説明

揮発性有機化合物を含む廃水の処理装置

【課題】廃水からの揮発性有機化合物の分離が,前記揮発性有機化合物が塩素系である場合,非塩素系である場合のいずれにおいても,小型の装置にてできるようにする。
【解決手段】処理廃水を,減圧にした多段の密閉容器3〜7に順次散布し,最終段の密閉容器7から処理済み廃水として排出する一方,前記各密閉容器内における気体をガス分解手段34にてガス分解して大気中に放出する場合に,前記最終段の密閉容器7から前記ガス分解手段への気体の導入を継続した状態で前記ガス分解手段において分解した気体をそのまま大気中に放出するという非塩素系揮発性有機化合物の処理仕様と,前記最終段の密閉容器7から前記ガス分解手段への気体の導入を遮断した状態で前記ガス分解手段において分解した気体を前記最終段の密閉容器内を経て大気中に放出するという塩素系揮発性有機化合物の処理仕様とに選択的に切換るように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,地下水又は産業廃水等のような廃水に四塩化炭素,トリクロロエチレン,テトラクロロエチレン又はベンゼン等の揮発性有機化合物を含んでいる場合に,この廃水を,当該廃水から前記揮発性有機化合物を分離・分解するように処理する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
先行技術としての特許文献1は,この種の廃水処理装置について,内部を真空発生源にて減圧状態にして成る複数個の密閉容器を備え,処理する廃水を,先ず,前記各密閉容器のうち最前段の密閉容器内に散布し,次いで,次段の密閉容器内に散布することを以下における各段の密閉容器について順次繰り返したのち,最終段の密閉容器から取り出すことにより,前記各密閉容器内において廃水中から揮発性有機化合物を気化分離し,この各密閉容器内における気体を,当該気体中における揮発性有機化合物を分解するようにしたガス分解手段を経たのち気液接触器に導き,この気液接触器において,前記最前段の密閉容器に供給される廃水,或いは,前記最終段の密閉容器から排出される処理済み廃水と直接接触するという水によるガス洗浄を行ったのち大気中に放出するように構成した廃水処理装置を提案している。
【0003】
また,別の先行技術としての特許文献2には,前記した構成の廃水処理装置を,トラック又はトレーラトラックに搭載した可搬式に構成することにより,揮発性有機化合物にて汚染されている特定地域における地下水の浄化処理を行うことを提案している。
【特許文献1】特開2006−15270号公報
【特許文献2】特開2006−26608号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
地下水等の廃水に含まれる揮発性有機化合物には,四塩化炭素,ジクロロメタン,トリクロロエチレン又はテトラクロロエチレン等のように塩素を含む塩素系揮発性有機化合物と,ベンゼン又はスチレン等のように塩素を含まない非塩素系揮発性有機化合物とが存在し,前者のように塩素を含む塩素系揮発性有機化合物の場合には,ガス分解手段にて分解した気体には,塩化水素及び/又は塩酸等の有害物質が存在していることにより,これを大気中に放出する前において,前記有害物質を,気液接触器における水によるガス洗浄において,水に溶解するようにして気体から除去しなければならない。
【0005】
これに対し,後者のように塩素を含まない非塩素系揮発性有機化合物の場合には,ガス分解手段にて分解した気体には,前記塩化水素及び/又は塩酸等の有害物質を殆ど存在しないので,水によるガス洗浄を行うことなく,そのままの状態,ガス分解したままで大気中に放出することができる。
【0006】
しかし,前記特許文献1及び2に記載されている廃水処理装置は,そのいずれにおいても,処理する廃水に含まれる揮発性有機化合物が塩素系揮発性有機化合物であるか非塩素系揮発性有機化合物であるかのいずれの場合にも,前記ガス分解手段において分解処理したガスを,常に,前記気液接触器に供給し,ここで廃水と直接接触するという水によるガス洗浄を行って前記塩化水素及び/又は塩酸等の有害物質を除去したのち大気に放出するというように構成している。
【0007】
