説明

揮発性物質を拡散させるための使い捨て装置

【課題】装置のコストを増加させず、構造を複雑にすることなく、いくつかの形態で配置できる手段を備えた拡散装置を提供する。
【解決手段】少なくとも第1の部分2および第2の部分4を有するとともに折曲線26に沿って折り曲げるように構成された、可撓性の材料から製造された層状要素1を備え、第1の部分は、揮発性物質の元となる製品30を収容する保管場所3を具備し、第2の部分は、横方向の開放部分12と取り外し可能な接着手段で占めることができる中央孔24とを具備したフック構造5を有している。両方の部分は追加の部分なしに単一の工業プロセスで製造され、様々な取付手段や拡散手段を調整し保護する機能が組み込まれ、さらに、吊り下げ以外に、磁石や接着剤による接着、あるいは折り曲げて水平な表面上に自立させるといった、任意の状態に合わせてその適用形態を選別することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば車両、収納戸棚、食器洗い機等の小さな空間内に液体、固体または粉末の形態の製品から得られる揮発性の物質、特に香水、空中消毒薬、殺虫薬等を拡散させるための装置の製造に関連する産業分野に適用可能である。
【0002】
本発明の一つの目的は、コストが最小で最も簡単な構造であり、かつ経済的で、簡単で、目立たない設計の、その使用あるいは用途が多方面にわたる使い捨ての装置から成る揮発性物質のための拡散装置を提供することにある。
【0003】
また、本発明の目的は、一つの装置および構造に様々な取付手段を組み込むことにより、この装置を特定の場所に取り付けあるいはまた使用するためのいくつかの選択肢をユーザに提供し、消費者の要望に応じて、選択された場所にそれを吊り下げ、それを付着させ、あるいはそれを自立させることができるようにし、または同一あるいは異なる物質の他の拡散装置と組み合わせるためにそれを他の同一の装置に連結できるようにして、エンドユーザによる使用を簡単にしつつその拡散装置に多方面にわたる用途をもたらすことにある。
【背景技術】
【0004】
拡散装置は、空気を爽やかにするためのもの、殺虫薬、脱臭剤等のためのものが既知であるが、通常は液体の状態あるいはゲルまたは錠剤として調合され、適切な蒸発手段によってその化合物中の活性粒子を空気中に拡散させる。
【0005】
拡散装置にこの種の化合物を収容するために、市場においては一般的に樹脂から製造された様々な種類の容器が提供されているが、それらの設計はその装置が製造された最も一般的な用途に応じて定まっている。
【0006】
具体的には、収納戸棚または車両といった小さな閉鎖空間内で拡散装置を用いるときには、その空間内の適切な場所にこの装置を吊り下げるためのフックを組み込んだタイプの容器が、非常に役立つものとして良く知られている。
【0007】
空気を爽やかにするための物等の容器、とりわけ低コストのものには、最も便利な場所への拡散装置の吊り下げを可能にするフックを有した多くの実例がある。脱臭あるいはまた殺虫用の錠剤を保持するためのフックを有した容器の実例として、スペイン実用新案ES0155540U号公報を挙げることができるし、空気を爽やかにするための液体またはゲル類の場合には、スペイン特許ES2019539号公報の吊り下げ容器を挙げることができる。
【0008】
これらの拡散装置の吊り下げという特徴は、製造業者の観点からすると一般的には製品の製造コストを増加させず、したがってエンドユーザのコストも増加させない。ほとんどの場合、これらは使い捨ての拡散装置であり、収容されている化学物質の効果が尽きたときにユーザは容易に廃棄することができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述した揮発性物質のための容器の構造の特徴は、問題なくそれを吊り下げることが可能な場所においてその容器を使用することを消費者に強いる。そのような方法での使用が意図されているからである。
【0010】
所望の空間にこれらの容器を吊り下げることに加えて、ユーザは、その効果を高めるために、それを使用する場所に応じた他の方法でこの拡散装置を配置することを希望する。しかしながら、空気を爽やかにするための物または殺菌性の化合物あるいは物質を収容しているこの装置を吊り下げるために適した場所が常に存在する訳ではない。
【0011】
この理由により、拡散装置の容器は、装置のコストを増加させあるいは拡散装置の構造を複雑にすることなしに、その装置をいくつかの形態で配置できるようにする手段を備えていることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上述した欠点、とりわけ背景技術の部分に記載したあらゆる態様における欠点を解消する。
【0013】
