説明

揺動鍛造装置及び揺動鍛造方法

【課題】揺動鍛造によって成形を行う際に、製品の厚みを一定にする。
【解決手段】ワークWの成形中に、揺動回転駆動手段18及び昇降駆動手段28の動作を制御する制御手段34において、揺動部12に付与される荷重値f1を把握する。そして、制御手段24の荷重制御部36において、ワークWの成形中の荷重を受けて、上型16、下型26、揺動回転駆動手段18及び昇降駆動手段28の各々に生じる弾性変形が、ワークWの成形の進行に伴い解消されていく過程を、揺動部12に付与される荷重値f1の減少から把握する。荷重制御部36は、上型16、下型26、揺動回転駆動手段18及び昇降駆動手段28の各々に生じる弾性変形が解消され、ワークWの形状が所望の製品精度となるタイミングを、揺動部12に付与される荷重値f1の変化から見極めて、ワークWへの荷重を解除する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、揺動鍛造装置及び揺動鍛造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、円盤状の部品を成形する一手法として、揺動鍛造方法が用いられているが、この揺動鍛造方法は、以下に説明する揺動鍛造装置によって実現されるものである。揺動鍛造装置は、揺動部と昇降部とを備えるものである。そして、揺動部は、例えば円錐状に角度を持った上型を、所定の中心点を基準に揺動回転駆動(いわゆる「すりこぎ運動」)させる揺動回転駆動手段を含んでいる。又、昇降部は、下型を上型に対し昇降させる昇降駆動手段を含むものである。更に、揺動鍛造装置は、揺動部に対する昇降部の接近限度位置を定めるための、メカニカルストッパーを備えている。
揺動鍛造装置を用いた具体的な成形手順は、まず、円盤状又は円柱状のワークを下型にセットし、下型を上昇させて、揺動回転運動する上型に対しワークを当接させる。そして、上型の揺動回転運動に伴い、ワークの成形が円周方向に逐次進行していく。ワークの成形が進行するに従い、上型と下型との上下方向の距離が接近し、上型と下型とがメカニカルストッパーにより一定距離に保持される。そして、上型と下型とが一定距離に保持された状態で、上型の揺動回転運動を継続しつつワークを所定時間保持した後に、下型を下降させて成形を完了するものである。かかる揺動鍛造方法によれば、一般的な鍛造方法に比べ衝撃や振動の発生が少なく、又、ワークの内部応力も少なくすることが出来るので、最終的な製品形状へと、1サイクルで鍛造することも可能となる(例えば、特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−079801号公報
【特許文献2】特開2002−086239号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
以上の如く、従来の揺動鍛造を行う揺動鍛造装置は、ワークの成形が進行するに従い、上型と下型との上下方向の距離が接近し、上型と下型とがストッパーにより一定距離に保持された状態で、上型の揺動回転運動を継続しつつ所定時間保持した後に、成形を完了する。このため、揺動鍛造された製品の厚みも、一見したところでは常に一定に成形されるものとなる。しかしながら、実際には、揺動鍛造時の荷重を受けて、上型、下型、揺動回転駆動手段及び昇降駆動手段が弾性変形し、その結果、製品の厚みが一定とはならず、ばらつきを生じ得るものである。又、ワークの形状や硬さにばらつきがある場合には、製品の厚みのばらつきはより顕著となる。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、揺動鍛造によって成形を行う際に、ワークの形状や硬さのばらつき等、ワークに起因する成形条件の如何に関わらず、製品の厚みを一定にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明に係る揺動鍛造装置は、揺動部と昇降部とを備え、前記揺動部に負荷されている荷重値を得て、該荷重値が予め設定された閾値を下回った時、成形に係る荷重負荷を解除するものである。
又、上記課題を解決するために、本発明に係る揺動鍛造方法は、揺動部と昇降部とを備える揺動鍛造装置を用い、前記揺動部に負荷されている荷重値を得て、該荷重値が予め設定された閾値を下回った時、成形に係る荷重負荷を解除するものである。
(発明の態様)
以下の発明の態様は、本発明の構成を例示するものであり、本発明の多様な構成の理解を容易にするために、項別けして説明するものである。各項は、本発明の技術的範囲を限定するものではなく、発明を実施するための最良の形態を参酌しつつ、各項の構成要素の一部を置換し、削除し、又は、更に他の構成要素を付加したものについても、本願発明の技術的範囲に含まれ得るものである。
【0006】
(1)上型、及び、該上型を所定の中心点を基準に揺動回転させる揺動回転駆動手段を含む揺動部と、ワークをセットする下型、及び、該下型を前記上型に対し昇降させて前記ワークを前記上型に当接させる昇降駆動手段を含む昇降部と、前記揺動部及び前記昇降部の対向する位置に設けられ、前記揺動部に対する前記昇降部の接近限度位置を定めるメカニカルストッパーと、前記揺動回転駆動手段及び前記昇降駆動手段の動作を制御する制御手段とを含み、該制御手段は、前記ワークの成形中に前記揺動部に付与される荷重値に基づき、前記ワークへの荷重付与を解除するタイミングを制御する荷重制御部を備える揺動鍛造装置(請求項1)。
【0007】
本項に記載の揺動鍛造装置は、揺動部の揺動回転駆動手段により、上型が所定の中心点を基準として揺動回転駆動された状態で、昇降部の昇降駆動手段により、下型が上型に対し昇降するものである。又、ワークを下型にセットした状態で下型を上昇させて、揺動回転運動する上型に対しワークを当接させることで、上型の揺動回転運動に伴い、下型にセットされたワークの成形が円周方向に逐次進行していく。そして、ワークの成形が進行するに従い、上型と下型との上下方向の距離が接近し、上型と下型とがメカニカルストッパーにより一定距離に保持された状態で、更に上型の揺動回転運動を行った後、成形を完了するものである。