このために,例えば,前記非塩素系の揮発性有機化合物にて汚染されている特定地域における地下水等のように,非塩素系揮発性有機化合物を含む廃水を処理する場合においても,前記ガス洗浄用の気液接触器を無駄に運転しなければならないから,それだけ,運転コストのアップを招来するという問題がある。
【0008】
しかも,前記ガス洗浄用の気液接触器を常時設けるという構成であることにより,この気液接触器を設ける分だけ処理装置全体の価格がアップするばかりか,処理装置全体が大型化するという問題がある。
【0009】
特に,前記ガス洗浄用の気液接触器を設けることによる処理装置全体の大型化は,前記特許文献2のように可搬式に構成することに大きな妨げになるのであった。
【0010】
本発明は,このような問題を解消するために,前記気液接触器を使用することなく,塩素系揮発性有機化合物を含む廃水を処理する場合と,非塩素系揮発性有機化合物を含む廃水を処理する場合との両方に適用できるようにした廃水処理装置を提供することを技術的課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この技術課題を達成するため本発明は,請求項1に記載したように,
「密閉容器の複数個と,この各密閉容器内を減圧にする真空発生源とを備え,揮発性有機化合物を含む廃水を,前記各密閉容器のうち最前段の密閉容器内に散布し,次いで,次段の密閉容器内に散布することを各段の密閉容器について順次繰り返したのち,最終段の密閉容器から処理済み廃水として排出するように構成する一方,前記各密閉容器内における気体を導いて当該気体中における揮発性有機化合物を分解するガス分解手段を備えて成る廃水処理装置において,
前記各密閉容器のうち最終段の密閉容器における減圧及びこの最終段の密閉容器から前記ガス分解手段への気体の導入を継続した状態で前記ガス分解手段において分解した気体をそのまま大気中に放出するという非塩素系揮発性有機化合物の処理仕様と,前記最終段の密閉容器における減圧を解除し当該最終段の密閉容器から前記ガス分解手段への気体の導入を遮断した状態で前記ガス分解手段において分解した気体を前記最終段の密閉容器内を経て大気中に放出するという塩素系揮発性有機化合物の処理仕様とに選択的に切換るように構成した仕様切換手段を備えている。」
ことを特徴としている。
【0012】
また,本発明は,請求項2に記載したように,
「前記請求項1の記載において,前記各密閉容器のうち最終段の密閉容器より一段前の密閉容器から前記最終段の密閉容器への廃水移送経路に,前記塩素系揮発性有機化合物の処理仕様にした場合,前記一段前の密閉容器からの廃水のうち一部の廃水を,前記最終段の密閉容器内に散布することなく前記一段前の密閉容器から処理済み廃水として排出するように構成した流量分岐手段を備えている。」
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
先ず,処理する廃水がベンゼン又はスチレン等のような非塩素系揮発性有機化合物を含んでいる廃水の場合には,仕様切換手段にて,非塩素系揮発性有機化合物の処理仕様にする。
【0014】
これにより,前記各密閉容器の全てが減圧になっているから,前記廃水からの非塩素系揮発性有機化合物の気化分離は,前記各密閉容器の全てにおいて行われ,最終段の密閉容器から処理済み廃水として排出される。
【0015】
一方,前記各密閉容器内において気化分離した非塩素系揮発性有機化合物を含む気体は,ガス分解手段に送られ,ここで,前記非塩素系揮発性有機化合物がガス分解される。
【0016】
このガス分解された気体には,塩化水素及び/又は塩酸等の有害物質を殆ど含んでいないから,水の直接接触によるガス洗浄を行うことなく,そのまま,つまり,ガス分解したままで大気中に放出する。
【0017】
次に,前記処理する廃水が四塩化炭素,ジクロロメタン,トリクロロエチレン又はテトラクロロエチレン等のような塩素系揮発性有機化合物を含んでいる廃水の場合には,仕様切換手段にて,塩素系揮発性有機化合物の処理仕様にする。
【0018】
これにより,前記各密閉容器のうち最終段の密閉容器を除く他の密閉容器が減圧になっているから,前記廃水からの塩素系揮発性有機化合物の気化分離は,前記最終段の密閉容器を除く他の密閉容器において行われ,塩素系揮発性有機化合物を分離したあとの廃水は,前記最終段の密閉容器内に散布し,この最終段の密閉容器から処理済み廃水として排出される。