本願明細書に開示する発明は、少なくとも第1および第2の部分によって形成された層状要素を備える作用物質を拡散させるための使い捨ての装置に関する。好ましくは上述した部分の間にはその両方が共有する可撓性な層状要素の折り曲げ領域が画成され、その後に続く平坦な表面上への逆V字形状での配置のための折り曲げに好都合となっている。望ましくは、層状要素は可撓性で低コストな材料、例えばボール紙またはプラスチックから製造されて、その各部分は後述する様々な実施形態に基づいて構成される。
【0014】
層状要素の第1の部分に組み込まれているものは、揮発性物質をもたらす製品を収容するための保管場所であり、揮発性物質のための拡散領域を有している。この保管場所は、層状要素の第1の部分を所望のデザイン、例えば水滴形状の空洞とすることによって得られるが、任意の形状の保管場所を有した装置を製造するために同一の工業的な方法を用いることができるし、または層状の装置に用いる成形金型の取り外し可能な部分の変更が必要なだけである。
【0015】
層状要素の第2の部分に設けられているフックは、その中央開口または穴に達するまでユーザが対象物を挿入できる、対象物の受け入れが意図されている横方向の開放部分を有しており、この装置を任意に対象物から吊り下げることができる。
【0016】
第1実施形態においては、層状要素の第2の部分の上端部に格納式の頂部フラップが組み込まれている。この頂部フラップは、フックの横方向の開放部分が開放している非収納状態とこの頂部フラップがフックの横方向の開放部分を閉じる収納状態との間でヒンジまたはヒンジ線の回りに揺動することができ、ユーザがこの装置をフックによって吊り下げたときに、格納された頂部フラップがこの吊り下げを確実なものとし、拡散装置が偶然にその位置から落下するリスクを低減する。
【0017】
本発明の他の実施形態においては、層状要素の第1の部分の下端から第3の部分が延設される。この第3の部分は、揮発性物質の拡散領域を完全に開放する非収納状態と、拡散領域がこの第3の部分によって少なくとも部分的に覆われる収納状態との間で、対応するヒンジ線の回りに揺動することができる。これにより、この第3の部分は、揮発性の製品の拡散領域を保護するために、あるいは製品の蒸発の制御を助けるために用いることができる。
【0018】
蒸発可能な製品または揮発性の調剤は、層状要素の第1の部分に配設された上述の保管場所に収容される。この目的のために設けられるハウジング、好ましくは泡または凹部の内側に、拡散領域を介したその蒸発のために必要な量の空気を爽やかにするための物、殺虫剤あるいは消毒薬を含む液体が収容される。従って、液体を保持している凹部の開口を完全に覆うとともに上述した第3の部分によって領域が覆われないときには揮発性物質の拡散を可能とする膜が、領域の全体にわたって設けられる。蒸発膜に組み込まれているものは、一般的に使い捨て材料(プラスチック、アルミニウム、紙)から製造された密封性あるいは水溶性の保護フィルムである。したがって揮発性物質がそこから拡散する領域を空気中に露出させるために、消費者は膜を取り除かなければならない。
【0019】
以下に詳述するような吊り下げ、付着、あるいは水平表面上への自立といった、この装置を配置するためにユーザが選択した方法に係わらず、蒸発膜はこの装置がその上に配置される表面には接触せず、望まれない物質の含浸を防止する。しかしながら、拡散密封フィルムが取り除かれた後に、人(例えばその製品の匂いによって引きつけられた子供)が不注意に膜に触れることがあり、彼/彼女の指の若干の物質が残って口に達するおそれがある。
【0020】
拡散領域をさらに保護するために、第3の部分を収納した状態において第1の部分の上述した拡散領域に一致する、空気の循環を可能にするための開口または打ち抜きを有した領域が第3の部分に設計される。加えて、第2の部分は、第3の部分が格納されたときにヒンジとは反対側の端部に係合して第3の部分を第2の部分の上に留め付けるための側方タブを有し、その穴明き領域が蒸発膜を覆い、それによって接触を防止する。横方向の空気の流れを改善するために、第3の部分は横方向のエアダクトを有する。これらのダクトは、そこを通って空気が流れるので、拡散領域が膜によって覆われているときでも製品の蒸発に寄与する。またこの保護システムに設けられている開口部分は外側からの膜への接触を不可能にする。
【0021】
調整システムとして作用する第3の部分の他の構成においては、第1の部分の下端に設けられているヒンジの回りに第3の部分が揺動できるので、層状要素の第3の部分は、第1の部分の拡散領域に向かって折れ曲がって揮発性の物質の拡散の大小を決定する異なる大きさの角度を形成する。例えば、第3の部分は、層状要素の上述した他の2つの部分と同一平面上にある180度の位置から、第3の部分が膜を覆って製品の蒸発を遅らせる拡散領域の上方の位置へと揺動することができる。より大きな割合の拡散を達成するために、第3の部分は、特定の角度だけさらに蒸発膜から離れ、それによって拡散装置によって放出される香りの量をユーザの要望に応じて調整する。
【0022】
