説明

損傷未然検知システム、及び傾斜検出装置

【課題】地中に埋設されている既設配管の周囲を工事する際に、既設配管を損傷してしまうことを未然に防ぐ損傷未然検知システムの提供。
【解決手段】第1無線通信ユニット13と3軸加速度センサ14と小型バッテリ15とを有する傾斜検出装置10を、地中に埋設される配管40から一定距離Aに埋設し、第2無線通信ユニット21を有する監視装置20を、第1無線通信ユニット13と第2無線通信ユニット21が通信可能な距離に設置し、傾斜検出装置10と監視装置20とが第1無線通信ユニット13及び第2無線通信ユニット21で通信し、3軸加速度センサ14が傾斜検出装置10の傾斜を検出した場合、又は監視装置20と傾斜検出装置10との通信が不能になった場合を、監視装置20が異常として検出し、監視装置20が情報局30に異常を通知する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、地中に埋設される配管の付近を工事する際に、誤って地中の配管を傷つけてしまうことを防止するため、配管の付近を掘削したことを検出し、配管が傷つけられる虞があることを通知する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
道路の補修や、配管の埋設工事といった地面を掘り下げる必要のある工事をする際に、予め埋設されている配管を破損してしまうようなことがある。誤って配管を破損した場合、その内部に流通するガスや水道水、あるいは埋設電線などを傷つける虞があり、ライフラインの遮断等を引き起こしかねない。
このため、配管の周囲で工事を行う際には、工事業者と管理会社とで予め打合せを行い、工事区域の規制を行ったり、立ち会いを行って工事範囲を確認したりといった措置が採られている。
しかしながら、事前に打ち合わせを行っても工事の日程の都合で予定よりも早く配管の周囲が掘削されてしまったり、同じ現場でも複数の拠点を同時に工事されることで立ち会いにいった監視者が、全ての拠点をカバーできなかったりと、立ち会いでカバーできる範囲にも限界があるため、埋設配管を損傷してしまう事故を防ぐ手法が望まれている。
【0003】
このような問題に鑑み、埋設配管にセンサを取り付けて接触を探知する方法などが、従来提案されてきた。
特許文献1には、地中構造物損傷防止のための検出装置に関する技術が開示されている。この技術によれば、ガス管等の地中構造物に沿って複数の振動センサを連続的に配設し、シールド掘削機や工事用機械等の振動特性を事前に記憶させたコンピュータに、振動センサからの信号を入力して、記憶データと比較することで振動の波形及び伝播パターンからシールド掘削機や工事用機械の位置を検出することが可能となる。
配管に振動センサを設けておけば、シールド掘削機や工事用機械が必要以上に近接してきた場合に、異常として検出し、管理会社に通知したり、周囲に警報を出したりするなどの手段を講じることが可能となる。
【0004】
また、特許文献2には、塗覆管の損傷遠隔監視システム及び塗覆管の損傷遠隔監視方法についての技術が開示されている。この技術によれば、塗覆管に振動センサを取り付けておき、塗覆管の近傍にある鉄骨にはノイズセンサを設け、この振動センサとノイズセンサからのデータを比較して異常を検出し、携帯電話などで異常を通報することが可能となる。
このため、塗覆管が損傷した場合には異常として通報され、直ちに応急処置等を施すことが可能となる。
【0005】
【特許文献1】特開平11−236841号公報
【特許文献2】特開2005−337808号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来技術には以下に記載するような問題点があった。
特許文献1の方法では、振動センサを用いて振動の波形や伝播パターンを解析することで、シールド掘削機や工事用機械の位置を検出する方式であるため、コンピュータに記憶されていない振動を発生するシールド掘削機や工事用機械の接近検出は不可能である。また、これらの機械の運転状態、及び埋設配管の周囲の環境によっても振動が変化する可能性があり、シールド掘削機や工事用機械の近接を検出できない場合がある。
また、振動は複合波となってしまうと、ノイズの除去などが困難であるため、実際にシールド掘削機や工事用機械の近接を捉えることは困難であると考えられる。
【0007】
このような問題の対策として、特許文献2では、塗覆管の近傍にある鉄骨にノイズセンサを設けて、信号を比較することでノイズの除去を行っている。こうすれば周波数成分のうち、塗覆管だけに発生する振動を検出して、塗覆管の破損を検出する精度を増すことが可能となる。
しかしながら、特許文献2の方法では、塗覆管が損傷した場合にその損傷を検出することは可能であるが、損傷自体を未然に検出することは困難である。振動センサが振動を検出した段階では、既に塗覆管に直接工事用機械が接触しており、塗覆管を破損してしまっている虞が高いためである。
【0008】
地中に埋設される配管は、損傷してしまっては困る重要な配管も少なくない。例えば、ガス管であれば損傷することによって周囲にガスが漏れ、可燃性のガスが雰囲気に放出されるため、作業者や近隣の地域に損害を与える虞があるし、ガス漏れを検知して即時供給を遮断すると、その先のユーザーへのガス供給を遮断してしまうという問題がある。ガス供給が遮断してしまうと、配管の損傷を補修しガス供給を復旧するまでユーザーはガスが使用できない状態となってしまう。基幹となるガス配管が損傷してしまった場合、多数のユーザーへのガス供給が止まってしまうので、多大な損害を発生する虞がある。
また、水道管や電気配線や光ファイバーを収める埋設管を傷つけた場合にも、同様の問題が発生し、復旧するまでの間、ユーザーに迷惑をかける虞がある。
【0009】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、地中に埋設されている既設配管の周囲を工事する際に、既設配管を損傷してしまうことを未然に防ぐ損傷未然検知システム及び傾斜検出装置を提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の問題点を解決するために本発明の損傷未然検知システムは次の構成を有している。
(1)外部と無線通信する第1無線通信ユニットと、傾斜を検出可能な傾斜センサと、前記第1無線通信ユニットと前記傾斜センサに電源を供給する内部電源と、を有する傾斜検出装置と、前記第1無線通信ユニットと通信可能な第2無線通信ユニットを有する監視装置と、前記監視装置と通信可能に設置される情報局と、を備え、
前記傾斜検出装置を、地中に埋設される配管から一定の距離に埋設し、前記監視装置を、前記第1無線通信ユニットと通信可能な距離に設置し、前記監視装置が、前記傾斜センサが前記傾斜検出装置の傾斜を検出した場合、又は前記傾斜検出装置が通信不能になった場合に、前記傾斜検出装置の異常として検出し、前記情報局に前記異常を通知することを特徴とする。