【0019】
一方,前記各密閉容器のうち最終段の密閉容器を除く他の密閉容器内において,気化分離した塩素系揮発性有機化合物を含む気体は,ガス分解手段に送られ,ここで,前記揮発性有機化合物がガス分解される。
【0020】
この分解された気体には,塩化水素及び/又は塩酸等の有害物質が存在しているから,これを前記最終段の密閉容器内に送って,この最終段の密閉容器内に散布している廃水と直接接触するというガス洗浄が行われることにより,前記塩化水素及び/又は塩酸等の有害物質を廃水に溶解するように除去したのち大気中に放出する。
【0021】
つまり,本発明は,非塩素系揮発性有機化合物を含む廃水を処理するときには,全ての密閉容器を,廃水からの前記非塩素系揮発性有機化合物の分離に使用するが,塩素系揮発性有機化合物を含む廃水を処理するときには,全ての密閉容器のうち最終段の密閉容器を除く他の密閉容器において廃水からの塩素系揮発性有機化合物の分離を行う一方,前記最終段の密閉容器を,ガス分解後における塩化水素及び/又は塩酸等の有害物質を水によるガス洗浄にて除去するための気液接触器として使用するものであり,これにより,前記した各先行技術において複数個の密閉容器とは別個に設けていたガス洗浄用の気液接触器を省略することができるから,非塩素系揮発性有機化合物を含む廃水を処理するときにおける運転コストのアップを確実に回避することができる。
【0022】
しかも,水洗浄用の気液接触器を各密閉容器とは別個に備えていない分だけ処理装置の全体を小型・軽量化できるから,トラック又はトレーラトラックに搭載して可搬式に構成することが一層有利に展開できる。
【0023】
ところで,前記した塩素系揮発性有機化合物の処理仕様にした場合,前記最終段の密閉容器内においては,ガス分解手段より送られて来る気体中に酸素が存在していることで,当該最終段の密閉容器内に散布する廃水中への酸素の溶解が行われ,この最終段の密閉容器から排出される処理済み廃水は,その全てが溶存酸素濃度が高くなる。
【0024】
一方,地下の土壌中には,塩素系揮発性有機化合物を分解する嫌気性菌が存在するものであることにより,前記したように溶存酸素濃度が高い状態になっている処理済み廃水を地下の土壌中に戻せば,塩素系揮発性有機化合物を分解する嫌気性菌の繁殖性が低い状態になる。
【0025】
そのために,前記塩素系揮発性有機化合物の処理仕様にした場合における処理済み廃水を,地下の土壌に戻すことは,土壌中に元々存在する嫌気性菌にて塩素系揮発性有機化合物を分解することの妨げになるから好ましいことではない。
【0026】
これに対し,本発明の請求項2は,前記塩素系揮発性有機化合物の処理仕様にした場合に,前記各密閉容器のうち最終段の密閉容器より一段前の密閉容器からの廃水のうち一部の廃水を,前記最終段の密閉容器内に散布することなく前記一段前の密閉容器から処理済み廃水として排出するように構成したものである。
【0027】
これにより,前記最終段の密閉容器内に散布し,この最終段の密閉容器において酸素の溶解にて溶存酸素濃度が高くて,塩素系揮発性有機化合物を分解する嫌気性菌の繁殖性が低い状態になる処理済み廃水の量を,確実に少なくすることができる。
【0028】
従って,前記一段前の密閉容器から排出される処理済み廃水における溶存酸素率は低く嫌気性菌の繁殖性が高い状態になるから,これを再び地下の土壌に戻すことにより,地下水の改善を促進することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下,本発明の実施の実施の形態を図面について説明するに,図1は,塩素系揮発性有機化合物の処理仕様にした場合であり,図2は,非塩素系揮発性有機化合物の処理仕様にした場合である。
【0030】
この実施の形態は,廃水供給ポンプ1にて送られて来る約15℃程度の処理廃水を,先ず,処理廃水タンク2に一次貯留したのち,第1段密閉容器3,第2段密閉容器4,第3段密閉容器5,第4段密閉容器6及び第5段密閉容器7の五段階にわたって分離処理する場合であり,前記各密閉容器3,4,5,6,7内の各々には,後述する脱気及び蒸発を促進するためのラシヒリング等の充填物による充填層3a,4a,5a,6a,7aが設けられている。
【0031】