しかも、本項の発明においては、ワークの成形中に、揺動回転駆動手段及び昇降駆動手段の動作を制御する制御手段において、揺動部に付与される荷重値を把握する。そして、制御手段の荷重制御部は、ワークの成形中の荷重を受けて、上型、下型、揺動回転駆動手段及び昇降駆動手段の各々に生じる弾性変形が、ワークの成形の進行に伴い解消されていく過程を、揺動部に付与される荷重値の変化(荷重値の減少)から把握し得るものとなる。そして、荷重制御部は、上型、下型、揺動回転駆動手段及び昇降駆動手段の各々に生じる弾性変形が解消され、ワークの形状が所望の製品精度となるタイミングを、揺動部に付与される荷重値の変化から見極めて、ワークへの荷重を解除するものである。従って、本項の発明に係る揺動鍛造装置、成形開始後ワークへの荷重付与を解除するタイミングは、ワーク毎に異なり得るものであるが、ワーク毎の製品精度については、ワークの形状や硬さのばらつきの如何に関わらず、安定させるものとなる。
【0008】
(2)上記(1)項において、前記荷重制御部は、前記ワークの成形中に前記揺動部において測定される圧力から求められる、前記ワークの成形中に前記揺動部に付与される荷重値を監視し、該荷重値が予め設定された閾値を下回るとき、前記ワークへの荷重付与を解除するように、前記昇降駆動手段を制御するものである揺動鍛造装置(請求項2)。
本項に記載の揺動鍛造装置は、荷重制御部において、ワークの成形中に揺動部で測定される圧力から、ワークの成形中に揺動部に付与される荷重値を求めるものである。又、荷重制御部は、ワークの成形中に揺動部に付与される荷重値を監視し、その荷重値が予め設定された閾値を下回るタイミングで、ワークへの荷重付与を解除するように、昇降駆動手段を制御するものである。この閾値としては、ワークの成形中の荷重を受けて、上型、下型、揺動回転駆動手段及び昇降駆動手段の各々に生じる弾性変形が、ワークの成形の進行に伴い解消されたと判断し得る荷重値を、予め設定しておくものである。
【0009】
(3)上記(2)項において、前記揺動部及び前記昇降部の各々に、前記ワークの成形中における圧力を検出する圧力検出手段を備え、前記制御手段の荷重制御部は、前記昇降駆動手段の圧力検出手段から得られる圧力に基づく、前記ワークの成形中の荷重値を監視し、前記メカニカルストッパーを介して前記揺動部に対する前記昇降部の位置決めがなされた状態で、前記昇降駆動手段の圧力検出手段から得られる荷重値が、前記閾値よりも大きい所定値を上回るように、前記昇降駆動手段を制御し、なおかつ、前記揺動回転駆動手段の圧力検出手段から得られる圧力に基づく、前記ワークの成形中の荷重値を監視するものである揺動鍛造装置(請求項3)。
【0010】
本項に記載の揺動鍛造装置は、揺動部及び昇降部の各々に設けられた、圧力検出手段により、ワークの成形中における圧力を検出する。そして、揺動部の圧力検出手段から得られる圧力に基づき、ワークの成形中に揺動部に付与される荷重値を求めるものである。又、昇降部の圧力検出手段から得られる圧力に基づき、ワークの成形中に昇降部に付与される荷重値を求めるものである。又、制御手段の荷重制御部は、昇降駆動手段の圧力検出手段から得られる圧力に基づく、ワークの成形中の荷重値を監視する。そして、ワークの成形の進行に伴い、揺動部及び昇降部の対向する位置に設けられたメカニカルストッパー同士が当接し、メカニカルストッパーを介して、揺動部に対する昇降部の位置決めがなされた状態で、昇降駆動手段の圧力検出手段から得られる荷重値が、閾値よりも大きい所定値を上回るように、昇降駆動手段を制御する。
前述の如く、ワークの成形中の荷重を受けて、上型、下型、揺動回転駆動手段及び昇降駆動手段の各々に生じる弾性変形が、ワークの成形の進行に伴い解消されて行き、それに伴い、揺動回転駆動手段に付与される荷重値が減少していく。このとき、本項に係る制御を行うことで、揺動回転駆動手段に付与される荷重値が減少する分が、揺動部に対する昇降部の接近限度位置を定めるメカニカルストッパーの反力(昇降部の上昇圧力の反力)へと転換されて行く。そして、ワークの成形中は常に、閾値よりも大きい所定値、具体的には、ワークの成形に最低限必要な荷重値を上回る荷重値が、上型から下型にセットされたワークへと付与され、成形が進行する状態を維持するものである。
荷重制御部はかかる状態を維持しつつ、揺動回転駆動手段の圧力検出手段から得られる圧力に基づく、ワークの成形中の荷重値を監視するものである。
【0011】
(4)上記(3)項において、前記揺動部の揺動回転駆動手段は、前記上型を固定する球面座と、該球面座を揺動回転可能に保持する球面受けと、前記球面座及び前記球面受けの間に油層を形成する油圧回路とを含む揺動鍛造装置(請求項4)。
本項に記載の揺動鍛造装置は、揺動回転駆動手段の油圧回路の油圧から得られる、ワークの成形中の荷重値が閾値を上回る間は、制御手段の荷重制御部により、揺動部に対する昇降部の位置が、メカニカルストッパーを介して接近限度位置に維持されるように、昇降駆動手段を制御する。そして、荷重制御部は、揺動回転駆動手段の油圧回路の油圧から得られる、ワークの成形中の荷重値が閾値を下回るタイミングで、ワークへの荷重を解除するように、昇降駆動部を制御するものである。
【0012】
(5)上記(4)項において、前記揺動回転駆動手段の油圧回路の油圧から得られる、前記ワークの成形中の荷重値は、前記球面座及び前記球面受けの間に油層を形成する油圧回路の油圧と、前記球面座及び前記球面受けの間に形成される油層の表面積との積から求められる揺動鍛造装置(請求項5)。
本項に記載の揺動鍛造装置は、揺動回転駆動手段の油圧回路の油圧から得られる、ワークの成形中の荷重値を、球面座及び前記球面受けの間に油層を形成する油圧回路の油圧と、球面座及び球面受けの間に形成される油層の表面積との積から求める。これにより、ワークへの荷重を解除するように、昇降駆動部を制御するタイミング、すなわち、上型、下型、揺動回転駆動手段及び昇降駆動手段の各々に生じる弾性変形が、解消されるタイミングを計るものである。なお、揺動回転駆動手段の油圧回路の油圧検出手段としては、油圧回路中に配置される油圧計等が用いられる。
