説明

描画装置、描画方法および描画装置の異常診断方法

【課題】照射量に関連した異常を描画中にほぼリアルタイム且つ効率的に検出・処理できる描画装置および描画方法を提供する。また、異常原因の推定を含む異常診断を行う方法を提供する。
【解決手段】基板2に電子ビーム54を照射して発生した反射・散乱電子を検出部19で検出する。描画データから得られた所定単位におけるN番目のショットの面積(S)と照射時間(t)の積を演算部25aにて演算する。所定単位毎に指示相当値を累積した値と、検出部19からの信号(D)を所定単位で積分した値とを、比較部24にて、比較・判定して、電子ビーム54の照射量に異常が起きているか否かを判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、描画装置、描画方法および描画装置の異常診断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体集積回路(LSI)等の微細な素子回路パターンを形成するための、原画パターン(レチクルまたはマスクともいう。)は、電子ビームまたはレーザビーム等のエネルギービームを、マスク基板上に塗布したレジスト/感光剤に照射/露光した後、現像、エッチング等のプロセスを経ることにより製造される。また、一部では、半導体ウェハにエネルギービームで直接回路パターンを描画して半導体デバイスの製造を行うことも実施されている。
【0003】
エネルギービームを用いた描画装置において、装置に起因する描画位置や照射量の異常、あるいは、基板上の異物に起因する異常などが起きた場合、通常は、描画したパターンの検査過程で異常が判明することが多い。描画には10時間以上を要することもあるので、その間は異常が生じているにもかかわらず描画し続けることになる。また、検査工程は、描画工程だけでなくその後の現像工程などを含む所定のパターン形成工程を経た後に行われる。したがって、こうした工程を経てから初めて異常が発覚するのでは、時間的にもコスト的にも無駄が大きい。つまり、異常が発生してから発覚するまでの間に描画した全ての基板に同様の異常が発生し、これらの基板が出荷基準を満たさなければ、描画に費やした時間は無駄になる。また、描画を続けることによって、異常原因を究明し対策を講じるのが遅れる結果にもなる。さらに、検査工程で異常が検出できずに製品が次工程で使用された場合には、二次的な損害が生じる可能性もある。このため、描画中に異常を検出して対処することが求められている。
【0004】
これに対し、荷電粒子ビーム描画装置において、描画中に各ショット単位で異常を検出して処理する技術が開示されている(例えば、特許文献1〜2参照。)。
【0005】
例えば、特許文献1には、可変整形ビーム荷電粒子ビームの軸と被露光材料面付近で一定角度をなして交差する軸に沿って電子レンズを配置し、荷電粒子ビームの照射により被露光材料面による反射荷電粒子を電子レンズで結像し、結像面に像の位置を検出し得る二次元的位置検出器を設置して、この位置検出器の出力信号と偏向器へ送るパターン信号とを比較して露光位置の異常を検知する荷電粒子線露光装置が開示されている。
【0006】
この装置では、更に、照射量異常の検出方法として以下の方法の紹介がある。XY位置検出器の各端子の出力信号の総和は、入射する反射電子のビーム電流に比例するので、これらの出力の一部は加算回路に送られ、さらにその総和は比較器に送られる。また、掛け算回路において、ビーム整形用偏向信号の増幅器の出力信号を掛け算し、整形されたビーム断面の面積に相当する信号が作られる。電子銃からの電子ビームの電流密度が一定と仮定すれば、断面積からビーム電流量が分かるので、掛け算回路からの信号と加算回路からの信号を比較することで照射量の異常を検知している。
【0007】
特許文献1では、掛け算回路からの信号と加算回路からの信号を比較器で比較し異常を検知して、現に露光している領域の描画を停止し、次の領域の描画へ移行するよう制御される。ここで、特許文献1における位置検出器の各端子の出力信号は、電子ビームの1ショット毎に検出・処理される。また、比較器に送られる信号も、1ショット毎の電子ビームの照射量に相当する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特公平3−24772号公報
【特許文献2】特開平5−74404号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、1ショット毎に反射電子の信号を検出して処理するのでは、データ量、およびデータ処理量が膨大になり、処理負荷が大きくなる。特に、最近では、描画パターンが複雑化してパターンの密度が増える一方、1ショットあたりのショット時間は短くなる傾向にあり、データ量・負荷の更なる増加、処理の困難さがある。
【0010】
本発明は、こうした点に鑑みてなされたものである。すなわち、本発明の目的は、照射量に関連した異常を描画中にほぼリアルタイム且つ効率的に検出・処理することのできる描画装置および描画方法を提供することにある。さらに、本発明の目的は、異常原因の推定を含む異常診断を行う方法を提供することにある。