【0011】
(2)(1)に記載の損傷未然検知システムにおいて、
前記傾斜検出装置のボディ部は長細い形状に形成され、前記ボディ部の一端に備える頭頂部はアンテナの一部として地表に露出させ、前記ボディ部は地中に埋没させて、前記傾斜検出装置が埋設されることを特徴とする。
【0012】
(3)(1)又は(2)に記載の損傷未然検知システムにおいて、
前記傾斜検出装置は、前記配管が埋設される道路に、前記配管から一定の距離に空けられた縦穴に差し込まれることで埋設されることを特徴とする損傷未然検知システム。
【0013】
(4)(2)に記載の損傷未然検知システムにおいて、
前記傾斜検出装置の前記ボディ部の他端は円錐状に形成され、前記配管から一定の距離に前記頭頂部が地表に露出するように差し込まれることを特徴とする損傷未然検知システム。
【0014】
(5)(1)に記載の損傷未然検出システムにおいて、
前記第1無線通信ユニットと前記内部電源とが、前記傾斜検出装置のボディ部に内蔵され、前記ボディ部の一端に、通信線を介して前記傾斜センサが接続され、前記ボディ部の他端に備える頭頂部はアンテナの一部として地表に露出させ、前記ボディ部は地中に埋没させ、前記傾斜センサは、地中に埋設される前記配管付近に埋没させて、前記傾斜検出装置が埋設されていることを特徴とする。
【0015】
また、上記の問題点を解決するために本発明の傾斜検出装置は次の構成を有している。
(6)外部と無線通信する無線通信ユニットと、傾斜を検出可能な傾斜センサと、前記無線通信ユニットと前記傾斜センサに電源を供給する内部電源と、をボディ部に内蔵し、前記ボディ部の一端に備える頭頂部は地表に露出させ、前記ボディ部は地中に埋没されて設置されることを特徴とする。
【0016】
(7)外部と無線通信する無線通信ユニットと、前記無線通信ユニットに電源を供給する内部電源と、をボディ部に内蔵し、傾斜を検出可能な傾斜センサを、前記ボディ部の一端に通信線を介して接続され、前記ボディ部の他端にアンテナの一部として地表に露出させる頭頂部を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
上記構成を有する損傷未然検知システムの作用効果について説明する。
まず、(1)に記載する発明は、外部と無線通信する第1無線通信ユニットと、傾斜を検出可能な傾斜センサと、第1無線通信ユニットと傾斜センサに電源を供給する内部電源と、を有する傾斜検出装置と、第1無線通信ユニットと通信可能な第2無線通信ユニットを有する監視装置と、監視装置と通信可能に設置される情報局と、を備え、傾斜検出装置を、地中に埋設される配管から一定の距離に埋設し、監視装置を、第1無線通信ユニットと通信可能な距離に設置し、監視装置が、傾斜センサが傾斜検出装置の傾斜を検出した場合、又は傾斜検出装置が通信不能になった場合に、傾斜検出装置の異常として検出し、情報局に異常を通知するので、工事用機械が配管の周辺を掘削したことを、傾斜検出装置に備える傾斜センサが傾斜検出装置の傾斜を検出し、監視装置を介して情報局に通知することが可能になる。
これによって、未然に配管の損傷を防止することが可能になる。
【0018】
配管の損傷は、工事用機械で埋設配管の周囲を掘削し、配管に工事用機械が接触してしまうことで起こる。したがって、実際に工事区域の近くに配管が埋設されている場合には、配管から一定の距離に傾斜検出装置を埋設しておくことで、万が一その周囲が掘削されて傾斜検出装置が傾いたり壊れたりした際に、それを異常として検出することができる。
傾斜検出装置が、傾斜センサによって傾斜を検出することでのメリットは、誤検出が非常に少ないことにある。特許文献1や特許文献2に示すような振動センサを用いての検出の場合、工事現場の状況によっては非常に振動の多い場所や周囲の地盤の状況によっても振動の伝わり方が異なるが、傾斜を検出する場合は確実に傾斜検出装置が傾斜したことを確認しうる。
こうして、傾斜検出装置が傾斜を検出し、又は破損して通信不能になった場合には、監視装置がその異常を検出する。傾斜を検出した場合は、傾斜検出装置から第1無線ユニットを通じて監視装置に通知すればよい。また、傾斜検出装置が破損して機能しなくなった場合には、監視装置からの連絡に応答しないことを検出すれば判断しうる。このような監視装置から傾斜検出装置の応答を確認する交信は、数分間隔で行えば工事用機械が傾斜検出装置を破壊してから配管に至る前に、その異常を認識しうる。
【0019】
そして、これらの異常を監視装置が確認したら、直ちに埋設した配管を管理する会社などに設けられた情報局に通知する。
異常を受け取った情報局は、直ちに工事関係者に工事区域以外を工事している旨を伝えることで、配管の損傷を回避することが可能となる。
配管の損傷を未然に回避することができれば、配管を修復するコストもかからない上、工期の遅れの要因を取り除くことが可能となる。
【0020】
また、(2)に記載される発明は、(1)に記載の損傷未然検知システムにおいて、傾斜検出装置のボディ部は長細い形状に形成され、ボディ部の一端に備える頭頂部はアンテナの一部として地表に露出させ、ボディ部は地中に埋没させて、傾斜検出装置が埋設されるので、傾斜検出装置が細長い例えば円柱状や角柱状の形状をしており、比較的埋設が容易である。
地面が柔らかければ杭のような形状の傾斜検出装置を地面に打ち込めば良いし、地面が固ければ、ドリルで穴を空けて円柱状の傾斜検出装置を埋め込むという方法で埋設可能である。
また、傾斜検出装置のボディは細長いため場所を取らず、さらに細長いために周囲が掘削されて支えがなくなれば確実に倒れるため、傾斜センサで異常を検出する確実性が増す。
さらに、地表に露出する頭頂部をアンテナの一部としているので、第1無線通信ユニットが第2無線通信ユニットと交信することが容易となる。
【0021】
また、(3)に記載される発明は、(1)又は(2)に記載の損傷未然検知システムにおいて、傾斜検出装置は、配管が埋設される道路に、配管から一定の距離に空けられた縦穴に差し込まれることで埋設されるので、傾斜検出装置を容易に埋設することが可能となり、工事用機械で周囲を掘削した際に、単に縦穴に差し込まれているだけなので、半分以上縦穴が削り取られれば、傾斜検出装置は倒れて傾斜を検出し監視装置に異常として報告することができる。
【0022】
また、(4)に記載される発明は、(2)に記載の損傷未然検知システムにおいて、傾斜検出装置のボディ部の他端は円錐状に形成され、配管から一定の距離に頭頂部が地表に露出するように差し込まれるので、配管が埋設されている場所が未舗装地である場合に、地表からハンマなどを使って打ち込んで埋設することが可能となり、傾斜検出装置を容易に埋設することが可能となる。
【0023】
また、(5)に記載される発明は、(1)に記載の損傷未然検出システムにおいて、第1無線通信ユニットと内部電源とが、傾斜検出装置のボディ部に内蔵され、ボディ部の一端に、通信線を介して傾斜センサが接続され、ボディ部の他端に備える頭頂部はアンテナの一部として地表に露出させ、ボディ部は地中に埋没させ、傾斜センサは、地中に埋設される配管付近に埋没させて、傾斜検出装置が埋設されているものである。
傾斜センサをボディ部に通信線を介して離して追加することで、地中に埋設される配管付近に近づけて配設することが可能となる。
【0024】
地中に埋設される配管は、その道路の事情によって地表から数m程度の位置に埋設されることが多い。しかし、必ず同じ位置に埋設することが可能であるわけではなく、状況に応じて埋設深度は変化することになる。しかし、傾斜センサをボディ部から離すことで、配管の埋設深さ近くに傾斜センサを配置することが可能となる。
その結果、道路が横に掘られた場合にも対応することが可能となる。傾斜センサの付近を工事車両が掘削した場合や、通信線を工事車両が引っかけた場合などには、傾斜センサで異常を検出することが可能となるためである。
工事の際には、地面に対して垂直方向だけではなく横方向にも掘削される可能性がある。このため、横方向に掘削された場合であっても、近くが掘削されたことを検出できることにはメリットがある。
【0025】
また、上記構成を有する傾斜検出装置の作用効果について説明する。
まず、(6)に記載される発明は、外部と無線通信する無線通信ユニットと、傾斜を検出可能な傾斜センサと、無線通信ユニットと傾斜センサに電源を供給する内部電源と、をボディ部に内蔵し、ボディ部の一端に備える頭頂部は地表に露出させ、ボディ部は地中に埋没されて設置されることを特徴とするので、配管が埋設される付近に傾斜検出装置を埋設し、工事用機械が誤って傾斜検出装置を倒した場合に、傾斜検出装置は傾きを検出し、外部の監視装置と通信して、配管の付近を掘削していることを報知することが可能である。
【0026】
また、(7)に記載される発明は、外部と無線通信する無線通信ユニットと、無線通信ユニットに電源を供給する内部電源と、をボディ部に内蔵し、傾斜を検出可能な傾斜センサを、ボディ部の一端に通信線を介して接続され、ボディ部の他端にアンテナの一部として地表に露出させる頭頂部を備えるものである。
したがって、地表部分は掘削されずに地中部分を横堀された場合にも、配管の付近を掘削していることを検出して、配管の損傷を未然に防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明に係る損傷未然検知システムについて、具体化した形態をあげ、図面に基づいて詳細に説明する。
まず本発明の第1の実施形態について説明する。
(第1実施例)
図1に、第1実施例の損傷未然検知システム70のシステムイメージを表す概略図を示す。また、図2に、傾斜検出装置10の構成を表した模式図を示す。
損傷未然検知システム70は、舗装された道路50に埋設された配管40の近傍に、傾斜検出装置10を埋設し、傾斜検出装置10の近傍に監視装置20を設置し、監視装置20が情報局30と通信できる状態とすることで構成されている。
配管40はガス管や水道管、あるいは電線や光ファイバーなどを収容する収容管等の埋設配管であり、地中に埋設されている。
傾斜検出装置10は、図2に示すように、頭頂アンテナ部12と、第1無線通信ユニット13と、3軸加速度センサ14と、小型バッテリ15を備えている。第1無線通信ユニット13、3軸加速度センサ14及び小型バッテリ15は、筒状のボディ部11の内部に収められている。そして、ボディ部11の頭頂部を頭頂アンテナ部12で蓋をするように備えている。
【0028】
頭頂アンテナ部12は、配管40の種類を表示する表示ピンの機能を備えており、第1無線通信ユニット13のアンテナとしての役割も果たす。表示ピンには、表示プレートが設けられ地下埋設物を示している。
第1無線通信ユニット13は、監視装置20と通信するためのユニットであり、無線通信を行うことができる。無線は、例えば2.4GHz帯の電波を使用する第1無線通信ユニット13とすれば、見通し距離で10m程度は通信することが可能となる。
3軸加速度センサ14は、自身の傾きを検出することができるセンサであり、傾斜センサとして傾斜検出装置10に備えることで、傾斜検出装置10の傾きを知ることができる。傾斜検出装置10が一定以上の傾き以上になったことを3軸加速度センサ14は検出することが可能である。
3軸加速度センサ14の加速度を検出する方式は、ピエゾ抵抗式でも圧電型でもどちらでも良い。加速度センサは、入力軸方向に関して、運動加速度成分から重力加速度成分を差し引いた成分を測定可能な慣性センサであれば良く、この加速度センサによって傾斜検出装置10の傾きを検出する。
【0029】
小型バッテリ15は汎用バッテリで構わないが、小型でかつ傾斜検出装置10のシステム構成で3ヶ月程度は駆動可能な能力を備えるものが望ましい。また、小型バッテリ15は簡単に交換可能であるものとする。
第1無線通信ユニット13、3軸加速度センサ14及び小型バッテリ15を収納できるボディ部11は、円筒状であり完全防水が施されている。ボディ部11は、直径は20mm程度、長さは200mm程度の長細い形状である。ボディ部11の材質は何でも構わないが、ステンレスパイプや強化プラスチックのパイプのように、一定の圧力に耐えうる材質で、かつ腐食しにくいものが望ましい。
【0030】
このような傾斜検出装置10は、図1に示されるように現場に複数埋設して使用するため、ここでは第1傾斜検出装置10a、第2傾斜検出装置10b、第3傾斜検出装置10cと区別して説明することにする。なお、単に傾斜検出装置10と説明する場合は、これらのうち1つ若しくは全体に共通する内容を説明するものとする。
監視装置20は、傾斜検出装置10と通信するための第2無線通信ユニット21を備えている。監視装置20は例えば電柱や既設の構造物などに取り付けられ、電源を供給される構成としても良いし、バッテリを内部に備えて駆動する構成としても良い。第1実施例では、電柱に取り付けられ、バッテリを内蔵しない構成であるものとして説明する。
【0031】
情報局30は、工事を監視するために設けられたサーバであり、監視装置20からの情報を収集することができる。監視装置20が異常を通知してこれば、これを監視するオペレータに異常の発生とその場所を通知する機能を備える。監視装置20と情報局30は、有線でネットワークによって接続されている。ネットワークは、インターネットなどの既設のネットワークを使用しても良いし、独自のネットワークを構築しても良い。
また、監視装置20が内部にバッテリを備えて独立して設置される場合は、無線によって通信する方式でも良い。
なお、監視装置20についても、屋外に設置されるケースを考慮して完全防水にしておくことが望ましい。
【0032】
道路50に埋設される配管40は、道路50に沿って埋設されることが多い。これはメンテナンス性を考慮してのことであり、マンホールを設ける場合の都合や、万が一破損した場合に掘り返すといったことも、建物の下に埋設される場合に比べて容易である。したがって、複数の配管40が平行して設けられることになる。
そのため、新たに別の工事をするために工事車両45が、既に埋められている配管40の付近を工事するケースは多くなる。
【0033】
図3には、道路50の工事区域51に平行して配管40が埋設されている場合を表した概略平面図を示す。
配管40に平行して別の配管を埋設する場合には、図3に示すように工事区域51が決められ、工事進行方向52が決められる。したがって、傾斜検出装置10は、配管40からの一定距離Aだけ離れた位置に平行に埋設する。
一定距離Aは1m程度に設定されることが多い。このように傾斜検出装置10が埋設されることで、工事区域51からはみ出して工事車両45が地面を掘り返すことを検出することが可能となる。
【0034】
図4に、傾斜検出装置10の埋設方法を表した概略断面図を示す。
道路50に、掘削機55を用いて縦穴53を形成する。そして、傾斜検出装置10を縦穴53に差し込んで、道路50に傾斜検出装置10を設置する。
このように傾斜検出装置10は単純に縦穴53に差し込まれて道路50に備えられるため、図3に示される工事区域51をはみ出して工事車両45が道路50を掘った場合に、傾斜検出装置10の付近を掘ることで傾斜検出装置10は倒れる。
【0035】
第1実施例は上記に示すように構成されるため、以下のような作用を示す。
図3に示すように、傾斜検出装置10が配管40に沿って埋められていれば、工事区域51の指標になると共に、万が一誤って工事区域51を逸れて道路50を掘ってしまった場合には、傾斜検出装置10の周囲の道路50も崩してしまうことになる。
この結果、縦穴53に差し込まれるように設けられる傾斜検出装置10は、周りの道路50が掘削されて支えが無くなると、図1に示すように倒れ込む結果となる。図1では、第1傾斜検出装置10aが設けられている周囲を誤って掘削してしまった結果、第1傾斜検出装置10aが倒れている。
傾斜検出装置10と監視装置20は定期的に交信しており、第1傾斜検出装置10aは自分が倒れていることを検出して、監視装置20に異常として報知する。この結果を監視装置20は情報局30に連絡し、情報局30ではオペレータが適宜、現場の工事車両45のオペレータ又はその監督者に連絡を取り、工事区域51を外れて工事していることを通達し、配管40の損傷を回避する。
【0036】
また、例えば監視装置20に図示しないスピーカを設けて、傾斜検出装置10が異常を検出したことを通報する構成にしても良い。
情報局30を経由して工事車両45に警告するだけでは間に合わない可能性もあるため、監視装置20から何らかの異常を知らせるように工夫することで、より配管40の損傷を未然に防止する効果を高めることが出来る。
【0037】
従来、このような工事現場における配管40の損傷を監視する業務は、配管40を敷設した管理会社が派遣した監視員によって行われていた。しかし、監視員が目視で監視することには限界があるうえ、複数の拠点を監視することは相当数の監視員を動員する必要があるので、コスト的にも物理的にも限界があった。
よって、工事車両45のオペレータの判断に任せるケースが多くなり、損傷してしまった場合でも、連絡がなければそのことに気がつけないという現状があった。
【0038】
しかし、第1実施例のように傾斜検出装置10を配管40の付近に埋設し監視装置20で監視する形態であれば、管理会社に情報局30を設けておくことで、複数の工事現場の配管40を監視することが可能になる。
傾斜検出装置10の小型バッテリ15は、3ヶ月程度持つようにしてあるので、工事期間がその期間内で終われば問題ないし、工事期間が長引く場合でも小型バッテリ15の電圧低下に伴い小型バッテリ15を交換すれば良い。電圧低下情報についても第1無線通信ユニット13で監視装置20に通報し、情報局30がその情報を得れば、交換することが可能となる。
【0039】
傾斜検出装置10に備えられた3軸加速度センサ14は、傾斜検出装置10の傾きを検出可能である。そして、約15度以上の傾斜を検出した場合を異常域として設定しておけば、地震や他の要因による振動を拾う心配もない。
工事車両45によって傾斜検出装置10が掘り起こされてしまった場合には、傾斜検出装置10が細長く形成されていることにより倒れ、3軸加速度センサ14はその異常を検出することが可能である。また万が一、傾斜検出装置10を工事車両45が破損してしまった場合にも、監視装置20と連絡不能になった状態を異常と捉えて検出することが可能である。
傾斜検出装置10と監視装置20の通信は、数分間隔程度で行う。数分間隔で監視することで、工事車両45が配管40に到達してしまう前に検知することが可能である。もっとも、傾斜検出装置10が傾斜異常を捉えた場合には、監視装置20に即時通報するようにしておけば、即時対応が可能となる。
【0040】
また、1つの監視装置20に対して複数の傾斜検出装置10と通信するような構成である場合、第1実施例に示すように第1傾斜検出装置10a、第2傾斜検出装置10b、第3傾斜検出装置10cとして通信すれば、どの位置の傾斜検出装置10から異常が通知されたかも検出可能となる。
さらに、傾斜検出装置10に用いる第1無線通信ユニット13は、2.4GHz帯の周波数を使用する無線であるとしているが、この周波数帯の無線では、見通し距離が10m前後の通信距離しかカバーできない。このため、図3に示すような状態で傾斜検出装置10を設置し、その設置間隔を3m程度とした場合、1つの監視装置20あたり、3〜5個の傾斜検出装置10と通信可能だと考えられる。
しかし、傾斜検出装置10の第1無線通信ユニット13を相互に中継可能な機能を持たせてやれば、第1傾斜検出装置10aが監視装置20との通信可能範囲内にいなくとも、第2傾斜検出装置10bが監視装置20と通信可能範囲内にいることで、第1傾斜検出装置10aは第2傾斜検出装置10bを中継して監視装置20と通信が可能となり、広域をカバーするといった使用方法も実現可能である。
配管40は直線的に埋設されるため、このような中継機能を備えることも有効である。
【0041】
第1実施例は上記に示すように構成され作用するので、以下のような効果を示す。
まず第1に、3軸加速度センサ14で異常を検出するので、誤検出を少なくできるという点が挙げられる。
3軸加速度センサ14は、前述したように傾きを検出することのできるセンサである。例えばピエゾ抵抗式の加速度センサであれば、シリコンを母材にしてフレームとマス、ビームとからなる構造体のチップを搭載し、マスがセンサ自身の傾きに応じて傾き、ビームに歪みが生じることで、ビーム上に配置したピエゾ抵抗に応力が生じて傾きを検出する。
ピエゾ抵抗は結晶に機械的な外力が加えられると、結晶格子に歪みを生じて、半導体中のキャリア数や移動度が変化して抵抗値が変化する素子であり、抵抗値の変化を傾きとして判断することができる。
したがって、実際に傾きが生じれば正確にその傾きを検出することができる。
【0042】
配管40の周囲に、傾斜検出装置10を埋設しておけば、配管40が工事車両45に傷つけられる前に、周囲を掘削することで傾斜検出装置10が倒れるか破損する可能性が高い。これを傾斜検出装置10が検出することで、確実に異常として検出することが可能となる。
特許文献1や特許文献2のように振動センサを用いることも考えられるが、振動センサはそのセンサの特性上、振動を捉えた後、その振動が工事車両45によるものかどうかを分析する必要がある。振動は様々な要因で発生し、例えば近くを人が歩いただけでも振動は発生する。このような振動と工事車両45と区別するためには、事前に工事車両45の振動特性を例えば監視装置20や情報局30に記憶しておき、記憶データと検出データを比較分析した上で、工事車両45の接近による振動かどうかを判断する必要がある。
しかし、複数の震動源からの振動が複合した波として到達し、ここからノイズを除去して必要なデータを自動で取り出すことは、まだまだ技術的困難性が伴う上に相当の設備を必要とする。
つまり、振動センサでの工事車両45近接検出、確実性においても、設備コスト面においても、課題が多い。
これに比べて、3軸加速度センサ14を用いた傾斜検出装置10は、原理が単純である上に、確実に傾斜を検出することが可能であるため、確実性においても、コスト面においてもメリットが高いと考えられる。
【0043】
そして第2に、コスト的な負荷が軽く、対費用効果が大きいという点が挙げられる。
振動センサを用いたシステムと損傷未然検知システム70との比較については前述した通りであり、振動分析に用いる装置が不要な分だけコストダウンを図ることが可能である。
さらに、傾斜検出装置10を現場に埋設することで、監視員を派遣する労力を省きコストを削減できるほか、図3に示すように配管40より一定距離Aだけ離れた距離に傾斜検出装置10を埋設することで、未然に配管40の損傷を防ぐことが可能になる。
特に配管40が密集するような地点や、基幹の配管40のような重要な配管40の付近に傾斜検出装置10を設けておくことが望ましい。
このような重要拠点の配管40が損傷すると多大な損害を発生する必要がある。配管40がガス管であった場合には、内部を流通する可燃性気体が外部に漏れ出すと、引火によって爆発を起こす虞もあるため、二次災害を防ぐ意味でも第1実施例の損傷未然検知システム70は効果的である。
また、傾斜検出装置10の埋設方法は、図4に示すように道路50に掘削機55で縦穴53を空けて差し込むだけであるので、短時間で容易に傾斜検出装置10の埋設を行うことができる。
【0044】
以上に説明したように、第1実施例では以下に示すような、構成、作用、効果が得られる。
(1)外部と無線通信する第1無線通信ユニット13と、傾斜を検出可能な3軸加速度センサ14と、第1無線通信ユニット13と3軸加速度センサ14に電源を供給する小型バッテリ15と、を有する傾斜検出装置10と、第1無線通信ユニット13と通信可能な第2無線通信ユニット21を有する監視装置20と、監視装置20と通信可能に設置される情報局30と、を備え、傾斜検出装置10を、地中に埋設される配管40から一定の距離に埋設し、監視装置20を、第1無線通信ユニット13と通信可能な距離に設置し、監視装置20が、3軸加速度センサ14が傾斜検出装置10の傾斜を検出した場合、又は傾斜検出装置10が通信不能になった場合に、傾斜検出装置10の異常として検出し、情報局に異常を通知するので、傾斜検出装置10に備える3軸加速度センサ14が傾斜検出装置10の傾斜を検出することで、工事車両45が周辺を掘削したことを監視装置20に報告し、監視装置20から情報局30に、地中に埋設される配管40に工事車両45が近接していることを通知することが可能になる。
【0045】
配管40の損傷は、工事車両45で埋設された配管40の周囲を掘削することで起こる。したがって、実際に工事が行われて、掘削されては困る部分に傾斜検出装置10を埋設しておくことで、万が一その周囲が掘削されて傾斜検出装置10が傾いたり壊れたりした場合、この異常を監視装置20が検出して通報することで、未然に配管40の損傷を防ぐことができる。
傾斜検出装置10の確認は、数分おき程度の比較的短い間隔で頻繁に通信を行っていれば、通信が途切れたり、傾きを検出したりした後、早い段階で監視装置20に異常を知らせることが可能となる。この際に、振動でなく加速度で異常を検出するので傾斜検出装置10からの信号が途切れたり、傾いたりすれば確実に異常として検出することが可能である。
傾斜検出装置10は、配管40から一定距離Aに埋設されているので、配管40が損傷する前にそのような異常を検出することが可能で、直ちに工事関係者に工事区域以外を工事している旨を伝え、配管40の損傷を回避することが可能となる。
配管40の損傷を未然に回避することができれば、配管40を修復するコストもかからない上、工期の遅れの要因を取り除くことが可能となる。
【0046】
(2)(1)に記載の損傷未然検知システム70において、傾斜検出装置10のボディ部11は長細い形状であり、ボディ部11の先端に備える頭頂部に第1無線通信ユニット13の頭頂アンテナ部12を備え、頭頂部を地表に露出させ、ボディ部11を地中に埋没させて設置されるので、比較的埋設が容易である。
地面が固ければ、掘削機55で穴を空けて円柱状の傾斜検出装置10を埋め込むという方法で埋設可能である。
また、細長いため場所を取らず、さらに周囲が掘削されれば確実に倒れるため、3軸加速度センサ14で異常を検出する確実性が増す。
さらに、地表に露出する頭頂部に頭頂アンテナ部12を備えているので、第1無線通信ユニット13が第2無線通信ユニット21と交信することが容易となる。
【0047】
(3)(1)又は(2)に記載の損傷未然検知システム70において、傾斜検出装置10は、配管40が埋設される道路50に、配管40から一定の距離に空けられた縦穴53に差し込まれることで埋設されるので、傾斜検出装置10を容易に埋設することが可能となり、工事車両45で周囲を掘削した際に、単に縦穴53に差し込まれているだけなので、半分以上縦穴が削り取られれば、傾斜検出装置10は倒れて傾斜を検出し監視装置20に異常として報告することができる。
【0048】
(4)外部と無線通信する第1無線通信ユニット13と、傾斜を検出可能な3軸加速度センサ14と、第1無線通信ユニット13と3軸加速度センサ14に電源を供給する小型バッテリ15と、を細長い形状のボディ部11に内蔵し、ボディ部11の一端に備える頭頂アンテナ部12は地表に露出させ、ボディ部11は地中に埋没されて設置されることを特徴とする傾斜検出装置10であるので、配管40が埋設される付近に傾斜検出装置10を埋設し、工事車両45が誤って傾斜検出装置10を倒した場合に、傾斜検出装置10は傾きを検出し、外部の監視装置20と通信して、配管40の付近を掘削していることを報知することが可能である。
【0049】
次に、本発明の第2の実施形態について説明を行う。
(第2実施例)
第2実施例は、第1実施例の構成とほぼ同じであり、第1実施例の図3に示す工事形態と別の実施例を示すものである。
図5に、道路50の工事区域51に直交して配管40が埋設されている場合を表した概略平面図を示す。
第2実施例の工事区域51は、配管40と直交している。このため、配管40から一定距離A離れた両側に、第1傾斜検出装置10a及び第2傾斜検出装置10bを埋設し、監視領域54を設定する。工事区域51の幅が増えれば、傾斜検出装置10の本数を適宜増やせばよい。
【0050】
このように傾斜検出装置10を埋設して監視領域54を決めてやることで、工事を担当する業者と配管40の管理会社とで工事の日程を決めておき、監視領域54に差し掛かった場合のみ監視員を派遣するという体制を取ることも可能である。
また、監視領域54に差し掛かったことを情報局30で察知して、工事車両45のオペレータやその監督に、特別に注意するように連絡するようにしても良い。
【0051】
次に、本発明の第3の実施形態について説明を行う。
(第3実施例)
第3実施例は、第1実施例の構成とほぼ同じであり、第1実施例の図3に示す工事形態と別の実施例を示すものである。
ただし、第3実施例は未舗装地65での実施例を想定している。
図6に、第3実施例の損傷未然検知システム70のシステムイメージを表す概略図を示す。また、図7に表示杭型検出装置60の構成図を示す。
第3実施例の図6は、第1実施例の図1に対応し、未舗装地65での損傷未然検知システム70のイメージを示している。未舗装地65では掘削機55などで地面に穴を空ける必要がないため、表示杭型検出装置60のような形状の検出装置を用いる。
表示杭型検出装置60は、図7に示すように、杭型ボディ部61に頭頂アンテナ部12、第1無線通信ユニット13、3軸加速度センサ14及び小型バッテリ15が内蔵されている。そして、杭型ボディ部61の外形がくさび形になっており、杭型ボディ部61の頭頂部を、ハンマなどを用いて叩き、表示杭型検出装置60を未舗装地65に埋め込む。
【0052】
なお、未舗装地65には電柱がないことも考えられるので、例えばポスト状の監視装置20を埋め込み、第2無線通信ユニット21で情報局30とも無線通信可能にしておくことで、第1実施例の損傷未然検知システム70と同等に機能する。
なお、監視装置20への電源供給手段がなければ、監視装置20の内部に内蔵バッテリ22を備えておけばよい。
【0053】
以上に説明したように、第3実施例では以下に示すような、構成、作用、効果が得られる。
(1)第1無線通信ユニット13と3軸加速度センサ14と小型バッテリ15とを有する表示杭型検出装置60を、地中に埋設される配管40から一定距離Aに埋設し、第2無線通信ユニット21を有する監視装置20を、第1無線通信ユニット13と第2無線通信ユニット21が通信可能な距離に設置し、表示杭型検出装置60と監視装置20とが第1無線通信ユニット13及び第2無線通信ユニット21で通信し、3軸加速度センサ14が表示杭型検出装置60の傾斜を検出した場合、又は監視装置20と表示杭型検出装置60との通信が不能になった場合を、監視装置20が異常として検出し、監視装置20が情報局30に異常を通知するので、表示杭型検出装置60に備える3軸加速度センサ14が表示杭型検出装置60の傾斜を検出することで、工事車両45が周辺を掘削したことを監視装置20に報告し、監視装置20から情報局30に、地中に埋設される配管40に工事車両45が近接していることを通知することが可能になる。
【0054】
配管40の損傷は、工事車両45で埋設された配管40の周囲を掘削することで起こる。したがって、実際に工事が行われて、掘削されては困る部分に表示杭型検出装置60を埋設しておくことで、万が一その周囲が掘削されて表示杭型検出装置60が傾いたり壊れたりした場合、この異常を監視装置20が検出して通報することで、未然に配管40の損傷を防ぐことができる。
表示杭型検出装置60の確認は、数分おき程度の比較的短い間隔で頻繁に通信を行っていれば、通信が途切れたり、傾きを検出したりした後、早い段階で監視装置20に異常を知らせることが可能となる。この際に、振動でなく加速度で異常を検出するので表示杭型検出装置60からの信号が途切れたり、傾いたりすれば確実に異常として検出することが可能である。
表示杭型検出装置60は、配管40から一定距離Aに埋設されているので、配管40が損傷する前にそのような異常を検出することが可能で、直ちに工事関係者に工事区域以外を工事している旨を伝え、配管40の損傷を回避することが可能となる。
配管40の損傷を未然に回避することができれば、配管40を修復するコストもかからない上、工期の遅れの要因を取り除くことが可能となる。
【0055】
(2)(1)に記載の損傷未然検知システム70において、表示杭型検出装置60の杭型ボディ部61は長細い形状であり、杭型ボディ部61の先端に備える頭頂部に第1無線通信ユニット13の頭頂アンテナ部12を備え、頭頂部を地表に露出させ、杭型ボディ部61を地中に埋没させて設置されるので、比較的埋設が容易である。
地面が柔らかければ、表示杭型検出装置60をハンマなどで打ち込んで埋め込むという方法で埋設可能である。
また、細長いため場所を取らず、さらに周囲が掘削されれば確実に倒れるため、3軸加速度センサ14で異常を検出する確実性が増す。
さらに、地表に露出する頭頂部に頭頂アンテナ部12を備えているので、第1無線通信ユニット13が第2無線通信ユニット21と交信することが容易となる。
【0056】
(3)(2)に記載の損傷未然検知システム70において、表示杭型検出装置60の杭型ボディ部61の他端は円錐状に形成され、配管から一定の距離に頭頂アンテナ部12が地表に露出するように差し込まれるので、配管40が埋設されている場所が未舗装地である場合に、地表からハンマなどを使って打ち込んで埋設することが可能となり、表示杭型検出装置60を容易に埋設することが可能となる。
【0057】
次に、本発明の第4の実施形態について説明を行う。
(第4実施例)
第4実施例は、第1実施例の構成とほぼ同じであるが、傾斜検出装置10の構成が若干異なる。以下、構成の異なる部分について説明する。
図8に、第4実施例の傾斜検出装置80の概略構成図を示す。
傾斜検出装置80は、円筒形ボディ81の内部に無線通信ユニット13と小型バッテリ15とを備えている。円筒形ボディ81は円筒形状で、直径は60mm程度、長さは50mm程度である。
円筒形ボディ81の上面には、頭頂アンテナ部12が設けられている。円筒形ボディ81の下面には第2傾斜センサ83が接続されている。第2傾斜センサ83は第1実施例の3軸加速度センサ14に代替する機能を有する傾斜検出センサである。円筒形ボディ81の内部には第1傾斜センサ84を備えている。なお、第1傾斜センサ84は省略しても良い。
【0058】
第2傾斜センサ83は円筒形ボディ81と通信線82で接続されている。この通信線82は直径1mm程度の細い導線であり、第2傾斜センサ83に小型バッテリ15からの電源を供給するとともに、円筒形ボディ81から第2傾斜センサ83を吊り下げる機能を備えている。
図9に、傾斜検出装置80を用いた損傷未然検知システム70のシステムイメージの概略を示す。
傾斜検出装置80は、道路50に埋設される配管40の上部、或いはその付近に埋設される。そして、傾斜検出装置80に備える第2傾斜センサ83は、配管40の付近に埋設される。
実際に傾斜検出装置80を埋設する際には、道路50にドリル等で穴をあける。そして、第2傾斜センサ83を配管40付近まで垂らし、円筒形ボディ81に備える頭頂アンテナ部12が地表に出るように配置される。
なお、図9では、配管40の真上に傾斜検出装置80を配置しているが、より安全性を高めるために、図3や図5に示されるような埋設方法を採っても良い。傾斜検出装置80をたくさん必要とするが、より検出の安全性を高めることに貢献する。また、図9では配管40の上部に第2傾斜センサ83を持ってきているが、図3や図5のような埋設位置に傾斜検出装置80を埋設するのであれば、配管40の側面にあたる部分に第2傾斜センサ83を配置しても良い。
【0059】
この際に、道路50にあける穴は段付き孔が望ましい。円筒形ボディ81を挿入する穴は50mm程度と殆ど深さは必要ないが、第2傾斜センサ83を挿入する穴は、配管40付近まで近づけることが望ましい。
配管40は地表から数m程度の位置に埋設されることが多いので、その分まで第2傾斜センサ83を近づける。配管40の埋設位置及び埋設深さは事前に把握されているので、この作業は配管40を傷つけずに行うことが可能である。
なお、配管40の埋設位置は道路50によって異なるので、円筒形ボディ81に接続される通信線82の長さは調節可能な機構を備えておくのが望ましい。
【0060】
第4実施例の傾斜検出装置80は、このように道路50に埋設されるので、以下のような効果を奏する。
まず、第1の効果として、道路50の横堀にも対応することができる点が挙げられる。
損傷未然検知システム70に備えられる傾斜検出装置80のうち、第1無線通信ユニット13と小型バッテリ15とが、傾斜検出装置80の円筒形ボディ81に内蔵され、円筒形ボディ81の一端に、通信線82を介して第2傾斜センサ83が接続され、円筒形ボディ81の他端に備える頭頂アンテナ部12はアンテナの一部として地表に露出させ、円筒形ボディ81は地中に埋没させ、第2傾斜センサ83は、地中に埋設される配管40付近に埋没させて、傾斜検出装置80が埋設されているものである。
【0061】
第2傾斜センサ83が、通信線82を介して円筒形ボディ81に取り付けられているため、地中に埋設される配管40付近に近づけて配設することが可能となり、他工事による横掘りが行われても、傾斜検出装置80によって異常を検出することが可能となる。
道路50の工事を行う際には、基本的には道路50の表面のアスファルトやコンクリートなどの既設物を剥がして工事を行う。しかしながら道路50上に設けられた構造物によっては剥離できない場合もあり、図9に示すように地面に対して水平方向に掘り進むこともある。
このような場合、道路50の地表は掘削されないために、第1実施例の傾斜検出装置10では配管40の損傷を未然に検出できない可能性がある。
【0062】
しかしながら、傾斜検出装置80は第2傾斜センサ83を円筒形ボディ81から分離して、配管40付近に埋設していることで、第2傾斜センサ83を直撃するか、通信線82に引っかけて工事が行われれば、異常を検出することが可能である。
工事は現場の作業者の裁量によって進められることが多く、実際には掘削してはいけない範囲を掘削するようなケースも考えられる。横堀りに関しても、工事の都合で行われる可能性があるので、このような場合にも対応できる構造であれば、メリットが高い。
当然ながら、第1実施例に示したようなケースの掘削にも対応することが可能である。
【0063】
また、第2の効果として、舗装表面が剥離された場合にも対応可能である。
第4実施例の傾斜検出装置80には、円筒形ボディ81の内部にも第1傾斜センサ84が内蔵されているので、道路50の表面に舗装されている道路が剥離された際にも、異常を検出しうる。
円筒形ボディ81の長さが短いため、舗装面の剥離の際に円筒形ボディ81が傾斜するような位置の剥離が行われれば、第1傾斜センサ84がこの剥離を感知して異常を検出することが可能である。
【0064】
道路50の舗装の剥離は、工事の初期段階で行われるため、実際に掘削している際に異常を検出する場合よりも低リスクでの異常検出をすることができる。
すなわち、他工事業者が誤って道路50の舗装剥離を行った場合、傾斜検出装置80に備えられる第1傾斜センサ84で異常を検出することが可能である。この場合は、実際には地面が掘削されていない状況での検出であるので、早い段階で異常検出ができるためより確実に配管40の損傷を回避することが可能である。
【0065】
なお、第4実施例の第1傾斜センサ84に関しては省略しても良い。傾斜検出装置80は現場に複数設置する必要がある。したがって、本来は第1傾斜センサ84及び第2傾斜センサ83を両方備えることが好ましいが、傾斜検出装置80単体のコストを抑えたいという要望がある。
配管40付近において、主に横堀りを警戒しなければならないような場合には、第2傾斜センサ83を備えるだけで足りると考えられる。
【0066】
これは、傾斜検出装置80の円筒形ボディ81に大きな外力を受けた場合、第2傾斜センサ83が円筒形ボディ81と離れていたとしても、その外力を受けたことを検出が可能であるためである。円筒形ボディ81が動けば、通信線82で接続される第2傾斜センサ83も動くことになるため、第2傾斜センサ83での傾斜の検出によって周囲が掘削されたかどうかを判断が可能となる。
また、通信線82が細い導線であるため、通信線82を直接工事車両がひっかけたり、円筒形ボディ81に大きな外力が加わったりした場合には、通信線82が切断することも考えられるが、このような切断を検出することでも異常検出が可能となる。
【0067】
次に、本発明の第5の実施形態について説明を行う。
(第5実施例)
図10に、第5実施例の傾斜検出装置80の概略構成図を示す。
第5実施例の傾斜検出装置80には、第2傾斜センサ83及び通信線82を備えていない点を除けば第4実施例の構成と同じである。