【0013】
(6)上記(4)(5)項において、前記昇降駆動手段は、前記下型を昇降可能に支持する油圧シリンダーと、該油圧シリンダーを駆動する油圧回路とを含み、前記制御手段の荷重制御部は、前記昇降駆動手段の油圧回路から得られる圧力に基づく、前記ワークの成形中の荷重値を監視して、該荷重値が前記閾値よりも大きい所定値を上回るように前記昇降駆動手段を制御し、なおかつ、前記揺動回転駆動手段の油圧回路から得られる圧力に基づく、前記ワークの成形中の荷重値を監視するものである揺動鍛造装置(請求項6)。
本項に記載の揺動鍛造装置において、制御手段の荷重制御部は、昇降駆動手段の油圧回路から得られる圧力に基づく、ワークの成形中の荷重値を監視する。そして、ワークの成形の進行に伴い、メカニカルストッパーを介して揺動部に対する昇降部の位置決めがなされた状態で、昇降駆動手段の油圧回路から得られる荷重値が、閾値よりも大きい所定値を上回るように、昇降駆動手段を制御する。荷重制御部はかかる状態を維持しつつ、揺動回転駆動手段の油圧回路から得られる圧力に基づく、ワークの成形中の荷重値を監視するものである。なお、昇降駆動手段の油圧回路の油圧検出手段としては、油圧回路中に配置される油圧計等が用いられる。
【0014】
(7)上型、及び、該上型を所定の中心点を基準に揺動回転させる揺動回転駆動手段を含む揺動部と、ワークをセットする下型、及び、該下型を前記上型に対し昇降させて前記ワークを前記上型に当接させる昇降駆動手段を含む昇降部と、前記揺動部及び前記昇降部の対向する位置に設けられ、前記揺動部に対する前記昇降部の接近限度位置を定めるメカニカルストッパーと、前記揺動回転駆動手段及び前記昇降駆動手段の動作を制御する制御手段とを含む揺動鍛造装置を用いた、揺動鍛造方法であって、前記ワークの成形中に前記揺動部に付与される荷重値に基づき、前記ワークへの荷重付与を解除するタイミングを定める揺動鍛造方法(請求項7)。
【0015】
本項に記載の揺動鍛造方法は、揺動鍛造装置の、揺動部の揺動回転駆動手段により、上型を、所定の中心点を基準として揺動回転駆動した状態で、昇降部の昇降駆動手段により、下型を上型に対し昇降させるものである。又、下型にセットしたワークを、揺動回転運動する上型に対し当接させることで、上型の揺動回転運動に伴い、下型にセットされたワークの成形を円周方向に逐次進行させていく。そして、ワークの成形が進行するに従い、上型と下型との上下方向の距離を接近させ、上型と下型とをメカニカルストッパーにより一定距離に保持した状態で、更に上型の揺動回転運動を行った後、成形を完了するものである。
しかも、本項の発明においては、ワークの成形中に、揺動回転駆動手段及び昇降駆動手段の動作を制御する制御手段により、揺動部に付与される荷重値を把握する。そして、制御手段の荷重制御部により、ワークの成形中の荷重を受けて、上型、下型、揺動回転駆動手段及び昇降駆動手段の各々に生じる弾性変形が、ワークの成形の進行に伴い解消されていく過程を、揺動部に付与される荷重値の変化(減少)から把握することも可能となる。そして、荷重制御部により、上型、下型、揺動回転駆動手段及び昇降駆動手段の各々に生じる弾性変形が解消され、ワークの形状が、所望の製品精度へと成形されるタイミングを、揺動部に付与される荷重値の変化から見極めて、ワークへの荷重を解除するものである。従って、本項の発明に係る揺動鍛造方法によれば、成形開始後ワークへの荷重付与を解除するタイミングは、ワーク毎に異なり得るものであるが、ワーク毎の製品精度については、ワークの形状や硬さのばらつきの如何に関わらず、安定させるものとなる。
【0016】
(8)上記(7)項において、前記ワークの成形中に前記揺動部において測定される圧力から求められる、前記ワークの成形中に前記揺動部に付与される荷重値を監視し、該荷重値が予め設定された閾値を下回るとき、前記ワークへの荷重付与を解除する揺動鍛造方法(請求項8)。
本項に記載の揺動鍛造方法は、ワークの成形中に揺動部において測定される圧力から、ワークの成形中に揺動部に付与される荷重値を求めるものである。又、ワークの成形中に揺動部に付与される荷重値を監視し、その荷重値が予め設定された閾値を下回るタイミングでワークへの荷重付与を解除するように、昇降駆動手段を制御するものである。この閾値としては、ワークの成形中の荷重を受けて、上型、下型、揺動回転駆動手段及び昇降駆動手段の各々に生じる弾性変形が、ワークの成形の進行に伴い解消されたと判断し得る荷重値を、予め設定しておくものである。
【0017】
(9)上記(8)項において、前記揺動部及び前記昇降部の各々にて、前記ワークの成形中における圧力を検出し、前記昇降部から得られる圧力に基づく、前記ワークの成形中の荷重値を監視し、前記メカニカルストッパーを介して前記揺動部に対する前記昇降部の位置決めがなされた状態で、前記昇降部から得られる圧力に基づく荷重値が、前記閾値よりも大きい所定値を上回るように、前記昇降駆動手段を制御し、なおかつ、前記揺動部から得られる圧力に基づく、前記ワークの成形中の荷重値を監視する揺動鍛造方法(請求項9)。
【0018】
本項に記載の揺動鍛造方法は、揺動部及び昇降部の各々において、ワークの成形中における圧力を検出する。そして、揺動部から得られる圧力に基づき、ワークの成形中に揺動部に付与される荷重値を求めるものである。又、昇降部から得られる圧力に基づき、ワークの成形中に昇降部に付与される荷重値を求めるものである。又、昇降部から得られる圧力に基づく、ワークの成形中の荷重値を監視する。そして、ワークの成形の進行に伴い、メカニカルストッパーを介して、揺動部に対する昇降部の位置決めがなされた状態で、昇降部から得られる荷重値が、閾値よりも大きい所定値を上回るように、昇降駆動手段を制御する。
