説明

掻き落とし部材、及びシート排出装置

【課題】羽根部材の先端部が搬送中のシートの裏面に当接して引きずられて変形してこの変形が解消される際に発生する異常音の発生を防止する。
【解決手段】搬送ローラ34と搬送コロ52との間のニップNによってシートPを矢印方向に挟持搬送する。このシートPの搬送によって掻き落とし部材51の羽根部材56が矢印方向に回転する。羽根部材56における回転方向下流側を切除して第1の傾斜面56aを形成し、羽根部材56の先端部がシート搬送面Sに到達したときに、この第1の傾斜面56aがシート搬送面Sと一致するようにする。これにより、第1の傾斜面56aの一部が、たとえ、シートPに引きずられても、直ちに、第1の傾斜面56aの他の部分がシートPに当接して、シートPから倒伏を促進する方向の反力を受けることになる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積載トレイ上に既に排出されたシートの後端を押さえ込みつつ、前記積載トレイに排出されるシート後端を下方に掻き落とす掻き落とし部材、及びこれを備えたシート排出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
積載トレイ上に排出されたシートを上方から押さえながら搬送する部材として後端はたき部材が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
この後端はたき部材は、V字形の可撓性を有する部材によって構成されており、駆動手段によって駆動回転される。駆動回転された後端はたき部材は、その先端側を、積載トレイ上に排出されたシートの上面に当接させて弾性変形した状態でシートを搬送する。つまり、シートを上方から押さえ付けながら搬送することができるので、例えば、シートの先端や後端にカールがあった場合であってもシートを良好に搬送することができる。
【0004】
ところが、この特許文献1によると、後端はたき部材を回転させるために駆動手段が必要であるため、構成が複雑になり、また駆動手段の動作音が発生するという問題があった。また、後端はたき部材は、積載トレイの上方に比較的大きなスペースをとって配設されているため、例えば、積載トレイ近傍でジャム(紙詰まり)が発生した場合に、積載トレイ上からシートを取り出す際に邪魔になるという問題もあった。
【0005】
以上のような問題を解消するための方策の1つとして、排出されるシートによって従動回転される掻き落とし部材が提案されている。
【0006】
図8に、掻き落とし部材の一例を模式的に示す。排出ローラ(駆動ローラ)100と排出コロ(従動ころ)101との間にはニップNが構成され、このニップNの近傍には、上ガイド103と下ガイド104とが配設されている。シートPは、上ガイド103と下ガイド104の間のシート搬送面S(ニップNの接線とほぼ一致する)に沿って搬送されることになる。また、複数の羽根部材106を有する掻き落とし部材105が排出コロ101と同軸に配設されている。羽根部材106は、変形容易な板状の弾性部材によって構成されていて、その先端側を排出コロ101の外周面よりも外側に突出させた起立姿勢で配設されている。
【0007】
排出ローラ100を矢印方向(時計回り)に駆動回転させると、排出コロ101が矢印回転(反時計回り)に従動回転され、ニップNによりシートPを矢印方向に挟持搬送することができる。この際、搬送されるシートPによって羽根部材106が回転される。羽根部材106は、ニップNの上流側においてはシートPの裏面に当接することで湾曲して倒伏する。一方、羽根部材106は、シートPの後端がニップNを抜けると起立姿勢に復帰し、シートPの後端を下方に掻き落とす。さらに、羽根部材106は、積載トレイ107上に排出されたシートPの後端を押さえ付けることもできる。
【0008】
このような掻き落とし部材105によると、駆動手段が不要なため、構成が簡単で駆動手段の動作音の発生もない。また、占有スペースが小さくて済み、積載トレイ107上からシートPを取り出す際にも邪魔にならことがない。
【0009】
【特許文献1】特開平11−322162号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上述の掻き落とし部材105は、以下で説明するように、羽根部材106の形状によっては倒伏が円滑に行わない場合があり、この場合には、異常音が発生するという問題あった。この点について図9〜図11を参照して説明する。
【0011】
図9(掻き落とし部材105全体の拡大図)に示すように、排出コロ101の半径をr、掻き落とし部材105の中心Oから羽根部材106の先端までの距離をar(ただし、aは、1<aの整数)、排出ローラ100の周速度をvとする。すると、排出コロ101の周速度、及びシートPの搬送速度も同じくvとなる。このとき、羽根部材106の先端部における厚さ(T)方向の中心A(羽根部材106の中心線Cと先端縁とが交差する点)は、周速度がavとなる。ここで、1つの羽根部材106の中心Aがシート搬送面Sと一致した場合を考える。中心Aの速度avの、シートPの搬送方向に沿った搬送方向成分は、av×cosθとなる。ここで、θは、シート搬送面Sと1つの中心線Cとがなす角度が(π/2−θ)となるような角度である。したがって、cosθ=sin(π/2−θ)=r/ar=1/aとなる。したがって、上述のシート搬送面Sと一致した際の中心Aの搬送方向成分は、av×cosθ=av×1/a=vとなる。
【0012】
つまり、中心Aがシート搬送面Sと一致したときには、搬送方向成分がvとなる。これに対し、中心Aが上ガイド103とシート搬送面Sとの間の領域R1にある場合には、θがこれよりも小さくなるため、搬送方向成分は、vよりも大きくなる。これとは逆に、中心Aがシート搬送面Sと下ガイド104との間の領域R2にある場合には、θが大きくなるため、搬送方向成分は、vよりも小さくなる。