【0011】
本発明の他の目的および利点は、以下の記載から明らかとなるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の第1の態様は、描画室内に載置される試料にエネルギービームを照射して、試料の上に描画データに基づく所定のパターンを描画する描画装置において、
試料にエネルギービームが照射されて発生した反射・散乱荷電粒子または反射・散乱光を検出する検出部と、
描画データから得られた所定単位毎の指示照射量相当値(累計値)を演算する演算部と、
検出部からの信号を所定単位毎に積分する積分部と、
演算部で得られた値と積分部で得られた値とを比較する比較部とを有することを特徴とするものである。
【0013】
比較部では、所定単位毎に、演算部で得られた指示照射量相当値値(累計値)と、積分部で得られた検出値の積分値に所定の係数を乗じた値との比較が行われ、両者の差が所定の閾値以下であればエネルギービームの照射量は正常と判断し、両者の差が所定の閾値より大きければエネルギ−ビームの照射量等は異常と判断してその旨の通知を行うことが好ましい。
【0014】
本発明の第2の態様は、描画室内に載置される試料にエネルギービームを照射して、試料の上に描画データに基づく所定のパターンを描画する描画装置において、
試料にエネルギービームが照射されて発生した反射・散乱荷電粒子または反射・散乱光を検出する検出部と、
描画データから得られた所定単位毎の指示照射量相当値を演算する演算部と、
検出部からの信号を所定単位毎に積分する積分部と、
所定単位毎に、演算部で得られた指示照射量相当値と積分部で得られた検出値の積分値とを比較、異常判定を行う比較部と、
描画データから得られたショット単位での指示照射量相当値を照射の時系列データとして記憶する第1の記憶部と、
検出部からの時系列信号を記憶する第2の記憶部と、
必要に応じて、第1の記憶部に記憶された照射指示相当量の時系列データと第2の記憶部に記憶された検出部で検出された時系列データを比較・診断する異常診断部とを有することを特徴とするものである。
【0015】
本発明の第3の態様は、試料にエネルギービームを照射して、試料の上に描画データに基づく所定のパターンを描画する描画方法において、
試料にエネルギービームが照射されて発生した反射・散乱荷電粒子または反射・散乱光を検出する検出工程と、
描画データから得られた所定単位毎の指示照射量相当値を演算する演算工程と、
検出工程で得られた信号を所定単位毎に積分する積分工程と、
所定単位毎に、演算工程で得られた値と積分工程で得られた値とを比較、異常判定する比較・判定工程とを有し、
比較・判定工程で異常が起きていると判断された場合には、比較・判定工程における情報を蓄積して所定の処理を行うことを特徴とするものである。
【0016】
本発明の第4の態様は、試料にエネルギービームを照射して、試料の上に描画データに基づく所定のパターンを描画する描画装置の異常診断方法において、
試料にエネルギービームが照射されて発生した反射・散乱荷電粒子または反射・散乱光を検出する検出工程と、
描画データから得られた所定単位毎の指示照射量相当値を演算する演算工程と、
検出工程で得られた信号を所定単位毎に積分する積分工程と、
演算工程で得られた値と積分工程で得られた値とを比較、異常判定する比較・判定工程とを有し、
比較・判定工程で異常が起きていると判断された場合には、指示照射量相当値の時系列データと、反射・散乱荷電粒子または反射・散乱光の検出信号の時系列データとを比較して、異常原因の推定を行うことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、照射量に関連した異常を描画中にほぼリアルタイムで検出することのできる描画装置および描画方法が提供される。
【0018】
また、本発明によれば、描画装置の異常を異常原因の推定を含む診断することのできる描画装置の異常診断方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施の形態1における電子ビーム描画装置の構成図である。
【図2】実施の形態2における電子ビーム描画装置の構成図である。
【図3】電子ビームによる描画方法の説明図である。
【図4】描画方法のフローチャートである。
【図5】(a)および(d)は、検出部からの信号と指示照射量相当値の演算部からのデータとの比較についての説明図である。
【図6】(a)および(b)は、検出部からの信号と指示照射量相当値の演算部からのデータとの比較についての説明図である。
【図7】(a)および(b)は、検出部からの信号と指示照射量相当値の演算部からのデータとの比較についての説明図である。
【図8】(a)および(b)は、検出部からの信号と指示照射量相当値の演算部からのデータとの比較についての説明図である。