前述の如く、ワークの成形中の荷重を受けて、上型、下型、揺動回転駆動手段及び昇降駆動手段の各々に生じる弾性変形が、ワークの成形の進行に伴い解消されて行き、それに伴い、揺動回転駆動手段に付与される荷重値が減少していく。このとき、本項に係る制御を行うことで、揺動回転駆動手段に付与される荷重値が減少する分を、揺動部に対する昇降部の接近限度位置を定めるメカニカルストッパーの反力へと転換していく。そして、ワークの成形中は常に、閾値よりも大きい所定値、具体的には、ワークの成形に最低限必要な荷重値を上回る荷重値が、上型から下型にセットされたワークへと付与され、成形が進行する状態を維持するものである。
そして、かかる状態を維持しつつ、揺動部から得られる圧力に基づく、ワークの成形中の荷重値を監視するものである。
【0019】
(10)上記(9)項において、前記揺動部の揺動回転駆動手段は、前記上型を固定する球面座と、該球面座を揺動回転可能に保持する球面受けと、前記球面座及び前記球面受けの間に油層を形成する油圧回路とを含むものであり、前記揺動回転駆動手段の油圧回路の油圧から得られる、ワークの成形中の荷重値が、予め設定された閾値を上回る間は、前記揺動部に対する前記昇降部の位置が、前記メカニカルストッパーを介した接近限度位置に維持するように、前記昇降駆動手段を制御する揺動鍛造方法(請求項10)。
本項に記載の揺動鍛造方法は、揺動回転駆動手段の油圧回路の油圧から得られる、ワークの成形中の荷重値が、閾値を上回る間は、揺動部に対する昇降部の位置が、メカニカルストッパーを介して接近限度位置に維持されるように、昇降駆動手段を制御する。そして、揺動回転駆動手段の油圧回路の油圧から得られる、ワークの成形中の荷重値が閾値を下回るタイミングで、ワークへの荷重を解除するように、昇降駆動部を制御するものである。
【0020】
(11)上記(10)項において、前記揺動回転駆動手段の油圧回路の油圧から得られる、ワークの成形中の荷重値を、前記球面座及び前記球面受けの間に油層を形成する油圧回路の油圧と、前記球面座及び前記球面受けの間に形成される油層の表面積との積から求める揺動鍛造方法(請求項11)。
本項に記載の揺動鍛造方法は、揺動回転駆動手段の油圧回路の油圧から得られる、ワークの成形中の荷重値を、球面座及び球面受けの間に油層を形成する油圧回路の油圧と、球面座及び球面受けの間に形成される油層の表面積との積から求める。これにより、ワークへの荷重を解除するように、昇降駆動部を制御するタイミング、すなわち、上型、下型、揺動回転駆動手段及び昇降駆動手段の各々に生じる弾性変形が、解消されるタイミングを計るものである。なお、揺動回転駆動手段の油圧回路の油圧検出には、油圧回路中に配置される油圧計等を用いる。
【0021】
(12)上記(10)(11)項において、前記昇降駆動手段は、前記下型を昇降可能に支持する油圧シリンダーと、該油圧シリンダーを駆動する油圧回路とを含むものであり、該油圧回路から得られる圧力に基づく、前記ワークの成形中の荷重値を監視して、該荷重値が前記閾値よりも大きい所定値を上回るように前記昇降駆動手段を制御し、なおかつ、前記揺動回転駆動手段の油圧回路から得られる圧力に基づく、前記ワークの成形中の荷重値を監視する揺動鍛造方法(請求項12)。
本項に記載の揺動鍛造方法は、昇降駆動手段の油圧回路から得られる圧力に基づく、前記ワークの成形中の荷重値を監視する。そして、ワークの成形の進行に伴い、メカニカルストッパーを介して揺動部に対する昇降部の位置決めがなされた状態で、昇降駆動手段の油圧回路から得られる荷重値が、閾値よりも大きい所定値を上回るように、昇降駆動手段を制御する。かかる状態を維持しつつ、揺動回転駆動手段の油圧回路から得られる圧力に基づく、ワークの成形中の荷重値を監視するものである。なお、昇降駆動手段の油圧回路の油圧検出手段としては、油圧回路中に配置される油圧計等が用いられる。
【発明の効果】
【0022】
本発明はこのように構成したので、揺動鍛造によって成形を行う際に、ワークの形状や硬さのばらつき等、ワークに起因する成形条件の如何に関わらず、製品の厚みを一定にすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施の形態に係る揺動鍛造装置を用いた揺動鍛造方法の工程図であり、参考例として、上型と下型とがメカニカルストッパーにより一定距離に保持された状態で所定時間保持した後に成形を完了する、従来の工程を併記したものである。
【図2】本発明の実施の形態に係る揺動鍛造装置の、揺動部に対する昇降部の距離と、揺動回転駆動手段の油圧回路から得られるワークの成形中の荷重値、及び、昇降駆動手段の油圧回路から得られるワークの成形中の荷重値を、時間経過と共に示したグラフである。
【図3】本発明の実施の形態に係る揺動鍛造装置の揺動部を示すものであり、(a)は上面図、(b)は(a)のA−A断面図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る揺動鍛造装置の、成形開始時における、揺動部及び昇降部の要部拡大断面図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る揺動鍛造装置の、成形完了時における、揺動部及び昇降部の要部拡大断面図である。
【図6】図4及び図5の上型、下型及びワーク周辺部の拡大図であり、(a)は図4、(b)は図5に係るものである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を実施するための最良の形態を添付図に基づいて説明する。まず、本発明の実施の形態に係る揺動鍛造方法の実施に用いられる、揺動鍛造装置の構成について、図3〜図5を参照しながら説明する。
【0025】
本発明の実施の形態に係る揺動鍛造装置10は、揺動部12及び昇降部14を含むものであり、揺動部12は、上型16と、上型16を所定の中心点Pを基準に揺動回転させる揺動回転駆動手段18とを含むものである。又、図3にも示されるように、揺動部12の揺動回転駆動手段18は、上型16を固定する球面座20と、球面座20を揺動回転可能に保持する球面受け22と、球面座20及び球面受け22の間(本説明では、「揺動球面」ともいう。)に油層Os(薄い層であるため、符号のみ示す。)を形成する油圧回路24を具備するものである。
