説明

接触検出装置及びロボット

【課題】外部から加えられる力に対する接触センサの耐久性を従来よりも高めること。
【解決手段】ロボットに対する物体の接触を検出する接触検出装置であって、ベース層51と、ベース層51上に積層されると共に、少なくとも部分的に粗面を有する抵抗層52と、抵抗層52上に積層されると共に、抵抗層52の粗面に対応する粗面を有する抵抗層54と、ベース層51上に積層されると共に、抵抗層52、54間に層間空間を形成するスペーサ層53と、を備え、抵抗層52、54間の間隔は、抵抗層52、54の少なくとも一方の変形時、抵抗層52の粗面と抵抗層54の粗面間に摩擦が生じるように設定されている。この構成を採用することによって、外部から加えられる力に対する接触センサの耐久性を従来よりも高めることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接触検出装置及びロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ロボットは、工場での製造補助に限らず、ヒトの介護支援等の様々な用途を見込んで開発されている。ロボットは所望の場所に固定されるものから、自律的に空間移動するものまで様々である。ロボットが固定型又は移動型であるか否かに関わりなく、ロボットに対して物体検出機能を具備させることが従前から行われている。例えば、ロボットにカメラを具備し、ソフト的なパターン認識処理を実行することで、製品ラインを流れる被加工部品が到着したことを検出することができる。
【0003】
ロボットに対して物体検出機能を具備させる方法の1つとして、物理的な接触を検出するセンサ(以下、接触センサと呼ぶこともある)をロボットの外表面に設け、センサの出力に基づいて物体の接触の有無を検出する方法がある。
【0004】
例えば、特許文献1には、高速で接触検出が可能な接触検出装置が開示され、また、これを具備するロボットが開示されている。特許文献1に開示の接触検出装置は、多数の開口を有する絶縁スペーサを介して、導電シートを対向配置させている。導電シート間の接触を電気的に検出して、接触検出装置への物理的な接触を検出している。
【0005】
特許文献2には、ベース上に離散的に敷設された複数個の触覚センサを備えるロボットの外被が開示されている。同文献の段落0057に記載されているように、触覚センサは、導電性ゴムを素材の1つとする。導電性ゴムは、荷重に応じて圧縮されると、内部の導電粉末の密度が変化して抵抗値が低下する。同文献の段落0062に記載されているように、抵抗値に応じて変化する電流値を電圧の変化として検出することでワーク等との接触を検出する。
【0006】
なお、特許文献3には、タッチパネルに組み込み可能なニュートンリング防止フィルムが開示されている。特許文献4にも、同様に、ニュートンリング防止抵抗膜型タッチパネルが開示されている。特許文献5には、液晶表示装置に組み込まれる透明座標入力装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−102719号公報
【特許文献2】特開2007−196372号公報
【特許文献3】特開2002−373056号公報
【特許文献4】特開平11−250764号公報
【特許文献5】特開2004−362406号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ロボットに実装される接触センサでは、任意の方向から力が加わる場合がある。この場合、特に積層構造を有する接触センサでは、外部から加わる力に対して接触センサ自体が所望の耐久性を備えることが要求される。接触センサの耐久性を高めるためには、対向配置された一組の抵抗層の間にスペーサ層を配置すると良い。しかしながら、上述のように接触センサには任意の方向から力が加わる場合があるため、一組の抵抗層間へのスペーサ層の配置だけでは十分でない場合がある。例えば、接触センサから見て斜め上から斜め下方向へ力が加わるとき、許容外のせん断力が接触センサに加わるおそれがある。許容外のせん断力が接触センサの積層部に生じると、接触センサが故障し、結果的に、ロボットのセンシング系統が故障してしまう。