加えて、第1の部分は、対応する横方向のヒンジの回りに揺動できる少なくとも2枚の横方向フラップを有して、同様に横方向の空気の流れの制御を可能にする。第1および第3の部分の横方向フラップを第1の部分の拡散領域に向かって開くと、縦方向の空気の循環のためのほぼ閉じられたダクトの構成を可能にし、それによって保管場所に収容されている揮発性の液体の蒸発を調整する。
【0023】
拡散のための調整要素としての第3の部分の構成の最後の実施形態は、可撓性の材料から製造されたいくつかの折曲線をその部分に有し、それによってユーザは第3の部分を一回若しくは複数回折り曲げることができる。上述したようにそれを揺動させた後、各折曲線で第3の部分を折り曲げると、様々な区画によって拡散領域を開放させることが可能となる。したがって、この単純な調整方法により、膜の表面のうち空気にさらされて蒸発が実際に生じる部分を(1倍、2倍、3倍等、この装置の第3の部分に設置される折曲線の数に応じて)変化させることができる。
【0024】
この装置の他の実施形態は、第2の部分に設けられているフックの使用による拡散装置の対象物からの吊り下げに加えて、ユーザに対し使用あるいは位置決めのためのより多くの選択肢をもたらす、他の取付手段あるいはこの装置に一体化された接続手段に関する。
【0025】
第1の選択肢は、第1および第2の部分の間に設けられている折曲線でほぼ半分に折り曲げることにより、可撓性の層状要素を水平な表面上に自立させることである。すなわち、2つの部分が角度をなすことにより、この装置を完全に機能的な状態で表面上に単独で自立させることができる。そして、このようなシステムにより、膜がその表面から離れるので、2つの支持部分の間で空気が自由に流れあるいは調整されて物質が拡散する。
【0026】
また、中央の折曲線でこの装置を折り曲げて両部分の間に便利な角度を形成すると、ユーザは、フックによって直接的にではなく、ごみ箱、靴、あるいはユーザが希望する任意の対象物の端縁にその中央部を引っ掛けることにより、この装置を自由に取り付けることができる。
【0027】
この層状要素あるいは装置の本体部分を製造する材料の柔軟性は、同じ特徴を有したもう一つの装置にこの拡散装置を引っ掛けあるいは連結するという他の実施形態を想起させる。一つの実施形態においては、第1および第2の部分に互いに対応する溝を配置し、層状要素を折り曲げて2つの部分を互いに接近させたときに、一方の溝が他方の溝と係合してこの装置を環状に閉じることができるようにする。すると、ユーザは、この装置が管状の対象物を取り囲むようにし、その第1の部分を第2の部分に留め付けることによって管状の対象物から吊り下げることができる。
【0028】
同じ溝を有した他の拡散装置を選択し、それらの第1の部分に設けられている溝を互いに連結させるとともに、同様にそれらの第2の部分を係合させることにより、2つの装置を連結することができる。この方法は、2つあるいはより多くの同様な拡散装置によってリングを形成することに応用できる。これは、ユーザが、拡散装置のリングから放出される芳香性の物質の量あるいは強度を増やすこと、あるいは異なる製品の装置を合体させてユーザが所望する香りあるいは効果を組み合わせることができることを意味する。
【0029】
2つの同一の装置を接続する他の選択肢をユーザに与えるために、本発明の他の実施形態においては、これまで述べてきた層状要素の2つの部分を重ね合わせる。すなわち、第1の部分の下端を延設してこの下端に設けたヒンジのまわりに揺動できる第4の部分とするとともに、この第4の部分の下端を延設して第5の部分を形成して各部分が層状要素を共有するようにし、第2の部分のフックとは反対側の位置において後者にフック状の構造を設ける。したがって、この実施形態は2つのフックを有するが、この装置を製造する材料の柔軟性により、ユーザは、それらが互いを係合するまで互いを接近させることができる。第4の部分は他の揮発性の製品を含む容器を有することができるので、複合的な効果を得るために異なり得る2つの調合物を有した2つの拡散装置を備えたリングを構成することができる。加えて、このリングは、拡散領域をその内側に保護して、子供あるいは他の人の膜への接近を防止するように構成することができる。2つのフックの係合により構成されるこの装置は、例えば衣装タンスのより大きな棒に配設することができる。
【0030】
本願明細書に述べる拡散装置を配置するときのユーザのための他の選択肢は、フック形状に構成された層状要素の第2の部分に、付着による取付手段を設けることによって提供される。
【0031】
具体的には、開示された本発明の最後の実施形態は、フックの内側を占める層状部分をその内側に画成する低強度の線を第2の部分に有する。この低強度の線は、この層状部分を残りの部分から分離できるようにする、層状要素上に明けられた孔あるいは適切に間隔を開けて配置された切欠きとして設けることができる。この付着による取付手段は、接着剤あるいは他の接着剤を含浸させた紙あるいはパッド状の要素、磁性要素あるいは小型の磁石、またはベルクロ(登録商標)タイプの雌および雄の部分を、低強度の線によって区切られた層状部分の一方の表面に組み込んだものとすることができる。これにより、この装置は、例えば木製のドアに付着させ、冷蔵庫のドア上に磁石によって固定し、自動車のダッシュボード、引き出しの内側への取り付けといった、多くの表面に取り付けることができる。