【図9】(a)および(b)は、検出部からの信号と指示照射量相当値の演算部からのデータとの比較についての説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
実施の形態1.
図1は、本実施の形態における代表的なエネルギービーム描画装置の一つである、可変成形ビーム(VSB:Variable Shaped Beam)方式電子ビーム描画装置の構成図である。この電子ビーム描画装置100は、試料に電子ビームが照射されて発生した反射・反射・散乱電子を検出する検出部19と、描画データから得られた所定単位における指示照射量相当値を演算する演算部25aと、検出部からの信号を所定単位毎に積分する積分部23と、演算部25aで得られた値と積分部23で得られた値とを比較する比較部24とを有する。
【0021】
電子ビーム描画装置100は、試料としての基板2の表面に電子ビーム54を照射して所望のパターンを描画する装置である。そのため、電子ビーム描画装置100は、描画室1と、描画室1の上部に立設した電子ビーム照射手段たる電子光学鏡筒10とを備えている。描画室1には、電子ビーム54の光軸方向と直交するX方向およびY方向に移動可能なXYステージ3が設けられている。一方、電子光学鏡筒10は、電子銃6から発せられた電子ビーム54を所定の断面形状に成形した後、偏向させて基板2に照射するものである。その構成は、図1に示すように、電子銃6、各種レンズ7、8、9、11、12、ブランキング用偏向器13、成形偏向器14、ビーム走査用の副偏向器15、ビーム走査用の主偏向器16、および、2個のビーム成形用アパーチャ17、18等からなる。
【0022】
基板2は、例えば、フォトマスク、レチクル用基板またはウェハとすることができる。
【0023】
検出部19は、描画室1の上方に設けられており、基板2に電子ビーム54が照射されて発生した反射・散乱電子を電流値として検出する。検出部19は、反射・散乱電子の他に2次電子を電流値として検出してもよい。また、イオンなどの他の荷電粒子を検出してもよい。
【0024】
検出部19から出力された電気信号(D):所定単位内でのN番目のショットでの反射・散乱電子から検出される電気信号を、所定の単位毎に積分し、その積分値(ΣD)を比較部24へ送る。積分方法としては、後述の方法もあるが、検出信号(電流値)を所定単位で累積することでも、実施できる。
【0025】
比較部24では、所定単位で、検出部19からの信号積分値と、演算部25aからの指示照射量相当値の累積値との比較が行われる。ここで、演算部25aは、指示照射量相当値(S×t)、すなわち、N番目のショットでの指示照射量相当値を演算する指示値演算部25’と、所定単位での累積値を算出する指示値積分部23’とを有する。指示照射量相当値(S×t)は、電子ビーム照射装置100で照射量異常が起きているか否かを判定する際の基準値であり、所望のショットを描画するのに必要な照射量に対応する。指示照射量相当値(S×t)は、具体的には次のようにして求められる。
【0026】
描画データは、CADシステムを用いて設計された半導体集積回路などの設計データ(CADデータ)に、補正や図形パターンの分割などの処理を施すことによって作成される。
【0027】
磁気ディスク(図示せず)に格納されている描画データは、入力部26から制御計算機27で読み出されると、ショットデータ生成部28において、各ショットの図形コード(K)、位置座標、サイズ(L1、L2)および照射時間(t)が生成される。ここで、所定単位におけるN番目のショットの照射時間をt、図形コードをKなどと示す。
【0028】
次に、ショットデータ生成部28から偏向演算部29へショットサイズ(L1、L2)と位置座標が送られて、補正演算とセトリング時間の計算が行われる。ここで、L1は、X方向のショットサイズであり、L2はY方向のショットサイズである。
【0029】
セトリング時間は、偏向アンプ(34、35)にて偏向電圧を静定するのに必要な時間のことである。
【0030】
指示値演算部25’は、偏向演算部29から受け取った補正演算後のL1およびL2、照射時間t、図形コードKから指示照射量相当値を算出する。例えば、矩形ショットの場合は、所定単位におけるN番目のショット面積をSとすると、S=(L1×L2)で計算される。三角形ショットの場合には、S={(L1×L2)/2}で求められる。本実施の形態では、一例として、ショット面積Sに照射時間tおよび電流密度Dを乗じたものであるが、電流密度Dは一定でありS×tを指示照射量相当値として考える。
【0031】
以上のようにして求められた指示照射量相当値(S×t)は、所定の単位毎に指示値積分部23’で累積・積分され、得られたデータ(Σ(S×t))は比較部24へ送られる。
【0032】
比較部24では、積分部23からの信号(ΣD)と、指示値積分部23’からのデータ(Σ(S×t))との比較が行われる。ここで、検出部19で検出される信号(D)には、電子の反射・散乱効率などが影響する。したがって、こうした影響を考慮に入れると、これらの信号の間には次式の関係が成立するはずである。

