説明

揺動斜板型可変容量圧縮機の揺動板の回転阻止機構およびこれを構成する等速自在継手

【課題】揺動斜板型可変容量圧縮機内の希薄潤滑下での使用に耐え、加工性が良好で、材料歩留まりが高く、低コスト化が図れる揺動板の回り止め機構および等速自在継手を提供する。
【解決手段】揺動斜板型可変容量圧縮機39の揺動板43の回転阻止機構Mが等速自在継手70で構成され、等速自在継手は、内周面に偶数個の直線状トラック溝が形成された外側継手部材73と、外周面に偶数個の直線状トラック溝が形成された内側継手部材71と、外側継手部材と内側継手部材のトラック溝間のトルク伝達ボールとからなり、外側継手部材のトラック溝は2条ずつ左右対称に傾斜して設けられ、内側継手部材の溝は外側継手部材の溝とは反対方向に設けられており、外側継手部材が揺動板に取付けられ、内側継手部材が中心軸に取付けられると共に、等速自在継手の構成部材の少なくとも1つが金属焼結体からなり、表面に熱処理による硬化層が形成されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、揺動斜板型可変容量圧縮機の揺動板の回転阻止機構およびこれを構成する等速自在継手に関する。
【背景技術】
【0002】
揺動斜板型可変容量圧縮機は、ハウジングに回転自在に支持された駆動軸と、この駆動軸に連結されて回転すると共に、駆動軸に対して傾斜可能な斜板と、この斜板に軸受を介して連結され、回転が阻止された揺動板と、この揺動板に連結されて駆動軸の軸方向に往復運動するピストンと、揺動板を支持するために前記ハウジングに支持された中心軸とを主な構成部品としている。そして、揺動板の回転を阻止するために回転阻止機構が設けられている。
【0003】
上記の回転阻止機構として等速自在継手が用いられた構造が、例えば、特許文献1に記載されている。特許文献1に記載のものでは、回転阻止機構を構成する等速自在継手は、図13に示すように、球状内周面1に複数のトラック溝2が円周方向等間隔に軸方向に沿って形成された外側継手部材3と、球状外周面4に外側継手部材3のトラック溝2と対をなす複数のトラック溝5が円周方向等間隔に軸方向に沿って形成された内側継手部材6と、外側継手部材3のトラック溝2と内側継手部材6のトラック溝5との間に介在される複数のボール7と、外側継手部材3の球状内周面1と内側継手部材6の球状外周面4との間に介在してボール7を保持する保持器8とを備えている。この回転阻止機構では、等速自在継手が揺動板15の中央に配置され、外側継手部材3が揺動板15に取付けられ、内側継手部材6が中心軸11に取付けられる。
【0004】
具体的には、ハウジング10内に配置された中心軸11に内側継手部材6が取付けられている。また、外側継手部材3にラジアル軸受12を介して斜板13が嵌合され、斜板13にスラスト軸受14を介して揺動板15が支持されている。揺動板15はロッド16を介してピストン17と連結されている。
【0005】
駆動軸18の回転駆動によって、リンク機構19を介して斜板13が回転するが、中心軸11に取付けられた回転阻止機構としての等速自在継手によって、揺動板15が回転することなく揺動を行ういわゆる「みそすり運動」を行う。この「みそすり運動」によって、揺動板15にロッド16を介して連結されたピストン17が往復運動することになる。
【0006】
特許文献1に記載のものでは、回転阻止機構として、保持器8を備えた等速自在継手を用いるものであるが、保持器を備えない等速自在継手を用いたものも提案されている(特許文献2)。特許文献2の揺動斜板型可変容量圧縮機を図14に示す。回転阻止機構は、ボール21をガイドするガイド溝を有する内側継手部材22と、駆動軸23に対して相対回転および軸方向に移動可能なスリーブ24と、ボール21をガイドするガイド溝を有する外側継手部材25とを備えたものである。
【0007】
この場合、内側継手部材22は、ハウジング26内に回転は阻止されるが軸方向に移動可能に設けられている。また、スリーブ24は、揺動板28の揺動運動の揺動中心部材として機能し、内側継手部材22と共に軸方向に移動可能とされる。外側継手部材25は、スリーブ24に揺動可能に支持され、外周に揺動板28が取付けられている。外側継手部材25と斜板29との間には軸受30が組み込まれている。ハウジング26内に収容されるロータ20は駆動軸23に装着され、駆動軸23とともに回転する。ロータ20とハウジング26の壁部26aとの間にスラスト軸受35が組み込まれている。駆動軸23の回転運動によって、ロータ20およびリンク機構32を介して斜板29が回転するが、回転阻止機構としての等速自在継手によって、揺動板28は回転することなく揺動を行ういわゆる「みそすり運動」を行う。この「みそすり運動」によって、揺動板28にロッド33を介して連結されたピストン34が往復運動することになる。
【0008】
一方、等速自在継手の構成部品の材料面として、保持器に焼結金属を適用したものが、特許文献3に記載されているが、揺動斜板型可変容量圧縮機内の希薄潤滑下で使用される等速自在継手として、強度、耐久性や潤滑性の面で問題に着目したものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2006−200405号公報
【特許文献2】特開2008−138637号公報
【特許文献3】実開平3−105726号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところが、前述した特許文献1に記載のものでは、回転阻止機構を構成する等速自在継手は、保持器を備えたものであり、使用する部品点数や球面接触部が多くなっている。このため、多くの部品点数による累積ガタが大きくなって、振動や騒音が大きくなると共に、耐久性の面でも問題がある。
【0011】
特許文献2に記載のものでは、保持器は不要であるが、別途スリーブを必要とする。このため、外側継手部材とスリーブ間および内側継手部材とスリーブ間に球面接触部が存在し、球面接触の箇所、すなわち部品点数としては特許文献1に記載の保持器を有するものと同じである。このため、特許文献1に記載のものと同様、累積ガタが大きくなって、振動や騒音が大きくなると共に、耐久性の面でも問題がある。
【0012】
また、上記の揺動板の回転阻止機構を構成する等速自在継手は、揺動斜板型可変容量圧縮機内の希薄潤滑下で使用されるので、等速自在継手の各摺動部やボールとトラック溝間への潤滑剤の供給が少なく、潤滑性や耐久性等において過酷な状態となっている。
【0013】
さらに、上記の等速自在継手の各構成部品には、中実の金属材料(溶製材)が用いられている。そのため、鍛造加工等により素形材を得る工程、外径面や内径面などの旋削加工工程、焼入れ等の熱処理工程や高精度が要求される部位の研削加工工程などを経て最終製品に仕上げられる。このため、加工量が多く材料ロスも多く、製造コストの低減には限界がある。
【0014】
加えて、上記の等速自在継手は、摺動部の耐摩耗性や疲労性が耐久性を低下させる原因になっている場合が多い。揺動斜板型可変容量圧縮機内は、高温、高圧、高速回転、希薄潤滑という非常に過酷な条件下で、ボールが高周波数でトラック溝上を微小に接触移動するため、フレッティングや焼付き等の損傷防止策が必要となる。そして、特に、等速自在継手の設計自由度や適用自由度を向上させる観点から、ボールとトラック溝間の接触部の耐久性(摩耗、フレッティング、剥離等)や、潤滑性能が不可欠な問題であることが判明した。
【0015】