【0032】
開放しあるいは閉鎖することができる層状要素の第2の部分から、低強度の線によって構成された層状部分を部分的にまたは完全に分離するためには、ユーザはその一方または両方の表面を指で押さなければならないが、フックの端部を自由にしてその横方向の開放部分をフックの中央穴に接続すると、この装置は、例えば自動車バックミラー、ハンガー、あるいは他の多くのありふれた対象物といった、任意の場所に容易に吊り下げることができる。この最後の実施形態とこの装置の第1の実施形態とを組み合わせると、吊り下げた後に、層状要素の第2の部分の上側フラップでフックの横方向の開口部を閉鎖して、対象物に対する取り付けを改善することができる。
【0033】
要するに、その構造について説明したこの装置を構成する層状要素は、この装置を任意の場所に吊り下げ、単独であるいはもう一つに係合させ、水平な表面上に自立させ、またはユーザに最も都合がいい場所および位置にそれを接着するるように構成された様々な取付け手段を一体化させることによって、いくつかの用途にも有効である。
【0034】
本発明の拡散装置は、その構造が極めて簡単であり、付加の部分を必要とすることなく、全ての部分を単一の工業的なプロセスで製造することができる。さらに、装置、拡散体、容器を構成するために用いる層状の装置を熱成形するために合成熱可塑性フィルムを用いることができるし、このシステムを耐熱性(最高で80℃)に、あるいは水との接触によって活性化する水溶性の装置として製造することもできる。加えて、この装置のベース部分を構成する可撓性の層状要素を透明な樹脂から製造すると、ユーザがその中味を見て揮発性の物質を提供する製品がどれだけ残っているかを確かめることができる。これにより、消費者は、この製品を使い尽くしたときに、上述した拡散装置あるいは容器を廃棄することができる。
【0035】
単一片の本体を構成する可撓性の材料シートを穴明きとしつつ、この組立体の機械的な特性を強化する特別なリブ材によって、説明したフック、ヒンジあるいは低強度の線を含む様々な部分を成形することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
図1を考慮すると、本発明の可能な実施形態は、揮発性の物質を拡散させるための使い捨て装置として記載することができる。この装置は、少なくとも第1の部分(2)および第2の部分(4)を有する、熱成形された樹脂製の層状要素(1)を備えているが、第1の部分(2)内の部分(3)は製品(30)を収容しており、この製品(30)の蒸発によって生じる揮発性物質の拡散領域(25)がその背面に設けられている。層状要素(1)は、通常は互いに連通している横方向の開放部分(12)および中央孔(24)を具備した構造のフック(5)を第2の部分(4)に有している。
【0037】
図1に示されている特定の実施形態において、第2の部分(4)が有している頂部フラップ(17)は、横方向の開放部分(12)が開放している非格納状態と上側フラップ(6)がフック(5)の横方向の開放部分(12)を閉鎖する格納状態との間で、第2の部分(4)の上端に設けられているヒンジ(19)の回りに180度回動することができる。選択的に、そのような閉鎖を確実なものとするべく、フラップ(17)はその第2の部分から最も遠い端部に接着剤または他の手段を有していても良く、これにより、ユーザがこの装置を吊り下げるとともにその最も遠い端部が第2の部分に隣接するまでフラップ(17)を180度回動させ、それによって図1に示したように横方向の開放部分(12)を閉鎖した後、フラップ(17)を第2の部分に付着させることができる。
【0038】
図2は、本発明の他の可能な実施形態を示しているが、第1の部分(2)の底部を延設した第3の部分(11)は、この第3の部分(11)が拡散領域(25)を少なくとも部分的に覆う格納状態と図2Bに示すように第3の部分(11)が拡散領域(25)を全く覆わない非格納状態との間で、ユーザが調節可能な第1の部分(2)に対する角度(X)に達するまで、第1の部分(2)の下端に設けられているヒンジ(10)の回りに回動させることができる。選択的に、第1の部分(2)は、第1の部分(2)の各側部に設けられている各ヒンジ(17)の回りに回動可能な、少なくとも2つの横方向フラップ(31)を有することができる。
【0039】
図3は、可撓性の第3の部分(11)を有した類似の標準的な装置を示しているが、折曲線(29)を有しているため、第3の部分(11)は、図3Bに示したように拡散領域(25)を部分的に開放するべく、その格納状態においてユーザが自由に折り曲げることができる。
