搬送ローラーの製造方法
【課題】円筒軸に成形される前の金属板に端面の調整を施したとしても、円筒軸の径や真円度等の精度を向上できる搬送ローラーの製造方法を提供すること。
【解決手段】本発明は、金属板30の一対の端面34、34を対向させ円筒状に成形された搬送ローラーの製造方法であって、金属板30を成形する金属板成形工程と、一対の端面34、34のうち少なくとも一方の端面を調整する調整工程と、金属板30を曲げて円筒状に成形する曲げ工程とを有し、金属板成形工程では、調整工程で金属板30に生じる変形に応じた形状で金属板30を成形する、という方法を採用する
【解決手段】本発明は、金属板30の一対の端面34、34を対向させ円筒状に成形された搬送ローラーの製造方法であって、金属板30を成形する金属板成形工程と、一対の端面34、34のうち少なくとも一方の端面を調整する調整工程と、金属板30を曲げて円筒状に成形する曲げ工程とを有し、金属板成形工程では、調整工程で金属板30に生じる変形に応じた形状で金属板30を成形する、という方法を採用する
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送ローラーの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、シート状の記録媒体に情報を印刷する印刷装置が用いられており、この印刷装置には被搬送物である記録媒体を搬送する搬送ユニットが設けられている。この搬送ユニットは、記録媒体を搬送する搬送ローラーを有している。搬送ローラーには中実の丸棒部材が一般的に使用されている。記録媒体は搬送ローラーに保持され、搬送ローラーが回転することで搬送される。また、この搬送と共に記録媒体に対して印刷が行われるため、適正な印刷のためには、記録媒体を高い位置決め精度で搬送する必要がある。
【0003】
一方、中実の部材は重量およびコストが嵩むという課題があり、さらなる軽量化およびコストの削減が検討されている。ここで、特許文献1には、金属板を曲げ加工して一対の端面を対向させて、中空の円筒軸を製造する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−289496号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来技術を印刷装置等の搬送ローラーに適用する場合には、下記のような課題があった。
高精度の搬送のためには、円筒軸の一対の端面が互いに対向する箇所において、外周面側に臨む隙間や凹部等が存在しないことが好ましい。そのため、略矩形の金属板を円筒状に成形する曲げ加工より前に、一対の端面のうち少なくとも一方の端面を調整して、一対の端面を外周面側で互いに隙間なく接触させることが行われている。端面の調整方法としては、例えば金属板を端面調整用の金型に配置し、板厚方向でプレスする方法がある。
【0006】
ここで、金属板を板厚方向でプレスすることにより、金属板の曲げ方向での幅が、長手方向での両端部と中央部とで異なってしまう場合がある。異なる幅の金属板を曲げて円筒軸を成形すると、円筒軸の径や真円度が安定せず、また円筒軸に反りが生じやすくなるという課題があった。また、このような円筒軸を搬送ローラーとして使用すると、記録媒体を高い位置決め精度で搬送することが難しくなるという課題があった。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、円筒軸に成形される前の金属板に端面の調整を施したとしても、円筒軸の径や真円度等の精度を向上できる搬送ローラーの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を採用する。
本発明は、金属板の一対の端面を対向させ円筒状に成形された搬送ローラーの製造方法であって、金属板を成形する金属板成形工程と、一対の端面のうち少なくとも一方の端面を調整する調整工程と、金属板を曲げて円筒状に成形する曲げ工程とを有し、金属板成形工程では、調整工程で金属板に生じる変形に応じた形状で金属板を成形する、という方法を採用する。
調整工程では金属板に変形が生じる場合があり、変形が生じた金属板から円筒軸を成形するとその径や真円度等の精度が低下する虞がある。本発明では、金属板成形工程において、調整工程で金属板に生じる変形に応じた形状で金属板を成形する。そのため、調整工程で端面を調整し金属板に変形が生じることで、曲げ工程に入る前の金属板の寸法等が、高い精度で円筒軸を成形するに適切なものとなる。
【0009】
また、本発明は、金属板成形工程では、端面の延在方向での中央部から両端部にそれぞれ向かうに従い漸次幅広となる形状で金属板を成形し、調整工程では、一対の端面のうち少なくとも一方の端面と金属板の板厚方向での一板面とで形成される角度が90°よりも大きくなるように調整し、曲げ工程では、一板面と逆側の他板面が外周面となるように金属板を曲げて一対の端面の少なくとも外周面側を互いに当接させて円筒状に成形する、という方法を採用する。
端面を調整するためにプレス加工を用いると、金属板の上記延在方向での両端部は互いに離間するように変位する。一方、上記延在方向での中央部は両端部と金型との間にあるため、その変位は規制されている。よって、端面の調整後では、金属板の両端部よりも中央部の幅が広くなる傾向があった。本発明では、中央部から両端部にそれぞれ向かうに従い幅広となる形状で金属板を成形する。端面調整加工を行うことで中央部は両端部よりもその幅の増加量が大きいため、端面調整後の金属板の幅を両端部と中央部との間で略同一とすることが可能となる。
【0010】
また、本発明は、調整工程では金属板における延在方向での一対の第2端面の変位を規制して端面を調整する、という方法を採用する。
本発明では、延在方向での第2端面の変位が規制されているため、金属板の両端部が互いに離間する方向で変位することが規制される。そのため、端面の調整を行うことで金属板の幅が両端部と中央部とで異なってしまうことを抑制することが可能となる。
【0011】
また、本発明は、調整工程では、金属板における延在方向での一対の第2端面と、一板面とで形成される角度がいずれも90°よりも大きくなるように、一対の第2端面を調整する、という方法を採用する。
本発明の調整工程では、一対の端面とともに、一対の第2端面を同様に調整する。第2端面が調整されることで、調整工程において金属板の上記延在方向での両端部が互いに離間して変位することが規制される。そのため、一対の端面を調整することで金属板の両端部と中央部とのそれぞれの幅が異なってしまうことを抑制することが可能となる。
【0012】
また、本発明は、調整工程では一対の端面をいずれも調整する、という方法を採用する。
本発明では、一対の端面のいずれにも調整が施される。一対の端面及びその近傍には、調整による応力が同様に生じることから、金属板を円筒軸に成形したときに応力の不均一を原因とする歪みや変形等を防止することが可能となる。
【0013】
また、本発明は、調整工程では一方の端面のみを調整する、という方法を採用する。
本発明では、一対の端面のうち他方の端面は調整されないので、その面は円筒軸の径方向に略平行している。一方の端面は調整されることで、円筒軸の所定の周方向に沿うように傾いている。この傾きに沿う方向で搬送ローラーを回転させ被搬送物を搬送させることによって、被搬送物から一対の端面の接続部分に付勢力が加えられたとしても、一対の端面が互いに離間することを防止することが可能となる。
【0014】
また、本発明は、曲げ工程では一対の端面はその内周面側に隙間を有した状態で互いに当接される、という方法を採用する。
本発明では、一対の端面の内周面側に隙間が形成されるため、円筒軸に曲げやねじり等の力が加えられた場合に、内周面側で一対の端面が互いに当接することにより外周面側に隙間等が生じることが防止される。よって、一対の端面を外周面側のみで確実に接触させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】プリンター1の全体構成図である。
【図2】搬送部3及び排紙部4の構成を示す概略図である。
【図3】搬送ローラー13の構成を示す概略図である。
【図4】第2搬送ローラー13Aの構成を示す概略図である。
【図5】搬送ローラー13を成形する工程を示すフロー図である。
【図6】大型金属板60の平面図である。
【図7】金属板30の平面図である。
【図8】打ち抜き加工の工程を示す断面図である。
【図9】端面調整加工における金属板30の配置を示す概略図である。
【図10】端面調整加工の工程を示す概略図である。
【図11】金属板30に対する曲げ加工の前半の工程を示す概略図である。
【図12】金属板30に対する曲げ加工の後半の工程を示す概略図である。
【図13】ローラー本体31を枠部62から切り離す工程を示す概略図である。
【図14】(a)は搬送ローラー13の斜視図、(b)は端部断面図である。
【図15】(a)はローラー本体31の端部斜視図、(b)は正面図である。
【図16】(a)はローラー本体31の端部斜視図、(b)は正面図である。
【図17】(a)はローラー本体31の端部斜視図、(b)は正面図である。
【図18】(a)〜(d)は展開係合部を示す金属板30の平面図である。
【図19】(a)〜(c)は展開係合部を示す金属板30の平面図である。
【図20】(a)、(c)はローラー本体31の繋ぎ目の形状を示す平面図、(b)は金属板30Aの平面図である。
【図21】(a)はローラー本体31の繋ぎ目の形状を示す平面図、(b)は金属板30Bの平面図である。
【図22】(a)はローラー本体31の繋ぎ目の形状を示す平面図、(b)は金属板30Cの平面図である。
【図23】搬送時の搬送ローラー13と記録紙Pとの関係を示す斜視図である。
【図24】(a)〜(c)はローラー本体31の繋ぎ目の形状を示す平面図である。
【図25】(a)〜(c)はローラー本体31の繋ぎ目の形状を示す平面図である。
【図26】ローラー本体31の繋ぎ目の形状を示す平面図である。
【図27】(a)は搬送ローラー13の平面図、(b)は(a)のD−D線視断面図、(c)は開口90の変形例を示す平面図である。
【図28】第2の実施形態における端面調整加工の工程を示す概略図である。
【図29】第3搬送ローラー13Bの構成を示す概略図である。
【図30】第3の実施形態における端面調整加工での金属板30の配置を示す概略図である。
【図31】第3の実施形態における端面調整加工の工程を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を、図1から図31を参照して説明する。以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更している。以下の説明では、印刷装置として、インクを記録媒体である紙等に噴射し、文字や画像等の情報を記録するインクジェット式のプリンター(以下、単に「プリンター」と称する)の例を示す。
【0017】
〔第1実施形態〕
本実施形態におけるプリンター1の構成を、図1を参照して説明する。
図1は、本実施形態におけるプリンター1の全体構成図である。
プリンター(印刷装置)1は、記録媒体である記録紙Pにインクを噴射し、文字や画像等の情報を記録する印刷装置である。プリンター1は、給紙部2と、搬送部(搬送ユニット)3と、排紙部4と、ヘッド部5と、制御部CONTとを有している。
【0018】
給紙部2は、記録紙Pを保持するとともに、記録紙Pを搬送部3に向けて供給するものであって、給紙トレー11と、給紙ローラー12とを有している。給紙トレー11は、複数枚の記録紙Pを保持するものである。記録紙Pとしては、インクによる印刷が可能なシート状の記録媒体が用いられ、普通紙、コート紙、OHP(オーバーヘッドプロジェクター)用シート、光沢紙及び光沢フィルム等が用いられる。
【0019】
給紙ローラー12は、回転することで記録紙Pを搬送部3に向けて供給するローラーであって、給紙トレー11の搬送部3側に設けられている。なお、給紙ローラー12の外周面と対向する位置には不図示の分離パッドが設けられており、該分離パッドと給紙ローラー12とが協働して記録紙Pを一枚ずつ搬送部3に供給することができる。
【0020】
搬送部3は、給紙部2から供給された記録紙Pを排紙部4に向けて搬送するものであり、且つ記録紙Pに対する印刷動作が行われる箇所である。搬送部3は、搬送ローラー13と、従動ローラー14と、プラテン15と、ダイヤモンドリブ16と、駆動部6(図2参照)とを有している。
【0021】
搬送ローラー13は、回転することで記録紙Pを所定の印刷位置に正確に搬送するためのローラーであって、給紙部2の給紙方向と直行する方向且つ水平方向で延在し、円筒状に成形された軸部材である。搬送ローラー13は、搬送部3に設けられた略U字型の一対の軸受(図示せず)に回転自在に支持され、駆動部6の駆動により回転する。なお、搬送ローラー13の詳細は後述する。
【0022】
従動ローラー14は、略円柱状の部材であって、搬送ローラー13の軸方向に沿って間隔をあけて複数配置されている。また、従動ローラー14は、後述する搬送ローラー13の高摩擦層32(図3参照)と対向する位置に回転自在に設けられている。従動ローラー14には不図示の付勢バネが設けられており、この付勢バネの付勢力によって、従動ローラー14は搬送ローラー13の高摩擦層32に付勢されて接触している。このため、従動ローラー14は搬送ローラー13の回転に従動して回転し、搬送ローラー13との間で記録紙Pを挟持することができる。なお、従動ローラー14の外周面には、高摩擦層32との摺動による摩耗・損傷を緩和するため、例えばフッ素樹脂塗装等の低摩耗処理が施されている。
