説明

推進工法における障害物除去方法および掘進装置

【課題】 障害物の除去を確実かつ能率的に行い、本来の地盤掘削による掘進機の推進に悪影響を及ぼすことなく、推進施工全体を作業性良く実施し、障害物除去に関わる装置や設備が大掛りにならないようにする。
【解決手段】 掘進機10と埋設管20とを出発立坑から地盤E内に推進させる推進工法で、推進経路中に存在する障害物Bを除去する。掘進機10の先端の回転掘削盤30で地盤Eを掘削しながら掘進機10を推進させる工程(a)と、回転掘削盤30の中心が通過する位置に存在する障害物Bに対して、回転掘削盤30の中心線上で回転掘削盤30とは別個に回転する回転切断具40で、障害物Bの一部のみを切断する工程(b)と、工程(b)のあと、工程(a)と同時に行われ、障害物Bのうち回転破砕具40で切断された部分の外側を、回転掘削盤30を回転させて破砕する工程(c)とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、推進工法における障害物除去方法および掘進装置に関し、詳しくは、掘進機で地盤を掘削しながら掘進機に連結された埋設管を推進埋設する推進工法において、地盤に埋もれている障害物を推進工法の邪魔にならないように除去する方法と、このような方法に用いる掘進装置とを対象にしている。
【背景技術】
【0002】
推進工法において、掘進機の前面に装備されている回転掘削盤は、土砂や岩石に対しては問題なく掘削することができても、鋼材などの硬質の物体が埋もれたままになっていると、容易に破砕できないことがある。このような障害物に回転掘削盤が遭遇すると、掘進機の推進が困難になるだけでなく、回転掘削盤の掘削ビットが損傷したり、回転抵抗が過大になって、回転掘削盤あるいは掘進機が逆方向に回ってしまったりすることもある。
そこで、推進工法において、地盤内に存在する障害物を除去する技術が種々提案されている。
例えば、特許文献1には、推進工法ではないが、シールド工法に用いるトンネル掘削機の前面で回転駆動されるカッタヘッドに、ダイアモンドチップやウォータジェット装置を備えた障害物破砕カッタ装置を設けておく技術が示されている。カッタヘッドのみでは破砕できない地中杭などの障害物を、ダイアモンドチップやウォータジェット装置で破砕する。
【0003】
特許文献2には、トンネル掘削機において、地盤掘削用のカッタヘッドの中心近傍から、前方に突き出して延ばされたコアボーリング装置の先端側を揺動させて先端のコアカッタを障害物の位置まで届かせ破砕する技術が示されている。
【特許文献1】特開平11−50788号公報
【特許文献2】特開平10−25990号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記した従来技術では、掘進装置の構造が複雑になったり、障害物を除去する作業に手間や技術が必要とされたり、推進施工の作業性があまり良くないという問題がある。
例えば、特許文献1の技術では、カッタヘッドに取り付けられた障害物破砕カッタ装置を、カッタヘッドとともに回転駆動するため、カッタヘッドの重量が増大し、カッタヘッドを回転駆動する駆動モータを大容量にしなければならない。障害物破砕カッタ装置を駆動するモータへの電力ケーブルやウォータジェットの水配管などを、回転するカッタヘッドに連結しなければならず、配線や配管の継手構造に複雑な機構を必要とする。カッタヘッドの半径方向で複数個所に障害物破砕カッタ装置を備えていなければ、カッタヘッドの全面において障害物の破砕を行うことができない。
【0005】
特に、カッタヘッドの中心部分には障害物破砕カッタ装置が存在しないため、カッタヘッドの中心線上に障害物が存在すると、障害物を破砕できない。一般に、カッタヘッドの中心には、フィッシュテールと呼ばれる三角板状の部材が設けられている。このフィッシュテールは、地盤の土砂を押し退けて前進することはできるが、硬質の障害物を破砕することはできない。カッタヘッドの中心近くでは周速が極めて遅く、障害物を破砕するだけの破砕力が生じないのである。障害物にフィッシュテールが引っ掛かってしまうと、カッタヘッド全体の回転が困難になる。カッタヘッドの回転駆動力が、カッタヘッドでなく掘進機の本体側を逆方向に回転させてしまうような問題が生じてしまう。
【0006】
特許文献2の技術では、カッタヘッドから突き出した長い腕状のコアボーリング装置を、斜め方向に長く延ばした状態で、先端のコアカッタで障害物を破砕するので、破砕抵抗が、コアボーリング装置の根元側に大きなモーメント力を発生させる。腕状のコアボーリング装置が障害物を避けるように曲がったり、障害物の破砕が十分にできなかったりする。長い腕状のコアボーリング装置を、障害物が存在する位置に向けて揺動させる装置が必要であるが、障害物の破砕抵抗に耐えるほど強固なコアボーリング装置を、自由に揺動させるには、極めて強固でかつ複雑な揺動機構が必要である。装置が大掛りで複雑になり、掘進装置内のスペースを大きく占有してしまう。通常の掘削作業でカッタヘッドを回転駆動するときは、コアボーリング装置を取り外して掘進装置の奥に収容しておき、障害物を除去するときは、カッタヘッドの回転を止めて、コアボーリング装置を所定の位置に装着しなければならない。障害物が発見されるたびに、このような作業を繰り返すのは、非常に作業能率が悪く、推進施工全体の生産性を大きく損なう。
【0007】
特許文献2の技術では、カッタヘッドの中心にはフィッシュテール状の中心部カッタが固定され、中心から少しずれた位置にコアボーリング装置が配置されている。やはり、カッタヘッドの中心では障害物を破砕できない。予め、コアボーリング装置の先端を、カッタヘッドの中心線上に延ばして障害物を破砕しておかなければならない面倒がある。