【0013】
ここで、羽根部材106の先端部の形状が問題になる。一般的な四角形状、円弧状の場合を考える。また、シートPは、平面状を維持してシート搬送面Sに沿って搬送されるのが理想的ではあるが、実際には波打った状態で搬送される。ただし、シートPの搬送速度については、理想的な状態でも、波打った状態でも同じvであるものと考える。
【0014】
図10(a),図11(a)に示すように、中心Aが領域R2にある状態で、羽根部材106の接触点BがシートPの裏面に当接すると、シートPが理想的な平面状である場合も、また波打っている場合も、接触点Bの搬送速度成分は、シートPの搬送速度vよりも小さいので、接触点は、シートPとの間の摩擦によって矢印方向(同図中の左向き)に付勢され、二点鎖線で示すように、倒伏方向とは逆の方向に変形する。その後、羽根部材106は、図10(b),図11(b)に示すように、自身の弾性力によって実線で示す変形状態から、二点鎖線で示す状態に復帰する。このとき、倒伏が円滑に行われれば発生することのない異常音が発生することになる。
【0015】
そこで、本発明は、羽根部材の倒伏が円滑に行われないことに起因する異常音の発生を防止するようにした掻き落とし部材、及びこれを備えたシート排出装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
請求項1に係る発明は、上流側からシート搬送面に沿って搬送されてきたシートを上回転体との間で挟持搬送して排出する下回転体と同軸に配設されて、排出されるシートによって従動回転される掻き落とし部材に関する。この発明に係る掻き落とし部材は、周方向をほぼ等分する位置において先端側を前記下回転体よりも外側に突出するよう配設され、前記掻き落とし部材の従動回転によって排出中のシートの裏面に先端部を当接させて倒伏し、排出後のシートの後端を起立姿勢で掻き落とす複数の可撓性の羽根部材を備え、前記羽根部材の先端部における回転方向に沿った方向の寸法を厚さとしたときに、前記先端部における厚さ方向に沿っての、前記回転方向下流側に位置する部分に、前記先端部が前記シート搬送面に到達したときに、前記シート搬送面とほぼ一致する第1の傾斜面が形成されている、ことを特徴としている。
【0017】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る掻き落とし部材において、前記第1の傾斜面が、前記先端部における厚さ方向の中心を通る、ことを特徴とする。
【0018】
請求項3に係る発明は、請求項1に係る掻き落とし部材において、前記第1の傾斜面が、前記先端部における厚さ方向の中心よりも、回転方向上流側に位置する部分を通る、ことを特徴としている。
【0019】
請求項4に係る発明は、請求項2又は3に係る掻き落とし部材において、前記羽根部材の先端部における前記第1の傾斜面よりも回転方向上流側に位置する部分を切除して第2の傾斜面を形成し、前記羽根部材の先端部の全体形状を三角形状とした、ことを特徴としている。
【0020】
請求項5に係る発明は、上流側から搬送されてきたシートを積載トレイ上に排出するシート排出装置に関する。この発明に係るシート排出装置は、前記積載トレイの上方に配設された上回転体と下回転体とにより、上流側から搬送されてきたシートを前記積載トレイ上に排出する排出回転体対と、排出されるシートによって従動回転される掻き落とし部材と、を備え、前記掻き落とし部材が、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の掻き落とし部材である、ことを特徴としている。
【0021】
請求項6に係る発明は、請求項5に係るシート排出装置において、前記上回転体と前記下回転体とが軸方向に沿っての異なる位置に配置され、前記掻き落とし部材が、軸方向に沿っての前記上回転体と前記下回転体との間に配設されている、ことを特徴としている。
【0022】
請求項7に係る発明は、請求項5又は6に係るシート排出装置において、前記上回転体が駆動回転される排出ローラであり、前記下回転体が従動回転される排出コロであり、前記掻き落とし部材が前記排出コロと一体的に構成されている、ことを特徴としている。
【0023】
請求項8に係る発明は、請求項5乃至7のいずれか1項に係るシート排出装置において、前記積載トレイの下流側に、排出されたシートの先端の位置を規制する規制部材を有し、前記規制部材は、シートの排出時には、前記規制部材によって先端が規制されたシートの後端が前記羽根部材の移動範囲内に入るように位置決めされている、ことを特徴としている。
【発明の効果】
【0024】
請求項1の発明によれば、羽根部材の先端部の第1の傾斜面がシート搬送面Sと一致するように形成されているので、たとえ、第1の傾斜面のうちのある点がシートの裏面に最初に当接して、シートに引きずられた場合であっても、直ちに、第1の傾斜面のうちの他の部分がシートの裏面に当接して、シートから倒伏方向の反力を受けるので、羽根部材の先端部が倒伏方向とは逆の方向に変形することを防止することができる。したがって、逆方向への変形が解消されて羽根部材が復元されることに起因する異常音の発生を防止することができる。
【0025】
請求項2の発明は、第1の傾斜面の形状をさらに具体的に規定するものである。本発明によれば、上述の請求項1の発明の効果に加え、原理的には、羽根部材の速度の搬送方向成分が、シートの搬送速度を等しくなるので、羽根部材の先端がシートに引きずられることに起因する、倒伏方向と歯逆方向への先端部の変形を、さらに、防止することができる。
【0026】