【0009】
上述の説明から明らかなように、外部から加えられる力に対する接触センサの耐久性を従来よりも高めることが強く望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る接触検出装置は、ロボットに対する物体の接触を検出する接触検出装置であって、ベース層と、前記ベース層上に積層されると共に、少なくとも部分的に粗面を有する第1抵抗層と、前記第1抵抗層上に積層されると共に、前記第1抵抗層の前記粗面に対応する粗面を有する第2抵抗層と、前記ベース層上に積層されると共に、前記第1及び第2抵抗層間に層間空間を形成するスペーサ層と、を備え、前記第1及び第2抵抗層間の間隔は、当該第1及び第2抵抗層の少なくとも一方の変形時、前記第1抵抗層の前記粗面と前記第2抵抗層の前記粗面間に摩擦が生じるように設定されている。この構成を採用することによって、効果的に接触検出装置の耐久性を高めることができる。
【0011】
前記第1及び第2抵抗層夫々に形成された前記粗面は、平坦面に粗面化処理を施すことで形成される、と良い。これによれば、既存の製造プロセスを大きく変更することなく、簡易に粗面を形成することができる。
【0012】
前記粗面の最大深さをRzとし、前記第1及び第2抵抗層間の平面内の平均的な面間隔をLとしたとき、Rz<L/2を満足する、と良い。
【0013】
前記第1及び第2抵抗層間の平面内の平均的な面間隔をLとし、前記第1抵抗層の前記粗面の粗さの標準偏差をσ1とし、前記第2抵抗層の前記粗面の粗さの標準偏差をσ2としたとき、L>3×σ1+3×σ2を満足する、と良い。
【0014】
前記スペーサ層は、前記第1抵抗層の前記粗面と前記第2抵抗層の前記粗面間が接触する接触領域を少なくとも部分的に囲む枠状体を含む、と良い。この構成を採用することで、任意の方向に生じるせん断力に対する強度を確保することができる。
【0015】
前記スペーサ層は、前記第1及び第2抵抗層夫々に対して接着固定されている、と良い。この構成を採用することで、任意の方向に生じるせん断力に対する強度を高めることができる。
【0016】
前記第1及び第2抵抗層は、上面視して多角形状であり、前記第1抵抗層では、その上辺及び下辺部分夫々に配線が接続されており、前記第2抵抗層では、その右辺及び左辺部分夫々に配線が接続されている、と良い。
【0017】
前記ベース層、前記第1抵抗層、前記第2抵抗層、及び前記スペーサ層上に積層された弾性層を更に備える、と良い。
【0018】
本発明に係るロボットは、上述のいずれかに記載の接触検出装置と、前記接触検出装置が表面に配置された把持部と、を備える。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、外部から加えられる力に対する接触センサの耐久性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1実施形態にかかるロボットの概略的な模式図である。
【図2】本発明の第1実施形態にかかるロボットの把持部の概略的な模式図である。
【図3】本発明の第1実施形態にかかるロボットの把持部の概略的な模式図である。
【図4】本発明の第1実施形態にかかるロボットの把持部の概略的な模式図である。
【図5】本発明の第1実施形態にかかる接触センサの積層構造を示す概略的な模式図である。
【図6】本発明の第1実施形態にかかる接触センサの部分的な概略斜視図である。
【図7】本発明の第1実施形態にかかる接触センサに接続される半導体集積回路を示す概略的な模式図である。
【図8】本発明の第1実施形態にかかる接触センサの動作条件を示す説明表である。
【図9】本発明の第1実施形態にかかる抵抗層の構成を説明するための説明図である。
【図10】本発明の第1実施形態にかかる抵抗層の構成を説明するための説明図である。
【図11】本発明の第1実施形態にかかる抵抗層の構成を説明するための説明図である。
【図12】本発明の第1実施形態にかかる接触センサの製造工程を示す概略工程図である。
