説明

揮発性有機化合物(VOCガス)の処理方法

【課題】 揮発性有機化合物(以下VOCガスと称する。)を効率よく処理するシステムの役割を果たしつつ、内燃機関による発電および排熱回収を行なうことにより、エネルギー総合効率を高めたシステムを実現し、低ランニングコストでVOCガスを処理する方法を提供する。
【解決手段】 VOCガスを含む空気を回収し、内燃機関の燃焼用空気として用い処理を行うシステム。発電システムまたはコージェネレーションシステムと一体化したVOCガス処理システムである。また、VOCガス回収システムに濃縮装置を設ける。濃縮装置の脱着過程において内燃機関の排熱を入熱として利用するシステムである。これによりシステム全体の総合効率は高く低ランニングコストを実現できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工場等で発生するVOCガスを処理削減することを目的とするものである。
【背景技術】
【0002】
従来、VOCガスの削減処理システムとしては主に分解法と回収法に分かれ、各種装置が開発利用されている。分解法には、直接燃焼法、蓄熱燃焼法、触媒燃焼法などがあり、それぞれの特徴は以下の通りである。直接燃焼法は、広範囲の有機溶剤に対応可能であり、高濃度VOC処理には最適であるが、燃料費が高価である為徹底した排熱回収が必要である。蓄熱燃焼法は、高い熱回収率が得られることから自燃によりVOCガスを分解処理できることから燃料費が安価となる。また直接燃焼法に比較して、広い設置スペースが必要で重量が重いことが特徴として挙げられる。触媒燃焼法については、白金等の触媒により低温で酸化分解できる為、直接燃焼法に比較して燃料費が安価であるが触媒毒に注意が必要であることや触媒により分解可能なVOCガスが制限されること、触媒自体が高価であることなどが特徴である。回収法については活性炭、シリカゲル、ゼオライト等の吸着剤に吸着させて回収しているが吸着剤を定期的に交換する交換型と吸着剤を交換せず吸着脱着を繰り返す回収型がある。回収されたVOCガスは単一である場合リサイクルされるが、混合VOCガスである場合は、廃棄物として処理される。
【0003】
燃焼法を利用した装置は、燃料費が高価であり改善する為に開発された蓄熱燃焼法についても起動時やVOCガスが希薄となった場合には助燃用に燃料が使用される。また、装置の価格が高価であることが導入時に懸念される。回収法については装置の価格は安価であるが、吸着剤の交換費が高価であること、回収後の廃棄処理費が高価であることなどが導入時に懸念される材料となっている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように従来の技術では、VOCガス処理対策を行うことのみを目的として燃料や電気などのエネルギーを消費している。本発明の課題は、VOCガスを効率よく処理するシステムとしての役割を果たしつつ、内燃機関による発電および排熱回収を行なうことにより、エネルギー総合効率を高めたシステムを実現し、低ランニングコストでVOCガスを処理する方法を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明はVOCガスの処理方法であってVOCガスを含む空気を回収し、内燃機関の燃焼用空気として用い熱分解処理を行うことを特徴とするシステムである。また内燃機関により発電機を駆動し、発電システムと一体化若しくはコージェネレーションシステムと一体化したVOCガス処理システムである。
【0006】
また、前記のVOCガスを含む空気を回収するシステムと内燃機関の間に濃縮装置を設けることにより、VOCガス回収システムと内燃機関とのシステムマッチングを図ることを特徴とするシステムである。
【0007】
前記濃縮装置とは、VOCガスを含む空気よりVOCガスのみを吸着剤であるゼオライトまたは活性炭等に吸着させ、吸着後の空気は大気放出可能なレベルまで清浄化することができる。また、吸着剤に吸着したVOCガスは再生装置で脱着濃縮され、小風量・高濃度のVOCガスを得ることが出来る。この際脱着過程は、吸熱反応である為加熱が必要であり、加熱源として内燃機関の排熱を利用する。脱着に必要な温度(180℃程度)は、内燃機関の排ガス若しくは排熱回収(蒸気または温水)された後の排熱により加熱することで充分対応できる。
【0008】
脱着過程において吸熱反応によりVOC濃縮ガスは60℃程度に冷却される。高温のガスを燃焼用空気として内燃機関に投入した場合、効率が大幅に低下する為、40℃以下程度まで冷却する必要がある。そこで内燃機関の燃焼空気量にマッチングするように外気と混合して投入制御する。
【0009】
VOCガスは夫々固有値として爆発限界値を有しており、濃縮装置を用いて高濃度とした場合、内燃機関の燃焼系統において爆発の危険がある。本システムでは、爆発限界値から充分離れた濃度で運用できるようにすることとする。
【発明の効果】
【0010】
本発明では、内燃機関に給気された空気は内燃機関内部において高温燃焼される特性を利用し、VOCガスを高効率に熱分解処理することで無害化できる。