上記のような問題に鑑み、本発明は、揺動斜板型可変容量圧縮機内の希薄潤滑下での使用において、振動や騒音を抑制しかつ耐久性に優れると共に、加工性が良好で、材料歩留まりが高く、低コスト化を図ることができる揺動板の回転阻止機構およびこれを構成する等速自在継手を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者らは、上記の目的を達成するために種々検討した結果、揺動斜板型可変容量圧縮機の揺動板の回転阻止機構を構成する等速自在継手として、保持器のない部品点数の少ない構成とするという着想と、この構成部材に高密度の金属焼結体を活用し、その空孔を潤滑剤のオイルポットにするという着想を行い、これが相俟って本発明に至った。加えて、ボールとトラック溝の接触部の耐久性を確保するために、ボールを内外の継手部材と異質材とすることを着想した。
【0017】
前述の目的を達成するための技術的手段として、本発明は、ハウジングに回転自在に支持された駆動軸と、この駆動軸に連結されて回転すると共に、前記駆動軸に対して傾斜可能な斜板と、この斜板に軸受を介して連結され、回転が阻止された揺動板と、この揺動板に連結されて前記駆動軸の軸方向に往復運動するピストンと、前記揺動板を支持するために前記ハウジングに支持された中心軸とを備えた揺動斜板型可変容量圧縮機の揺動板の回転阻止機構において、前記揺動板の回転阻止機構が等速自在継手で構成され、この等速自在継手は、内周に偶数個の直線状トラック溝が形成された外側継手部材と、外周に偶数個の直線状トラック溝が形成された内側継手部材と、前記外側継手部材と内側継手部材の対となるトラック溝間に配された偶数個のトルク伝達ボールとからなり、前記外側継手部材の直線状トラック溝は2条ずつ左右対称に傾斜して設けられ、前記内側継手部材の直線状トラック溝は2条ずつ前記外側継手部材の対となるトラック溝とは反対方向に左右対称に傾斜して設けられており、継手が作動角0°の状態で、前記ボールの半数に相当する角数の仮想正多角柱の各側面を、継手の軸線に対して平行にかつ継手の軸線から等距離になるように配置したとき、前記外側継手部材と内側継手部材の対となる2条ずつの直線状トラック溝のボール軌道中心線が前記各側面上に配置され、前記外側継手部材の内周に形成された球状内周面と内側継手部材の外周に形成された球状外周面とが嵌合する等速自在継手であって、前記外側継手部材が前記揺動板に取付けられ、前記内側継手部材が前記中心軸に取付けられると共に、前記等速自在継手の構成部材の少なくとも1つが金属焼結体からなり、その表面に熱処理による硬化層が形成されていることを特徴とする。
【0018】
上記のように、等速自在継手を保持器のない部品点数の少ない構成とすると共に、その構成部材の形状に対応した圧粉体を形成し、これを焼結して金属焼結体を得た後、その表面に熱処理による硬化層を形成する。熱処理としては、ずぶ焼入れ、浸炭焼入れなど種々適用でき、また、材料や製品仕様により適宜選択することができる。これにより、所定の精度および機械的強度を有する構成部材が得られる。したがって、揺動斜板型可変容量圧縮機内の希薄潤滑下での使用に適し、揺動板の回り止め機構として必要とされる振動や騒音を抑制しかつ耐久性に優れた等速自在継手の構成部材を加工性よく量産することができる。複雑な形状の構成部材であっても材料の無駄なく製作することができ、ひいては、揺動斜板型可変容量圧縮機の静粛化、耐久性の向上および低コスト化を図ることができる。
【0019】
上記の等速自在継手のトラック溝およびトルク伝達ボールの個数を6個とし、上記仮想正多角柱の角数を3としたことにより、一層部品点数が少なく、製造を容易にすることができる。
【0020】
上記の等速自在継手の内側継手部材を金属焼結体とすることができる。これにより、トラック溝が傾斜かつ不等配置で、かつ組立用の切欠き部を有する複雑な外周形状をニアネットシェイプで成形することができる。したがって、切削等の後加工としての機械加工を削減することができ、コストを低減することができる。また、外側継手部材やトルク伝達ボールが溶製材であっても、球面嵌合部に潤滑剤が入り込むと共に、さらにボールとトラック溝との間にも潤滑剤が入り込むので、さらに良好な潤滑状態を得ることができる。
【0021】
等速自在継手の構成部材の少なくとも1つを形成する金属焼結体の空孔率が5%以上で20%以下であることを特徴とする。ここでいう空孔率は以下に示す計算式で示される。
空孔率=(1−金属焼結体の密度/真密度)×100[%]
上式における「真密度[g/cm3]」とは、溶製材からなる素材のように、素材内部に空孔が存在しないような材料の理論密度を意味し、下記の計算式から求めることができる。
(1)単一組成からなる材料の場合
真密度=100/(100/材料を構成する元素の密度)=材料を構成する元素の密度
(2)複数組成からなる材料の場合(ここでは組成A〜Cの3種類からなるものを例示)
真密度=100/[(元素Aの配合度/元素Aの密度)+(元素Bの配合度/元素Bの密度)+(元素Cの配合度/元素Cの密度)]
例えば、Fe/Crの化学成分が、それぞれ87.0/13.0[wt%]のステンレス材の真密度は、上記各元素の密度がそれぞれ7.87/7.15[g/cm3]であることから、
真密度=100/[(87.0/7.87)+(13.0/7.15)]≒7.78
となる。
空孔率が5%以上で20%以下という高密度の金属焼結体からなるものであるため、等速自在継手の構成部材に必要とされる機械的強度を確保すると共に揺動斜板型可変容量圧縮機内の希薄潤滑下での使用に耐えうる潤滑性を確保することができる。金属焼結体の空孔率が5%未満と小さすぎると、潤滑剤のオイルポットとしての機能を果たさず、転動強度や摺動性の面で劣る場合がある。一方、金属焼結体の空孔率が20%を超えて大きすぎると、硬度低下の一因となる。したがって、構成部材としての機能を両立させるためには金属焼結体の空孔率が5%以上で20%以下が望ましい。
【0022】
金属焼結体は、鉄系合金の金属粉末を主成分とし、これに少なくともクロムおよびモリブデンを含む合金化粉からなることを特徴とする。具体的には、例えば、クロムの含有量が1.0〜2.0mass%、モリブデンの含有量が0.05〜0.5mass%であり、残部を鉄系合金および不可避的不純物とした合金化粉の圧粉体を焼結することで成形する。これにより、より高強度な金属焼結体が得られ、強度、耐久性が向上する。クロムの含有量は、好ましくは1.0〜2.0mass%、さらに好ましくは1.2〜1.8mass%であり、モリブデンの含有量は、好ましくは0.05〜0.5mass%、さらに好ましくは0.1〜0.3mass%である。クロムおよびモリブデンの添加は、焼入れ性を向上させ、硬度が低くなりやすい金属焼結体の欠点を補うことができる。
【0023】
圧粉体の成形に用いる原料粉末としては、原料粉末同士や粉末と成形金型間の摩擦力を低減させるための潤滑剤を含むものを使用することが望ましく、特に粉末体成形時の加圧力を受けることによって液相化し、原料粉末間に拡散・浸透していくような固体潤滑剤を含むものが望ましい。すなわち、金属焼結体は、固体潤滑剤を混合した原料粉末の圧粉体を加熱することで成形されたものとすることができる。これにより、圧粉体を成形金型からスムーズに離型することができるので、金属焼結体の高精度化を達成することができる。
【0024】
金属焼結体の表面硬度はHV513〜750であることが望ましい。金属焼結体の表面硬度がHV513より低いと、磨耗しやすく摩耗粉が転動部や摺動部に入り込んで更なる摩耗を引き起こす原因となったり、摩耗粉が金属焼結体の空孔に詰まり、オイルポット効果を減少させる原因となる。また、転動疲労による耐久性低下の一因にもなる。
