説明

換気塔構造

【課題】風雨が換気塔に入り込んでも、この風雨の居室への直接の吹出しを極力抑えることができる換気塔構造を提供することを目的とする。
【解決手段】建物の屋根2に立設された換気塔構造1において、屋根2から上方に突出する換気塔本体3と、この換気塔本体3の上面より上方に突出する換気筒4とを備えており、前記換気筒4の外周壁4aには、この外周壁4aの周方向に沿って複数の通気孔4bが形成されるとともに、これら複数の通気孔4bを覆うためのシート材5(50)が外周壁4a上縁から垂下するようにして設けられていることを特徴とする。これにより、建物内の空気を、通気孔を介してシート材の下端側から排出できる。一方、風雨が建物内へと流入しようとする際は、風雨がシート材の表面に当たるので、このシート材が抵抗となり、風雨の建物内への流入を防ぐことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物内の換気を行うための換気塔構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の換気構造の一例として特許文献1に記載のものが知られている。この換気構造では、建物の屋根の棟に換気塔を立設する一方で、天井に開口部を設け、この開口部と換気塔の下端開口部をダクトで接続することによって、天井下の居室の換気を行っている。つまり、居室の空気を換気塔から外部に排気している。
【特許文献1】特開2000−88305号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上記従来の換気構造では、屋根の棟、すなわち屋根の最も高い部分に換気塔を立設しているので、この換気塔は風の影響を受け易い。つまり、換気塔は主に、建物内の居室の空気を外部に排気する際に使用されるが、外部の風が強い場合、逆に風が換気塔から入り込んでしまう。換気塔に入り込んだ風は、ダクトに沿ってほぼ一直線状に流れて、天井に設けられた開口部から居室に吹出す場合がある。換気塔は排気に使用されるものであるので、換気塔から外部の空気が逆流すると、建物内の換気効率が低下してしまう可能性がある。
その上、例えば台風などの程度の強い風雨時においては、風とともに雨が換気塔から居室へと入り込んでしまう場合があるため、防水性の向上も図ることが可能な技術の開発が強く望まれていた。
【0004】
本発明の課題は、風雨が換気塔に入り込んでも、この風雨の居室への直接の吹出しを極力抑えることができる換気塔構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の発明は、例えば図1〜図3に示すように、建物の屋根2に立設された換気塔構造1において、
屋根2から上方に突出する換気塔本体3と、この換気塔本体3の上面より上方に突出する換気筒4とを備えており、
前記換気筒4の外周壁4aには、この外周壁4aの周方向に沿って複数の通気孔4bが形成されるとともに、これら複数の通気孔4bを覆うためのシート材5(50)が外周壁4a上縁から垂下するようにして設けられていることを特徴とする。
【0006】
請求項1に記載の発明によれば、前記シート材5(50)が外周壁4a上縁から垂下するようにして設けられていることから、シート材5(50)の上端は外周壁4a上縁に固定され、シート材5(50)の下端は揺動可能となるので、建物内の空気を、前記通気孔4bを介して前記シート材5(50)の下端側から排出できる。一方、風雨が建物内へと流入しようとする際は、風雨がシート材5(50)の表面に当たるので、このシート材5(50)が抵抗となり、風雨の建物内への流入を防ぐことができる。
これによって、例えば台風などの程度の強い風雨時において、風雨が換気塔1に入り込んでも、この風雨の居室への直接の吹出しを極力抑えることが可能となる。
【0007】
請求項2に記載の発明は、例えば図2(a)に示すように、請求項1に記載の換気塔構造1において、
前記シート材として、前記換気筒4の外周壁4a上縁から垂下するようにして防風透湿シート5が設けられていることを特徴とする。
【0008】
ここで、前記防風透湿シート5とは、風が強く吹いても空気や湿気が少しずつしか通過しないシートであり、すなわち、防風性と通気性とを有するとともに、防水性と透湿性とを有するものである。この防風透湿シートとしては、布、不織布、連続気泡の発泡シートをはじめ、繊維をシート状に積層させたもの、多孔質のフィルムに強度の強い樹脂をラミネートしたもの等がある。
【0009】
請求項2に記載の発明によれば、前記シート材として、前記換気筒4の外周壁4a上縁から垂下するようにして防風透湿シート5が設けられているので、建物内の湿気や空気を、前記通気孔4bを介して前記防風透湿シート5の下端側から排出できるだけでなく、防風透湿シート5を通過させて排出できる。