本発明の課題は、前記した従来における障害物除去技術の問題点を解消し、障害物の除去を確実かつ能率的に行えるとともに、本来の地盤掘削による掘進機の推進に悪影響を及ぼすことなく、推進施工全体を作業性良く実施でき、しかも、障害物除去に関わる装置や設備が大掛りにならないようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明にかかる推進工法における障害物除去方法は、掘進機とその後方に連結された埋設管とを発進立坑から地盤内に推進させる推進工法において、推進経路中に存在する障害物を除去する方法であって、前記掘進機の先端に配置された回転掘削盤で前記地盤を掘削しながら掘進機を推進させる工程(a)と、前記回転掘削盤の中心が通過する位置に存在する前記障害物に対して、回転掘削盤の中心線上で回転掘削盤とは別個に回転する回転切断具により、障害物の一部のみを切断する工程(b)と、前工程(b)のあとで、前記工程(a)と同時に行われ、前記障害物のうち前記回転切断具で切断された部分の外側を、前記回転掘削盤を回転させて破砕する工程(c)とを含む。
【0009】
〔推進工法〕
推進工法の基本的な使用装置や作業手順は、通常の推進工法と共通する技術が採用できる。
推進工法の適用分野として、下水道、ガス配管、電気ケーブル配管、情報通信ケーブル配管などの様々な管材を地中に埋設する技術分野がある。
推進工法では、掘進機とその後方に連結された埋設管とを発進立坑から地盤内に推進させる。掘進機を到達立坑まで推進し、発進立坑から到達立坑までに埋設管を埋め込み敷設する。
【0010】
埋設管の用途や目的、埋設管を敷設する経路すなわち推進経路の経路条件、地盤条件などに合わせて、掘進機の構造および埋設管の種類、推進方法等が適切に設定される。推進経路は、直線であるほか、円弧状などの曲線の場合もある。直線と曲線とが混在する場合もある。
<埋設管>
埋設管は、前記した目的や用途によって適切な材質構造を備えたものが使用できる。例えば、鋼管、ヒューム管、コンクリート管、セラミック管、FRP管、合成樹脂管などがある。異なる材料を組み合わせた複合管も使用される。埋設管の寸法は、目的によって異なるが、通常、口径0.8〜5m、長さ1〜5mの範囲に設定される。
【0011】
埋設管の前後端には、埋設管同士を連結したり、埋設管を掘進機に連結したりするための継手構造や止水構造を備えている。
〔障害物〕
除去の対象となる障害物は、掘進機および埋設管が推進される推進経路中に存在し、掘進機および埋設管の推進に障害となる物体である。
障害物は、通常の地盤を構成する土砂や岩石とは異なり、鋼材などの金属材料やセラミック材料などからなり、通常の掘進機に備えた掘削手段では掘削除去することが困難な障害物である。具体的には、H形鋼、I形鋼などの形鋼材が含まれる。基礎工事用のシートパイルや矢板材で鋼板材などの硬質金属材を用いたもの、基礎杭、排水管などの管材、地下構造物を構成していた構造壁、鉄骨、鉄筋、補強材なども含まれる。
【0012】
障害物は、一部が地表に露出していたり、地下の浅い位置に埋まっている場合は、地表から地盤を掘り下げて障害物を掘り起こしたり除去したりしたほうが、簡単に除去できる場合がある。しかし、地中のかなり深い位置まで埋まっている場合や、地表からの障害物除去作業が困難な場合は、本発明による障害物の除去方法が有効である。
また、障害物が、掘進機の通過領域のうち、少なくとも一部が掘進機の中心線上に存在しているときに、本発明の方法が有用となる。掘進機の中心線上の周辺には障害物が全く存在しない場合は、本発明の方法を適用しなくてもよい。
〔掘進機〕
基本的な構造は、通常の推進工法に用いられる掘進機と共通する技術が適用できる。
【0013】
掘進機は、その後方に埋設管が連結され、全体が筒状の外殻構造を有する。鋼板や形鋼材を組み合わせたり溶接したりして、全体構造が構築される。掘進機の外径は、連結する埋設管の外径に合わせて設定される。
掘進機には、地盤を掘削しながら推進するために必要な各種の機構や装置が装備されている。先端には回転掘削盤を備えており、回転掘削盤の後方には、回転掘削盤で掘削された土砂を回収し後方に送り出す排土機構を備えておくことができる。掘削する地盤からの地下水圧を受ける圧力室や、掘削面に泥水を供給する泥水供給機構も備えることができる。掘進機を前後に分割構成して変向ジャッキで連結しておけば、掘進機の推進方向を変えることができる。掘進機には、掘進機の位置や姿勢を測量する測量装置を装備しておくこともできる。
【0014】
〔回転掘削盤〕
掘進機の先端に配置され地盤を掘削する機能を果たす。障害物の除去機能も兼ねる。
基本的には、通常の推進工法あるいは掘進機で採用されている技術が適用できる。回転掘削盤は、カッタヘッドと呼ばれることもある。
回転掘削盤は、通常、掘進機の前面を塞ぐ面板と、面板の前面に配置される掘削ビットとを備える。面板には、掘削ビットで掘削された土砂等を掘進機に取り込む土砂取り込み孔を設けることができる。回転掘削盤の背面側には、回転掘削盤を回転駆動する駆動モータ、駆動モータの回転を変減速する変減速機構などの関連構造を備えておく。
【0015】
掘削ビットの材質や構造、配置は、通常の回転掘削盤と同様に設定できる。掘削ビットとして、通常の地盤を構成する土砂を掘削するのに適した掘削ビットに加えて、障害物を破砕できる掘削ビットを配置しておくことが有効である。障害物を破砕できる掘削ビットとしては、超硬金属やセラミックなど、障害物を構成する材料よりも硬くて強靭な材料からなり、障害物の破砕に適した刃形状や構造を備えているものが使用される。
掘削ビット、特に、障害物を破砕する掘削ビットの配置構造として、回転掘削盤の中央側の掘削ビットが、外周側の掘削ビットよりも、回転掘削盤の前方に突き出した形態で配置しておくことができる。このように配置された掘削ビットで構成される掘削面は、中央が突き出した回転体面を構成する。中央側から外周側までの掘削ビットを結ぶ線が、滑らかなテーパ直線状をなしていてもよいし、複数段の段差状をなしていてもよいし、外側に膨らんだり内側に凹んだりした曲線状であってもよい。掘削ビットがテーパ直線状に配置されている場合、回転掘削盤が回転したときに掘削ビットの通過経路によって構成される掘削面は円錐状になる。