【0025】
金属焼結体に潤滑剤を初期含浸することにより、揺動斜板型可変容量圧縮機内の希薄潤滑下にもかかわらず、運転開始時より良好な潤滑状態を得ることができる。初期含浸する潤滑剤は、具体的には、ポリアルキルグリコール(PAG)が好ましい。PAGは、カーエアコン用コンプレッサで一般的に使用される冷媒と相溶性があり、冷媒と共存する潤滑剤として好ましい。
【0026】
外側継手部材と内側継手部材の両トラック溝とボールとの間のトラック隙間を前記球状外周面と球状内周面との間の球面隙間よりも小さくし、継手に負荷されるラジアル荷重をトラック溝とボールとの間で受けるように設定することができる。これにより、低摩擦な構造で、耐久性に優れる。さらにトラック溝の隙間を負に設定し、予圧を付与してもよい。これにより、高速回転時のアンバランス(振れ回り)を抑制することができる。
【0027】
外側継手部材と内側継手部材の両トラック溝とボールとの間のトラック隙間を前記球状外周面と球状内周面との間の球面隙間よりも大きくし、継手に負荷されるラジアル荷重を球状外周面と球状内周面との間で受けるように設定することができる。球面滑り構造によりラジアル荷重を受けることができ、「みそすり運動」を安定させることができる。
【0028】
上記のボールを内側外側の両継手部材とは異質材であるセラミックスで形成することにより、ボールとトラック溝の接触部における耐久性を確保することができる。具体的には、セラミックス製ボールは、鋼材に比べて熱膨張係数が小さく、高温での内部隙間の変化が小さく、ボールの接触部の変形も小さい。また、内側外側の両継手部材とは異質材となるので、転動接触部での凝着が生じにくくなる。したがって、揺動斜板型圧縮機の駆動軸が高速回転(概ね最大10,000rpm)し、かつ希薄潤滑下でのボール接触部の転動耐久性を向上させることができる。
【0029】
上記のセラミックスの材質としては、第一に窒化ケイ素(Si3N4)が望ましいが、異種材適用の効果の観点から、炭化ケイ素(SiC)、ジルコニア(Al2O3)、アルミナ(ZrO2)を適用してもよい。
【0030】
本発明の揺動板の回転阻止機構を構成する等速自在継手では、回転駆動時には、ボールの総個数の内、1つ飛びのボールでトルク負荷を受ける。例えば、ボール個数が6個の場合は3個のボールでトルク負荷を受ける(トルク方向が逆の場合はそれ以外の3個のボールが負荷を受ける)。圧縮機は機能上トルク方向が変動しない(減速時を除く)ため、セラミックス製ボールを回転方向トルクが負荷されるトラック溝間にのみに組込み、他のトラック溝間に組込むボールは鋼球としてもよい。
【0031】
ボールとトラック溝との接触形態としては、アンギュラコンタクト(2点接触)であっても、サーキュラコンタクト(1点接触)であってもよい。アンギュラコンタクトにすることにより、接触点が一定となり、トラック溝底部にすきまが形成され、優れた潤滑性を発揮することができる。
【0032】
一方、サーキュラコンタクトの場合は、アンギュラコンタクトよりもボールとトラック溝の接触面積を大きく設定することができるため、接触率の設定により、接触面圧を緩和することができる。ここで、接触率とは、ボールの半径に対するトラック溝の曲率半径の比を意味する。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、揺動斜板型可変容量圧縮機の揺動板の回転阻止機構を、球面接触部が少なく部品点数の少ない等速自在継手により構成したので、振動や騒音を抑制しかつ耐久性に優れたものとすることができる。また、揺動板の回転阻止機構としての等速自在継手の構成部材を加工性よく量産することができる。複雑な形状の構成部材であっても材料の無駄なく製作することができ、ひいては、揺動斜板型可変容量圧縮機の静粛化、耐久性の向上および低コスト化を図ることができる。
【0034】
また、空孔率が5%以上で20%以下という高密度の金属焼結体からなるものであるため、等速自在継手の構成部材に必要とされる機械的強度を確保すると共に揺動斜板型可変容量圧縮機内の希薄潤滑下での使用に耐えうる潤滑性能を確保することができる。
【0035】
さらに、ボールを内側外側の両継手部材とは異質材であるセラミックスで形成することにより、ボールとトラック溝の接触部における耐久性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る揺動斜板型可変容量圧縮機の揺動板の回転阻止機構と揺動斜板型可変容量圧縮機の全体構造を示す縦断面図である。
【図2】第1の実施形態の回転阻止機構を構成する等速自在継手を示す図である。
【図3】等速自在継手の外側継手部材を示す図である。
【図4】等速自在継手の内側継手部材を示す図である。
【図5】等速自在継手の内側継手部材の斜視図である。
【図6】等速自在継手の部分的な横断面図である。
【図7】等速自在継手の部分的な横断面図である。
【図8】ラジアル荷重の支持構造を示す部分的な横断面図である。
【図9】外側継手部材への内側継手部材の組込み方法を示す図である。
【図10】金属焼結体の製造工程を示す図である。
【図11】本発明の第2の実施形態の回転阻止機構を構成する等速自在継手を示す図である。
【図12】本発明の第3の実施形態の回転阻止機構を構成する等速自在継手を示す図である。
【図13】従来技術の揺動斜板型可変容量圧縮機の揺動板の回転阻止機構を示す縦断面図である。
【図14】従来技術の揺動斜板型可変容量圧縮機の揺動板の回転阻止機構を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0038】
本発明の第1の実施形態である揺動斜板型可変容量圧縮機の揺動板の回転阻止機構を図1〜図10に基づいて説明する。図1は揺動斜板型可変容量圧縮機の全体構造を示す縦断面図である。揺動斜板型可変容量圧縮機39は、フロントハウジング40aとミドルハウジングとしてのシリンダブロック40bとその後方の2点鎖線で示すリアハウジング40cが図示しない締結手段によって一体化されて圧縮機39のハウジング40を形成している。シリンダブロック40bには、複数個(例えば5個)のシリンダボア55が、中心線Lの周りに概ね均等に配置されるように形成されている。図示は省略するが、リアハウジング40cの内部には概ね環状の空間としての吐出室が形成されていると共に、中心部分には空間として吸入室が形成されている。
【0039】
駆動軸41は、外部の動力源(例えばエンジン)から回転動力を受け入れるものであって、この駆動軸41と直交するようにロータ60が一体的に取り付けられている。ロータ60は駆動軸41と一体部品の場合もある。ロータ60の外周寄りの一部からアーム部97が後方に向かって突出するように形成されている。アーム部97には、カムとして作動する長孔97aが設けられている。駆動軸41はラジアル転がり軸受101、102を介して、ハウジングの一部であるフロントハウジング40aに回転自在に支持されていると共に、駆動軸41に一体的に取り付けられたロータ60の背面をスラスト転がり軸受61を介して、スラスト方向にも回転自在に支持されている。ラジアル転がり軸受101および102の間にはシール装置103が設けられて、駆動軸41の周囲から流体が外部に漏洩することを防止している。
【0040】