一方、風雨が建物内へと流入しようとする際は、風雨が防風透湿シート5の表面に当たることによって失速するので、防風透湿シート5に当たって失速した風は、建物内に少しずつしか吹き込むことができなくなる。一方、防風透湿シート5の表面に当たった雨は遮られることになるので、建物内へと流入することを防ぐことができる。
【0010】
請求項3に記載の発明は、例えば図2(b)に示すように、請求項2に記載の換気塔構造1において、
前記防風透湿シート5には、前記換気筒4の外周壁4aのコーナー部の位置に対応するようにしてスリット5aが形成されていることを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載の発明によれば、前記防風透湿シート5に、前記換気筒4の外周壁4aのコーナー部の位置に対応するようにしてスリット5aが形成されることで、前記防風透湿シート5の下端が揺動し易くなるので、この防風透湿シート5の下端側から建物内の空気をより簡単に排出できる。
【0012】
請求項4に記載の発明は、例えば図3に示すように、請求項1に記載の換気塔構造1において、
前記シート材として、前記換気筒4の外周壁4a上縁から垂下するようにしてメッシュシート50が設けられていることを特徴とする。
【0013】
請求項4に記載の発明によれば、前記シート材として、前記換気筒4の外周壁4a上縁から垂下するようにしてメッシュシート50が設けられているので、建物内の湿気や空気を、前記通気孔4bを介して前記メッシュシート50の下端側から排出できるだけでなく、前記メッシュシート50を通過させて排出できる。特に、このメッシュシート50の場合、例えば網状ではないシート材を設けた場合に比して、通過する空気の量が多くなるので、建物内の空気を効率良く排出することができる。一方、建物内へと流入しようとする風雨は、前記メッシュシート50によってある程度遮られるので、風雨の建物内への流入を極力防ぐことができる。
【0014】
請求項5に記載の発明は、例えば図1および図4に示すように、請求項1〜4のいずれか一項に記載の換気塔構造1において、
前記換気塔本体3には、この換気塔本体3の上端部および前記換気筒4を覆う換気塔カバー7が装着されており、この換気塔カバー7は、換気塔カバー7の周壁に沿って延在し、かつ下方に向かって開口する換気部7aを備えていることを特徴とする。
【0015】
請求項5に記載の発明によれば、前記換気塔カバー7は、この換気塔カバー7の周壁に沿って延在し、かつ下方に向かって開口する換気部7aを備えているので、建物内の空気を、前記換気塔カバー7の内部を通過させるとともに、前記換気部7aから屋外へと排出することができる。
また、前記換気部7aが下方に向かって開口しているので、建物内に流入しようとする風雨は、まず、前記換気部7aの位置で真上方向に向きを換えて換気部7aの内側に侵入し、その直後、水平方向に向きを換えてから換気塔カバー7の内部に流入しなければならない。そして、前記複数の通気孔4bへと達する間に風雨の流入速度が低下するので、風雨の建物内への流入を防ぐことができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、シート材が外周壁上縁から垂下するようにして設けられていることから、シート材の上端は外周壁上縁に固定され、シート材の下端は揺動可能となるので、建物内の空気を、換気筒の通気孔を介してシート材の下端側から排出できる。一方、風雨が建物内へと流入しようとする際は、風雨がシート材の表面に当たるので、このシート材が抵抗となり、風雨の建物内への流入を防ぐことができる。
これによって、例えば台風などの程度の強い風雨時において、風雨が換気塔に入り込んでも、この風雨の居室への直接の吹出しを極力抑えることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
【0018】
本実施の形態の換気塔構造1は、図1および図2に示すように、建物の屋根2に立設されたものであり、屋根2から上方に突出する換気塔本体3と、この換気塔本体3の上面より上方に突出する換気筒4とを備えており、前記換気筒4の外周壁4aには、この外周壁4aの周方向に沿って複数の通気孔4bが形成されるとともに、これら複数の通気孔4bを覆うためのシート材5が外周壁4a上縁から垂下するようにして設けられている。
【0019】
本実施の形態の換気塔1は、図1に示すように、四角形筒状に形成され、建物の屋根2の立設されるものである。
