説明

描画装置

【課題】発光素子アレイが傾いている場合や、発光素子アレイにおいて発光素子が正常に並んでいない場合でも、パターンデータに基づいて意図した通りのパターンを描画することのできる描画装置を提供すること。
【解決手段】描画装置は、基板を載置するテーブルと、複数の発光素子を有する発光素子アレイにより基板に光を照射するヘッドと、基板に対してヘッドを相対的に移動させるステージ移動機構と、制御ユニットを備える。制御ユニットは、基板上に描画すべきパターンデータから、基板に対するヘッドの相対位置がどの位置にあるときに上記複数の光供給素子のどの光供給素子から光を供給すべきかを示す描画データを生成し、ヘッドから照射される光の理想的な照射位置と実際の照射位置との差分を計測し、当該差分に応じて上記描画データを補正し、当該補正された描画データに基づいて上記発光素子アレイを制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、描画装置に関し、特に、所定方向に配列された複数の光供給素子を有するアレイユニットを用いて描画処理を行う描画装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数のLED(Light Emitting Diode)またはLD(Laser Diode)等の発光素子をライン上に並べた発光素子アレイを用いて基板に光を照射する描画装置がある。このような描画装置では、基板の主面に沿った方向に発光素子アレイを移動(走査)させながら、基板上に描画すべきパターンデータと、当該走査に応じて周期的に入力される発光タイミング信号に基づいて、各発光素子を間欠的に発光させることによって、基板上に所定のパターンを描画する。
【0003】
上記のような描画装置においては、各発光素子は、発光タイミング信号の入力タイミングに合わせて発光するため、主走査方向の解像度を高めるためには、発光素子アレイの移動速度を遅くするか、発光タイミング信号の周期を短くする必要がある。例えば、特許文献1には、PLL回路により発光タイミング信号を逓倍する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−345169号公報(図2、図7)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のような描画装置では、発光素子アレイに含まれる複数の発光素子が発光タイミング信号の入力タイミングに合わせて同時に発光するため、発光素子アレイが正常な状態から傾いている場合や、発光素子アレイにおいて発光素子が正常に並んでいない場合には、パターンを正しく描画することができないという問題がある。
【0006】
それゆえに本発明は、発光素子アレイが傾いている場合や、発光素子アレイにおいて発光素子が正常に並んでいない場合でも、パターンデータに基づいて意図した通りのパターンを描画することのできる描画装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は以下のような構成を採用した。なお、括弧内の参照符号等は、本発明の理解を助けるために後述する実施形態との対応関係の一例を示したものであって、本発明の範囲を何ら限定するものではない。
【0008】
本発明の描画装置は、基板を載置するテーブル(11)と、所定方向に配列された複数の光供給素子(発光素子)を有する1以上のアレイユニット(発光素子アレイ31)により上記基板の主面上に形成された感光性材料の層に光を照射するヘッド(30)と、上記基板の主面に沿った方向に上記基板に対して上記ヘッドを相対的に移動させる走査手段(10)と、上記基板上に描画すべきパターンデータから、上記基板に対する上記ヘッドの相対位置がどの位置にあるときに上記複数の光供給素子のどの光供給素子から光を供給すべきかを示す描画データ(図9)を生成する描画データ生成手段(50)と、上記ヘッドから照射される光の理想的な照射位置と実際の照射位置との差分を計測する差分計測手段(50、S15、図15B)と、上記描画データ生成手段によって生成された描画データを、上記差分計測手段によって計測された差分に応じて補正する補正手段(50、S16)と、上記補正手段によって補正された描画データに基づいて上記アレイユニットを制御する制御手段(50)とを備える。なお、上記光供給素子は、発光型、反射型、回折型、透過型のいずれでもよい。
【0009】