前記処理廃水タンク2に溜めた処理廃水は,廃水移送管路8を介して前記第1段密閉容器3に送られ,この第1段密閉容器3内の上部にスプレーノズル3bより下向きに散布するように構成されている。
【0032】
前記第1段密閉容器3の底部からポンプ9にて汲み出した廃水は,廃水移送管路10を介して前記第2段密閉容器4内の上部に設けたスプレーノズル4bに送られ下向きに散布するように構成されている。
【0033】
次いで,前記第2段密閉容器4の底部からポンプ11にて汲み出した廃水は,廃水移送管路12を介して前記第3段密閉容器5内の上部に設けたスプレーノズル5bに送られ下向きに散布するように構成されている。
【0034】
次いで,前記第3段密閉容器5の底部からポンプ13にて汲み出した廃水は,廃水移送管路14を介して前記第4段密閉容器6内の上部に設けたスプレーノズル6bに送って下向きに散布するように構成されている。
【0035】
次いで,前記第4段密閉容器6の底部からポンプ15にて汲み出した廃水は,廃水移送管路16を介して前記第5段密閉容器7内の上部に設けたスプレーノズル7bに送って下向きに散布するように構成されている。
【0036】
そして,前記第5段密閉容器7の底部における処理済み水は,ポンプ17にて汲み出され,処理済み廃水の第1排出管路18Aを介して装置外に排出するように構成されている。
【0037】
前記各段の密閉容器3,4,5,6,7への廃水移送管路8,10,12,14,16の各々には,処理廃水に対して空気又は炭酸ガス等の気体を溶解するための気液混合器19,20,21,22,23が設けられている。なお,この各気液混合器19,20,21,22,23は,前記各段の密閉容器3,4,5,6,7での揮発性有機化合物の分離を促進するために必要に応じて適宜設けられるものであり,この処理する廃水によっては,この気液混合器19,20,21,22,23を必要としない場合がある。
【0038】
前記第1段密閉容器3への廃水移送管路8の途中のうち気液混合器19より上流側の部位には,第1熱交換器24が,前記第2段密閉容器4から第3段密閉容器5への廃水移送管路12の途中には,第2熱交換器25が各々設けられている。
【0039】
前記各段の密閉容器3,4,5,6,7内のうち充填物3a,4a,5a,6a,7aより下側の部分に接続したダクト26,27,28,29,30を,前記第1熱交換器24へのダクト31に接続することにより,前記各段の密閉容器3,4,5,6,7内のうち充填物3a,4a,5a,6a,7aより下側の部分における気体を,前記第1熱交換器24に導入して,この気体にて前記廃水移送管路8における処理廃水を加熱して,その温度を高くするように構成している一方,この第1熱交換器24に真空ポンプ32を接続することにより,前記各段の密閉容器3,4,5,6,7内を大気圧より低い減圧の状態に保持するように構成している。
【0040】
前記真空ポンプ32にて圧縮した排気を,前記第2熱交換器25に供給して,前記第2段密閉容器4から前記第3段密閉容器5に送られる処理廃水を加熱するように構成されている。
【0041】
一方,前記第2熱交換器25における不凝縮性の気体を,ガス管路33より抽出し,この気体をガス分解手段34に導入する。
【0042】
このガス分解手段34は,約900℃以上の加熱,紫外線又は触媒等により,前記気体に含まれている揮発性有機化合物をガス分解するものであり,このガス分解手段34においてガス分解された気体を,ガスダクト35を介して大気中に放出するように構成している。
【0043】
そして,前記ガスダクト35の途中に開閉弁36を設ける一方,前記ガスダクト35のうち前記開閉弁36より上流側には,前記第5段密閉容器7内の下部へのガス導入管路37を接続して,このガス導入管路37の途中に弁38を設けており,また,前記ガスダクト35のうち前記開閉弁36より下流側には,前記第5段密閉容器7内の上部からのガス抽出管路39を接続して,このガス抽出管路39の途中に弁40を設けており,更にまた,前記第5段密閉容器7から前記第1熱交換器24へのダクト30の途中に弁41を設けており,これら開閉弁36,ガス導入管路37,ガス抽出管路39及び各弁38,40,41にて,仕様切換手段を構成している。
【0044】