【0023】
プラテン15は、ヘッド部5による記録紙Pへの印刷を行うときに、記録紙Pを下方から支持する箇所であり、水平面に略平行する上面を有している。ダイヤモンドリブ16は、プラテン15の上面から上方に向けて突出する突部であり、搬送ローラー13の軸方向に沿って間隔を空けて複数配置されている。また、ダイヤモンドリブ16の頂面は、水平面と略平行に形成されており、この頂面によって印刷時の記録紙Pが下方から支持される。
【0024】
排紙部4は、搬送部3から印刷後の記録紙Pを排出するものであって、排紙ローラー17と、排紙ギザローラー18とを有している。排紙ローラー17と排紙ギザローラー18とは、互いに相反する方向で回転でき、この回転によって記録紙Pを引き出して排出する。
【0025】
ヘッド部5は、搬送部3に載置されている記録紙Pに対してインクを噴射するものであって、噴射ヘッド19と、キャリッジ20とを有している。噴射ヘッド19は、制御部CONTの指示に従いインクを噴射する機器であって、その不図示の噴射口はダイヤモンドリブ16の頂面に対向して設けられている。キャリッジ20は、その下側に噴射ヘッド19を保持するものであって、搬送ローラー13の軸方向で往復移動自在に設けられている。また、キャリッジ20には、制御部CONTの指示に従ってキャリッジ20を往復移動させる不図示の駆動部が連結されている。
【0026】
次に、搬送ローラー13を回転させる構成について、図2を参照して説明する。
図2は、搬送部3及び排紙部4の構成を示す概略図であって、(a)は平面図、(b)は(a)のA矢視図である。
【0027】
上述したように、搬送部3は駆動部6を有している。駆動部6は、搬送ローラー13を回転させるものであって、モーター21と、ピニオンギア22とを有している。モーター21は、制御部CONTの指示に従い搬送ローラー13を回転させる電動機である。制御部CONTがモーター21の回転を制御することで搬送ローラー13の回転を制御しており、記録紙Pを高い位置決め精度で搬送できる構成となっている。ピニオンギア22は、モーター21の出力軸に一体的に接続されているギアである。
【0028】
搬送ローラー13には、第1駆動ギア23と、第2駆動ギア24と、第3駆動ギア25とが取り付けられている。第1駆動ギア23は、搬送ローラー13を回転させるためのギアであって、搬送ローラー13における駆動部6設置側の端部に、圧入によって一体的に取り付けられている。第1駆動ギア23はピニオンギア22と噛合しており、ピニオンギア22及び第1駆動ギア23を介してモーター21の駆動力が搬送ローラー13に伝達され、搬送ローラー13を回転させる構成となっている。
【0029】
第2駆動ギア24は、モーター21の駆動力を排紙ローラー17に伝達するためのギアであって、第1駆動ギア23よりも小さい径を有し、第1駆動ギア23に隣接して一体的に固定されている。また、第2駆動ギア24は、圧入によって搬送ローラー13に一体的に取り付けられている。
【0030】
第3駆動ギア25は、搬送ローラー13の回転駆動力を不図示の他の機器に伝達するためのギアであって、搬送ローラー13の第1駆動ギア23と逆側の端部に、圧入によって一体的に接続されている。なお、圧入を用いず、搬送ローラー13及び第3駆動ギア25のそれぞれに回り止め部(ピンや切欠部等)を設けることで、第3駆動ギア25が搬送ローラー13と同期して回転する構成としてもよい。
【0031】
排紙ローラー17における駆動部6側の端部には、排紙駆動ギア26が一体的に取り付けられている。排紙駆動ギア26と第2駆動ギア24との間には、中間ギア27が設けられ、中間ギア27は第2駆動ギア24及び排紙駆動ギア26のそれぞれと噛合している。すなわち、第2駆動ギア24、中間ギア27及び排紙駆動ギア26を介して、モーター21の駆動力が排紙ローラー17に伝達され、排紙ローラー17を回転させる構成となっている。
【0032】
次に、搬送ローラー13の構成を、図3を参照して説明する。
図3は、搬送ローラー13の構成を示す概略図であって、(a)は側面図、(b)は(a)のB−B線視断面図、(c)は(b)における繋ぎ目36近傍の拡大図である。搬送ローラー13は、円筒状に成形された軸部材であって、ローラー本体31と、高摩擦層32とを有している。
【0033】
ローラー本体31は、略一定の板厚の金属板を曲げて、円筒状に成形した軸部材である。金属板としては鋼板を用いているが、アルミやステンレス等の金属板を使用してもよい。ローラー本体31は、金属板の一対の端面34、34を互いに対向且つ当接させて、円筒状に成形している。一対の端面34、34の当接部分は繋ぎ目36となっている。繋ぎ目36は、ローラー本体31の中心軸方向と平行して延在している。
【0034】
一対の端面34、34は、ローラー本体31の外周面(他板面)31a側で互いに隙間なく当接している。すなわち、繋ぎ目36において、外周面31a側に開口する隙間や凹部等は存在しない。よって、搬送ローラー13の回転時に外周面31aと記録紙Pとの接触を常に維持することができる。一対の端面34、34の間の、ローラー本体31の内周面(一板面)31b側には、隙間37が形成されている。隙間37は、内周面31b側に向かうに従い漸次幅広となる形状となっている。
【0035】
ローラー本体31は、その表面に形成されためっき層38を有している。めっき層38は、外周面31a及び内周面31b、並びに一対の端面34、34の表面に形成されている。めっき層38は、電界めっき及び無電解めっきのいずれの方法を用いて形成してもよく、また複数のめっき層を重ねて形成してもよい。めっきの種類としては、例えばニッケルめっき、亜鉛めっき又はクロムめっき等が用いられる。
【0036】
高摩擦層32は、ローラー本体31の両端部以外の外周面31aに形成され、記録紙Pとの間の摩擦係数を向上させて記録紙Pを確実に保持するための塗装層である。記録紙Pを高い位置決め精度で搬送するためには、搬送ローラー13は記録紙Pを滑ることなく保持する必要があることから、外周面31aの、搬送中の記録紙Pが保持される領域である保持領域Fに、高摩擦層32が形成されている。
【0037】
高摩擦層32は、エポキシ系樹脂やポリエステル系樹脂等からなる樹脂層と、該樹脂層表面に分散して配置されるセラミックス粒子とを有している。このセラミックス粒子には、酸化アルミニウム(アルミナ)、炭化珪素又は二酸化珪素等が用いられる。セラミックス粒子は破砕処理によって粒径が調整されており、また、破砕処理を行うことでセラミックス粒子は鋭い端面を持ち、記録紙Pとの間の摩擦係数を向上させることができる。なお、高摩擦層32の代わりに、外周面31aに微細な凹凸(梨地処理等)を形成することで記録紙Pとの間の摩擦係数を向上させてもよい。
【0038】
なお、上述した搬送ローラー13の代わりに、その変形例である第2搬送ローラー(搬送ローラー)13Aを使用してもよい。搬送ローラー13の一変形例である第2搬送ローラー13Aを、図4を参照して説明する。
図4は、第2搬送ローラー13Aの構成を示す概略図である。なお、図4は、図3(c)に対応するものであり、図3に示す構成要素と同一の要素については同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0039】
第2搬送ローラー13Aは、第2ローラー本体31Aと、高摩擦層32とを有している。第2ローラー本体31Aは、略一定の板厚の金属板を曲げて円筒状に成形した軸部材であって、金属板の一対の端面34、34が互いに接する繋ぎ目36を有している。一対の端面34、34のうちの一方の端面である一端面34aは、外周面31a側から内周面31b側へ進むに従い、他方の端面である他端面34bの逆側に漸次向かって傾斜して形成されている。一方、他端面34bは、第2ローラー本体31Aの径方向に略平行して形成されている。
【0040】
一端面34aと他端面34bとは、外周面31a側で互いに隙間なく当接している。すなわち、繋ぎ目36において、外周面31a側に開口する隙間や凹部等は存在しない。一端面34aと他端面34bとの間の内周面31b側には、第2隙間(隙間)37Aが形成されている。第2隙間37Aは、内周面31b側に向かうに従い漸次幅広となる形状となっている。
【0041】
続いて、搬送ローラー13を成形する方法を、図5から図13を参照して説明する。
図5は、搬送ローラー13を成形する工程を示すフロー図であって、(a)は全体のフロー図、(b)は(a)における順送プレス加工の詳細なフロー図である。
【0042】
搬送ローラー13の成形工程の概略は、図5(a)に示すように、まず、材料である大型の金属板から順送プレス加工(打ち抜き加工及びプレス加工を連続して行うもの)によって円筒状のローラー本体31を成形する(ステップS1)。
【0043】
ステップS1の順送プレス加工の詳細は、図5(b)に示すように、まず、大型の金属板から、打ち抜き加工によって略矩形の金属板を成形する(ステップS11)。次に、金属板の一対の端面34、34をプレス加工によって調整する、端面調整加工を行う(ステップS12)。最後に、プレス加工を用いた曲げ加工によって、金属板を円筒状に曲げてローラー本体31を成形する(ステップS13)。
【0044】
続いて、図5(a)に示すように、ローラー本体31の外周面を研磨(センターレス研磨)して、その径、真円度及び反りを調整する(ステップS2)。次に、ローラー本体31の表面にめっき処理を施して、めっき層38を形成する(ステップS3)。最後に、ローラー本体31の外周面31aに高摩擦層32を形成する(ステップS4)。以上で、搬送ローラー13の成形が完了する。以下の説明では、順送プレス加工によって大型の金属板からローラー本体31を成形する工程であるステップS1を、特に詳細に説明する。
【0045】
順送プレス加工によって大型の金属板からローラー本体31を成形する工程(ステップS1)を、図6から図13を参照して説明する。まず、打ち抜き加工(ステップS11)を、図6から図8を参照して説明する。
図6は、ローラー本体31の材料となる大型金属板60の平面図である。
図7は、金属板30の平面図である。
図8は、打ち抜き加工の工程を示す断面図である。
【0046】
本実施形態におけるローラー本体31の成形には、順送プレス加工が用いられる。この加工法は、材料である金属板を一定のピッチで搬送しつつ、金属板に対して順次に打ち抜き加工及びプレス加工を施すものである。
【0047】
まず、図6に示すような、大型金属板60を準備する。大型金属板60は、凡そ1mmの厚みを持つ略矩形の鋼板であり、電気亜鉛めっき鋼板(SECC)や冷間圧延鋼板(SPCC)が用いられる。紙面上下方向での、大型金属板60の一対の縁部には複数の孔部61が、その縁部に沿って所定の間隔を空けて設けられている。孔部61は、大型金属板60に対して順送プレス加工を行うときに、一定のピッチで大型金属板60を搬送するために用いられ、大型金属板60は隣り合う孔部61の間隔毎に搬送される。
【0048】
次に、図7に示すように、順送プレス加工(ステップS1)における打ち抜き加工(ステップS11)によって、大型金属板60から略矩形の金属板30を成形する。すなわち、大型金属板60から領域Sの部分を打ち抜き、金属板30及び枠部62を成形する。金属板30は、大型金属板60の順送方向と直行する方向(紙面上下方向)で延在する略帯状の金属板であって、大型金属板60から領域Sの部分が取り除かれることで成形される。なお、金属板30における板厚方向での表裏の板面は、ローラー本体31の内外周面となるため、以下便宜的に外周面31a及び内周面31bと称する。図7では、金属板30の紙面表側を内周面31b、紙面裏側を外周面31aとする。
【0049】
金属板30の延在方向と直交する方向での、金属板30の一対の端面34、34は、金属板30を円筒状に成形したときに互いに接して繋ぎ目36を形成する箇所である。なお、打ち抜き加工後における一対の端面34、34は、ともに外周面31aや内周面31bと略直交している。また、端面34の延在方向(略紙面上下方向)での、金属板30の一対の端面である第2端面35、35は、互いに略平行している。
【0050】
金属板30は、端面34の延在方向での、中央部から両端部にそれぞれ向かうに従い漸次幅広となる形状で成形される。すなわち、金属板30の中央部での幅W1は、両端部での幅W2、W2よりも狭くなっている。また、一対の端面34、34は、平面視で略弧状に形成されている。
なお、幅W1及び幅W2は、後述する端面調整加工時の金属板30に生じる変形に応じて設定されている。すなわち、幅W1と幅W2は、金属板30に変形が生じた後にその寸法等が、高い精度でローラー本体31を成形するに適切なものとなるように設定されている。例えば、金属板30に変形が生じた後に金属板30の幅が、延在方向に関していずれの部分でも同一の大きさとなるように設定されている。
【0051】