なお、上記描画装置は、上記基板に対する上記ヘッドの相対位置に基づいて露光タイミング信号(発光タイミング信号)を発生させる露光タイミング信号発生手段(54)をさらに備え、上記描画データは、上記露光タイミング信号に応じて各上記光供給素子から光を供給すべきか否か、および、光を供給すべき場合には当該露光タイミング信号からどれだけずれたタイミングで各上記光供給素子から光を供給すべきかを示す多値データ(1ビットの発光データと8ビットのオフセットデータ)であってもよい。
【0010】
また、上記描画装置は、上記露光タイミング信号を逓倍する逓倍手段(303)をさらに備え、上記描画データは、上記逓倍手段により逓倍された露光タイミング信号(発光トリガ信号)のうち、どの逓倍された露光タイミング信号(発光トリガ信号)に合わせて各上記光供給素子から光を供給すべきかを示すデータ(オフセットデータ)を含んでいてもよい。
【0011】
また、上記光供給素子は、自ら光を発光する発光素子であってもよい。
【0012】
また、上記光供給素子は、光源からの光を反射する反射素子であってもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、発光素子アレイが傾いている場合や、発光素子アレイにおいて発光素子が正常に並んでいない場合でも、パターンデータに基づいて意図した通りのパターンを描画することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】露光装置1の外観を示す図
【図2】露光装置1の外観を示す図
【図3】発光素子アレイ31の構成を示す図
【図4】制御ユニット4の構成を示す図
【図5】ヘッド30の走査例を示す
【図6】ヘッド30の走査例を示す
【図7】従来技術による斜め線の描画結果を示す図
【図8】本実施形態による斜め線の描画結果を示す図
【図9】描画データの詳細を示す図
【図10】ヘッド30の構成を示す図
【図11】PLL回路303の動作を示す図
【図12】一致検出回路304の動作を示す図
【図13】発光素子アレイ31の傾き補正処理の流れを示すフローチャート
【図14】図13のステップS11で発光させる発光素子を示す図
【図15A】図13のステップS12で撮像される画像の一例を示す図
【図15B】図13のステップS12で撮像される画像の一例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0015】
(露光装置の全体構成)
図1および図2は、本発明の一実施形態に係る露光装置1の外観を示す図である。露光装置1は、感光性材料が塗布された基板20を載置するためのステージ11と、ステージ11をY方向(主走査方向)およびX方向(副走査方向)に移動させるためのステージ移動機構10と、ステージ11上の基板20に向けて光を照射するヘッド30を備える。なお、本実施形態ではヘッド30は1つであるが、露光装置1が複数のヘッド30を備えていてもよい。
【0016】
ステージ移動機構10は、ステージ11をY方向に移動(主走査)し、主走査が終了する毎に次の主走査の開始位置へとステージ11をX方向に移動(副走査)させる。そして、次の主走査が前回の主走査とは逆向きに行われる。このように、ステージ移動機構10により、基板20の主面に沿った方向にヘッド30がステージ11に対して相対的に移動可能となっている。
【0017】
露光装置1は、ステージ11の側に配置されたセンサ部をさらに備えている。センサ部は、ヘッド30からの光を受光する受光素子40と、受光素子40が上面に固定されたセンサステージ45と、センサステージ45の上面に固定されて受光素子40からの出力を演算処理するセンサ処理部44を備える。本実施形態では、一例として、受光素子40としてフォトダイオードが利用される。図1に示すように、受光素子40の受光面と基板20の上面は同じ高さに位置する。
【0018】
上記センサ部をX方向(副走査方向)に移動させるための機構として、露光装置1には、センサステージ45が取り付けられたX方向を向くボールネジ43と、センサステージ45を支持するX方向を向く2本のガイドレール41a,41bと、ボールネジ43に接続されるモータ42が設けられている。ヘッド30のキャリブレーションの際には、モータ42によりボールネジ43が回転することにより、受光素子40およびセンサ処理部44がセンサステージ45と共にガイドレール41a,41bに沿ってX方向(副走査方向)に滑らかに移動し、ヘッド30からの光が受光素子40により順次受光されてセンサ処理部44に送られる。
【0019】
なお、図1および図2では図示していないが、露光装置1は後述する制御ユニット50を有している。
【0020】
(ヘッドの構成)
次に、ヘッド30についてより詳細に説明する。
【0021】
ヘッド30には、図3に示すように、ライン状に並んだ複数の発光素子で構成される発光素子アレイ31が設けられている。発光素子としては、LEDやLD等を利用することができる。発光素子アレイから出力された光は、結像光学系を通じて基板20上に(後述する差分計測処理の際には受光素子40上に)結像される。なお、本実施形態では、パターンデータに基づいて発光素子から光を基板20に照射するようにしているが、本発明はこれに限らず、例えば、レーザー光を、任意の空間光変調素子(反射型、回折格子型、透過型など)によってパターンデータに基づいて変調して基板20に照射するようにしてもよい。
【0022】
(制御ユニットの構成)
次に、図4を参照して、露光装置1の動作を制御する制御ユニット50について説明する。
【0023】
制御ユニット50は、CPU51、バッファ52、演算部53、タイミング制御部54、モータ制御部55、およびHDD56を備えている。
【0024】
CPU51は、他の構成部を制御したり、基板20に描画すべきパターンを表すパターンデータから後述する描画データを生成したりする。描画データの詳細は後述する。
【0025】
演算部53は、CPU51によって生成された描画データを、ヘッド30の制御に適した形式へと変換し、バッファ52へ出力する。
【0026】
バッファ52は、演算部53から出力される描画データを一時的に保持し、タイミング制御部54から出力される信号に基づくタイミングで、この描画データをヘッド30へ出力する。
【0027】
タイミング制御部54は、バッファ52からヘッド30へ描画データの出力タイミングや、ヘッド30における発光素子アレイ31の発光タイミングを制御する。タイミング制御部54は、ステージ11に対するヘッド30の相対位置に基づいて、それらのタイミングを制御する。ステージ11に対するヘッド30のX方向(副走査方向)の相対位置は、エンコーダ33より出力される信号により判断することができる。ステージ11に対するヘッド30のY方向(主走査方向)の相対位置は、エンコーダ13より出力される信号により判断することができる。エンコーダ33は、ヘッド30を移動させるためのモータ32の回転量から、ヘッド30の移動量を示す信号を生成するものである。エンコーダ13は、ステージ11を移動させるためのモータ12の回転量から、ステージ11の移動量を示す信号を生成するものである。
【0028】
モータ制御部55は、ヘッド30を移動させるためのモータ32、およびステージ11を移動させるためのモータ12を制御する。
【0029】
HDD56は、基板20に描画すべきパターンを示すパターンデータや、パターンデータから生成される前述の描画データなど、制御ユニット50において利用する種々のデータを記憶する。
【0030】
(露光装置の動作の概要)
次に、露光装置1の動作の概要を説明する。
【0031】
図5は、ヘッド30に発光素子アレイ31が1つだけ設けられている場合の走査方法の一例を示している。ヘッド30に発光素子アレイ31が1つだけ設けられている場合には、基板20を短冊状に複数の領域に区分し、例えば一番端の領域から順番に図5の矢印の方向にヘッド30を移動させることで、基板20の全体を走査することができる。
【0032】
図6は、ヘッド30に複数の発光素子アレイ31が千鳥状に配置されている場合の走査方法の一例を示している。ヘッド30に発光素子アレイ31が複数設けられている場合には、基板20の複数の領域を複数の発光素子アレイ31でそれぞれ同時に走査することができるので、図5のように基板20に対してヘッド30を往復させることなく基板20の全体を走査することができ、より短い時間で基板20の全体を走査することができる。
【0033】
上記のような走査の最中、タイミング制御部54からヘッド30に周期的に(すなわち、ステージ11に対するヘッド30の相対位置が一定距離だけ移動する毎に)発光タイミング信号が送信される。発光タイミング信号がヘッド30に入力される毎に、ヘッド30に取り付けられた発光素子アレイ31に含まれる複数の発光素子のうち、描画しようとするパターンデータに対応する発光素子が発光する。これにより、発光タイミング信号がヘッド30に入力される毎に、基板20にパターンの一部が描画される。
【0034】
なお、上記のように発光素子が発光タイミング信号に応じて間欠的に発光するため、従来の露光装置では、図7に太線で示すような斜め線を基板20に描画しようとした場合、図7に示すように発光タイミング信号の周期に依存した段差を含む斜め線が描画されてしまう。一方、本実施形態の露光装置1によれば、後述するような構成を採用したことで、各発光素子を、発光タイミング信号の入力タイミングから個別にずらして発光させて、図8に示すように滑らかな斜め線を描画することが可能である。図8の発光トリガ信号の詳細については後述する。なお、図8では、発光タイミング信号の周期の4分の1の周期で発光トリガ信号を発生させているが、これは単なる一例に過ぎない。以下では、発光タイミング信号の周期の256分の1の周期で発光トリガ信号を発生させる例を説明する。
【0035】
(露光装置の動作の詳細)
以下、図8のような滑らかな斜め線の描画を可能にするための本実施形態の特徴的な構成について説明する。
【0036】
図9は、発光素子アレイ31の制御に用いられる描画データの一例を示している。描画データは、CPU51により、基板に描画すべきパターンを示すパターンデータに基づいて生成される。パターンデータは、例えば、CADソフトにより生成したベクトルデータである。CPU51は、このベクトルデータに基づいて、図9に示すような描画データを生成する。本実施形態では、描画データは、各チャンネル(1CH、2CH、3CH、・・・)のデータが直列に並んだ構成となっている。ここで、「チャンネル」とは、発光素子アレイ31を制御する最小単位を表しており、本実施形態では、1つの発光素子を1チャンネルとして制御する。なお、本発明はこれに限らない。例えば、2つの発光素子を1チャンネルとして制御してもよい。
【0037】
描画データには、チャンネル毎に、発光データとオフセットデータが含まれている。発光データとは、そのチャンネルの発光素子を発光させるか否かを示す1ビットのデータである。オフセットデータとは、そのチャンネルの発光素子の“詳細な”発光タイミングを規定する8ビットのデータである。より具体的に説明すると、発光素子アレイ31は、大ざっぱに言うと、前述の発光タイミング信号の入力タイミングに合わせて発光するのであるが、実際には、発光素子アレイ31の各発光素子は、発光タイミング信号の入力タイミングから、オフセットデータにおいて規定されたズレ量だけずれたタイミングでそれぞれ発光する。オフセットデータが8ビットである場合には、256通りのズレ量を規定することができる。なお、各チャンネルのオフセットデータは8ビットに限らず、任意のビット数でもよい。オフセットデータを構成するビット数を増やせば、より細かくズレ量を規定することができる。また、各チャンネルからの発光量を階調制御する場合には、各チャンネルの発光データを複数ビットで構成してもよい。
【0038】
図10は、ヘッド30の詳細な構成を示している。ヘッド30には、発光タイミング信号、チャンネルアドレス信号および描画データが入力される。発光タイミング信号およびチャンネルアドレス信号は、制御ユニット50のタイミング制御部54から送信され、描画データは、制御ユニット50のバッファ52から送信される。なお、チャンネルアドレス信号は、描画データと同期して入力される信号であって、図9のようにチャンネル毎に伝送される描画データを、そのチャンネルに対応するラッチ回路302(詳細は後述)にそれぞれ保持させるための信号である。描画データは、発光タイミング信号に同期して、チャンネル毎に順次、9ビット(1ビットの発光データと8ビットのオフセットデータ)のパラレルデータとしてヘッド30に入力される。
【0039】
アドレスデコーダ301は、チャンネルアドレス信号に基づいて、各チャンネルに対応するラッチ回路302に対して順番にラッチトリガ信号を出力する。なお、本実施形態のように1つの発光素子を1チャンネルとして制御する場合には、ラッチトリガ信号は同時に1つのラッチ回路302にしか入力されないが、複数の発光素子を1チャンネルとして制御する場合には、同一チャンネルに対応する複数のラッチ回路302に対してラッチトリガ信号が同時に入力される。
【0040】
ラッチ回路302は、アドレスデコーダ301からのラッチトリガ信号に基づいて、ラッチトリガ信号が入力された時点でヘッド30に入力されている描画データ、すなわち対応するチャンネルの描画データ(1ビットの発光データと8ビットのオフセットデータの合計9ビットのデータ)を保持し、次に再びラッチトリガ信号が入力されるまで当該描画データを一致検出回路304へ出力し続ける。
【0041】
PLL回路303は、発光タイミング信号に基づいて発光トリガ信号を出力する。発光トリガ信号は、オフセットデータと同じく8ビットのデジタルデータであって、この8ビットのデジタルデータがパラレルデータとして一致検出部304に出力される。本実施形態において、発光トリガ信号の出力周期は、前述のように、発光タイミング信号の256分の1である。PLL回路303は、或る発光タイミング信号の入力タイミングから次の発光タイミング信号の入力タイミングまでの間、256通りのデジタルデータを出力する。
【0042】
上記のような発光トリガ信号は、例えば、PLL回路303において発光タイミング信号を256逓倍した信号を生成し、当該生成した信号に基づいて生成することができる。
【0043】
図11は、発光トリガ信号の生成方法の一例を示す図である。なお、図11は、PLL回路303から発光タイミング信号の4分の1の周期で2ビットの発光トリガ信号を出力する場合を示したものであるが、当業者であれば、本実施形態のようにPLL回路303から8ビットの発光トリガ信号を出力する場合の発光トリガ信号の生成方法を、図11および本段落における説明から容易に類推可能であろう。図11において、PLL回路303は、まず、入力される発光タイミング信号を4逓倍した信号AをPLL(Phase Locked Loop)により生成する。そして、この信号Aを2分周および4分周することによって、信号Bおよび信号Cをそれぞれ生成する。このようにして生成された信号Bおよび信号Cが、発光トリガ信号(2ビットのデジタルデータ)として、一致検出回路304へパラレル出力される。
【0044】
一致検出回路304は、ラッチ回路302より入力される描画データに含まれるオフセットデータ(8ビット)と、PLL回路303より入力される発光トリガ信号(8ビット)とを比較し、両者が一致する場合には、ラッチ回路302より入力される描画データに含まれる発光データを発光素子ドライバ305に出力する。
【0045】
発光素子ドライバ305は、一致検出回路304より入力される発光データに基づいて、発光素子アレイ31の中の対応する発光素子を一定時間発光させる。
【0046】
図12は、或る発光タイミング信号の入力タイミングから、次の発光タイミング信号の入力タイミングまでの間の、チャンネル1およびチャンネル2の描画データと発光タイミングの一例を示している。チャンネル1に対応する一致検出回路304には、チャンネル1に対応するラッチ回路302より、チャンネル1の発光データ「1」と、チャンネル1のオフセットデータ「11010100」が入力されている。また、チャンネル2に対応する一致検出回路304には、チャンネル2に対応するラッチ回路302より、チャンネル2の発光データ「1」と、チャンネル2のオフセットデータ「01010100」が入力されている。一方、PLL回路303からは、図12の矢印が示す順番で発光トリガ信号が順次出力される。PLL回路303から発光トリガ信号「01010100」が出力されたとき、チャンネル2に対応する一致検出回路304では、発光トリガ信号「01010100」とオフセットデータ「01010100」の一致を検出し、発光データ「1」を出力する。これにより、チャンネル2に対応する発光素子が発光する。また、PLL回路303から発光トリガ信号「11010100」が出力されたとき、チャンネル1に対応する一致検出回路304では、発光トリガ信号「11010100」とオフセットデータ「11010100」の一致を検出し、発光データ「1」を出力する。これにより、チャンネル1に対応する発光素子が発光する。
【0047】
なお、上で説明したヘッド30の構成は単なる一例に過ぎず、同様の機能を実現するために上記構成の一部を変更しても構わない。また、PLL回路303やその他の構成要素は、必ずしもヘッド30に内蔵されている必要は無く、ヘッド30の外部(例えば制御ユニット50内など)に設けられてもよい。
【0048】
上記のように、本実施形態によれば、発光素子アレイ31に含まれる各発光素子の発光タイミングを、発光タイミング信号の周期よりも細かい時間間隔で制御することができる。よって、図8に示したように、滑らかな斜め線を描画することが可能となる。
【0049】
なお、滑らかな斜め線を描画するために、本実施形態のように各発光素子の発光タイミングをずらす代わりに、発光タイミング信号そのものの周期を256分の1に短くして、より解像度の高い描画データを用いてパターンを描画することも考えられる。しかしながら、この場合には、主走査方向に関する描画データの解像度が256倍になるため、本実施形態においてヘッド30に供給される発光データの総量の256倍のデータ量の発光データをヘッド30に供給する必要があり、そのような高速なデータ転送が可能なシステムが必要となってしまう。一方、本実施形態によれば、各発光データに対して8ビットのオフセットデータを付加しているので、ヘッド30に供給すべき描画データのデータ量は、発光データのみを供給する場合と比べて9倍になるだけで、上記の例と比較して大幅に少ないデータ量で滑らかな斜め線を描画することが可能である。
【0050】
(発光素子アレイの傾き補正)
なお、本実施形態は、発光素子アレイ31の傾きの補正にも利用することができる。以下、発光素子アレイ31の傾きの補正方法について説明する。
【0051】
図13は、発光素子アレイ31の位置ズレ補正に係る描画装置1の動作フローの一例を示している。ここでは、共通の描画データに基づいて複数の基板に共通のパターンを描画する場合を例として説明する。
【0052】
図13において、ステージ11上に基板がセットされると、ステップS11において、特定の発光素子を発光させる。本実施形態では、図14に示すように、発光素子アレイ31の両端からそれぞれ3つの発光素子を発光させるものとする。なお、ステップS11において発光させる発光素子は、発光素子アレイ31の両端からそれぞれ3つの発光素子に限らず、少なくとも2つの任意の発光素子であればよい。
【0053】
ステップS12では、ステージ11の側に配置されたセンサ部に設けられた受光素子40によって、発光素子からの光を撮像する。図15Aは、発光素子アレイ31が理想的な状態でヘッド30に取り付けられている場合の撮像画像の一例であり、図15Bは、発光素子アレイ31が傾いた状態でヘッド30に取り付けられている場合の撮像画像の一例である。
【0054】
ステップS13では、制御ユニット50のCPU51が、ステップS12で撮像された画像に基づいて、当該画像に含まれる各発光スポット(図15A、図15B参照)の重心を計算する。
【0055】
ステップS14では、CPU51は、ステップS13で計算された各発光スポットの重心から発光素子アレイ31の傾きを計算する。
【0056】
ステップS15では、CPU51は、ステップS14で計算された発光素子アレイ31の傾きに基づいて、各発光素子の照射位置のズレ量(すなわち、各発光素子の理想的な照射位置と実際の照射位置との差分であって、特定の基準位置からのずれ量であってもよいし、特定の発光素子の照射位置を基準とした相対的なズレ量であってもよい)を計算する。なお、ここでは、発光素子アレイ31において複数の発光素子が真っ直ぐに並んで配置され、それらの発光素子から同一方向に光が照射されることを前提としているため、図15Bに示すような2つの発光スポットの重心位置から各発光素子のズレ量を計算することができる。なお、このようなことを前提としない場合(すなわち、発光素子アレイ31において複数の発光素子が真っ直ぐに並んでいない可能性や、各発光素子から照射される光の方向が異なっている可能性がある場合)には、各発光素子からの光を個別に撮像して、発光素子毎に照射位置のズレ量を計測するようにしてもよい。
【0057】
ステップS16では、CPU51は、ステージ11上にセットされた基板の描画に利用される描画データ(発光データ+オフセットデータ)をHDD56から読み出して、そのオフセットデータを、ステップS15で計算された各発光素子のズレ量に応じて補正する。すなわち、標準位置からヘッド30の進行方向側に相対的にずれて配置されている発光素子については、より遅いタイミングで発光し、標準位置からヘッド30の進行方向と反対側に相対的にずれて配置されている発光素子については、より早いタイミングで発光するように、各チャンネルのオフセットデータが補正される。
【0058】
ステップS17では、ステップS16において補正された後の描画データを用いてパターンの描画が行われる。
【0059】
ステップS18では、全ての基板の描画が完了したかどうかを判断し、まだ全ての基板の描画が完了していない場合には、次の基板をステージ11にセットした上で、処理はステップS11に戻る。一方、全ての基板の描画が完了した場合には、処理を終了する。
【0060】
なお、本実施形態では、1枚の基板の描画が完了する度に、各発光素子のズレ量を計算し直しているが、本発明はこれに限らず、1枚目の基板を描画する前に、各発光素子のズレ量を1度だけ計算するようにしてもよいし、複数枚の基板の描画が完了する度に、各発光素子のズレ量を計算し直すようにしてもよい。
【0061】
なお、本実施形態では、1枚の基板の描画が完了する度に、各発光素子のズレ量を計算し直しているが、このようにすることで、複数の基板に共通のパターンを描画している途中で発光素子アレイ31の傾きが変化してしまった場合でも、残った基板にパターンを正しく描画することができる。
【0062】
以上のように、本実施形態によれば、発光素子アレイ31の傾きや、発光素子アレイ31に含まれる各発光素子の位置を物理的に移動させなくても、オフセットデータを補正することによってソフトウェア的に、発光素子アレイ31の傾きや、発光素子アレイ31に含まれる各発光素子の位置を補正することができるので、補正が容易であり、必要に応じて即座に補正することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明は、例えば基板の主面上に形成された感光性材料の層に所定のパターンデータに基づいて光を照射する露光装置として有用である。
【符号の説明】
【0064】
1 露光装置
10 ステージ移動機構
11 ステージ
20 基板
30 ヘッド
31 発光素子アレイ
40 受光素子
41a、41b ガイドレール
42 モータ
43 ボールネジ
44 センサ処理部
45 センサステージ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を載置するテーブルと、
所定方向に配列された複数の光供給素子を有する1以上のアレイユニットにより前記基板の主面上に形成された感光性材料の層に光を照射するヘッドと、
前記基板の主面に沿った方向に前記基板に対して前記ヘッドを相対的に移動させる走査手段と、
前記基板上に描画すべきパターンデータから、前記基板に対する前記ヘッドの相対位置がどの位置にあるときに前記複数の光供給素子のどの光供給素子から光を供給すべきかを示す描画データを生成する描画データ生成手段と、
前記ヘッドから照射される光の理想的な照射位置と実際の照射位置との差分を計測する差分計測手段と、
前記描画データ生成手段によって生成された描画データを、前記差分計測手段によって計測された差分に応じて補正する補正手段と、
前記補正手段によって補正された描画データに基づいて前記アレイユニットを制御する制御手段とを備えた描画装置。
【請求項2】
請求項1に記載の描画装置において、
前記基板に対する前記ヘッドの相対位置に基づいて露光タイミング信号を発生させる露光タイミング信号発生手段をさらに備え、
前記描画データは、前記露光タイミング信号に応じて各前記光供給素子から光を供給すべきか否か、および、光を供給すべき場合には当該露光タイミング信号からどれだけずれたタイミングで各前記光供給素子から光を供給すべきかを示す多値データであることを特徴とする描画装置。
【請求項3】
請求項2に記載の描画装置において、
前記露光タイミング信号を逓倍する逓倍手段をさらに備え、
前記描画データは、前記逓倍手段により逓倍された露光タイミング信号のうち、どの逓倍された露光タイミング信号に合わせて各前記光供給素子から光を供給すべきかを示すデータを含んでいることを特徴とする描画装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の描画装置において、
前記光供給素子は、自ら光を発光する発光素子であることを特徴とする描画装置。
【請求項5】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の描画装置において、
前記光供給素子は、光源からの光を反射する反射素子であることを特徴とする描画装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15A】
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【図15B】
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【公開番号】特開2010−167636(P2010−167636A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−11279(P2009−11279)
【出願日】平成21年1月21日(2009.1.21)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】