請求項3の発明は、第1の傾斜面の形状を、上述の請求項2とは異なる具体的な形状に規定するものである。本発明によれば、上述の請求項1の発明の効果に加え、原理的には、羽根部材の速度の搬送方向成分が、シートの搬送速度よりも速くなるので、羽根部材の先端がシートに引きずられることに起因する、倒伏方向と歯逆方向への先端部の変形が一層、発生しにくくすることができる。
【0027】
請求項4の発明は、羽根部材の先端部の形状をさらに具体的に規定したものである。先端部における当接開始点よりも回転方向下流側の形状は任意とすることができるが、本発明では、この部分を第2の傾斜面に形成し、第1の傾斜面と相俟って、先端部の形状を単純な三角形状としたものである。この場合、特に、当接開始点を、羽根部材の厚さの中心に設け、かつ第1の傾斜面と第2の傾斜面の傾斜角度を同じに形成すれば、羽根部材の表裏(回転方向に沿っての上流側の面と下流側の面)とを区別する必要がなくなるので、他の形状とは異なり、例えば、組立時に表裏を間違えて組み付けることに起因する誤組立等を防止することができる。
【0028】
請求項5の発明によれば、シート排出装置において、掻き落とし部材の形状に起因する異常音の発生を防止することができる。
【0029】
請求項6の発明によれば、掻き落とし部材は、上回転体と下回転体との間に配設されていて、この箇所は、シートの姿勢が比較的安定するので、羽根部材によってシートの後端を確実に掻き落とすことができ、かつ羽根部材の異常音の発生を防止することができる。
【0030】
請求項7の発明によれば、掻き落とし部材は、排出コロと一体的に構成されているので、排出されるシートによって従動回転される排出コロの回転に伴って円滑に回転することができ、しかも羽根部材の異常音の発生を防止することができる。
【0031】
請求項8の発明によれば、規制部材によってその先端の位置が規制されたシートは、その後端が羽根部材の移動範囲内に入るので、羽根部材は、シートの後端を確実に掻き落とすことができ、しかも羽根部材の異常音の発生を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、本発明の最良の実施形態を図面に基づき詳述する。なお、各図面において、同じ符号を付した部材等は、同じ構成のものであり、これらについての重複説明は適宜省略するものとする。また、各図面においては、説明に不要な部材等は適宜、図示を省略している。
【0033】
<実施形態1>
まず、図1〜図3を参照して、本発明に係るシート排出装置1を備えたシート処理装置11の概略を説明する。図1はシート処理装置11全体の構成を正面側(前側)から見た模式図である。なお、以下の説明では、図1中の左側に示す矢印方向をそれぞれ実機における(シート排出装置1やシート処理装置11における)実際の上下左右とし、これらに直交する方向を前後方向とする。このようにして定めた前後方向は、記録媒体としてのシートP(例えば、通常のコピー紙,コート紙等の加工紙,透明フィルムなど)の通紙幅方向(搬送方向に直交する方向)と一致する。図2は図1中のステイプル装置12の拡大図である。また、図3は図1中のシート折り装置10の拡大図である。
【0034】
図1に示すように、シート処理装置11は、複写機,プリンタ等の画像形成装置13の左側面14に隣接するようにして設置されている。ここで、画像形成装置13の画像形成方式としては、電子写真方式、静電記録方式、インクジェット方式等の任意のものを採用することができる。画像形成装置13において画像が形成されたシートPは、画像形成装置13の左側面14のシート排出口近傍に配設された排紙ローラ15によって画像形成装置13から左方に向けて排出されて、シート処理装置11に供給される。
【0035】
図1に示すように、シート処理装置11には、排紙トレイ16,17,18、ステイプル装置12、シート折り装置10、シート排出装置1等が設けてあり、これらは、画像形成後のシートPに対して、(1)処理を施さない場合、(2)ステイプル処理を施す場合、(3)中折り処理を施す場合、等に応じて使い分けられる。
【0036】
(1)画像形成後のシートPに処理を施さない場合には、画像形成後のシートPは、排紙ローラ15近傍から上方に向かう搬送パス20を介して排紙トレイ16上に排出され、あるいは、左方に向かう搬送パス21、その途中から上方に向かう搬送パス22を介して、排紙トレイ17上に排出され、あるいは、搬送パス21の左端(下流端)から排紙トレイ18上に排出される。この排紙トレイ18は、昇降自在に構成されていて、下方に下げたときには、大量のシートPを積載することが可能となっている。
【0037】
(2)画像形成後のシートPにステイプル処理を施す場合には、画像形成後のシートPは、搬送パス21、その途中から下方に向かう搬送パス23、さらに、図2に示す搬送パス24,25,26,27等を介して、順次に中間トレイ28上に排出されて積載される。積載されたシートPは、搬送方向及び通紙幅方向の整合が行われてシート束(複数枚のシートPの束)となった後、先端側の隅部を1箇所、又は先端側を2箇所、第1ステイプラ30により綴じ針で平綴じされる。平綴じ後のシート束は、束排出ベルト31に取り付けられているフック32が、束排出ベルト31の矢印R31方向の回転に伴って同方向に移動することで、押し出されるようにして、排紙トレイ18(図1参照)上に排出される。
【0038】
