搬送ローラーの製造方法、搬送ユニット及び印刷装置
【課題】記録媒体等の被搬送物を高い精度で搬送し且つ位置決めできる搬送ローラーの製造方法、搬送ユニット及び印刷装置を提供すること。
【解決手段】本発明は、金属板70の一対の端面74、75を対向させ円筒状に形成された、記録媒体を搬送する搬送ローラーの製造方法であって、一対の端面74、75のうち少なくとも一方の端面74と、金属板70の一方の板面71aとで形成される角度αが90°より小さくなるように調整する調整工程と、一方の板面71aが外周面となるように金属板70を曲げて、一対の端面74、75の少なくとも外周面側を互いに当接させて円筒状に形成する曲げ工程と、を有するという方法を採用する。
【解決手段】本発明は、金属板70の一対の端面74、75を対向させ円筒状に形成された、記録媒体を搬送する搬送ローラーの製造方法であって、一対の端面74、75のうち少なくとも一方の端面74と、金属板70の一方の板面71aとで形成される角度αが90°より小さくなるように調整する調整工程と、一方の板面71aが外周面となるように金属板70を曲げて、一対の端面74、75の少なくとも外周面側を互いに当接させて円筒状に形成する曲げ工程と、を有するという方法を採用する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送ローラーの製造方法、搬送ユニット及び印刷装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、シート状の記録媒体上に情報を印刷する印刷装置が用いられており、この印刷装置には記録媒体を搬送する搬送ユニットが設けられている。この搬送ユニットは、記録媒体を搬送する搬送ローラーを有している。搬送ローラーには中実の棒状部材が一般的に使用されている。
記録媒体は搬送ローラーに保持され、搬送ローラーが回転することで搬送される。また、この搬送と共に記録媒体に対して印刷が行われるため、適正な印刷のためには、記録媒体を高い精度で搬送し且つ位置決めする必要がある。
【0003】
一方、中実の材料は重量およびコストが嵩むという課題があるため、特許文献1には、金属板を曲げ加工して円筒状に成形する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−289496号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来技術を印刷装置の搬送ローラーに適用しようとした場合には、下記のような課題があった。
金属板は打ち抜き加工等を用いて成形されることから、金属板の端面と板面とはほぼ直交し、板面の幅方向での長さは表裏共に略同一となっている。そして、この金属板を曲げ加工して円筒状の搬送ローラーを成形した場合、外周は内周よりも長い周長が必要となることから、金属板の一対の端面が互いに接する接続部においては、一対の端面はその内周面側で互いに接し、外周面側には中心軸方向で延びる隙間が形成されていた。
このような搬送ローラーを用いて記録媒体を搬送すると、上記隙間の部分では搬送ローラーは記録媒体を保持できないため、記録媒体を適切に搬送することが難しくなり、高い精度での搬送及び位置決めができない虞があった。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、記録媒体等の被搬送物を高い精度で搬送し且つ位置決めできる搬送ローラーの製造方法、搬送ユニット及び印刷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を採用する。
本発明は、金属板の一対の端面を対向させ円筒状に形成された、記録媒体を搬送する搬送ローラーの製造方法であって、一対の端面のうち少なくとも一方の端面と、金属板の一方の板面とで形成される角度が90°より小さくなるように調整する調整工程と、一方の板面が外周面となるように金属板を曲げて、一対の端面の少なくとも外周面側を互いに当接させて円筒状に形成する曲げ工程と、を有するという方法を採用する。
このような方法を採用する本発明では、一対の端面は少なくとも外周面側で互いに当接しているため、外周面側に露出している隙間等は存在せず、搬送時に搬送ローラーが回転してもその外周面は記録媒体と常に接触している。
【0008】
また、本発明は、調整工程では、一対の端面をいずれも調整するという方法を採用する。
このような方法を採用する本発明では、調整工程において一対の端面のそれぞれに対して角度を付けるための加工を施す。そして、例えば端面近傍に加工による応力等が生じた場合であっても、その応力等は一対の端面のいずれにも生じているため、金属板を曲げ加工して成形された搬送ローラーにおいて、応力等の不均一性を原因とする歪みや変形等を抑制することが可能となる。
【0009】
また、本発明は、調整工程では、一方の端面のみを調整するという方法を採用する。
このような方法を採用する本発明では、金属板の一対の端面が周方向に関して所定の方向に傾いた形状となる。そして、この傾きに沿う方向で搬送ローラーを回転させて記録媒体を搬送することで、一対の端面の接続部にはそれらの端面が離間しにくい方向で力が加えられるため、搬送に伴って生じる搬送ローラーの歪みや変形等を抑制することが可能となる。
【0010】
また、本発明は、調整工程では、端面の、搬送ローラーにおける記録媒体の保持領域に対応する箇所を調整するという方法を採用する。
このような方法を採用する本発明では、端面に対して加工を施す範囲が限定されるため、端面近傍に生じる加工による応力等が減少する。そのため、金属板を曲げ加工して成形された搬送ローラーにおいて、応力等を原因とする歪みや変形等を抑制することが可能となる。
【0011】
また、本発明は、搬送ローラーの内周面に設けられ中心軸方向に延在する溝部を少なくとも1つ形成する溝部形成工程をさらに有するという方法を採用する。
本発明では、端面への加工により生じる応力等や一対の端面が少なくとも外周面側で互いに接している形状などから、搬送ローラーの振れ(中心軸方向に対する湾曲)が生じやすくなる虞がある。そこで、上記構成を採用することで、振れの原因となる応力や復元力等を緩和することができ、振れを抑制することが可能となる。
【0012】
また、本発明は、溝部が、中心軸を挟んで、互いに当接する一対の端部とは対称の位置に設けられているという方法を採用する。
本発明では、曲げ工程において金属板を曲げ加工して円筒状に形成していることから、搬送ローラーにおける振れは、一対の端面が互いに接する接続部と搬送ローラーの中心軸とを共に含む平面内で湾曲して生じる虞がある。そこで、上記構成では、溝部が中心軸を挟んで接続部とは対称の位置に設けられるため、上記振れを効果的に抑制することが可能となる。
【0013】
また、本発明は、曲げ工程において、一対の端面の内周面側は隙間を有するという方法を採用する。
このような方法を採用する本発明では、一対の端面は外周面側で互いに接している一方で、内周面側には隙間を有しているため、調整工程において端面と板面とで形成される角度を厳格に調整する必要がない。よって、調整工程における調整を容易に行うことができ、調整の手間がかからない。
【0014】
また、本発明の搬送ユニットは、請求項1から7のいずれか一項に記載の製造方法により製造された搬送ローラーを備えるという構成を採用する。
このような構成を採用する本発明では、一対の端面は外周面側で互いに当接しているため、外周面側に露出している隙間や凹部等は存在せず、搬送ローラーが回転してもその外周面は被搬送物と常に接触している。
【0015】
また、本発明の印刷装置は、請求項1から7のいずれか一項に記載の製造方法により製造された搬送ローラーを備えるという構成を採用する。
このような構成を採用する本発明では、一対の端面は外周面側で互いに当接しているため、外周面側に露出している隙間や凹部等は存在せず、搬送ローラーが回転してもその外周面は被搬送物と常に接触している。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】プリンター1の全体構成図である。
【図2】搬送部3及び排紙部4の構成を示す概略図である。
【図3】搬送ローラー31の構成を示す概略図である。
【図4】搬送ローラー31を成形する工程を示すフロー図である。
【図5】大型金属板9の平面図である。
【図6】矩形板70の平面図である。
【図7】矩形板70の一対の端面を調整した後の、図6におけるC−C線視断面図である。
【図8】矩形板70に対する曲げ加工の前半の工程を示す概略図である。
【図9】矩形板70に対する曲げ加工の後半の工程を示す概略図である。
【図10】ローラー本体71を枠部92から切り離す工程を示す概略図である。
【図11】第2搬送ローラー31Sの構成を示す概略図である。
【図12】第3搬送ローラー31Tの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明における、搬送ローラーの製造方法に係る実施の形態を、図1から図12を参照して説明する。なお、以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更している。
以下の説明では、印刷装置として、インクを記録媒体である紙等に噴射し、文字や画像等の情報を記録するインクジェット式のプリンター(以下、単に「プリンター」と称する)の例を示す。
【0018】
まず、本実施形態におけるプリンター(印刷装置)1の構成を、図1を参照して説明する。
図1は、本実施形態におけるプリンター1の全体構成図である。
プリンター(印刷装置)1は、記録媒体である紙等にインクを噴射し、文字や画像等の情報を記録する印刷装置である。プリンター1は、給紙部2と、搬送部(搬送ユニット)3と、排紙部4と、ヘッド部5と、制御部CONTとを有している。
【0019】
給紙部2は、記録媒体である複数枚の記録紙(記録媒体)Pを保持すると共に、記録紙Pを搬送部3に向けて供給するものであって、給紙トレー21と、給紙ローラー22とを有している。
給紙トレー21は、複数枚の記録紙Pを保持するものであり、水平面との間に所定の角度(45°程度)を形成して設けられている。なお、記録紙Pとしては、インクによる印刷が可能なシート状の記録媒体が用いられ、普通紙、コート紙、OHP(オーバーヘッドプロジェクター)用シート、光沢紙及び光沢フィルム等が用いられる。
【0020】
給紙ローラー22は、回転することで記録紙Pを搬送部3に向けて供給するローラーであり、給紙トレー21の搬送部3側に設けられている。なお、給紙ローラー22の外周面と対向する位置には不図示の分離パッドが設けられており、該分離パッドと給紙ローラー22とが協働して記録紙Pを一枚ずつ搬送部3に供給することができる。
【0021】
搬送部3は、給紙部2から供給された記録紙Pを排紙部4に向けて搬送するものであり、且つ記録紙Pに対する印刷動作が行われる箇所である。搬送部3は、搬送ローラー31と、従動ローラー32と、プラテン33と、ダイヤモンドリブ34と、駆動部6(図2参照)とを有している。
搬送ローラー31は、回転することで記録紙Pを所定の印刷位置に正確に搬送するためのローラーであって、水平面内且つ記録紙Pの搬送方向と直交する方向で延在し、円筒状に形成された円筒軸である。搬送ローラー31は、搬送部3に設けられ略U字型の一対の軸受(図示せず)に回転自在に軸支され、駆動部6の駆動により回転する。なお、搬送ローラー31の詳細は後述する。
【0022】