Σ(S×t)=αΣD (α:比例係数)

しかしながら、何らかの原因で照射量異常が起こるとこの関係は成立しなくなる。したがって、積分部23からの信号(ΣD)と、指示値積分部23’からのデータ(Σ(S×t))とを比較することにより、照射量異常が起きているか否かを判定することができる。
【0033】
また、基板上にパーティクルなどの異物が存在した場合にも、検出部19で検出される反射・散乱電子の量は正常値から外れたものとなる。また、異物がある箇所に電子ビームが照射された場合もレジスト膜に電子ビームが正常に照射されないことにより、レジストパターンが正常に形成されず描画異常に繋がる。上述した本実施の形態の方法によれば、こうした基板上の異物に起因する描画異常も検出することができる。
【0034】
尚、比較部24における判定に上記以外の方法を用いることも可能である。また、上記では、Σ(S×t)とαΣDが一致する場合を異常が起きていない場合としたが、現実的には、両者の差が所定の範囲内である場合を含めて異常が起きていない場合とするのがよい。
【0035】
実施の形態2.
図2は、本実施の形態における電子ビーム描画装置の構成図である。尚、図1と同じ符号を付した部分は同じものであることを示している。
この電子ビーム描画装置100’は、試料に電子ビームが照射されて発生した反射・散乱電子を検出する検出部19と、描画データから得られた所定単位毎の指示照射量相当値を演算する演算部25aと、検出部19からの信号を所定単位毎に積分する積分部23aと、所定単位毎に、演算部25aで得られた指示照射量相当値と積分部23aで得られた検出値の積分値とを比較、異常判定を行う比較部24と、描画データから得られたショット単位での指示照射量相当値を照射の時系列データとして記憶する第1の記憶部22aと、検出部からの時系列信号を記憶する第2の記憶部22bと、必要に応じて、第1の記憶部に記憶された照射指示相当量の時系列データと第2の記憶部に記憶された検出部で検出された時系列データを比較・診断する異常診断部31とを有する。
【0036】
検出部19から出力された電気信号(D)は、増幅器20で増幅された後、A/D変換器21に入力される。ここで、Dは、所定単位におけるN番目のショットの反射・散乱電子検出信号である。A/D変換器21は、増幅器20からのアナログ信号をデジタル信号に変換する。またこの際に時間軸を含めて信号を検出し記録する。
【0037】
電子ビーム描画装置100’は、第1および第2の記憶部22a、22bと、積分部23aと、比較部24とを有する。
【0038】
第1の記憶部22aは、指示照射量相当値(S×t)を、ショット開始と終了の時間軸を含めて時系列データとして記憶させるものである。
A/D変換器21で変換されたデジタル信号は、第2の記憶部22bに送られる。第2の記憶部22bは、一時的には時間軸を含めた検出部19からの信号(D)の信号波形の履歴を記録するものである。積分部23aは、第2の記憶部22bからの信号を所定の単位毎に積分し、その積分値(ΣD)を比較部24へ送る。
【0039】
比較部24では、所定単位毎に、検出部からの信号と、演算部からの所定単位照射量指示相当値データとの比較が行われる。ここで、演算部は、指示照射量相当値(S×t)を演算する指示値演算部25’と指示値積分部23’を有する。指示照射量相当値(S×t)は、電子ビーム照射装置100で照射量異常が起きているか否かを判定する際の基準値であり、所望のショットを描画するのに必要な照射量に対応する。指示照射量相当値(S×t)は、前記実施例と同様に求められる。
【0040】
比較部24では、検出部からの信号(ΣD)と、照射量演算部からの信号(Σ(S×t))との比較が行われる。ここで、検出部19で検出される信号(D)には、電子の反射・散乱効率などが影響する。したがって、こうした影響を考慮に入れると、これらの信号の間には次式の関係が成立するはずである。