斜板42は、概ね円環状であって、その一部から前方へ突出するアーム部96を備えている。アーム部96には、ピン98が設けられていて、駆動軸41に取り付けられたロータ60のアーム部97に設けられた長孔97aに挿入されて係合している。これらの部分によってリンク機構95が構成されて、斜板42が駆動軸41と共に回転することができ、かつ駆動軸41やロータ60に対して角度変位でき傾斜可能となっている。斜板42には、後述する手段により回転を阻止されて揺動のみをする概ね円環状の揺動板43が、ラジアル転がり軸受93とスラスト転がり軸受94を介して支持されている。
【0041】
揺動板43の内周孔92には、等速自在継手70の外側継手部材73が圧入嵌合され、止め輪90によって位置決め固定されている。揺動板43の小径部分91aにラジアル転がり軸受93の内輪が組み込まれて、止め輪によって位置決め固定されている。ラジアル転がり軸受93の外輪は斜板42の内周孔に組み込まれて、その肩部で位置決め固定されている。
【0042】
斜板42と揺動板43を支持する中心軸57は、駆動軸41の軸線Lと一致した状態で、回転しないようにシリンダブロック40bによって支持されている。具体的には、中心軸57の大径部に雄スプライン65が形成され、シリンダブロック40bの中心部の雌スプライン66に係合している。この結果、中心軸57はシリンダブロック40bに対して回転は阻止されるが、軸方向には移動可能に、シリンダブロック40bに支持される。中心軸57の軸端に形成された雄スプライン81に等速自在継手70の内側継手部材71の雌スプライン76が嵌合され、止め輪82によって軸方向に位置決め固定されている。詳細は後述するが、等速自在継手70は、外側継手部材73、内側継手部材71およびトルク伝達ボール72とからなる(図2参照)。
【0043】
本実施形態の回転阻止機構の概要として、等速自在継手70の外側継手部材73が揺動板43に取り付け固定され、一方、内側継手部材71が中心軸57に取り付け固定されて、揺動板43の回転を阻止するための回転阻止機構Mが構成される。この回転阻止機構Mにより、揺動板43が斜板42と共に揺動運動するものの、斜板42の回転運動とは無関係に回転しないように停止していることが可能となる。回転阻止機構Mを構成する等速自在継手70の外側継手部材73、内側継手部材71が金属焼結体で形成されている。本実施形態の回転阻止機構Mの詳細は後述する。
【0044】
揺動板43の周辺部には、シリンダボア55と同数の球状の窪み部43aが設けられており、これに対応して同数のコネクティングロッド100の一端に形成された球状端部100aが嵌合している。また、シリンダボア55内に摺動可能に挿入されたピストン44にも球状の窪み部44aが設けられていて、コネクティングロッド100の他端に形成された球状端部100bが嵌合している。
【0045】
リアハウジング40cの内部については図示を省略するが、概要は次のとおりである。前述したように、リアハウジング40cの内部には概ね環状の空間としての吐出室が形成されていると共に、中心部分には空間として吸入室が形成されている。そして、シリンダブロック40bとリアハウジング40cとの間には、バルブプレートが介在され、各シリンダボア55に対応する位置においてバルブシートに吐出口と吸入口が開口している。各吸入口には吸入バルブが配置されシリンダボアの側から閉鎖されており、一方、各吐出口には吐出バルブが配置され吐出室の側から閉鎖されている。また、リアハウジング40cの後端部に制御弁が取り付けられており、制御装置によって制御されて流体圧が作り出される。これを制御圧として斜板42や揺動板43が配置されたフロンハウジング40aの内部の制御圧室に導入されて、揺動板43の傾斜角が制御されている。
【0046】
上記の構成からなる揺動斜板型可変容量圧縮機39の作動について説明する。駆動軸41が外部の動力源によって回転駆動されると、駆動軸41のロータ60に対してアーム部97、長孔97a、ピン98、アーム部96を介して連結されている斜板42が駆動軸41と共に回転する。しかし、揺動板43は、斜板42に対してラジアル転がり軸受93およびスラスト転がり軸受94を介して連結されているのと、中心部が回転阻止機構Mを構成する等速自在継手70を介して回転しない中心軸57によって支持されているので回転することはなく、揺動板43は、その傾斜角度に応じた大きさの振幅で揺動運動のみを行う。それによって、揺動板43にコネクティングロッド100を介して連結されている複数個のピストン44が、シリンダボア55内で往復運動する。その結果、複数個のピストン44の頂面に形成される作動室104の中で、吸入工程にあるものは拡大して低圧となるので、リアハウジング40c内の吸入室(図示省略)内にある冷媒が作動室104内に流入する。これとは反対に、圧送工程にあるピストン44の頂面に形成される作動室104は縮小されるため、その内部にある冷媒は圧縮されて高圧となり吐出室(図示省略)に吐出される。駆動軸41の1回転当たりの圧縮機39の吐出量は、斜板42および揺動板43の傾斜角度によって決まるピストン44のストロークの長さに概ね比例している。上記のような圧縮機39の作動状態において、転がり軸受、等速自在継手や各構成部材の摺動部分は、圧縮機39内の微量な潤滑剤による過酷な潤滑条件下にある。このような潤滑条件下にあるが、本実施形態の回転阻止機構Mを構成する等速自在継手70は、その構成部材の少なくとも1つが金属焼結体からなるので、潤滑性能を確保することができる。金属焼結体の詳細については後述する。
【0047】
本発明の第1の実施形態である揺動板の回転阻止機構を構成する等速自在継手の詳細を図2〜図10に基づいて説明する。図2に示す等速自在継手70は、図1に示した等速自在継手70を拡大したものである、図2(a)は、図2(b)の等速自在継手70のR−R線における縦断面図であり、図2(b)は正面図である。この等速自在継手70は固定式等速自在継手で、所謂デルタ型等速自在継手と称されるものである。等速自在継手70は、外側継手部材73、内側継手部材71およびトルク伝達ボール72からなる。外側継手部材73の球状内周面86には6本のトラック溝85が形成されている。内側継手部材71の球状外周面80には、外側継手部材73のトラック溝85と対向するトラック溝77が形成されている。内側継手部材71のトラック溝77と外側継手部材73のトラック溝85との間にトルクを伝達する6個のボール72が介在されている。この等速自在継手70ではトルク伝達ボール72を保持する保持器は存在しないので、部品点数が少なく、かつ球面接触部分が少なくてシンプルな構造である。そのため、振動や騒音を抑制しかつ耐久性に優れたものとすることができる。外側継手部材73は円環状に形成されその外周面は円筒状であり、図1に示すように揺動板43の内周孔92に圧入嵌合される。また、内側継手部材71の雌スプライン76は、図1に示すように中心軸57の雄スプライン81に嵌合される。内側継手部材71の右側端部には雌スプライン76に続いてテーパ状面取り部75が設けられている。
【0048】
図2(a)に示すように、外側継手部材73の球状内周面86と内側継手部材71の球状外周面80とが球面嵌合されている。球状内周面86と球状外周面80の曲率中心は、いずれも、継手の中心Oに形成されている。図2(b)に示すように、外側継手部材73の球状内周面86には6本のトラック溝85が形成され、内側継手部材71の球状外周面80には、外側継手部材73のトラック溝85と対向するトラック溝77が形成されている。内側継手部材71および外側継手部材73のトラック溝77、85は直線状に形成されている。外側継手部材73に形成された直線状トラック溝85a、85bは、2条ずつ左右対称に傾斜して設けられており、内側継手部材71に形成された直線状トラック溝77a、77bは、外側継手部材73の対となる直線状トラック溝85a、85bとは反対方向に2条ずつ左右対称に傾斜して設けられている。その結果、内側継手部材71と外側継手部材73の対となるトラック溝77a、85aおよびトラック溝77b、85bは、それぞれ交差し、この交差部分にボール72が配置されている。