枠部62は、金属板30の延在方向と略直交する方向で延在する略帯状の板部であって、大型金属板60から領域Sの部分が取り除かれることで成形される。枠部62には、上述した孔部61が並んで配置されている。金属板30と枠部62との間には、それらを互いに連結する連結部63(いわゆるタイバー)が架け渡され、金属板30は連結部63を介して枠部62に支持されている。連結部63は、一対の第2端面35、35のそれぞれの中央部に連結されている。
【0052】
なお、打ち抜き加工時に金属板30の端面(切断面)に形成される破断面やバリ等が、後述する曲げ加工では曲げ方向の内側に配置されるようにすることが好ましい。
金属板30は、図8に示すような打ち抜き加工によって大型金属板60から成形される。まず、図8(a)に示すように、大型金属板60の板厚方向での両側に、打ち抜き加工用の金型である雄型101及び雌型102をそれぞれ配置する。次に、図8(b)に示すように、雄型101を雌型102側に移動させ、これらの金型で大型金属板60を切断し、金属板30を成形する。
【0053】
金属板30の切断面、すなわち一対の端面34、34には、ダレsd、せん断面sp、破断面bs及びバリ(図示せず)が形成される場合がある。ここで、比較的滑らかなダレsdと接続している紙面上側の面を外周面31aとし、破断面bsと接続し且つバリが生じる虞のある紙面下側の面を内周面31bとする。このような方向で金属板30を曲げることで、ローラー本体31を成形する際に破断面bsやバリが障害となって一対の端面34、34が互いに離間することを防止できる。
【0054】
また、上記方向で金属板30を曲げて一対の端面34、34を互いに当接させることで、破断面bsやバリがローラー本体31の内側に設けられ、外周面31aから突出することを防止できる。そのため、バリ取り工程を省略してローラー本体31の生産性を向上させることができる。
【0055】
次に、金属板30の一対の端面34、34に対して、端面調整加工(ステップS12)を実施する。端面調整加工を、図9及び図10を参照して説明する。
図9は、端面調整加工における金属板30の配置を示す概略図であって、(a)は断面図、(b)は調整用雌型110の底面図である。
図10は、端面調整加工の工程を示す概略図であって、(a)は調整時の断面図、(b)は調整時の金属板30の平面図、(c)は端面調整後の金属板30の断面図である。なお、図9及び図10における断面図は、図7におけるC−C線視での断面図である。
【0056】
図9に示すように、端面調整加工に用いられる調整用雌型110と調整用雄型120との間に、金属板30を配置する。調整用雌型110には、金属板30が配置される溝部111が形成されている。溝部111は、金属板30の延在方向に延びており、調整用雄型120に対向して形成され、底面112と、一対の内側面113、113とを備えている。底面112は、金属板30の板厚方向での板面が当接する面であって、調整用雄型120に対向する平面状に形成されている。
【0057】
一対の内側面113は、金属板30の一対の端面34、34を調整するための平面状の側面であって、いずれも金属板30の延在方向に平行して且つ一方向に延びて形成されている。また、一対の内側面113は互いに平行して延在している。一対の内側面113、113は、底面112から調整用雄型120に向かうに従い、漸次互いに離間するように傾斜している。すなわち、一対の内側面113、113の間の幅は、底面112から調整用雄型120に向かうに従い漸次幅広となっている。
【0058】
調整用雄型120には、調整用雌型110側に向かって突出する凸部121が設けられている。凸部121における調整用雌型110側の頂面は、底面112と平行する平面状に形成されている。凸部121の突出高さは、溝部111内に配置された金属板30をプレスして調整できる大きさに設定されている。
【0059】
図10に示すように、調整用雌型110と調整用雄型120とを互いに当接させて、金属板30をプレスする。ここで、金属板30は板厚方向でプレスされるため、金属板30は金属板30の幅方向及び延在方向のいずれにも伸長する。ここで、溝部111には、金属板30の一対の第2端面35に対向する部分は設けられていないため、一対の第2端面35は互いに離間するように変位する。すなわち、金属板30の延在方向での両端部が、延在方向で伸長する。一方、金属板30の中央部は両端部の間に位置していることから、延在方向で伸長することはできず、伸長の方向はほぼ幅方向のみとなる。したがって、金属板30の中央部は、両端部に比べて幅方向に大きく伸長する。
【0060】
もっとも、本実施形態では、打ち抜き加工後における金属板30の中央部での幅は両端部に比べて狭く設定されている。よって、金属板30の中央部が、両端部に比べて幅方向に大きく伸長することで、調整後の金属板30の寸法等が、高い精度でローラー本体31を成形するに適切なものに変形して設定される。本実施形態では、金属板30に変形が生じた後に金属板30の幅が、延在方向に関していずれの部分でも略同一の大きさとなる。そのため、後述する曲げ工程で金属板30から円筒状のローラー本体31を成形すると、高い精度の径や真円度等を備えたローラー本体31を成形することができる。
【0061】
また、端面調整加工によって金属板30は幅方向で伸長するため、金属板30の一対の端面34、34が、調整用雌型110の一対の内側面113の傾きに沿って調整される。すなわち、一対の端面34、34の、内周面31bに対する角度が調整される。一対の端面34、34と内周面31bとで形成される角度α、αは、いずれも90°よりも大きくなる。
【0062】
また、端面調整加工を施すことで、外周面31aの幅方向での長さである外周面幅W3は、内周面31bの幅方向での長さである内周面幅W4よりも大きくなっている。そのため、金属板30を曲げて円筒状のローラー本体31を成形したときに、外周面31a側で一対の端面34、34を隙間なく当接させることが容易になる。
【0063】
本実施形態の端面調整加工では、一対の端面34、34のいずれに対しても加工を施している。そのため、例えば一対の端面34、34の近傍に加工による応力等が生じた場合であっても、その応力は一対の端面34、34のいずれにも生じているため、金属板30を曲げ加工して成形された搬送ローラー13(ローラー本体31)において、応力の不均一性を原因とする歪みや変形等を抑制することができる。
【0064】
なお、上述した端面調整加工を、一対の端面34、34のいずれか一方のみ(例えば一端面34aのみ)に施してもよい。このように調整することで、図4に示す第2ローラー本体31Aを成形することができる。
この場合は、繋ぎ目36における一端面34aが、周方向に関して所定の方向に傾いた形状となっている。この傾きに沿う方向で第2搬送ローラー13Aを回転させて記録紙Pを搬送すると、繋ぎ目36に対して搬送に伴う付勢力が加えられたとしても、一対の端面34、34の離間は生じにくくなる。よって、搬送に伴って生じる虞のある、第2搬送ローラー13Aの歪みや変形等を抑制することができる。
【0065】
また、上述した端面調整加工を、図3に示す保持領域Fに対応する箇所にのみ施してもよい。
【0066】
次に、金属板30に対して、図11及び図12に示す順送プレス加工における曲げ加工(ステップS13)を施し、金属板30を円筒状に成形する。
図11は、金属板30に対する曲げ加工の前半の工程を示す概略図であって、(a)は第1の工程を示す断面図、(b)は第2の工程を示す断面図、(c)は曲げ加工で用いられる芯金208の配置を示す断面図である。
図12は、金属板30に対する曲げ加工の後半の工程を示す概略図であって、(a)は第3の工程を示す断面図、(b)は第4の工程を示す断面図、(c)は第5の工程を示す断面図である。なお、図11及び図12は、図7におけるC−C線視での断面図である。
【0067】
まず、図11(a)に示すように、第1雄型201と第1雌型202とで金属板30を押圧し、金属板30の幅方向での両縁部を略円弧状に曲げる。なお、図11(a)では、金属板30と、第1雄型201及び第1雌型202との間にそれぞれ隙間が形成されているが、この隙間は実際には存在せず、金属板30と、第1雄型201及び第1雌型202とは互いに密着している。これは、図11(b)、図12(a)ないし(c)においても同様である。
【0068】
次に、図11(b)に示すように、第2雄型203と第2雌型204とで金属板30を押圧し、金属板30の幅方向での中央部を略円弧状に曲げる。この曲げ加工により、金属板30の断面形状は第2雄型203側に開口する略C字状となる。
【0069】
次に、図11(c)に示すように、第1上型205及び第2上型206と、下型207との間に断面視略C字状に成形された金属板30を配置し、且つ、金属板30の内側に円柱状の芯金208を配置する。ここで、第1上型205、第2上型206及び下型207の、それぞれのプレス面205a、206a及び207aは、いずれも成形されるローラー本体31の外周面31aに応じた形状となっている。また、芯金208の外周面は、成形されるローラー本体31の内周面31bに応じた形状となっている。なお、第1上型205及び第2上型206は、互いに独立して移動可能である。
【0070】
次に、図12(a)に示すように、芯金208を静止させた状態で、第1上型205を下型207に向かって移動させ、金属板30の一対の端面34、34の一方側を押圧し、略半円状に曲げる。なお、第1上型205及び第2上型206と同様に、下型207を一対の割型とし、図12(a)に示す工程の際に、第1上型205と同じ側の下型を第1上型205に向かって移動させてもよい。
【0071】
次に、図12(b)に示すように、芯金208を下型207に向けて多少移動させるとともに、第2上型206を下型207に向かって移動させ、金属板30の第2端面35側を押圧し、略半円状に曲げる。
【0072】
次に、図12(c)に示すように、第1上型205、第2上型206及び芯金208をともに下型207に向かって移動させ、金属板30を押圧する。このとき、第1上型205及び第2上型206は、下型207に当接している。この押圧により、金属板30は略円筒状に成形され、金属板30からローラー本体31が成形される。なお、この工程で、金属板30の一対の端面34、34は外周面31a側で互いに当接する。一方、一対の端面34、34の内周面31b側には、隙間37が形成される。
【0073】
本実施形態では、端面調整加工で金属板30に変形が生じた後の金属板30の幅が、延在方向に関していずれの部分でも略同一の大きさとなる。そのため、曲げ工程で金属板30からローラー本体31を成形すると、高い精度の径や真円度等を備えたローラー本体31を成形することができる。高い精度のローラー本体31を成形できるため、後述するセンターレス研磨加工の加工量を少なくでき、製造のコストを抑制することができる。
【0074】
また、一対の端面34、34の内周面31b側に隙間37が形成されるため、ローラー本体31に曲げやねじり等の力が加えられた場合に、内周面31b側で一対の端面34、34が互いに当接することにより外周面31a側に隙間や凹部等が生じることが防止される。よって、一対の端面34、34を外周面31a側のみで確実に接触させることができる。
【0075】
なお、ローラー本体31(搬送ローラー13)は、鋼板コイルによる巻きぐせが残った大型金属板60を用いて成形されるので、コイルの内周側であった面がローラー本体31の内周面となるように成形することが好ましい。すなわち、鋼板コイルによる大型金属板60の巻きぐせは、鋼板コイルの内周面であった面が凹面となるような反りである。つまり、ローラー本体31を成形する大型金属板60には、ローラー本体31の内周面側に反るような巻きぐせが残っている。
【0076】
そのため、少なくともローラー本体31の繋ぎ目36を開く方向には巻きぐせが作用しなくなる。したがって、ローラー本体31の外周面側に反るような巻きぐせが残っている場合と比較して、ローラー本体31の繋ぎ目36を開き難くするができる。これにより、ローラー本体31の繋ぎ目36を開く方向に応力が作用した場合であっても、繋ぎ目36が開くことを防止することができ、高い搬送精度が得られる搬送ローラー13が得られる。
【0077】
また、ローラー本体31の周方向(曲げ方向)と鋼板コイルの巻回方向(大型金属板60の圧延方向)とが同一となっている。そのため、ローラー本体31を成形する大型金属板60の曲げ方向と巻きぐせによる反りの方向とを一致させることができる。これにより、ローラー本体31を成形する大型金属板60の巻きぐせが、ローラー本体31の繋ぎ目36を閉じる方向に作用する。したがって、ローラー本体31の繋ぎ目36の開きをより効果的に防止することができる。
以上で金属板30の曲げ加工が終了し、金属板30は円筒状に成形される。
【0078】
最後に、図13に示すように、ローラー本体31と連結部63との間を、カットラインGに従って切断する。図13は、ローラー本体31を枠部62から切り離す工程を示す概略図である。
以上で、順送プレス加工(ステップS1)によるローラー本体31の成形が完了する。
【0079】
次に、略円筒状に成形されたローラー本体31の外周面に対して、公知のセンターレス研磨加工を施す(ステップS2)。この研磨加工によって、ローラー本体31の径、真円度及び反りの精度が適切な範囲に調整される。
【0080】
