説明

揺動式電子部品及びこれを用いた多機能型電子部品

【課題】部品点数の削減と組立工程の簡略化とが図れる揺動式電子部品を提供する。
【解決手段】揺動部材150と、揺動部材150を揺動自在に支持する支持部材200と、支持部材200上に設置されるフレキシブル回路基板170とを具備する。フレキシブル回路基板170は、押圧スイッチ185を設けて支持部材200にインサート成形される支持部材取付部175と、揺動部材150にインサート成形される揺動部材取付部171とを連結部173で連結して構成される。揺動部材150の外周に係止片159を設ける。支持部材200に揺動部材係止部203−1〜4を設け、連結部173に近い側の揺動部材係止部203−1,2の撓み強度を、遠い側の揺動部材係止部203−3,4の撓み強度よりも弱くする。連結部173を折り返して各係止片159を各揺動部材係止部203−1〜4に係止して支持部材200の上部に揺動部材150を揺動自在に取り付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、揺動式電子部品及びこれを用いた多機能型電子部品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車載用ナビゲーションシステム、コンピュータ、各種携帯機器、各種OA機器、ゲーム機などを操作するデバイスとして回転式電子部品や揺動式電子部品や押圧式電子部品などが用いられている。そしてこの種の電子部品の中には、特許文献1の図1に示す多機能型電子部品(1)のように、回転式電子部品の回転つまみ(20)の中央に押圧式電子部品の押釦つまみ(10)を設置することで回転式電子部品と押圧式電子部品の機能を併せ持たせ、さらに前記回転つまみ(20)にこれをその上面から押圧・揺動させて操作する揺動式電子部品の機能を併せ持たせた構造のものがある。
【0003】
しかしながら上記特許文献1に記載の多機能型電子部品(1)の、特に揺動式電子部品を構成する部分は、図3に示すように、取付台(90)と支持部材(100)とフレキシブル回路基板(70)とを別々の部品として構成しているので、部品点数が3部品となって多く、またそれらの組み立て工程も煩雑であった。
【特許文献1】特開2007−335191号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上述の点に鑑みてなされたものでありその目的は、部品点数の削減と、組立工程の簡略化とが図れる揺動式電子部品及びこれを用いた多機能型電子部品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願請求項1に記載の発明は、下面に押圧部を有する揺動部材と、前記揺動部材の下側に設置され前記揺動部材を揺動自在に支持する支持部材と、前記支持部材上に設置され前記揺動部材が揺動した際に下降する位置にある押圧部によって押圧される押圧スイッチを設置してなるフレキシブル回路基板と、を備えた揺動式電子部品において、前記フレキシブル回路基板は、前記押圧スイッチを設けて前記支持部材にインサート成形される支持部材取付部と、前記揺動部材にインサート成形される揺動部材取付部とを連結部で連結して構成され、前記揺動部材の外周の複数位置に係止片を設けるとともに、前記支持部材に前記支持部材取付部よりも上方に突出する揺動部材係止部を設け、さらに前記複数の揺動部材係止部の内の前記連結部に近い側のものと遠い側のものの前記支持部材に対して撓む撓み強度を異ならせ、前記連結部の部分を折り返して揺動部材の各係止片を支持部材の各揺動部材係止部に上下動自在に係止することで、前記支持部材の上部に揺動部材を揺動自在に取り付けたことを特徴とする揺動式電子部品にある。
【0006】
本願請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の揺動式電子部品において、前記複数の揺動部材係止部は前記支持部材に一体成形されており、かつこれら複数の揺動部材係止部の内の撓み強度が弱い方の揺動部材係止部は、支持部材の外周辺部分に設けられていることを特徴とする揺動式電子部品にある。
【0007】