【0049】
上記の構成により、継手が作動角をとった場合、外側継手部材73と内側継手部材71の両軸線がなす角度を二等分する平面上にボール72が常に案内され、二軸間で等速に回転トルクが伝達されることになる。このような等速自在継手70の機能を利用して揺動板43の回転阻止機構M(図1参照)を構成したので、揺動板43の傾斜角度に応じて、ボール72が内側継手部材71と外側継手部材73のトラック溝77、85に係合しながら往復移動して揺動板43の回転阻止をスムーズに行える。また、揺動板43の揺動運動が、等速自在継手70の継手中心Oとし、内側継手部材71および外側継手部材73のトラック溝77、85とボール72との間や球面接触部80、86で行われるので、振動のない安定した揺動運動が実現する。
【0050】
トラック溝の形態をさらに詳述する。図2(b)に示すように、継手が作動角0°の状態で、二点差線で示す仮想正三角柱の3つの側面S1、S2、S3を継手の軸線K−Kに対して平行にかつ継手の軸線K−Kから等距離になるように配置したとき、各側面S1、S2、S3上に外側継手部材73の2条ずつのトラック溝85a、85bのボール軌道中心線L2a、L2b(図3参照)が位置し、その状態で、両トラック溝85a、85bのボール軌道中心線L2aとL2bが左右対称に傾斜している。換言すれば、2条ずつのトラック溝85a、85bのボール軌道中心線L2a、L2bが互いに反対方向に傾斜して設けられている。内側継手部材71の2条ずつの直線状トラック溝77a、77bのボール軌道中心線L1a、L1b(図4参照)も、各側面S1、S2、S3上に位置し、その状態で、両トラック溝77a、77bのボール軌道中心線L1a、L1bが左右対称に傾斜している。そして、外側継手部材73の2条ずつのトラック溝85a、85bのボール軌道中心線L2a、L2bと内側継手部材71の2条ずつのトラック溝77a、77bのボール軌道中心線L1a、L1bの傾斜方向は反対方向となっており、対となる外側継手部材73のトラック溝85aと内側継手部材71のトラック溝77aとが交差し、また、対となる外側継手部材73のトラック溝85bと内側継手部材71のトラック溝77bとが交差して形成されている(図4参照)。各交差部分に1個ずつボール72が配置されている。ここで、上記のボール軌道中心線とは、トラック溝に配置されたボールがトラック溝に沿って移動するときのボールの中心が描く軌跡を意味する。したがって、トラック溝の傾斜状態は、ボール軌道中心線の傾斜状態と同じである。
【0051】
図3に外側継手部材73を示す。図3(a)は外側継手部材73の正面図であり、図3(b)は外側継手部材73のN−N断面で矢視した図であり、図3(c)は外側継手部材73の縦断面図である。図3(b)に示すように、外側継手部材73の内周には球状内周面86が形成され、直線状トラック溝85a、85bが2条ずつ左右対称に傾斜して設けられている。トラック溝85aのボール軌道中心線L2aとトラック溝85bのボール軌道中心線L2bは、それぞれ、継手の軸線K−Kに対して傾斜角βだけ傾斜し、その傾斜方向は互いに反対方向に形成されている。この傾斜状態を、本明細書では左右対称に傾斜すると表現する。
【0052】
図3(a)に示すように、継手が作動角0°の状態で、二点差線で示す仮想正三角柱の3つの側面S1、S2、S3を継手の軸線K−Kに対して平行にかつ継手の軸線K−Kから等距離になるように配置したとき、各側面S1、S2、S3上に外側継手部材73の2条ずつのトラック溝85a、85bのボール軌道中心線L2a、L2bが位置する。各側面S1、S2、S3上に位置するボール軌道中心線L2a、L2bの間隔は、図3(c)の右側端部に向けて拡がり、左側端部に向けて狭まっている。そのため左側端部付近ではトラック溝85a、85bが合流するように形成されている。
【0053】
次に内側継手部材を図4に示す。図4(a)は内側継手部材71の正面図であり、図4(b)は、図4(a)のP−P線で矢視した内側継手部材71の外周面を示した図であり、図4(c)は、図4(a)のQ−Q線で矢視した内側継手部材71の外周面を示した図である。図4(b)に示すように、内側継手部材71の外周には球状外周面80が形成され、直線状トラック溝77a、77bが2条ずつ左右対称に傾斜して設けられている。トラック溝77aのボール軌道中心線L1aとトラック溝77bのボール軌道中心線L1bは、それぞれ、継手の軸線K−Kに対して傾斜角βだけ傾斜し、その傾斜方向は互いに反対方向に形成されている。また、内側継手部材71のトラック溝77a、77bのボール軌道中心線L1a、L1bは、対となる外側継手部材73のトラック溝85a、85bボール軌道中心線L2a、L2bとは、それぞれ反対方向に傾斜している。この結果、内側継手部材71および外側継手部材73のトラック溝77a、85aおよびトラック溝77b、85bが継手中心Oで交差し、この交差部分にボール72(図示省略)が配置される。
【0054】
前述した外側継手部材73と同様、図4(a)に示すように、継手が作動角0°の状態で、二点差線で示す仮想正三角柱の3つの側面S1、S2、S3を継手の軸線K−Kに対して平行にかつ継手の軸線K−Kから等距離になるように配置したとき、各側面S1、S2、S3上に内側継手部材71の2条ずつのトラック溝77a、77bのボール軌道中心線L1a、L1bが位置する。各側面S1、S2、S3上に位置するボール軌道中心線L1a、L1bの間隔は、前述した外側継手部材73とは反対に、図4(c)の右側端部に向けて狭まり、左側端部に向けて拡がっている。そのため右側端部付近ではトラック溝77a、77bが合流するように形成されている。球状外周面80は、円周方向の3箇所に組込み用の切欠き部71aが設けられている。外側継手部材73への内側継手部材71の組込み方法については、後述する。
【0055】
図5に内側継手部材71の斜視図を示す。この図により、内側継手部材71の外周に形成された直線状トラック溝77a、77bの傾斜状態や外周に形成された球状外周面80および切欠き部71a、さらにはテーパ状面取り部75と雌スプライン76の形成状態が分かりやすく理解される。
【0056】
次に、ボール72とトラック溝77、85との接触形態を図6及び図7に基づいて説明する。図6および図7は、いずれも継手中心0(図2(a)参照)における部分的な横断面図である。ただし、図6および図7では、トラック溝77、85が継手の軸線K−Kに対して傾斜しているので、その断面形状を正しく示すため、トラック溝77、85については、そのボール軌道中心線L1、L2のそれぞれの軸線方向から見た横断面として複合させた図としている。図6はアンギュラコンタクトの場合を示し、図7はサーキュラコンタクトの場合を示す。図6に示すように、アンギュラコンタクトにおいては、内側継手部材71のトラック溝77および外側継手部材73のトラック溝85の横断面形状は、ゴシックアーチ状、或いは楕円形状(図示省略)である。本実施形態ではゴシックアーチ状のものを示す。内側継手部材71のトラック溝77とボール72とは2点C11、C12で接触し、外側継手部材73のトラック溝85とボール72とは2点C21、C22で接触する。ボール72の中心OBと各トラック溝77、85の接触点であるC11、C12、C21、C22とを結ぶ直線とボール72の中心OBを通りR−R線と平行な直線とのなす角度が接触角αである。アンギュラコンタクトとすることにより、ボール72とトラック溝77、85とは接触角αをもって接触し、接触点が一定となるので、安定した接触状態となる。また、トラック溝底部に隙間Sが生じ、この隙間に潤滑剤が介在されて優れた潤滑性を発揮する。
【0057】
図7に示すサーキュラコンタクトにおいては、ボール72の半径よりトラック溝77、85の曲率半径が適宜大きく形成されており、ボール72は、内側継手部材71のトラック溝77とは1点C3で接触し、外側継手部材73のトラック溝85とは1点C4で接触する。点C3、C4は、ボール72の中心OBを通りR−R線と平行な直線上に位置する。サーキュラコンタクトにおいては、アンギュラコンタクトの場合よりもボール72とトラック溝77、85との接触面積を大きく設定することができるため、接触率の設定により、アンギュラコンタクトよりも接触面圧を緩和することができる。圧縮機の潤滑条件や運転条件により接触形態をアンギュラコンタクトにするか或いはサーキュラコンタクトにするか適切に選択することができる。
【0058】
さらに、ラジアル荷重の支持構造を図8に基づいて説明する。図8は、図6および図7と同様、継手中心0における部分的な横断面図であるが、トラック溝77、85については、そのボール軌道中心線L1、L2のそれぞれの軸線方向から見た横断面として複合させた図としている。まず、ここで、トラック隙間と球面隙間を図8に基づいて定義する。アンギュラコンタクト、サーキュラコンタクトのいずれの場合でも、内側継手部材71と外側継手部材73の軸線を一致させた状態において、トラック隙間とは、ボール72を内側継手部材71のトラック溝77に接触させた位置と、外側継手部材73のトラック溝85に接触させた位置との継手半径方向におけるボール中心間距離Pと定義し、球面隙間とは、内側継手部材71の球状外周面80と外側継手部材73の球状内周面86との間の継手半径方向における隙間Qと定義する。圧縮機39が運転中に揺動板43(図1参照)から等速自在継手70に負荷されるラジアル荷重の支持構造の形態の一つとして、ボール72とトラック溝77、85との間で支持することができる。この場合には、トラック隙間Pを球面隙間Qよりも小さくする設定する。これにより、低摩擦で耐久性に優れたラジアル荷重の支持構造を構成することができる。さらに、上記のトラック隙間を負に設定し予圧を付与してもよい。これにより、高速回転時のアンバランス(振れ回り)を抑制することができる。
【0059】
ラジアル荷重の支持構造の別の形態として、等速自在継手70に負荷されるラジアル荷重を、内側継手部材71の球状外周面80と外側継手部材73の球状内周面86との球面間で支持することができる。この場合は、トラック隙間Pを球面隙間Qよりも大きく設定する。これにより、球面滑り構造によりラジアル荷重を受けることができ、「みそすり運動」を安定させることができる。
【0060】
次に、図9に基づいて、外側継手部材73への内側継手部材71の組込み方法を説明する。内側継手部材71の球状外周面80には円周方向の3箇所に組込み用の切欠き部71aが設けられている。図示のように、まず、外側継手部材73の軸線と内側継手部材71の軸線とが直交する状態とする。次に、外側継手部材73に対して内側継手部材71を矢印方向に沿って移動させて外側継手部材73の球状内周面86に内側継手部材71の球状外周面80が当接するまで挿入する。その後、内側継手部材71を90度回転させて、外側継手部材73の軸線に内側継手部材71の軸線を一致させることにより、外側継手部材73への内側継手部材71の組込みが完了する。なお、ボール72は、外側継手部材73に内側継手部材71を組込んだ後、両継手部材71、73の間に大きな作動角をつけて、トラック溝77、85の開いた空間からボールを挿入する。これにより、等速自在継手70が組立てられる。
【0061】
次に、本実施形態の回転阻止機構Mを構成する等速自在継手70に適用される金属焼結体について、図3、4および図10に基づいて詳述する。本実施形態では、等速自在継手70の外側継手部材73および内側継手部材71が金属焼結体で形成されている。図3および図4では、外側継手部材73の圧粉体を73’、金属焼結体を73”として示し、内側継手部材71の圧粉体を71’、金属焼結体を71”として示す。圧粉体73’、71’および金属焼結体73”、71”は、最終製品としての外側継手部材73、内側継手部材71とは若干細部形状が異なる部分があるが、この点については省略して単純化して説明する。外側継手部材73および内側継手部材71は、金属粉末を主成分とする原料粉末の圧粉体を焼結することによって形成された金属焼結体73”、71”からなり、その表面には、熱処理による硬化層(図示省略)が形成されている。このような構成を有する外側継手部材73および内側継手部材71は、主に、図10に示すような原料粉末準備工程S1、圧粉工程S2、脱脂工程S3、焼結工程S4、熱処理工程S5、仕上げ工程S6および潤滑剤含浸工程S7を経て製造される。
【0062】
原料粉末準備工程S1では、金属焼結体からなる外側継手部材73および内側継手部材71の成形用材料としての原料粉末が準備・生成される。原料粉末は、例えば、鉄(Fe)を主成分とし、これに少なくとも1.0〜2.0mass%のクロム(Cr)および0.05〜0.5mass%のモリブデン(Mo)を含み、残部を鉄系合金および不可避的不純物とした合金化粉とされる。これにより、より高強度な金属焼結体が得られ、強度、耐久性が向上する。クロムの含有量は、好ましくは1.0〜2.0mass%、さらに好ましくは1.2〜1.8mass%であり、モリブデンの含有量は、好ましくは0.05〜0.5mass%、さらに好ましくは0.1〜0.3mass%である。クロムおよびモリブデンの添加は、焼入れ性を向上させ、硬度が低くなりやすい金属焼結体の欠点を補うことができる。
【0063】
この原料粉末には、必要に応じて、添加剤として、銅、二硫化モリブデン、黒鉛等の固体潤滑剤や、成形を容易にするためにステアリン酸亜鉛や非金属系潤滑剤であるエチレンビスステアルアミド等の潤滑剤を混合しても良い。
【0064】
圧粉工程S2では、上記の原料粉末を圧粉することにより、外側継手部材73および内側継手部材71の形状をなした圧粉体73’、71’を形成する。圧粉体73’、71’は、焼結温度以上で加熱することにより形成される金属焼結体73”、71”の空孔率が5%以上で20%以下となるように高密度に圧縮成形される。本実施形態で用いられる原料粉末は鉄を主成分とするものであり、鉄の密度は7.87g/cm3であるので、上記の圧粉体73’、71’は、金属焼結体73”、71”となったときの密度が7.0〜7.5g/cm3の範囲内になるように圧縮成形することが望ましい。
【0065】
具体的には、例えばサーボモータを駆動源としたCNCプレス機に圧粉体形状に倣ったキャビティを画成してなる成形金型をセットし、キャビティ内に充填した上記の原料粉末を600〜1500MPaの加圧力で加圧することにより圧粉体73’、71’を成形する。圧粉体73’、71’の成形時において、成形金型は70℃以上に加温してもよい。
【0066】