【0040】
図4は、拡散領域(25)のプロテクタとして構成された、オリフィス(16)を具備した領域と空気の吸込口/吐出口としての横方向のエアダクト(28)とを有した第3の部分(11)を示している。第3の部分(11)を格納した状態では、オリフィス(16)を具備した領域は拡散領域(25)と一致する。第2の部分(4)には、2つの側方タブ(14)が組み込まれていて、そこに第3の部分(11)の下端(15)、すなわちヒンジ(10)回りの回動端部とは反対側の端部が係合する。図4Bに示されているように、側方タブ(14)は、それらを層状要素(1)の第2の部分(4)から僅かに分離させることによって引き出されている。また、保護のための第3の部分(11)は、第1の部分(2)の背面に対し180度回動して、図4Cに示すように拡散領域(15)を覆う。
【0041】
ユーザが2つの揮発性の液体拡散装置を一緒に使用したい場合は、本発明のいくつかの別の実施形態が提案される。図5に示されている実施形態においては、第1の部分(2)および第2の部分(4)にそれぞれ組み込まれている溝(18、19)は、揮発性物質のための同様な第2の使い捨て装置の第1および第2の部分に設けられている、図5Bに示すように溝(18、19)とは反対側に配置されている対応溝と係合するように構成されている。
【0042】
他の実施形態においては、層状要素(1)の第1の部分(2)の下部が延設されて、第1の部分(2)の下部に設けられているヒンジ(21)の回りに回動できる第4の部分(20)となっている。また第4の部分(20)が延設されて、フック(5)構造が設けられた第5の部分(22)となっている。そして、第4の部分(20)および第5の部分(22)が層状要素(1)を共有している。第4の部分(20)は、揮発性の物質を提供する製品(30’)のための容器(23)を有している。この組立体は、図6Bに示したように、両フック(5、5’)を互いに接続することによってそれを吊り下げるためのリング形状を採用することができる、揮発性物質のための2重拡散装置に相当する。
【0043】
上述した図面の可撓性の層状要素(1)においては、第1の部分(2)と第2の部分(4)との間の中央折曲線(21)ばかりでなく、第4の部分(20)と第5の部分(22)の間に他の中央折曲線(26)が設けられていて、ユーザはそれに沿って層状要素(1)を折り曲げることができる。
【0044】
図7に示されている層状要素(1)の第2の部分(4)には、付着のための取付手段が組み込まれている。この取付手段は、好ましくは層状部分(7)の一方の表面上に接着されたフォームパッド(8)から構成されるとともに、樹脂から熱成形され、かつフック(5)の内側に配置されて閉じている通常は円形の表面を構成し、さらに中央孔(24)のために設けられている空間を占めている。パッド(8)の反対側の表面は、接着剤が含浸されるとともにパラフィン紙の保護フィルム(9)で覆われている。そして、パッド(8)およびフィルム(9)の両方が、第2の部分(4)の一部として構成されたフック(5)の内側に画成されている層状部分(7)の形状およびサイズに合致している。そして、この二層構造の付着手段により、パッド(8)を接着させる表面からパッド(8)を十分に遠ざけて、この装置のあらゆる対象物との接触を防止する。
【0045】
第1の部分(2)は、例えばほぼ楕円形あるいは液滴状の形状を具備するとともに、円形あるいはエンドユーザに訴えかける適切な形状の、香水または他の適切な揮発性物質を放出するために調製された製品(30)を収容している保管場所(3)をその中央に有している。図8から判るように、保管場所(3)の背面は蒸発膜(6)によって覆われている。この蒸発膜(6)は、保管場所(3)を密封して製品(30)を保持するとともに、保護および密封層(12)をユーザが取り除いた際、それを通って製品(30)が蒸発し始める拡散領域(25)を覆っている。保護および密封層(12)は、層状要素(1)の第1の部分(2)を完全にまたは部分的に覆うアルミニウム箔のようなものからなっている。
【0046】
図9に示されている第2の部分(4)の背面は、付着による取付手段がその一方の表面上に配置されている層状部分(7)をその内側に区切る、低強度の線(13)を有している。図10に詳細に示すように、層状部分(7)の2つの表面は、その表面を単にユーザが指(14)で押圧することによって層状要素(1)から容易に分離することができるとともに、より容易さを高めるためにフック(5)の内側に画成された輪郭に対しわずかに凹んだ表面を構成している。
【0047】
低強度の線(13)は、図9に示すように孔開きとし、あるいは層状部分(7)とフック(5)との間の結合を弱める複数の切欠き(10)を設けることもできる。これにより、図10に示すように、層状部分(7)上への指によるわずかな圧力によりこの層状部分(7)を第2の部分(4)から分離することができ、フック(5)の内側が空となって、図14に示したように本発明の装置の吊り下げを可能とする中央孔(24)が残る。