このように構成することで、第5実施例の傾斜検出装置80は、道路50の表層剥がしに特化することが可能となる。
【0068】
円筒形ボディ81は、第1実施例乃至第3実施例のボディ部に比べて短い。その代わりに、円筒形ボディ81の外形は太く形成されている。傾斜検出装置80の外形を太くすることで、小型バッテリ15の容積を稼ぐことができる。また、円筒形ボディ81が短いことで、道路50が舗装されている場合など、舗装を剥がした段階で検出できる可能性が高くなる。
第1実施例のように、ボディ部11を長くすると、道路50の舗装を剥がしただけでは倒れない深さまで埋まってしまい、感知できなくなる虞もある。したがって、円筒形ボディ81のようなショートサイズのボディの方が、道路50の塗装剥がしの時点では検出し易いという利点がある。
【0069】
以上において、実施例に即して説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更して適用できることは言うまでもない。
例えば、傾斜検出装置10又は杭型ボディ部61の形状を変更することを妨げないし、傾斜検出装置10の寸法を例示しているが、これに限定されるものではない。
また、図3及び図5に示される傾斜検出装置10及び表示杭型検出装置60の配置は、あくまで一例であって、配管40の埋設状況と工事区域51の位置によって、傾斜検出装置10及び表示杭型検出装置60の埋設位置を変更することを妨げない。
【0070】
また、第1実施例乃至第3実施例の傾斜センサは3軸加速度センサ14を用いるとしているが、別の方式で傾斜を検出する装置を損傷未然検知システム70に用いても良い。
また、第1実施例乃至第3実施例において、傾斜検出装置10と監視装置20が通信し、異常を情報局30に通知することとしているが、情報局30を例えば工事監督者として、工事監督者に無線通信端末を持たせ、直接通知しても良い。
また、第1実施例乃至第3実施例において、傾斜検出装置10及び監視装置20には、例えば2.4GHz帯の電波を用いて通信するとしているが、特にこれに限定されるものではなく、通信距離も10mに限定されるものではない。したがって、他の周波数帯を用いても良いし、出力を変えるなどの手段で通信距離を伸ばすことも妨げない。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】第1実施例の、損傷未然検知システム70のシステムイメージを表す概略図を示している。
【図2】第1実施例の、傾斜検出装置10の構成を表した模式図を示している。
【図3】第1実施例の、道路50の工事区域51に平行して配管40が埋設されている場合を表した概略平面図を示している。
【図4】第1実施例の、傾斜検出装置10の埋設方法を表した概略断面図を示している。
【図5】第2実施例の、道路50の工事区域51に直交して配管40が埋設されている場合を表した概略平面図を示している。
【図6】第3実施例の、損傷未然検知システム70のシステムイメージを表す概略図を示している。
【図7】第3実施例の、表示杭型検出装置60の構成図を示している。
【図8】第4実施例の、傾斜検出装置80の概略構成図を示している。
【図9】第4実施例の、傾斜検出装置80を用いた損傷未然検知システム70のシステムイメージの概略を示している。
【図10】第5実施例の、傾斜検出装置80の概略構成図を示している。
【符号の説明】
【0072】
10 検出装置
10a 第1検出装置
10b 第2検出装置
10c 第3検出装置
11 ボディ部
12 頭頂アンテナ部
13 第1無線通信ユニット
14 3軸加速度センサ
15 小型バッテリ
20 監視装置
21 第2無線通信ユニット
22 内蔵バッテリ
30 情報局
40 配管
45 工事車両
50 道路
51 工事区域
52 工事進行方向
53 縦穴
54 監視領域
55 掘削機
60 表示杭型検出装置
61 杭型ボディ部
65 未舗装地
70 損傷未然検知システム


【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部と無線通信する第1無線通信ユニットと、
傾斜を検出可能な傾斜センサと、
前記第1無線通信ユニットと前記傾斜センサに電源を供給する内部電源と、
を有する傾斜検出装置と、
前記第1無線通信ユニットと通信可能な第2無線通信ユニットを有する監視装置と、
前記監視装置と通信可能に設置される情報局と、
を備え、
前記傾斜検出装置を、地中に埋設される配管から一定の距離に埋設し、
前記監視装置を、前記第1無線通信ユニットと通信可能な距離に設置し、
前記監視装置が、
前記傾斜センサが前記傾斜検出装置の傾斜を検出した場合、
又は前記傾斜検出装置が通信不能になった場合に、
前記傾斜検出装置の異常として検出し、前記情報局に前記異常を通知することを特徴とする損傷未然検知システム。
【請求項2】
請求項1に記載の損傷未然検知システムにおいて、
前記傾斜検出装置のボディ部は長細い形状に形成され、
前記ボディ部の一端に備える頭頂部はアンテナの一部として地表に露出させ、前記ボディ部は地中に埋没させて、前記傾斜検出装置が埋設されることを特徴とする損傷未然検知システム。
【請求項3】
請求項1に記載の損傷未然検出システムにおいて、
前記第1無線通信ユニットと前記内部電源とが、前記傾斜検出装置のボディ部に内蔵され、
前記ボディ部の一端に、通信線を介して前記傾斜センサが接続され、
前記ボディ部の他端に備える頭頂部はアンテナの一部として地表に露出させ、前記ボディ部は地中に埋没させ、
前記傾斜センサは、地中に埋設される前記配管付近に埋没させて、前記傾斜検出装置が埋設されていることを特徴とする損傷未然検知システム。
【請求項4】
外部と無線通信する無線通信ユニットと、
傾斜を検出可能な傾斜センサと、
前記無線通信ユニットと前記傾斜センサに電源を供給する内部電源と、
をボディ部に内蔵し、
前記ボディ部の一端に備える頭頂部は地表に露出させ、前記ボディ部は地中に埋没されて設置されることを特徴とする傾斜検出装置。
【請求項5】
外部と無線通信する無線通信ユニットと、
前記無線通信ユニットに電源を供給する内部電源と、
をボディ部に内蔵し、
傾斜を検出可能な傾斜センサを、前記ボディ部の一端に通信線を介して接続され、
前記ボディ部の他端にアンテナの一部として地表に露出させる頭頂部を備えることを特徴とする傾斜検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−281554(P2008−281554A)
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−95031(P2008−95031)
【出願日】平成20年4月1日(2008.4.1)
【出願人】(000221834)東邦瓦斯株式会社 (440)
【Fターム(参考)】