説明

描画装置、描画方法、および、物品の製造方法

【課題】 特定のデザインルールのパターンを描画する信頼性およびスループットの点で有利な描画装置を提供すること。
【解決手段】 第1方向に延びた直線の上に配置されるべきパターンを複数の荷電粒子線で基板上に描画する描画装置であって、前記複数の荷電粒子線を前記基板上に投影する投影系(1−7,9)と、前記第1方向および該方向と直交する第2方向において前記複数の荷電粒子線と前記基板との間の相対走査を行う走査手段(8、11)と、前記走査手段による前記相対走査を制御し、かつ、前記第1方向における第1間隔および前記第2方向における第2間隔で前記投影系による前記複数の荷電粒子線の前記基板への照射を制御する制御手段(13−16)と、を有し、前記投影系により前記基板上に投影された各荷電粒子線の前記第1方向の大きさと前記第2方向の大きさとを異ならせた描画装置とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の荷電粒子線で基板上にパターンを描画する描画装置および描画方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フォトリソグラフィ技術において、最小パターン寸法が光源の波長に近づくと、意図しない光の相互作用(干渉)により、所望のパターンとは異なったパターンで基板の露光が行われうる。光近接効果補正を適用しても、所望のパターンが微細化して光の相互作用がより複雑になるのに従って、十分な補正が困難となっている。
このような問題を解決するため、パターンの幅を一定にし、かつ、その長手方向を限定したデバイスデザインルール(以後、1Dレイアウトと呼ぶ)や、そのための加工方法が提案されている(非特許文献1)。
【0003】
図10を参照して当該加工方法を説明する。この方法は、22nm世代のSRAMのゲートセルを対象として液浸露光装置(光源波長は193nm)を用いて行うフォトリソグラフィプロセスに関するものである。そのステップを以下に述べる。
[ステップ1] 44nmハーフピッチのラインアンドスペースパターンの露光を行う。
[ステップ2] 現像して形成したパターンに対して直接(あるいは、下地を加工し、全面に等方的に成膜した後に)異方性エッチングを行って、パターンの側壁、すなわち、輪郭に膜を残す。その結果、22nmハーフピッチのラインアンドスペースのハードマスクを得る。いわゆる、サイドウォールを利用したダブルパターニング技術である。
[ステップ3] レジストを塗布し、カット用のホールパターンの露光を行う。
[ステップ4] 露光されたホールパターン領域を化学的処理により縮小する。
[ステップ5] 再度異方性エッチングすることにより、所望のゲートセルパターンのハードマスクを得る。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Axelrad, Valery、 他1名、「16nm with 193nm Immersion Lithography and Double Exposure」、Proc.of SPIE、2010年、Vol.7641、764109−1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記方法は、液浸露光装置を使用してもダブルパターニング技術を適用しなくてはならず、また、カット用ホールパターンの露光も難しいため、[ステップ4]のようなパターン縮小工程が必要となっている。マスク数や工程数も多く、フォトリソグラフィプロセスのコスト高や信頼性低下が問題となっている。
【0006】
本発明は、上述のデザインルールのパターンを描画する信頼性およびスループットの点で有利な描画装置を提供することを例示的目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一つの側面は、第1方向に延びた直線の上に配置されるべきパターンを複数の荷電粒子線で基板上に描画する描画装置であって、
前記複数の荷電粒子線を前記基板上に投影する投影系と、
前記第1方向および該方向と直交する第2方向において前記複数の荷電粒子線と前記基板との間の相対走査を行う走査手段と、
前記走査手段による前記相対走査を制御し、かつ、前記第1方向における第1間隔および前記第2方向における第2間隔で前記投影系による前記複数の荷電粒子線の前記基板への照射を制御する制御手段と、を有し、