Σ(S×t)=αΣD (α:比例係数)

しかしながら、何らかの原因で照射量異常が起こるとこの関係は成立しなくなる。したがって、検出部からの信号(ΣD)と、照射量演算部からの信号(Σ(S×t))とを比較することにより、照射量異常が起きているか否かを判定することができる。
【0041】
また、基板上にパーティクルなどの異物が存在した場合にも、検出部19で検出される反射・散乱電子の量は正常値から外れたものとなる。また、異物がある箇所に電子ビームが照射された場合もレジスト膜に電子ビームが正常に照射されないことにより、レジストパターンが正常に形成されず描画異常に繋がる。上述した本実施の形態の方法によれば、こうした基板上の異物に起因する描画異常も検出することができる。
【0042】
尚、比較部24における判定に上記以外の方法を用いることも可能である。また、上記ではΣ(S×t)とαΣDが一致する場合を異常が起きていない場合としたが、現実的には、両者の差が所定の範囲内である場合を含めて異常が起きていない場合とするのがよい。
【0043】
比較部24において、照射量や異物に起因する描画異常が起きていると判定された場合には、その情報を制御計算機27内に設けられた異常診断部31へ送信する。ここで、情報には、基板上の描画位置(所定単位毎の描画位置でもよい。)に関する情報が含まれる。また、第1の記憶部22aおよび第2の記憶部22bの内部に格納されている信号(D)、指示照射量相当値(S×t)の時系列データも異常診断部31へ転送する。信号(D)は、時間軸を含んだ信号履歴である。異常診断部31では、不良個所の特定・異常原因の推定等の診断を行う。そして、制御計算機27を通じてその結果をユーザに通知する。
【0044】
図3は、電子ビームによる描画方法の説明図である。この図に示すように、基板2上に描画されるパターン51は、短冊状のフレーム領域(主偏向領域)52に分割されている。電子ビーム54による描画は、ステージ3が一方向(例えば、X方向)に連続移動しながら、フレーム領域52毎に行われる。フレーム領域52は、さらに副偏向領域53に分割されており、電子ビーム54は、副偏向領域53内の必要な部分のみを描画する。尚、フレーム領域52は、主偏向器16の偏向幅で決まる短冊状の描画領域であり、副偏向領域53は、副偏向器15の偏向幅で決まる単位描画領域である。
【0045】
チップ全体の描画データは、主偏向領域のサイズにしたがった複数の帯状のフレームデータと、フレーム内で主偏向領域よりも小さい複数の副偏向領域単位とからなるデータ階層構造になっている。
【0046】
副偏向領域は、副偏向器15によって、主偏向領域よりも高速に電子ビーム54が走査されて描画される。副偏向領域内を描画する際には、パターン図形に応じて準備された寸法と形状のショットが成形偏向器により形成される。具体的には、電子銃から出射された電子ビームが、アパーチャ17で矩形状に成形された後、成形偏向器14でアパーチャ18の上に投影されて、そのビーム形状と寸法を変化させる。その後、上述の通り、副偏向器15と主偏向器16により偏向されて、ステージ3上に載置された基板2に照射される。
【0047】
副偏向領域の基準位置の位置決めは、主偏向器16で行われ、副偏向領域53内での描画は、副偏向器15によって制御される。すなわち、主偏向器16によって、電子ビーム54が所定の副偏向領域53に位置決めされ、副偏向器15によって、副偏向領域53内での描画位置が決められる。さらに、成形偏向器14とアパーチャ17、18によって、電子ビーム54の形状と寸法が決められる。そして、ステージ3を一方向に連続移動させながら、副偏向領域53内を描画し、1つの副偏向領域53の描画が終了したら、次の副偏向領域53を描画する。フレーム領域52内の全ての副偏向領域53の描画が終了したら、ステージ3を連続移動させる方向と直交する方向(例えば、Y方向)にステップ移動させる。その後、同様の処理を繰り返して、フレーム領域52を順次描画していく。
【0048】
次に、電子ビーム描画装置による描画方法について説明する。
【0049】
まず、描画室1内のステージ3上に基板2を載置する。次いで、ステージ3の位置検出を位置回路5により行い、制御計算機27からの信号に基づいて、ステージ駆動回路4によりステージ3を描画可能な位置まで移動させる。
【0050】
電子ビーム54は、電子銃6よりを出射される。出射された電子ビーム54は、照明レンズ7により集光される。そして、ブランキング用偏向器13により、電子ビーム54を基板2に照射するか否かの操作を行う。
【0051】
アパーチャ17に入射した電子ビーム54は、アパーチャ17の開口部を通過した後、成形偏向アンプ34により制御された成形偏向器14によって偏向される。そして、アパーチャ18に設けられた開口部を通過することにより、所望の形状と寸法を有するビーム形状になる。このビーム形状は、基板2に照射される電子ビーム54の描画単位である。
【0052】
電子ビーム54は、ビーム形状に成形された後、縮小レンズ11によって縮小される。そして、基板2上における電子ビーム54の照射位置は、主偏向アンプ36によって制御された主偏向器16と、副偏向アンプ35によって制御された副偏向器15とにより制御される。主偏向器16は、基板2上の副偏向領域53に電子ビーム54を位置決めする。また、副偏向器15は、副偏向領域53内で描画位置を位置決めする。
【0053】
基板2への電子ビーム54による描画は、ステージ3を一方向に移動させながら、電子ビーム54を走査することにより行われる。具体的には、ステージ3を一方向に移動させながら、各副偏向領域53内におけるパターンの描画を行う。そして、1つのフレーム領域52内にある全ての副偏向領域53の描画を終えた後は、ステージ3を新たなフレーム領域52に移動して同様に描画する。
【0054】
上記のようにして、基板2の全てのフレーム領域52の描画を終えた後は、新たなマスクに交換し、上記と同様の方法による描画を繰り返す。
【0055】
図4は、実施形態2による描画方法/異常検出/異常診断のフローチャートである。
【0056】
図2の制御計算機27によって描画処理の開始が指示されると(S101)、上述した描画方法にしたがい、基板2に対して電子ビーム54が照射される(S102)。すると、基板2上で反射・散乱した電子が検出部19で検出される。S103では、所定単位内の描画を終えたか否かを判断し、終えていない場合には、S104へ進む。ここで、所定単位とは、例えば、副偏向領域単位とすることができる。
【0057】
描画が所定単位内である場合には、検出部19からの信号は、増幅器20で増幅され、A/D変換器21でデジタル信号に変換された後、第2の記憶部22bに送られる(S104)。第2の記憶部22bは、検出部19からの時系列データを蓄積し、所定の単位毎に積分部23aにデータを送る。積分部23aは、第2の記憶部22bからの信号を所定の単位毎に積分する(S105)。
フローチャートには記載していないが、同時に、描画データに対する指示照射量相当値(S×t)の時系列データの第1の記憶部22aへの記録、累積値の算出も実施される。
【0058】
S103で、所定単位内の描画を終えたと判断した場合には、S106へ進む。S106では、積分部からの積分値と、演算部からの累積値との比較・判定が行われる。この処理は、比較部24で行われる(一時診断)。
【0059】
S106において、Σ(S×t)とαΣDが一致しない場合、すなわち、

Σ(S×t)=αΣD (α:比例係数)

の関係が成立しない場合、または、Σ(S×t)とαΣDの差が所定の範囲内でない場合には、S107に進み、その情報を制御計算機27内に設けられた異常診断部31へ送信する。また、第1および第2の記憶部22a、b内に格納されている信号(D)および照射量指示相当量の時系列データも異常診断部31へ転送する。異常診断部31では、後の解析や検証のため、磁気ディスクなどに情報が記録される。その後、S108に進んで、第1および第2の記憶部22a、bに一次格納されたデータを消去する。一方、上式の関係が成立する場合にもS108に進んで、同様の処理を行う。
異常診断部31は、一時異常診断で、時系列(データ信号(D)および照射量指示相当量の時系列データ)の受領を完了すると、異常個所の特定、異常原因の推定・特定等の異常診断を行い、結果をユーザに通知する。その間、描画装置は、次の所定単位の描画をすすめている。
【0060】
次に、S109において、残りの描画量を確認する。描画量がある場合には、S102に戻り、S102〜S109を繰り返す。一方、S109で残りの描画量がない場合には、描画処理を終了する(S110)。
以上では、説明を分かり易くするために、逐次的に描画および診断のフローを記載したが、描画を行う中で、所定単位の境界情報の伝達、時系列データの抽出、積分、比較等の診断工程を、描画と並行して実施することは可能である。
【0061】
図4に示す一連の処理において、S106は、電子ビーム描画装置内での不良の一次診断処理と言える。この一次診断処理の結果は比較部で処理され(S106)、不良箇所がある場合には、異常診断部で時系列データ等の分析、異常個所の診断が行われ(S112)、その結果がユーザに通知される(S113)。ユーザへ異常を通知するタイミングは、異常の診断直後であることが好ましい。異常の程度によっては、描画を強制的に描画を終了することが必要になる場合もある。例えば、明らかな電子銃の異常(電子銃のダウンや大きな放電等))が見られた場合には強制終了が必要になる。
【0062】
以上では、可変成形(VSB:Variable Shaped Beam)方式の電子ビーム描画装置について、副偏向領域を所定単位とする一例を述べた。実製品では、副偏向領域単位(例えば16μm□の領域)に含まれるショット数は例えば1〜十数百個程度と幅があり、時間的にも例えば50ns〜数ms程度の幅がある。そこで、本実施の形態においては、積分部23aで得られる信号(ΣD)に過大なばらつきが生じるのを防ぐため、副偏向領域に含まれるショット数が所定数以下の場合は、次の連続する副偏向領域を繋げて総ショット数が所定数以上になるようグルーピングすることも可能である。この場合、フレームを跨って副偏向領域を纏めると、異常発生時の位置の特定に複雑さが発生することを考慮して、フレームを跨がないよう制限を加えてもよい。また、ラスター描画装置等の別の描画方式でも同様に、所定単位を種々選択し設定することで、異常検出の最適化が可能である。例えば、ラスター方式の電子ビーム描画装置では、ビームサイズが一定とみなせる場合に所定のラスター数をフレーム内での所定単位と設定することができる。
【0063】
図5を用いて、異常診断部31での異常診断方法、つまり、検出部からの時系列信号と、指示値演算部25’からの時系列データとの比較について説明する。尚、この例では、所定単位内にN個(N:整数)のショットがされる場合を示している。ここで、所定単位は、例えば、副偏向領域単位とすることができる。
【0064】
図5(a)は、ブランキングデータを模式的に示したものである。横軸は時間を、縦軸はブランキング信号(BLK信号)の強度をそれぞれ表している。ブランキング信号が印加されている間、すなわち、t、t、t、・・・、t(N−2)、t(N−1)、tで示される時間は、マスクに電子ビームが照射されている。したがって、t、t、t、・・・、t(N−2)、t(N−1)、tは、それぞれ1ショット当たりの電子ビームの照射時間に相当する。一方、ブランキング信号が印加されていないときはセトリング時間に対応し、この間はマスクに電子ビームが照射されない。
【0065】
図5(b)は、各ショットの面積を模式的に示したものである。S、S、S、・・・、S(N−2)、S(N−1)、Sは、それぞれショット面積を表しており、単位時間指示照射量相当値に相当する。
【0066】
図5(c)は、指示照射量相当値を模式的に示したものである。横軸は、時間を表しており、そのスケールは図5(a)と同じである。また、縦軸は、単位時間指示照射量相当値を表している。ここで、指示照射量相当値は、所定単位におけるN番目のショットの照射時間と、所定単位におけるN番目のショットの面積との積で表される。つまり、指示照射量相当値は、図5(a)に示すN番目のショットの照射時間(t)と、図5(b)に示すN番目のショットの面積(S)との積で表される。
【0067】
図5(d)は、検出部で検出された反射・散乱電子量を模式的に示したものである。横軸は時間を表しており、スケールは図5(a)と同じである。また、縦軸は反射・散乱電子の検出信号を表している。図中のD、D、D、・・・、D(N−2)、D(N−1)、Dは、それぞれ対応するショットで検出された反射・散乱電子の信号を表している。尚、検出信号には、反射・散乱電子の他に2次電子やイオンなどの他の荷電粒子による信号が含まれていてもよい。
【0068】
電子ビーム描画装置100では、比較部24において、検出部からの信号と照射量演算部からの信号との比較が行われる。この例では、N個のショット毎に積分して得られた、検出部からの信号(ΣD)と照射量演算部からのデータ(Σ(S×t))とが比較される。
【0069】
比較は、具体的には、次式の関係が成立するか否かを調べる処理である。

Σ(S×t)=αΣD (α:比例係数)

図5(c)と(d)を比較すると、上記関係が成立することが分かる。したがって、この場合には照射量は正常であると判断される。
【0070】
図6(a)は、指示照射量相当値を模式的に示したものであり、図5(c)と同様である。尚、この例でも、所定単位内にN個(N:整数)のショットがされるものとする。所定単位は、例えば、副偏向領域単位とすることができる。
【0071】
図6(b)は、検出部で検出された反射・散乱電子量を模式的に示したものである。横軸は時間を表しており、スケールは図6(a)と同じである。また、縦軸は反射電子の検出信号を表している。尚、検出信号には、反射・散乱電子の他に2次電子やイオンなどの他の荷電粒子による信号が含まれていてもよい。
【0072】
図6(a)と(b)を比較すると、

Σ(S×t)=αΣD (α:比例係数)

の関係は成立しない。図6(b)の反射電子量は、図6(a)の指示照射量相当値に対して増加している。この所定単位で異常が発生していると判断され、その関連情報が比較部24から異常診断部31へ送られる。また、第1および第2の記憶部22a、b内に格納されている時系列データ、すなわち、図6(a)および(b)のデータも異常診断部31へ転送される。異常診断部31では、比較部24からの情報、第1および第2の記憶部22a、bからの時系列データに基づき、不良個所の特定と異常原因の推定を含む異常診断を行う。図6(b)の例では、電子ビーム描画装置100’内の高圧電源に異常が起きていることが推測される。こうした診断結果は、制御計算機27を通じてユーザに通知される。
【0073】
図7(a)は、指示照射量相当値を模式的に示したものであり、図5(c)と同様である。尚、この例でも、所定単位内にN個(N:整数)のショットがされるものとする。所定単位は、例えば、副偏向領域単位とすることができる。
【0074】
図7(b)は、検出部で検出された反射電子量を模式的に示したものである。横軸は時間を表しており、スケールは図7(a)と同じである。また、縦軸は反射電子の検出信号を表している。尚、検出信号には、反射電子の他に2次電子やイオンなどの他の荷電粒子による信号が含まれていてもよい。
【0075】
図7(a)と(b)を比較すると、

Σ(S×t)=αΣD (α:比例係数)

の関係は成立しない。図7(b)の反射電子量は、図7(a)の指示照射量相当値に対して減少しており、また、反射・散乱電子量は1ショット内で変化している。この所定単位で異常が発生していると判断され、その関連情報が比較部24から異常診断部31へ送られる。また、第1および第2の記憶部22a、b内に格納されている信号、すなわち、図7(b)のデータも異常診断部31へ転送される。異常診断部31では、比較部24からの情報、第1および第2の記憶部22a、bからの時系列データに基づき、不良個所の特定と異常の診断を行う。図7(b)の例では、電子ビーム描画装置100’内で電子銃6のアライメントコイルに異常が生じている結果、電子ビーム54にアライメントずれなどが起きていることが推測される。こうした診断結果は、制御計算機27を通じてユーザに通知される。
【0076】
図8(a)は、指示照射量相当値を模式的に示したものであり、図5(c)と同様である。尚、この例でも、所定単位内にN個(N:整数)のショットがされるものとする。所定単位は、例えば、副偏向領域単位とすることができる。
【0077】
図8(b)は、検出部で検出された反射・散乱電子量を模式的に示したものである。横軸は時間を表しており、スケールは図8(a)と同じである。また、縦軸は反射電子の検出信号を表している。尚、検出信号には、反射電子の他に2次電子やイオンなどの他の荷電粒子による信号が含まれていてもよい。
【0078】
図8(a)と(b)を比較すると、

Σ(S×t)=αΣD (α:比例係数)

の関係は成立しない。図8(b)の反射電子量は、図8(a)の指示照射量相当値に対して増加したり、減少したりしている。また、1ショット内での反射電子量にも変化が見られる。この所定単位で異常が発生していると判断され、その関連情報が比較部24から異常診断部31へ送られる。また、第1の記憶部22a内に格納されている信号、すなわち、図8(b)のデータも異常診断部31へ転送される。異常診断部31では、比較部24からの情報、第1および第2の記憶部22a、bからの時系列データに基づき、不良個所の特定と異常の診断を行う。図8(b)の例では、電子ビーム描画装置100’内での電子銃6にカソード放電などの異常が起きていることが推測される。こうした診断結果は、制御計算機27を通じてユーザに通知される。尚、比較は、N個のショット毎ではなく1ショット毎に行うことも可能である。
【0079】
図9(a)は、指示照射量相当値を模式的に示したものであり、図5(c)と同様である。尚、この例でも、所定単位内にN個(N:整数)のショットがされるものとする。所定単位は、例えば、副偏向領域単位とすることができる。
【0080】
図9(b)は、検出部で検出された反射電子量を模式的に示したものである。横軸は時間を表しており、スケールは図9(a)と同じである。また、縦軸は反射電子の検出信号を表している。尚、検出信号には、反射電子の他に2次電子やイオンなどの他の荷電粒子による信号が含まれていてもよい。
【0081】
図9(a)と(b)を比較すると、

Σ(S×t)=αΣD (α:比例係数)

の関係は成立しない。図9(b)では、1ショットの照射時間が図9(a)より長くなっている。この所定単位で異常が発生していると判断され、その関連情報が比較部24から異常診断部31へ送られる。また、第1の記憶部22a内に格納されている信号、すなわち、図9(b)のデータも異常診断部31へ転送される。異常診断部31では、比較部24からの情報、第1および第2の記憶部22a、bからの時系列データに基づき、不良個所の特定と異常の診断を行う。図9(b)の例では、電子ビーム描画装置100’内でブランキングアンプ33などに異常が生じている結果、ブランキング制御不良などが起きていることが推測される。こうした診断結果は、制御計算機27を通じてユーザに通知される。
【0082】
以上述べたように、本発明では、マスクに電子ビームを照射して発生した反射電子を検出部で検出する。一方、描画データから得られた所定単位におけるN番目のショットの面積(S)と照射時間(t)の積を指示値演算部にて演算する。そして、第1の記憶部において、ショット開始、終了時間を含めたS)の時系列データを記憶させる。一方、検出部からの信号(D)の時系列を第2の記憶部に記憶する。
【0083】
次いで、積分部(積分部)において、検出部からの信号(D)を所定単位毎に積分して積分値を求める。
【0084】
次に、比較部にて、所定単位毎、積分値と指示照射量相当値(累積値)を比較して、反射・散乱検出量に異常が起きているか否かを判定する。その後、比較部からの情報、第2の記憶部からの時系列データを基に異常診断部にて異常箇所を診断する。すなわち、本発明によれば、異常の原因となっている箇所・原因を装置内でほぼリアルタイムで診断することができる。また、所定単位を副偏向器によってエネルギービームが走査される副偏向領域とすれば、異常判断等の処理が容易になるので、装置内での異常を正確且つ効率的に検知することができる。
【0085】
尚、本発明は、上記各実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において、種々変形して実施することができる。例えば、上記各実施の形態では、電子ビームを用いたが、本発明はこれに限られるものではなく、イオンビームなどの他の荷電粒子ビームや、レーザ光などの光ビームなどの他のエネルギービームを用いた場合にも適用可能である。
【0086】
例えば、レーザ光描画装置は、レーザビームの走査と移動にミラーを使用したり、反射・散乱光の検出に光量検出器を使用したりするなど、電子ビーム描画装置と機構的に異なる構造を有する。しかし、この場合にも、基板からの反射・散乱光を検出し、所定単位での指示照射量相当値と比較することで、描画異常の判定や診断を行うことができる。
【符号の説明】
【0087】
1 描画室
2 基板
3 ステージ
4 ステージ駆動回路
5 位置回路
6 電子銃
7、8、9、11、12 各種レンズ
10 電子光学鏡筒
13 ブランキング用偏向器
14 成形偏向器
15 副偏向器
16 主偏向器
17、18 アパーチャ
19 検出部
20 増幅器
21 A/D変換器
22a 第1の記憶部
22b 第2の記憶部
23 積分部
23’ 指示値積分部
24 比較部
25a 演算部
25’ 指示値演算部
26 入力部
27 制御計算機
28 ショットデータ生成部
29 偏向演算部
30 積分部
31 異常診断部
33 ブランキングアンプ
34 成形偏向アンプ
35 副偏向アンプ
36 主偏向アンプ
51 描画されるパターン
52 フレーム領域
53 副偏向領域
54 電子ビーム
100 電子ビーム描画装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
描画室内に載置される試料にエネルギービームを照射して、前記試料の上に描画データに基づく所定のパターンを描画する描画装置において、
前記試料にエネルギービームが照射されて発生した反射・散乱荷電粒子または反射・散乱光を検出する検出部と、
前記描画データから得られた所定単位毎の指示照射量相当値を演算する演算部と、
前記検出部からの信号を前記所定単位毎に積分する積分部と、
前記演算部で得られた値と前記積分部で得られた値とを比較する比較部とを有することを特徴とする描画装置。
【請求項2】
前記比較部では、前記所定単位毎に、前記演算部で得られた値と、前記積分部で得られた値に所定の係数を乗じた値との比較が行われ、
両者の差が所定の閾値以下であれば前記エネルギービームの照射量は正常と判断し、両者の差が前記所定の閾値より大きければ前記エネルギームの照射量は異常と判断してその旨の通知を行うことを特徴とする請求項1に記載の描画装置。
【請求項3】
描画室内に載置される試料にエネルギービームを照射して、前記試料の上に描画データに基づく所定のパターンを描画する描画装置において、
前記試料にエネルギービームが照射されて発生した反射・散乱荷電粒子または反射・散乱光を検出する検出部と、
前記描画データから得られた所定単位毎の指示照射量相当値を演算する演算部と、
前記検出部からの信号を前記所定単位毎に積分する積分部と、
前記演算部で得られた値と前記積分部で得られた値とを比較する比較部と、
前記描画データから得られたショット単位での指示照射量相当値を照射の時系列データとして記憶する第1の記憶部と、
前記検出部からの時系列信号を記憶する第2の記憶部と、
必要に応じて、前記第1の記憶部に記録された照射指示相当量と照射の時系列データとを比較・診断する異常診断部とを有することを特徴とする描画装置。
【請求項4】
試料にエネルギービームを照射して、前記試料の上に描画データに基づく所定のパターンを描画する描画方法において、
前記試料にエネルギービームが照射されて発生した反射・散乱荷電粒子または反射・散乱光を検出する検出工程と、
前記描画データから得られた所定単位毎の指示照射量相当値を演算する演算工程と、
前記検出工程で得られた信号を前記所定単位毎に積分する積分工程と、
前記演算工程で得られた値と前記積分工程で得られた値とを比較、異常判定する比較・判定工程とを有し、
前記比較・判定工程で異常が起きていると判断された場合には、前記比較工程における情報を蓄積して所定の処理を行うことを特徴とする描画方法。
【請求項5】
試料にエネルギービームを照射して、前記試料の上に描画データに基づく所定のパターンを描画する描画装置の異常診断方法において、
前記試料にエネルギービームが照射されて発生した反射・散乱荷電粒子または反射・散乱光を検出する検出工程と、
前記描画データから得られた所定単位毎の指示照射量相当値を演算する演算工程と、
前記検出工程で得られた信号を前記所定単位毎に積分する積分工程と、
前記演算工程で得られた値と前記積分工程で得られた値とを比較する比較工程とを有し、
前記比較工程で異常が起きていると判断された場合には、前記指示照射量相当値の時系列データと、前記反射・散乱荷電粒子または前記反射・散乱光の検出信号の時系列データとを比較して、前記異常原因の推定を行うことを特徴とする描画装置の異常診断方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−222916(P2011−222916A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−93471(P2010−93471)
【出願日】平成22年4月14日(2010.4.14)
【出願人】(504162958)株式会社ニューフレアテクノロジー (669)
【Fターム(参考)】