【0048】
図11および図12に示したように、引き出しの内側表面やごみ箱の外側表面のような表面への取り付けのために提案された取付手段の使用とは別に、ユーザは、第1の部分(2)と第2の部分(4)との間に画成されている折曲線(26)によって層状の要素(1)を折り曲げ、図13に示したように任意の平坦な表面上にそれを起立させることができるように適切な角度(X)を形成することができる。本発明の装置はまた、層状要素(1)を半分に折りたたむとともに、図12に示すように屑入れまたは屑かごの開口またはハンドルのような対象物の適切な要素を用いることにより、この目的のために設けられているフック(5)の代わりに折曲線(26)によって直接的に引っ掛けて対象物に取り付けることができる。
【0049】
これらは、本発明の拡散装置のいくつかの可能な使用方法および実施形態であり、きわめて低コストで使い捨ての材料から全体的に成形される単純な構造を有した、この装置の用途の広さを示している。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】フックを閉じるための頂部フラップを有した、揮発性物質を拡散させる装置の好ましい実施形態の正面図。
【図2】(A)(B)は、物質の拡散を調整する部分およびその機能を完全なものにする横方向のフラップを有した、本発明の拡散装置の他の実施形態の正面図および側面図。
【図3】(A)(B)は、物質の拡散を調整するための3重のシステムを有した、本発明の装置の他の実施形態の正面図および側面図。
【図4】(A)〜(C)は、蒸発膜を保護する部分を有した、本発明の装置の他の可能な実施形態の正面図および側面図。
【図5】(A)(B)は、係合溝を有した本発明の他の実施形態の装置の正面図。
【図6】(A)(B)は、ダブルフックを有した、本発明の可能でありかつ好ましい他の実施形態の装置の正面図。
【図7】付着による取付手段が組み込まれた、本発明の装置の好ましい実施形態の斜視図。
【図8】拡散領域を覆っている蒸発膜および保護層を詳細に示す、前述した図面に示されている実施形態の装置の第1の部分の立面図。
【図9】図7に示されている実施形態の装置の第2の部分の後面図。
【図10】拡散装置を構成している本体から着脱可能な接着手段を有した部分を側方から示す、本発明の1つの可能な実施形態の上側部分の横断面図。
【図11】図11は、折りたたまれて引き出しの内側に接着された適用オプションの一つの状態にある装置を示す斜視図。
【図12】折りたたまれてごみ箱の外縁から吊り下げられあるいはその内側に接着された、適用オプションの他の状態にある拡散装置の斜視図。
【図13】折りたたまれて水平面上に自力で起立している、適用オプションの他の状態にある拡散装置を示す斜視図。
【図14】折りたたまれることなくそのフックによって収納戸棚の内部や後方反射鏡の後側支持部やウィンカーレバー等の車両部品に吊り下げられた、最後ではあるがやはり重要な適用オプションの状態にある拡散装置を示す斜視図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
揮発性物質を拡散させるための使い捨て装置であって、
少なくとも第1の部分(2)および第2の部分(4)を有した層状要素(1)を備え、
前記第1の部分(2)は、揮発性物質の拡散領域(25)を具備し、前記揮発性物質の元となる製品(30)を収容している保管場所(3)を有し、
前記第2の部分(4)は、横方向の開放部分(12)を有したフック構造(5)を有している装置において、
前記第2の部分(4)が頂部フラップ(17)を有しており、この頂部フラップ(17)は、横方向の開放部分(12)が開放している非格納状態と前記頂部フラップ(17)が前記フック(5)の横方向の開放部分(12)を閉鎖している格納状態との間で、前記第2の部分(4)の上端に設けられているヒンジ(19)の回りに回動することができることを特徴とする揮発性物質を拡散させるための使い捨て装置。
【請求項2】
揮発性物質を拡散させるための使い捨て装置であって、
少なくとも第1の部分(2)および第2の部分(4)を有した層状要素(1)を備え、
前記第1の部分(2)は、揮発性物質の拡散領域(25)を具備し、前記揮発性物質の元となる製品(30)を収容している保管場所(3)を有し、
前記第2の部分(4)は、横方向の開放部分(12)を有したフック構造(5)を有している装置において、
前記第1の部分(2)の底部が第3の部分(11)として延設され、この第3の部分(11)は、前記拡散領域(25)が全く覆われていない非格納状態と前記第3の部分(11)が前記拡散領域(25)を少なくとも部分的に覆う非格納状態との間で、前記第1の部分(2)の下端に設けられているヒンジ(10)の回りに回動することができることを特徴とする揮発性物質を拡散させるための使い捨て装置。
【請求項3】