前記投影系により前記基板上に投影された各荷電粒子線の前記第1方向の大きさと前記第2方向の大きさとを異ならせた、ことを特徴とする描画装置である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、上述のデザインルールのパターンを描画する信頼性およびスループットの点で有利な描画装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】描画装置の構成を示す図
【図2】ブランカーアレイの構成を示す図
【図3】ラスター走査式の描画方法を説明する図
【図4】基板上での電子線サブアレイの配置および走査を説明する図
【図5】基板上での電子線の走査の軌跡を示す図
【図6】複数のストライプ描画領域SA間の位置関係を説明する図
【図7】1Dレイアウトにおけるカットパターンの描画方法を説明する図
【図8】実施形態に係る描画装置と従来の描画装置との比較を示す図
【図9】1Dレイアウトにおける断続的線状パターンの描画方法を説明する図
【図10】非特許文献1のデザインルールおよび加工方法を説明する図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を説明する。なお、実施形態を説明するための全図を通して、原則として、同一の部材等には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0011】
[実施形態1]
図1は、描画装置の構成を示す図である。図1において、1は、電子源であり、電子放出材としてLaBまたはBaO/W(ディスペンサーカソード)などを含むいわゆる熱電子型の電子源を用いうる。2は、コリメータレンズで、電界により電子ビームを収束させる静電型のレンズを用いうる。電子源1から放射された電子ビーム(電子線)は、コリメータレンズ2によって略平行の電子ビームとなる。なお、実施形態1および2の描画装置は、複数の電子線で基板上にパターンを描画するものであるが、イオン線等の電子線以外の荷電粒子線を用いてもよく、複数の荷電粒子線で基板上にパターンを描画する描画装置に一般化しうるものである。
【0012】
3は、2次元に配列された開口を有するアパーチャアレイ(アパーチャアレイ部材)である。4は、同一の光学的パワーを有する静電型のコンデンサーレンズが2次元に配列されたコンデンサーレンズアレイである。5は、電子ビームの形状を規定する(決める)パターン開口のアレイ(サブアレイ)を各コンデンサーレンズに対応して含むパターン開口アレイ(アパーチャアレイ部材)である。5aは、当該サブアレイを上から見た形状を示す。
【0013】
コリメータレンズ2からの略平行な電子ビームは、アパーチャアレイ3によって複数の電子ビームに分割される。分割された電子ビームは、対応するコンデンサーレンズアレイ4のコンデンサーレンズを介して、対応するパターン開口アレイ5のサブアレイを照明する。ここで、アパーチャアレイ3は、当該照明の範囲を規定する機能を有している。
【0014】
6は、個別に駆動可能な静電型のブランカー(電極対)を各コンデンサーレンズに対応して配列してなるブランカーアレイである。7は、ブランキングアパーチャ(1つの開口)を各コンデンサーレンズに対応して配列してなるブランキングアパーチャアレイである。8は、電子ビームを所定の方向に偏向させる偏向器を各コンデンサーレンズに対応して配列してなる偏向器アレイである。9は、静電型の対物レンズが各コンデンサーレンズに対応して配列されてなる対物レンズアレイである。10は、描画(露光)を行われるウエハ(基板)である。ここで、符号1−7および9の構成要素は、投影系を構成している。
【0015】
電子ビームで照明されたパターン開口アレイ5の各サブアレイからの電子ビームは、それに対応するブランカー・ブランキングアパーチャ・偏向器・対物レンズを介して、100分の1の大きさに縮小されてウエハ10に投影される。ここで、サブアレイにおいてパターン開口の配列されている面が物面であり、かつ、ウエハ10の上面が像面である、という関係となっている。
【0016】
また、電子ビームで照明されたパターン開口アレイ5のサブアレイからの電子ビームは、それに対応するブランカーの制御により、ブランキングアパーチャにより遮断されるか否か、すなわち、ウエハに電子線が入射するか否かが切り替えられる。それと並行して、ウエハに入射する電子線は、偏向器アレイ8により、同一の偏向量でウエハ上を走査される。
【0017】