この仕様切換手段は,四塩化炭素,ジクロロメタン,トリクロロエチレン又はテトラクロロエチレン等のような塩素系揮発性有機化合物を含んでいる廃水を処理する場合には,図1に示すように,前記ガスダクト35中の開閉弁36を閉じて,その前後における弁38,40を開くとともに前記ダクト30中の弁41を閉じるというように塩素系揮発性有機化合物の処理仕様に切り換える。
【0045】
また,仕様切換手段は,ベンゼン又はスチレン等のような非塩素系揮発性有機化合物を含んでいる廃水を処理する場合には,図2に示すように,前記ガスダクト35中の開閉弁36を開いて,その前後における弁38,40を閉じるとともに前記ダクト30中の弁41を開くというように非塩素系揮発性有機化合物の処理仕様に切り換える。
【0046】
これに加えて,前記第4段密閉容器6から前記第5段密閉容器7への廃水移送管路16には,流量分岐手段42が設けられている。
【0047】
この流量分岐手段42は,前記廃水移送管路16のうち気液混合器23の上流側に設けた流量調節弁43と,前記廃水移送管路16のうち前記流量調節弁43の上流側と前記処理済み廃水排出管路18Aとの間を直接に接続するバイパス管路44と,このバイパス管路44の途中に設けた流量調節弁45とによって,以下に述べるように構成されている。
【0048】
すなわち,前記仕様切換手段にて非塩素系揮発性有機化合物の処理仕様にしたときには,前記二つの流量調節弁43,45のうち一方の流量調節弁43を全開して,他方の流量調節弁45を全閉にすることによって,前記第4段密閉容器6から排出される廃水の全量を,前記第5段密閉容器7に移送するようにしている。そして,前記非塩素系揮発性有機化合物の処理仕様を,前記仕様切換手段にて塩素系揮発性有機化合物の処理仕様に切り換えたときには,前記一方の流量調節弁43を適宜開度に閉じて,他方の流量調節弁45を適宜開度に開くことで,前記第4段密閉容器6からの廃水のうち一部の廃水を,前記第5段密閉容器7からの処理済み廃水の第2排出管路18Bより装置外に排出し,残りの廃水のみを前記第5段密閉容器7に移送して,これに散布するように構成している。
【0049】
なお,前記第2熱交換器25における凝縮水及び前記真空ポンプ32における凝縮水には,若干量の揮発性有機化合物を含んでいるから,これらを凝縮水タンク48に集め,この凝縮水タンク48から,超音波等による揮発性有機化合物の分解装置49を経たのち前記処理廃水タンク2に混ぜるように構成している。
【0050】
この構成において,前記処理廃水タンク2内の処理廃水は,必要に応じてこれに気液混合器19において空気等の気体が溶解されたのち第1段密閉容器3内にノズル3bから散布することにより,脱気が行われるから,処理廃水中の揮発性有機化合物は気化して処理廃水から分離する。
【0051】
この第1段密閉容器3内での脱気を終わった処理廃水は,真空ポンプ32において発生する熱により,第2段密閉容器4内の飽和蒸気温度よりも高い温度に加熱され,且つ,必要に応じて気液混合器20において空気等の気体が溶解され,次いで,第2段密閉容器4内にノズル4bから散布することにより,フラッシュ蒸発と,脱気とが行われるから,処理廃水中の揮発性有機化合物は気化して処理廃水から分離する。
【0052】
この第2段密閉容器4内での脱気・蒸発を終わった処理廃水は,第2熱交換器25において,前記真空ポンプ32で圧縮した排気を熱源として第3段密閉容器5内の飽和蒸気温度よりも高い温度に加熱され,且つ,必要に応じて気液混合器21において空気等の気体が溶解され,次いで,第3段密閉容器5内にノズル5bから散布することにより,フラッシュ蒸発と,脱気とが行われるから,処理廃水中の揮発性有機化合物は気化して処理廃水から分離する。
【0053】
この第3段密閉容器5内での脱気及びフラッシュ蒸発を終わった処理廃水は,必要に応じて気液混合器22において空気等の気体が溶解され,次いで,第4段密閉容器6内にノズル6bから散布することにより,脱気が行われるから,処理廃水中の揮発性有機化合物は気化して処理廃水から分離する。
【0054】
この第4段密閉容器6内での脱気を終わった廃水は,次いで,その全量が最終段である第5段密閉容器7内にノズル7bから散布する。
【0055】