【図13】本発明の第2実施形態にかかる接触センサの部分的な概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。なお、各実施の形態は、説明の便宜上、簡略化されている。図面は簡略的なものであるから、図面の記載を根拠として本発明の技術的範囲を狭く解釈してはならない。図面は、もっぱら技術的事項の説明のためのものであり、図面に示された要素の正確な大きさ等は反映していない。同一の要素には、同一の符号を付し、重複する説明は省略するものとする。上下左右といった方向を示す言葉は、図面を正面視した場合を前提として用いるものとする。
【0022】
〔第1実施形態〕
以下、図1乃至図12を参照して、本発明の第1実施形態について説明する。図1は、ロボットの概略的な模式図である。図2乃至図4は、ロボットの把持部の概略的な模式図である。図5は、接触センサの積層構造を示す概略的な模式図である。図6は、接触センサの部分的な概略斜視図である。図7は、接触センサに接続される半導体集積回路を示す概略的な模式図である。図8は、接触センサの動作条件を示す説明表である。図9乃至図11は、抵抗層の構成を説明するための説明図である。図12は、接触センサの製造工程を示す概略工程図である。
【0023】
はじめに図1乃至図4を参照して第1実施形態に係るロボットについて説明する。
【0024】
図1に示すように、ロボット100は、頭部90、胴部91、腕部92、腕部93、把持部98、把持部99、脚部94、脚部95、足部96、および足部97を有する。
【0025】
腕部92、93は、その基端部分で胴部91に対して軸着している。腕部92、93は、その基端部分を回転中心として、yz平面で回動可能である。腕部92、93は、その中間部分に関節を有し、上腕部分と下腕部分とが揺動可能に構成される。各腕部92、93の先端部分には、把持部98、99が夫々設けられている。
【0026】
脚部94、95は、その上端部分で胴部91に対して接続している。脚部94、95は、その上端部分を回転中心として、yz平面で回動可能である。脚部94、95は、その中間部分に関節を有し、上脚部と下脚部とが揺動可能に構成されている。各脚部94、95の下端部分には、足部96、97が夫々設けられている。
【0027】
頭部90は、胴部91に対して軸着しており、xz平面内で回転可能に構成される。
【0028】
ロボット100の筐体には、様々な電気/機械コンポーネントが内蔵される。例えば、ロボット100の胴部91には、各種センサ、マイコン、電源、モータ、及びリンク機構等の様々な電気/機械コンポーネントが内蔵される。例えば、ロボット100は、マイコンで生成される指令に応じて、腕部92を上方へ回転移動させ、上方に位置する物体を把持部98で把持する。また、ロボット100は、マイコンで生成される指令に応じて、脚部94、95を交互に前方へ押し出し、前方の所望の位置まで移動する。なお、上述のロボット100の各動作は、モータで発生する駆動力が、ベルト、ギア等の機械要素を介在して、各部位の空間的変位に変換されることで実現される。なお、ロボット100のタイプ並びに具体的な構造は任意である。
【0029】
図2に図1の把持部99の概略的な部分拡大模式図を示す。図2に示すように、把持部99は、ベース部80、指部81、及び指部82を有する。指部81は、リンク83、及びリンク84を有する。指部81は、ベース部80とリンク83間を関節として有し、かつリンク83とリンク84間を関節として有する。リンク83は、ベース部80間の関節を回転中心としてxy平面内で揺動可能に構成される。リンク84は、リンク83間の関節を回転中心としてxy平面内で揺動可能に構成される。指部82は、リンク87、及びリンク88を有する。指部82に関する説明は、指部81に関する説明と同様である。ただし、リンク83をリンク87に読み替え、リンク84をリンク88に読み替えるものとする。
【0030】
図3に示すように、把持部99の把持面には、複数の接触センサ(接触検出装置)50が装着される。なお、上述の指部81は、2つの指部81a、81bから構成される。
【0031】