球面座20の上方には揺動回転軸21が延びており、球面受け22に対して、密閉性が確保されたスラスト軸受23を介して揺動回転可能に保持されている。又、球面座20の下端部近傍においても、適切な密閉手段によって球面受け22に対する密閉性が確保されている。よって、球面座20、揺動回転軸21及び球面受け22の間に形成される空間は潤滑油で満たされ、図示しない動力源により駆動される揺動回転駆動手段18の、円滑な揺動回転運動が実現されるものである。又、図3(b)に符号Cで示される軸線は、鉛直軸を表し、同図に符号C21で示される軸線は、揺動回転軸21の中心軸を示している。
【0026】
なお、球面座20及び球面受け22の間の油層Osは薄い層であるため、図示の便宜上、図3(b)、図4、図5には符号Osのみ示している。又、揺動回転駆動手段18の油圧回路24については、図3(b)に、球面受け22に開口する油供給路の部分のみ示しているが、当然に、この油供給路へと潤滑油を供給するための油圧ポンプ、油圧シリンダー、制御バルブ等を、適宜備えるものである。又、油圧回路24の構成については、従来の揺動鍛造装置(特許文献1、2等)の構成を流用することも可能である。
【0027】
一方、図4に示されるように、昇降部14は、ワークWをセットする下型26と、下型26を上型16に対し昇降させてワークWを上型16に当接させる昇降駆動手段28を含むものである。この昇降駆動手段28は、下型を昇降可能に支持する油圧シリンダーと、この油圧シリンダーを駆動する油圧回路とを含むものであるが、これらについては、便宜上、図示を省略する。又、昇降駆動手段28の油圧回路の構成についても、従来の揺動鍛造装置(特許文献1、2等)の構成を流用することも可能である。
そして、揺動部12及び昇降部14の対向する位置には、各々、金属ブロック等のメカニカルストッパー30、32が設けられており、これらが直接的に当接することで、揺動部12に対する昇降部14の接近限度位置が定められる。
【0028】
更に、図中には簡略的に示されているが、揺動回転駆動手段18及び昇降駆動手段22の動作を制御する制御手段34を備えている。
制御手段34は、後述するように、ワークWの成形中に揺動部12に付与される荷重値に基づき、ワークWへの荷重付与を解除するタイミングを制御する荷重制御部36を備えるものである。この制御手段34は、本説明における機能を果たす限り、任意のハードウェア(比較器等)又はソフトウェア(マイクロコンピュータによる演算処理)、更にはその組み合わせにより構成することが可能である。そして、荷重制御部36は、制御手段34の任意のハードウェア又はソフトウェアの一部を、本発明所定の機能ブロックとして構成することが可能である。
【0029】
加えて、揺動部12及び昇降部14の各々に、ワークWの成形中における、揺動部12及び昇降部14の各々に掛かる圧力を測定するための、圧力検出手段38、40を備えている。
前述のように、揺動部12の揺動回転駆動手段18は、球面座20及び球面受け22の間に油層Osを形成する油圧回路24を含んでいる。又、昇降部14の昇降駆動手段28は、下型を昇降可能に支持する油圧シリンダーを駆動する油圧回路を含んでいる。図4、図5には、圧力検出手段38、40を模式的に示しているが、これらの油圧回路中に配置される油圧計等を、ワークWの成形中における圧力検出手段38、40として用いることが可能である。
【0030】
さて、図2には、揺動鍛造装置10を用いた成形工程中における、揺動部12に対する昇降部の距離Y(mm)と、揺動回転駆動手段18の油圧回路24から得られるワークWの成形中の荷重値f1(KN)、及び、昇降駆動手段28の油圧回路から得られるワークWの成形中の荷重値F1(KN)を、時間経過t(s)と共に示している。
図2から理解されるように、下型26を上型16に対し昇降させてワークWを上型16に当接させると、当初は、荷重値f1とF1とが一致した状態(F1=f1)で増加して行く。そして、ワークWの成形の進行に伴い、揺動部12及び昇降部14の対向する位置に設けられたメカニカルストッパー30、32同士が当接した時点taで、昇降駆動手段28の上昇は止まり、荷重値f1及びF1は最大値となる。そして、上型16の揺動回転運動に伴い、ワークの成形更に進行していくことで、ワークWは薄く広く押し広げられていく。すると、ワークWの厚みの減少に伴い、上型16、下型26、揺動回転駆動手段18及び昇降駆動手段28の弾性変形が解消されることで、揺動回転駆動手段18の油圧回路24から得られるワークWの成形中の荷重値f1は、上型16の揺動回転の周期と一致するように、脈動しながら減少を続けていく。この間、荷重値F1は閾値THよりも大きい所定値を上回る設定荷重に維持されるよう、昇降駆動手段28が制御される。
【0031】
制御手段34の荷重制御部36は、ワークWの成形中に揺動部12において測定される圧力p1から求められる、ワークWの成形中に揺動部12に付与される荷重値f1を監視する。そして、荷重値f1が予め設定された閾値THを下回るとき、ワークWへの荷重付与を解除するように、昇降駆動手段28を制御するものである。ここで、ワークWの成形中の荷重値f1は、球面座20及び球面受け22の間に油層Osを形成する油圧回路24の油圧p1と、球面座20及び球面受け22の間に形成される油層Osの表面積Sとの積(f1=p1×S)から求められるものである。
又、制御手段34の荷重制御部36は、昇降駆動手段28の圧力検出手段40から得られる圧力に基づく、ワークの成形中の荷重値F1を監視し、メカニカルストッパー30、32を介して揺動部12に対する昇降部14の位置決めがなされた状態で、昇降駆動手段28の圧力検出手段40から得られる荷重値F1が、閾値THよりも大きい所定値を上回るように、昇降駆動手段28を制御するものである。
【0032】
