平行に延びる平坦な接触表面を含む測定子とを備え、
前記定盤の前記載置表面と前記測定子の前記接触表面で薄膜部材を挟持することにより、該薄膜部材の厚みを測定することを特徴とする接触式膜厚測定機。
【請求項2】
前記定盤は、少なくとも前記載置表面がセラミックからなることを特徴とする請求項1に記載の膜厚測定機。
【請求項3】
前記接触表面は、これを載置表面から見たとき円形または矩形形状を有することを特徴とする請求項1に記載の膜厚測定機。
【請求項4】
前記接触表面は、これを載置表面から見たとき直径が2mm〜4mmの円形形状を有することを特徴とする請求項1に記載の膜厚測定機。
【請求項5】
前記薄膜部材は、電極合剤層が塗工されたシート状金属集電体であることを特徴とする請求項1に記載の膜厚測定機。
【請求項6】
前記定盤の前記載置表面と前記測定子の前記接触表面で前記薄膜部材を挟持するように前記測定子を付勢する付勢部材と、
前記定盤の前記載置表面と前記測定子の前記接触表面で挟持された前記薄膜部材を解放するように作動するアクチュエータとをさらに有する請求項1に記載の膜厚測定機。
【請求項7】
請求項1に記載の膜厚測定機を使用する方法であって、
前記薄膜部材が圧延された後、巻取コアに捲回されるまでに、膜厚測定機を用いて、薄膜部材の厚みを測定することを特徴とする膜厚測定機の使用方法。
【請求項8】
プレスローラの下流側に隣接して配置された膜厚測定機を用いて、前記薄膜部材の厚みを測定することを特徴とする膜厚測定機の請求項7に記載の使用方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−153732(P2006−153732A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−346706(P2004−346706)
【出願日】平成16年11月30日(2004.11.30)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】