従動ローラー32は、略円柱状の部材であって、搬送ローラー31の軸方向に沿って間隔を空けて複数配置されている。また、従動ローラー32は、後述する搬送ローラー31の高摩擦層72(図3参照)に対向する位置に回転自在に設けられている。従動ローラー32には不図示の付勢バネが設けられており、この付勢バネの付勢力によって、従動ローラー32は搬送ローラー31の高摩擦層72に付勢されて接触している。このため、従動ローラー32は、搬送ローラー31の回転動作に従動して回転する。なお、従動ローラー32の外周面には、高摩擦層72との摺動による摩耗・損傷を緩和するため、例えばフッ素樹脂塗装等の低摩耗処理が施されている。
【0023】
プラテン33は、ヘッド部5による記録紙Pへの印刷を行うときに、記録紙Pを下方から支持する箇所であり、水平面に略平行する上面を有している。
ダイヤモンドリブ34は、プラテン33の上面から上方に向けて突出する突部であり、搬送ローラー31の軸方向に沿って間隔を空けて複数配置されている。また、ダイヤモンドリブ34の頂面は、水平面と略平行に形成されており、この頂面によって印刷時の記録紙Pが下方から支持される。
【0024】
排紙部4は、搬送部3から印刷後の記録紙Pを排出するものであって、排紙ローラー41と、排紙ギザローラー42とを有している。排紙ローラー41と排紙ギザローラー42とは、互いに相反する方向で回転でき、この回転によって記録紙Pを引き出して排出する。
【0025】
ヘッド部5は、搬送部3に載置されている記録紙Pに対してインクを噴射するものであって、噴射ヘッド51と、キャリッジ52とを有している。
噴射ヘッド51は、制御部CONTの指示に従いインクを噴射する機器であって、その不図示の噴射口はダイヤモンドリブ34の頂面に対向して設けられている。キャリッジ52は、その下方に噴射ヘッド51を保持するものであって、搬送ローラー31の軸方向で往復移動自在に設けられている。また、キャリッジ52には、制御部CONTの指示に従い、キャリッジ52を往復移動させる不図示の駆動部が連結されている。
【0026】
次に、搬送ローラー31を回転駆動させる構成について、図2を参照して説明する。
図2は、搬送部3及び排紙部4の構成を示す概略図であって、(a)は平面図、(b)は(a)のA矢視図である。
【0027】
上述したように、搬送部3は駆動部6を有している。駆動部6は、搬送ローラー31を回転駆動させるものであって、モーター61と、ピニオンギア62とを有している。
モーター61は、制御部CONTの指示に従い搬送ローラー31を回転させる電動機である。すなわち、制御部CONTがモーター61を制御して駆動させ、搬送ローラー31の回転及び記録紙Pの正確な搬送を実現している。ピニオンギア62は、モーター61の出力軸に一体的に接続されているギアである。
【0028】
搬送ローラー31には、第1駆動ギア35と、第2駆動ギア36と、第3駆動ギア37とが設けられている。
第1駆動ギア35は、搬送ローラー31を回転させるためのギアであって、搬送ローラー31における駆動部6設置側の端部に、圧入によって一体的に接続されている。また、第1駆動ギア35はピニオンギア62と互いに噛合しており、ピニオンギア62及び第1駆動ギア35を介してモーター61の駆動力が搬送ローラー31に伝達され、搬送ローラー31が回転する構成となっている。
【0029】
第2駆動ギア36は、モーター61の駆動力を排紙ローラー41に伝達するためのギアであって、第1駆動ギア35よりも小さい径を有し、第1駆動ギア35に隣接して配置されている。また、第2駆動ギア36は、圧入によって搬送ローラー31に一体的に接続されている。
第3駆動ギア37は、搬送ローラー31の回転駆動力を不図示の他の機器に伝達するためのギアであって、搬送ローラー31の第1駆動ギア35と逆側の端部に、圧入によって一体的に接続されている。なお、圧入を用いず、搬送ローラー31及び第3駆動ギア37のそれぞれに回り止め部(ピンや切欠部等)を設けることで、第3駆動ギア37が搬送ローラー31と共に回転する構成としてもよい。
【0030】
排紙ローラー41における駆動部6側の端部には、排紙駆動ギア43が一体的に設けられている。また、排紙駆動ギア43と第2駆動ギア36との間には、中間ギア44が設けられ、中間ギア44は第2駆動ギア36及び排紙駆動ギア43のそれぞれと噛合している。すなわち、第2駆動ギア36、中間ギア44及び排紙駆動ギア43を介して、モーター61の駆動力が排紙ローラー41に伝達され、排紙ローラー41が回転する構成となっている。
【0031】
次に、搬送ローラー31の構成を、図3を参照して詳細に説明する。
図3は、搬送ローラー31の構成を示す概略図であって、(a)は側面図、(b)は(a)のB−B線視断面図、(c)は(b)における接続部76近傍の拡大図である。
搬送ローラー31は、所定の方向で延在し円筒状に形成された円筒軸であって、ローラー本体71と、高摩擦層72とを有している。
【0032】
ローラー本体71は、一定の板厚且つ略矩形の金属板を曲げて、円筒状に成形した円筒軸である。金属板としては鋼板を用いているが、アルミやステンレス等の金属板を使用してもよい。ローラー本体71は、金属板の一対の端面である第1端面(端面)74と第2端面(端面)75とが互いに接する接続部76を有している。接続部76は、ローラー本体71の中心軸方向と平行して延在している。
【0033】
第1端面74と第2端面75とは、ローラー本体71の外周面71a側で互いに接している。第1端面74と第2端面75との間の隙間は、径方向外側から内側に向かうに従い漸次幅広となっている。また、第1端面74及び第2端面75の形状は、後述する凸部79及び凹部80(図6参照)以外では、ローラー本体71の全長に亘り同一の形状となっている。
【0034】
ここで、ローラー本体71における外周面71aの周長を外周面長L1、内周面71bの周長を内周面長L2とする。第1端面74と第2端面75とは、その外周面71a側で互いに接しているため、外周面長L1はローラー本体71の外周と同一である。一方、内周面71b側においては、第1端面74と第2端面75との間に隙間が生じているため、内周面長L2はローラー本体71の内周よりも短くなっている。そして、外周面長L1と内周面長L2との関係は、ローラー本体71を形成する金属板の板厚をtとすると、下式(1)で示される。
L2≦L1−2πt …(1)
【0035】
上記式(1)の算出の方法を下記に説明する。
ローラー本体71の外径をRとすると、上述したように外周面長L1とローラー本体71の外周とは同一であるため、外周面長L1と外径Rとの関係は下式(2)で示される。
L1=πR …(2)
また、ローラー本体71の内周LCは、外径R及び板厚tを用いて下式(3)で示される。
LC=π×(R−2t)=πR−2πt …(3)
ここで、内周面長L2と内周LCとの関係が下式(4)で表す関係であれば、第1端面74と第2端面75とが外周面71a側で互いに接することになる。
L2≦LC …(4)
そして、式(4)に式(3)及び式(2)を代入すると、外周面長L1、内周面長L2及び板厚tの関係は上述した式(1)で示される。
L2≦L1−2πt …(1)
したがって、第1端面74と第2端面75とが外周面71a側で互いに接している場合には、外周面長L1、内周面長L2及び板厚tは式(1)で表される関係を満たしている。換言すれば、外周面長L1、内周面長L2及び板厚tの関係が、式(1)を満たしている場合には、第1端面74と第2端面75とは少なくとも外周面71a側で互いに接することになる。
【0036】
また、第1端面74と外周面71aとで形成される第1角度α、及び第2端面75と外周面71aとで形成される第2角度βは、いずれも90°より小さく形成されている。
【0037】
さらに、ローラー本体71は、その表面に形成されためっき層78を有している。めっき層78は、外周面71a及び内周面71b、並びに第1端面74及び第2端面75における外周面71a側の端部以外の表面に形成されている。めっき層78は、電界めっき及び無電解めっきのいずれの方法を用いて形成してもよく、例えばニッケルめっき、亜鉛めっき又はクロムめっき等が用いられる。
【0038】
高摩擦層72は、ローラー本体71の両端部以外の外周面71aに設けられ、記録紙Pとの間の摩擦係数を向上させるための塗装層である。
上述したように、搬送ローラー31はその回転により記録紙Pを搬送するものである。高精度の搬送及び位置決めのためには、搬送ローラー31は記録紙Pを滑ることなく保持する必要があることから、外周面71aにおける、搬送中の記録紙Pが保持される領域である保持領域Fに、高摩擦層72が形成されている。
【0039】
高摩擦層72は、エポキシ系樹脂やポリエステル系樹脂等からなる樹脂層と、該樹脂槽表面に分散して配置されるセラミックス粒子とを有している。このセラミックス粒子には、酸化アルミニウム(アルミナ)、炭化珪素又は二酸化珪素等が用いられる。セラミックス粒子は破砕処理によって粒径が調整されており、また、破砕処理を行うことでセラミックス粒子は鋭い端面を有する形状となっている。よって、記録紙Pとの間の摩擦係数を向上させることができる。
なお、高摩擦層72の代わりに、外周面71aに微細な凹凸(梨地処理等)を形成することで記録紙Pとの間の摩擦係数を向上させてもよい。
【0040】
続いて、搬送ローラー31を成形する方法について、図4から図10を参照して説明する。
図4は、搬送ローラー31を成形する工程を示すフロー図であって、(a)は全体のフロー図、(b)は(a)における順送プレス加工の詳細なフロー図である。
【0041】
搬送ローラー31の成形工程の概略としては、図4(a)に示すように、まず、材料である大型金属板から順送プレス加工(打ち抜き加工及びプレス加工を連続して行うもの)によって円筒状のローラー本体71を形成する(ステップS1)。
ステップS1の順送プレス加工の詳細としては、図4(b)に示すように、まず、大型金属板から、打ち抜き加工によって略矩形の金属板を形成する(ステップS11)。次に、金属板の一対の端面である第1端面74及び第2端面75をプレス加工によって調整する、端面調整加工を実施する(ステップS12、調整工程)。最後に、プレス加工を用いた曲げ加工によって、金属板を円筒状に曲げてローラー本体71を形成する(ステップS13、曲げ工程)。
【0042】
次に、図4(a)に示すように、ローラー本体71の外周面を研磨(センターレス研磨)して、その径、真円度及び振れ(中心軸方向に対する湾曲)を調整する(ステップS2)。次に、ローラー本体71の表面にめっき処理を施して、めっき層78を形成する(ステップS3)。最後に、ローラー本体71の外周面71aに高摩擦層72を形成する(ステップS4)。以上で、搬送ローラー31の成形が完了する。
以下の説明では、順送プレス加工によって大型金属板からローラー本体71を形成する工程であるステップS1を、特に詳細に説明する。
【0043】
順送プレス加工によって大型金属板からローラー本体71を形成する工程(ステップS1)を、図5から図10を参照して説明する。
図5は、ローラー本体71の材料となる大型金属板9の平面図である。
図6は、矩形板70の平面図である。
図7は、矩形板70の一対の端面を調整した後の、図6におけるC−C線視断面図である。
図8は、矩形板70に対する曲げ加工の前半の工程を示す概略図である。
図9は、矩形板70に対する曲げ加工の後半の工程を示す概略図である。
図10は、ローラー本体71を枠部92から切り離す工程を示す概略図である。
【0044】
本実施形態におけるローラー本体71の形成には、順送プレス加工が用いられる。この加工法は、材料である金属板を一定のピッチで搬送しつつ、金属板に対して順次に打ち抜き加工及びプレス加工を施すものである。
【0045】