各接触センサ50は、ベース部及び各リンクに対応づけて配置されている。これによって、部位毎に外部から受ける力を適切に検出し、把持部99の現状の把持状態を適切に評価することができる。なお、各部位に設ける接触センサの個数は任意である。
【0032】
図4に示すように、把持部99は、対象物70を把持する。リンク83、84、87、88をxy平面内にて変位させることで、把持部99に対象物70を把持させることができる。なお、把持部99の具体的な構成は任意であり、多関節のリンク構造の採用の有無は任意である。
【0033】
次に、接触センサ50の構造及び動作について図5乃至図9を参照して説明する。図5は、接触センサ50の積層構造を示す概略的な模式図である。図6は、接触センサ50の部分的な概略斜視図である。図7は、接触センサ50に接続される半導体集積回路を示す概略的な模式図である。図8は、接触センサ50の動作条件を示す説明表である。図9乃至図11は、抵抗層の構成を説明するための説明図である。なお、図5以降の図に示す座標系は、図1乃至4に示す座標系とは別個に定義されているものとする。
【0034】
図5に示すように、接触センサ50は、ロボット100の実装面(上述の把持面)から離間する順に、ベース層51、抵抗層52、スペーサ層53、抵抗層54、ベース層55、及びシリコンゴム層(弾性層)60を有する。
【0035】
把持対象物がシリコンゴム層60に接触すると、シリコンゴム層60が受けた力は最下層のベース層51まで伝達する。この過程で、スペーサ層53を介して対向配置された抵抗層52、54は、把持対象物の位置に応じた位置で互いに接触する。一組の抵抗層間の接触を電気的に検出することによって、把持対象物の接触、平面内での把持対象物の接触位置を検出することができる。また、算出処理の実行により、加えられた荷重も推定することもできる。
【0036】
はじめに接触センサ50の積層構造について説明する。
【0037】
ベース層51、55は、PET(PolyEthylene Terephthalate)等の樹脂から成り、可撓性を有する薄層体である。ベース層51、55は、通常の半導体プロセス技術(スピンコート等のコート法など)によって均一な層厚に形成されている。なお、ベース層51、55の製造方法は任意である。ベース層51、55は透明性を有する必要がないため、可視光に対して不透明な樹脂を採用して各ベース層を形成しても良い。
【0038】
抵抗層52、54は、抵抗値が調整された導電層であり、例えば、導電性樹脂、ポリシリコン、銅、アルミニウム等の導電性材料からなる。抵抗層52、54は、通常の半導体プロセス技術(コート法、蒸着等)によってベース層の下面又は上面に均一な厚みで形成されている。後述の説明から明らかなように、抵抗層52の上面には粗面が形成され、抵抗層54の下面には粗面が形成されている。なお、抵抗層52、54の製造方法は任意である。抵抗層52、54は透明性を有する必要がないため、可視光に対して不透明な導電性材料を採用して各抵抗層を形成しても良い。
【0039】
スペーサ層53は、対向配置された抵抗層52、54間に設けられる。各抵抗層52、54は、スペーサ層53を介して互いに固着される。スペーサ層53は、一般的な樹脂材料からなり任意の接着性を有する。また、スペーサ層53は、絶縁性を有する。スペーサ層53の上面視形状は枠状である。スペーサ層53は、抵抗層52の粗面を囲むように形成されている。同様に、スペーサ層53は、抵抗層54の粗面を囲むように形成されている。
【0040】
スペーサ層53は、通常の半導体プロセス技術(薄膜形成、フォトリソグラフィー等)を活用して製造される。スペーサ層53を枠状とすることで、抵抗層52、54間の接触空間を確保しつつ、スペーサ層53の機械的強度を効果的に高めることができる。なお、スペーサ層53は透明性を有する必要がないため、可視光に対して不透明な樹脂材料を採用して各スペーサ層を形成しても良い。熱硬化性、紫外線硬化性等の接着剤によって、スペーサ層53を抵抗層52、54に対して強固に固着させても良い。
【0041】