(3)画像形成後のシートに中折り処理を施す場合には、画像形成後のシートPは、図1に示す搬送パス21,23,26,33を経由して、シート排出装置1により、シート折り装置10に供給される。搬送パス33を搬送されてきたシートPは、図3に示すように、排出ローラ34によって積載トレイ35上に排出され、順次に搬送方向及び通紙幅方向の整合が行われる。積載トレイ35の上流側には、正逆方向に回転可能な整合ベルト36が配設されていて、この整合ベルト36には、積載トレイ35の上面に突設するように束下げ部材37が取り付けられている。一方、積載トレイ35の下流側には、正逆方向に回転可能な整合ベルト38が配設されていて、この整合ベルト38には、積載トレイ35の上面に突設するように束上げ部材(規制部材)39が取り付けられている。これら整合ベルト36,38は、排出ローラ34によって積載トレイ35上に排出されるシートPのタイミングに合わせて、適宜に正逆回転させることで、束下げ部材37及び束上げ部材39により、積載トレイ35上のシートPを搬送方向に整合させることができる。一方、通紙幅方向の整合については、積載トレイ35上のシートPの通紙幅方向の両端部にそれぞれ外側から当接して位置決めする一対のサイド規制板(不図示)によって整合を行う。
【0039】
以上のようにして、搬送方向及び通紙幅方向に整合されたシート束は、第2ステイプラ40によって、搬送方向のほぼ中央の折り部(後に2つ折りされる部分)が綴じ針により中綴じされる。中綴じ後のシート束は、一対の中折りローラ41,42からなる中折りローラ対43と、ブレードユニット44によって中折りされる。すなわち、中綴じ後のシート束は、整合ベルト36,38により、折り部(綴じ部)が、中折りローラ対43のニップN及びブレードユニット44に対応する位置に移動される。そして、シート束は、折り部がブレードユニット44の中折りブレード(不図示)によってニップNに押し込まれ、中折りローラ対43の矢印方向の回転により挟持搬送される。これにより、シート束は2つ折りされる。折り後のシート束は、さらに、中折りローラ対43により、排紙ガイド46に沿って搬送されて、排紙トレイ47上に排出される。
【0040】
以上のように、シート処理装置11は、画像形成後のシートPを、そのまま排紙トレイ16,17,18に排出したり、平綴じ後、排紙トレイ18に排出したり、中綴じ、中折り後、排紙トレイ47上に排出したりする。
【0041】
次に、図4,図5を参照して、本発明に係るシート排出装置1について詳述する。このうち図4は、図3における排出ローラ34近傍の拡大図である。図5は、排出ローラ34、排出コロ52、掻き落とし部材51等を説明する斜視図である。なお、図5においては、シートPは不図示ではあるが、掻き落とし部材51の羽根部材56のうちの上方に位置するものが、シートPの裏面に当接して倒伏姿勢をとったときの状態を示している。
【0042】
図4に示すように、シート排出装置1は、積載トレイ35の上方に配設された排出回転体対50と、掻き落とし部材51とを備えており、排出回転体対50は、上回転体としての排出ローラ34と下回転体としての排出コロ52とによって構成されている。
【0043】
図5に示すように、排出ローラ34は、前後方向(通紙幅方向)に向けて配設された軸53に固定されている。軸53は、その前後の両端がそれぞれ本体フレーム(不図示)によって回動自在に支持されていて、駆動手段(不図示)により矢印53方向に駆動回転される。本実施形態では、排出ローラ34は、軸53における前後方向の異なる位置に4個、固定されており、軸53の矢印方向の回転に伴って矢印34方向に回転する。この矢印34方向の回転によって、上流側から搬送されてきたシートPを積載トレイ35上(図4参照)に排出するようになっている。
【0044】
図5に示すように、排出コロ52は、軸54によって支持されている。軸54は、上述の排出ローラ34を支持している軸53と平行になるように配置されており、前後の両端がそれぞれ本体フレームによって固定的(回転不能)に支持されている。
【0045】
排出コロ52は、軸54における前後方向の異なる位置に4個、配置されており、それぞれ軸54によって回動自在に支持されている。それぞれの排出コロ52は、上述のそれぞれの排出ローラ34の近傍で、かつ前後方向(軸54方向)に沿って排出ローラ34と異なる位置に配置されている。つまり、それぞれの排出コロ52は、それぞれの排出ローラ34の近傍に配置されて排出回転体対50を構成しているが、前後方向にはオーバーラップしないような位置に配置されている。本実施形態では、4個の排出ローラ34を前側(図5中の右側)から順に第1,第2,第3,第4の排出ローラ34、また4個の排出コロ52を同様に、前側から順に第1,第2,第3,第4の排出コロ52とすると、第1の排出コロ52は第1の排出ローラ34の後側に、また第2の排出コロ52は第2の排出ローラ34の前側に、また第3の排出コロ52は第3の排出ローラ34の後側に、そして、第4の排出コロ52は第4の排出ローラ34の前側にそれぞれ配置されている。
【0046】
図4に示すように、各排出ローラ34と各排出コロ52とは、前面視(図4に示す前側から見た状態)においては、それぞれの外周面が少しオーバーラップするように配置されている。なお、図4においては、掻き落とし部材51の回転ベース55とほぼ同じ直径で、回転ベース55の後側に配置されている排出コロを説明の便宜上、符号52で示している。なお、以下では、図4中の排出ローラ34と排出コロ52とのオーバーラップ部分を見掛け上のニップ(以下単に「ニップ」という。)Nとして説明する。排出ローラ34を回転させて、シートPを排出する際、シートPのうちの、通紙幅方向に沿っての各排出回転体対50の排出ローラ34と排出コロ52との間に位置する部分は、姿勢が安定する。後述するように、掻き落とし部材51は、このシートPにおける姿勢の安定した部分に作用するように配置されている。
【0047】