本願請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の揺動式電子部品の揺動部材の上部に、ケースと、前記ケースの上部に設置される回転つまみと、前記ケースの内部に設置され前記回転つまみと一体に回転する回転体と、前記回転体の回転によって電気的出力を変化する電気的機能部とを設置し、前記揺動部材の上面に露出させたフレキシブル回路基板の揺動部材取付部の面上に前記電気的機能部用のパターンを形成し、これによって前記揺動式電子部品の上部に回転式電子部品を設置したことを特徴とする多機能型電子部品にある。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に記載の発明によれば、揺動部材と支持部材とフレキシブル回路基板とをインサート成形によって一体化してこれら3部品を1部品で構成したので、実質的な部品点数の削減化が図れ、また連結部の部分を折り返して支持部材の上部に揺動部材を揺動自在に取り付けるという簡単な組立工程によって容易かつ確実に揺動式電子部品の組み立てを行うことができる。
また請求項1に記載の発明によれば、各揺動部材係止部に係止片を係止する際に、連結部に近い側または遠い側の何れか撓み強度の弱い揺動部材係止部を撓める(支持部材の面に対して傾ける)ことで、容易に支持部材上に揺動部材を取り付けることができる。同時に撓み強度の強い側の揺動部材係止部によって、取り付けた揺動部材が支持部材から外れることを確実に防止できる。
【0009】
請求項2に記載の発明によれば、撓み強度の弱い揺動部材係止部を容易かつ確実に構成することができる。
【0010】
請求項3に記載の発明によれば、上記揺動式電子部品にさらに回転式電子部品の機能を付加することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して詳細に説明する。図1は本発明の1実施形態にかかる揺動式電子部品を用いて構成した多機能型電子部品1の斜視図、図2は概略側断面図、図3は多機能型電子部品1の上側の部品を上側から見た分解斜視図、図4は多機能型電子部品1の下側の部品を上側から見た分解斜視図、図5は多機能型電子部品1の上側の部品を下側から見た分解斜視図、図6は多機能型電子部品1の下側の部品を下側から見た分解斜視図である。なお以下の説明において、「上」とは図2において支持部材200から揺動部材150の方を見る方向をいい、「下」とはその反対方向をいうものとする。
【0012】
これらの図に示すように多機能型電子部品1は、回転つまみ10と、押釦つまみ30と、スペーサ部材45と、ケース50と、クリック板70と、回転体90と、摺動子110と、揺動部材150および支持部材200をフレキシブル回路基板170に取り付けてなる揺動式電子部品130とを具備して構成されている。
【0013】
回転つまみ10は合成樹脂(この実施形態ではABS樹脂が使用されているが、他の各種熱可塑性の合成樹脂材でも良い)の成形品であり、略円板状の本体部11の中央に円形の開口部13を設けて構成されている。回転つまみ10の開口部13は、内部に下記する押釦つまみ30の本体部31を設置できるように本体部31の外径寸法よりも若干大きな内径寸法であり、かつ本体部31に設けた下記するつば部37が抜けないようにつば部37の外径寸法よりも若干小さい内径寸法に形成されている。本体部11の外周には下方に突出する筒状の外周側壁部15が形成され、また本体部11の下面の開口部13の周囲には下方に突出する筒状の軸部17が形成されている。軸部17の下端面の複数位置(この実施形態では180°対向する2ヶ所)には、この回転つまみ10にクリック板70を固定する小突起からなる板取付部19が設けられている。さらに軸部17の下端面の板取付部19の間の複数位置(この実施形態では180°対向する2ヶ所)のは、この回転つまみ10に回転体90を取り付ける小突起からなる回転体取付部21が設けられている。
【0014】
押釦つまみ30は合成樹脂(この実施形態ではABS樹脂が使用されているが、他の各種熱可塑性の合成樹脂材でも良い)の成形品であり、略円板状の本体部31と、本体部31の下面中央から下方向に向かって突出する柱状の押圧部33とを具備し、また本体部31の外周側面の下部から薄板リング状のつば部37を突出し、また押圧部33の外周側面から上下方向に沿って延びる細い柱状の回り止め39を突出して構成されている。
【0015】
スペーサ部材45は、POM樹脂などの摺動性に優れた成形樹脂製の薄板状部材であり、下記するケース50の上面部51の外径とほぼ一致する円形の外径を有し、中央に下記するケース50の開口部53とほぼ同一内径の開口部47を設けて構成されている。このスペーサ部材45は、回転つまみ10とケース50の間に設置されて回転つまみ10の回転時のケース50に対する回転摺動性を向上させるための部材である。
【0016】