まず、図5に示すような、大型金属板9を準備する。大型金属板9は、1mmの厚みを持つ略矩形の鋼板であり、電気亜鉛めっき鋼板(SECC)や冷間圧延鋼板(SPCC)が用いられる。紙面上下方向での、大型金属板9の一対の縁部には複数の孔部91が、その縁部に沿って所定の間隔を空けて設けられている。孔部91は、大型金属板9に対して順送プレス加工を行うときに、一定のピッチで大型金属板9を搬送するために用いられ、大型金属板9は隣り合う孔部91の間隔毎に搬送される。
【0046】
次に、図6に示すように、順送プレス加工(ステップS1)における打ち抜き加工(ステップS11)によって、大型金属板9から矩形板(金属板)70を形成する。すなわち、大型金属板9から領域Sの部分を打ち抜き、矩形板70及び枠部92を形成する。
矩形板70は、所定の方向(紙面上下方向)で延在する略帯状の矩形金属板であって、大型金属板9から領域Sの部分が取り除かれることで形成される。なお、矩形板70における表裏の板面は、ローラー本体71の内外周面となるため、以下便宜的に外周面71a及び内周面71bと称する。図6では、矩形板70の紙面表側を内周面71b、紙面裏側を外周面71aとする。
【0047】
延在方向と直交する方向での、矩形板70の一対の端面である第1端面74及び第2端面75は、矩形板70を円筒状に形成したときに互いに接して接続部76を形成する箇所である。なお、打ち抜き加工後における第1端面74及び第2端面75は、共に外周面71aと略直交しており、内周面71b及び外周面71aはいずれも同一の幅となっている。
【0048】
第1端面74及び第2端面75には、それぞれ凸部79及び凹部80が形成されている。凸部79及び凹部80は、凹部80に凸部79が嵌合することで、第1端面74及び第2端面75の延在方向でのずれを防止するためのものである。凸部79の先端部79a、及び凹部80の底部80aは、共に矩形板70の延在方向と平行して形成されている。
【0049】
枠部92は、矩形板70の延在方向と直交する方向で延在する略帯状の板部であって、大型金属板9から領域Sの部分が取り除かれることで形成される。枠部92には、上述した孔部91が並んで配置されている。
矩形板70と枠部92との間には、それらを互いに連結する連結部93(いわゆるタイバー)が架け渡され、矩形板70は連結部93を介して枠部92に支持されている。
【0050】
次に、矩形板70の第1端面74及び第2端面75に対して、端面調整加工(ステップS12)を実施し、第1端面74及び第2端面75の、外周面71aに対する傾きを調整する。
図7に示すように、プレス加工によって第1端面74及び第2端面75の外周面71aに対する傾きを調整する。この調整により、第1端面74と外周面71aとで形成される第1角度α、及び第2端面75と外周面71aとで形成される第2角度βは、いずれも90°より小さくなる。なお、本実施形態では、第1角度α及び第2角度βはいずれも73°となっている。
【0051】
すなわち、矩形板70の板厚方向と第1端面74との間、及び上記板厚方向と第2端面75との間にそれぞれ形成される角度は、いずれも17°となっている。よって、矩形板70の板厚をt、端面調整後における外周面71aの幅方向での長さを第2外周面長L3、同じく端面調整後における内周面71bの幅方向での長さを第2内周面長L4とすると、板厚t、第2外周面長L3及び第2内周面長L4の間の関係は、下式(5)で表される。
L4≦L3−t×tan17° …(5)
【0052】
したがって、第2外周面長L3、第2内周面長L4及び板厚tの関係が、式(5)を満たしている場合には、矩形板70を曲げ加工して円筒状のローラー本体71を成形したときに、第1端面74と第2端面75とは少なくとも外周面71a側で互いに接することになる。
【0053】
本実施形態の端面調整加工では、第1端面74及び第2端面75のいずれに対しても加工を施している。そのため、例えば第1端面74及び第2端面75の近傍に加工による応力等が生じた場合であっても、その応力は一対の端面74及び75のいずれにも生じているため、矩形板70を曲げ加工して成形された搬送ローラー31(ローラー本体71)において、応力の不均一性を原因とする歪みや変形等を抑制することができる。
【0054】
ところで、第1端面74と第2端面75とは少なくとも外周面71a側で互いに接触すればよく、内周面71b側には第1端面74と第2端面75との間に隙間が形成されてもよい。そのため、調整後における第1端面74及び第2端面75の、外周面71aに対する傾きを厳格に調整する必要がなく、端面調整加工を容易に行うことができ、調整の手間がかからない。
【0055】
次に、矩形板70に対して、図8及び図9に示す順送プレス加工における曲げ加工(ステップS13)を施し、矩形板70を円筒状に成形する。なお、図8及び図9は、図6における線視C−Cでの断面図である。
【0056】
まず、図8(a)に示すように、第1雄型101と第1雌型102とで矩形板70を押圧し、矩形板70の幅方向での両縁部を略円弧状に曲げる。なお、図8(a)では、矩形板70と、第1雄型101及び第1雌型102との間にそれぞれ隙間が形成されているが、この隙間は実際には存在せず、矩形板70と、第1雄型101及び第1雌型102とは互いに密着している。これは、図8(b)、図9(a)ないし(c)においても同様である。
【0057】
次に、図8(b)に示すように、第2雄型103と第2雌型104とで矩形板70を押圧し、矩形板70の幅方向での中央部を略円弧状に曲げる。この曲げ加工により、矩形板70の断面形状は第2雄型103側に開口する略C字状となる。
【0058】
次に、図8(c)に示すように、第1上型105及び第2上型106と、下型107との間に断面視略C字状に形成された矩形板70を配置し、且つ、矩形板70の内側に円柱状の芯型108を配置する。
ここで、第1上型105、第2上型106及び下型107の、それぞれのプレス面105a、106a及び107aは、いずれも形成されるローラー本体71の外周面に応じた形状で形成されている。また、芯型108の外周面は、形成されるローラー本体71の内周面に応じた形状で形成されている。なお、第1上型105及び第2上型106は、互いに独立して移動可能である。
【0059】
次に、図9(a)に示すように、芯型108を静止させた状態で、第1上型105を下型107に向かって移動させ、矩形板70の第1端面74側を押圧し、略半円状に曲げる。なお、第1上型105及び第2上型106と同様に、下型107を一対の割型とし、図9(a)に示す工程の際に、第1上型105と同じ側の下型を第1上型105に向かって移動させてもよい。
【0060】
次に、図9(b)に示すように、芯型108を下型107に向けて多少移動させると共に、第2上型106を下型107に向かって移動させ、矩形板70の第2端面75側を押圧し、略半円状に曲げる。
【0061】
次に、図9(c)に示すように、第1上型105、第2上型106及び芯型108を共に下型107に向かって移動させ、矩形板70を押圧する。このとき、第1上型105及び第2上型106は、下型107に当接している。この押圧により、矩形板70は略円筒状に形成され、矩形板70からローラー本体71が形成される。また、矩形板70の第1端面74及び第2端面75は外周面71a側で互いに接し、接続部76が形成される。
【0062】
最後に、図10に示すように、ローラー本体71と連結部93との間を、カットラインDに従って切断する。なお、ローラー本体71が形成された状態では、凸部79は凹部80に嵌合しているが、凸部79の先端部79aと、凹部80の底部80aとの間には所定の隙間81が形成されている。この隙間81は、第1端面74と第2端面75とを互いに均一に接触させるために設けられるものである。
以上で、順送プレス加工(ステップS1)によるローラー本体71の形成が完了する。
【0063】
次に、略円筒状に形成されたローラー本体71の外周面に対して、公知のセンターレス研磨加工を施す(ステップS2)。この研磨加工によって、ローラー本体71の径、真円度及び振れが適切な精度に調整される。
【0064】
次に、ローラー本体71にめっき処理を施す(ステップS3)。
このめっき処理によって、ローラー本体71の内外周面、第1端面74及び第2端面75にめっき層78が形成される。なお、例えSECC等の予めめっき層が形成されている鋼板を用いたとしても、第1端面74及び第2端面75は打ち抜き加工等を用いて形成されており、鋼板の基材が露出し腐食しやすくなっているため、第1端面74及び第2端面75にはこの工程によって十分なめっき層を形成する必要がある。
【0065】
最後に、ローラー本体71の外周面71aにおける保持領域Fに、高摩擦層72を形成する。
まず、ローラー本体71の両端部をマスキングし、エポキシ系樹脂やポリエステル系樹脂を溶媒中に分散させ、この溶液をローラー本体71の外周面に塗布し、樹脂層を形成する。次に、粉体塗装法を用いてアルミナ粒子等のセラミックス粒子を、上記樹脂層の表面に付着させる。最後に、加熱処理により樹脂層を硬化させ、セラミックス粒子が表面に配置された高摩擦層72が形成される。
【0066】
なお、高摩擦層72を形成する方法としては、粉体塗装法の代わりに、セラミックス粒子を溶媒中に分散させ、この溶液を上記樹脂層の表面に塗布してもよい。また、予めセラミックス粒子をエポキシ系樹脂やポリエステル系樹脂と共に溶媒中に分散させ、この溶液をローラー本体71の外周面に塗布することで、セラミックス粒子を含んだ樹脂層を形成してもよい。
以上の方法によって、搬送ローラー31の成形が完了する。
【0067】
続いて、本実施形態におけるプリンター1の動作を、図1ないし図3を参照して説明する。
図1及び図2に示すように、給紙部2における給紙ローラー22の回転により、給紙トレー21に載置された記録紙Pが搬送部3に向けて供給される。
駆動部6の作動により、搬送ローラー31が回転する。また、搬送ローラー31の外周面と接触して設けられる従動ローラー32が、搬送ローラー31と相反する方向で回転する。給紙部2から供給された記録紙Pは、搬送ローラー31と従動ローラー32との間に挟持され、また、搬送ローラー31の保持領域Fには高摩擦層72が形成されているため、記録紙Pは搬送ローラー31に保持される。よって、記録紙Pは搬送ローラー31の回転と共に正確に搬送される。
【0068】
ここで、図3に示すように、第1端面74及び第2端面75は外周面71a側で互いに接しており、接続部76において外周面71a側の平滑度が向上している。そのため、搬送ローラー31が回転してもその外周面は記録紙Pと安定して接触することができる。すなわち、記録紙Pを高い精度で搬送することができる。
【0069】
搬送ローラー31の回転により、記録紙Pは、プラテン33におけるダイヤモンドリブ34の頂面上に搬送される。ダイヤモンドリブ34上に載置された記録紙Pに対して、キャリッジ52と共に適切な位置に移動した噴射ヘッド51からインクが噴射され、文字や画像等の情報が印刷される。この印刷後、記録紙Pは排紙部4の排紙ローラー41及び排紙ギザローラー42の回転により排出される。
以上で、本実施形態におけるプリンター1の動作が完了する。
【0070】
したがって、本実施形態によれば以下の効果を得ることができる。
本実施形態によれば、記録紙Pを搬送するために、矩形板70を曲げ加工して円筒状に形成された搬送ローラー31を用いた場合であっても、搬送ローラー31による記録紙Pの保持は常に維持されることから、記録紙Pを高い精度で搬送し且つ位置決めできるという効果がある。
【0071】
〔第2実施形態〕
第2の実施形態におけるプリンター1を、図11を参照して説明する。なお、図11において、図3に示す第1実施形態の構成要素と同一の要素については同一の符号を付し、その説明を省略する。
本実施形態におけるプリンター1は、第2搬送ローラー31Sを除いて第1の実施形態と同様である。よって、以下、本実施形態における第2搬送ローラー31Sについてのみ説明する。