図4,図5に示すように、掻き落とし部材51は、円筒状の回転ベース55と、この回転ベース55に突設された羽根部材56とによって構成されている。回転ベース55は、ほぼ円板状に形成されていて、上述の排出コロ52を回動自在に支持している軸54によって同様に回動自在に支持されている。回転ベース55の外径は、排出コロ52の外径とほぼ同じ、又は少し小さく設定されている。本実施形態では、羽根部材56は、回転ベース55の外周面における、周方向に4等分する位置にそれぞれ短冊状に、合計4枚のものが突設されている。なお、羽根部材56の枚数としては、1枚では所期の機能、すなわちシートの後端の掻き落としと、シートの後端の押さえ付けとの双方を実現することができない。原理的には、複数枚であれば、所期の機能を達成するが可能ではあるが、多すぎる場合には、機能を低下させるおそれがあるため、実用的には、3〜6枚程度が好適である。本実施形態では、4枚を採用した。
【0048】
羽根部材56は、自然状態、すなわち、シートPに当接されない状態においては、起立姿勢をとり、また、排出中のシートPの裏面に当接して倒伏姿勢をとる。本実施形態では、羽根部材56は、回転ベース55と一体に弾性体、例えば、シリコーンゴムやウレタンゴム等の合成樹脂によって形成されている。なお、羽根部材56の形状や材質については、上述のように、シートPの裏面に当接した際には、シートPの搬送(排出動作)を妨げることなく容易に倒伏姿勢をとり、かつ起立姿勢をとったときには、ほぼその起立姿勢を維持した状態でシートPの後端を掻き落とすことができる程度の剛性を有するものとする。掻き落とし部材51の回転中心となる軸54の中心から羽根部材56の先端までの距離は、排出コロ52の半径よりも大きくなるように設定されている。つまり、図4に示すように、掻き落とし部材51を前側から見た状態においては、羽根部材56の先端は、排出コロ52の外周よりも外側に位置するようになっている。この外側に位置する部分で、シートPの後端を掻き落とす。
【0049】
図5に示すように、掻き落とし部材51は、各排出回転体対50における、排出ローラ34と排出コロ52との間に配設されている。これにより、シートPの後端を掻き落とす際に、シートPにおける排出ローラ34と排出コロ52との間に位置する部分、つまり姿勢が比較的安定した部分を良好に掻き落とすことができる。さらに、本実施形態では、掻き落とし部材51は、上述の排出コロ52と一体的に構成されている。このため、掻き落とし部材51は、排出コロ52がシートPによって従動回転されるのに伴って、シートPの排出に同期して確実に回転し、シートPの後端を確実に掻き落とすことができる。ここで、排出コロ52と掻き落とし部材51とが一体的とは、例えば、同一の材質によって一体成形されている場合も、またそれぞれを別体で形成した後に、合体されるような場合も含むものとする。なお、掻き落とし部材51と排出コロ52とを別体に構成し、それぞれ個別に軸54によって回動自在に支持するようにすることも可能である。
【0050】
図4に示すように、排出回転体対50の上流側には、搬送されてきたシートPを排出回転体対50に導く上ガイド57及び下ガイド58が配設されている。このうち上ガイド57は、その下流端を排出回転体対50の下流側にまで延長して延長部60を設けている。これにより、上述の掻き落とし部材51は、シートPの後端が延長部60に掛かった状態でシートPの後端を掻き落とすことができるようになっている。また、排出ローラ34の下流側には、排出されたシートPの上方向の位置を規制する排出ガイド61が、下流側が積載トレイ35に近づくように傾斜した状態で配設されている。
【0051】
図4に示すように、排出回転体対50の下方には、積載トレイ35が配設されている。積載トレイ35は、下流側(左側)が下方に位置するように、斜めに傾斜されて配設されている。上述の掻き落とし部材51は、いずれかの羽根部材56が最も積載トレイ35に近づいた状態で、その羽根部材56の先端が、積載トレイ35から少し離れた状態となるように配置されている。
【0052】
図3,図4に示すように、積載トレイ35の下方における上流側と下流側とには、それぞれ個別に整合ベルト36,38が配設されている。上述のように上流側の整合ベルト36は、駆動ローラ61と従動ローラ62とに掛け渡されていて、駆動源としてのモータ(不図示)によって駆動ローラ61を正逆回転させることにより、正逆方向に回転させることができる。整合ベルト36には、束下げ部材37が取り付けられている。束下げ部材37は、その上端側を積載トレイ35から上方に突出させるようにして取り付けられていて、上端には、下流側に向けて押さえ部63が突設されている。整合ベルト36の正逆回転により、束下げ部材37は上流側及び下流側に移動することができる。束下げ部材37は、排出回転体対50からシートPが排出される際には、図4に示すスタンバイ位置(待機位置)、すなわち後端規制面64が掻き落とし部材51の中心よりも少し上流側に配置される位置で待機している。
【0053】
下流側の整合ベルト38も上流側の整合ベルト36と同様に、駆動ローラ65と従動ローラ66とに掛け渡されていて、別のモータ(不図示)の回転によって駆動ローラ65を正逆回転させることにより、正逆方向に回転させることができる。これにより、整合ベルト38に取り付けられている束上げ部材39は、上端側を積載トレイ35の上面から突設させた状態で、上流側及び下流側に移動することができる。束上げ部材39には、その上端に上流側に向けて押さえ部67が突設されている。束上げ部材39は、排出回転体対50からシートPが排出される際には、図4に示す受け入れ位置、すなわち排出されるシートPの先端が先端規制面68に当接したときにシートPの後端が掻き落とし部材51の羽根部材56の移動範囲内に入るような位置、に配置される。
【0054】
上述構成のシート排出装置1は、既に積載トレイ35上に積載されているシートPの後端を押さえ付けながら、排出された直後のシートPの後端を下方に掻き落とすことができる。そして、押さえ付けの動作と掻き落としの動作との双方を、以下のようにして、1つの掻き落とし部材51によって行うことができる。