この場合において,図2に示すように,非塩素系揮発性有機化合物の処理仕様にしたとき,前記第5段密閉容器7内は,前記ダクト30中の弁41が開で減圧になっていて,この第5段密閉容器7内においても,脱気が行われ,処理廃水中の揮発性有機化合物は気化して処理廃水から分離することになる。
【0056】
この第5段密閉容器7の底部には,処理済み廃水が溜まり,そして,この処理済み廃水は,ポンプ17にて汲み出され,処理済み廃水排出管路18Aを介して排出される。
【0057】
一方,前記各段の密閉容器3,4,5,6,7内において発生した気体の総てはダクト31を介して第1熱交換器24に至り,ここで,処理目的の廃水の加熱に利用され,真空ポンプ32にて圧縮され,次いで,第2熱交換器25に至り,ここで,第3段密閉容器5内におけるフラッシュ蒸発の熱源に利用されるとともに,この気体中の水蒸気が凝縮水として除かれ,前記凝縮水タンク48に入る。
【0058】
従って,前記第2熱交換器25からは,前記各段の密閉容器3,4,5,6,7内において気化した揮発性有機化合物及び空気等を含む気体が排出され,この排出気体が,ガス分解手段34に送られ,このガス分解手段34において,前記揮発性有機化合物がガス分解される。
【0059】
この場合において,図2に示すように,非塩素系揮発性有機化合物の処理仕様にしたとき,ガス分解手段34においてガス分解された気体には,塩化水素及び/又は塩酸等の有害物質が殆ど存在していないことにより,そのまま,つまり,水によるガス洗浄を行うことなくガスダクト35より大気中に放出することができる。
【0060】
次に,四塩化炭素,ジクロロメタン,トリクロロエチレン又はテトラクロロエチレン等のような塩素系揮発性有機化合物を含んでいる廃水を処理する場合には,仕様切換手段により,前記図2に示す非塩素系揮発性有機化合物の処理仕様を,仕様切換手段にて,図1に示す塩素系揮発性有機化合物の処理仕様に切り換える。
【0061】
この切り換えにより,前記最終段の第5段密閉容器7内における減圧は,ダクト30中の弁41の閉により大気圧に解除されるから,この第5段密閉容器7内においては,これより一段前の第4段密閉容器6からの処理廃水に対する脱気による揮発性有機化合物の分離は行われずに,処理廃水からの揮発性有機化合物の分離は,前記第5段密閉容器7を除く他の段の密閉容器3,4,5,6において行われる。
【0062】
この他の段の密閉容器3,4,5,6においては,気化した揮発性有機化合物及び空気等を含む気体が排出され,この排出気体は,前記第2熱交換器25を経て前記ガス分解手段34に送られ,このガス分解手段34において,前記揮発性有機化合物がガス分解される。
【0063】
そして,このガス分解された排出気体の全量が,ガス導入管路37を介して前記第5段密閉容器7内の下部に散布して,この第5段密閉容器7内の上部に散布している廃水と直接接触することにより,これに含まれる塩化水素及び/又は塩酸等の有害物質は,廃水中に溶解するように除去され,きれいな排出ガスとして,ガス抽出管路39及びガスダクト35より大気中に放出される。
【0064】
つまり,塩素系揮発性有機化合物の処理仕様にした場合には,最終段の第5段密閉容器7を,排出気体中の有害物質を水によるガス洗浄にて除去するための気液接触器として使用するのである。
【0065】
ところで,前記最終の第5段密閉容器7においては,減圧が解除されていることにより,当該第5段密閉容器7内に散布する廃水による排出ガスの水洗浄中に,当該廃水中への酸素の溶解が行われることになる。
【0066】
この場合において,前記最終の第5段密閉容器7に,これより一段前の第4段密閉容器6から排出される廃水の全てを散布することは,この廃水の全部が,溶存酸素濃度の高い状態になる。
【0067】
そこで,前記第4段密閉容器6から第5段密閉容器7への廃水移送管路16に流量分岐手段42を設けて,前記仕様切換手段にて非塩素系揮発性有機化合物の処理仕様にしたときにおいて,前記第4段密閉容器6からの廃水のうち一部の廃水を,前記第5段密閉容器7からの処理済み廃水の第1排出管路18Aに合流することなく,第2排出管路18Bから装置外に排出し,残りの廃水のみを前記第5段密閉容器7に移送して,これに散布するように構成したのである。
【0068】