【0016】
掘進機に回転切断具を装備する場合、掘削ビットは、回転切断具の外周に隣接する位置まで配置しておく。
〔回転切断具〕
回転掘削盤の中心に、回転切断具を配置しておくことができる。回転切断具は、回転掘削盤とは別個に独立して回転できる。また、回転掘削盤から前方に進退自在であることが望ましい。回転切断具は掘進機に装備されていてもよいし、回転掘削盤および掘進機とは別個の独立した装置であってもよい。
回転切断具は、障害物の切断を目的とする。回転切断具の材料や構造として、各種の土木技術で、硬質の鋼材などに孔明け加工を行うために用いられているドリルや孔明け装置の技術が適用できる。コアカッタと呼ばれる筒状の回転切断具の技術も適用できる。土木用のボーリング装置の技術も採用できる。
【0017】
回転切断具の先端には、障害物を切断する切断部を備えている。切断部の材質や構造は、障害物を構成する材料が切断できれば良く、例えば、超硬金属やセラミックからなるビット、ダイアモンドカッタなどが採用できる。切断部の形状や構造は、通常のドリルやコアカッタにおける切断刃や破砕刃あるいは破砕ビットと共通する技術が採用できる。切断部に、ウォータジェットや圧力空気などを吹き付けて、切断を容易にしたり、切断部に付着する切断片や土砂を除去したり、切断片の回収を行い易くしたりすることができる。
回転切断具は、上記のような切断部を支持する筒状あるいは軸状の支持部材を、油圧モータなどの駆動モータで回転駆動することで、切断部による切断機能を発揮させる。回転切断具を、回転掘削盤の駆動モータからの動力で駆動することもできるが、その場合、回転切断具と回転掘削盤との適切な回転数は異なり、回転駆動の時期も異なる場合があるので、動力伝達の切換機構や変減速機構を介在させる必要がある。
【0018】
切断部の支持部材を、長さ方向に連結自在にしておけば、回転切断具の全長を変えることができる。回転切断具が掘進機に装備されている場合は、このような全長の変更はあまり必要とされないが、回転切断具を発進立坑に設置して、離れた位置の障害物まで切断部を到達させる場合には、支持部材の継ぎ足し連結によって延長できることが有用である。
掘進機の回転掘削盤の中心に回転切断具を備えておく場合、回転掘削盤に対して回転切断具を進退自在に配置しておく。回転切断具の進退は、手動操作でもよいが、油圧シリンダやラックピニオン機構などの各種進退機構を備えておくことが望ましい。
回転切断具の切断部およびその支持部材が筒状をなすものの場合、筒状の内部空間を、切断した障害物の切断片を取り込んで回収する通路に利用することができる。障害物の切断作業を行わないときは、筒状をなす回転切断具の先端に蓋を取り付けておけば、土砂や浸出水などが流入することが防げる。蓋の前面が尖った尖端蓋を用いれば、尖端形状が回転掘削盤の中心で掘削機能を高めるフィッシュテールの機能を果たすことができる。
【0019】
〔掘進機の推進と地盤の掘削〕
掘進機の先端に配置された回転掘削盤で地盤を掘削しながら掘進機を推進させる。
基本的には、通常の推進工法における掘進機の推進および地盤の掘削作業と同様に行われる。障害物が存在し除去する必要が生じない限り、通常の推進工法と違いはない。
回転掘削盤の中心に回転切断具が備えられている場合、回転切断具を回転掘削盤とともに回転させれば、回転掘削盤の中心でも地盤の掘削を行うことができる。この場合、回転切断具の回転は、障害物を切断する際の回転よりも遅くて構わない。回転掘削盤と回転切断具の回転を同期させ、協働して地盤の掘削を果たすこともできる。
【0020】
掘進機の推進は、通常の推進工法と同様に、発進立坑に設置された元押しジャッキ装置などで、掘進機および埋設管列の後端を前方に押し出す。埋設管列の後端には順次、新たな埋設管が連結されていく。掘進機が到達立坑に到達するまで、このような作業を繰り返すことになる。
〔障害物の除去方法〕
障害物の除去は、掘進機に備えた回転切断具で、掘進機の推進工程の途中で必要とされたときに実行する方法と、掘進機および埋設管の推進埋設を行う前に、別の工程として予め実行しておく方法とがある。
【0021】
〔障害物の切断:回転切断具〕
回転掘削盤の中心が通過する位置に存在する障害物に対して、回転掘削盤の中心が通過する位置で回転掘削盤とは別個に回転する回転切断具により、障害物の一部のみを切断する。
回転切断具が掘進機に装備されている場合、掘進機の回転掘削盤を回転させて地盤の掘削および掘進機の推進を行っている作業の途中で、前方の障害物に近づいた時点で、回転掘削盤の回転と掘進機の推進を止めて、回転掘削盤から前方に回転切断具を進出させ、回転切断具を回転させて障害物を切断すればよい。回転掘削盤を回転させて地盤を掘削し、掘進機も推進させながら、回転切断具で障害物を切断することもできる。
【0022】
回転切断具は、先端に備えた切断部の形状に対応する断面形状で障害物を切断する。障害物のうち、切断部よりも外側の部分は残ったままでよい。切断部の外径が障害物の幅よりも大きければ、障害物は分断される。障害物の幅が大きい場合は、障害物に切断部の外径に対応する孔があく。
障害物のうち、回転切断具で切断された部分は、切断径に対応する塊状、あるいは、細かな粒塊状や細片状になった切断片として、障害物から分離される。切断片は、地盤側に残っていれば、その後に行う回転掘削盤による障害物の破砕および地盤の掘削によって地盤の土砂とともに回収することができる。回転切断具が、筒状をなすものであれば、障害物の切断片を、筒状をなす回転切断具の内部空間に取り込んで回収することもできる。
【0023】
回転掘削盤では切断できない障害物を、回転切断具で効率的に切断し除去するためには、回転切断具の回転数を回転掘削盤の回転数よりも十分に大きく設定しておくことが望ましい。通常、70rpmまでの範囲に設定することができる。