シリコンゴム層60は、シリコンゴムからなる弾性層である。シリコンゴム層60は、通常の貼り合せ技術(接着等)を活用して、積層体63(ベース層51、抵抗層52、スペーサ層53、抵抗層54、及びベース層55からなる積層体)上に貼り合わされる。シリコンゴム層60によって外部から加わる力が所定範囲で分散されるため、局所的に強い力が積層体63に対して加えられて積層体63が破損することを効果的に抑制することができる。なお、シリコンゴム以外の材料(可視光に対して不透明な弾性材料等)を採用しても良い。
【0042】
図5に模式的に示すように、抵抗層52の上面には粗面が形成されている。具体的には、抵抗層52の上面には、複数の窪み32が連続して形成されている。換言すると、抵抗層52の上面には、複数の突出部33が連続して形成されている。
【0043】
また、抵抗層52と同様に、抵抗層54の下面にも粗面が形成されている。具体的には、抵抗層54の下面には、複数の窪み30が連続して形成されている。換言すると、抵抗層54の上面には、複数の突出部31が連続して形成されている。
【0044】
また、抵抗層52と抵抗層54間の間隔は、外部から接触センサ50に対して力が加えられたとき、抵抗層52と抵抗層54とが互いに接触し、両者の間に摩擦が生じるように設定されている。
【0045】
一組の抵抗層52、54が互いに接触するとき、両者の間に生じる摩擦力によって、スペーサ層53に対して加えられるせん断力が緩和される。ロボットに対する接触を検出する接触センサ50では、接触センサ50から見て斜め上から斜め下方向へ力が加えられ、許容外のせん断力が接触センサに加わるおそれがある。許容外のせん断力が接触センサ50の積層部に生じると、接触センサ50が故障し、結果的に、ロボットのセンシング系統が故障してしまう。
【0046】
本実施形態では、変形時に接触可能に対抗配置された一組の抵抗層52、54夫々の対向面を粗面とし、両者の接触時に摩擦が生じるようにする。これによって、スペーサ層に加えられるせん断力を緩和し、効果的に接触センサ50の耐久性を高めることができる。なお、図9乃至図11を参照して、抵抗層の構成について詳細に後述する。なお、粗面に関する指標は、JIS B0601 2001を参照するものとする。
【0047】
なお、接触センサ50の製造方法は任意である。上述のように、半導体プロセス技術を活用して製造しても良いし、他の方法によって製造しても良い。また、上述の粗面の具体的な製造方法は任意である。抵抗層が有する平坦面に対してサンドペーパーをこすり付けることによって、上述の粗面を形成しても良い。抵抗層が形成されるベース層の表面上に凹凸を形成することによって、上述の粗面を形成しても良い。
【0048】
次に、図6乃至図8を参照して、接触センサ50の接触検出の仕組みについて説明する。
【0049】
図6に示すように、抵抗層52の左辺側には電極層40が形成されており、抵抗層52の右辺側には電極層41が形成されている。なお、電極層40、41は、抵抗層52に対してオーミック接触しているものとする。電極層40、41は、良好な導電性を有する金属で形成すると良い。電極層40には配線L3が半田付けされている。同様に、電極層41には配線L4が半田付けされている。
【0050】
抵抗層54の下辺側には電極層42が形成されており、抵抗層52の上辺側には電極層43が形成されている。なお、電極層42、43は、抵抗層54に対してオーミック接触しているものとする。電極層42、43は、良好な導電性を有する金属で形成すると良い。電極層43には配線L1が半田付けされている。同様に、電極層42には配線L2が半田付けされている。
【0051】
図7に示すように、上述の各配線L1〜L4は、半導体集積回路35に接続される。半導体集積回路35には、電源電位VDD及び接地電位GNDが供給される。半導体集積回路35は、スイッチング制御に基づいて、配線L1、L3に電源電位を供給する。半導体集積回路35は、スイッチング制御に基づいて、配線L2、L4を接地電位に接続する。半導体集積回路35は、スイッチング制御に基づいて、配線L1〜L4を自身が具備する電圧検出回路に接続する。ただし、半導体集積回路35の具体的な回路構成は任意である。例えば、市販のタッチスクリーン用の半導体集積回路を採用すれば良い。このような市販の半導体集積回路では、MOSスイッチによって上述のスイッチング制御を実現し、マルチプレクサによって電圧検出回路への入力を選択する。また、そのような市販の半導体集積回路内には、スイッチングを制御するコントローラも組み込まれる。