この屋根2の傾斜面2aには四角形状の開口部2bが形成されており、この開口部2bの外周縁部に前記換気塔1が立設されている。換気塔1の、屋根2の軒先側の下端部には、結合桁2cが前記開口部2b内に突出するようにして設けられており、この結合桁2cは開口部2bの内面に固定されたパッキン材2dに当接されている。これによって換気塔1は屋根2の傾斜面2aに沿って滑り落ちないようになっている。また、換気塔1は屋根2に図示しない鋼製ガセットによって緊結されている。
【0020】
また、前記換気塔1は、木質の矩形板状の構造用パネルを四角筒状に組み立てるとともに、その上端開口部に同様の構造用パネルを水平に固定することによって、前記換気塔本体3が構成されている。そして、水平に固定された構造用パネルには、四角形状の孔3aが形成されている。
【0021】
さらに、前記換気筒4は、四角筒状に形成されており、その下端を孔3aの下端に一致させて挿入固定されている。換気筒4の上部は換気塔本体3の上面より上方に突出しており、その上端開口部にはフード6が装着され、このフード6によって換気筒4の上端開口部が閉塞されている。
【0022】
そして、上述のように前記換気筒4の外周壁4aには、この外周壁4aの周方向に沿って複数の通気孔4bが形成されている。この通気孔4bはガラリを備えており、これにより、換気筒4の内外の通気路を確保できるとともに、ガラリの隙間から換気筒4内へ雨水等が浸入するのを防ぐことができる。
【0023】
一方、前記換気塔本体3には、図1に示すように、この換気塔本体3の上端部および前記換気筒4を覆う換気塔カバー7が装着されており、この換気塔カバー7は、図4に示すように、換気塔カバー7の周壁に沿って延在し、かつ下方に向かって開口する換気部7aを備えている。また、この換気部7aは換気塔カバー7の内部と連通している。
【0024】
したがって、換気筒4内を上昇してきた空気は、前記複数の通気孔4bから吹出し、さらに、換気塔カバー7の内部を通って、換気部7aから外部に吹出すようになっている。つまり、建物内の空気を、前記換気塔カバー7の内部を通過させるとともに、前記換気部7aから屋外へと排出することができる。
また、前記換気部7aが下方に向かって開口しているので、建物内に流入しようとする風雨は、まず、前記換気部7aの位置で真上方向に向きを換えて換気部7aの内側に侵入し、その直後、水平方向に向きを換えてから換気塔カバー7の内部に流入しなければならない。そして、前記複数の通気孔4bへと達する間に風雨の流入速度が低下するので、風雨の建物内への流入を防ぐことができる。
【0025】
なお、換気塔カバー7の裏面とフード6の表面との間には結露防止断熱材8が設けられている。また、換気塔本体3の外周壁には外壁材9が取り付けられており、内周壁には石膏ボード等の耐火材10が取り付けられている。この耐火材10の下端部は前記屋根2に形成された開口部2bの内周面まで延びて、該内周面に固定されている。
さらに、換気塔本体3の下面は、屋根2の傾斜面2aに沿う傾斜面となっており、これによって傾斜面2aに隙間無く設置されている。
【0026】
前記シート材5は、図2(a)に示すように、前記換気筒4の外周壁4aの周方向に沿って、かつ外周壁4a上縁から垂下するようにして設けられている。
なお、このシート材5は、換気筒4の外周壁4a上縁と前記フード6の裏面との間に挟み込まれるようにして設けられている。また、このシート材5の垂設方法は、例えば前記フード6の裏面にフック(図示せず)等を設けて、このフックにシート材5を引っ掛けたり、換気筒4の外周壁4a上縁またはフード6の裏面に接着剤で貼り付けたり等、適宜変更可能である。
【0027】
本実施の形態のシート材として、防風透湿シート5が用いられている。防風透湿シート5とは、例えば風が強く吹いても空気や湿気が少しずつしか通過しないものであって、布、不織布、連続気泡の発泡シート、繊維をシート状に積層させたもの等があるが、本実施の形態においては不織布が用いられている。
【0028】
そして、このようにシート材として、前記換気筒4の外周壁4a上縁から垂下するようにして防風透湿シート5が設けられているので、建物内の湿気や空気を、前記通気孔4bを介して前記防風透湿シート5の下端側から排出できるだけでなく、防風透湿シート5を通過させて排出できる。
一方、風雨が建物内へと流入しようとする際は、風雨が防風透湿シート5の表面に当たることによって失速するので、防風透湿シート5に当たって失速した風は、建物内に少しずつしか吹き込むことができなくなる。一方、防風透湿シート5の表面に当たった雨は遮られることになるので、建物内へと流入することを防ぐことができる。
【0029】
また、前記防風透湿シート5には、図2(b)に示すように、前記換気筒4の外周壁4aのコーナー部の位置に対応するようにしてスリット5aが形成されている。これによって、前記防風透湿シート5の下端が揺動し易くなるので、この防風透湿シート5の下端側から建物内の空気をより簡単に排出できる。