ケース50は合成樹脂(この実施形態ではポリカーボネート(PC)樹脂が使用されているが、他の各種熱可塑性の合成樹脂材でも良い)の成形品であり、円形平板状の上面部51を備え、上面部51の中央に回転つまみ10の軸部17をその内部に挿入して回動自在に軸支する円形の開口部53を有している。上面部51の外周には下方向に向かって突出する筒状の側壁部55が設けられ、側壁部55の下端面の複数の位置(この実施形態では等間隔(90°間隔)の4ヶ所)には、下記する揺動部材150に取り付けられる小突起状の揺動部材取付部57が設けられている。また上面部51の下面には、下記するクリック板70のクリック弾接部83を弾接係合させる凹凸をリング状に形成してなるクリック係合部59が設けられている。
【0017】
クリック板70は弾性金属板(例えばステンレス板)を円形に形成した本体部71と、本体部71の外周を囲む位置に設置された一対の半円弧状のアーム部73,73とを一体に形成して構成されている。本体部71はその外径がケース50の開口部53の内径よりも若干大きな寸法に形成され、その中央には前記押釦つまみ30の押圧部33を挿通させる円形の開口部75が設けられ、また開口部75の両側の180°を隔てて対向する2ヶ所の位置には回転つまみ10の板取付部19を嵌合させる扇形状の貫通孔からなる挿通部77が形成され、開口部75の両側の180°を隔てて対向する2ヶ所の位置であって前記一対の挿通部77の間の位置には回転つまみ10の回転体取付部21を挿入する円形の貫通孔からなる取付固定部79が形成されている。本体部71の挿通部77,77の両外側には、半径方向外方に突出して両アーム部73,73の根元部分に連結する一対の連結部81,81が設けられている。両アーム部73,73はそれぞれ本体部71の外周に沿うように設置され、両アーム部73,73の中間部付近にはクリック板70の上面側に向かって円弧状に湾曲する突起状のクリック弾接部83,83が設けられている。
【0018】
回転体90は合成樹脂(この実施形態ではPC樹脂が使用されているが、他の各種熱可塑性の合成樹脂材でも良い)の成形品であり、円形の平板状に形成され、その中央に下記する揺動部材150の軸部153を回転自在に挿通(軸支)する円形の開口部91を設けている。一方回転つまみ10の回転体取付部21に対向する2ヶ所の位置には貫通孔からなる挿入部93が設けられ、また回転つまみ10の板取付部19に対向する2ヶ所の位置には、クリック板70の下面から突出する板取付部19の先端部を収納配置する凹状の収納部95が設けられている。一方回転体90の下面の開口部91の周囲には下方向に突出する筒状の突出部97が設けられている。突出部97の周囲の面は、摺動子110を設置する摺動子設置部101となっており、摺動子設置部101の面の同一円周上の等間隔(120°間隔)の3か所には小突起状の摺動子固定部103が設けられている。
【0019】
摺動子110は弾性金属板製であり、この実施形態ではリン青銅板を用いているが、他の各種材質のものを用いてもよい。摺動子110は、回転体90よりも若干小さな外径寸法を有する略円形の平板状でリング状に形成され、中央に開口部111を設けるとともに、等間隔(120°間隔)の3ヶ所に、前記回転体90の摺動子固定部103を挿入する貫通孔からなる取付固定部113を設け、また各取付固定部113の側部から3本ずつの摺接ブラシ115を摺動子110の円形の外形に沿うように設置して構成されている。各組の摺接ブラシ115の先端近傍部分は接点部117となっている。
【0020】
図7はフレキシブル回路基板170の斜視図である。同図に示すようにフレキシブル回路基板170は、可撓性を有する合成樹脂フイルム上に所望の回路パターンを設けて構成されており、この実施形態では合成樹脂フイルムとして熱可塑性のPETフイルムを用いているが、他の各種熱可塑性、熱硬化性、光硬化性の合成樹脂フイルム、たとえばポリフェニレンスルフイド(PPS)フイルム、ポリイミド(PI)フィルム、ポリエチレンナフタレート(PEN)フイルム、ポリエーテルイミド(PEI)フイルム、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)フイルム、ポリエーテルケトン(PEK)フイルム、PCフイルム、ポリブチレンナフタレート(PBN)フイルム、ポリブチレンテレフタレート(PBT)フイルム等を用いて構成しても良い。フレキシブル回路基板170は、摺接パターン179(図6参照)が形成された揺動部材取付部171と、中央スイッチ183(中央スイッチ用接点183a)と押圧スイッチ185(押圧スイッチ用接点185a)とが形成された支持部材取付部175とを、帯状の連結部173によって連結して構成されている。
【0021】