また、電子源1は、コリメータレンズ2とコンデンサーレンズとを介してブランキングアパーチャ上に結像され、その像の大きさは、ブランキングアパーチャの開口より大きくなるように設定されている。このため、ウエハ上の電子ビームのセミアングル(半角)は、ブランキングアパーチャの開口により規定される。さらに、ブランキングアパーチャの開口は、それに対応する対物レンズの前側焦点位置に配置されているため、サブアレイの複数のパターン開口からの複数の電子ビームの主光線は、ウエハ上に略垂直に入射する。このため、ウエハ10の上面が上下に変位しても、水平面内での電子ビームの変位は微小となる。
【0018】
11は、ウエハ10を保持し、光軸と直交するX−Y平面(水平面)内で可動なX−Yステージ(単にステージともいう)である。ステージは、ウエハ10を保持する(引きつける)ための静電チャック(不図示)と、電子ビームが入射する開口パターンを含み、電子ビームの位置を検出する検出器(不図示)とを含んでいる。12は、ウエハ10を搬送し、ステージ11との間でウエハ10の受け渡しを行う搬送機構である。
【0019】
ブランキング制御回路13は、ブランカーアレイ6を構成する複数のブランカーを個別に制御する制御回路である。偏向器制御回路14は、偏向器アレイ8を構成する複数の偏向器を共通の信号で制御する制御回路である。ステージ制御回路15、ステージの位置を計測する不図示のレーザ干渉計と協働してステージ11の位置決めを制御する制御回路である主制御系16は、上記の複数の制御回路を制御し、描画装置を統括的に制御する。なお、描画装置の制御手段は、本実施形態では制御回路13−15および主制御系16により構成されているが、これは一例に過ぎず、適宜変更が可能である。
【0020】
図2は、ブランカーアレイ6の構成を示す図である。ブランキング制御回路13から制御信号は、光通信用光ファイバー(不図示)を介してブランカーアレイ6に供給される。1ファイバー当たり、1サブアレイに対応した複数のブランカーの制御信号を伝送する。光通信用光ファイバーから光信号は、フォトダイオード61で受光され、トランスファーインピーダンスアンプ62で電流−電圧変換され、リミッティングアンプ63で振幅調整される。振幅調整された信号がシフトレジスタ64に入力され、シリアル信号がパラレル信号に変換される。横方向に走るゲート電極線と縦方向に走るソース電極線との各交点には、FET67が配置され、FET67のゲートとソースとに2本のバス線がそれぞれ接続されている。FET67のドレインにはブランカー電極69およびコンデンサー68が接続され、これら2つの容量性素子の反対側は共通電極(コモン電極)に接続されている。ゲート電極線に加えられた電圧によって、それに接続されている1行分すべてのFETがON動作することで、ソース−ドレイン間に電流が流れる。そのときソース電極線に加えられている各々の電圧がブランカー電極69に印加され、その電圧に応じた電荷がコンデンサー68に蓄積(充電)される。ゲート電極線は、1行分の充電を終えると切り替えられ、電圧の印加は次の行に移り、最初の1行分のFETは、ゲート電圧を失ってOFF動作をする。最初の1行分のブランカー電極69は、ソース電極線からの電圧を失うが、コンデンサー68に蓄積された電荷によって、次にゲート電極線に電圧が印加されるまでの間は必要な電圧を維持できるようになっている。このようにFETをスイッチとして使ったアクティブ・マトリクス駆動方式によれば、ゲート電極線によって並行して多数のFETに電圧を印加することができるため、ブランカーの多数化に少ない配線数で対応できる。
【0021】
図2の例では、ブランカーは、4行4列に配列されている。シフトレジスタ64からのパラレル信号は、データドライバー65・ソース電極を介して、FETのソース電極に電圧として印加される。これと協働して、ゲートドライバー66から印加される電圧により、1行分のFETがON動作とされるため、対応する1行分のブランカーが制御される。このような動作が各行に対して順次繰り返されて、4行4列のブランカーが制御される。
【0022】
図3を参照しながら、本実施形態に係るラスター走査式の描画方法を説明する。電子ビームは、偏向器アレイ8による偏向とステージ11の位置とで決定されるウエハ10上の走査グリッド上を走査されながら、描画パターンPに応じて、基板上への照射・非照射がブランカーアレイ6により制御される。ここで、走査グリッドとは、図3に示すように、X方向にピッチGX(第1間隔)、Y方向にピッチGY(第2間隔)で形成されるグリッドである。そして、図中の縦線と横線との交点(グリッド点)に、電子ビームの照射または非照射が割り当てられるものである。
【0023】