【0052】
図8を参照して、接触センサ50の動作状態について説明する。
【0053】
半導体集積回路35が第1状態のとき、配線L1を高電位側とし配線L2を低電位側として電圧が印加される。これに応じて、抵抗層54には上辺側から下辺側へ電圧が印加される。この状態のとき、抵抗層54が抵抗層52に接触すると、抵抗層54と抵抗層52間の接触位置に応じた値の電圧が配線L3、L4を介して半導体集積回路35に入力する。半導体集積回路35は、入力した電圧値をデジタル変換し、生成したデジタル値を接触位置を示す位置データとしてマイコンへ出力する。このようにして、接触センサ50の検出エリア内におけるx軸上の把持対象物の接触位置(x座標)が検出される。
【0054】
半導体集積回路35が第2状態のとき、配線L3を高電位側とし配線L4を低電位側として電圧が印加される。これに応じて、抵抗層52には左辺側から右辺側へ電圧が印加される。この状態のとき、抵抗層54が抵抗層52に接触すると、抵抗層54と抵抗層52間の接触位置に応じた値の電圧が配線L1、L2を介して半導体集積回路35に入力する。半導体集積回路35は、入力した電圧値をデジタル変換し、生成したデジタル値を接触位置を示す位置データとしてマイコンへ出力する。このようにして、接触センサ50の検出エリア内におけるz軸上の把持対象物の接触位置(z座標)が検出される。
【0055】
半導体集積回路35に上述の動作モードを時分割して実行させると、接触センサ50の検出エリア(xz平面)内での把持対象物の接触座標(x、z)を取得することができる。このように把持対象物の接触位置を座標情報として取得することによって、把持部99をより高精度に制御することが可能になる。把持部99の制御性の向上によって、例えば、壊れやすい物、滑りやすい物などを好適に把持することが可能になる。
【0056】
接触した把持対象物から受ける荷重を算出しても良い。これによって、把持部99をより高精度に制御することが可能になる。
【0057】
半導体集積回路35が第1状態のとき、上述のようにx軸上の接触位置(x座標)を取得することができる。抵抗層52の電位をZ1とし、抵抗層54の電位をZ2とし、抵抗層52の抵抗値をRとしたとき、接触抵抗値CRを次式(1)により算出することができる。
【0058】
CR=R*(x座標値/4095)*((Z2/Z1)−1)・・・(1)
【0059】
接触抵抗値CRから、接触の有無を判定すると共に、把持対象物から受けた荷重を任意の演算式によって算出することができる。
【0060】
図6に示すように各配線を各抵抗層に接続することによって、xz平面内での接触位置の座標情報を取得することができる。2次元的な接触位置情報を取得することによって、把持部99の把持状態をより正確に評価し、把持部99をより適切な状態へフィードバック制御することができる。
【0061】
次に、図9乃至図11を参照して、抵抗層の構成について説明する。
【0062】
図9に示すように、各抵抗層52、54に形成される粗面の最大深さをRzとし、抵抗層52、54間の平面内の平均的な面間隔をLとしたとき、Rz<L/2を満足する、と良い。この条件を満足することによって、接触センサ50に対して外部から力が加えられていない状態のとき、抵抗層52、54同士が互いに接触し、接触を誤検出してしまうことを効果的に抑制することができる。なお、図10に示すように、抵抗層52と抵抗層54間の間隔Lは、抵抗層52と抵抗層54間の平面内での平均的な間隔に相当する。
【0063】
また、各突出部の傾斜角θ(図9参照)を大きく設定すると良い。好適には、傾斜角θを45度〜90度に設定すると良い。より好適には、傾斜角θを60度〜90度に設定すると良い。これによって、接触時、抵抗層52、54間が確実に噛み合う状態とし、抵抗層52、54間に生じる摩擦力を効果的に高め、せん断力に対する接触センサ50の耐性を効果的に高めることができる。
【0064】