次に、ローラー本体31にめっき処理を施す(ステップS3)。このめっき処理によって、ローラー本体31の内外周面、一対の端面34、34、及び一対の第2端面35、35にめっき層38が形成される。なお、例えSECC等の予めめっき層が形成されている鋼板を用いたとしても、端面34や第2端面35は打ち抜き加工により鋼板の基材が露出し、腐食しやすくなっているため、端面34及び第2端面35にはこの工程によって十分なめっき層を形成する必要がある。
【0081】
最後に、ローラー本体31の外周面31aにおける保持領域Fに、高摩擦層32を形成する。まず、ローラー本体31の両端部をマスキングし、エポキシ系樹脂やポリエステル系樹脂を溶媒中に分散させ、この溶液をローラー本体31の外周面に塗布し、樹脂層を形成する。次に、粉体塗装法を用いてアルミナ粒子等のセラミックス粒子を、上記樹脂層の表面に付着させる。最後に、加熱処理により樹脂層を硬化させ、セラミックス粒子が表面に配置された高摩擦層32が形成される。
【0082】
なお、高摩擦層32を形成する方法としては、粉体塗装法の代わりに、セラミックス粒子を溶媒中に分散させ、この溶液を上記樹脂層の表面に塗布してもよい。また、予めセラミックス粒子をエポキシ系樹脂やポリエステル系樹脂とともに溶媒中に分散させ、この溶液をローラー本体31の外周面に塗布することで、セラミックス粒子を含んだ樹脂層を形成してもよい。
以上の方法によって、搬送ローラー13の成形が完了する。
【0083】
なお、ローラー本体31(搬送ローラー13)の両端部には、上述したようにその一方あるいは両方に、図2に示した第1駆動ギア23や第3駆動ギア25など、種々の連結部品に連結するための係合部が形成されている。例えば、図14(a)、(b)に示すように、円筒状のパイプ(中空パイプ)からなるローラー本体31の相対向する位置、すなわちローラー本体31の直径を規定する二点の形成面に、それぞれ貫通孔71a、71aを形成し、これら一対の貫通孔71a、71aを含んでなる係合孔(係合部)71を形成することができる。この係合孔71によれば、歯車等の連結部品72を軸やピン等(図示せず)によって固定することができる。
【0084】
また、図15(a)、(b)に示すように、ローラー本体31の端部にDカット状の係合部73を形成することもできる。この係合部73は、円筒状の中空パイプ(ローラー本体31)の端部に形成されたもので、図15(a)に示すようにその一部が平面視矩形状に切り欠かれた開口73aを有し、これによって図15(b)に示すように端部側面の外形が見掛け上D状に形成されたものである。
【0085】
したがって、歯車等の連結部品(図示せず)を、この見掛け上D状に形成された係合部73に係合させることにより、該連結部品をローラー本体31(搬送ローラー13)に対し空回りさせることなく、取り付けることができる。また、この係合部73については、中空パイプ(ローラー本体31)の内部孔に通じる溝状の開口73aが形成されていることから、この開口73aを利用することによっても、連結部品をローラー本体31に対し空回りさせることなく取り付けることができる。具体的には、連結部品に凸部を形成しておき、この凸部を開口73aに嵌合させることにより、空回りを防止することができる。
【0086】
また、図16(a)、(b)に示すように、ローラー本体31の端部に溝74aとDカット部74bとを有した係合部74を形成することもできる。この係合部74において、Dカット部74bはローラー本体31の端部に形成されており、溝74aはDカット部74bより内側に形成されている。溝74aは、図16(a)に示すように、ローラー本体31がその周方向に略半分切り欠かれて形成されたものである。Dカット部74bは、溝74aの外側において該溝74aと直交する方向に延在する開口74cを有し、この開口74cの両側に、一対の折曲片74d、74dを有したものである。すなわち、図16(b)に示すようにこれら一対の折曲片74d、74dがローラー本体31の中心軸側に折曲させられたことにより、これら折曲片74d、74dに対応する部分が、ローラー本体31の円形の外周面から凹んだ状態となっている。
【0087】
したがって、歯車等の連結部品(図示せず)を、溝74aに係合させまたはDカット部74bに係合させることにより、該連結部品をローラー本体31(搬送ローラー13)に対し空回りさせることなく、取り付けることができる。また、この係合部74では、折曲片74d間に形成された開口74cを利用することによっても、連結部品をローラー本体31に対し空回りさせることなく取り付けることができる。具体的には、連結部品に凸部を形成しておき、この凸部を開口74cに嵌合させることにより、空回りを防止することができる。
【0088】
また、図17(a)、(b)に示すように、ローラー本体31の端部に溝75aと開口75bとを有した係合部75を形成することもできる。この係合部75において、開口75bはローラー本体31の外端に形成されており、溝75aは開口75bより内側に形成されている。溝75aは、図17(a)に示すように、ローラー本体31がその周方向に略半分切り欠かれて形成されたものである。開口75bは、溝75aの外側においてローラー本体31の一部が平面視矩形状に切り欠かれ、これによって図17(b)に示すように端部側面の外形が見掛け上D状に形成されたものである。
【0089】
したがって、歯車等の連結部品(図示せず)を、溝75aに係合させまたは開口75bによって形成された見掛け上D状に形成された部位に係合させることにより、該連結部品をローラー本体31(搬送ローラー13)に対し空回りさせることなく、取り付けることができる。また、この係合部75でも、図15(a)、(b)に示した係合部73と同様に、開口75bを利用することによって、連結部品をローラー本体31に対し空回りさせることなく取り付けることができる。
【0090】
このような係合孔71や係合部73、74、75を形成するには、金属板30を曲げ加工して得られたローラー本体31に対して、さらに切削加工等を施すことで行うこともできる。しかし、その場合には、ローラー本体31に対して係合部の形成だけのために別途加工工程を追加することで、コストや時間についての効率が低下してしまう。そこで、本発明の製造方法では、ローラー本体31を曲げ加工(S13)によって成形する前に、打ち抜き加工(S11)によって係合部となる展開係合部を金属板30に形成しておき、その後、金属板30を曲げ加工によりローラー本体31を成形する際に、係合部も同時に形成する。
【0091】
具体的には、図6に示した大型金属板60から図7に示したような細長い略矩形板状の金属板30を成形する際、この大型金属板60から小型の金属板30への加工と同時に、得られる金属板30の端部に、切欠状、突片状、孔状、あるいは溝状等の展開係合部を形成する。
【0092】
例えば、図18(a)に示すように金属板30の端部の所定位置に一対の貫通孔71a、71aを加工し、これらを展開係合部76aとしておくことにより、この金属板30を曲げ加工することで一対の貫通孔71a、71aを対向させ、図14に示した係合孔71を形成することができる。
【0093】
また、図18(b)に示すように、金属板30の端部を所定形状に切り欠いて一対の切欠部73b、73bからなる展開係合部73cとしておくことにより、この金属板30を曲げ加工することで図15に示した係合部73を形成することができる。
【0094】
さらに、図18(c)に示すように、金属板30の端部を所定形状に切り欠いて展開係合部76bとしておくことにより、この金属板30を曲げ加工することで図16に示した係合部74を形成することができる。すなわち、展開係合部76bとして、一対の切欠部(凹部)74e、74eと一対の突片74f、74fとを形成しておくことにより、係合部74を形成することができる。ただし、この例では、金属板30を曲げ加工した後、一対の突片74f、74fを内側に折り曲げ加工して折曲片74dとする必要があるため、加工工程についてのコストや時間の効率化を十分に高めるにはやや不十分である。
【0095】
そこで、図18(d)に示すように、金属板30の端部を所定形状に切り欠いて展開係合部76cとしておくことにより、この金属板30を曲げ加工することで図17に示した係合部75を形成することができる。すなわち、展開係合部76cとして、一対の切欠部(凹部)75c、75cと一対の突片75d、75dとを形成しておくことにより、係合部75を形成することができる。この例では、金属板30を曲げ加工した際に一対の突片75d、75dも円弧状に曲げることにより、これら突片75d、75d間に図17(b)に示した開口75bを形成することができる。したがって、曲げ加工によって形成したローラー本体31に対し、さらに加工を追加する必要がなく、これにより加工工程についてのコストや時間の効率化を十分に高めることができる。
【0096】
ここで、図18(b)〜(d)に示した例では、図15、図16、図17に示した係合部73、74、75が繋ぎ目36を挟んで形成されるよう、金属板30の両端部に展開係合部73c、76b、76cを形成している。このように、展開係合部73c、76b、76cを両端部に形成することにより、形成するローラー本体31の繋ぎ目36を、このローラー本体31の長さより短くすることができる。したがって、繋ぎ目36の形成の際に端面34、35が部分的に当接し干渉することなどによる、ローラー本体31の変形を抑えることが可能になる。
【0097】
ただし、本発明はこれに限定されることなく、図19(a)〜(c)に示すように、展開係合部を金属板30の両端部に形成することなく、その幅方向(曲げ方向)における中心線の近傍に形成することもできる。すなわち、図19(a)に示すように端部に細長い矩形状の切欠からなる展開係合部76dを形成することで、図15に示した係合部73を形成することができる。また、図19(b)に示すようなT字状の切欠からなる展開係合部76eを形成することで、図16に示した係合部74を形成することができ、さらに、図19(c)に示すような略T字状の切欠からなる展開係合部76fを形成することで、図17に示した係合部75を形成することができる。
このように展開係合部76d〜76fを曲げ方向における中心線の近傍に形成すれば、これら展開係合部76d〜76fから得られる係合部73〜75を、より精度良く形成することができる。
【0098】
以上説明したように本実施形態の搬送ローラー13の製造方法では、大型金属板60から打ち抜き加工によって小型の金属板30を成形する際に、展開係合部も同時に形成し、さらに、金属板30を曲げ加工する際に、展開係合部から係合部71、73、74、75を形成するようにしたので、ローラー本体31を形成した後、係合部の形成だけのために別途加工工程を追加する必要がなくなる。
したがって、追加する加工工程にかかるコストや時間が不要になることで、搬送ローラー13自体の十分なコストダウンが可能になり、生産性も向上する。特に、大型金属板を小型化する際に展開係合部を一括して形成するので、工程を一層簡略化することができる。
【0099】
また、図13に示したように本実施形態における搬送ローラー13(ローラー本体31)では、その繋ぎ目36を、円筒状の中空パイプからなるローラー本体31の中心軸と平行になるように形成したが、本発明はこれに限定されることなく、例えば基材となる金属板30の一対の端部間に形成される繋ぎ目を、円筒状パイプ(ローラー本体)の外周面上における、該円筒状パイプの中心軸に平行な直線上において、該直線に対して線分で重なることなく、一つあるいは複数の点でのみ重なるように形成してもよい。
【0100】
具体的には、図20(a)に示すように繋ぎ目81として、ローラー本体31の中心軸C1に平行となることなくこれに交差するように、ローラー本体31の外周面をその周方向に延びつつ、ローラー本体31の一端から他端にかけて延在するように形成してもよい。このように繋ぎ目81を形成するには、基材となる金属板として、図7に示したような細長い矩形状の金属板30でなく、図20(b)に示すように細長い平行四辺形の金属板30Aを用い、符号C2で示す直線が中心軸となるように曲げ加工する。これにより、図20(a)に示したローラー本体31が得られ、繋ぎ目81が中心軸C1に対して非平行となる。
【0101】
なお、図20(a)に示したローラー本体31では、その繋ぎ目81が、ローラー本体31の一端から他端にかけて、その周面を一周未満しか回らないように形成している。これは、金属板30Aの曲げ加工を容易にするためである。ただし、図20(c)に示すように繋ぎ目82が、ローラー本体31の一端から他端にかけて、その周面を一周以上回るように、すなわち螺旋状に回るように形成してもよい。その場合には、基材となる金属板として、図20(b)に示した細長い平行四辺形の金属板30Aにおける、角度γをより鋭角にすればよい。
【0102】
また、図21(a)に示すように繋ぎ目83を、サイン波等の曲線からなる波線状に形成してもよい。このように繋ぎ目83を形成するには、基材となる金属板として、図21(b)に示すように、細長い略矩形状で、その両方の長辺が波線状に形成された金属板30Bを用い、符号C2で示す直線が中心軸となるように曲げ加工する。なお、波線状に形成された一対の長辺は、曲げ加工によってこれらが近接させられるため、当然ながら互いに対応する箇所間では、一方の長辺が山部となる場合に他方の長辺では谷部となり、逆に、一方の長辺が谷部となる場合に他方の長辺では山部となるように形成する。また、この例では、繋ぎ目83の中心線がローラー本体31の中心軸と平行になるように形成したが、この繋ぎ目83の中心線も、ローラー本体31の中心軸と非平行になるように形成してもよい。その場合に、基材となる金属板として、図20(b)に示したような細長い平行四辺形の金属板で、かつ、その両方の長辺が波線状に形成されたものを用いればよい。