より具体的には、制御手段34の荷重制御部36は、昇降駆動手段28の油圧回路から得られる圧力に基づく、ワークWの成形中の荷重値F1を監視して、荷重値F1が閾値THよりも大きい所定値を上回るように、昇降駆動手段28を制御する。ここで、閾値THよりも大きい所定値とは、成形時の設定荷重、ないし、それより若干小さな値であっても、ワークWの成形に最低限必要な荷重値を上回る荷重値が、上型16から下型26にセットされたワークWへと付与され、成形が進行する状態を維持することを可能とするための荷重値(図2に示された例では概ね6500N以上)である。
制御手段34の荷重制御部36は、この状態を維持しながら、揺動回転駆動手段18の油圧回路24の圧力検出手段38から得られる圧力p1に基づく、ワークWの成形中の荷重値f1を監視するものである。
【0033】
続いて、本発明の実施の形態に係る揺動鍛造装置10を用いて揺動鍛造を行う手順を、図1に示されるフローチャートを参照しながら説明する。
S100(ワーク投入):揺動部12に対して昇降部14が十分に下降した状態(下死点)で、昇降部14の下型26にワークWをセットする。この際、通常は制御手段34によって揺動部12の揺動回転駆動手段は駆動された状態にあり、下型26に対するワークWのセット作業及び製品の取り出し作業は、ロボットその他の搬送機械を用いて無人で行われる。
S110(ワーク検知):制御手段34は、適切なワーク検知手段により、下型26にワークWがセットされたか否かを検知する。制御手段34は、下型26にワークW有りとの検知をすると、昇降駆動手段28に対して昇降部14の上昇動作指令を出力する。
S120(成形スタート):制御手段34の上昇動作指令を受けて、昇降駆動手段28は、昇降部14を上昇させ、成形をスタートする。そして、図4、図6(a)に示されるように、ワークWを上型16に当接させることで、上型16の揺動回転運動に伴い、ワークWの成形が円周方向に逐次進行していく。
【0034】
S130(シリンダー圧測定):制御手段34の荷重制御部36は、ワークWの成形中に揺動回転駆動手段18の油圧回路24から得られる圧力pに基づく、ワークWの成形中の荷重値f1を監視する。又、制御手段34の荷重制御部36は、昇降駆動手段28の油圧回路から得られる圧力に基づく、ワークWの成形中の荷重値F1を監視する。
ワークWの成形の進行に伴い、図6(b)に示されるように、ワークWは薄く広く押し広げられていく。ここで、図4に示されるように、メカニカルストッパー30、32が当接していない時点では、メカニカルストッパー30、32が当接することにより生じる反力f2は発生せず、f2=0の状態にある(図4参照)。よって、昇降駆動手段28の油圧回路の圧力検出手段40から得られる圧力に基づく、ワークWの成形中の荷重値F1は、揺動回転駆動手段18の油圧回路24の圧力検出手段38から得られる圧力p1に基づく、ワークWの成形中の荷重値f1と一致する(F1=f1=p1×S)。
一方、ワークWの成形が進行するに従い、上型16と下型26との上下方向の距離が接近し、図5に示されるように、メカニカルストッパー30、32が当接して(図2に符号taで示される時点)、昇降部14は揺動部12に対する接近限度位置に停止する。制御手段34の荷重制御部36は、メカニカルストッパー30、32が当接した後も、昇降駆動手段28に対して昇降部14の上昇動作指令を継続して出力し、昇降駆動手段28の油圧回路から得られる圧力に基づく、ワークWの成形中の荷重値F1は、設定荷重へと到達する。なお、図2の例では、揺動部12と昇降部14との距離Yは、メカニカルストッパー30、32が単に当接した状態で、Y=110mm程度になる。
【0035】
S140(加圧保持):制御手段34の荷重制御部36は、メカニカルストッパー30、32が当接した後も、昇降駆動手段28に対して昇降部14の上昇動作指令を継続して出力し、昇降駆動手段28の油圧回路から得られる圧力に基づく、ワークWの成形中の荷重値F1を設定荷重、若しくは、設定荷重から若干の低下が生じても、閾値THよりも大きい所定値を上回るように維持する。
S150(揺動球面圧力測定):制御手段34の荷重制御部36は、継続して、揺動回転駆動手段18の油圧回路24の圧力検出手段38から得られる圧力(揺動球面圧力)p1を測定して、ワークWの成形中の荷重値f1(f1=p1×S)を求め、荷重値f1を監視する。そして、荷重制御部36は、荷重値f1が予め設定された閾値THを下回るタイミングで、ワークWへの荷重付与を解除するように、昇降駆動手段28への制御指令を出力する。
【0036】
S160(シリンダー下降):制御手段34の上昇動作指令を受けて、昇降駆動手段28のシリンダーを下降させる。これにより、図2に示されるように、昇降駆動手段28の油圧回路の圧力検出手段40から得られる圧力に基づく、ワークWの成形中の荷重値F1と、揺動回転駆動手段18の油圧回路24の圧力検出手段38から得られる圧力p1に基づく、ワークWの成形中の荷重値f1は、何れも急減する。そして、昇降部14を揺動部12から離間させる(図2のY値参照)。
なお、図1のS150’(タイマースタート)は、参考例として、上型16と下型26とがメカニカルストッパー30、32により一定距離に保持された状態で、所定時間保持した後に成形を完了する、従来の揺動鍛造工程を示したものである。この場合には、S130(シリンダー圧測定)にて設定圧力に到達した時点で、タイマーをスタートさせることで、設定時間の経過を把握するものである。そして、設定時間経過の時点で、ワークWへの荷重付与を解除するように、昇降駆動手段28への制御指令を出力するものである。
【0037】
さて、上記構成をなす、本発明の実施の形態によれば、次のような作用効果を得ることが可能となる。
すなわち、ワークWの成形中に、揺動回転駆動手段18及び昇降駆動手段28の動作を制御する制御手段34において、揺動部12に付与される荷重値f1を把握する(S150)。そして、制御手段24の荷重制御部36において、ワークWの成形中の荷重を受けて、上型16、下型26、揺動回転駆動手段18及び昇降駆動手段28の各々に生じる弾性変形が、ワークWの成形の進行に伴い解消されていく過程を、揺動部12に付与される荷重値f1の変化(荷重値の減少)から把握することも可能となる(図2参照)。