また、図11に模式的に示すように、抵抗層52の粗面の粗さの標準偏差をσ1とし、抵抗層54の粗面の粗さの標準偏差をσ2としたとき、L>3×σ1+3×σ2を満足すると良い。この条件を満足することによって、接触センサ50に対して外部から力が加えられていない状態のとき、抵抗層52、54同士が互いに接触し、接触を誤検出してしまうことをより確実に抑制することができる。抵抗層52と抵抗層54間の平面内での平均的な間隔が十分であっても、局所的に抵抗層52と抵抗層54とが接触してしまう場合がある。上記条件を満足することによって、このような場合にも対処することが可能になる。なお、粗面の粗さの標準偏差は、二乗平均平方根高さと呼ばれることもある。
【0065】
最後に図12を参照して、接触センサ50の製造工程について補足的に説明する。
【0066】
まず、図12(a)に示すように、ベース層51上に抵抗層52を通常の薄膜形成技術によって形成し、抵抗層52の上面に対して粗面化処理を施す。抵抗層52の形成方法は任意である。抵抗層52の材質に応じて、スピンコート、蒸着等を活用すれば良い。粗面化処理の具体的な方法は任意である。例えば、サンドペーパー等の粗面化手段を活用すると良い。ただし、マスク、エッチング等の一般的な半導体プロセス技術を活用しても良い。
【0067】
次に、図12(b)に示すように、スペーサ層53を抵抗層52上に形成する。スペーサ層53は、例えば、一般的な印刷方法によって形成すると良い。
【0068】
次に、図12(c)に示すように、積層体の左側部分を積層体の右側部分上に貼り合せ、この状態で接着固定する。なお、スペーサ層53上に接着剤を塗布することで、折り返された抵抗層をスペーサ層53に対して接着固定すると良い。折返しによって生じるU字状の部分は、一般的な切削機器、ダイシング装置等を活用して除去しても良い。
【0069】
上述の説明から明らかなように、本実施形態では、変形時に接触可能に対抗配置された一組の抵抗層52、54夫々の対向面を粗面とし、両者の接触時に摩擦が生じるようにする。これによって、スペーサ層に加えられるせん断力を緩和し、効果的に接触センサ50の耐久性を高めることができる。
【0070】
また、各抵抗層52、54に形成される粗面の最大深さをRzとし、抵抗層52、54間の平面内の平均的な面間隔をLとしたとき、Rz<L/2を満足する、と良い。この条件を満足することによって、接触センサ50に対して外部から力が加えられていない状態のとき、抵抗層52、54同士が互いに接触し、接触を誤検出してしまうことを効果的に抑制することができる。
【0071】
更に、抵抗層52の粗面の粗さの標準偏差をσ1とし、抵抗層54の粗面の粗さの標準偏差をσ2としたとき、L>3×σ1+3×σ2を満足すると良い。この条件を満足することによって、接触センサ50に対して外部から力が加えられていない状態のとき、抵抗層52、54同士が互いに接触し、接触を誤検出してしまうことをより確実に抑制することができる。
【0072】
〔第2実施形態〕
以下、図13を参照して、本発明の第2実施形態について説明する。図13は、接触センサの部分的な概略斜視図である。
【0073】
第1実施形態では、抵抗層52と抵抗層54間に枠状のスペーサ層53を配置する。本実施形態では、図13に模式的に示すように、スペーサ層53は、枠状部分(図13では不図示)に加えて、枠状部分の枠内に粒状のスペーサ61を分散配置する。このような場合であっても、スペーサ61の配置密度を適宜調整することによって、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。なお、スペーサ61は、一般的な樹脂材料からなり任意の接着性を有する。また、スペーサ61は、絶縁性を有する。
【0074】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。粗面の形成範囲は任意である。粗面の形成方法は任意である。粗面の具体的な態様は任意である。スペーサ層の具体的な構成は任意である。接触センサの具体的な積層構造は任意である。ベース層の直上にスペーサ層を形成しても良い。粒状スペーサのみでスペーサ層を構成しても良い。