回転切断具の切断部による切断径が大きいほど、障害物の広い範囲を切断し除去することができる。しかし、切断径が大きくなり過ぎると、大きな駆動力を必要とし、高速回転させることが難しくなる。前記した回転数の設定によっても異なるが、通常、切断径を10〜30cmに設定しておく。
〔障害物の破砕:回転掘削盤〕
回転切断具によって一部が切断された障害物に対して、さらに、回転掘削盤による破砕を行う。障害物のうち回転切断具で切断された部分の外側を破砕することになる。
【0024】
この工程は、前記した掘進機の推進および地盤の掘削と同じ工程で行うことができる。
回転掘削盤を回転させながら掘進機を推進させれば、回転する回転掘削盤が障害物と接触する。回転掘削盤の掘削ビットが、障害物のうち、回転切断具による切断部分の端縁に当接すると、そこから破砕が発生し進行することで、切断部分よりも外側の障害物が効率的に破砕されていく。回転掘削盤の掘削ビットだけでは破砕されないほど強固な障害物であったとしても、障害物の一部に切断部分が発生していると、切断部分の端縁は脆くなったり応力集中が発生し易くなったりしているので、回転掘削盤の掘削ビットでも容易に破砕することができる。
【0025】
回転掘削盤として、中心側が外周側よりも前方に突き出した掘削面を有するものを使用すれば、回転掘削盤の中心近くで、回転切断具による切断部分の内周端縁から障害物の破砕が始まり、そこから外周側へと順次破砕していくという前記した破砕作用が効果的に発揮される。
回転掘削盤の中心部分は、掘削ビットを設置し難く、掘削ビットを設置しても周速が遅くなり過ぎて弱い破砕力しか発生できないので、障害物を破砕することは難しい。しかし、回転切断具によって、回転掘削盤の中心周辺の障害物が既に破砕されていれば、回転掘削盤では破砕し難い中心部分では障害物を破砕する必要がない。回転掘削盤の掘削ビットでも、中心から離れた個所では、十分な周速を有しているので、障害物を破砕するのに十分な破砕力を発生することができる。
【0026】
障害物を破砕するときにおける回転掘削盤の回転数は、大きいほうが、中心に近い掘削ビットにも大きな周速を与えることができて障害物の破砕除去が行い易くなる。しかし、大径の回転掘削盤全体を高速で回転させることは難しい。また、回転掘削盤の外周部分における周速が過剰になり、地盤の掘削に悪影響が生じる。通常は、回転掘削盤による地盤の掘削時と同様の回転数に設定しておくか、少し大きな回転数に設定しておけばよい。具体的には、回転掘削盤の掘削外径は、埋設管の外径と同径から50cm大きい径の範囲に設定され、回転数を8.0rpmまでの範囲に設定することができる。
回転掘削盤は、障害物の破砕と同時に周辺の地盤を掘削する。障害物の切断片は地盤の土砂とともに、掘進機に取り込まれて回収され、最終的には廃棄されることになる。
【0027】
回転掘削盤で障害物を破砕するときは、掘進機に備えた回転切断具は、回転掘削盤側に退出させておけばよい。回転掘削盤による地盤の掘削および掘進機の推進を行うときにも、回転切断具は回転掘削盤側に退出させておくことができる。また、何れのときも、回転切断具が筒状の先端を有する場合は、先端に蓋をしておくことが望ましい。回転切断具が回転掘削盤から前方に長く進出したままであると、地盤側からの抵抗力で回転切断具を曲げたり傷付けたりする力が加わることがある。筒状の回転切断具の先端が開口したままでは、地盤の土砂や浸出水などが流入する問題が起こる。回転切断具の先端を塞ぐ蓋が、先の尖った尖端蓋であれば、回転掘削盤の中心部分でも、地盤を掘削する機能を発揮させることができる。
【0028】
〔推進施工前の障害物除去〕
掘進機に回転切断具を装備せず、掘進機の推進と地盤の掘削を行う通常の推進作業の前に、障害物の除去作業を行っておくことができる。
具体的には、回転切断具で障害物の一部のみを切断しておく工程(b)として、発進立坑から障害物に至る地盤内に回転掘削盤の中心が通過する経路に沿って回転切断具を進出させて障害物の一部のみを切断する工程(b−1)と、前工程(b−1)のあとで、回転切断具を発進立坑まで退出させて撤去する工程(b−2)と、回転切断具が退出した地盤内の空間を充填物で埋め戻す工程(b−3)とを含む方法が採用できる。
【0029】
回転切断具に関連する装置設備は、発進立坑に設置される。具体的には、回転切断具を備えた通常のコアカッタ装置やボーリング装置、孔明け装置などの本体部分を発進立坑に設置する。そして、回転切断具の切断部とその支持部材を、地盤内に進出させて障害物の位置まで到達させ、切断部の形状に対応する形状で障害物を破砕する。障害物の存在は、予め地中レーダなどで検知しておく。回転切断具を地盤内に進出させる距離も求めておく。回転切断具を進出させる距離に応じて、切断部を支持する支持部材を継ぎ足して全長を延ばせばよい。回転切断具の進出方向は、掘進機の推進経路の中心線上に一致させておく。回転切断具を、掘進機の推進経路の中心線上に進出させて、障害物に当たって抵抗が増大したときに、障害物を検知することでもよい。回転切断具の先端に、金属探知器や地中レーダを装備して、障害物を検知することもできる。
【0030】
目的とする障害物の切断および除去が完了すれば、回転切断具は発進立坑まで退出させて撤去すればよい。回転切断具を退出させたあとの地盤には、発進立坑から障害物の位置まで、回転切断具の外径に対応する空間が残る。この空間は、地盤からの浸出水が漏れ出したりすることがあるので、充填物で埋め戻しておくことが望ましい。
充填物としては、地盤と同様の土砂が使用できる。粘土のように形状維持性や止水性のある粘性物質が使用できる。モルタルのような硬化性材料も使用できる。但し、充填物としては、充填後に、回転掘削盤によって地盤とともに掘削できる掘削性を備えている必要がある。
【0031】
充填物による埋め戻しを行っておけば、その後は、通常の掘進機による推進作業を行えばよい。発進立坑から地盤へと掘進機を推進させ、掘進機の回転掘削盤で地盤を掘削しながら、掘進機とその後方に連結された埋設管を地盤に推進させる。
回転掘削盤で地盤を掘削する際には、地盤とともに充填物も掘削される。掘削された充填物は土砂とともに掘進機に取り込まれて回収される。