揺動部材取付部171は略円形の外形を有し、中央に下記する揺動部材150の軸部153を設置する円形の開口部177を設け、またその下面の開口部177の周囲に所望の摺接パターン179(図6参照)を設けて構成されている。摺接パターン179は銀等の導電ペーストを印刷するなどして形成されており、図では詳細な記載を省略しているが、この実施形態ではスイッチパターンが形成されている。また揺動部材取付部171の前記ケース50の各揺動部材取付部57に対向する4ヶ所の位置には、貫通孔からなる挿通部181が設けられている。
【0022】
支持部材取付部175は、揺動部材取付部171よりも若干大きい外径寸法の略矩形状の外形を有し、その上面(前記摺接パターン179を設けた反対側の面)の中央に中央スイッチ用接点183aを形成し、中央スイッチ用接点183aの周囲の複数の位置(この実施形態では同一円周上の等間隔(90°間隔)の4ヶ所の位置)に押圧スイッチ用接点185aを形成して構成されている。中央スイッチ用接点183aと押圧スイッチ用接点185aは何れも図示しない一対のスイッチ接点によって構成され、その上に下記する弾性金属板をドーム形状に形成してなる反転板(可動接点板)183b,185bを取り付けることで中央スイッチ183,押圧スイッチ185(図4など参照)が構成されるものであり、反転板183b,185bを押圧してこれを反転することでスイッチがオンする構造となっている。また中央スイッチ接点183a及び押圧スイッチ接点185aの出力、および摺接パターン179の出力は図示しない回路パターンによって支持部材取付部175の外周辺(連結部173を連結している外周辺に対向する反対側の外周辺)近傍部分に設けた複数の出力用接点パターン187に接続されている。また支持部材取付部175のほぼ中央には、小孔からなる2つの連通孔189が設けられ、また下記する支持部材200に設ける2つの揺動部材係止部203に対向する位置にはそれぞれこれらを挿通する略矩形状の貫通孔191が設けられている。また支持部材取付部175の外周辺の内の連結部173の両側の外周辺は、斜めにカットしたような傾斜する直線状の一対の外周辺193となっている。
【0023】
そして図8などに示すように、揺動部材取付部171には揺動部材150がインサート成形され、支持部材取付部175には支持部材200がインサート成形され、これによって揺動部材150と支持部材200とフレキシブル回路基板170とは一体化され、揺動式電子部品130が構成されている。
【0024】
すなわち揺動部材150は図4,図6,図8に示すように、合成樹脂(この実施形態ではPC樹脂が使用されているが、他の各種熱可塑性の合成樹脂材でも良い)を、揺動部材取付部171の周囲と下面側(図4、図6,図8では上面側、即ち摺接パターン179を設けた面の反対側の面)とを覆うように略円板状にインサート成形して構成されており、回転つまみ10よりも若干大きい外径寸法を有している。そして摺接パターン179を設けた面は露出しており、その露出面の中央(開口部177の部分)には押釦つまみ30の押圧部33を挿通して軸支する略円形の開口部151が設けられ、露出面の開口部151の周囲には上方向(図6では下方向)に向かって突出する筒状の突起からなる軸部153が設けられている。軸部153の側面には、前記押釦つまみ30の回り止め39に係合する軸方向(上下方向)に延びるスリット及び溝からなる回り止め係合部155が形成されている。一方前記ケース50の各揺動部材取付部57に対向する複数の位置(本実施形態では4ヶ所の位置で、前記揺動部材取付部171の各挿通部181に対応する位置)には、貫通孔からなる取付部157が設けられ、また外周の所定位置(本実施形態では各取付部157の外側の4ヶ所の位置)には、半径方向外方に向かって舌片状に突出する係止片159が設けられている。各係止片159の先端近傍の下面(図8では上面)は、先に向かって厚みを薄くする傾斜面160となっている。各係止片159の両側辺には幅方向に突出する小突起状の係止部161が設けられている。揺動部材150の下面(図8では上面)の各取付部157の間の所定位置(各取付部157間の中間位置)には、下方向(図8では上方向)に向かって突出する柱状の押圧部163が設けられている。
【0025】
支持部材200は図4,図6,図8に示すように、合成樹脂(この実施形態ではPC樹脂が使用されているが、他の各種熱可塑性の合成樹脂材でも良い)を、支持部材取付部175の周囲と下面側(中央スイッチ用接点183aなどを設けた面の反対側の面)とを覆うように略矩形状にインサート成形して構成されており、その外形寸法形状は支持部材取付部175の外形寸法形状とほぼ同一である。そして中央スイッチ用接点183aなどを設けた面は露出しており、その露出面の中央スイッチ用接点183aと各押圧スイッチ185aの周囲を囲む位置にはそれぞれ円形の反転板収納部201を有する収納部形成部202が設けられている。収納部形成部202は5つのリングを連結した形状であり、支持部材取付部175に設けた連通孔189を介して底面側の成形樹脂に接続されている。また支持部材取付部175の2つの貫通孔191内からと、2つの外周辺193の外側位置から、上方向に突出して支持部材取付部175よりも上方に位置するように揺動部材係止部203−1〜4が突出されている。もちろん各揺動部材係止部203−1〜4は支持部材200と一体に成形されている。
【0026】
図9は揺動部材係止部203−1を上面側から見た要部拡大斜視図、図10は揺動部材係止部203−1を下面側から見た要部拡大斜視図、図11は揺動部材係止部203−4を上面側から見た要部拡大斜視図、図12は揺動部材係止部203−4を下面側から見た要部拡大斜視図である。なお揺動部材係止部203−2は揺動部材係止部203−1と同一形状、揺動部材係止部203−3は揺動部材係止部203−4と同一形状である。これらの図に示すように各揺動部材係止部203−1〜4には前記揺動部材150の各係止片159の先端部を挿入して係止する略矩形状の開口からなる係合片挿入部205が設けられている。支持部材取付部175の2つの外周辺193の外側位置から上方に突出する揺動部材係止部203−1,2、つまり複数(4つ)の揺動部材係止部203−1〜4の内の連結部173に近い側のもの2つは、これらを支持部材200の外周辺部分に設けることで、この外周辺よりも外方(図9のC方向)に向けて撓みやすくなるように構成し(これらは外周辺の外方にこれらを支えるものがないのでその方向に撓み(傾き)易い)、連結部173から遠い側のもの2つの揺動部材係止部203−3,4(これらは支持部材200の内部から立設しているので撓みにくい)に比べて支持部材200に対する撓み強度(撓みにくさの程度)を、連結部173から遠い側の揺動部材係止部203の前記撓み強度よりも小さく(弱く)し、撓み易く構成している。また揺動部材係止部203−1,2の上部の内側面(揺動部材係止部203−3,4に対向する側の面)は上方向に向かってその厚みを薄くする傾斜面206(図8参照)となっている。
【0027】
また支持部材取付部175の各出力用接点パターン187上にはそれぞれ図7に示す金属端子220の一端が当接され、その周囲(上下面)が支持部材200を構成する合成樹脂によって覆われることで図8に示すように固定されている。金属端子220の他端は支持部材200の外周側壁から外部に突出し、ほぼ直角に下方向に折り曲げられている。
【0028】
次に多機能型電子部品1の組立方法を説明する。まず予め回転体90の摺動子固定部103を摺動子110の取付固定部113に挿通し、摺動子110の下面側に突出する摺動子固定部103の先端を熱かしめすることで、回転体90の摺動子設置部101に摺動子110を取り付ける。そして回転つまみ10の開口部13に下側から押釦つまみ30の本体部31を挿入し、その上面を開口部13から回転つまみ10の上面側に露出させた状態で設置する。次に回転つまみ10の下側にスペーサ部材45を介してケース50を設置し、その際ケース50の開口部53内に上側から回転つまみ10の軸部17を挿入することでケース50の上部に回転つまみ10を回動自在に設置する。
【0029】
次にケース50の下面側にクリック板70を設置し、その際押釦つまみ30の押圧部33をクリック板70の開口部75に挿通させ、同時に回転つまみ10の板取付部19をクリック板70の挿通部77に挿通し、且つ回転つまみ10の回転体取付部21をクリック板70の取付固定部79に挿通し、クリック板70の下面に突出する各板取付部19の先端を熱かしめして固定する。次に前記摺動子110を取り付けた回転体90を、クリック板70の下面側に設置し、その際押釦つまみ30の押圧部33を回転体90の開口部91に挿通させると共に、クリック板70の取付固定部79からクリック板70の下面側に突出する回転体取付部21を回転体90の挿入部93に挿入する。なおここでは回転体取付部21を挿入部93に挿入するだけで、回転体取付部21先端の熱かしめは行っていないが、回転体取付部21の先端を回転体90の下面側で熱かしめして固定しても良い。
【0030】
一方、図8に示す支持部材200の各反転板収納部201にそれぞれ反転板183b,185bを収納し、収納部形成部202の各反転板収納部201側の内周側壁の一部を図4に示すように押し潰して反転板183b,185bの外周上面を押え、これによって各反転板183b,185bを固定する。これによって中央スイッチ183と押圧スイッチ185とが構成される。そして揺動部材取付部171を取り付けている揺動部材150を摺接パターン179を設けた側の面を上にしてその上に前記ケース50を設置する。その際ケース50の各揺動部材取付部57を揺動部材取付部171の各挿通部181と揺動部材150の各取付部157に挿入し、揺動部材150の下面から突出する各揺動部材取付部57の先端を熱かしめして固定する。このとき押釦つまみ30の押圧部33は揺動部材150の軸部153の内部(開口部151内)に挿入され、同時に軸部153の外周が回転体90の開口部91内に挿入配置され、押圧部33の下端は揺動部材150の下面に露出する。次に連結部173を折り曲げることで支持部材取付部175を取り付けた支持部材200を揺動部材150の下面側に設置する。このとき揺動部材150の各係止片159の係止部161より先端側の部分を支持部材200の各揺動部材係止部203−1〜4の係合片挿入部205内に挿入して取り付ける。これによって揺動部材150の各押圧部163はそれぞれ各押圧スイッチ185の反転板185a上に当接し、この状態で各係止片159が各係合片挿入部205の内周上辺に当接することで、揺動部材150が支持部材200によって揺動自在に支持された状態になる。なおこのとき押釦つまみ30の押圧部33の下端面も中央スイッチ183の反転板183a上に当接している。以上により本発明にかかる揺動式電子部品を用いて構成した図1,図2に示す多機能型電子部品1が完成する。なお上記組立手順はその一例であり、他の各種異なる組立手順を用いて組み立てても良いことはいうまでもない。
【0031】
ところで上記各係止片159と揺動部材係止部203−1〜4との係合は、まず4つの揺動部材係止部203−1〜4の内の連結部173から遠い側の2つの揺動部材係止部203−3,4に同時に係止片159を係止し、次に連結部173に近い側の2つの揺動部材係止部203−1,2の上部からこれらに対向する一対の係止片159を押し付け、両傾斜面160,206の作用によって撓み強度の弱い両揺動部材係止部203−1,2を外方に撓め、これによって両係合片挿入部205内に揺動部材150の各係止片159の係止部161より先端側の部分を挿入(スナップイン係合)して取り付けることで行われる。このように撓み強度の弱い揺動部材係止部203−1,2を撓めることで容易に支持部材200上に揺動部材150を取り付けることができる。同時に連結部173から遠い側の撓み強度の強い揺動部材係止部203−3,4によって、取り付けた揺動部材150が容易に支持部材200から外れることはない(もしすべての揺動部材係止部203の撓み強度を弱めると、揺動部材150が支持部材200から外れ易くなる)。
【0032】
この多機能型電子部品1においては、4つの揺動部材係止部203−1〜4の内の撓み強度が弱い方の揺動部材係止部203−1,2は、支持部材200の外周辺部分に設けられることで、この外周辺よりも外方に向けて撓みやすくなるように構成されている。言い換えればこのように構成することで、撓み強度の弱い揺動部材係止部203を容易かつ確実に構成することができる。
【0033】
なおこの実施形態では連結部173に近い側の揺動部材係止部203−1,2の撓み強度を弱くしたが、その代りに連結部173から遠い側の揺動部材係止部203−3,4の撓み強度を弱く構成してもよい。その場合はたとえばコ字状に形成されている揺動部材係止部203−3,4自体の太さを小さくするなどすればよい。この場合は、連結部173側の揺動部材係止部203−1,2に揺動部材150の係止片159を係止した後、連結部173から遠い側の揺動部材係止部203−3,4に係止片159をスナップイン係合させればよい。さらに揺動部材係止部203の数は種々の変更が可能であり、いずれの場合もそれら複数の揺動部材係止部203の内の連結部173に近い側と遠い側の何れかずつの撓み強度を異ならせればよい。つまり本発明においては、複数の揺動部材係止部203の内の連結部173に近い側のものと遠い側のものの撓み強度を異ならせればよい。
【0034】
次に多機能型電子部品1の動作を説明する。まず回転つまみ10を指等で回転すれば、クリック板70と回転体90と摺動子110とが回転つまみ10と一体に回転し、摺動子110の接点部117が摺接パターン179上を摺動して摺接パターン179の電気的出力が変化する。同時に、クリック板70のクリック弾接部83がケース50のクリック係合部59に弾接係合してクリック感覚が生じる。
【0035】