【符号の説明】
【0075】
50 接触センサ
51 ベース層
52 抵抗層
53 スペーサ層
54 抵抗層
55 ベース層

30 窪み
31 突出部
32 窪み
33 突出部

40 電極層
41 電極層
42 電極層
43 電極層

60 シリコンゴム層
61 スペーサ
63 積層体
70 対象物

80 ベース部
81 指部
81a 指部
82 指部
83 リンク
84 リンク
87 リンク
88 リンク

35 半導体集積回路

100 ロボット
90 頭部
91 胴部
92 腕部
93 腕部
94 脚部
95 脚部
96 足部
97 足部
98 把持部
99 把持部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボットに対する物体の接触を検出する接触検出装置であって、
ベース層と、
前記ベース層上に積層されると共に、少なくとも部分的に粗面を有する第1抵抗層と、
前記第1抵抗層上に積層されると共に、前記第1抵抗層の前記粗面に対応する粗面を有する第2抵抗層と、
前記ベース層上に積層されると共に、前記第1及び第2抵抗層間に層間空間を形成するスペーサ層と、を備え、
前記第1及び第2抵抗層間の間隔は、当該第1及び第2抵抗層の少なくとも一方の変形時、前記第1抵抗層の前記粗面と前記第2抵抗層の前記粗面間に摩擦が生じるように設定されている、接触検出装置。
【請求項2】
前記第1及び第2抵抗層夫々に形成された前記粗面は、平坦面に粗面化処理を施すことで形成されることを特徴とする請求項1に記載の接触検出装置。
【請求項3】
前記粗面の最大深さをRzとし、
前記第1及び第2抵抗層間の平面内の平均的な面間隔をLとしたとき、
Rz<L/2
を満足することを特徴とする請求項1又は2に記載の接触検出装置。
【請求項4】
前記第1及び第2抵抗層間の平面内の平均的な面間隔をLとし、
前記第1抵抗層の前記粗面の粗さの標準偏差をσ1とし、
前記第2抵抗層の前記粗面の粗さの標準偏差をσ2としたとき、
L>3×σ1+3×σ2
を満足することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の接触検出装置。
【請求項5】
前記スペーサ層は、前記第1抵抗層の前記粗面と前記第2抵抗層の前記粗面間が接触する接触領域を少なくとも部分的に囲む枠状体を含むことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の接触検出装置。
【請求項6】
前記スペーサ層は、前記第1及び第2抵抗層夫々に対して接着固定されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の接触検出装置。
【請求項7】
前記第1及び第2抵抗層は、上面視して多角形状であり、
前記第1抵抗層では、その上辺及び下辺部分夫々に配線が接続されており、
前記第2抵抗層では、その右辺及び左辺部分夫々に配線が接続されていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の接触検出装置。
【請求項8】
前記ベース層、前記第1抵抗層、前記第2抵抗層、及び前記スペーサ層上に積層された弾性層を更に備えることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の接触検出装置。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか一項に記載の接触検出装置と、
前記接触検出装置が表面に配置された把持部と、
を備えるロボット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−7654(P2011−7654A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−151974(P2009−151974)
【出願日】平成21年6月26日(2009.6.26)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】