【0038】
そして、荷重制御部36は、上型16、下型26、揺動回転駆動手段18及び昇降駆動手段28の各々に生じる弾性変形が解消され、ワークWの形状が所望の製品精度となるタイミングを、揺動部12に付与される荷重値f1の変化から見極めて、ワークWへの荷重を解除するものである(S160)。従って、本発明の実施の形態によれば、従来技術(S150’)と異なり、成形開始後ワークWへの荷重付与を解除するタイミングが、ワークW毎にばらつきを生じ得るものである。しかしながら、ワークW毎の製品精度については、ワークWの形状や硬さのばらつき等、ワークWに起因する成形条件の如何に関わらず、安定させることが可能となる。
【0039】
又、本発明の実施の形態によれば、荷重制御部36において、ワークWの成形中に揺動部12で測定される圧力p1から、ワークWの成形中に揺動部12に付与される荷重値f1を求めるものである。そして、荷重制御部36は、ワークWの成形中に揺動部12に付与される荷重値f1を監視し(S150)、その荷重値f1が予め設定された閾値THを下回るタイミングで、ワークWへの荷重付与を解除するように、昇降駆動手段28を制御するものである(S160)。この閾値THとしては、ワークWの成形中の荷重を受けて、上型16、下型26、揺動回転駆動手段18及び昇降駆動手段28の各々に生じる弾性変形が、ワークWの成形の進行に伴い解消されたと判断し得る荷重値を、予め設定しておくものである。
【0040】
又、本発明の実施の形態によれば、揺動部12及び昇降部14の各々に設けられた、圧力検出手段38、40により、ワークWの成形中における圧力を検出する。そして、制御手段34の荷重制御部36は、揺動部12の圧力検出手段38から得られる圧力p1に基づき、ワークWの成形中に揺動部12に付与される荷重値f1を求めるものである。又、昇降部14の圧力検出手段40から得られる圧力に基づき、ワークの成形中に昇降部に付与される荷重値F1を求め、昇降駆動手段28の圧力検出手段40から得られる圧力に基づく、ワークWの成形中の荷重値F1を監視する(S130、S150)。
【0041】
そして、ワークWの成形の進行に伴い(図6(a)(b)参照)、揺動部12及び昇降部14の対向する位置に設けられたメカニカルストッパー30、32同士が当接し、メカニカルストッパー30、32を介して、揺動部12に対する昇降部14の位置決めがなされた状態で、昇降駆動手段28の圧力検出手段40から得られる荷重値F1が、閾値THよりも大きい所定値を上回るように、昇降駆動手段28を制御するものである。
【0042】
前述の如く、ワークWの成形中の荷重を受けて、上型16、下型26、揺動回転駆動手段18及び昇降駆動手段28の各々に生じる弾性変形が、ワークWの成形の進行に伴い解消されて行き、それに伴い、揺動回転駆動手段18に付与される荷重値f1が減少していく。このとき、揺動回転駆動手段18に付与される荷重値f1が減少する分が、揺動部12に対する昇降部14の接近限度位置を定めるメカニカルストッパー30、32の反力f2(図5参照)へと転換されて行く。従って、ワークWの成形中は、常に、閾値THよりも大きい所定値、具体的には、ワークWの成形に最低限必要な荷重値を上回る荷重値が、上型16から下型26にセットされたワークWへと付与され、成形が進行する状態を維持するものである。
荷重制御部38はかかる状態を維持しつつ、揺動回転駆動手段18の圧力検出手段38から得られる圧力p1に基づく、ワークWの成形中の荷重値f1を監視するものである。
【0043】
又、本発明の実施の形態によれば、揺動回転駆動手段18の油圧回路24の油圧から得られる、ワークの成形中の荷重値f1が閾値THを上回る間は、制御手段34の荷重制御部36により、揺動部12に対する昇降部14の位置が、メカニカルストッパー30、32を介して接近限度位置に維持されるように、昇降駆動手段28を制御するものである。そして、荷重制御部36は、揺動回転駆動手段18の油圧回路25の油圧から得られる、ワークWの成形中の荷重値f1が、閾値THを下回るタイミングで(S150)、ワークWへの荷重を解除するように、昇降制御部28を制御するものである(S160)。
【0044】
又、本発明の実施の形態によれば、ワークWの成形中の荷重値f1を、球面座20及び球面受け22の間に油層Osを形成する油圧回路24の油圧p1と、球面座20及び球面受け22の間に形成される油層Osの表面積Sとの積から求めるものである(f1=p1×S)。これにより、制御手段34の荷重制御部36は、ワークWへの荷重を解除するように、昇降駆動部28を制御するタイミング、すなわち、上型16、下型26、揺動回転駆動手段18及び昇降駆動手段28の各々に生じる弾性変形が、解消されるタイミングを計ることができる。
【0045】
又、本発明の実施の形態によれば、制御手段34の荷重制御部36は、昇降駆動手段28の油圧回路から得られる圧力に基づく、ワークWの成形中の荷重値F1を監視する(S130、S150)。そして、ワークWの成形の進行に伴い、メカニカルストッパー30、32を介して揺動部12に対する昇降部14の位置決めがなされた状態で、昇降駆動手段28の油圧回路から得られる荷重値F1が、閾値THよりも大きい所定値を上回るように、昇降駆動手段28を制御する。荷重制御部36はかかる状態を維持しつつ、揺動回転駆動手段18の油圧回路から得られる圧力p1に基づく、ワークWの成形中の荷重値f1を監視することで、上型16、下型26、揺動回転駆動手段18及び昇降駆動手段28の各々に生じる弾性変形が、解消されるタイミングを計ることができる。
【符号の説明】
【0046】
10:揺動鍛造装置、12:揺動部、14:昇降部、16:上型、18:揺動回転駆動手段、20:球面座、22:球面受け、24:油圧回路、26:下型、28:昇降駆動手段、 30、32:メカニカルストッパー、34:制御手段、36:荷重制御部、 38、40:圧力検出手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上型、及び、該上型を所定の中心点を基準に揺動回転させる揺動回転駆動手段を含む揺動部と、