金属焼結体73”、71”の空孔率を上記の範囲内となるような圧粉体73’、71’を得るべく、原料粉末を高密度に圧縮すると、圧粉体73’、71’の表面がキャビティの内壁面に密着してしまい、圧粉体73’、71’をスムーズに成形金型から離型することができない恐れがある。この点、本実施形態では、原料粉末に固体潤滑剤を混合したことから、圧粉体73’、71’の成形時には、上記の高い加圧力により固体潤滑剤を液相化し、この液相化された固体潤滑剤を原料粉末相互間に拡散・浸透させることができる。したがって、脆性品である圧粉体73’、71’をスムーズに離型することができ、離型に伴う圧粉体73’、71’の形状の崩れを回避することができる。
【0067】
脱脂工程S3では、圧粉体73’、71’に含まれる潤滑剤等が除去される。脱脂は、一般的な焼結金属製品を製作する場合と同様の条件で行うことができる。
【0068】
焼結工程S4では、脱脂された圧粉体73’、71’を焼結温度以上で加熱し、隣接する原料粉末同士を焼結結合させることによって金属焼結体73”、71”を形成する。原料粉末は鉄を主成分とするものであることから、酸化を可及的に防止するために、例えば窒素ガスおよび水素ガスの混合ガス雰囲気下に圧粉体73’、71’を配置し、これを1150〜1300℃(例えば1250℃)で60分間以上加熱することにより金属焼結体73”、71”を形成する。なお、圧粉体73’、71’の焼結は、上記のような不活性ガス雰囲気下のみならず、真空下で行うようにしてもよい。
【0069】
焼結工程S4を経た金属焼結体73”、71”のトラック溝85、77や球状面86、80に転造加工やバニシング加工などの塑性加工を施すことにより、より高密度に成形することができる。この場合には、上記の加工を施した金属焼結体73”、71”の表層部の空孔率は小さくなるが、この表層部を含めた金属焼結体73”、71”の全体の空孔率を5%以上で20%以下にする。上記の塑性加工は、必要に応じて実施すればよく、必ずしも実施する必要はない。
【0070】
熱処理工程S5は、金属焼結体73”、71”に焼入れ処理等の熱処理を施すことにより、その表面に硬化層(図示省略)を形成する工程である。これにより、金属焼結体73”、71”の摺動面やトラック溝などの表面にHV513〜750の高い表面硬度を付与する。これにより、摩耗粉が転動部や摺動部に入り込んで更なる摩耗を引き起こす原因となったり、摩耗粉が金属焼結体73”、71”の空孔に詰まり、オイルポット効果を減少させる等の問題を防止でき、球面接触部やボールとトラック溝間の転動疲労に対する耐久性を確保することができる。強度および硬度を確保するための焼入方法としては、ずぶ焼入れや浸炭焼入れを採用することができ、また、材料や製品仕様により適宜選択することができる。しかし、炭素量が少ない材料の場合は浸炭焼入れが望ましい。
【0071】
仕上げ工程S6は、金属焼結体73”、71”の所定部位に対して、研削加工等の仕上げ処理を施すことにより、金属焼結体73”、71”の必要な部位を一層高精度化する工程である。この仕上げ工程S6は、必要に応じて実施すればよく、必ずしも実施する必要はない。
【0072】
潤滑剤含浸工程S7は、金属焼結体73”、71”に潤滑剤を初期含浸する工程である。これにより、揺動斜板型可変容量圧縮機内の希薄潤滑下にもかかわらず、運転開始時より良好な潤滑状態を得ることができる。初期含浸する潤滑剤は、具体的には、ポリアルキルグリコール(PAG)が好ましい。PAGは、カーエアコン用コンプレッサで一般的に使用される冷媒と相溶性があり、冷媒と共存する潤滑剤として好ましい。また、この潤滑剤含浸工程S7も、必要に応じて実施すればよく、必ずしも実施する必要はない。
【0073】
次に、第2の実施形態を図11に基づいて説明する。図11は本実施形態の回転阻止機構における等速自在継手の縦断面図である。前述した第1の実施形態と同様の機能を有する箇所には同一の符号を付して重複説明は省略する。
【0074】
第2の実施形態の回り止め機構では、等速自在継手70の内側継手部材71のみが金属焼結体で形成されている。外側継手部材73およびボール72は、通常用いられる溶製材で形成されている。金属焼結体からなる内側継手部材71は、その球状外周面80が外側継手部材73の球状内周面86と球面接触するので、外側継手部材73が溶製材であっても、各球面嵌合部に潤滑剤が入り込むので、良好な潤滑状態を得ることができる。本実施形態の等速自在継手の構造、ボールとトラック溝との接触形態、ラジアル荷重の支持形態や金属焼結体の組成、性状や製造の工程などは、第1実施形態において前述した内容と同様であるので、説明を省略する。
【0075】
本発明の第3の実施形態の回り止め機構を図12に基づいて説明する。本実施形態は、第2の実施形態と比べて、回転阻止機構を構成する等速自在継手のボール72をセラミックスで形成した点が異なる。図12(a)は等速自在継手の縦断面図であり、図12(b)は正面図である。前述した第1の実施形態および第2の実施形態と同様の機能を有する箇所には同一の符号を付して重複説明は省略する。
【0076】
本実施形態では、ボール72をセラミックスで形成し、内側継手部材71(焼結金属体製)および外側継手部材73(例えばS53C材)とは異質材とすることにより、ボール72とトラック溝77、85との接触部における耐久性を確保することができる。セラミックスの材質としては、第一に窒化ケイ素(Si34)が望ましいが、異種材適用の効果という観点から、炭化ケイ素(SiC)、ジルコニア(Al23)、アルミナ(ZrO2)を適用してもよい。セラミックス形成したボール72は、鋼材に比べて熱膨張係数が小さく、高温での内部隙間の変化が小さく、ボールの接触部の変形も小さい。また、内側外側の両継手部材とは異質材となるので、転動接触部での凝着が生じにくくなる。したがって、揺動斜板型圧縮機の駆動軸が高速回転(概ね最大10,000rpm)し、かつ希薄潤滑下でのボール接触部の転動耐久性を向上させることができる。
【0077】
本実施形態の回転阻止機構を構成する等速自在継手70は、回転駆動時には、ボール72の個数の内、1つ飛びのボールでトルク負荷を受ける(第1実施形態および第2実施形態においても同じ)。図12(b)に示すように、外側継手部材73のトルク負荷方向を矢印方向とすると、ボール個数が6個のうち、トラック溝77a、85aに組込まれたハッチングを付した3個のボールでトルク負荷を受ける。トルク方向が逆の場合には、反対にトラック溝77b、85bに組込まれたハッチングのない3個のボールが負荷を受けることになる。揺動斜板型可変容量圧縮機は、機能上トルク方向が変動しない(減速時を除く)ため、トラック溝77a、85aに組込まれるハッチングを付した3個のボール72のみをセラミックス製とし、トラック溝77b、85bに組込まれるハッチングのないボール77は鋼球としてもよい。本実施形態の等速自在継手の構造、ボールとトラック溝との接触形態、ラジアル荷重の支持形態や金属焼結体の組成、性状や製造の工程などは、第1実施形態および第2実施形態において前述した内容と同様であるので、説明を省略する。
【0078】
以上の各実施形態やその変形例では、保持器のない6個ボールのデルタ型等速自在継手を回転阻止機構に適用した場合について説明したが、ボールの個数は偶数個であればよく、8個や10個以上の等速自在継手も適用することができる。また、セラミックス製ボールは、揺動斜板型可変容量圧縮機の揺動板の回転阻止機構を構成する他の形式の等速自在継手、例えば、ツェッパ型等速自在継手にも適用することができる。
【0079】
本発明は前述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、さらに種々の形態で実施し得ることは勿論のことであり、本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲に記載の均等の意味、および範囲内のすべての変更を含む。