【0103】
また、図22(a)に示すように繋ぎ目84を、鉤状に折れ曲がった波線状に形成してもよい。このように繋ぎ目84を形成するには、基材となる金属板として、図20(b)に示すように、細長い略矩形状で、その両方の長辺が鉤状に折れ曲がった波線状に形成された金属板30Cを用い、符号C2で示す直線が中心軸となるように曲げ加工する。
この金属板30Cにおいても、波線状に形成された一対の長辺において互いに対応する箇所間では、一方の長辺が山部となる場合に他方の長辺では谷部となり、逆に、一方の長辺が谷部となる場合に他方の長辺では山部となるように形成する。なお、この例でも、繋ぎ目84の中心線がローラー本体31の中心軸と平行になるように形成したが、繋ぎ目83の場合と同様に、ローラー本体31の中心軸と非平行になるように形成してもよい。
【0104】
また、繋ぎ目については、図20〜図22に示した例に限定されることなく、種々の形状を採用することができる。例えば、図21(a)に示した曲線からなる波線と、図22(a)に示した折れ曲がった波線とを組み合わせてもよく、これらに、図20に示したような斜めの線を組み合わせてもよい。
【0105】
このように繋ぎ目81〜84を、円筒状パイプ(ローラー本体31)の中心軸に平行な直線に対して線分で重なることなく、一つあるいは複数の点でのみ重なるように形成すれば、このローラー本体31を有してなる搬送ローラー13は、従動ローラー14と協働して記録紙Pを搬送する際、つまり紙送りをする際、記録紙Pの搬送速度が一定になり、搬送ムラがより確実に防止されたものとなる。
【0106】
すなわち、図23に示すように搬送ローラー13が紙送りの際に記録紙Pと接する箇所は、基本的にはその外周面上の直線L、つまり中心軸C1と平行な直線Lとなる。したがって、図13に示したように搬送ローラー13(ローラー本体31)の繋ぎ目36がローラー本体31の中心軸と平行である場合、この搬送ローラー13はその繋ぎ目36全体が一時的(瞬間的)に記録紙Pに接することになる。すると、本実施形態の搬送ローラー13では上述したようにその繋ぎ目36に起因して溝が形成されていないため、問題にはならないものの、仮に繋ぎ目36に起因して溝が形成されていると、この溝が一時的にかつ同時に記録紙Pに接し、したがって記録紙Pの全幅が一時的に繋ぎ目36に起因する溝に接することになる。その結果、この溝では搬送ローラー13の他の外周面に比べて凹みがあり、記録紙Pに対する接触抵抗が小となっているため、記録紙Pの搬送速度が一時的に低下し、搬送ムラを生じてしまう。
【0107】
もっとも、図20(a)、(c)、図21(a)、図22(a)に示したように繋ぎ目81〜84を形成すれば、仮にこれら繋ぎ目に起因して溝が形成されたとしても、この溝が紙送りの際に同時に記録紙Pに接触する箇所が、一つあるいは複数の点のみとなる。したがって、搬送ローラー13の他の面(線)が当たるときに比べほとんど接触抵抗に変化がなく、これにより、記録紙Pの搬送速度が一定になり、搬送ムラが防止されるようになる。
【0108】
また、円筒状の中空パイプからなる搬送ローラー13(ローラー本体31)の繋ぎ目については、上述した例以外にも、例えば図24(a)に示すように、ローラー本体31の中心軸と平行な直線部85aとこれに直交する直線部85bとからなる、矩形波状の折曲部85を有して形成されていてもよい。このような折曲部85を有してなる繋ぎ目にあっても、この繋ぎ目に起因して仮に溝が形成された場合に、この溝が紙送りの際に記録紙Pの幅全体に同時に接触することがないため、記録紙Pの搬送速度がほぼ一定になり、搬送ムラが防止される。
【0109】
また、この折曲部85については、図24(b)に示すようにローラー本体31の長さ全体に亘って形成されていてもよく、図24(c)に示すように、その中央部を除く両端部に選択的に形成されていてもよい。図24(c)に示したように折曲部85を両端部にのみ形成する場合には、これら折曲部85間はローラー本体31の中心軸と平行な中央直線部86となる。ただし、図示しないものの、折曲部85間の中央直線部を、図20(a)に示したように中心軸C1と非平行となる斜め線に形成してもよい。
また、このように折曲部85を両端部にのみ形成し、その間の中央部については中央直線部86とした場合、図3に示した高摩擦層32の形成領域を中央直線部86に対応させるのが好ましい。
【0110】
繋ぎ目に折曲部85を形成し、したがってこの折曲部85を凹凸による嵌合部にすると、これら折曲部85(嵌合部)では設計通りに嵌合させ、凸部の先端とこれに対応する凹部との間を隙間なく近接させる(突き合わせる)のが難しくなる。したがって、ローラー本体31の全長に亘って折曲部85を形成すると、ローラー本体31に歪みや捩れ等が生じ易くなる。そこで、図24(c)に示したように折曲部85を両端部にのみ形成すれば、このような歪みや捩れ等が生じるのを抑えることができる。また、特に記録紙Pに直接接する領域となる高摩擦層32に対応する中央部を、折曲部85とすることなく中央直線部86とすることにより、記録紙Pに直接接する領域に歪みや捩れ等が生じるのを確実に防止することができる。
【0111】
なお、円筒状の中空パイプからなる搬送ローラー13(ローラー本体31)の繋ぎ目については、上述の例以外にも、例えば図25(a)に示すように折曲部88における交差部88aを、ローラー本体31の中心軸に対して非平行とし、折曲部88における凸片88bの先端側の角度εを鈍角(180°未満)に形成してもよい。このようにすれば、金属板の曲げ加工において一対の端面を近接させた際、凸片88bの先端を対応する凹部に嵌合させ易くなり、したがって、ローラー本体31に歪みや捩れ等が生じるのを抑制することができる。
【0112】
また、図24(c)に示したように折曲部85を両端部のみに形成した構造において、折曲部85を、例えば図25(b)に示すように図21(a)に示した曲線からなる波線89aに代えてもよく、さらに、図25(c)に示すように図22(a)に示した折れ曲がった波線89bに代えてもよい。
また、図24(a)に示した矩形波状の折曲部85と、図25(b)に示した曲線からなる波線89aとを組み合わせて繋ぎ目を形成してもよく、矩形波状の折曲部85と、図25(c)に示した折れ曲がった波線89bとを組み合わせて繋ぎ目を形成してもよい。
【0113】
また、図26に示すように、一対の端面34、34の一方側に凸部39を設け、他方側に凸部39が嵌合できる凹部40を設けてもよい。凸部39及び凹部40は、凹部40に凸部39が嵌合することで、ローラー本体31にねじりの力が加えられた場合等に、一対の端面34、34の延在方向でのずれを防止するためのものである。凸部39の先端部39aと、凹部40の底部40aとは、互いに平行している。なお、凸部39及び凹部40は、搬送ローラー13の保持領域F以外、及び搬送ローラー13を支持する軸受(図示せず)の支持領域以外に設けられることが好ましい。
【0114】
なお、ローラー本体31が成形された状態では、凸部39は凹部40に隙間なく嵌合しているが、凸部39の先端部39aと、凹部40の底部40aとの間には所定の隙間41が形成されている。この隙間41は、一対の端面34、34を互いに均一に接触させるために設けられるものである。
【0115】
また、搬送ローラー13において、ローラー本体31に形成された繋ぎ目36の一部に、図27(a)に示すように、開口90を設けてもよい。
繋ぎ目36はローラー本体31の全長に亘って形成されるので、搬送ローラー13を回転自在に支持する軸受(図示せず)に供給したグリスが搬送ローラー13の表面に付着すると、グリスは繋ぎ目36を毛細管現象により伝わり流れるようになる。特に、搬送ローラー13の強度を向上させるため、繋ぎ目36における一対の端面34、34間の隙間を小さくする程、グリスの毛細管現象が強くなって、グリスが繋ぎ目36に沿って流れやすくなる。
【0116】
そこで、図27(b)に示すように、ローラー本体31に形成された繋ぎ目36の一部に、開口90を設ける。この開口90は、繋ぎ目36を形成する一対の端面34、34にそれぞれ設けられた切欠部91、92により形成される。一対の端面34、34を突き合わせたときに、切欠部91、92の間の最大距離dが例えば1mm程度以上となるように設定され、開口90として機能する。
【0117】
開口90は、搬送ローラー13(ローラー本体31)の全長に亘って形成された繋ぎ目36のうち、高摩擦層32が形成された領域と上記軸受に支持される領域を除く領域に設けられる。つまり、高摩擦層32は搬送ローラー13のほぼ中央部に形成され、搬送ローラー13の両端側が軸受に支持されるので、搬送ローラー13には少なくとも2つの開口90が設けられる。
【0118】
開口90は、上記軸受に供給(塗布)されたグリス(潤滑油)が繋ぎ目36(一対の端面34、34の隙間)に沿って高摩擦層32まで達することを防止する目的で設けられる。すなわち、繋ぎ目36の一部に開口90を設けることで、グリスの毛細管現象を止めている。具体的には、繋ぎ目36のうち、軸受に支持される領域と高摩擦層32が形成された領域の間に開口90を設けることで、グリスが高摩擦層32に達することを防止している。そして、開口90の大きさ(一対の切欠部91、92間の最大距離d)を調整することで、グリスの毛細管現象を確実に止めることができる。
【0119】
なお、繋ぎ目36を形成する一対の端面34、34のそれぞれに、開口90を形成するための切欠部91、92を形成する場合に限らない。つまり、図27(c)に示すように、繋ぎ目36を形成する一対の端面34、34の一方にのみに切欠部93を形成して、切欠部93と他方の端面34とにより開口90が形成される場合であってもよい。また、開口90の形状としては、矩形に限らず、円形等であってよい。
【0120】
続いて、本実施形態におけるプリンター1の動作を、図1ないし図3を参照して説明する。
図1及び図2に示すように、給紙部2における給紙ローラー12の回転により、給紙トレー11に載置された記録紙Pが搬送部3に向けて供給される。駆動部6の作動により、搬送ローラー13が回転する。また、搬送ローラー13の外周面と接触して設けられる従動ローラー14が、搬送ローラー13と相反する方向で回転する。給紙部2から供給された記録紙Pは、搬送ローラー13と従動ローラー14との間に挟持され、また、搬送ローラー13の保持領域Fには高摩擦層32が形成されているため、記録紙Pは搬送ローラー13に保持される。よって、記録紙Pは搬送ローラー13の回転とともに正確に搬送される。
【0121】
ここで、図3に示すように、一対の端面34、34は外周面31a側で互いに接しており、繋ぎ目36において外周面31a側に開口する隙間や凹部等は存在しない。そのため、搬送ローラー13が回転してもその外周面31aは記録紙Pと常に接触することができる。よって、外周面31aと記録紙Pとの間で滑り等が発生せず、記録紙Pを高い精度で搬送することができる。
【0122】
搬送ローラー13の回転により、記録紙Pは、プラテン15におけるダイヤモンドリブ16の頂面上に搬送される。ダイヤモンドリブ16上に載置された記録紙Pに対して、キャリッジ20とともに適切な位置に移動した噴射ヘッド19からインクが噴射され、文字や画像等の情報が印刷される。この印刷後、記録紙Pは排紙部4の排紙ローラー17及び排紙ギザローラー18の回転により排出される。
以上で、本実施形態におけるプリンター1の動作が完了する。
【0123】
したがって、本実施形態によれば以下の効果を得ることができる。
本実施形態によれば、円筒状に成形される前の金属板30に端面34の調整を施したとしても、高い精度の径や真円度等を備えたローラー本体31を成形できるという効果がある。
【0124】
〔第2実施形態〕
本実施形態における搬送ローラー13を成形する方法を、図28を参照して説明する。
図28は、本実施形態における端面調整加工の工程を示す概略図であって、(a)は金属板30の配置を示す断面図、(b)は第2調整用雌型130の底面図、(c)は金属板30の平面図である。また、図28において、図9及び図10に示す第1の実施形態の構成要素と同一の要素については同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0125】
図28に示すように、端面調整加工に用いられる第2調整用雌型130と第2調整用雄型140との間に、金属板30を配置する。第2調整用雌型130には、金属板30が配置される凹部131が形成されている。凹部131は、金属板30の延在方向に延びており、第2調整用雄型140に対向して形成され、底面132と、一対の内側面133、133と、一対の内側面134、134とを備えている。底面132は、金属板30の板厚方向での板面が当接する面であって、第2調整用雄型140に対向する平面状に形成されている。
【0126】
一対の内側面133は、金属板30の一対の端面34、34を調整するための平面状の側面であって、いずれも金属板30の延在方向に平行して且つ一方向に延びて形成されている。また、一対の内側面133は互いに平行して延在している。一対の内側面133、133は、底面132から第2調整用雄型140に向かうに従い、漸次互いに離間するように傾斜している。すなわち、一対の内側面133、133の間の幅は、底面132から第2調整用雄型140に向かうに従い漸次幅広となっている。
【0127】
一対の内側面134は、金属板30の一対の第2端面35、35の変位を規制するために設けられる平面状の側面であって、いずれも金属板30の幅方向に平行して且つ一方向に延びて形成されている。また、一対の内側面134は互いに平行して延在している。一対の内側面134は、底面132と直交している。また、一対の内側面134、134の間の距離は、打ち抜き加工後の金属板30の全長と略同一となっている。一対の内側面134、134は、いずれも連結部63が通る開口部を有している。
【0128】
第2調整用雄型140には、第2調整用雌型130側に向かって突出する凸部141が設けられている。凸部141における第2調整用雌型130側の頂面は、底面132と平行する平面状に形成されている。凸部141の突出高さは、凹部131内に配置された金属板30をプレスして調整できる大きさに設定されている。
【0129】
第2調整用雌型130と第2調整用雄型140とを互いに当接させて、金属板30をプレスする。ここで、金属板30は板厚方向でプレスされるため、金属板30は金属板30の幅方向及び延在方向のいずれにも伸長しようとする。もっとも、本実施形態では、一対の第2端面35、35と対向して一対の内側面134、134が設けられるため、一対の第2端面35、35の変位は規制され、金属板30の延在方向での両端部の変位も抑制される。よって、端面調整加工により、金属板30の幅が延在方向に関して変化してしまうことを抑制することができ、打ち抜き加工後における金属板30の幅W1及び幅W2の違いを少なくすることができる。
【0130】
したがって、本実施形態によれば以下の効果を得ることができる。
本実施形態によれば、第1の実施形態によって得られる効果に加え、金属板30の幅が延在方向に関して変化してしまうことを抑制できるという効果がある。
【0131】
〔第3実施形態〕
本実施形態における第3搬送ローラー(搬送ローラー)13Bを成形する方法を、図29から図31を参照して説明する。
図29は、本実施形態における第3搬送ローラー13Bの構成を示す概略図であって、(a)は側面図、(b)は(a)のE−E線視断面図、(c)は(a)の端部断面図である。図30は、端面調整加工における金属板30の配置を示す概略図であって、(a)は断面図、(b)は第3調整用雌型150の底面図である。図31は、端面調整加工の工程を示す概略図であって、(a)は調整時の金属板30の平面図、(b)は調整時の幅方向での断面図、(c)は調整時の延在方向での断面図である。
また、図29から図31において、図3、図9及び図10に示す第1の実施形態の構成要素、並びに図28に示す第2の実施形態の構成要素と同一の要素については同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0132】
図29に示すように、第3搬送ローラー13Bは、第3ローラー本体31Bと、高摩擦層32とを有している。第3ローラー本体31Bは、略一定の板厚の金属板を曲げて円筒状に成形した軸部材であって、金属板の一対の端面34、34が互いに接する繋ぎ目36を有している。
【0133】
第3ローラー本体31Bの軸方向での端面である第2端面45は、外周面31aから内周面31bに向かうに従い、漸次軸方向での中央部に向かって傾斜している。なお、第3ローラー本体31Bの逆側の第2端面45も同様の形状となっている。
【0134】
次に、本実施形態における端面調整加工を、図30及び図31を参照して説明する。
図30に示すように、端面調整加工に用いられる第3調整用雌型150と第2調整用雄型140との間に、金属板30を配置する。第3調整用雌型150には、金属板30が配置される第2凹部151が形成されている。第2凹部151は、金属板30の延在方向に延びており、第2調整用雄型140に対向して形成され、底面152と、一対の内側面153、153と、一対の内側面154、154とを備えている。底面152は、金属板30の板厚方向での板面が当接する面であって、第2調整用雄型140に対向する平面状に形成されている。
【0135】
一対の内側面153は、金属板30の一対の端面34、34を調整するための平面状の側面であって、いずれも金属板30の延在方向に平行して且つ一方向に延びて形成されている。また、一対の内側面153は互いに平行して延在している。一対の内側面153、153は、底面152から第2調整用雄型140に向かうに従い、漸次互いに離間するように傾斜している。すなわち、一対の内側面153、153の間の幅は、底面152から第2調整用雄型140に向かうに従い漸次幅広となっている。
【0136】
一対の内側面154は、金属板30の一対の第2端面45、45を調整するための平面状の側面であって、いずれも金属板30の幅方向に平行して且つ一方向に延びて形成されている。また、一対の内側面154は互いに平行して延在している。一対の内側面154、154は、底面152から第2調整用雄型140に向かうに従い、漸次互いに離間するように傾斜している。すなわち、一対の内側面154、154の間の幅は、底面152から第2調整用雄型140に向かうに従い漸次幅広となっている。一対の内側面154、154は、いずれも連結部63が通る開口部を有している。
【0137】
図31に示すように、第3調整用雌型150と第2調整用雄型140とを互いに当接させて、金属板30をプレスする。ここで、金属板30は板厚方向でプレスされるため、金属板30は金属板30の幅方向及び延在方向のいずれにも伸長しようとする。本実施形態では、一対の第2端面45、45を調整するための一対の内側面154、154が設けられるため、一対の第2端面45、45の変位は規制され、金属板30の延在方向での両端部の変位も抑制される。よって、端面調整加工により、金属板30の幅が延在方向に関して変化してしまうことを抑制することができ、打ち抜き加工後における金属板30の幅W1及び幅W2の違いを少なくすることができる。また、一対の端面34、34だけでなく、一対の第2端面45、45も調整される。
【0138】
したがって、本実施形態によれば以下の効果を得ることができる。
本実施形態によれば、第1の実施形態によって得られる効果に加え、金属板30の幅が延在方向に関して変化してしまうことを抑制できるという効果がある。
【0139】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0140】
例えば、上記実施形態では、打ち抜き加工後の金属板30はその中央部の幅W1が両端部の幅W2よりも狭くなっているが、これに限定されるものではなく、端面調整加工における金属板30に生じる変型に応じた形状で金属板30を成形してよい。例えば、端面調整加工を施すことで、上記実施形態とは逆に両端部の幅が中央部の幅よりも大きくなる場合には、打ち抜き加工後の金属板30における中央部の幅W1を両端部の幅W2よりも広くしてもよい。
【符号の説明】
【0141】
13…搬送ローラー、13A…第2搬送ローラー(搬送ローラー)、13B…第3搬送ローラー(搬送ローラー)、30…金属板、31a…外周面(他板面)、31b…内周面(一板面)、34…端面、34a…一端面(一方の端面)、34b…他端面(他方の端面)、35…第2端面、37…隙間、37A…第2隙間(隙間)、45…第2端面
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送ローラーの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、シート状の記録媒体に情報を印刷する印刷装置が用いられており、この印刷装置には被搬送物である記録媒体を搬送する搬送ユニットが設けられている。この搬送ユニットは、記録媒体を搬送する搬送ローラーを有している。搬送ローラーには中実の丸棒部材が一般的に使用されている。記録媒体は搬送ローラーに保持され、搬送ローラーが回転することで搬送される。また、この搬送と共に記録媒体に対して印刷が行われるため、適正な印刷のためには、記録媒体を高い位置決め精度で搬送する必要がある。
【0003】
一方、中実の部材は重量およびコストが嵩むという課題があり、さらなる軽量化およびコストの削減が検討されている。ここで、特許文献1には、金属板を曲げ加工して一対の端面を対向させて、中空の円筒軸を製造する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−289496号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来技術を印刷装置等の搬送ローラーに適用する場合には、下記のような課題があった。
高精度の搬送のためには、円筒軸の一対の端面が互いに対向する箇所において、外周面側に臨む隙間や凹部等が存在しないことが好ましい。そのため、略矩形の金属板を円筒状に成形する曲げ加工より前に、一対の端面のうち少なくとも一方の端面を調整して、一対の端面を外周面側で互いに隙間なく接触させることが行われている。端面の調整方法としては、例えば金属板を端面調整用の金型に配置し、板厚方向でプレスする方法がある。
【0006】
ここで、金属板を板厚方向でプレスすることにより、金属板の曲げ方向での幅が、長手方向での両端部と中央部とで異なってしまう場合がある。異なる幅の金属板を曲げて円筒軸を成形すると、円筒軸の径や真円度が安定せず、また円筒軸に反りが生じやすくなるという課題があった。また、このような円筒軸を搬送ローラーとして使用すると、記録媒体を高い位置決め精度で搬送することが難しくなるという課題があった。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、円筒軸に成形される前の金属板に端面の調整を施したとしても、円筒軸の径や真円度等の精度を向上できる搬送ローラーの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を採用する。
本発明は、金属板の一対の端面を対向させ円筒状に成形された搬送ローラーの製造方法であって、金属板を成形する金属板成形工程と、一対の端面のうち少なくとも一方の端面を調整する調整工程と、金属板を曲げて円筒状に成形する曲げ工程とを有し、金属板成形工程では、調整工程で金属板に生じる変形に応じた形状で金属板を成形する、という方法を採用する。
調整工程では金属板に変形が生じる場合があり、変形が生じた金属板から円筒軸を成形するとその径や真円度等の精度が低下する虞がある。本発明では、金属板成形工程において、調整工程で金属板に生じる変形に応じた形状で金属板を成形する。そのため、調整工程で端面を調整し金属板に変形が生じることで、曲げ工程に入る前の金属板の寸法等が、高い精度で円筒軸を成形するに適切なものとなる。
【0009】
また、本発明は、金属板成形工程では、端面の延在方向での中央部から両端部にそれぞれ向かうに従い漸次幅広となる形状で金属板を成形し、調整工程では、一対の端面のうち少なくとも一方の端面と金属板の板厚方向での一板面とで形成される角度が90°よりも大きくなるように調整し、曲げ工程では、一板面と逆側の他板面が外周面となるように金属板を曲げて一対の端面の少なくとも外周面側を互いに当接させて円筒状に成形する、という方法を採用する。
端面を調整するためにプレス加工を用いると、金属板の上記延在方向での両端部は互いに離間するように変位する。一方、上記延在方向での中央部は両端部と金型との間にあるため、その変位は規制されている。よって、端面の調整後では、金属板の両端部よりも中央部の幅が広くなる傾向があった。本発明では、中央部から両端部にそれぞれ向かうに従い幅広となる形状で金属板を成形する。端面調整加工を行うことで中央部は両端部よりもその幅の増加量が大きいため、端面調整後の金属板の幅を両端部と中央部との間で略同一とすることが可能となる。
【0010】
また、本発明は、調整工程では金属板における延在方向での一対の第2端面の変位を規制して端面を調整する、という方法を採用する。
本発明では、延在方向での第2端面の変位が規制されているため、金属板の両端部が互いに離間する方向で変位することが規制される。そのため、端面の調整を行うことで金属板の幅が両端部と中央部とで異なってしまうことを抑制することが可能となる。
【0011】
また、本発明は、調整工程では、金属板における延在方向での一対の第2端面と、一板面とで形成される角度がいずれも90°よりも大きくなるように、一対の第2端面を調整する、という方法を採用する。
本発明の調整工程では、一対の端面とともに、一対の第2端面を同様に調整する。第2端面が調整されることで、調整工程において金属板の上記延在方向での両端部が互いに離間して変位することが規制される。そのため、一対の端面を調整することで金属板の両端部と中央部とのそれぞれの幅が異なってしまうことを抑制することが可能となる。
【0012】
また、本発明は、調整工程では一対の端面をいずれも調整する、という方法を採用する。
本発明では、一対の端面のいずれにも調整が施される。一対の端面及びその近傍には、調整による応力が同様に生じることから、金属板を円筒軸に成形したときに応力の不均一を原因とする歪みや変形等を防止することが可能となる。
【0013】
また、本発明は、調整工程では一方の端面のみを調整する、という方法を採用する。
本発明では、一対の端面のうち他方の端面は調整されないので、その面は円筒軸の径方向に略平行している。一方の端面は調整されることで、円筒軸の所定の周方向に沿うように傾いている。この傾きに沿う方向で搬送ローラーを回転させ被搬送物を搬送させることによって、被搬送物から一対の端面の接続部分に付勢力が加えられたとしても、一対の端面が互いに離間することを防止することが可能となる。
【0014】
また、本発明は、曲げ工程では一対の端面はその内周面側に隙間を有した状態で互いに当接される、という方法を採用する。
本発明では、一対の端面の内周面側に隙間が形成されるため、円筒軸に曲げやねじり等の力が加えられた場合に、内周面側で一対の端面が互いに当接することにより外周面側に隙間等が生じることが防止される。よって、一対の端面を外周面側のみで確実に接触させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】プリンター1の全体構成図である。
【図2】搬送部3及び排紙部4の構成を示す概略図である。
【図3】搬送ローラー13の構成を示す概略図である。
【図4】第2搬送ローラー13Aの構成を示す概略図である。
【図5】搬送ローラー13を成形する工程を示すフロー図である。
【図6】大型金属板60の平面図である。
【図7】金属板30の平面図である。
【図8】打ち抜き加工の工程を示す断面図である。
【図9】端面調整加工における金属板30の配置を示す概略図である。
【図10】端面調整加工の工程を示す概略図である。
【図11】金属板30に対する曲げ加工の前半の工程を示す概略図である。
【図12】金属板30に対する曲げ加工の後半の工程を示す概略図である。
【図13】ローラー本体31を枠部62から切り離す工程を示す概略図である。
【図14】(a)は搬送ローラー13の斜視図、(b)は端部断面図である。
【図15】(a)はローラー本体31の端部斜視図、(b)は正面図である。
【図16】(a)はローラー本体31の端部斜視図、(b)は正面図である。
【図17】(a)はローラー本体31の端部斜視図、(b)は正面図である。
【図18】(a)〜(d)は展開係合部を示す金属板30の平面図である。
【図19】(a)〜(c)は展開係合部を示す金属板30の平面図である。
【図20】(a)、(c)はローラー本体31の繋ぎ目の形状を示す平面図、(b)は金属板30Aの平面図である。
【図21】(a)はローラー本体31の繋ぎ目の形状を示す平面図、(b)は金属板30Bの平面図である。
【図22】(a)はローラー本体31の繋ぎ目の形状を示す平面図、(b)は金属板30Cの平面図である。
【図23】搬送時の搬送ローラー13と記録紙Pとの関係を示す斜視図である。
【図24】(a)〜(c)はローラー本体31の繋ぎ目の形状を示す平面図である。
【図25】(a)〜(c)はローラー本体31の繋ぎ目の形状を示す平面図である。
【図26】ローラー本体31の繋ぎ目の形状を示す平面図である。
【図27】(a)は搬送ローラー13の平面図、(b)は(a)のD−D線視断面図、(c)は開口90の変形例を示す平面図である。
【図28】第2の実施形態における端面調整加工の工程を示す概略図である。
【図29】第3搬送ローラー13Bの構成を示す概略図である。
【図30】第3の実施形態における端面調整加工での金属板30の配置を示す概略図である。
【図31】第3の実施形態における端面調整加工の工程を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を、図1から図31を参照して説明する。以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更している。以下の説明では、印刷装置として、インクを記録媒体である紙等に噴射し、文字や画像等の情報を記録するインクジェット式のプリンター(以下、単に「プリンター」と称する)の例を示す。
【0017】
〔第1実施形態〕
本実施形態におけるプリンター1の構成を、図1を参照して説明する。
図1は、本実施形態におけるプリンター1の全体構成図である。
プリンター(印刷装置)1は、記録媒体である記録紙Pにインクを噴射し、文字や画像等の情報を記録する印刷装置である。プリンター1は、給紙部2と、搬送部(搬送ユニット)3と、排紙部4と、ヘッド部5と、制御部CONTとを有している。
【0018】
給紙部2は、記録紙Pを保持するとともに、記録紙Pを搬送部3に向けて供給するものであって、給紙トレー11と、給紙ローラー12とを有している。給紙トレー11は、複数枚の記録紙Pを保持するものである。記録紙Pとしては、インクによる印刷が可能なシート状の記録媒体が用いられ、普通紙、コート紙、OHP(オーバーヘッドプロジェクター)用シート、光沢紙及び光沢フィルム等が用いられる。
【0019】
給紙ローラー12は、回転することで記録紙Pを搬送部3に向けて供給するローラーであって、給紙トレー11の搬送部3側に設けられている。なお、給紙ローラー12の外周面と対向する位置には不図示の分離パッドが設けられており、該分離パッドと給紙ローラー12とが協働して記録紙Pを一枚ずつ搬送部3に供給することができる。
【0020】
搬送部3は、給紙部2から供給された記録紙Pを排紙部4に向けて搬送するものであり、且つ記録紙Pに対する印刷動作が行われる箇所である。搬送部3は、搬送ローラー13と、従動ローラー14と、プラテン15と、ダイヤモンドリブ16と、駆動部6(図2参照)とを有している。
【0021】
搬送ローラー13は、回転することで記録紙Pを所定の印刷位置に正確に搬送するためのローラーであって、給紙部2の給紙方向と直行する方向且つ水平方向で延在し、円筒状に成形された軸部材である。搬送ローラー13は、搬送部3に設けられた略U字型の一対の軸受(図示せず)に回転自在に支持され、駆動部6の駆動により回転する。なお、搬送ローラー13の詳細は後述する。
【0022】
従動ローラー14は、略円柱状の部材であって、搬送ローラー13の軸方向に沿って間隔をあけて複数配置されている。また、従動ローラー14は、後述する搬送ローラー13の高摩擦層32(図3参照)と対向する位置に回転自在に設けられている。従動ローラー14には不図示の付勢バネが設けられており、この付勢バネの付勢力によって、従動ローラー14は搬送ローラー13の高摩擦層32に付勢されて接触している。このため、従動ローラー14は搬送ローラー13の回転に従動して回転し、搬送ローラー13との間で記録紙Pを挟持することができる。なお、従動ローラー14の外周面には、高摩擦層32との摺動による摩耗・損傷を緩和するため、例えばフッ素樹脂塗装等の低摩耗処理が施されている。
【0023】
プラテン15は、ヘッド部5による記録紙Pへの印刷を行うときに、記録紙Pを下方から支持する箇所であり、水平面に略平行する上面を有している。ダイヤモンドリブ16は、プラテン15の上面から上方に向けて突出する突部であり、搬送ローラー13の軸方向に沿って間隔を空けて複数配置されている。また、ダイヤモンドリブ16の頂面は、水平面と略平行に形成されており、この頂面によって印刷時の記録紙Pが下方から支持される。
【0024】
排紙部4は、搬送部3から印刷後の記録紙Pを排出するものであって、排紙ローラー17と、排紙ギザローラー18とを有している。排紙ローラー17と排紙ギザローラー18とは、互いに相反する方向で回転でき、この回転によって記録紙Pを引き出して排出する。
【0025】
ヘッド部5は、搬送部3に載置されている記録紙Pに対してインクを噴射するものであって、噴射ヘッド19と、キャリッジ20とを有している。噴射ヘッド19は、制御部CONTの指示に従いインクを噴射する機器であって、その不図示の噴射口はダイヤモンドリブ16の頂面に対向して設けられている。キャリッジ20は、その下側に噴射ヘッド19を保持するものであって、搬送ローラー13の軸方向で往復移動自在に設けられている。また、キャリッジ20には、制御部CONTの指示に従ってキャリッジ20を往復移動させる不図示の駆動部が連結されている。
【0026】
次に、搬送ローラー13を回転させる構成について、図2を参照して説明する。
図2は、搬送部3及び排紙部4の構成を示す概略図であって、(a)は平面図、(b)は(a)のA矢視図である。
【0027】
上述したように、搬送部3は駆動部6を有している。駆動部6は、搬送ローラー13を回転させるものであって、モーター21と、ピニオンギア22とを有している。モーター21は、制御部CONTの指示に従い搬送ローラー13を回転させる電動機である。制御部CONTがモーター21の回転を制御することで搬送ローラー13の回転を制御しており、記録紙Pを高い位置決め精度で搬送できる構成となっている。ピニオンギア22は、モーター21の出力軸に一体的に接続されているギアである。
【0028】
搬送ローラー13には、第1駆動ギア23と、第2駆動ギア24と、第3駆動ギア25とが取り付けられている。第1駆動ギア23は、搬送ローラー13を回転させるためのギアであって、搬送ローラー13における駆動部6設置側の端部に、圧入によって一体的に取り付けられている。第1駆動ギア23はピニオンギア22と噛合しており、ピニオンギア22及び第1駆動ギア23を介してモーター21の駆動力が搬送ローラー13に伝達され、搬送ローラー13を回転させる構成となっている。
【0029】
第2駆動ギア24は、モーター21の駆動力を排紙ローラー17に伝達するためのギアであって、第1駆動ギア23よりも小さい径を有し、第1駆動ギア23に隣接して一体的に固定されている。また、第2駆動ギア24は、圧入によって搬送ローラー13に一体的に取り付けられている。
【0030】
第3駆動ギア25は、搬送ローラー13の回転駆動力を不図示の他の機器に伝達するためのギアであって、搬送ローラー13の第1駆動ギア23と逆側の端部に、圧入によって一体的に接続されている。なお、圧入を用いず、搬送ローラー13及び第3駆動ギア25のそれぞれに回り止め部(ピンや切欠部等)を設けることで、第3駆動ギア25が搬送ローラー13と同期して回転する構成としてもよい。
【0031】
排紙ローラー17における駆動部6側の端部には、排紙駆動ギア26が一体的に取り付けられている。排紙駆動ギア26と第2駆動ギア24との間には、中間ギア27が設けられ、中間ギア27は第2駆動ギア24及び排紙駆動ギア26のそれぞれと噛合している。すなわち、第2駆動ギア24、中間ギア27及び排紙駆動ギア26を介して、モーター21の駆動力が排紙ローラー17に伝達され、排紙ローラー17を回転させる構成となっている。
【0032】
次に、搬送ローラー13の構成を、図3を参照して説明する。
図3は、搬送ローラー13の構成を示す概略図であって、(a)は側面図、(b)は(a)のB−B線視断面図、(c)は(b)における繋ぎ目36近傍の拡大図である。搬送ローラー13は、円筒状に成形された軸部材であって、ローラー本体31と、高摩擦層32とを有している。
【0033】
ローラー本体31は、略一定の板厚の金属板を曲げて、円筒状に成形した軸部材である。金属板としては鋼板を用いているが、アルミやステンレス等の金属板を使用してもよい。ローラー本体31は、金属板の一対の端面34、34を互いに対向且つ当接させて、円筒状に成形している。一対の端面34、34の当接部分は繋ぎ目36となっている。繋ぎ目36は、ローラー本体31の中心軸方向と平行して延在している。
【0034】
一対の端面34、34は、ローラー本体31の外周面(他板面)31a側で互いに隙間なく当接している。すなわち、繋ぎ目36において、外周面31a側に開口する隙間や凹部等は存在しない。よって、搬送ローラー13の回転時に外周面31aと記録紙Pとの接触を常に維持することができる。一対の端面34、34の間の、ローラー本体31の内周面(一板面)31b側には、隙間37が形成されている。隙間37は、内周面31b側に向かうに従い漸次幅広となる形状となっている。
【0035】
ローラー本体31は、その表面に形成されためっき層38を有している。めっき層38は、外周面31a及び内周面31b、並びに一対の端面34、34の表面に形成されている。めっき層38は、電界めっき及び無電解めっきのいずれの方法を用いて形成してもよく、また複数のめっき層を重ねて形成してもよい。めっきの種類としては、例えばニッケルめっき、亜鉛めっき又はクロムめっき等が用いられる。
【0036】
高摩擦層32は、ローラー本体31の両端部以外の外周面31aに形成され、記録紙Pとの間の摩擦係数を向上させて記録紙Pを確実に保持するための塗装層である。記録紙Pを高い位置決め精度で搬送するためには、搬送ローラー13は記録紙Pを滑ることなく保持する必要があることから、外周面31aの、搬送中の記録紙Pが保持される領域である保持領域Fに、高摩擦層32が形成されている。
【0037】
高摩擦層32は、エポキシ系樹脂やポリエステル系樹脂等からなる樹脂層と、該樹脂層表面に分散して配置されるセラミックス粒子とを有している。このセラミックス粒子には、酸化アルミニウム(アルミナ)、炭化珪素又は二酸化珪素等が用いられる。セラミックス粒子は破砕処理によって粒径が調整されており、また、破砕処理を行うことでセラミックス粒子は鋭い端面を持ち、記録紙Pとの間の摩擦係数を向上させることができる。なお、高摩擦層32の代わりに、外周面31aに微細な凹凸(梨地処理等)を形成することで記録紙Pとの間の摩擦係数を向上させてもよい。