図4は、ウエハ上での電子線サブアレイの配置および走査を説明する図である。図4に示すように、サブアレイのパターン開口は、X方向にピッチBXで、Y方向にピッチBYで、ウエハ上に投影される。各パターン開口の大きさは、ウエハ上で、X方向はPXで、Y方向PYである。パターン開口は、ウエハに100分の1に縮小投影されるため、その実際の大きさは、ウエハ上での大きさの100倍である。パターン開口の像(電子ビーム)は、偏向器アレイ8によりX方向に偏向されて、ウエハ上で走査される。それと並行して、ステージ11はY方向に連続的に移動して(走査させて)いる。そこで、ウエハ10上において各電子ビームがY方向には静止しているように、偏向器アレイ8により電子ビームをY方向に偏向している。なお、投影系により投影される荷電粒子線を少なくともX方向(第1方向)に偏向させる偏向器アレイ8と、基板を保持してY方向(第1方向と直交する第2方向)に可動のステージ11は、走査手段に含まれる。ここで、走査手段は、X方向およびY方向において複数の荷電粒子線と基板との間の相対走査を行う手段である。
【0024】
図5は、ウエハ上での電子ビームの走査の軌跡を示す図である。図5において、左側は、サブアレイの各電子ビームのX方向における走査の軌跡を示す。ここで、各電子ビームの照射・非照射は、グリッドピッチGXで規定されるグリッド点ごとに制御される。ここでは、説明を容易にするため、最上部の電子ビームの軌跡を黒塗りにしている。図5において、右側は、各電子ビームのX方向の走査のあと、破線の矢印で示すようなY方向の偏向幅DPでのフライバックを介して、各電子ビームのX方向の走査を順次繰り返して形成される軌跡を示す。図中の太破線枠内では、ストライプ幅SWのストライプ描画領域SAがグリッドピッチGYで埋め尽くされるのが分かる。すなわち、ストライプ描画領域SAは、ステージ11の定速連続移動で描画できることになる。そのための条件は、サブアレイのビーム本数をN*Nとすると、
=K*L+1 (K、Lは自然数) ・・・(1)
BY=GY*K ・・・(2)
DP=(K*L+1)*GY=N*GY ・・・(3)
を満足することである。この条件は、(1)式を満足するKにより(2)式のようにY方向のビーム間隔BYを決めると、製造面で限界がある開口やブランカーの間隔の微細化によらずに、走査グリッド間隔GYの微細化により、微細なパターンを描画できる。さらに、(3)式のようにY方向の偏向幅DPを決めると、図5に示す黒矢印の起点より下側のストライプ描画領域SAは、どの部分もグリッドピッチGYでの描画が可能となる。このため、一方向へのステージの連続移動(走査)により、微細なパターンの安定した描画を行うことができる。
【0025】
本実施形態では、N=4、K=5、L=3、GY=5nm、BY=25nm、DP=80nm、SW=2μmである。ここで、各電子ビームの偏向幅に比べてストライプ幅SWが必ず小さくなるため、ブランカー間のピッチが製造上許容できるものである限り、N*BY>BXを満たすようにすることが好ましいそのようにすれば、描画に利用されない偏向領域を少なくでき、生産能力の点で有利となる。
【0026】
図6は、各サブアレイ(または対物レンズ)あたりの複数のストライプ描画領域SA間の位置関係を説明する図である。対物レンズアレイ9は、対物レンズをX方向に144μmピッチで一次元に配列し、ストライプ描画領域SAが隣接するように、次の行の対物レンズはX方向に2μmだけずらして構成する。同図では、説明をしやすくするため、4行8列の対物レンズアレイを示しているが、実際には、例えば、72行180列の対物レンズアレイとすることができる(総計12960本の対物レンズを含む)。このような構成によれば、ステージ11をY方向に沿った一方向に連続移動(走査)させることにより、ウエハ10上の露光領域EAに描画を行うことができる。
【0027】
図7は、1Dレイアウトにおけるカットパターンの描画方法を説明する図である。カットパターンの描画では、図中の「描画パターン」に示すように、所定間隔(例えば同一間隔)でY方向に配列された、X方向の直線上に延びる線状パターンLPが予め形成されている。具体的には、Y方向に50nmピッチで並ぶY方向幅25nmのラインパターンLPが形成されている。その線状パターンLPに対して、線状パターンLPを切断するためのカットパターンCPを描画する。そのため、カットパターンCPのY方向の寸法は、X方向の寸法に比べて大きくすることが必要で、Y方向の寸法精度は、X方向のそれに比べて低くすることができる。更に、カットパターンCPのY方向の描画位置精度も、X方向のそれに比べて低くすることが出来る。
【0028】