【0011】
従来のVOCガスの削減処理対策では、削減処理する為に電力及び熱エネルギーを消費してきたが、処理を目的としながら発電システム若しくはコージェネレーションシステムと一体化したことによりランニングコストの大幅な削減及び省エネルギーを実現できるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に、図面を参照して、本発明を適用した揮発性有機化合物の処理方法を説明する。
【実施例1】
【0013】
図1において排出されるVOCガスの主成分はトルエンであり、風量20,000Nm/h、濃度は100ppmTrである場合について処理システムを後述する。また、本実施例1における内燃機関は、マイクロガスタービンを適用した。
【0014】
図1のシステムは、印刷インク溶剤として用いられるトルエンが乾燥工程において揮発し、VOCガスが発生したものを回収処理するシステムの概要図である。印刷乾燥工程で発生したVOCガスはダクトにより搬出され、濃縮装置において吸着浄化して大気放出する。濃縮装置に吸着されたVOCガスは脱着し、マイクロガスタービンの燃焼用空気として投入され、燃焼機内で熱分解処理される。ここでマイクロガスタービンは発電機を駆動し発電を行う。また、燃焼に伴い排出される燃焼ガスは排熱回収ボイラで蒸気・温水として回収され利用される。排熱回収された後の燃焼ガスは高温の熱を有している為、吸熱反応である濃縮装置の脱着過程に利用する。
【0015】
本実施例1で使用したマイクロガスタービンの燃料は、都市ガス13Aを使用しており排ガスがクリーンであることから濃縮装置の脱着過程で直接利用し、燃焼用空気として利用することが容易である。
【0016】
マイクロガスタービンの定格出力時の必要燃焼給気量は、6,193Nm/hであり給気として利用できる温度は、40℃以下にするものとする。濃縮装置を用いることにより、VOC濃縮ガスの温度は60℃となるため、外気と混合して冷却を行なう。
【0017】
濃縮装置の濃縮倍率は従来の技術の実証範囲である15倍とするとVOC濃縮ガス量は、1,333Nm/hとなる。外気の温度を30℃とした場合、混合された燃焼用空気は、36.5℃となることからマイクロガスタービンは高効率で運転することができる。また、濃度については15倍に濃縮されたあと外気との混合により約4.6倍に希釈される為、326ppmTrでマイクロガスタービンに投入される。トルエンの爆発限界下限値は12,700ppmTrであることから充分に安全であると言える。
【0018】
VOCガスの処理能力については、トルエンの発火点温度が545℃であり、マイクロガスタービン燃焼器内の温度は約1、250℃であることから全て熱分解処理されるものと考えられる。しかしながらVOCガスを含む空気を内燃機関で熱分解処理された実例がないことから現在実証試験の準備中である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】 本発明になる実施例1のシステム図である。
【符号の説明】
【0020】
1 マイクロガスタービン本体
2 発電機
3 排熱回収システム(蒸気ボイラ、温水ボイラ等)
4 濃縮装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
揮発性有機化合物(以下VOCガスと称する。)を含む空気を回収し、内燃機関の燃焼用空気として用い処理を行うことを特徴とするシステム。本発明に適用される内燃機関として往復動内燃機関及びガスタービンのいずれも含むものとする。
【請求項2】
請求項1において適用される内燃機関により発電機を駆動し、発電システムと一体化したVOCガス処理システム。
【請求項3】
請求項1において適用される内燃機関をコージェネレーションシステムと一体化したVOCガス処理システム。
【請求項4】
上記請求項において、VOCガス回収システムと内燃機関(内燃機関駆動発電システム又はコージェネレーションシステム)の間に濃縮装置を設けることにより、VOCガス回収システムと内燃機関とのシステムマッチングを図ることを特徴とするシステム。
【請求項5】
本発明において、適用される内燃機関またはコージェネレーションシステムにおける排熱回収設備の排熱を濃縮装置の入熱として利用するシステム。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2007−177779(P2007−177779A)
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−381180(P2005−381180)
【出願日】平成17年12月26日(2005.12.26)
【出願人】(593193468)日本電技株式会社 (5)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(599019269)株式会社トヨタタービンアンドシステム (7)
【出願人】(000224101)藤森工業株式会社 (292)
【Fターム(参考)】