【0055】
積載トレイ35上へのシートPの排出に先立って、モータにより整合ベルト36,38を回転させて、束下げ部材37を図4に示すスタンバイ位置に、また束上げ部材39を図4に示す受け入れ位置に配置する。この状態において、束上げ部材39の先端規制面68と、束下げ部材37の後端規制面64との距離は、排出されるシートPの搬送方向長さよりも少し長くなる。
【0056】
上流側から搬送されてきたシートPは、上ガイド57及び下ガイド58に案内されて、排出回転体対50に到達する。シートPは、矢印34方向に駆動回転される排出ローラ34によって排出動作が開始される。排出動作が開始されたシートPにより、排出コロ52が矢印R52方向に従動回転される。このとき、排出コロ52と一体的に構成されている掻き落とし部材51が従動回転する。掻き落とし部材51は、シートPの排出動作中は、従動回転が継続され、その羽根部材56を次々とシートPの裏面に当接させる。羽根部材56は、シートPの裏面に当接されると、基端部近傍から屈曲して退避して倒伏姿勢をとるので、シートPの排出動作の妨げになることはない。羽根部材56は、シートPの排出動作中は、ニップNに入る前にシートPの裏面に当接して倒伏姿勢をとり、またニップNを通過してシートPの裏面から外れて起立姿勢に復帰する動作を繰り返す。後述するように、掻き落とし部材51は、この復帰した起立姿勢の羽根部材56によって、積載トレイ35上のシートPの後端を押さえ付けるようにしている。
【0057】
排出動作中のシートPの後端がニップN近傍に達すると、次にニップNに入る羽根部材56は、倒伏することなく、起立姿勢のままニップNに入り、そのまま、ニップNを通過するシートPの後端を追うようにしてニップNを抜ける。シートPは、その後端がニップNを抜けた直後に、先端が束上げ部材39の先端規制面68に当接することで、移動が停止される。つまり、移動が停止されたシートPは、その後端が、上ガイド57の延長部60近傍の、羽根部材56の移動領域内に位置する。したがって、シートPの後端は、次に起立姿勢でニップNを抜けてくる羽根部材56によって下方に掻き落とされる。上述のように、本実施形態によると、排出直後のシートPの後端が羽根部材56の移動領域内に配置されるようになっているので、シートPの後端部にカールが発生している場合であっても、羽根部材56がシートPの後端に確実に引っ掛かり、さらなる羽根部材56の回転によって確実にシートPの後端を掻き落とすことができる。
【0058】
こうして、排出されるシートPを、掻き落とし部材51によって積載トレイ35上に掻き落とした後、束下げ部材37を、その後端規制面64が図4中の二点鎖線で示す受け入れ位置にくるまで移動させて、積載トレイ35上のシートPを搬送方向に整合させる。なお、二点鎖線で示す受け入れ位置は、積載トレイ35上のシートPの先端が、束上げ部材39の先端規制面68に丁度、接触したときのシートPの後端の位置に対応している。さらに積載トレイ35上のシートPは、上述の一対のサイド規制板によって通紙幅方向の整合が行われる。これら、束下げ部材37による搬送方向の整合、及び一対のサイド規制板による通紙幅方向の整合は、シートPが1枚排出されるごとに行われる。
【0059】
上述のようにして、積載トレイ35上に排出された1枚目のシートPの搬送方向及び通紙幅方向の整合が終了すると、直ちに、束下げ部材37、及び一対のサイド規制板がスタンバイ位置に戻されて、後続(2枚面)のシートPの排出に備える。
【0060】
2枚目のシートPも上述の1枚目のシートPと同様にして、後端を掻き落とし部材51によって掻き落とされるようにして、積載トレイ35上の1枚目のシートPの上面に積載される。2枚目のシートPが排出される際、例えば、1枚目のシートPの後端部に上向きのカールが発生している場合であっても、そのカール部分は、少なくとも2枚目のシートの先端がニップNを通過した後には、このシートPによって従動回転された掻き落とし部材51の羽根部材56によって下方に押し下げられるので、2枚目のシートPの先端が、1枚目のシートPの後端部のカールの下に入り込んでしまうような不具合は発生しない。
【0061】
また、積載トレイ35上の1枚目のシートPの後端部は、上向きのカールが発生しているような場合であっても、次々と回転してくる起立姿勢の羽根部材56によって下方に押し付けられる。このため、束下げ部材37をスタンバイ位置から受け入れ位置に移動させる際に、1枚目のシートPのカール部分が持ち上がって、その間に押さえ部63が入り込むようなことはない。
【0062】
以上のように、掻き落とし部材51は、駆動手段が不要な簡単な構成でありながら、排出時のシートPの後端を掻き落とし、また積載トレイ35上のシートPの後端を押さえ付けることができる。したがって、前述の、駆動手段で駆動する後端はたき部材を使用する場合と比較して、構成が簡単で、駆動手段の動作音が発生することもない。さらに掻き落とし部材51は、排出ローラ34の軸54と同軸に配設されているため、後端はたき部材と異なり、掻き落とし部材51を配設するためのスペースを別途、積載トレイ35の上方に設ける必要がない。したがって、例えば、後端はたき部材の場合とは異なり、積載トレイ35近傍でジャムが発生した場合でも、積載トレイ35上のシートPを取り除く際に、掻き落とし部材51が邪魔になるようなことはない。
【0063】
本発明においては、さらに、図6,図7に示すように、掻き落とし部材51の形状について、羽根部材56がシートPの裏面に当接する際に異常音が発生しにくいような形状とした。以下、この点について詳述する。ここで、図6は、掻き落とし部材51を正面側から見た拡大図である。図7は、図6の羽根部材56とは先端部の形状が異なる羽根部材56の、その先端部を正面側から見た拡大図である。
【0064】
なお、異常音が発生するメカニズム、及び異常音を発生させやすい羽根部材56の形状については、図8〜図11を参照して前述したとおりである。図6を参照して簡単に繰り返すと、羽根部材56の厚さTの中心を通る中心線Cと羽根部材56の先端縁との交点を中心Aとし、またシートP(図6では不図示)のシート搬送面S(ニップNの接線とほぼ一致する。)と上ガイド57との間の領域を領域R1、シート搬送面Sと下ガイド58との間の領域を領域R2としたときに、羽根部材56の先端部近傍の速度の搬送方向成分は、中心Aが領域R1内にあるときは、シートPの搬送速度よりも速く、これに対し、中心Aが領域R2内にあるときは、シートPの搬送速度よりも遅いということであった。そして、中心Aが領域R2内にあるときに、羽根部材56の先端部の一部が搬送中のシートPの裏面に当接すると、当接した接触点B(図10(a),図11(a)参照)がシートPとの摩擦によって引きずられ、倒伏方向とは逆方向に変形し、その後、この変形が解消される際に(図10(b),図11(b)参照)、異常音が発生するということであった。
【0065】
そこで、本発明においては、羽根部材56の先端部におけるある点(当接開始点K)がシートPの裏面にはじめに当接する際、点ではなく、できるだけ面状に当接するように構成した。この面を第1の傾斜面56aとすると、第1の傾斜面56aに含まれる当接開始点KがシートPの裏面に当接した際に、直ちに、第1の傾斜面56aの当接開始点K以外の部分シートPの裏面に当接するようにして、シートPから第1の傾斜面56aを介して羽根部材56の先端部に、倒伏を促進するような力が作用するようにして、異常音の発生を防止するようにした。
【0066】
図6に示す例では、羽根部材56の先端部における中心Aと当接開始点Kとが一致するように構成した。さらに、先端部における中心A(当接開始点K)よりも、回転方向下流側に位置する部分を切除して、第1の傾斜面56aを形成した。この第1の傾斜面56aは、中心A(当接開始点K)を通るように形成した。ここで、中心線Cに対する第1の傾斜面56aの角度をα、中心Aがシート搬送面S上に位置したときの、シート搬送面Sと中心線Cとがなす角度をβとしたときに、角度αが角度βと一致するように構成した。これにより、羽根部材56の先端部がシートの裏面に当接する際に、先端部における当接開始点Kを含む第1の傾斜面56a全体がシートPの裏面に当接するようにした。ただし、これは理想的な状態を説明していて、実際には、例えば、シートPが波打った状態で搬送された場合には、厳密には、シート搬送面Sに沿って搬送されることはなく、第1の傾斜面56aの一部がシートPの裏面に最初に当接することになる。本発明は、このような場合であっても、第1の傾斜面56aにおける他の部分がシートPの裏面に当接して、シートPから、先端部の倒伏を促進するような反力を受けるので、倒伏が円滑に行われるようになる。
【0067】
ここで、本実施形態では、羽根部材56の先端部における当接開始点Kよりも回転方向上流側に位置する部分は、中心線Cに対して直交するように形成した。なお、この「先端部における当接開始点Kよりも回転方向上流側に位置する部分」の形状については、この部分の一部が当接開始点Kよりも先にシートの裏面に当接しないことを条件に、任意の形状とすることができる。
【0068】
本実施形態の掻き落とし部材51によると、原理的には、搬送中のシートPの裏面に当接した際の当接開始部Kの搬送方向成分がシートPの搬送速度と同じになるので、羽根部材56の先端部が搬送中のシートPによって引きずれられるようなことはない。したがって、羽根部材56は、先端部がシートPに引きずられて倒伏方向とは逆方向に変形されることもなく、さらに、上述のように第1の傾斜面56aがシートPから倒伏を促進する方向の反力を受けるので、従来発生していた、先端部の変形が解消される際の異常音が発生するようなこともない。
【0069】
図7に、羽根部材56の先端部の別な形状を示す。本例では、当接開始点Kを、中心Aよりも、回転方向上流側に位置するように設定し、先端部における当接開始点Kよりも下流側に、上述と同様に第1の傾斜面56aを形成し、当接開始点Kよりも回転方向上流側に、別の第2の傾斜面56bを形成した。つまり、先端部全体の形状が、単純な三角形状になるようにした。本例では、第1の傾斜面56aは、当接開始点Kがシート搬送面S上に位置したときに、シート搬送面Sと一致するように形成されている。
【0070】
本例の変形例として、さらに、当接開始点Kを中心Aに一致させ、さらに第1の傾斜面56aの傾斜角度と、第2の傾斜面56bの傾斜角度とが同じになるように、つまり、先端部全体が二等辺三角形になるように形成すれば、羽根部材56の表裏(搬送方向上流側の面及び下流側の面)が対称となって表裏の区別がなくなるので、例えば、組立時に逆に組み付けてしまうといった誤組立を防止することができる。
【0071】
以上の実施形態では、上回転体としての排出ローラ34を駆動回転し、下回転体としての排出コロ52を従動回転させたが、この逆に構成することも可能である。すなわち、上回転体を、従動回転する排出コロで構成し、下回転体を、駆動回転する排出ローラによって構成するようにしてもよい。この場合、掻き落とし部材は、駆動回転される排出ローラとは一体的に構成することなく、排出ローラを支持する軸に対して、回動自在に取り付けるとよい。すなわち、駆動側と従動側とを交換した場合でも、掻き落とし部材は、排出されるシートPによって従動回転されるように構成するものとする。これにより、掻き落とし部材の動作を、シートPの動作に確実に追従するようにすることができる。
【0072】
また、上述では、上回転体が、駆動回転される排出ローラであり、かつ下回転体が、従動回転される排出コロである場合、あるいは、この逆に、上回転体が、従動回転される排出コロであり、かつ下回転体が、駆動回転される排出ローラである場合、つまり、いずれも回転体が、ローラ状の部材で構成されている場合を例に説明した。本発明は、これに限定されるものではなく、上回転体と下回転体とのうちの少なくとも一方をベルト部材によって構成することも可能であり、この場合も上述のほぼ同様の効果を奏することができる。
【産業上の利用可能性】
【0073】
上述では、本発明に係る掻き落とし部材、シート排出装置を、画像形成後のシートに処理を施すシート処理装置に適用した場合を例に説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、画像形成の有無にかかわらず、積載トレイ上にシートを排出する、一般的な場合についても広く適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】はシート処理装置全体の構成を正面側(前側)から見た模式図である。
【図2】図1中のステイプル装置の拡大図である。
【図3】図1中のシート折り装置の拡大図である。
【図4】図3における排出ローラ近傍の拡大図である。
【図5】排出ローラ、排出コロ、掻き落とし部材等を説明する斜視図である。
【図6】掻き落とし部材を正面側から見た拡大図である。
【図7】別の掻き落とし部材の羽根部材の先端部を正面側から見た拡大図である。
【図8】従来のシート搬送装置を正面側から見た図である。
【図9】従来の掻き落とし部材を正面側から見た拡大図である。
【図10】(a)従来の、先端部が四角形状の羽根部材がシートに引きずられて変形するようすを説明する図である。(b)は変形した羽根部材が元に復帰するようすを説明する図である。
【図11】(a)従来の、先端部が円弧状の羽根部材がシートに引きずられて変形するようすを説明する図である。(b)は変形した羽根部材が元に復帰するようすを説明する図である。
【符号の説明】
【0075】
1……シート排出装置、34……排出ローラ(上回転体)、35……積載トレイ、39……束上げ部材(規制部材)、50……排出回転体、51……掻き落とし部材、52……排出コロ(下回転体)、56……羽根部材、56a……第1の傾斜面、56b……第2の傾斜面、A……厚さ方向の中心、C……中心線、K……当接開始点、P……シート、T……羽根部材の厚さ、β……所定の角度


【特許請求の範囲】
【請求項1】
上流側からシート搬送面に沿って搬送されてきたシートを上回転体との間で挟持搬送して排出する下回転体と同軸に配設されて、排出されるシートによって従動回転される掻き落とし部材において、
周方向をほぼ等分する位置において先端側を前記下回転体よりも外側に突出するよう配設され、前記掻き落とし部材の従動回転によって排出中のシートの裏面に先端部を当接させて倒伏し、排出後のシートの後端を起立姿勢で掻き落とす複数の可撓性の羽根部材を備え、
前記羽根部材の先端部における回転方向に沿った方向の寸法を厚さとしたときに、前記先端部における厚さ方向に沿っての、前記回転方向下流側に位置する部分に、前記先端部が前記シート搬送面に到達したときに、前記シート搬送面とほぼ一致する第1の傾斜面が形成されている、
ことを特徴とする掻き落とし部材。
【請求項2】
前記第1の傾斜面が、前記先端部における厚さ方向の中心を通る、
ことを特徴とする請求項1に記載の掻き落とし部材。
【請求項3】
前記第1の傾斜面が、前記先端部における厚さ方向の中心よりも、回転方向上流側に位置する部分を通る、
ことを特徴とする請求項1に記載の掻き落とし部材。
【請求項4】
前記羽根部材の先端部における前記第1の傾斜面よりも回転方向上流側に位置する部分を切除して第2の傾斜面を形成し、前記羽根部材の先端部の全体形状を三角形状とした、
ことを特徴とする請求項2又は3に記載の掻き落とし部材。
【請求項5】
上流側から搬送されてきたシートを積載トレイ上に排出するシート排出装置において、
前記積載トレイの上方に配設された上回転体と下回転体とにより、上流側から搬送されてきたシートを前記積載トレイ上に排出する排出回転体対と、
排出されるシートによって従動回転される掻き落とし部材と、を備え、
前記掻き落とし部材が、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の掻き落とし部材である、
ことを特徴とするシート排出装置。
【請求項6】
前記上回転体と前記下回転体とが軸方向に沿っての異なる位置に配置され、
前記掻き落とし部材が、軸方向に沿っての前記上回転体と前記下回転体との間に配設されている、
ことを特徴とする請求項5に記載のシート排出装置。
【請求項7】
前記上回転体が駆動回転される排出ローラであり、
前記下回転体が従動回転される排出コロであり、
前記掻き落とし部材が前記排出コロと一体的に構成されている、
ことを特徴とする請求項5又は6に記載のシート排出装置。
【請求項8】
前記積載トレイの下流側に、排出されたシートの先端の位置を規制する規制部材を有し、
前記規制部材は、シートの排出時には、前記規制部材によって先端が規制されたシートの後端が前記羽根部材の移動範囲内に入るように位置決めされている、
ことを特徴とする請求項5乃至7のいずれか1項に記載のシート排出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−30865(P2008−30865A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−203218(P2006−203218)
【出願日】平成18年7月26日(2006.7.26)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】