ワークをセットする下型、及び、該下型を前記上型に対し昇降させて前記ワークを前記上型に当接させる昇降駆動手段を含む昇降部と、
前記揺動部及び前記昇降部の対向する位置に設けられ、前記揺動部に対する前記昇降部の接近限度位置を定めるメカニカルストッパーと、
前記揺動回転駆動手段及び前記昇降駆動手段の動作を制御する制御手段とを含み、
該制御手段は、前記ワークの成形中に前記揺動部に付与される荷重値に基づき、前記ワークへの荷重付与を解除するタイミングを制御する荷重制御部を備えることを特徴とする揺動鍛造装置。
【請求項2】
前記荷重制御部は、前記ワークの成形中に前記揺動部において測定される圧力から求められる、前記ワークの成形中に前記揺動部に付与される荷重値を監視し、該荷重値が予め設定された閾値を下回るとき、前記ワークへの荷重付与を解除するように、前記昇降駆動手段を制御するものであることを特徴とする請求項1記載の揺動鍛造装置。
【請求項3】
前記揺動部及び前記昇降部の各々に、前記ワークの成形中における圧力を検出する圧力検出手段を備え、
前記制御手段の荷重制御部は、前記昇降駆動手段の圧力検出手段から得られる圧力に基づく、前記ワークの成形中の荷重値を監視し、前記メカニカルストッパーを介して前記揺動部に対する前記昇降部の位置決めがなされた状態で、前記昇降駆動手段の圧力検出手段から得られる荷重値が、前記閾値よりも大きい所定値を上回るように、前記昇降駆動手段を制御し、なおかつ、前記揺動回転駆動手段の圧力検出手段から得られる圧力に基づく、前記ワークの成形中の荷重値を監視するものであることを特徴とする請求項2記載の揺動鍛造装置。
【請求項4】
前記揺動部の揺動回転駆動手段は、前記上型を固定する球面座と、該球面座を揺動回転可能に保持する球面受けと、前記球面座及び前記球面受けの間に油層を形成する油圧回路とを含むことを特徴とする請求項3記載の揺動鍛造装置。
【請求項5】
前記揺動回転駆動手段の油圧回路の油圧から得られる、前記ワークの成形中の荷重値は、前記球面座及び前記球面受けの間に油層を形成する油圧回路の油圧と、前記球面座及び前記球面受けの間に形成される油層の表面積との積から求められることを特徴とする請求項4記載の揺動鍛造装置。
【請求項6】
前記昇降駆動手段は、前記下型を昇降可能に支持する油圧シリンダーと、該油圧シリンダーを駆動する油圧回路とを含み、
前記制御手段の荷重制御部は、前記昇降駆動手段の油圧回路から得られる圧力に基づく、前記ワークの成形中の荷重値を監視して、該荷重値が前記閾値よりも大きい所定値を上回るように前記昇降駆動手段を制御し、なおかつ、前記揺動回転駆動手段の油圧回路から得られる圧力に基づく、前記ワークの成形中の荷重値を監視するものであることを特徴とする請求項4又は5記載の揺動鍛造装置。
【請求項7】
上型、及び、該上型を所定の中心点を基準に揺動回転させる揺動回転駆動手段を含む揺動部と、ワークをセットする下型、及び、該下型を前記上型に対し昇降させて前記ワークを前記上型に当接させる昇降駆動手段を含む昇降部と、前記揺動部及び前記昇降部の対向する位置に設けられ、前記揺動部に対する前記昇降部の接近限度位置を定めるメカニカルストッパーと、前記揺動回転駆動手段及び前記昇降駆動手段の動作を制御する制御手段とを含む揺動鍛造装置を用いた、揺動鍛造方法であって、
前記ワークの成形中に前記揺動部に付与される荷重値に基づき、前記ワークへの荷重付与を解除するタイミングを定めることを特徴とする揺動鍛造方法。
【請求項8】
前記ワークの成形中に前記揺動部において測定される圧力から求められる、前記ワークの成形中に前記揺動部に付与される荷重値を監視し、該荷重値が予め設定された閾値を下回るとき、前記ワークへの荷重付与を解除することを特徴とする請求項7記載の揺動鍛造方法。
【請求項9】
前記揺動部及び前記昇降部の各々にて、前記ワークの成形中における圧力を検出し、
前記昇降部から得られる圧力に基づく、前記ワークの成形中の荷重値を監視し、前記メカニカルストッパーを介して前記揺動部に対する前記昇降部の位置決めがなされた状態で、前記昇降部から得られる圧力に基づく荷重値が、前記閾値よりも大きい所定値を上回るように、前記昇降駆動手段を制御し、なおかつ、前記揺動部から得られる圧力に基づく、前記ワークの成形中の荷重値を監視することを特徴とする請求項8記載の揺動鍛造方法。
【請求項10】
前記揺動部の揺動回転駆動手段は、前記上型を固定する球面座と、該球面座を揺動回転可能に保持する球面受けと、前記球面座及び前記球面受けの間に油層を形成する油圧回路とを含むものであり、
前記揺動回転駆動手段の油圧回路の油圧から得られる、前記ワークの成形中の荷重値が、予め設定された閾値を上回る間は、前記揺動部に対する前記昇降部の位置が、前記メカニカルストッパーを介した接近限度位置に維持するように、前記昇降駆動手段を制御することを特徴とする請求項9記載の揺動鍛造方法。
【請求項11】
前記揺動回転駆動手段の油圧回路の油圧から得られる、前記ワークの成形中の荷重値を、前記球面座及び前記球面受けの間に油層を形成する油圧回路の油圧と、前記球面座及び前記球面受けの間に形成される油層の表面積との積から求めることを特徴とする請求項10記載の揺動鍛造方法。
【請求項12】
前記昇降駆動手段は、前記下型を昇降可能に支持する油圧シリンダーと、該油圧シリンダーを駆動する油圧回路とを含むものであり、
該油圧回路から得られる圧力に基づく、前記ワークの成形中の荷重値を監視して、該荷重値が前記閾値よりも大きい所定値を上回るように前記昇降駆動手段を制御し、なおかつ、前記揺動回転駆動手段の油圧回路から得られる圧力に基づく、前記ワークの成形中の荷重値を監視することを特徴とする請求項10又は11記載の揺動鍛造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate