説明

接近物検知装置、接近物検知システム、および、接近物検知方法

【課題】車両から降車する際にドアノブを動かすようなドア開閉操作を行わなくとも、車両の乗員に対して、車両のドア開放時に接触や衝突を引き起こす可能性のある接近物を確実に検知できる技術を提供することを目的とする。
【解決手段】車両が停止した状態で、車両に搭載されたカメラで得られた撮影画像に基づいて、車両に接近する接近物を検知する。そして、車両の複数のドアのうち接近物が接近している車両のドアを特定し、接近物を検知したことに応答して、ドアに対応する前記警報装置を作動させる。これにより、車両から降車する際にドアを開放して接近物に接触したり衝突する危険を回避できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両周辺の接近物を検知する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、車両走行中に当該車両に接近する物体(たとえば車両の左右の後側方に接近する物体)をレーダ装置などを用いて検出し、車両に接近している物体が存在することを車両のユーザである運転者に報知する技術がある。また、特許文献1には車両の乗員が当該車両から降車する際に後方から接近する車両との接触や衝突を防止する、車両のドア開放操作の警報装置に関する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−239832号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1の技術では、車両のドアノブを動かすようなドア開放操作を行った際に車両の後方からの接近物との接触や衝突を防止するための警報装置については開示されているものの、ドア開放操作を行う前の乗員に対する警告については何ら考慮されていない。そのため、車両の乗員は降車する直前のドア開放操作を行った場合にしか接近物の有無を知ることはできず、降車できるタイミングがわかりにくいという問題があった。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、車両から降車する際にドアノブを動かすようなドア開閉操作を行わなくとも、車両の乗員に対して、車両のドア開放時に接触や衝突を引き起こす可能性のある接近物を確実に検知できる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、請求項1の発明は、車両に搭載され、前記車両に接近する接近物を検知する接近物検知装置であって、前記車両には、前記車両の複数のドアのそれぞれに対応して、ユーザに警告を報知する警報装置が設けられ、前記車両の停止状態で、前記車両に搭載されたカメラで得られた撮影画像に基づいて、前記車両に接近する接近物を検知する検知手段と、前記撮影画像に基づいて、前記車両の複数のドアのうち前記接近物が接近している前記車両のドアを特定する特定手段と、前記接近物を検知したことに応答して、前記特定手段に特定された前記ドアに対応する前記警報装置を作動させる装置作動手段と、を備える。
【0007】
また、請求項2の発明は、請求項1に記載の接近物検知装置において、前記カメラは、前記車両の左右双方の側方に配置され、前記特定手段は、前記接近物の像を含む画像を取得したカメラの左右位置に基づいて、前記接近物が接近している前記車両のドアを特定する。
【0008】
また、請求項3の発明は、請求項2に記載の接近物検知装置において、前記カメラは、自装置が配置される側の前記車両の側方領域における前方から後方までを撮影可能であり、前記検知手段は、前記車両の前方および後方の少なくともいずれか一方から接近する物体を検知する。
【0009】
また、請求項4の発明は、請求項1ないし3のいずれかに記載の接近物検知装置において、前記接近物の位置及び速度を取得する取得手段と、前記接近物の位置及び速度に基づいて、危険度合を判定する判定手段と、
をさらに備え、前記装置作動手段は、前記危険度合に応じて、前記警報装置を異なる態様で作動させる。
【0010】
また、請求項5の発明は、車両に搭載される接近物検知システムであって、請求項1ないし4のいずれかに記載の接近物検知装置と、前記車両の複数のドアのそれぞれに対応して、ユーザに警告を報知する警報装置と、を備える。
【0011】
さらに、請求項6の発明は、車両に搭載され、前記車両に接近する接近物を検知する接近物検知方法であって、前記車両には、前記車両の複数のドアのそれぞれに対応して、ユーザに警告を報知する警報装置が設けられ、前記車両の停止状態で、前記車両に搭載されたカメラで得られた撮影画像に基づいて、前記車両に接近する接近物を検知する検知工程と、前記撮影画像に基づいて、前記車両の複数のドアのうち前記接近物が接近している前記車両のドアを特定する特定工程と、前記接近物を検知したことに応答して、前記特定手段に特定された前記ドアに対応する前記警報装置を作動させる装置作動工程と、を備える。
【発明の効果】
【0012】
請求項1ないし6の発明によれば、接近物を検知したことに応答して、車両の複数のドアのうち接近物が接近している車両のドアに対応する警報装置を作動させるため、車両の乗員が降車する前に自身が降車するドアに接近物が接近しているか否かをドアの開放操作なしに認識できる。また、これにより、車両から降車する際にドアを開放して接近物に接触したり衝突する危険を回避できる。
【0013】
また、特に請求項2の発明によれば、接近物の像を含む画像を取得したカメラの左右位置に基づいて、接近物が接近している車両のドアを特定することで、車両の乗員は接近物が車両の左右いずれの側面から接近しているかを簡便かつ正確に検知できる。また、これにより、車両から降車する際にドアを開放して接近物に接触したり衝突する危険を回避できる。
【0014】
また、特に請求項3の発明によれば、車両の前方および後方の少なくともいずれか一方から接近する物体を検知することで、より危険な前方あるいは後方から近づいてくる接近物に対応して警報装置を作動させられる。
【0015】
また、特に請求項4の発明によれば、接近物の位置及び速度に基づいて、危険度合を判定し、その危険度合に応じて、前記警報装置を異なる態様で作動させることで、乗員に車両に接近物が接近中であることを報知し、かつ、降車可能なタイミングを乗員に報知できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、接近物検知システムのブロック図である。
【図2】図2は、車両の各カメラの設置位置を示した図である。
【図3】図3は、接近物検知モードの起動処理のフローチャートである。
【図4】図4は、接近物検知モードの接近物検知範囲を示した図である。
【図5】図5は、接近物検知処理を示した図である。
【図6】図6は、接近物検知の具体例1を示した図である。
【図7】図7は、接近物を検知した場合の警告処理を示した図である。
【図8】図8は、車両のドアに設けられた警報装置の具体例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態について説明する。
【0018】
<1.構成>
図1は、接近物検知システム1のブロック図である。接近物検知システム1は、車両(本実施の形態では、自動車)に搭載されるものであり、車両の周辺を撮影して画像を生成し、車両に接近する接近物を検知し、この接近物が接近する車両のドアを特定して、接近物を検知したことに応答してそのドアに対応する警報装置を作動させる機能を有している。この接近物検知システム1を利用するユーザとなる車両の乗員は当該車両への接近物をドアの開閉操作を行うことなく容易に把握できる。
【0019】
図1に示すように接近物検知システム1は、撮影部10、接近物検知部20、警報装置30、レーダ装置40、および、ナビゲーション装置50を備えて構成されている。
【0020】
撮影部10は車載カメラであり、右サイドカメラ101、左サイドカメラ102、フロントカメラ103、および、リアカメラ104を備えている。これらのカメラはレンズと撮像素子を備えており電子的に画像を取得する。
【0021】
図2は、車両2の各カメラの設置位置を示した図である。車両2は車両のユーザである運転者が車両の側方などを確認するための右ドアミラー4、および、左ドラミラー5を備えている。そして、右ドアミラー4には右サイドカメラ101が備えられ、左ドアミラー5には、左サイドカメラ102が備えられている。各カメラの光軸は車両2の直進方向に対して交差するように車両2の外部方向に向けられている。
【0022】
また、フロントカメラ103は、車両2の前端となるフロントバンパの左右略中心に設けられ、その光軸は車両2の直進方向に向けられている。さらに、リアカメラ104は、車両2の後端となるリアバンパの左右略中心に設けられ、その光軸は車両2の直進方向の逆方向に設けられている。
【0023】
各カメラのレンズは魚眼レンズなどが採用されており、各カメラは180度以上の画角を有している。このため、4つの車載カメラ101、102、103、および、104を利用することで、車両2の全周囲の撮影が可能である。
【0024】
また、車両2は運転席ドアR2、運転席側後部ドアR1、助手席ドアL2、助手席側後部ドアL1を備えている。なお以下、運転席ドアR2、および、運転席側後部ドアR1をあわせて運転席側ドアといい、助手席ドアL2、および、助手席側後部ドアL1を助手席側ドアともいう。
【0025】
なお、本実施の形態では運転席ドア、運転席側後部ドア、助手席ドア、および、助手席側後部ドアの4つのドアを備えている車両について述べるが、車両の種類はこれに限定されることなく、複数のドアを有する車両について本発明は適用され得る。その際、運転席側に備えられるドアを運転席側ドアといい、助手席側に備えられるドアを助手席側ドアという。そして、以下に詳述するように運転席側ドアに対応する接近物検知範囲、助手席側ドアに対応する接近物検知範囲に基づいて、運転席側ドアまたは助手席側ドアのいずれかを特定して接近する物体を検知する。
【0026】
また、以下で記載する接近物検知に伴う車両乗員への警告では、右サイドカメラ101、および、左サイドカメラ102を用いた処理を一例として述べる。
【0027】
図1に戻り、接近物検知部20は、画像生成部201、制御部202、および不揮発性メモリ203を備えている。
【0028】
画像生成部201は、撮影部10で取得されたデータに基づいて、車両2に接近する接近物を含む物体の撮影画像を生成する。なお、物体の車両2への接近は撮影画像の物体を複数フレーム撮影された物体の画像の時間ごとの変化に基づいて判断する。
【0029】
制御部202は画像生成部201で生成された撮影画像の車両2に接近する接近物を検知する。この接近物の検知は、撮影部10の右サイドカメラ101、および、左サイドカメラ102の撮影範囲内で予め設けられた所定領域内の物体を対象とする。なお各カメラの撮影範囲内、および、接近物を検知する所定領域については後述する。
【0030】
また、制御部202は取得した撮影画像が右サイドカメラ101、および、左サイドカメラ102のいずれのカメラで撮影されたもので、車両の進行方向の前方または後方に予め設けられた所定領域内のいずれの領域で検知された物体であるかに基づいて、接近物が接近している車両のドアを特定する。
【0031】
そして、接近物を検知すると、その検知に応答して、接近物が接近しているとして特定されたドアの乗員が車両2から降車する際に、注意を促す位置に設けられた後述する警報装置30を作動させる信号を警報装置30へ送信する。さらに、制御部202は接近物検知システム1の各部を統括的に制御する。
【0032】
また、制御部202は後述する車速センサ701、シフトセンサ702、イグニッションスイッチ703、および、ブレーキセンサ704からの信号を信号入力部601を介して受信する。これらの信号に基づいて、たとえば車両2が停車状態か否かの車両2の状態を判別して接近物の検知を行う。
【0033】
さらに、制御部202は後述するレーダ装置40からの物体の位置(物体の距離、および、角度)と速度との情報を信号入力部601を介して受信する。このレーダ装置40からの物体の位置と速度との情報に基づいて、車両2の接近物がどれくらい離れた位置からどれくらいの速度で接近しているかに応じて、接近物の危険度合を判定する。そして、危険度合の判定に応じて、警報装置30の作動態様を異ならせる。この警報装置30の危険度合に応じた作動態様については後述する。
【0034】
不揮発性メモリ203は、制御部202の接近物検知を含む各種の制御機能を実現するプログラムが予め記憶されており、制御部202が処理を実行する際にその処理に応じたプログラムが用いられる。
【0035】
警報装置30はLED(Light Emitting Diode)などの発光体で視覚的に乗員へ危険を報知する。そして、接近物の危険度合に応じて異なる態様で作動する。この警報装置30は、車両が備えるドアR1、R2、L1、および、L2のそれぞれに対応して設けられている。警報装置30は対応するドア自身、および、ドア近傍に配置される。たとえば、警報装置30は、車両2のドア部(たとえば車両2のドアのドアノブ付近)に設けられる。これにより車両2の乗員が降車する前に確実に危険を報知できる。
【0036】
また、たとえば、警報装置30は車両2のピラー部(運転席や助手席の場合はAピラー、後部座席の場合はBピラー、および、Cピラーなど)に設けてもよい。このように、警報装置30は乗員が車両2から降車する前に注意を促す位置に設けられており、これにより乗員が降車の際にドアを開放して接近物に接触や衝突する危険を回避できる。
【0037】
レーダ装置40は制御部401を備えている。レーダ装置40は、ミリ波などの周波数帯の電波を用いて、車両周囲の物体の位置、および、速度を検知する。レーダ装置40に設けられた制御部401は図示しないアンテナから送信された送信波が物体に反射して、受信波としてアンテナで受信された信号を処理して物体の位置、および、速度を信号入力部701を介して接近物検知部20の制御部202へ送信する。
【0038】
ナビゲーション装置50は表示部501、音声出力部502、および、制御部503を備えている。ナビゲーション装置50は車両の乗員が運転する際のナビゲーション機能やオーディオ機能などを有しており、表示部501から地図情報やその他の機能に付随した画像の情報を表示し、音声出力部502ではナビゲーション時の音声案内や、オーディオ使用時の音声出力を行う。
【0039】
また、撮影部10の右サイドカメラ101、および、左サイドカメラ102で撮影され、接近物検知部20の制御部202で接近物として検知された物体に関する画像情報、および、接近物検知に伴い乗員に注意を促す音声案内などをナビ通信部602を介して表示部501、および、音声出力部502を用いて出力する。これにより、車両2の乗員は車両2へ接近している接近物を視覚および聴覚で認識することができ、車両2から降車する際にドアを開放して接近物に接触したり衝突する危険を回避できる。
【0040】
制御部503は、ナビゲーション装置の表示部501、および、音声出力部502などの各部の制御や、ナビゲーション機能、および、オーディオ機能などの各種のデータ処理などを行う。
【0041】
信号入力部601は、後述する車速センサ701、シフトセンサ702、イグニッションスイッチ703、および、ブレーキセンサ704の情報を接近物検知部20の制御部202へ送信するインターフェイスである。
【0042】
また、ナビ通信部602はナビゲーション装置50と接近物検知部20の制御部202との双方の情報の通信を仲介する。
【0043】
次に、車速センサ701は、車両2の速度を検知して、制御部20へ車速(km/h)の情報を送信する。また、シフトセンサ702は図示しないシフトレバーからの”P”、”D”、”N”、”R”などのシフトポジションが入力される。
【0044】
イグニッションスイッチ703は車両2のイグニッションOFF、アクセサリON、イグニッションON、および、スタータONの4段階の切替位置を有しており、車両2の乗員により切替が可能である。このイグニッションスイッチ703の信号は信号入力部601を介して、制御部202に入力される。ここで、車両2のイグニッションOFF状態とは、車両2の図示しないエンジンが停止状態であることをいい、イグニッションON状態とは、車両2のエンジンが起動状態にあることをいう。また、アクセサリON状態とは、エンジンを始動させていない状態で、撮影部10、接近物検知部20、レーダ装置40、および、ナビゲーション装置50などの各種装置を使用できる状態をいう。
【0045】
ブレーキセンサ704からは運転者がブレーキ操作を行った場合にブレーキ信号が制御部202に入力される。
【0046】
<2.処理>
<2−1.接近物検知モード起動処理>
次に、車両2への接近物を検知して、乗員が降車する際に接近物が検知された場合は車両2の乗員に警告を行う接近物検知モードの起動処理について述べる。なお、この処理は接近物検知部20の制御部202により行われる。
【0047】
図3は、接近物検知モードの起動処理のフローチャートである。運転者のイグニッションスイッチ703の操作によりアクセサリON後、または、イグニッションON後、30秒経過している場合(ステップS301がYes)、シフトレバーがPレンジか否かをシフトセンサ702の信号に基づいて判断する(ステップS302)。なお、アクセサリON後、または、イグニッションON後、30秒経過していない場合(ステップS301がNo)は、処理を終了する。
【0048】
シフトレバーがPレンジの場合(ステップS302がYes)、車速が1km/h未満か否かを判断する(ステップS306)。車速が1km/h未満の場合(ステップS306がYes)、接近物検知モードをON状態とする。これにより、車両2の停止状態で乗員が車両2から降車する前に接近物の有無を検知し、接近物が検知された場合は乗員に警告を行うことができ、ドアを開放して接近物に接触したり衝突する危険を回避できる。車速が1km/h未満でない場合(ステップS306がNo)は、処理を終了する。
【0049】
ステップS302に戻り、シフトレバーがPレンジではない場合(ステップS302がNo)、シフトレバーがDレンジか否かを判断する(ステップS303)。シフトレバーがDレンジでない場合(ステップS303がNo)は、処理を終了する。
【0050】
シフトレバーがDレンジの場合(ステップS303がYes)は、ブレーキセンサ704からのブレーキ信号がON状態か否かを判断する(ステップS304)。 ブレーキ信号がON状態の場合(ステップS304がYes)、車速が1km/未満か否かを判断し(ステップS306)、車速が1km/h未満の場合(ステップS306がYes)は、接近物検知モードをON状態とし(ステップS307)、車速が1km/h未満ではない場合(ステップS306がNo)は、処理を終了する。
【0051】
ステップS304に戻り、ブレーキ信号がONではない場合(ステップS304がNo)は、ブレーキセンサ704からの信号に基づいて、パーキングブレーキ信号がON状態か否かを判断する(ステップS305)。パーキングブレーキ信号がON状態ではない場合(ステップS305)は、処理を終了する。パーキングブレーキ信号がON状態の場合(ステップS305がYes)は、車速が1km/h未満か否かを判断し(ステップS306)、車速が1km/h未満の場合(ステップS306がYes)、接近物検知モードをON状態とする。これにより、車両2の停止状態で乗員が車両2から降車する前に接近物の有無を検知し、接近物が検知された場合は乗員に警告を行うことができ、ドアを開放して接近物に接触したり衝突する危険を回避できる。
【0052】
車速が1km/h未満ではない場合(ステップS306がNo)は、処理を終了する。
【0053】
図4は接近物検知モードの接近物検知範囲を示した図である。車両2は、右ドアミラー4に右サイドカメラ101、左ドアミラー5に左サイドカメラ102が設けられている。右サイドカメラ101では撮影範囲RB内のB2、および、B1の破線で示す範囲を接近物検知範囲とする。この接近物検知範囲内での接近物の検出は、撮影画像の複数フレームにおける物体の時間ごとの変化に基づいて車両2への接近を判断する。また、左サイドカメラ102では撮影範囲RA内のA2、および、A1の破線で示す範囲を接近物検知範囲とする。この接近物検知範囲内での接近物の検出は、撮影画像の複数フレームにおける物体の時間ごとの変化に基づいて車両2への接近を判断する。
【0054】
なおこれらの処理は、撮影部10の右サイドカメラ101、および、左サイドカメラ102で撮影された画像情報に基づいて、接近物検知部20の制御部202により行われる。
【0055】
また、各サイドカメラの破線で示す接近物検知範囲は車両の前後約20m〜30mの位置の物体を検知でき、車両2から左右約1m以内の距離で接近する物体を接近物として検知する。これにより、車両2から20m〜30m離れた位置の接近物でも早期に検知して、乗員が降車の際にドアを開放して接近物に接触や衝突する危険を回避できる。
【0056】
<2−2.接近物検知処理>
図5は、接近物検知処理を示したフローチャートである。なお、図5で述べる処理は接近物検知部20の制御部202により行われる。車両2の接近物検知モードがON状態の場合(ステップS501がYes)、接近物検知範囲(以下、「検知範囲」という。)A1内に車両2への接近物が検知された場合(ステップS502がYes)、検知範囲B1内に車両2への接近物が検知されたか否かを判定する(ステップS506)。検知範囲B1内に接近物が検知された場合(ステップS506がYes)は、検知範囲A1および検知範囲B1の車両の左右両側で接近物を検知したこととなり、運転席側ドアと、助手席側ドアの車両2の両側のドアに接近する物体があると判定する(ステップS508)。
【0057】
このような接近物の状況を図6に示す。図6では検知範囲A1にバイク61aが検知された時点から所定時間経過後のバイク61bが検知されるまでの車両2へのバイク61の接近状態に基づいて、バイク61が車両2への接近物であると判定する。その結果、助手席側ドア(助手席ドアL2、および、助手席側後部ドアL1)に接近する物体があると判定する。
【0058】
また、検知範囲B1では車両62aが検知された時点から所定時間経過後の車両62bが検知されるまでの車両2への車両62の接近状態に基づいて、車両62が車両2への接近物であると判定する。その結果、運転席側ドア(運転席ドアR2、および、運転席側後部ドアR1)に接近する物体があると判定する。
【0059】
図5のステップS506に戻って、検知範囲B1内に車両2への接近物が検知されなかった場合(ステップS506がNo)は、検知範囲B2内に車両2への接近物が検知されたか否かを判定し(ステップS507)、検知範囲B2内に接近物が検知された場合(ステップS507がYes)は、車両2の左右両側のドアに接近する物体があると判定する(ステップS508)。また、検知範囲B2内に車両2への接近物が検知されなかった場合(ステップS507がNo)は、車両2の左ドアである助手席側ドアに接近する物体があると判定する(ステップS509)。
【0060】
次に、ステップS502に戻って、検知範囲A1内に車両2への接近物が検知されなかった場合(ステップS502がNo)は、検知範囲A2内に車両2への接近物が検知されたか否かを判定する(ステップS503)。
【0061】
検知範囲A2内に車両2への接近物が検知された場合(ステップS503がYes)は、検知範囲B1内に車両2への接近物が検知されたか否かを判断し(ステップS506)、検知範囲B1内に接近物が検知された場合(ステップS506がYes)は、検知範囲A1および検知範囲B1の車両の左右両側で接近物を検知したこととなり、運転席側ドアと、助手席側ドアの車両2の両側のドアに接近する物体があると判定する(ステップS508)。
【0062】
また、検知範囲B1内に車両2への接近物が検知されなかった場合(ステップS506がNo)は、検知範囲B2内に車両2への接近物が検知されたか否かを判定し(ステップS507)、検知範囲B2内に接近物が検知された場合(ステップS507がYes)は、車両2の左右両側のドアに接近する物体があると判定する(ステップS508)。また、検知範囲B2内に車両2への接近物が検知されない場合(ステップS507がNo)は、車両2の左ドアである助手席側ドアに接近する物体があると判定する(ステップS509)。
【0063】
ステップS503に戻って、検知範囲A2内に車両2への接近物が検知されなかった場合(ステップS503がNo)は、検知範囲B1内に車両2への接近物が検知されたか否かを判定する(ステップS504)。検知範囲B1内に車両2への接近物が検知された場合(ステップS504がYes)、車両2の右ドアである運転席側ドアに接近する物体があると判定する(ステップS510)。
【0064】
ステップS504で検知範囲B1内に車両2への接近物が検知されない場合(ステップS504がNo)は、検知範囲B2内に車両2への接近物が検知されたか否かを判定する(ステップS505)。検知範囲B2内に車両2への接近物が検知された場合(ステップS505がYes)、車両2の右ドアである運転席側ドアに接近する物体があると判定する(ステップS510)。検知範囲B2内に車両2への接近物が検知されない場合(ステップS505がNo)は、処理を終了する。
【0065】
これにより、接近物検知範囲で検知された接近物の情報に基づいて、乗員が車両2から降車する前に警告を行うことができ、ドアを開放して接近物に接触したり衝突する危険を回避できる。
【0066】
<2−3.警告処理>
図7は、接近物を検知した場合の警告処理を示したフローチャートである。なお、図7で述べる処理は接近物検知部20の制御部202により行われる。車両2の接近物検知モードがON状態の場合(ステップS701がYes)、車両2の接近物検知範囲において、接近物が検知されたか否かを判定する(ステップS702)。なお、接近物検知モードがON状態ではない場合(ステップS701がNo)は、処理を終了する。
【0067】
ステップS702に戻って、接近物を検知した場合(ステップS702がYes)は、車両2の接近物が検知された側のドアのドアロックがON状態か否かを判定する(ステップS703)。なお、接近物が検知されていない場合(ステップS702がNo)は、処理を終了する。
【0068】
ステップ703に戻って、車両2の接近物が検知された側のドアのドアロックがON状態の場合(ステップS703がYes)、接近物は接近しているが、ドアロックがONの状態であり降車できない状態にあることを乗員に報知するために、車両2のドア部、および、ピラー部に設けられた警報装置30のLEDを緑色に点灯させる(ステップS706)。これにより、車両2への接近物存在とドアロックがON状態のため乗員が降車できない状態であることを報知できる。
【0069】
車両2の接近物が検知された側のドアロックがON状態でない場合(ステップS703がNo)は、接近物の距離が車両2から所定距離範囲内、および、接近物が所定速度以上の場合(ステップS704がYes)は、危険度合いが高いと判定される。このため、乗員に警告を報知するために車両2のドア部、および、ピラー部に設けられた警報装置30のLEDを赤色に点灯させる(ステップS705)。これにより、車両2への接近物の存在により乗員が降車すると車両2のドアと接近物が接触または衝突する危険があることを乗員に報知できる。
【0070】
ステップS704に戻って、接近物の距離が車両2から所定距離範囲内、および、接近物が所定速度以上ではない場合(ステップS704がNo)は、危険度合いが低いと判定される。このため、乗員に注意を促すために車両2のドア部、および、ピラー部に設けられた警報装置30のLEDを黄色に点灯させる(ステップS707)。これにより、車両2から接近物が所定の距離(たとえば15m以上)離れており、かつ、接近物の速度が所定の速度以下(たとえば10km/h以下)である場合において、接近物が検知されていた場合でも乗員の判断で安全を確認した後に車両2から降車できる。このように接近物の状況に応じて乗員が降車をスムーズに行うことができる。
【0071】
図8はドア部およびピラー部に設けられた警報装置の具体例を示した図である。車両2の運転席ドアR2には、ドアR2を開閉する際のドアノブ901が設けられている。そして、ドアノブ付近にはドアR2のロックON、および、ロックOFFを行うドアロック902が設けられている。そしてドアノブ901の付近に、車両2への接近物が検知された際に乗員に報知する警報装置30aが設けられている。これにより、乗員が車両2から降車するためにドアノブを用いてドア開閉操作を行う前に警報装置30aにより接近物の検知を乗員に報知できる。
【0072】
また、警報装置30は車両2のピラー部に設けてもよく、車両2のAピラーに警報装置30bを設けたり、車両2のBピラーに警報装置30cを設けることで車両2の乗員が車両2から降車するためのドア開閉操作を行う前に乗員へ接近物の検知を報知できる。
【0073】
なお、このような警報装置30a、30b、30cは組み合わせて設けてもよいし、別々に設けてもよい。さらに、車両2への接近物の検知はこのような警報装置30のLEDによる報知とあわせて、ナビゲーション装置50の表示部を用いた報知を行ってもよいし、音声出力部502を用いて音声による接近物検知の報知を行ってもよく、警告部30のLEDの色の変化に合わせてナビゲーション装置に表示内容や音声出力のパターンを変更してもよい。これにより、乗員に対して接近物検知の報知を詳細に、かつ、確実に行うことができる。
【0074】
また、警報装置30は音声のみの出力装置であってもよい。
【0075】
また、上記実施の形態では車両2のドアは開閉式のドアを例に述べたが、車両2のドアはスライド式のドアであってもよく、車両2への接近物検知を警報装置30により乗員に報知することでスライド式のドアを開けて乗員が降車した後に接近物との接触や衝突することを回避できる。
【符号の説明】
【0076】
1・・・・・接近物検知システム
2・・・・・車両
10・・・・撮影部
20・・・・接近物検知部
30・・・・警報装置
40・・・・レーダ装置
50・・・・ナビゲーション装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載され、前記車両に接近する接近物を検知する接近物検知装置であって、
前記車両には、前記車両の複数のドアのそれぞれに対応して、ユーザに警告を報知する警報装置が設けられ、
前記車両の停止状態で、前記車両に搭載されたカメラで得られた撮影画像に基づいて、前記車両に接近する接近物を検知する検知手段と、
前記撮影画像に基づいて、前記車両の複数のドアのうち前記接近物が接近している前記車両のドアを特定する特定手段と、
前記接近物を検知したことに応答して、前記特定手段に特定された前記ドアに対応する前記警報装置を作動させる装置作動手段と、
を備えることを特徴とする接近物検知装置。
【請求項2】
請求項1に記載の接近物検知装置において、
前記カメラは、前記車両の左右双方の側方に配置され、
前記特定手段は、前記接近物の像を含む画像を取得したカメラの左右位置に基づいて、前記接近物が接近している前記車両のドアを特定すること、
を特徴とする接近物検知装置。
【請求項3】
請求項2に記載の接近物検知装置において、
前記カメラは、自装置が配置される側の前記車両の側方領域における前方から後方までを撮影可能であり、
前記検知手段は、前記車両の前方および後方の少なくともいずれか一方から接近する物体を検知すること、
を特徴とする接近物検知装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の接近物検知装置において、
前記接近物の位置及び速度を取得する取得手段と、
前記接近物の位置及び速度に基づいて、危険度合を判定する判定手段と、
をさらに備え、
前記装置作動手段は、前記危険度合に応じて、前記警報装置を異なる態様で作動させること、
を特徴とする接近物検知装置。
【請求項5】
車両に搭載される接近物検知システムであって、
請求項1ないし4のいずれかに記載の接近物検知装置と、
前記車両の複数のドアのそれぞれに対応して、ユーザに警告を報知する警報装置と、
を備えることを特徴とする接近物検知システム。
【請求項6】
車両に搭載され、前記車両に接近する接近物を検知する接近物検知方法であって、
前記車両には、前記車両の複数のドアのそれぞれに対応して、ユーザに警告を報知する警報装置が設けられ、
前記車両の停止状態で、前記車両に搭載されたカメラで得られた撮影画像に基づいて、前記車両に接近する接近物を検知する検知工程と、
前記撮影画像に基づいて、前記車両の複数のドアのうち前記接近物が接近している前記車両のドアを特定する特定工程と、
前記接近物を検知したことに応答して、前記特定手段に特定された前記ドアに対応する前記警報装置を作動させる装置作動工程と、
を備えることを特徴とする接近物検知方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−111070(P2011−111070A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−270122(P2009−270122)
【出願日】平成21年11月27日(2009.11.27)
【出願人】(000237592)富士通テン株式会社 (3,383)
【Fターム(参考)】