そこで、図中の「パターン開口形状」に示すように、パターン開口アレイのパターン開口は、ウエハ上換算で、横幅PX=30nm、縦幅PY=50nmの矩形としている。ウエハ上のパターン開口の像は、図中の「電子ビーム強度分布」に示すように、Y方向の寸法は、X方向の寸法に比べて大きくなる。
【0029】
上述のように、カットパターンCPのY方向の描画位置精度は、X方向のそれに比べて低くすることができるため、走査グリッドは、GX=2.5nm、C=5.0nmのピッチとしている。すなわち、カットパターンCPのX方向(第1方向)の大きさとY方向(第2方向)の大きさとの大小関係と、走査グリッドのピッチGX(第1間隔)とピッチGX(第2間隔)との大小関係とを同じにしている。その描画結果は、図中の「レジスト像」として同図に示すとおりである。分離すべきパターンは、カットパターンにより充分に分離し、その後の工程に問題のないレベルの描画がなされていることがわかる。
【0030】
本実施形態では、描画装置のX−Y軸とウエハ(ウエハに描画されているパターン)の配向とを一致(整合)させる必要がある。そのため、ウエハ10をステージ11に搬送する搬送機構12によって、当該一致(整合)がなされるように、ウエハ10がステージ11に受け渡される。なお、主制御系16等の制御手段は、描画装置のX方向(第1方向)またはY方向(第2方向)とウエハ10の配向とが整合してステージ11にウエハ10が保持されるように、搬送機構12の動作およびステージ11の動作の少なくとも一方を制御すればよい。
【0031】
また、グリッドピッチがGX=2.5nm・GY=5.0nmであり、カットパターンCPがPX=30nm・PY=50nmの矩形であるため、当該パターンの情報は、当該グリッドピッチのグリッド点を単位として生成することができる。そのため、パターン情報のハンドリングが容易になり、また、当該パターン情報をグリッド点単位の描画情報に変換する処理の負荷も少ない。
【0032】
図8は、1Dレイアウトにおけるカットパターン描画用の本実施形態に係る描画装置と従来の描画装置との比較を示す図(表)である。当該比較の前提条件は、以下のとおりである。
1)22nm世代に対応する描画装置であること。
2)レジスト感度:20μC/cm
3)生産能力:300mmウエハを1時間当たり20枚描画できること。
4)対物レンズ数は、12960本であること。
【0033】
従来の描画装置は、どのようなパターンにも対応するため、パターン開口アレイの開口サイズ(PX、PY)も、走査グリッドピッチ(GX、GY)も、X方向とY方向とで同じにしている。その結果、サブアレイの電子ビーム数は、36本で、総電子ビーム数は、466560本である。また、電子源に必要な輝度は、2.3×10(A/sr/cm)となり、このような輝度では、ディスペンサーカソードのカソード温度が高く、その寿命は短い。また、通信用光ファイバーに必要な伝送速度は、6.38(GBPS)である。この速度に比例して、トランスファーインピーダンスアンプ62・リミッティングアンプ63・シフトレジスタ64の発熱が大きくなるため、従来の描画装置は、ブランカーアレイ6の動作の信頼性の点で不利である。
【0034】
本実施形態の描画装置は、サブアレイの電子ビーム数が16本の場合、従来の描画装置と同様の生産能力を達成するのに、約2分の1の総電子ビーム数のため、約2分の1の伝送速度で済み、しかも電子源に必要な輝度も低くなる。総電子ビーム数が同じ場合は、約2分の1の伝送速度で、2分の1以下の電子源の輝度で、同様の生産能力を達成できる。
以上説明したように、本実施形態によれば、1Dレイアウトのカットパターンを描画する信頼性およびスループットの点で有利な描画装置を提供することができる。
【0035】
[実施形態2]
本実施形態は、1Dレイアウトにおける断続的線状パターンを描画する描画装置に関する。本実施形態は、パターン開口および走査グリッドが異なる他は、実施形態1の構成と同様の構成を有している。
【0036】
図9は、1Dレイアウトにおける断続的線状パターンの描画方法を説明する図である。本実施形態は、図中の「描画パターン」に示すように、所定間隔(例えば同一間隔)でY方向に配列された、X方向の直線上に延びる断続的線状パターンCLPを描画する。Y方向において、その線状パターンのピッチは50nmで、その線幅は25nmである。この断続的線状パターンCLPにおいては、Y方向の線幅の一様性が重要であり、X方向における線状パターンの端部の形状はあまり重要でない。そのため、断続的線状パターンCLPのY方向の寸法精度は、X方向の寸法精度に比べて高める必要がある。更に、断続的線状パターンCLPのY方向の描画位置精度は、X方向のそれに比べて高める必要がある。