【0030】
なお、本実施の形態のシート材として、上記のように防風透湿シート5を用いたが、これに限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。すなわち、例えばシート材として、図3に示すように、メッシュシート50を用いるようにしても良い。
【0031】
このメッシュシート50は、グラスファイバー製のものや塩化ビニール製のもの等が挙げられ、前記換気筒4の外周壁4aの周方向に沿って、かつ外周壁4a上縁から垂下するようにして設けられるようになっている。
【0032】
そして、このようにシート材として、前記換気筒4の外周壁4a上縁から垂下するようにしてメッシュシート50が設けられているので、建物内の湿気や空気を、前記通気孔4bを介して前記メッシュシート50の下端側から排出できるだけでなく、前記メッシュシート50を通過させて排出できる。特に、このメッシュシート50の場合、例えば網状ではないシート材を設けた場合に比して、通過する空気の量が多くなるので、建物内の空気を効率良く排出することができる。
一方、建物内へと流入しようとする風雨は、前記メッシュシート50によってある程度遮られるので、風雨の建物内への流入を極力防ぐことができるようになっている。
【0033】
本実施の形態によれば、前記シート材5(50)が外周壁4a上縁から垂下するようにして設けられていることから、シート材5(50)の上端は外周壁4a上縁に固定され、シート材5(50)の下端は揺動可能となるので、建物内の空気を、前記通気孔4bを介してシート材5(50)の下端側から排出できる。一方、風雨が建物内へと流入しようとする際は、風雨がシート材5(50)の表面に当たるので、このシート材5(50)が抵抗となり、風雨の建物内への流入を防ぐことができる。
これによって、例えば台風などの程度の強い風雨時において、風雨が換気塔1に入り込んでも、この風雨の居室への直接の吹出しを極力抑えることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明に係る換気塔構造の一例を示す断面図である。
【図2】換気筒を示す斜視図であり、(a)は換気筒の外周壁に防風透湿シートが設けられたことを示し、(b)は防風透湿シートにスリットが形成されたことを示す。
【図3】換気筒の外周壁にメッシュシートが設けられたことを示す斜視図である。
【図4】換気塔カバーの換気部を示す断面図である。
【符号の説明】
【0035】
1 換気塔構造
2 屋根
3 換気塔本体
4 換気筒
5 シート材(防風透湿シート)
50 シート材(メッシュシート)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の屋根に立設された換気塔構造において、
屋根から上方に突出する換気塔本体と、この換気塔本体の上面より上方に突出する換気筒とを備えており、
前記換気筒の外周壁には、この外周壁の周方向に沿って複数の通気孔が形成されるとともに、これら複数の通気孔を覆うためのシート材が外周壁上縁から垂下するようにして設けられていることを特徴とする換気塔構造。
【請求項2】
請求項1に記載の換気塔構造において、
前記シート材として、前記換気筒の外周壁上縁から垂下するようにして防風透湿シートが設けられていることを特徴とする換気塔構造。
【請求項3】
請求項2に記載の換気塔構造において、
前記防風透湿シートには、前記換気筒の外周壁のコーナー部の位置に対応するようにしてスリットが形成されていることを特徴とする換気塔構造。
【請求項4】
請求項1に記載の換気塔構造において、
前記シート材として、前記換気筒の外周壁上縁から垂下するようにしてメッシュシートが設けられていることを特徴とする換気塔構造。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の換気塔構造において、
前記換気塔本体には、この換気塔本体の上端部および前記換気筒を覆う換気塔カバーが装着されており、この換気塔カバーは、換気塔カバーの周壁に沿って延在し、かつ下方に向かって開口する換気部を備えていることを特徴とする換気塔構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−70085(P2008−70085A)
【公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−251149(P2006−251149)
【出願日】平成18年9月15日(2006.9.15)
【出願人】(000114086)ミサワホーム株式会社 (288)
【Fターム(参考)】