【0072】
第2搬送ローラー31Sの構成を、図11を参照して説明する。
図11は、第2搬送ローラー31Sの構成を示す概略図であって、接続部76近傍の幅方向での断面図である。
第2搬送ローラー31Sは、第1の実施形態における搬送ローラー31の一変形例である。第2搬送ローラー31Sは、円筒軸である第2ローラー本体71Sと、高摩擦層72(図11では図示せず)とを有している。第2ローラー本体71Sは、金属板を曲げ加工して円筒状に形成された円筒軸であって、金属板の一対の端面である第1端面74と第2端面75とが互いに接する接続部76を有している。第1端面74と第2端面75とは、第2ローラー本体71Sの外周面71a側の端部で互いに接している。
【0073】
また、第1端面74と外周面71aとで形成される第1角度αは、90°より小さく形成され、第2端面75と外周面71aとで形成される第2角度βは、90°以上の大きさで形成されている。すなわち、接続部76における第1端面74及び第2端面75が、周方向に関して所定の方向に傾いた形状となっている。
そのため、この傾きに沿う方向で第2搬送ローラー31Sを回転させて記録紙Pを搬送すると、接続部76に搬送に伴う付勢力が加えられたとしても、第1端面74と第2端面75との離間は生じにくくなる。よって、搬送に伴って生じる虞のある、第2搬送ローラー31Sの歪みや変形等を抑制することができる。
【0074】
なお、本実施形態においても第1の実施形態と同様に、第2ローラー本体71Sにおける外周面71aの周長を外周面長L1、内周面71bの周長を内周面長L2、金属板の板厚をtとすると、上述した式(1)に示す関係を満たしている。
L2≦L1−2πt …(1)
【0075】
次に、第2搬送ローラー31Sの成形方法を説明する。本実施形態における成形方法で第1の実施形態と異なる点は、端面調整加工(ステップS12)のみであるため、他の工程は省略し端面調整加工についてのみ説明する。
本実施形態における端面調整加工(ステップS12)では、第1端面74のみにプレス加工を施し、第2端面75にはプレス加工等の調整加工を施していない。
【0076】
本実施形態における端面調整加工では第1端面74に対して調整を行い、調整後の第1端面74と外周面71aとで形成される第1角度αが90°より小さくなるようにする。また、第1端面74に対してのみ調整を行うため、第1端面74に対する調整量を第1の実施形態における調整量の凡そ2倍程度とする必要がある。よって、調整後の第1角度αは凡そ56°となっている。また、矩形板70(図11では図示せず)の板厚方向と第1端面74との間の角度は、凡そ34°となっている(第1の実施形態における17°の2倍)。
【0077】
一方、第2端面75に対して端面調整加工での調整は行わないため、打ち抜き加工(ステップS11)後の第2端面75は外周面71aと略直交しており、第2角度βもほぼ90°となっている。そして、曲げ加工(ステップS13)によって矩形板70を円筒状に形成することで、矩形板70の外周面71a側は幅方向で伸長され、内周面71b側は幅方向で圧縮される。この変形により、第2端面75と外周面71aとで形成される第2角度βは一般に90°よりも大きくなる。
【0078】
したがって、本実施形態によれば以下の効果を得ることができる。
本実施形態によれば、搬送時における第2搬送ローラー31Sによる記録紙Pの保持は常に維持されることから、記録紙Pを高い精度で搬送し且つ位置決めできるという効果がある。さらに、本実施形態によれば、第1端面74及び第2端面75の傾きに沿う方向で第2搬送ローラー31Sを回転させることで、第1端面74と第2端面75との離間が生じにくくなる。したがって、搬送に伴って生じる虞のある、第2搬送ローラー31Sの歪みや変形等を抑制できるという効果がある。
【0079】
〔第3実施形態〕
第3の実施形態におけるプリンター1を、図12を参照して説明する。なお、図12において、図3に示す第1実施形態の構成要素と同一の要素については同一の符号を付し、その説明を省略する。
本実施形態におけるプリンター1は、第3搬送ローラー31Tを除いて第1の実施形態と同様である。よって、以下、本実施形態における第3搬送ローラー31Tについてのみ説明する。
【0080】
第3搬送ローラー31Tの構成を、図12を参照して説明する。
図12は、第3搬送ローラー31Tの正面図である。
第3搬送ローラー31Tは、第1の実施形態における搬送ローラー31の第2の変形例である。第3搬送ローラー31Tは、円筒軸である第3ローラー本体71Tと、高摩擦層72(図12では図示せず)とを有している。第3ローラー本体71Tは、金属板を曲げ加工して円筒状に形成された円筒軸であって、金属板の一対の端面である第1端面74と第2端面75とが互いに接する接続部76を有している。第1端面74と第2端面75とは、第3ローラー本体71Tの外周面71a側の端部で互いに接している。す
なお、第3ローラー本体71Tの第1端面74及び第2端面75は、外周面71aとの間の角度がいずれも90°より小さくなるように調整されている。
【0081】
また、第3ローラー本体71Tは、その内周面71bに設けられ中心軸K方向に延在する1つの溝部82を有している。
第3ローラー本体71Tは、一対の端面74、75への加工により生じる応力や、一対の端面74、75が外周面71a側の端部で互いに接している形状などから、第3ローラー本体71Tの振れが生じやすくなる虞がある。ここで、内周面71bに溝部82を設けると、振れの原因となる金属板の応力や復元力等を緩和することができるため、振れの発生や程度を抑制することができる。
【0082】
さらに、本実施形態の溝部82は、中心軸Kを挟んで接続部76とは対称の位置に設けられている。
金属板を円筒状に形成しているため、第3ローラー本体71Tの振れは、接続部76と中心軸Kとを共に含む平面内で湾曲して生じる虞がある。ここで、溝部82が中心軸Kを挟んで接続部76とは対称の位置に設けられることで、第3ローラー本体71Tにおける上記平面の両側部分に対して、応力や復元力等を同様に緩和することができる。よって、振れの発生や程度を略均一且つ効果的に抑制することができる。
【0083】
なお、本実施形態では溝部82は1つのみ設けられているが、これに限定されるものではなく、内周面71bに中心軸K方向に延在する複数の溝部を形成してもよい。複数の溝部を設けることで、振れの抑制効果をより高めることができる。
さらに、第3ローラー本体71Tへの影響を、接続部76と中心軸Kとを共に含む平面に関して対称なものとするため、複数の溝部は上記平面を挟んで対称な位置に設けられることが好ましい。
【0084】
次に、第3搬送ローラー31Tの成形方法を説明する。
溝部82は、順送プレス加工(ステップS1)の工程において、プレス加工を用いて形成される(溝部形成工程)。また、溝部82を形成するためのプレス加工を、端面調整加工(ステップS12)や曲げ加工(ステップS13)と同時に行ってもよく、また独立して行ってもよい。
さらに、プレス加工だけでなく、切削加工等を用いて溝部82を形成してもよい。
【0085】
したがって、本実施形態によれば以下の効果を得ることができる。
本実施形態によれば、第1の実施形態によって得られる効果に加え、第3搬送ローラー31Tにおける振れの発生やその程度を略均一且つ効果的に抑制できるという効果がある。
【0086】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0087】
例えば、上記実施形態では、第1端面74と第2端面75とは外周面71a側の端部で互いに接しているが、これに限定されるものではなく、第1端面74と第2端面75とが全面で互いに接していてもよい。
【0088】
また、上記実施形態では、第1端面74及び第2端面75の形状は、凸部79及び凹部80の設置箇所を除いて、ローラー本体71の全長に亘り同一の形状であるが、これに限定されるものではなく、第1端面74及び第2端面75が、ローラー本体71の保持領域Fの範囲で、少なくとも外周面71a側で互いに接しているという構成であってもよい。
上述したように、保持領域Fは、搬送ローラー31が記録紙Pを従動ローラー32と共に挟持して保持する領域である。そのため、記録紙Pの正確な搬送及び位置決めのためには、保持領域Fの範囲で外周面71a側に露出する隙間や凹部等が存在しなければよい。また、保持領域Fの範囲のみに端面調整加工を施すことから、第1端面74及び第2端面75近傍に生じる加工による応力等が減少し、この応力等を原因とする搬送ローラー31の歪みや変形等を抑制することができる。
【0089】
また、上記実施形態では、打ち抜き加工(ステップS11)と端面調整加工(ステップS12)とをそれぞれ別の工程で行っているが、これに限定されるものではなく、大型金属板9の板面と所定の角度(垂直以外)を付けて、図6に示す領域Sを打ち抜くことで、打ち抜き加工と第1端面74及び第2端面75の調整とを同時に行うようにしてもよい。
【符号の説明】
【0090】
1…プリンター(印刷装置)、3…搬送部(搬送ユニット)、31…搬送ローラー、31S…第2搬送ローラー、31T…第3搬送ローラー、70…矩形板(金属板)、71a…外周面、71b…内周面、74…第1端面(端面)、75…第2端面(端面)、82…溝部、F…保持領域、K…中心軸、P…記録紙(記録媒体)
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送ローラーの製造方法、搬送ユニット及び印刷装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、シート状の記録媒体上に情報を印刷する印刷装置が用いられており、この印刷装置には記録媒体を搬送する搬送ユニットが設けられている。この搬送ユニットは、記録媒体を搬送する搬送ローラーを有している。搬送ローラーには中実の棒状部材が一般的に使用されている。
記録媒体は搬送ローラーに保持され、搬送ローラーが回転することで搬送される。また、この搬送と共に記録媒体に対して印刷が行われるため、適正な印刷のためには、記録媒体を高い精度で搬送し且つ位置決めする必要がある。
【0003】
一方、中実の材料は重量およびコストが嵩むという課題があるため、特許文献1には、金属板を曲げ加工して円筒状に成形する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−289496号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来技術を印刷装置の搬送ローラーに適用しようとした場合には、下記のような課題があった。
金属板は打ち抜き加工等を用いて成形されることから、金属板の端面と板面とはほぼ直交し、板面の幅方向での長さは表裏共に略同一となっている。そして、この金属板を曲げ加工して円筒状の搬送ローラーを成形した場合、外周は内周よりも長い周長が必要となることから、金属板の一対の端面が互いに接する接続部においては、一対の端面はその内周面側で互いに接し、外周面側には中心軸方向で延びる隙間が形成されていた。
このような搬送ローラーを用いて記録媒体を搬送すると、上記隙間の部分では搬送ローラーは記録媒体を保持できないため、記録媒体を適切に搬送することが難しくなり、高い精度での搬送及び位置決めができない虞があった。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、記録媒体等の被搬送物を高い精度で搬送し且つ位置決めできる搬送ローラーの製造方法、搬送ユニット及び印刷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を採用する。
本発明は、金属板の一対の端面を対向させ円筒状に形成された、記録媒体を搬送する搬送ローラーの製造方法であって、一対の端面のうち少なくとも一方の端面と、金属板の一方の板面とで形成される角度が90°より小さくなるように調整する調整工程と、一方の板面が外周面となるように金属板を曲げて、一対の端面の少なくとも外周面側を互いに当接させて円筒状に形成する曲げ工程と、を有するという方法を採用する。
このような方法を採用する本発明では、一対の端面は少なくとも外周面側で互いに当接しているため、外周面側に露出している隙間等は存在せず、搬送時に搬送ローラーが回転してもその外周面は記録媒体と常に接触している。
【0008】
また、本発明は、調整工程では、一対の端面をいずれも調整するという方法を採用する。
このような方法を採用する本発明では、調整工程において一対の端面のそれぞれに対して角度を付けるための加工を施す。そして、例えば端面近傍に加工による応力等が生じた場合であっても、その応力等は一対の端面のいずれにも生じているため、金属板を曲げ加工して成形された搬送ローラーにおいて、応力等の不均一性を原因とする歪みや変形等を抑制することが可能となる。
【0009】
また、本発明は、調整工程では、一方の端面のみを調整するという方法を採用する。
このような方法を採用する本発明では、金属板の一対の端面が周方向に関して所定の方向に傾いた形状となる。そして、この傾きに沿う方向で搬送ローラーを回転させて記録媒体を搬送することで、一対の端面の接続部にはそれらの端面が離間しにくい方向で力が加えられるため、搬送に伴って生じる搬送ローラーの歪みや変形等を抑制することが可能となる。
【0010】
また、本発明は、調整工程では、端面の、搬送ローラーにおける記録媒体の保持領域に対応する箇所を調整するという方法を採用する。
このような方法を採用する本発明では、端面に対して加工を施す範囲が限定されるため、端面近傍に生じる加工による応力等が減少する。そのため、金属板を曲げ加工して成形された搬送ローラーにおいて、応力等を原因とする歪みや変形等を抑制することが可能となる。
【0011】
また、本発明は、搬送ローラーの内周面に設けられ中心軸方向に延在する溝部を少なくとも1つ形成する溝部形成工程をさらに有するという方法を採用する。
本発明では、端面への加工により生じる応力等や一対の端面が少なくとも外周面側で互いに接している形状などから、搬送ローラーの振れ(中心軸方向に対する湾曲)が生じやすくなる虞がある。そこで、上記構成を採用することで、振れの原因となる応力や復元力等を緩和することができ、振れを抑制することが可能となる。
【0012】
また、本発明は、溝部が、中心軸を挟んで、互いに当接する一対の端部とは対称の位置に設けられているという方法を採用する。
本発明では、曲げ工程において金属板を曲げ加工して円筒状に形成していることから、搬送ローラーにおける振れは、一対の端面が互いに接する接続部と搬送ローラーの中心軸とを共に含む平面内で湾曲して生じる虞がある。そこで、上記構成では、溝部が中心軸を挟んで接続部とは対称の位置に設けられるため、上記振れを効果的に抑制することが可能となる。
【0013】
また、本発明は、曲げ工程において、一対の端面の内周面側は隙間を有するという方法を採用する。
このような方法を採用する本発明では、一対の端面は外周面側で互いに接している一方で、内周面側には隙間を有しているため、調整工程において端面と板面とで形成される角度を厳格に調整する必要がない。よって、調整工程における調整を容易に行うことができ、調整の手間がかからない。
【0014】
また、本発明の搬送ユニットは、請求項1から7のいずれか一項に記載の製造方法により製造された搬送ローラーを備えるという構成を採用する。
このような構成を採用する本発明では、一対の端面は外周面側で互いに当接しているため、外周面側に露出している隙間や凹部等は存在せず、搬送ローラーが回転してもその外周面は被搬送物と常に接触している。
【0015】
また、本発明の印刷装置は、請求項1から7のいずれか一項に記載の製造方法により製造された搬送ローラーを備えるという構成を採用する。
このような構成を採用する本発明では、一対の端面は外周面側で互いに当接しているため、外周面側に露出している隙間や凹部等は存在せず、搬送ローラーが回転してもその外周面は被搬送物と常に接触している。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】プリンター1の全体構成図である。
【図2】搬送部3及び排紙部4の構成を示す概略図である。
【図3】搬送ローラー31の構成を示す概略図である。
【図4】搬送ローラー31を成形する工程を示すフロー図である。
【図5】大型金属板9の平面図である。
【図6】矩形板70の平面図である。
【図7】矩形板70の一対の端面を調整した後の、図6におけるC−C線視断面図である。
【図8】矩形板70に対する曲げ加工の前半の工程を示す概略図である。
【図9】矩形板70に対する曲げ加工の後半の工程を示す概略図である。
【図10】ローラー本体71を枠部92から切り離す工程を示す概略図である。
【図11】第2搬送ローラー31Sの構成を示す概略図である。
【図12】第3搬送ローラー31Tの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明における、搬送ローラーの製造方法に係る実施の形態を、図1から図12を参照して説明する。なお、以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更している。
以下の説明では、印刷装置として、インクを記録媒体である紙等に噴射し、文字や画像等の情報を記録するインクジェット式のプリンター(以下、単に「プリンター」と称する)の例を示す。
【0018】
まず、本実施形態におけるプリンター(印刷装置)1の構成を、図1を参照して説明する。
図1は、本実施形態におけるプリンター1の全体構成図である。
プリンター(印刷装置)1は、記録媒体である紙等にインクを噴射し、文字や画像等の情報を記録する印刷装置である。プリンター1は、給紙部2と、搬送部(搬送ユニット)3と、排紙部4と、ヘッド部5と、制御部CONTとを有している。
【0019】
給紙部2は、記録媒体である複数枚の記録紙(記録媒体)Pを保持すると共に、記録紙Pを搬送部3に向けて供給するものであって、給紙トレー21と、給紙ローラー22とを有している。
給紙トレー21は、複数枚の記録紙Pを保持するものであり、水平面との間に所定の角度(45°程度)を形成して設けられている。なお、記録紙Pとしては、インクによる印刷が可能なシート状の記録媒体が用いられ、普通紙、コート紙、OHP(オーバーヘッドプロジェクター)用シート、光沢紙及び光沢フィルム等が用いられる。
【0020】
給紙ローラー22は、回転することで記録紙Pを搬送部3に向けて供給するローラーであり、給紙トレー21の搬送部3側に設けられている。なお、給紙ローラー22の外周面と対向する位置には不図示の分離パッドが設けられており、該分離パッドと給紙ローラー22とが協働して記録紙Pを一枚ずつ搬送部3に供給することができる。
【0021】
搬送部3は、給紙部2から供給された記録紙Pを排紙部4に向けて搬送するものであり、且つ記録紙Pに対する印刷動作が行われる箇所である。搬送部3は、搬送ローラー31と、従動ローラー32と、プラテン33と、ダイヤモンドリブ34と、駆動部6(図2参照)とを有している。
搬送ローラー31は、回転することで記録紙Pを所定の印刷位置に正確に搬送するためのローラーであって、水平面内且つ記録紙Pの搬送方向と直交する方向で延在し、円筒状に形成された円筒軸である。搬送ローラー31は、搬送部3に設けられ略U字型の一対の軸受(図示せず)に回転自在に軸支され、駆動部6の駆動により回転する。なお、搬送ローラー31の詳細は後述する。
【0022】
従動ローラー32は、略円柱状の部材であって、搬送ローラー31の軸方向に沿って間隔を空けて複数配置されている。また、従動ローラー32は、後述する搬送ローラー31の高摩擦層72(図3参照)に対向する位置に回転自在に設けられている。従動ローラー32には不図示の付勢バネが設けられており、この付勢バネの付勢力によって、従動ローラー32は搬送ローラー31の高摩擦層72に付勢されて接触している。このため、従動ローラー32は、搬送ローラー31の回転動作に従動して回転する。なお、従動ローラー32の外周面には、高摩擦層72との摺動による摩耗・損傷を緩和するため、例えばフッ素樹脂塗装等の低摩耗処理が施されている。
【0023】
プラテン33は、ヘッド部5による記録紙Pへの印刷を行うときに、記録紙Pを下方から支持する箇所であり、水平面に略平行する上面を有している。
ダイヤモンドリブ34は、プラテン33の上面から上方に向けて突出する突部であり、搬送ローラー31の軸方向に沿って間隔を空けて複数配置されている。また、ダイヤモンドリブ34の頂面は、水平面と略平行に形成されており、この頂面によって印刷時の記録紙Pが下方から支持される。
【0024】
排紙部4は、搬送部3から印刷後の記録紙Pを排出するものであって、排紙ローラー41と、排紙ギザローラー42とを有している。排紙ローラー41と排紙ギザローラー42とは、互いに相反する方向で回転でき、この回転によって記録紙Pを引き出して排出する。
【0025】
ヘッド部5は、搬送部3に載置されている記録紙Pに対してインクを噴射するものであって、噴射ヘッド51と、キャリッジ52とを有している。
噴射ヘッド51は、制御部CONTの指示に従いインクを噴射する機器であって、その不図示の噴射口はダイヤモンドリブ34の頂面に対向して設けられている。キャリッジ52は、その下方に噴射ヘッド51を保持するものであって、搬送ローラー31の軸方向で往復移動自在に設けられている。また、キャリッジ52には、制御部CONTの指示に従い、キャリッジ52を往復移動させる不図示の駆動部が連結されている。
【0026】
次に、搬送ローラー31を回転駆動させる構成について、図2を参照して説明する。
図2は、搬送部3及び排紙部4の構成を示す概略図であって、(a)は平面図、(b)は(a)のA矢視図である。
【0027】
上述したように、搬送部3は駆動部6を有している。駆動部6は、搬送ローラー31を回転駆動させるものであって、モーター61と、ピニオンギア62とを有している。
モーター61は、制御部CONTの指示に従い搬送ローラー31を回転させる電動機である。すなわち、制御部CONTがモーター61を制御して駆動させ、搬送ローラー31の回転及び記録紙Pの正確な搬送を実現している。ピニオンギア62は、モーター61の出力軸に一体的に接続されているギアである。
【0028】
搬送ローラー31には、第1駆動ギア35と、第2駆動ギア36と、第3駆動ギア37とが設けられている。
第1駆動ギア35は、搬送ローラー31を回転させるためのギアであって、搬送ローラー31における駆動部6設置側の端部に、圧入によって一体的に接続されている。また、第1駆動ギア35はピニオンギア62と互いに噛合しており、ピニオンギア62及び第1駆動ギア35を介してモーター61の駆動力が搬送ローラー31に伝達され、搬送ローラー31が回転する構成となっている。
【0029】
第2駆動ギア36は、モーター61の駆動力を排紙ローラー41に伝達するためのギアであって、第1駆動ギア35よりも小さい径を有し、第1駆動ギア35に隣接して配置されている。また、第2駆動ギア36は、圧入によって搬送ローラー31に一体的に接続されている。
第3駆動ギア37は、搬送ローラー31の回転駆動力を不図示の他の機器に伝達するためのギアであって、搬送ローラー31の第1駆動ギア35と逆側の端部に、圧入によって一体的に接続されている。なお、圧入を用いず、搬送ローラー31及び第3駆動ギア37のそれぞれに回り止め部(ピンや切欠部等)を設けることで、第3駆動ギア37が搬送ローラー31と共に回転する構成としてもよい。
【0030】
排紙ローラー41における駆動部6側の端部には、排紙駆動ギア43が一体的に設けられている。また、排紙駆動ギア43と第2駆動ギア36との間には、中間ギア44が設けられ、中間ギア44は第2駆動ギア36及び排紙駆動ギア43のそれぞれと噛合している。すなわち、第2駆動ギア36、中間ギア44及び排紙駆動ギア43を介して、モーター61の駆動力が排紙ローラー41に伝達され、排紙ローラー41が回転する構成となっている。
【0031】
次に、搬送ローラー31の構成を、図3を参照して詳細に説明する。
図3は、搬送ローラー31の構成を示す概略図であって、(a)は側面図、(b)は(a)のB−B線視断面図、(c)は(b)における接続部76近傍の拡大図である。
搬送ローラー31は、所定の方向で延在し円筒状に形成された円筒軸であって、ローラー本体71と、高摩擦層72とを有している。
【0032】
ローラー本体71は、一定の板厚且つ略矩形の金属板を曲げて、円筒状に成形した円筒軸である。金属板としては鋼板を用いているが、アルミやステンレス等の金属板を使用してもよい。ローラー本体71は、金属板の一対の端面である第1端面(端面)74と第2端面(端面)75とが互いに接する接続部76を有している。接続部76は、ローラー本体71の中心軸方向と平行して延在している。
【0033】
第1端面74と第2端面75とは、ローラー本体71の外周面71a側で互いに接している。第1端面74と第2端面75との間の隙間は、径方向外側から内側に向かうに従い漸次幅広となっている。また、第1端面74及び第2端面75の形状は、後述する凸部79及び凹部80(図6参照)以外では、ローラー本体71の全長に亘り同一の形状となっている。
【0034】
ここで、ローラー本体71における外周面71aの周長を外周面長L1、内周面71bの周長を内周面長L2とする。第1端面74と第2端面75とは、その外周面71a側で互いに接しているため、外周面長L1はローラー本体71の外周と同一である。一方、内周面71b側においては、第1端面74と第2端面75との間に隙間が生じているため、内周面長L2はローラー本体71の内周よりも短くなっている。そして、外周面長L1と内周面長L2との関係は、ローラー本体71を形成する金属板の板厚をtとすると、下式(1)で示される。
L2≦L1−2πt …(1)
【0035】
上記式(1)の算出の方法を下記に説明する。
ローラー本体71の外径をRとすると、上述したように外周面長L1とローラー本体71の外周とは同一であるため、外周面長L1と外径Rとの関係は下式(2)で示される。
L1=πR …(2)
また、ローラー本体71の内周LCは、外径R及び板厚tを用いて下式(3)で示される。
LC=π×(R−2t)=πR−2πt …(3)
ここで、内周面長L2と内周LCとの関係が下式(4)で表す関係であれば、第1端面74と第2端面75とが外周面71a側で互いに接することになる。
L2≦LC …(4)
そして、式(4)に式(3)及び式(2)を代入すると、外周面長L1、内周面長L2及び板厚tの関係は上述した式(1)で示される。
L2≦L1−2πt …(1)
したがって、第1端面74と第2端面75とが外周面71a側で互いに接している場合には、外周面長L1、内周面長L2及び板厚tは式(1)で表される関係を満たしている。換言すれば、外周面長L1、内周面長L2及び板厚tの関係が、式(1)を満たしている場合には、第1端面74と第2端面75とは少なくとも外周面71a側で互いに接することになる。
【0036】
また、第1端面74と外周面71aとで形成される第1角度α、及び第2端面75と外周面71aとで形成される第2角度βは、いずれも90°より小さく形成されている。
【0037】
さらに、ローラー本体71は、その表面に形成されためっき層78を有している。めっき層78は、外周面71a及び内周面71b、並びに第1端面74及び第2端面75における外周面71a側の端部以外の表面に形成されている。めっき層78は、電界めっき及び無電解めっきのいずれの方法を用いて形成してもよく、例えばニッケルめっき、亜鉛めっき又はクロムめっき等が用いられる。
【0038】
高摩擦層72は、ローラー本体71の両端部以外の外周面71aに設けられ、記録紙Pとの間の摩擦係数を向上させるための塗装層である。
上述したように、搬送ローラー31はその回転により記録紙Pを搬送するものである。高精度の搬送及び位置決めのためには、搬送ローラー31は記録紙Pを滑ることなく保持する必要があることから、外周面71aにおける、搬送中の記録紙Pが保持される領域である保持領域Fに、高摩擦層72が形成されている。
【0039】
高摩擦層72は、エポキシ系樹脂やポリエステル系樹脂等からなる樹脂層と、該樹脂槽表面に分散して配置されるセラミックス粒子とを有している。このセラミックス粒子には、酸化アルミニウム(アルミナ)、炭化珪素又は二酸化珪素等が用いられる。セラミックス粒子は破砕処理によって粒径が調整されており、また、破砕処理を行うことでセラミックス粒子は鋭い端面を有する形状となっている。よって、記録紙Pとの間の摩擦係数を向上させることができる。
なお、高摩擦層72の代わりに、外周面71aに微細な凹凸(梨地処理等)を形成することで記録紙Pとの間の摩擦係数を向上させてもよい。
【0040】
続いて、搬送ローラー31を成形する方法について、図4から図10を参照して説明する。
図4は、搬送ローラー31を成形する工程を示すフロー図であって、(a)は全体のフロー図、(b)は(a)における順送プレス加工の詳細なフロー図である。
【0041】
搬送ローラー31の成形工程の概略としては、図4(a)に示すように、まず、材料である大型金属板から順送プレス加工(打ち抜き加工及びプレス加工を連続して行うもの)によって円筒状のローラー本体71を形成する(ステップS1)。
ステップS1の順送プレス加工の詳細としては、図4(b)に示すように、まず、大型金属板から、打ち抜き加工によって略矩形の金属板を形成する(ステップS11)。次に、金属板の一対の端面である第1端面74及び第2端面75をプレス加工によって調整する、端面調整加工を実施する(ステップS12、調整工程)。最後に、プレス加工を用いた曲げ加工によって、金属板を円筒状に曲げてローラー本体71を形成する(ステップS13、曲げ工程)。
【0042】
次に、図4(a)に示すように、ローラー本体71の外周面を研磨(センターレス研磨)して、その径、真円度及び振れ(中心軸方向に対する湾曲)を調整する(ステップS2)。次に、ローラー本体71の表面にめっき処理を施して、めっき層78を形成する(ステップS3)。最後に、ローラー本体71の外周面71aに高摩擦層72を形成する(ステップS4)。以上で、搬送ローラー31の成形が完了する。
以下の説明では、順送プレス加工によって大型金属板からローラー本体71を形成する工程であるステップS1を、特に詳細に説明する。
【0043】
順送プレス加工によって大型金属板からローラー本体71を形成する工程(ステップS1)を、図5から図10を参照して説明する。
図5は、ローラー本体71の材料となる大型金属板9の平面図である。
図6は、矩形板70の平面図である。
図7は、矩形板70の一対の端面を調整した後の、図6におけるC−C線視断面図である。
図8は、矩形板70に対する曲げ加工の前半の工程を示す概略図である。
図9は、矩形板70に対する曲げ加工の後半の工程を示す概略図である。
図10は、ローラー本体71を枠部92から切り離す工程を示す概略図である。
【0044】
本実施形態におけるローラー本体71の形成には、順送プレス加工が用いられる。この加工法は、材料である金属板を一定のピッチで搬送しつつ、金属板に対して順次に打ち抜き加工及びプレス加工を施すものである。
【0045】
まず、図5に示すような、大型金属板9を準備する。大型金属板9は、1mmの厚みを持つ略矩形の鋼板であり、電気亜鉛めっき鋼板(SECC)や冷間圧延鋼板(SPCC)が用いられる。紙面上下方向での、大型金属板9の一対の縁部には複数の孔部91が、その縁部に沿って所定の間隔を空けて設けられている。孔部91は、大型金属板9に対して順送プレス加工を行うときに、一定のピッチで大型金属板9を搬送するために用いられ、大型金属板9は隣り合う孔部91の間隔毎に搬送される。
【0046】
次に、図6に示すように、順送プレス加工(ステップS1)における打ち抜き加工(ステップS11)によって、大型金属板9から矩形板(金属板)70を形成する。すなわち、大型金属板9から領域Sの部分を打ち抜き、矩形板70及び枠部92を形成する。
矩形板70は、所定の方向(紙面上下方向)で延在する略帯状の矩形金属板であって、大型金属板9から領域Sの部分が取り除かれることで形成される。なお、矩形板70における表裏の板面は、ローラー本体71の内外周面となるため、以下便宜的に外周面71a及び内周面71bと称する。図6では、矩形板70の紙面表側を内周面71b、紙面裏側を外周面71aとする。
【0047】
延在方向と直交する方向での、矩形板70の一対の端面である第1端面74及び第2端面75は、矩形板70を円筒状に形成したときに互いに接して接続部76を形成する箇所である。なお、打ち抜き加工後における第1端面74及び第2端面75は、共に外周面71aと略直交しており、内周面71b及び外周面71aはいずれも同一の幅となっている。
【0048】
第1端面74及び第2端面75には、それぞれ凸部79及び凹部80が形成されている。凸部79及び凹部80は、凹部80に凸部79が嵌合することで、第1端面74及び第2端面75の延在方向でのずれを防止するためのものである。凸部79の先端部79a、及び凹部80の底部80aは、共に矩形板70の延在方向と平行して形成されている。
【0049】
枠部92は、矩形板70の延在方向と直交する方向で延在する略帯状の板部であって、大型金属板9から領域Sの部分が取り除かれることで形成される。枠部92には、上述した孔部91が並んで配置されている。
矩形板70と枠部92との間には、それらを互いに連結する連結部93(いわゆるタイバー)が架け渡され、矩形板70は連結部93を介して枠部92に支持されている。
【0050】
次に、矩形板70の第1端面74及び第2端面75に対して、端面調整加工(ステップS12)を実施し、第1端面74及び第2端面75の、外周面71aに対する傾きを調整する。
図7に示すように、プレス加工によって第1端面74及び第2端面75の外周面71aに対する傾きを調整する。この調整により、第1端面74と外周面71aとで形成される第1角度α、及び第2端面75と外周面71aとで形成される第2角度βは、いずれも90°より小さくなる。なお、本実施形態では、第1角度α及び第2角度βはいずれも73°となっている。
【0051】
すなわち、矩形板70の板厚方向と第1端面74との間、及び上記板厚方向と第2端面75との間にそれぞれ形成される角度は、いずれも17°となっている。よって、矩形板70の板厚をt、端面調整後における外周面71aの幅方向での長さを第2外周面長L3、同じく端面調整後における内周面71bの幅方向での長さを第2内周面長L4とすると、板厚t、第2外周面長L3及び第2内周面長L4の間の関係は、下式(5)で表される。
L4≦L3−t×tan17° …(5)
【0052】
したがって、第2外周面長L3、第2内周面長L4及び板厚tの関係が、式(5)を満たしている場合には、矩形板70を曲げ加工して円筒状のローラー本体71を成形したときに、第1端面74と第2端面75とは少なくとも外周面71a側で互いに接することになる。
【0053】
本実施形態の端面調整加工では、第1端面74及び第2端面75のいずれに対しても加工を施している。そのため、例えば第1端面74及び第2端面75の近傍に加工による応力等が生じた場合であっても、その応力は一対の端面74及び75のいずれにも生じているため、矩形板70を曲げ加工して成形された搬送ローラー31(ローラー本体71)において、応力の不均一性を原因とする歪みや変形等を抑制することができる。
【0054】
ところで、第1端面74と第2端面75とは少なくとも外周面71a側で互いに接触すればよく、内周面71b側には第1端面74と第2端面75との間に隙間が形成されてもよい。そのため、調整後における第1端面74及び第2端面75の、外周面71aに対する傾きを厳格に調整する必要がなく、端面調整加工を容易に行うことができ、調整の手間がかからない。
【0055】
次に、矩形板70に対して、図8及び図9に示す順送プレス加工における曲げ加工(ステップS13)を施し、矩形板70を円筒状に成形する。なお、図8及び図9は、図6における線視C−Cでの断面図である。
【0056】
まず、図8(a)に示すように、第1雄型101と第1雌型102とで矩形板70を押圧し、矩形板70の幅方向での両縁部を略円弧状に曲げる。なお、図8(a)では、矩形板70と、第1雄型101及び第1雌型102との間にそれぞれ隙間が形成されているが、この隙間は実際には存在せず、矩形板70と、第1雄型101及び第1雌型102とは互いに密着している。これは、図8(b)、図9(a)ないし(c)においても同様である。
【0057】
次に、図8(b)に示すように、第2雄型103と第2雌型104とで矩形板70を押圧し、矩形板70の幅方向での中央部を略円弧状に曲げる。この曲げ加工により、矩形板70の断面形状は第2雄型103側に開口する略C字状となる。
【0058】
次に、図8(c)に示すように、第1上型105及び第2上型106と、下型107との間に断面視略C字状に形成された矩形板70を配置し、且つ、矩形板70の内側に円柱状の芯型108を配置する。
ここで、第1上型105、第2上型106及び下型107の、それぞれのプレス面105a、106a及び107aは、いずれも形成されるローラー本体71の外周面に応じた形状で形成されている。また、芯型108の外周面は、形成されるローラー本体71の内周面に応じた形状で形成されている。なお、第1上型105及び第2上型106は、互いに独立して移動可能である。
【0059】
次に、図9(a)に示すように、芯型108を静止させた状態で、第1上型105を下型107に向かって移動させ、矩形板70の第1端面74側を押圧し、略半円状に曲げる。なお、第1上型105及び第2上型106と同様に、下型107を一対の割型とし、図9(a)に示す工程の際に、第1上型105と同じ側の下型を第1上型105に向かって移動させてもよい。
【0060】
次に、図9(b)に示すように、芯型108を下型107に向けて多少移動させると共に、第2上型106を下型107に向かって移動させ、矩形板70の第2端面75側を押圧し、略半円状に曲げる。
【0061】
次に、図9(c)に示すように、第1上型105、第2上型106及び芯型108を共に下型107に向かって移動させ、矩形板70を押圧する。このとき、第1上型105及び第2上型106は、下型107に当接している。この押圧により、矩形板70は略円筒状に形成され、矩形板70からローラー本体71が形成される。また、矩形板70の第1端面74及び第2端面75は外周面71a側で互いに接し、接続部76が形成される。
【0062】
最後に、図10に示すように、ローラー本体71と連結部93との間を、カットラインDに従って切断する。なお、ローラー本体71が形成された状態では、凸部79は凹部80に嵌合しているが、凸部79の先端部79aと、凹部80の底部80aとの間には所定の隙間81が形成されている。この隙間81は、第1端面74と第2端面75とを互いに均一に接触させるために設けられるものである。
以上で、順送プレス加工(ステップS1)によるローラー本体71の形成が完了する。
【0063】
次に、略円筒状に形成されたローラー本体71の外周面に対して、公知のセンターレス研磨加工を施す(ステップS2)。この研磨加工によって、ローラー本体71の径、真円度及び振れが適切な精度に調整される。
【0064】
次に、ローラー本体71にめっき処理を施す(ステップS3)。
このめっき処理によって、ローラー本体71の内外周面、第1端面74及び第2端面75にめっき層78が形成される。なお、例えSECC等の予めめっき層が形成されている鋼板を用いたとしても、第1端面74及び第2端面75は打ち抜き加工等を用いて形成されており、鋼板の基材が露出し腐食しやすくなっているため、第1端面74及び第2端面75にはこの工程によって十分なめっき層を形成する必要がある。
【0065】
最後に、ローラー本体71の外周面71aにおける保持領域Fに、高摩擦層72を形成する。
まず、ローラー本体71の両端部をマスキングし、エポキシ系樹脂やポリエステル系樹脂を溶媒中に分散させ、この溶液をローラー本体71の外周面に塗布し、樹脂層を形成する。次に、粉体塗装法を用いてアルミナ粒子等のセラミックス粒子を、上記樹脂層の表面に付着させる。最後に、加熱処理により樹脂層を硬化させ、セラミックス粒子が表面に配置された高摩擦層72が形成される。
【0066】
なお、高摩擦層72を形成する方法としては、粉体塗装法の代わりに、セラミックス粒子を溶媒中に分散させ、この溶液を上記樹脂層の表面に塗布してもよい。また、予めセラミックス粒子をエポキシ系樹脂やポリエステル系樹脂と共に溶媒中に分散させ、この溶液をローラー本体71の外周面に塗布することで、セラミックス粒子を含んだ樹脂層を形成してもよい。
以上の方法によって、搬送ローラー31の成形が完了する。
【0067】
続いて、本実施形態におけるプリンター1の動作を、図1ないし図3を参照して説明する。
図1及び図2に示すように、給紙部2における給紙ローラー22の回転により、給紙トレー21に載置された記録紙Pが搬送部3に向けて供給される。
駆動部6の作動により、搬送ローラー31が回転する。また、搬送ローラー31の外周面と接触して設けられる従動ローラー32が、搬送ローラー31と相反する方向で回転する。給紙部2から供給された記録紙Pは、搬送ローラー31と従動ローラー32との間に挟持され、また、搬送ローラー31の保持領域Fには高摩擦層72が形成されているため、記録紙Pは搬送ローラー31に保持される。よって、記録紙Pは搬送ローラー31の回転と共に正確に搬送される。
【0068】
ここで、図3に示すように、第1端面74及び第2端面75は外周面71a側で互いに接しており、接続部76において外周面71a側の平滑度が向上している。そのため、搬送ローラー31が回転してもその外周面は記録紙Pと安定して接触することができる。すなわち、記録紙Pを高い精度で搬送することができる。
【0069】
搬送ローラー31の回転により、記録紙Pは、プラテン33におけるダイヤモンドリブ34の頂面上に搬送される。ダイヤモンドリブ34上に載置された記録紙Pに対して、キャリッジ52と共に適切な位置に移動した噴射ヘッド51からインクが噴射され、文字や画像等の情報が印刷される。この印刷後、記録紙Pは排紙部4の排紙ローラー41及び排紙ギザローラー42の回転により排出される。
以上で、本実施形態におけるプリンター1の動作が完了する。
【0070】
したがって、本実施形態によれば以下の効果を得ることができる。
本実施形態によれば、記録紙Pを搬送するために、矩形板70を曲げ加工して円筒状に形成された搬送ローラー31を用いた場合であっても、搬送ローラー31による記録紙Pの保持は常に維持されることから、記録紙Pを高い精度で搬送し且つ位置決めできるという効果がある。
【0071】
〔第2実施形態〕
第2の実施形態におけるプリンター1を、図11を参照して説明する。なお、図11において、図3に示す第1実施形態の構成要素と同一の要素については同一の符号を付し、その説明を省略する。
本実施形態におけるプリンター1は、第2搬送ローラー31Sを除いて第1の実施形態と同様である。よって、以下、本実施形態における第2搬送ローラー31Sについてのみ説明する。
【0072】
第2搬送ローラー31Sの構成を、図11を参照して説明する。
図11は、第2搬送ローラー31Sの構成を示す概略図であって、接続部76近傍の幅方向での断面図である。
第2搬送ローラー31Sは、第1の実施形態における搬送ローラー31の一変形例である。第2搬送ローラー31Sは、円筒軸である第2ローラー本体71Sと、高摩擦層72(図11では図示せず)とを有している。第2ローラー本体71Sは、金属板を曲げ加工して円筒状に形成された円筒軸であって、金属板の一対の端面である第1端面74と第2端面75とが互いに接する接続部76を有している。第1端面74と第2端面75とは、第2ローラー本体71Sの外周面71a側の端部で互いに接している。
【0073】
また、第1端面74と外周面71aとで形成される第1角度αは、90°より小さく形成され、第2端面75と外周面71aとで形成される第2角度βは、90°以上の大きさで形成されている。すなわち、接続部76における第1端面74及び第2端面75が、周方向に関して所定の方向に傾いた形状となっている。
そのため、この傾きに沿う方向で第2搬送ローラー31Sを回転させて記録紙Pを搬送すると、接続部76に搬送に伴う付勢力が加えられたとしても、第1端面74と第2端面75との離間は生じにくくなる。よって、搬送に伴って生じる虞のある、第2搬送ローラー31Sの歪みや変形等を抑制することができる。
【0074】
なお、本実施形態においても第1の実施形態と同様に、第2ローラー本体71Sにおける外周面71aの周長を外周面長L1、内周面71bの周長を内周面長L2、金属板の板厚をtとすると、上述した式(1)に示す関係を満たしている。
L2≦L1−2πt …(1)
【0075】
次に、第2搬送ローラー31Sの成形方法を説明する。本実施形態における成形方法で第1の実施形態と異なる点は、端面調整加工(ステップS12)のみであるため、他の工程は省略し端面調整加工についてのみ説明する。
本実施形態における端面調整加工(ステップS12)では、第1端面74のみにプレス加工を施し、第2端面75にはプレス加工等の調整加工を施していない。
【0076】
本実施形態における端面調整加工では第1端面74に対して調整を行い、調整後の第1端面74と外周面71aとで形成される第1角度αが90°より小さくなるようにする。また、第1端面74に対してのみ調整を行うため、第1端面74に対する調整量を第1の実施形態における調整量の凡そ2倍程度とする必要がある。よって、調整後の第1角度αは凡そ56°となっている。また、矩形板70(図11では図示せず)の板厚方向と第1端面74との間の角度は、凡そ34°となっている(第1の実施形態における17°の2倍)。
【0077】
一方、第2端面75に対して端面調整加工での調整は行わないため、打ち抜き加工(ステップS11)後の第2端面75は外周面71aと略直交しており、第2角度βもほぼ90°となっている。そして、曲げ加工(ステップS13)によって矩形板70を円筒状に形成することで、矩形板70の外周面71a側は幅方向で伸長され、内周面71b側は幅方向で圧縮される。この変形により、第2端面75と外周面71aとで形成される第2角度βは一般に90°よりも大きくなる。
【0078】
したがって、本実施形態によれば以下の効果を得ることができる。
本実施形態によれば、搬送時における第2搬送ローラー31Sによる記録紙Pの保持は常に維持されることから、記録紙Pを高い精度で搬送し且つ位置決めできるという効果がある。さらに、本実施形態によれば、第1端面74及び第2端面75の傾きに沿う方向で第2搬送ローラー31Sを回転させることで、第1端面74と第2端面75との離間が生じにくくなる。したがって、搬送に伴って生じる虞のある、第2搬送ローラー31Sの歪みや変形等を抑制できるという効果がある。
【0079】
〔第3実施形態〕
第3の実施形態におけるプリンター1を、図12を参照して説明する。なお、図12において、図3に示す第1実施形態の構成要素と同一の要素については同一の符号を付し、その説明を省略する。
本実施形態におけるプリンター1は、第3搬送ローラー31Tを除いて第1の実施形態と同様である。よって、以下、本実施形態における第3搬送ローラー31Tについてのみ説明する。
【0080】
第3搬送ローラー31Tの構成を、図12を参照して説明する。
図12は、第3搬送ローラー31Tの正面図である。
第3搬送ローラー31Tは、第1の実施形態における搬送ローラー31の第2の変形例である。第3搬送ローラー31Tは、円筒軸である第3ローラー本体71Tと、高摩擦層72(図12では図示せず)とを有している。第3ローラー本体71Tは、金属板を曲げ加工して円筒状に形成された円筒軸であって、金属板の一対の端面である第1端面74と第2端面75とが互いに接する接続部76を有している。第1端面74と第2端面75とは、第3ローラー本体71Tの外周面71a側の端部で互いに接している。す
なお、第3ローラー本体71Tの第1端面74及び第2端面75は、外周面71aとの間の角度がいずれも90°より小さくなるように調整されている。
【0081】
また、第3ローラー本体71Tは、その内周面71bに設けられ中心軸K方向に延在する1つの溝部82を有している。
第3ローラー本体71Tは、一対の端面74、75への加工により生じる応力や、一対の端面74、75が外周面71a側の端部で互いに接している形状などから、第3ローラー本体71Tの振れが生じやすくなる虞がある。ここで、内周面71bに溝部82を設けると、振れの原因となる金属板の応力や復元力等を緩和することができるため、振れの発生や程度を抑制することができる。
【0082】
さらに、本実施形態の溝部82は、中心軸Kを挟んで接続部76とは対称の位置に設けられている。
金属板を円筒状に形成しているため、第3ローラー本体71Tの振れは、接続部76と中心軸Kとを共に含む平面内で湾曲して生じる虞がある。ここで、溝部82が中心軸Kを挟んで接続部76とは対称の位置に設けられることで、第3ローラー本体71Tにおける上記平面の両側部分に対して、応力や復元力等を同様に緩和することができる。よって、振れの発生や程度を略均一且つ効果的に抑制することができる。
【0083】
なお、本実施形態では溝部82は1つのみ設けられているが、これに限定されるものではなく、内周面71bに中心軸K方向に延在する複数の溝部を形成してもよい。複数の溝部を設けることで、振れの抑制効果をより高めることができる。
さらに、第3ローラー本体71Tへの影響を、接続部76と中心軸Kとを共に含む平面に関して対称なものとするため、複数の溝部は上記平面を挟んで対称な位置に設けられることが好ましい。
【0084】
次に、第3搬送ローラー31Tの成形方法を説明する。
溝部82は、順送プレス加工(ステップS1)の工程において、プレス加工を用いて形成される(溝部形成工程)。また、溝部82を形成するためのプレス加工を、端面調整加工(ステップS12)や曲げ加工(ステップS13)と同時に行ってもよく、また独立して行ってもよい。
さらに、プレス加工だけでなく、切削加工等を用いて溝部82を形成してもよい。
【0085】
したがって、本実施形態によれば以下の効果を得ることができる。
本実施形態によれば、第1の実施形態によって得られる効果に加え、第3搬送ローラー31Tにおける振れの発生やその程度を略均一且つ効果的に抑制できるという効果がある。
【0086】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0087】
例えば、上記実施形態では、第1端面74と第2端面75とは外周面71a側の端部で互いに接しているが、これに限定されるものではなく、第1端面74と第2端面75とが全面で互いに接していてもよい。
【0088】
また、上記実施形態では、第1端面74及び第2端面75の形状は、凸部79及び凹部80の設置箇所を除いて、ローラー本体71の全長に亘り同一の形状であるが、これに限定されるものではなく、第1端面74及び第2端面75が、ローラー本体71の保持領域Fの範囲で、少なくとも外周面71a側で互いに接しているという構成であってもよい。
上述したように、保持領域Fは、搬送ローラー31が記録紙Pを従動ローラー32と共に挟持して保持する領域である。そのため、記録紙Pの正確な搬送及び位置決めのためには、保持領域Fの範囲で外周面71a側に露出する隙間や凹部等が存在しなければよい。また、保持領域Fの範囲のみに端面調整加工を施すことから、第1端面74及び第2端面75近傍に生じる加工による応力等が減少し、この応力等を原因とする搬送ローラー31の歪みや変形等を抑制することができる。
【0089】
また、上記実施形態では、打ち抜き加工(ステップS11)と端面調整加工(ステップS12)とをそれぞれ別の工程で行っているが、これに限定されるものではなく、大型金属板9の板面と所定の角度(垂直以外)を付けて、図6に示す領域Sを打ち抜くことで、打ち抜き加工と第1端面74及び第2端面75の調整とを同時に行うようにしてもよい。
【符号の説明】
【0090】
1…プリンター(印刷装置)、3…搬送部(搬送ユニット)、31…搬送ローラー、31S…第2搬送ローラー、31T…第3搬送ローラー、70…矩形板(金属板)、71a…外周面、71b…内周面、74…第1端面(端面)、75…第2端面(端面)、82…溝部、F…保持領域、K…中心軸、P…記録紙(記録媒体)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属板の一対の端面を対向させ円筒状に形成された、記録媒体を搬送する搬送ローラーの製造方法であって、
前記一対の端面のうち少なくとも一方の端面と、前記金属板の一方の板面とで形成される角度が90°より小さくなるように調整する調整工程と、
前記一方の板面が外周面となるように前記金属板を曲げて、前記一対の端面の少なくとも前記外周面側を互いに当接させて円筒状に形成する曲げ工程と、を有することを特徴とする搬送ローラーの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の搬送ローラーの製造方法において、
前記調整工程では、前記一対の端面をいずれも調整することを特徴とする搬送ローラーの製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載の搬送ローラーの製造方法において、
前記調整工程では、前記一方の端面のみを調整することを特徴とする搬送ローラーの製造方法。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の搬送ローラーの製造方法において、
前記調整工程では、前記端面の、前記搬送ローラーにおける前記記録媒体の保持領域に対応する箇所を調整することを特徴とする搬送ローラーの製造方法。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の搬送ローラーの製造方法において、
前記搬送ローラーの内周面に設けられ中心軸方向に延在する溝部を少なくとも1つ形成する溝部形成工程をさらに有することを特徴とする搬送ローラーの製造方法。
【請求項6】
請求項5に記載の搬送ローラーの製造方法において、
前記溝部は、前記中心軸を挟んで、互いに当接する前記一対の端部とは対称の位置に設けられていることを特徴とする搬送ローラーの製造方法。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の搬送ローラーの製造方法において、
前記曲げ工程において、前記一対の端面の内周面側は隙間を有することを特徴とする搬送ローラーの製造方法。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載の製造方法により製造された搬送ローラーを備えることを特徴とする搬送ユニット。
【請求項9】
請求項1から7のいずれか一項に記載の製造方法により製造された搬送ローラーを備えることを特徴とする印刷装置。
【請求項1】
金属板の一対の端面を対向させ円筒状に形成された、記録媒体を搬送する搬送ローラーの製造方法であって、
前記一対の端面のうち少なくとも一方の端面と、前記金属板の一方の板面とで形成される角度が90°より小さくなるように調整する調整工程と、
前記一方の板面が外周面となるように前記金属板を曲げて、前記一対の端面の少なくとも前記外周面側を互いに当接させて円筒状に形成する曲げ工程と、を有することを特徴とする搬送ローラーの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の搬送ローラーの製造方法において、
前記調整工程では、前記一対の端面をいずれも調整することを特徴とする搬送ローラーの製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載の搬送ローラーの製造方法において、
前記調整工程では、前記一方の端面のみを調整することを特徴とする搬送ローラーの製造方法。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の搬送ローラーの製造方法において、
前記調整工程では、前記端面の、前記搬送ローラーにおける前記記録媒体の保持領域に対応する箇所を調整することを特徴とする搬送ローラーの製造方法。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の搬送ローラーの製造方法において、
前記搬送ローラーの内周面に設けられ中心軸方向に延在する溝部を少なくとも1つ形成する溝部形成工程をさらに有することを特徴とする搬送ローラーの製造方法。
【請求項6】
請求項5に記載の搬送ローラーの製造方法において、
前記溝部は、前記中心軸を挟んで、互いに当接する前記一対の端部とは対称の位置に設けられていることを特徴とする搬送ローラーの製造方法。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の搬送ローラーの製造方法において、
前記曲げ工程において、前記一対の端面の内周面側は隙間を有することを特徴とする搬送ローラーの製造方法。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載の製造方法により製造された搬送ローラーを備えることを特徴とする搬送ユニット。
【請求項9】
請求項1から7のいずれか一項に記載の製造方法により製造された搬送ローラーを備えることを特徴とする印刷装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−38580(P2011−38580A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−185873(P2009−185873)
【出願日】平成21年8月10日(2009.8.10)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年8月10日(2009.8.10)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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