【0037】
そこで、図中の「パターン開口形状」に示すように、パターン開口アレイのパターン開口は、ウエハ上換算で、横幅PX=30nm、縦幅PY=25nm の矩形としている。ウエハ上のパターン開口の像は、図中の「電子ビーム強度分布」に示すように、Y方向の寸法は、X方向の寸法に比べて小さくしている。これにより、断続的線状パターンCLPのY方向の寸法精度は、X方向の寸法精度に比べて高めている。
【0038】
断続的線状パターンCLPのY方向の描画位置精度は、X方向のそれに比べて高くする必要があるため、走査グリッドは、GX=5.0nm、GY=2.5nmのピッチとしている。すなわち、断続的線状パターンCPのX方向(第1方向)の大きさとY方向(第2方向)の大きさとの大小関係と、走査グリッドのピッチGX(第1間隔)とピッチGX(第2間隔)との大小関係とを同じにしている。その描画結果は、「レジスト像」として同図に示すとおりである。断続的線状パターンは、Y方向の線幅が一様となり、その後の工程に問題のないレベルの描画がなされていることがわかる。
【0039】
本実施形態も、実施形態1と同様に、描画装置のX−Y軸とウエハ(ウエハに描画されているパターン)の配向とを一致(整合)させる必要がある。そのため、ウエハ10をステージ11に搬送する搬送機構12によって、当該一致(整合)がなされるように、ウエハ10がステージ11に受け渡される。なお、主制御系16等の制御手段は、描画装置のX方向(第1方向)またはY方向(第2方向)とウエハ10の配向とが整合してステージ11にウエハ10が保持されるように、搬送機構12の動作およびステージ11の動作の少なくとも一方を制御すればよい。
【0040】
図8を再度参照して、1Dレイアウトにおける断続的線状パターンを描画する本実施形態に係る描画装置と従来の描画装置との比較を行う。当該比較の前提条件は、先述したとおりである。
従来の描画装置では、どのようなパターンにも対応するため、パターン開口アレイのパターン開口のサイズ(PX、PY)も、走査グリッドのピッチ(GX、GY)も、X方向とY方向とで同じにしている。その結果、サブアレイの電子ビーム数は、49本で、総電子ビーム数は635040本である。また、電子源に必要な輝度は、2.3×10(A/sr/cm)となり、このような輝度では、ディスペンサーカソードのカソード温度が高く、寿命は短い。また、通信用光ファイバーに必要な伝送速度は、6.38(GBPS)である。この速度に比例して、トランスファーインピーダンスアンプ62・リミッティングアンプ63・シフトレジスタ64の発熱が大きくななるため、従来の描画装置は、ブランカーアレイ6の動作の信頼性の点で不利である。
【0041】
本実施形態の描画装置は、総電子ビーム数は同じであるが、約2分の1の伝送速度で、かつ、より少ない電子源の輝度で、従来の描画装置と同様の生産能力を達成できる。
以上説明したように、本実施形態によれば、1Dレイアウトの断続的線状パターンを描画する信頼性およびスループットの点で有利な描画装置を提供することができる。
【0042】
[実施形態3]
本発明の実施形態に係る物品の製造方法は、例えば、半導体デバイス等のマイクロデバイスや微細構造を有する素子等の物品を製造するのに好適である。該製造方法は、感光剤が塗布された基板の該感光剤に上記の描画装置を用いて潜像パターンを形成する工程(基板に描画を行う工程)と、当該工程で潜像パターンが形成された基板を現像する工程とを含みうる。さらに、該製造方法は、他の周知の工程(酸化、成膜、蒸着、ドーピング、平坦化、エッチング、レジスト剥離、ダイシング、ボンディング、パッケージング等)を含みうる。本実施形態の物品の製造方法は、従来の方法に比べて、物品の性能・品質・生産性・生産コストの少なくとも1つにおいて有利である。
【0043】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形および変更が可能である。
【符号の説明】
【0044】
1 電子源
2 コリメータレンズ
3 アパーチャアレイ
4 コンデンサーレンズアレイ
5 パターン開口アレイ
6 ブランカーアレイ
7 ブランキングアパーチャアレイ
8 偏向器アレイ
9 対物レンズアレイ
11 ステージ
13 ブランキング制御回路
14 偏向器制御回路
15 ステージ制御回路
16 主制御系

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向に延びた直線の上に配置されるべきパターンを複数の荷電粒子線で基板上に描画する描画装置であって、