掘進機の推進作業が進行して、回転掘削盤が障害物の位置に到達すると、回転掘削盤の中心が、障害物のうち回転切断具で切断された部分の中心に配置される。この状態で、前記したように、回転掘削盤の回転によって、障害物の切断部分から外側へと破砕が行われる。障害物は、回転掘削盤の外径に対応する領域が破砕除去され、掘進機および埋設管列が障害物を容易に通過させることができる。
【0032】
以上に説明した方法では、回転切断具による障害物の一部の除去作業と、掘進機の推進および地盤の掘削作業とが、全く別個の作業工程で行われる。掘進機の推進および地盤の掘削作業は、障害物に関係なく、通常の推進工法と同様に行うことができる。
【発明の効果】
【0033】
本発明にかかる推進工法における障害物除去方法は、推進経路中に存在する障害物の除去を、回転切断具によって障害物の一部のみを切断する工程と、そのあとで、障害物の破砕された部分から外側の部分を、回転掘削盤によって破砕する工程とを組み合わせることによって、回転掘削盤では除去することが困難な障害物でも容易に除去することができる。
特に、回転切断具で、障害物のうち、回転掘削盤の中心が通過する部分の障害物を切断し除去しておくことができるので、回転掘削盤では破砕が難しい中心部分の障害物を破砕しなくてよくなる。中心から離れた部分であれば、回転掘削盤の掘削ビットでも障害物を破砕し易い。
【0034】
回転切断具は、全ての障害物を破砕するのに使用するのではなく、前記した回転掘削盤の中心に対応する特定個所の切断だけを行えばよい。回転切断具による障害物の切断除去作業は短時間で済む。回転切断具に関連する装置や構造も、予め決まった特定個所だけで同じ条件で作動させればよいので、装置構造が簡略化でき、掘進機内のスペースを大きく占有することもない。
その結果、障害物の切断および除去を行ったとしても、通常の推進工法に比べて、特別に複雑な装置や作業工程などを付け加えることなく、作業性良く効率的かつ経済的に推進工法を実施することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
図1〜4に示す実施形態は、障害物除去手段を内蔵する掘進機を用いる。
〔掘進機の構造〕
図1、2に示すように、掘進機10の基本的な構造は、通常の推進工法用の掘進機と共通している。全体が鋼板材などで構築された筒体状をなし、後端には、ヒューム管などの埋設管が連結される。
<回転掘削盤>
掘進機10の先端には、地盤Eを掘削する回転掘削盤30を備える。回転掘削盤30は、鋼板材などからなり、円盤状をなしている。掘進機10に設置され油圧などで駆動される駆動モータ36によって回転駆動される。図1では、掘進機10の中心軸よりも外周側で周方向の複数個所に配置された複数台の駆動モータ36から、遊星歯車減速装置などを介して、回転掘削盤30の中心に存在する中空状の回転軸に回転動力が伝達され、回転掘削盤30の前面に配置され、回転軸に支持された面板32が回転駆動される。
【0036】
図2に示すように、面板32の前面には多数の掘削ビット34、35が配置されている。掘削ビット34、35は、超硬金属やセラミックなどからなり、面板32とともに周方向に回転移動して、地盤を削り取る。
掘削ビット34は、面板32の中心側から外周側へと放射方向に沿って列状に配置されているとともに、図1に示すように、中心側の掘削ビット34が、外周側の掘削ビット34よりも、掘進機10の前方側に突き出して配置されている。中心側から外周側に放射方向につづく1列の掘削ビット34は、それぞれの先端位置が、中心側ほど前方に突き出したテーパ直線状をなしている。回転掘削盤30を回転させたときに、掘削ビット34の先端位置で構成される掘削面が、外周側よりも中心側が突き出した円錐面を構成することになる。掘削ビット34の材質や構造は、地盤Eの掘削が可能なだけではなく、鋼材などからなる障害物Bを破砕できる程度に硬質で強度も高く設定されている。
【0037】
掘削ビット34のほかに面板32の前面に配置されている掘削ビット35は、面板32の前方に大きく突き出すことなく、面板32の表面上に配置されている。掘削ビット35は、通常の掘進機10あるいは回転掘削盤30における掘削ビットと同様の構造および材質、機能を備えていればよい。掘削ビット35は、障害物Bを破砕する機能を備えている必要はない。掘削ビット35は、掘削ビット34の配置列の中間に放射方向に列状に配置されていたり、面板32の外周縁に沿って配置されていたりする。
面板32には、掘削ビット35に隣接する個所に、掘削された土砂を取り込む土砂取り込み孔37を有する。土砂取り込み孔37から面板32の背面側に取り込まれた土砂は、掘進機10の内部に設けられた土砂排出管(図示を省略)で、掘進機10から埋設管20を経て発進立坑あるいは地上へと排出される。
【0038】
回転掘削盤30の中心には貫通空間が設けられ、回転切断具40に備えた筒状の切断管42が配置される。したがって、回転掘削盤30の面板32は、中心部分を中空状の回転軸で支持され、駆動モータ36の回転駆動力が中空状の回転軸を介して面板32を回転駆動する。回転切断具40は、回転掘削盤30とは別個に運動する部材である。
<回転切断具>
回転切断具40は、掘進機10および回転掘削盤30の中心線に沿って配置されている。
回転切断具40は、筒状をなす切断管42を有する。切断管42は、剛性のある鋼管などで構成されており、掘進機10の後方部分に配置された駆動モータ46によって回転駆動される。また、切断管42および駆動モータ46は、掘進機10に設置された進退駆動シリンダ50の作動軸に支持されていて、進退駆動シリンダ50の作動によって、軸方向に進退する。
【0039】
切断管42の先端側は、回転掘削盤30の中心に設けられた貫通空間を通って、回転掘削盤30の先端に配置されている。回転掘削盤30のうち、最も前方に突き出した中央の掘削ビット34の先端付近に配置される。
切断管42の先端には、周方向に沿って多数の切断刃44が設けられ、円周状の切断部を構成している。切断刃44は、超硬質セラミックやダイアモンド刃など、硬質の障害物Bでも切断したり破砕したりできる材質および構造を備えている。
切断管42の先端開口は、着脱自在な尖端蓋48で塞がれている。尖端蓋48は、鋼材などからなり、切断管42の内周に嵌合される。尖端蓋48の先端部分は、前記した掘削ビット35と同様の硬質材料からなり、三角板状に尖っている。
【0040】
〔地盤の掘削推進〕
図1に示すように、掘進機10および埋設管20は、地盤Eを推進させられる。図示を省略したが、掘進機10は、地表から地盤Eに掘削された発進立坑の内側壁から地盤Eへと推進される。発進立坑には元押しジャッキ装置など、掘進機10に推力を加える装置が設置されている。掘進機10の推進に伴って、掘進機10の後方に順次、埋設管20が連結されていく。このような推進施工は、通常の推進工法と変わりがない。
掘進機10の回転掘削盤30には、中心側から外周側に向かってテーパ状に掘削ビット34が配置され、円錐状の掘削面を構成しているので、地盤Eの掘削も円錐状の掘削面が前進するようにして行われる。平板状の掘削面を有する回転掘削盤で掘削するよりも、地盤Eからの抵抗を受け難く、効率的に地盤Eの掘削が行われる。
【0041】
このとき、回転切断具40も、回転掘削盤30とともに回転させる。回転切断具40の回転は、障害物Bの切断を行うときよりも遅くて構わない。回転掘削盤30の回転と同じ程度でも構わない。回転切断具40の先端に配置された尖端蓋48が、地盤Eを切り裂くようにして押し進む作用を果たし、掘進機10の前進を容易にする。
〔障害物の存在〕
図1において、掘進機10の推進経路の前方に、H形鋼材からなる障害物Bが埋まっている。このような障害物Bは、過去に施工された建築物や土木構造物の地下杭などが残留したままになったものなどである。障害物BであるH形鋼材は、長さ方向が掘進機10の推進方向と直交するように配置され、H形の中央辺が、掘進機10の推進方向に向かって配置された状態である。そのため、掘進機10の回転掘削盤30に備えた掘削ビット34、35では障害物Bを切断したり破砕したりすることは困難である。しかも、図2に示すように、障害物Bは、掘進機10すなわち回転掘削盤30の前面で中心を横切るように存在しているので、回転掘削盤30の中央部分が障害物Bに当たっても、実質的に回転していないか周速の遅い中心部分では、障害物Bを削り取ったり破砕したりすることができない。
【0042】
なお、障害物Bの正確な位置や姿勢は、地表あるいは掘進機10に備えた地中レーダや磁気探査機などを使って、予め調査しておくことが望ましい。
その結果、障害物Bが、掘進機10の推進経路のうち、回転掘削盤30の中心の延長上あるいは極めて近い位置に存在することが判明した場合は、回転切断具40による障害物Bの除去を行う。障害物Bが、回転掘削盤30の中心延長線上から離れた位置に存在する場合は、回転切断具40を使用せずに、回転掘削盤30だけで障害物Bを除去することもできる。
〔回転切断具による障害物除去〕
図3(a)に示すように、掘進機10の推進を一時停止させ、回転掘削盤30の回転駆動も一時停止させる。回転切断具40では、尖端蓋48を切断管42の内部を通じて掘進機10の内部側に取り外しておく。
【0043】
この状態で、駆動モータ46を回転駆動し、切断管42および切断管42の先端の切断刃44を高速で回転させる。さらに、進退駆動シリンダ50を作動させて、切断管42の先端側を、回転掘削盤30の先端よりも前方に進出させる。
回転切断具40が前方に進出し、切断管42の先端の切断刃44が障害物Bに当接し、切断刃44が回転しながら障害物Bを切断し破砕していく。図3(b)に示すように、円周状に配置された切断刃44は、障害物Bを円筒状に削り取って破砕する。障害物Bには、切断刃44の外径に対応する切断孔hが形成される。障害物Bの幅が切断刃44の外径よりも狭いので、障害物Bは上下に分断され、切断孔hは完全な円形ではなく、左右が解放された空間になる。また、筒状をなす切断刃44の内部空間には、障害物Bから分離された切断片bが残る。
【0044】
図3(a)に示すように、切断片bは、切断管42の内部に取り込まれ、切断管42の後端の開口から取り出されて回収され廃棄される。
障害物Bの破砕が終了したあと、回転切断具40の回転を停止させ、進退駆動シリンダ50を作動させて、回転切断具40を退出させる。
なお、上記説明からも判るように、回転切断具40は、回転掘削盤30の中心あるいは掘進機10の推進経路の中心線上に障害物Bが存在する場合に有用であって、中心から離れた外周側のみを横切るように存在する障害物Bについては、回転切断具40による破砕除去は行わない。
【0045】
〔回転掘削盤による障害物除去〕
図4(a)に示すように、回転切断具40の作業が終わった段階で、回転切断具40の先端に再び尖端蓋48を取り付けておく。
回転掘削盤30を回転駆動するとともに、掘進機10および埋設管20を推進させる。このとき、回転切断具40も、回転掘削盤30とともに回転させる。但し、回転切断具40の回転は、障害物Bの切断を行ったときよりも遅くても構わない。回転掘削盤30の回転と同じ程度でも構わない。
掘進機10が前進すると、回転掘削盤30の掘削ビット34が、障害物Bに当接する。このとき、掘削ビット34で構成される円錐状の掘削面は、円錐の頂点に近い中央部分が、障害物Bのうち、回転切断具40で切断されて出来た切断孔hの内周縁に当たる。障害物Bのうち切断孔hの内周縁は、薄い板状をなし、比較的に脆くて欠け易いので、掘削ビット34が当接することで削り取られるように破砕される。回転切断具40による切断孔hの内周縁から次々に外側へと破砕が進行していく。掘進機10が前進するのに合わせて、障害物Bの破砕は徐々に手前側から奥のほうへと進行する。
【0046】
掘削ビット34によって破砕された障害物Bの破砕物は、細かく破砕されているので、周囲の地盤Eを構成する土砂とともに、回転掘削盤30の面板32に有する土砂取り込み孔37から掘進機10の内部へと回収されて廃棄される。
最終的には、図4(b)に示すように、障害物Bが、回転掘削盤30の外径に相当する広い領域で破砕されることになる。図2に示すように、回転掘削盤30の面板32には、回転掘削盤30の外周径よりも少し外側に張り出すように掘削ビット34が配置されており、障害物Bは、回転掘削盤30の外径よりも少し大きな内周径で破砕される。その結果、障害物Bの切断部分を、掘進機10および埋設管20が容易に通過できる。
【0047】
掘進機10の回転掘削盤30が、障害物Bの位置を通過したあとは、前記した通常の地盤Eにおける推進施工と同様にして、回転掘削盤30による地盤Eの掘削と掘進機10および埋設管20の推進が行われる。
図示を省略したが、予め施工されている到達立坑まで掘進機10が到達すれば、推進施工は完了する。その後、掘進機10の撤去や、埋設管20列の内部あるいは端部の仕上げ施工など、通常の推進施工と同様の各種作業を行うことができる。
〔別工程による障害物除去〕
図5、6に示す実施形態は、回転切断具40を掘進機10に備えておかず、障害物Bの破砕を、推進施工とは別個の作業工程で実施する。基本的な装置の構造や作業手順などについては、前記実施形態と共通する点が多いので、共通点については説明を省略し、相違点を主に説明する。
【0048】
<回転切断具による障害物除去>
図5に示すように、地表から地盤Eに垂直に掘り下げられた発進立坑Hに、回転切断具40を設置しておく。この段階では、掘進機10による推進施工は始まっていない。
回転切断具40が、切断管42と、切断管42の先端に円周状に配置された切断刃44を有し、駆動モータ46で回転駆動される点は、前記実施形態と同じである。
但し、切断管42は、一定の長さを有する管材を、長さ方向に順次連結することによって、全長を延ばすことができるようになっている。駆動モータ46は、発進立坑Hの内部で、切断管42の後端に接続される。切断管42を延長する際は、切断管42の後端に新たな管材を継ぎ足し、その後端に駆動モータ46を連結し直すことになる。
【0049】
駆動モータ46は支持台45に設置され、支持台45は、発進立坑Hに設置された支持レール47に支持されている。支持台45および駆動モータ46は、支持レール47の上を前進後退する。駆動モータ46を後退させた状態で、切断管42と駆動モータ46との間に新たな管材を継ぎ足すことができる。駆動モータ46を前進させれば、切断管42を回転しながら前進させることができる。
発進立坑Hの内側壁から、先端に切断刃44を備えた切断管42を地盤Eへと進出させる。回転駆動される切断刃44で地盤Eを筒状に切り開いて切断管42を前進させる。円周状に配置された切断刃44の内側に存在する地盤Eの土砂は、切断管42の内部空間に取り込まれる。切断管42の内部に取り込まれた土砂は、発進立坑Hで切断管42の開口端部から取り出して廃棄することができる。
【0050】
切断管42および切断刃44が前進して、障害物Bの位置に到達する。切断刃44が障害物Bに当接して、障害物Bを切断する。前記図3(b)と同様に、切断刃44の円周形状に対応して障害物Bが切り抜かれ、概略円形の切断孔hが形成される。
切断刃44と切断管42が障害物Bを貫通すれば、切断管42の前進を止めて、切断管42および切断刃44を発進立坑Hに引き戻す。具体的には、切断管42の延長時とは逆に、切断管42の後端から順次、継ぎ足していた管材を取り外していく。管材が取り外される毎に、切断管42を接続した駆動モータ46を支持レール47の後方に退出させたり前方に戻したりすれば、切断管42を回転させながら地盤Eから引き抜くことができる。
【0051】
全ての切断管42および切断刃44を撤去し、駆動モータ46、支持台45および支持レール47も発進立坑Hから撤去する。
その後、図6に示すように、地盤Eに残された、切断管42の外径に相当する細長い空洞に、モルタルや土砂などからなる充填物70を充填して埋め戻しておく。これは、地盤Eから地下水などが漏れ出すのを防止するのに有効である。
<掘進機による推進施工>
次に、図6に示すように、掘進機10による推進施工を行う。
ここで使用する掘進機10は、内部に回転切断具40を搭載していない。回転掘削盤30は、前記実施形態と同様に、面板32に掘削ビット34、35が配置されている。掘削ビット34は、中心側から外周側へとテーパ−状に配置されており、その掘削面は中央が突き出した円錐状を構成する。回転掘削盤30の正面形状は、前記実施形態の図2と基本的に同じであるが、中心に回転切断具40および回転切断具40を配置するための空間は存在しない。その代わり、回転掘削盤30の中心には、三角板状の突起物、いわゆるフィッシュテールと呼ばれる構造が設けられている。
【0052】
掘進機10の推進施工は、発進立坑Hに設置された元押しジャッキ装置60で、掘進機10の後端に推進力を加え、掘進機10の回転掘削盤30を回転駆動させて、地盤Eを掘削しながら、掘進機10を地盤Eに推進させる。前記実施形態と同様に、回転掘削盤30にテーパ状に配置された掘削ビット34が、地盤Eを効率的に掘削するので、掘進機10の推進は滑らかかつ速やかに進行する。回転掘削盤30で地盤Eを掘削する際に、回転掘削盤30の中心近くでは、充填物70を周囲の地盤Eとともに掘削する。充填物70はそれほど硬質の物体ではないから、容易に掘削される。
掘進機10が一定の距離を推進されたあと、掘進機10の後端に新たな埋設管20を連結し、再び埋設管20列の後端に元押しジャッキ装置60で推進力を加えることは、通常の推進工法と同様である。
【0053】
掘進機10が、障害物Bの位置に到達すると、障害物Bに貫通形成された切断孔hの内周縁に、回転掘削盤30の中央部分の掘削ビット34が当接する。前記実施形態と同様に、障害物Bは、切断孔hの内周縁から外周側へと手前側から奥側へと徐々に破砕される。最終的には、回転掘削盤30の外径に対応する範囲の障害物Bが破砕されることになる。勿論、障害物Bの破砕と同時に周辺の地盤Eも掘削されて、掘進機10の推進を容易にすることになる。掘進機10は、障害物Bを通過したあとも、回転掘削盤30で地盤Eを掘削しながら、埋設管20とともに推進されていく。
したがって、通常の推進工法と全く同様にして、回転掘削盤30による地盤Eの掘削と掘進機10の推進とを行うだけで、途中に存在する障害物Bを容易に破砕し除去して、推進施工を継続することが可能である。
【0054】
この実施形態では、掘進機10に回転切断具40を搭載しないので、掘進機10の構造が簡単になる。既製の掘進機をそのまま用いることもできる。但し、回転切断具40で障害物Bに小さな切断孔hを形成する作業工程を、予め実施しておく必要があるので、作業工程を2段階で行わなければならない。推進工法の施工条件などによって、この実施形態の方法と前記実施形態の方法とのうち、適切な方法を採用すればよい。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明の推進工法における障害物除去方法は、例えば、市街地の地下や河川の地下を横断する個所など、地中に既設の土木建造物の残留物や地下構造物が埋まったままになっていることが多い施工環境に利用される。掘進機や障害物の除去に関わる装置の構造として大掛りで複雑な装置を用いなくても、簡単かつ能率的に障害物の除去作業および推進作業を実行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の実施形態を表し、地盤の掘削推進工程における断面図
【図2】掘進機の回転掘削盤の正面図
【図3】回転切断具による障害物除去作業の断面図(a)および要部正面図(b)
【図4】回転掘削盤による障害物除去作業の断面図(a)および要部正面図(b)
【図5】別の実施形態を表し、回転切断具による障害物除去作業の断面図
【図6】別の実施形態における、回転掘削盤による障害物除去作業の断面図
【符号の説明】
【0057】
10 掘進機
20 埋設管
30 回転掘削盤
32 面板
34、35 掘削ビット
36 回転掘削盤の駆動モータ
40 回転切断具
42 切断管
44 切断刃
46 回転切断具の駆動モータ
48 尖端蓋
50 進退駆動シリンダ
B 障害物
b 切断片
h 切断孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
掘進機とその後方に連結された埋設管とを発進立坑から地盤内に推進させる推進工法において、推進経路中に存在する障害物を除去する方法であって、
前記掘進機の先端に配置された回転掘削盤で前記地盤を掘削しながら掘進機を推進させる工程(a)と、
前記回転掘削盤の中心が通過する位置に存在する前記障害物に対して、回転掘削盤の中心線上で回転掘削盤とは別個に回転する回転切断具により障害物の一部のみを切断する工程(b)と、
前工程(b)のあとで、前記工程(a)と同時に行われ、前記障害物のうち前記回転切断具で切断された部分の外側を、前記回転掘削盤を回転させて破砕する工程(c)と、
を含む推進工法における障害物除去方法。
【請求項2】
前記工程(b)において、前記回転切断具を前記回転掘削盤の中心から前方に進退自在に備える前記掘進機を用い、回転切断具を回転掘削盤の前方に進出させて前記障害物の一部のみを切断し、
前記工程(c)において、前記回転切断具を前記回転掘削盤側に退出させておく、
請求項1に記載の推進工法における障害物除去方法。
【請求項3】
前記工程(b)において、前記回転切断具として、筒状をなし、先端に周状の切断部を備えた筒状回転切断具を用い、前記障害物の一部のみを切断したあと、障害物の切断片を周状回転切断具の内部に取り込んで回収し、
前記工程(c)において、前記筒状回転切断具の先端開口に蓋をしておく、
請求項2に記載の推進工法における障害物除去方法。
【請求項4】
前記工程(b)が、前記工程(a)の前に行われ、前記発進立坑から前記障害物に至る前記地盤内に前記回転掘削盤の中心が通過する経路に沿って前記回転切断具を進出させて前記障害物の一部のみを切断する工程(b−1)と、前工程(b−1)のあとで、回転切断具を発進立坑まで退出させて撤去する工程(b−2)と、回転切断具が退出した地盤内の空間を充填物で埋め戻す工程(b−3)とを含み、
前記工程(a)において、前記回転掘削盤で前記地盤とともに前記充填物を掘削する、
請求項1に記載の推進工法における障害物除去方法。
【請求項5】
前記工程(c)において、前記回転掘削盤として、中心側が外周側よりも前方に突き出した円錐状の掘削面を有する回転掘削盤を用い、前記障害物を中心側から外周側へと順次破砕していく
請求項1〜4の何れかに記載の推進工法における障害物除去方法。
【請求項6】
掘進機とその後方に連結された埋設管とを発進立坑から地盤内に推進させる推進工法において、推進経路中に存在する障害物を除去する方法に用いられる掘進機であって、
その後方に前記埋設管が連結され筒状をなす前記掘進機と、
前記掘進機の先端に配置され前記地盤を掘削する回転掘削盤と、
前記回転掘削盤の中心線上に配置され、回転掘削盤とは別個に回転し、回転掘削盤から前方に進退自在な回転切断具と、
を備える推進工法用の掘進装置。
【請求項7】
前記回転掘削盤が、前記回転切断具に隣接する中心側が外周側よりも前方に突き出した円錐状の掘削面を有する、
請求項6に記載の推進工法用の掘進装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−31961(P2007−31961A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−212851(P2005−212851)
【出願日】平成17年7月22日(2005.7.22)
【出願人】(000002299)清水建設株式会社 (2,433)
【出願人】(000158769)機動建設工業株式会社 (41)
【Fターム(参考)】