一方押釦つまみ30を押圧すれば、押釦つまみ30が下降してその押圧部33が中央スイッチ183の反転板183aを押圧して反転し、中央スイッチ183がオンする。押釦つまみ30への押圧を解除すれば反転板183aの弾性復帰力によって中央スイッチ183はオフする。また回転つまみ10の本体部11上面の前記揺動部材150の4ヶ所の押圧部163の何れかに対応する部分を押圧すれば、ケース50や回転体90や押釦つまみ30等、揺動部材150上に設置されている構成部品が揺動部材150と一体に押圧された方向に傾いて揺動し、下降した側の押圧部163が対向する押圧スイッチ185の反転板185aを押圧して反転し、押圧スイッチ185がオンする。回転つまみ10の押圧を解除すれば、反転している反転板185aの弾性復帰力によって回転つまみ10及び揺動部材150等の各構成部品が一体に元の位置に自動復帰し、押圧スイッチ185がオフする。
【0036】
以上説明したように、揺動式電子部品130によれば、下面に押圧部163を有する揺動部材150と、揺動部材150の下側に設置され揺動部材150を揺動自在に支持する支持部材200と、支持部材200上に設置され揺動部材150が揺動した際に下降する位置にある押圧部163によって押圧される押圧スイッチ185を設置してなるフレキシブル回路基板170とを備え、フレキシブル回路基板170は、押圧スイッチ185を設けて支持部材200にインサート成形される支持部材取付部175と、揺動部材150にインサート成形される揺動部材取付部171とを連結部173で連結して構成され、揺動部材150の外周の複数位置に係止片159を設けるとともに、支持部材200に支持部材取付部175よりも上方に突出する揺動部材係止部203を設け、さらに複数の揺動部材係止部203の内の連結部173に近い側のものと遠い側のものの支持部材200に対して撓む撓み強度を異ならせ、連結部173の部分を折り返して揺動部材150の各係止片159を支持部材200の各揺動部材係止部203に上下動自在に係止することで、支持部材200の上部に揺動部材150を揺動自在に取り付けて構成したので、揺動部材150と支持部材200とフレキシブル回路基板170とが一体化されてこれら3部品を1部品で構成でき、実質的な部品点数の削減化を図ることができ、また連結部173の部分を折り返して支持部材200の上部に揺動部材150を揺動自在に取り付けるという簡単な組立工程によって容易かつ確実に揺動式電子部品130の組み立てを行うことができる。また各揺動部材係止部203に係止片159を係止する際に、連結部173に近い側または遠い側の何れか撓み強度の弱い揺動部材係止部203を撓めることで、容易に支持部材200上に揺動部材150を取り付けることができる。同時に撓み強度の強い側の揺動部材係止部203によって、取り付けた揺動部材150が容易に支持部材200から外れることはない。また上記揺動式電子部品130では、複数の揺動部材係止部203−1〜4の内の撓み強度が弱い方の揺動部材係止部203−1,2を、支持部材200の外周辺部分に設けることでこの外周辺よりも外方に向けて撓みやすく構成しているので、撓み強度の弱い揺動部材係止部203を容易かつ確実に構成することができる。また上記多機能型電子部品1は、前記揺動式電子部品130の揺動部材150の上部に回転式電子部品の機能を有する各部品を設置したので、上記揺動式電子部品130にさらに回転式電子部品の機能を付加することができる。
【0037】
以上本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲、及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変形が可能である。なお直接明細書及び図面に記載のない何れの形状・構造・材質であっても、本願発明の作用・効果を奏する以上、本願発明の技術的思想の範囲内である。例えば上記実施形態では回転式電子部品と押圧式電子部品と揺動式電子部品の3つの機能を併せ持たせた構造の多機能型電子部品1を実施形態として示したが、もちろん上記揺動式電子部品130のみによって揺動式電子部品を構成してもよいし、また押圧式電子部品の機能を省略して回転式電子部品と揺動式電子部品の2つの機能のみを持たせた構造としてもよい。揺動式電子部品130のみとする場合は、揺動部材150自体を操作つまみの形状・構造に構成すればよい。また押圧式電子部品の機能を省略する場合は、上記多機能型電子部品1において設置した押釦つまみ30と中央スイッチ183とを省略し、回転つまみ10の開口部13を塞ぐなどすればよい。また上記揺動式電子部品130は直交する2方向に揺動自在としたが、1方向のみに揺動するいわゆるシーソー型の揺動式電子部品や、3方向以上に揺動する揺動式電子部品としてもよい。
【0038】
また揺動部材係止部203の撓み強度を弱める方法として、揺動部材係止部203が立設している支持部材200の部分の板厚を薄く形成する方法などを用いてもよい。また上記実施形態では支持部材200に金属端子220を取り付けたが、その代りに前記支持部材取付部175に、この支持部材取付部175を構成する合成樹脂フイルムと一体の帯状のフラットケーブルを連結してこのフラットケーブルを支持部材200から外部に引き出してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】多機能型電子部品1の斜視図である。
【図2】多機能型電子部品1の概略側断面図である。
【図3】多機能型電子部品1の上側の部品を上側から見た分解斜視図である。
【図4】多機能型電子部品1の下側の部品を上側から見た分解斜視図である。
【図5】多機能型電子部品1の上側の部品を下側から見た分解斜視図である。
【図6】多機能型電子部品1の下側の部品を下側から見た分解斜視図である。
【図7】フレキシブル回路基板170の斜視図である。
【図8】揺動式電子部品130の分解斜視図である。
【図9】揺動部材係止部203−1を上面側から見た要部拡大斜視図である。
【図10】揺動部材係止部203−1を下面側から見た要部拡大斜視図である。
【図11】揺動部材係止部203−4を上面側から見た要部拡大斜視図である。
【図12】揺動部材係止部203−4を下面側から見た要部拡大斜視図である。
【符号の説明】
【0040】
1 多機能型電子部品
10 回転つまみ
30 押釦つまみ
45 スペーサ部材
50 ケース
70 クリック板
90 回転体
110 摺動子(電気的機能部)
130 揺動式電子部品
150 揺動部材
159 係止片
163 押圧部
170 フレキシブル回路基板
171 揺動部材取付部
173 連結部
175 支持部材取付部
179 摺接パターン(電気的機能部)
183 中央スイッチ
185 押圧スイッチ
200 支持部材
203 揺動部材係止部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下面に押圧部を有する揺動部材と、前記揺動部材の下側に設置され前記揺動部材を揺動自在に支持する支持部材と、前記支持部材上に設置され前記揺動部材が揺動した際に下降する位置にある押圧部によって押圧される押圧スイッチを設置してなるフレキシブル回路基板と、を備えた揺動式電子部品において、
前記フレキシブル回路基板は、前記押圧スイッチを設けて前記支持部材にインサート成形される支持部材取付部と、前記揺動部材にインサート成形される揺動部材取付部とを連結部で連結して構成され、前記揺動部材の外周の複数位置に係止片を設けるとともに、前記支持部材に前記支持部材取付部よりも上方に突出する揺動部材係止部を設け、さらに前記複数の揺動部材係止部の内の前記連結部に近い側のものと遠い側のものの前記支持部材に対して撓む撓み強度を異ならせ、前記連結部の部分を折り返して揺動部材の各係止片を支持部材の各揺動部材係止部に上下動自在に係止することで、前記支持部材の上部に揺動部材を揺動自在に取り付けたことを特徴とする揺動式電子部品。
【請求項2】
請求項1に記載の揺動式電子部品において、
前記複数の揺動部材係止部は前記支持部材に一体成形されており、かつこれら複数の揺動部材係止部の内の撓み強度が弱い方の揺動部材係止部は、支持部材の外周辺部分に設けられていることを特徴とする揺動式電子部品。
【請求項3】
請求項2に記載の揺動式電子部品の揺動部材の上部に、ケースと、前記ケースの上部に設置される回転つまみと、前記ケースの内部に設置され前記回転つまみと一体に回転する回転体と、前記回転体の回転によって電気的出力を変化する電気的機能部とを設置し、前記揺動部材の上面に露出させたフレキシブル回路基板の揺動部材取付部の面上に前記電気的機能部用のパターンを形成し、これによって前記揺動式電子部品の上部に回転式電子部品を設置したことを特徴とする多機能型電子部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−140691(P2010−140691A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−313960(P2008−313960)
【出願日】平成20年12月10日(2008.12.10)
【出願人】(000215833)帝国通信工業株式会社 (262)
【Fターム(参考)】