前記複数の荷電粒子線を前記基板上に投影する投影系と、
前記第1方向および該方向と直交する第2方向において前記複数の荷電粒子線と前記基板との間の相対走査を行う走査手段と、
前記走査手段による前記相対走査を制御し、かつ、前記第1方向における第1間隔および前記第2方向における第2間隔で前記投影系による前記複数の荷電粒子線の前記基板への照射を制御する制御手段と、を有し、
前記投影系により前記基板上に投影された各荷電粒子線の前記第1方向の大きさと前記第2方向の大きさとを異ならせた、ことを特徴とする描画装置。
【請求項2】
前記パターンは、前記第1方向に延びた線状パターンを切断するためのパターンであって、前記第1方向の大きさが前記第2方向の大きさより小さいパターンである、ことを特徴とする請求項1に記載の描画装置。
【請求項3】
前記パターンは、前記第1方向に延びた断続的線状パターンであって、前記第1方向の大きさが前記第2方向の大きさより大きいパターンである、ことを特徴とする請求項1に記載の描画装置。
【請求項4】
前記第1方向の大きさと前記第2方向の大きさとの大小関係と前記第1間隔と前記第2間隔との大小関係とを同じにした、ことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の描画装置。
【請求項5】
前記投影系は、前記基板上に投影された各荷電粒子線の前記第1方向の大きさと前記第2方向の大きさとを決めるアパーチャアレイ部材を含む、ことを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の描画装置。
【請求項6】
前記基板を保持するステージと、前記ステージに前記基板を搬送する搬送機構とを有し、
前記制御手段は、前記走査手段による前記相対走査の前記第1方向と前記基板の配向とが整合して前記ステージに前記基板が保持されるように、前記搬送機構の動作および前記ステージの動作の少なくとも一方を制御する、ことを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の描画装置。
【請求項7】
前記走査手段は、前記投影系により投影される荷電粒子線を前記第1方向に偏向させる偏向器と、前記基板を保持して前記第2方向に可動のステージとを含む、ことを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の描画装置。
【請求項8】
前記パターンは、前記直線、および、該直線に平行であって前記第2方向に所定間隔で配列された複数の直線それぞれの上に配置されるべきパターンを含む、ことを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載の描画装置。
【請求項9】
第1方向に延びた直線の上に配置されるべきパターンを複数の荷電粒子線で基板上に描画する描画方法であって、
前記複数の荷電粒子線を前記基板上に投影し、
前記第1方向および該方向と直交する第2方向において前記複数の荷電粒子線と前記基板との間の相対走査を行い、
前記相対走査を制御し、かつ、前記1方向における第1間隔および前記第2方向における第2間隔で前記複数の荷電粒子線の前記基板への照射を制御し、
前記基板上に投影された各荷電粒子線の前記第1方向の大きさと前記第2方向の大きさとを異ならせた、ことを特徴とする描画方法。
【請求項10】
前記第1方向の大きさと前記第2方向の大きさとの大小関係と前記第1間隔と前記第2間隔との大小関係とを同じにした、ことを特徴とする請求項9に記載の描画方法。
【請求項11】
前記パターンは、前記直線、および、該直線に平行であって前記第2方向に所定間隔で配列された複数の直線それぞれの上に配置されるべきパターンを含む、ことを特徴とする請求項9または請求項10に記載の描画方法。
【請求項12】
請求項1ないし請求項8のいずれか1項に記載の描画装置または請求項9ないし請求項11のいずれか1項に記載の描画方法を用いて基板に描画を行う工程と、前記工程で描画を行われた基板を現像する工程と、を含むことを特徴とする物品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−178437(P2012−178437A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−40270(P2011−40270)
【出願日】平成23年2月25日(2011.2.25)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】