これにより,前記第5段密閉容器7内に散布し,この第5段密閉容器7において酸素の溶解にて溶存酸素濃度が高い状態になる処理済み廃水の量は,前記第4段密閉容器6からの廃水の一部を前記第2排出管路18Bから装置外に排出する分だけ少なくなる一方,前記第2排出管路18Bからは,溶存酸素濃度が低い状態になる処理済み廃水が排出されるから,この第2排出管路18Bから排出される処理済み廃水を,地下に戻すのである。
【0069】
なお,前記第4段密閉容器6から排出される処理済み廃水を,前記第5段密閉容器7を経て前記第1排出管路18Aから装置外に排出する廃水と,前記第5段密閉容器7を経ることなく前記第2排出管路18Bから装置外に排出する廃水とに分配するに際しては,その流量比を前者が約2程度で後者が約8程度になるように設定することが好ましく,この流量比は,前記両流量調節弁43,45を,その各々の管路に設けた流量計46,47を見ながら開閉調節することによって,容易に且つ任意に設定することができる。
【0070】
また,前記ガス分解手段34からの分解ガスを前記最終の第5段密閉容器7内に導入するに際しては,この第5段密閉容器7内の下部に,多孔式のノズル50等を設けて,広い範囲にわたって散布するように構成することにより,廃水の接触性,つまり,水洗浄率を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明の実施の形態において塩素系揮発性有機化合物の処理仕様にした状態を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態において非塩素系揮発性有機化合物の処理仕様にした状態を示す図である。
【符号の説明】
【0072】
1 廃水供給ポンプ
2 処理廃水タンク
3 第1段密閉容器
4 第2段密閉容器
5 第3段密閉容器
6 第4段密閉容器(一段前の密閉容器)
7 第5段密閉容器(最終段の密閉容器)
18A,18B 処理済み廃水排出管路
24 第1熱交換器
25 第2熱交換器
31 ダクト
34 ガス分解手段
35 ガスダクト
36,38,40,41 仕様切換用の弁
42 流量分岐手段
43,45 流量調節弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
密閉容器の複数個と,この各密閉容器内を減圧にする真空発生源とを備え,揮発性有機化合物を含む廃水を,前記各密閉容器のうち最前段の密閉容器内に散布し,次いで,次段の密閉容器内に散布することを各段の密閉容器について順次繰り返したのち,最終段の密閉容器から処理済み廃水として排出するように構成する一方,前記各密閉容器内における気体を導いて当該気体中における揮発性有機化合物を分解するガス分解手段を備えて成る廃水処理装置において,
前記各密閉容器のうち最終段の密閉容器における減圧及びこの最終段の密閉容器から前記ガス分解手段への気体の導入を継続した状態で前記ガス分解手段において分解した気体をそのまま大気中に放出するという非塩素系揮発性有機化合物の処理仕様と,前記最終段の密閉容器における減圧を解除し当該最終段の密閉容器から前記ガス分解手段への気体の導入を遮断した状態で前記ガス分解手段において分解した気体を前記最終段の密閉容器内を経て大気中に放出するという塩素系揮発性有機化合物の処理仕様とに選択的に切換るように構成した仕様切換手段を備えていることを特徴とする揮発性有機化合物を含む廃水の処理装置。
【請求項2】
前記請求項1の記載において,前記各密閉容器のうち最終段の密閉容器より一段前の密閉容器から前記最終段の密閉容器への廃水移送経路に,前記塩素系揮発性有機化合物の処理仕様にした場合,前記一段前の密閉容器からの廃水のうち一部の廃水を,前記最終段の密閉容器内に散布することなく前記一段前の密閉容器から処理済み廃水として排出するように構成した流量分岐手段を備えていることを特徴とする揮発性有機化合物を含む廃水の処理装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2007−307466(P2007−307466A)
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−138131(P2006−138131)
【出願日】平成18年5月17日(2006.5.17)
【出願人】(000143972)株式会社ササクラ (138)
【Fターム(参考)】