【符号の説明】
【0080】
39 揺動斜板型可変容量圧縮機
40 ハウジング
41 駆動軸
42 斜板
43 揺動板
44 ピストン
57 中心軸
70 等速自在継手
71 内側継手部材
71” 外側継手部材の金属焼結体
72 トルク伝達ボール
73 外側継手部材
73” 外側継手部材の金属焼結体
77 トラック溝
80 球状外周面
85 トラック溝
86 球状内周面
K 継手の軸線
M 回転阻止機構
O 継手中心
P トラック隙間
Q 球面隙間
S 仮想正多角柱の側面
α 接触角
β 傾斜角

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングに回転自在に支持された駆動軸と、この駆動軸に連結されて回転すると共に、前記駆動軸に対して傾斜可能な斜板と、この斜板に軸受を介して連結され、回転が阻止された揺動板と、この揺動板に連結されて前記駆動軸の軸方向に往復運動するピストンと、前記揺動板を支持するために前記ハウジングに支持された中心軸とを備えた揺動斜板型可変容量圧縮機の揺動板の回転阻止機構において、
前記揺動板の回転阻止機構が等速自在継手で構成され、この等速自在継手は、内周に偶数個の直線状トラック溝が形成された外側継手部材と、外周に偶数個の直線状トラック溝が形成された内側継手部材と、前記外側継手部材と内側継手部材の対となるトラック溝間に配された偶数個のトルク伝達ボールとからなり、前記外側継手部材の直線状トラック溝は2条ずつ左右対称に傾斜して設けられ、前記内側継手部材の直線状トラック溝は2条ずつ前記外側継手部材の対となるトラック溝とは反対方向に左右対称に傾斜して設けられており、継手が作動角0°の状態で、前記ボールの半数に相当する角数の仮想正多角柱の各側面を継手の軸線に対して平行にかつ継手の軸線から等距離になるように配置したとき、前記外側継手部材と内側継手部材の対となる2条ずつの直線状トラック溝のボール軌道中心線が前記各側面上に配置され、前記外側継手部材の内周に形成された球状内周面と内側継手部材の外周に形成された球状外周面とが嵌合する等速自在継手であって、前記外側継手部材が前記揺動板に取付けられ、前記内側継手部材が前記中心軸に取付けられると共に、前記等速自在継手の構成部材の少なくとも1つが金属焼結体からなり、その表面に熱処理による硬化層が形成されていることを特徴とする揺動斜板型可変容量圧縮機の揺動板の回転阻止機構。
【請求項2】
前記等速自在継手のトラック溝およびトルク伝達ボールの個数を6個とし、前記仮想正多角柱の角数を3としたことを特徴とする請求項1に記載の揺動斜板型可変容量圧縮機の揺動板の回転阻止機構。
【請求項3】
前記等速自在継手の内側継手部材が金属焼結体であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の揺動斜板型可変容量圧縮機の揺動板の回転阻止機構。
【請求項4】
前記金属焼結体の空孔率が5%以上で20%以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の揺動斜板型可変容量圧縮機の揺動板の回転阻止機構。
【請求項5】
前記金属焼結体は、鉄系合金の金属粉末を主成分とし、これに少なくともクロムおよびモリブデンを含む合金化粉からなることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の揺動斜板型可変容量圧縮機の揺動板の回転阻止機構。
【請求項6】
前記金属焼結体の合金化粉のクロムの含有量が1.0〜2.0mass%、モリブデンの含有量が0.05〜0.5mass%であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の揺動斜板型可変容量圧縮機の揺動板の回転阻止機構。
【請求項7】
前記金属焼結体は、固体潤滑剤を混合した原料粉末の圧粉体を焼結することで形成されたものであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の揺動斜板型可変容量圧縮機の揺動板の回転阻止機構。
【請求項8】
前記金属焼結体の表面硬度がHV513〜750であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の揺動斜板型可変容量圧縮機の揺動板の回転阻止機構。
【請求項9】
前記金属焼結体は潤滑剤が初期含浸されていることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の揺動斜板型可変容量圧縮機の揺動板の回転阻止機構。
【請求項10】
前記潤滑剤がポリアルキレングリコールであることを特徴とする請求項9に記載の揺動斜板型可変容量圧縮機の揺動板の回転阻止機構。
【請求項11】
前記外側継手部材と内側継手部材の両トラック溝とボールとの間のトラック隙間を前記球状外周面と球状内周面との間の球面隙間よりも小さくし、継手に負荷されるラジアル荷重を前記トラック溝とボールとの間で受けることを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載の揺動斜板型可変容量圧縮機の揺動板の回転阻止機構。
【請求項12】
前記トラック隙間を負とし、予圧を付与したことを特徴とする請求項11に記載の揺動斜板型可変容量圧縮機の揺動板の回転阻止機構。
【請求項13】
前記外側継手部材と内側継手部材の両トラック溝とボールとの間のトラック隙間を前記球状外周面と球状内周面との間の球面隙間よりも大きくし、継手に負荷されるラジアル荷重を前記球状外周面と球状内周面との間で受けることを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載の揺動斜板型可変容量圧縮機の揺動板の回転阻止機構。
【請求項14】
前記ボールがセラミックスで形成されていることを特徴とする請求項1〜13のいずれか一項に記載の揺動斜板型可変容量圧縮機の揺動板の回転阻止機構。
【請求項15】
前記セラミックスが窒化ケイ素、炭化ケイ素、ジルコニア、アルミナのいずれかであることを特徴とする請求項14に記載の揺動斜板型可変容量圧縮機の揺動板の回転阻止機構。
【請求項16】
前記セラミックスで形成されたボールを回転方向トルクが負荷されるトラック溝間にのみ組込み、他のトラック溝間に組込むボールを鋼球としたことを特徴とする請求項14又は請求項15に記載の揺動斜板型可変容量圧縮機の揺動板の回転阻止機構。
【請求項17】
前記ボールとトラック溝とをアンギュラコンタクトとしたことを特徴とする請求項1〜13のいずれか一項に記載の揺動斜板型可変容量圧縮機の揺動板の回転阻止機構。
【請求項18】
前記ボールとトラック溝とをサーキュラコンタクトとしたことを特徴とする請求項1〜13のいずれか一項に記載の揺動斜板型可変容量圧縮機の揺動板の回転阻止機構。
【請求項19】
請求項1〜15のいずれか一項に記載の揺動斜板型可変容量圧縮機の揺動板の回転阻止機構を構成する等速自在継手。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−60838(P2013−60838A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−198652(P2011−198652)
【出願日】平成23年9月12日(2011.9.12)
【出願人】(000102692)NTN株式会社 (9,006)
【Fターム(参考)】