前記第1の部分(2)は、前記第1の部分(2)の両側に設けられている対応ヒンジ(17)の回りに回動することができる、少なくとも2つの横方向フラップ(31)を有していることを特徴とする請求項2記載の揮発性物質を拡散させるための使い捨て装置。
【請求項4】
前記第2の部分(4)が2つの側方タブ(14)を有しており、かつ前記第3の部分(11)は、前記格納状態において前記拡散領域(25)と一致するオリフィス(16)を具備した領域を有するとともに、前記格納状態において前記ヒンジ(10)とは反対側の端部(15)が前記側方タブ(14)に係合することを特徴とする請求項2記載の揮発性物質を拡散させるための使い捨て装置。
【請求項5】
前記第3の部分(11)が横方向のエアダクト(28)を有していることを特徴とする請求項4記載の揮発性物質を拡散させるための使い捨て装置。
【請求項6】
前記第3の部分(11)は、可撓性の材料から製造されるとともに、少なくとも一つの折曲線(29)を有していて、前記格納状態において前記拡散領域(25)を部分的に開放しようとするユーザの意志によって折り曲げることができることを特徴とする請求項2記載の揮発性物質を拡散させるための使い捨て装置。
【請求項7】
揮発性物質を拡散させるための使い捨て装置であって、
少なくとも第1の部分(2)および第2の部分(4)を有した層状要素(1)を備え、
前記第1の部分(2)は、揮発性物質の拡散領域(25)を具備し、前記揮発性物質の元となる製品(30)を収容している保管場所(3)を有し、
前記第2の部分(4)は、横方向の開放部分(12)を有したフック構造(5)を有している装置において、
前記第2の部分(4)は、層状部分(7)をその内側に画成する低強度の線(13)を有し、層状部分(7)の一方の側には、付着による取付手段が組み込まれ、かつその他方の側には、指で押圧してこの装置を吊り下げるために前記フック(5)の横方向の開放部分(12)と連通する中央孔(24)を開けたときに層状要素(1)から分離する表面が画成されていることを特徴とする揮発性物質を拡散させるための使い捨て装置。
【請求項8】
前記低強度の線(13)が孔開きとなっていることを特徴とする請求項7記載の揮発性物質を拡散させるための使い捨て装置。
【請求項9】
前記低強度の線(13)は、前記フック(5)と前記層状部分(7)との間に壊れやすい結合を構成する複数の切欠き(15)によって強度が低められていることを特徴とする請求項7記載の揮発性物質を拡散させるための使い捨て装置。
【請求項10】
前記付着による取付手段は接着剤が含浸されるとともに保護フィルム(9)で覆われたパッド(8)から構成され、
前記パッド(8)および前記フィルム(9)の両方が前記層状部分(7)のサイズおよび形状に適合していることを特徴とする請求項7、8および9のうちいずれか一項記載の揮発性物質を拡散させるための使い捨て装置。
【請求項11】
前記付着による取付手段は、その表面に複数のフックが設けられている雄側部分と前記雄側部分に係合するように構成された複数のループがその表面に設けられている雌側部分とを有し、
両方の部分は接着面を有しており、一方の部分は、この装置の前記層状部分(7)に取り付けられ、他方の部分は、前記付着による取付手段によりこの装置を取り付けるために選択された表面に取り付けられることを特徴とする請求項7、8および9のいずれか一項記載の揮発性物質を拡散させるための使い捨て装置。
【請求項12】
前記付着による取付手段がベルクロ(登録商標)であることを特徴とする請求項11記載の揮発性物質を拡散させるための使い捨て装置。
【請求項13】
前記付着による取付手段が前記層状部分(7)に結合された磁性素子であることを特徴とする請求項7、8および9のいずれか一項記載の揮発性物質を拡散させるための使い捨て装置。
【請求項14】
前記層状要素(1)が可撓性の材料から製造されていることを特徴とする請求項1乃至13のいずれか一項記載の揮発性物質を拡散させるための使い捨て装置。
【請求項15】
揮発性物質を拡散させるための使い捨て装置であって、
少なくとも第1の部分(2)および第2の部分(4)を有した可撓性材料の層状要素(1)を備え、
前記第1の部分(2)は、揮発性物質の拡散領域(25)を具備し、前記揮発性物質の元となる製品(30)を収容している保管場所(3)を有し、
前記第2の部分(4)は、横方向の開放部分(12)を有したフック構造(5)を有している装置において、
前記第1の部分(2)は、前記可撓性の層状要素(1)を折り曲げたときに、前記2つの部分(2、4)を一体化させるように構成された溝(18)を有しており、前記溝(18)は、前記第2の部分(4)のうち前記溝(18)と反対側の位置に設けられている他の溝(19)と係合するようになっていることを特徴とする揮発性物質を拡散させるための使い捨て装置。
【請求項16】
前記溝(18、19)は、揮発性物質を拡散させるための同様な第2の使い捨て装置の第1および第2の部分における前記溝(18、19)と反対側に設けられている溝にそれぞれ係合するように構成されていることを特徴とする請求項15記載の揮発性物質を拡散させるための使い捨て装置。
【請求項17】
揮発性物質を拡散させるための使い捨て装置であって、
少なくとも第1の部分(2)および第2の部分(4)を有した可撓性材料の層状要素(1)を備え、
前記第1の部分(2)は、揮発性物質の元である製品(30)を収容している保管場所(3)および前記揮発性物質の拡散領域(25)を有し、
かつ前記第2の部分(4)は、横方向の開放部分(12)を有したフック構造(5)を有している装置において、
前記第1の部分(2)の下端から第4の部分(20)が延設され、前記第4の部分(20)は前記第1の部分(2)の下端に設けられたヒンジ(21)の回りに揺動可能になっており、
かつ前記第4の部分(20)の下端からは、フック構造(5)が設けられている第5の部分(22)が延設され、
前記第4の部分(20)および前記第5の部分(22)が可撓性の層状要素(1)を共有していることを特徴とする揮発性物質を拡散させるための使い捨て装置。
【請求項18】
前記第4の部分(20)が、揮発性の物質の元である製品(30′)の容器(23)を有していることを特徴とする請求項17記載の揮発性物質を拡散させるための使い捨て装置。
【請求項19】
前記層状要素(1)は、前記第4の部分(20)と前記第5の部分(22)との間に画成された中央折曲線(27)で折り曲げることができることを特徴とする請求項17および18のうちいずれか一項記載の揮発性物質を拡散させるための使い捨て装置。
【請求項20】
前記層状要素(1)は、前記第1の部分(2)と前記第2の部分(4)との間に画成された中央折曲線(26)で折り曲げることができることを特徴とする請求項14、15、16、17、18および19のうちいずれか一項記載の揮発性物質を拡散させるための使い捨て装置。
【請求項21】
前記層状要素(1)が少なくとも広い領域および狭い領域を備え、前記狭い領域に中央折曲線(26、27)が設けられていることを特徴とする請求項19および20のうちいずれか一項記載の揮発性物質を拡散させるための使い捨て装置。
【請求項22】
前記拡散領域(25)が、製品(30、30′)の揮発性物質を拡散させることができる膜(6)によって覆われていることを特徴とする請求項1乃至21のうちいずれか一項記載の揮発性物質を拡散させるための使い捨て装置。
【請求項23】
前記膜(6)を覆うとともに製品(30、30′)の蒸発を防止する保護および密封層(12)を有していることを特徴とする請求項22記載の揮発性物質を拡散させるための使い捨て装置。
【請求項24】
前記フック(5)が、前記層状要素(1)に構成された機械的な補強リブを有していることを特徴とする請求項1乃至23のうちいずれか一項記載の揮発性物質を拡散させるための使い捨て装置。

【図1】
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【図2−1】
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【図2−2】
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【図3−1】
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【図3−2】
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【図4−1】
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【図4−2】
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【図5−1】
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【図5−2】
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【図6−1】
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【図6−2】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−51649(P2012−51649A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−206193(P2011−206193)
【出願日】平成23年9月21日(2011.9.21)
【分割の表示】特願2008−555808(P2008−555808)の分割
【原出願日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【出願人】(501132125)ゾベレ エスパーニャ ソシエダッド アノニマ (11)
【Fターム(参考)】