【0038】
なお、上述した搬送ローラー13の代わりに、その変形例である第2搬送ローラー(搬送ローラー)13Aを使用してもよい。搬送ローラー13の一変形例である第2搬送ローラー13Aを、図4を参照して説明する。
図4は、第2搬送ローラー13Aの構成を示す概略図である。なお、図4は、図3(c)に対応するものであり、図3に示す構成要素と同一の要素については同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0039】
第2搬送ローラー13Aは、第2ローラー本体31Aと、高摩擦層32とを有している。第2ローラー本体31Aは、略一定の板厚の金属板を曲げて円筒状に成形した軸部材であって、金属板の一対の端面34、34が互いに接する繋ぎ目36を有している。一対の端面34、34のうちの一方の端面である一端面34aは、外周面31a側から内周面31b側へ進むに従い、他方の端面である他端面34bの逆側に漸次向かって傾斜して形成されている。一方、他端面34bは、第2ローラー本体31Aの径方向に略平行して形成されている。
【0040】
一端面34aと他端面34bとは、外周面31a側で互いに隙間なく当接している。すなわち、繋ぎ目36において、外周面31a側に開口する隙間や凹部等は存在しない。一端面34aと他端面34bとの間の内周面31b側には、第2隙間(隙間)37Aが形成されている。第2隙間37Aは、内周面31b側に向かうに従い漸次幅広となる形状となっている。
【0041】
続いて、搬送ローラー13を成形する方法を、図5から図13を参照して説明する。
図5は、搬送ローラー13を成形する工程を示すフロー図であって、(a)は全体のフロー図、(b)は(a)における順送プレス加工の詳細なフロー図である。
【0042】
搬送ローラー13の成形工程の概略は、図5(a)に示すように、まず、材料である大型の金属板から順送プレス加工(打ち抜き加工及びプレス加工を連続して行うもの)によって円筒状のローラー本体31を成形する(ステップS1)。
【0043】
ステップS1の順送プレス加工の詳細は、図5(b)に示すように、まず、大型の金属板から、打ち抜き加工によって略矩形の金属板を成形する(ステップS11)。次に、金属板の一対の端面34、34をプレス加工によって調整する、端面調整加工を行う(ステップS12)。最後に、プレス加工を用いた曲げ加工によって、金属板を円筒状に曲げてローラー本体31を成形する(ステップS13)。
【0044】
続いて、図5(a)に示すように、ローラー本体31の外周面を研磨(センターレス研磨)して、その径、真円度及び反りを調整する(ステップS2)。次に、ローラー本体31の表面にめっき処理を施して、めっき層38を形成する(ステップS3)。最後に、ローラー本体31の外周面31aに高摩擦層32を形成する(ステップS4)。以上で、搬送ローラー13の成形が完了する。以下の説明では、順送プレス加工によって大型の金属板からローラー本体31を成形する工程であるステップS1を、特に詳細に説明する。
【0045】
順送プレス加工によって大型の金属板からローラー本体31を成形する工程(ステップS1)を、図6から図13を参照して説明する。まず、打ち抜き加工(ステップS11)を、図6から図8を参照して説明する。
図6は、ローラー本体31の材料となる大型金属板60の平面図である。
図7は、金属板30の平面図である。
図8は、打ち抜き加工の工程を示す断面図である。
【0046】
本実施形態におけるローラー本体31の成形には、順送プレス加工が用いられる。この加工法は、材料である金属板を一定のピッチで搬送しつつ、金属板に対して順次に打ち抜き加工及びプレス加工を施すものである。
【0047】
まず、図6に示すような、大型金属板60を準備する。大型金属板60は、凡そ1mmの厚みを持つ略矩形の鋼板であり、電気亜鉛めっき鋼板(SECC)や冷間圧延鋼板(SPCC)が用いられる。紙面上下方向での、大型金属板60の一対の縁部には複数の孔部61が、その縁部に沿って所定の間隔を空けて設けられている。孔部61は、大型金属板60に対して順送プレス加工を行うときに、一定のピッチで大型金属板60を搬送するために用いられ、大型金属板60は隣り合う孔部61の間隔毎に搬送される。
【0048】
次に、図7に示すように、順送プレス加工(ステップS1)における打ち抜き加工(ステップS11)によって、大型金属板60から略矩形の金属板30を成形する。すなわち、大型金属板60から領域Sの部分を打ち抜き、金属板30及び枠部62を成形する。金属板30は、大型金属板60の順送方向と直行する方向(紙面上下方向)で延在する略帯状の金属板であって、大型金属板60から領域Sの部分が取り除かれることで成形される。なお、金属板30における板厚方向での表裏の板面は、ローラー本体31の内外周面となるため、以下便宜的に外周面31a及び内周面31bと称する。図7では、金属板30の紙面表側を内周面31b、紙面裏側を外周面31aとする。
【0049】
金属板30の延在方向と直交する方向での、金属板30の一対の端面34、34は、金属板30を円筒状に成形したときに互いに接して繋ぎ目36を形成する箇所である。なお、打ち抜き加工後における一対の端面34、34は、ともに外周面31aや内周面31bと略直交している。また、端面34の延在方向(略紙面上下方向)での、金属板30の一対の端面である第2端面35、35は、互いに略平行している。
【0050】
金属板30は、端面34の延在方向での、中央部から両端部にそれぞれ向かうに従い漸次幅広となる形状で成形される。すなわち、金属板30の中央部での幅W1は、両端部での幅W2、W2よりも狭くなっている。また、一対の端面34、34は、平面視で略弧状に形成されている。
なお、幅W1及び幅W2は、後述する端面調整加工時の金属板30に生じる変形に応じて設定されている。すなわち、幅W1と幅W2は、金属板30に変形が生じた後にその寸法等が、高い精度でローラー本体31を成形するに適切なものとなるように設定されている。例えば、金属板30に変形が生じた後に金属板30の幅が、延在方向に関していずれの部分でも同一の大きさとなるように設定されている。
【0051】
枠部62は、金属板30の延在方向と略直交する方向で延在する略帯状の板部であって、大型金属板60から領域Sの部分が取り除かれることで成形される。枠部62には、上述した孔部61が並んで配置されている。金属板30と枠部62との間には、それらを互いに連結する連結部63(いわゆるタイバー)が架け渡され、金属板30は連結部63を介して枠部62に支持されている。連結部63は、一対の第2端面35、35のそれぞれの中央部に連結されている。
【0052】
なお、打ち抜き加工時に金属板30の端面(切断面)に形成される破断面やバリ等が、後述する曲げ加工では曲げ方向の内側に配置されるようにすることが好ましい。
金属板30は、図8に示すような打ち抜き加工によって大型金属板60から成形される。まず、図8(a)に示すように、大型金属板60の板厚方向での両側に、打ち抜き加工用の金型である雄型101及び雌型102をそれぞれ配置する。次に、図8(b)に示すように、雄型101を雌型102側に移動させ、これらの金型で大型金属板60を切断し、金属板30を成形する。
【0053】
金属板30の切断面、すなわち一対の端面34、34には、ダレsd、せん断面sp、破断面bs及びバリ(図示せず)が形成される場合がある。ここで、比較的滑らかなダレsdと接続している紙面上側の面を外周面31aとし、破断面bsと接続し且つバリが生じる虞のある紙面下側の面を内周面31bとする。このような方向で金属板30を曲げることで、ローラー本体31を成形する際に破断面bsやバリが障害となって一対の端面34、34が互いに離間することを防止できる。
【0054】
また、上記方向で金属板30を曲げて一対の端面34、34を互いに当接させることで、破断面bsやバリがローラー本体31の内側に設けられ、外周面31aから突出することを防止できる。そのため、バリ取り工程を省略してローラー本体31の生産性を向上させることができる。
【0055】
次に、金属板30の一対の端面34、34に対して、端面調整加工(ステップS12)を実施する。端面調整加工を、図9及び図10を参照して説明する。
図9は、端面調整加工における金属板30の配置を示す概略図であって、(a)は断面図、(b)は調整用雌型110の底面図である。
図10は、端面調整加工の工程を示す概略図であって、(a)は調整時の断面図、(b)は調整時の金属板30の平面図、(c)は端面調整後の金属板30の断面図である。なお、図9及び図10における断面図は、図7におけるC−C線視での断面図である。
【0056】
図9に示すように、端面調整加工に用いられる調整用雌型110と調整用雄型120との間に、金属板30を配置する。調整用雌型110には、金属板30が配置される溝部111が形成されている。溝部111は、金属板30の延在方向に延びており、調整用雄型120に対向して形成され、底面112と、一対の内側面113、113とを備えている。底面112は、金属板30の板厚方向での板面が当接する面であって、調整用雄型120に対向する平面状に形成されている。
【0057】
一対の内側面113は、金属板30の一対の端面34、34を調整するための平面状の側面であって、いずれも金属板30の延在方向に平行して且つ一方向に延びて形成されている。また、一対の内側面113は互いに平行して延在している。一対の内側面113、113は、底面112から調整用雄型120に向かうに従い、漸次互いに離間するように傾斜している。すなわち、一対の内側面113、113の間の幅は、底面112から調整用雄型120に向かうに従い漸次幅広となっている。
【0058】
調整用雄型120には、調整用雌型110側に向かって突出する凸部121が設けられている。凸部121における調整用雌型110側の頂面は、底面112と平行する平面状に形成されている。凸部121の突出高さは、溝部111内に配置された金属板30をプレスして調整できる大きさに設定されている。
【0059】
図10に示すように、調整用雌型110と調整用雄型120とを互いに当接させて、金属板30をプレスする。ここで、金属板30は板厚方向でプレスされるため、金属板30は金属板30の幅方向及び延在方向のいずれにも伸長する。ここで、溝部111には、金属板30の一対の第2端面35に対向する部分は設けられていないため、一対の第2端面35は互いに離間するように変位する。すなわち、金属板30の延在方向での両端部が、延在方向で伸長する。一方、金属板30の中央部は両端部の間に位置していることから、延在方向で伸長することはできず、伸長の方向はほぼ幅方向のみとなる。したがって、金属板30の中央部は、両端部に比べて幅方向に大きく伸長する。
【0060】
もっとも、本実施形態では、打ち抜き加工後における金属板30の中央部での幅は両端部に比べて狭く設定されている。よって、金属板30の中央部が、両端部に比べて幅方向に大きく伸長することで、調整後の金属板30の寸法等が、高い精度でローラー本体31を成形するに適切なものに変形して設定される。本実施形態では、金属板30に変形が生じた後に金属板30の幅が、延在方向に関していずれの部分でも略同一の大きさとなる。そのため、後述する曲げ工程で金属板30から円筒状のローラー本体31を成形すると、高い精度の径や真円度等を備えたローラー本体31を成形することができる。
【0061】
また、端面調整加工によって金属板30は幅方向で伸長するため、金属板30の一対の端面34、34が、調整用雌型110の一対の内側面113の傾きに沿って調整される。すなわち、一対の端面34、34の、内周面31bに対する角度が調整される。一対の端面34、34と内周面31bとで形成される角度α、αは、いずれも90°よりも大きくなる。
【0062】
また、端面調整加工を施すことで、外周面31aの幅方向での長さである外周面幅W3は、内周面31bの幅方向での長さである内周面幅W4よりも大きくなっている。そのため、金属板30を曲げて円筒状のローラー本体31を成形したときに、外周面31a側で一対の端面34、34を隙間なく当接させることが容易になる。
【0063】
本実施形態の端面調整加工では、一対の端面34、34のいずれに対しても加工を施している。そのため、例えば一対の端面34、34の近傍に加工による応力等が生じた場合であっても、その応力は一対の端面34、34のいずれにも生じているため、金属板30を曲げ加工して成形された搬送ローラー13(ローラー本体31)において、応力の不均一性を原因とする歪みや変形等を抑制することができる。
【0064】
なお、上述した端面調整加工を、一対の端面34、34のいずれか一方のみ(例えば一端面34aのみ)に施してもよい。このように調整することで、図4に示す第2ローラー本体31Aを成形することができる。
この場合は、繋ぎ目36における一端面34aが、周方向に関して所定の方向に傾いた形状となっている。この傾きに沿う方向で第2搬送ローラー13Aを回転させて記録紙Pを搬送すると、繋ぎ目36に対して搬送に伴う付勢力が加えられたとしても、一対の端面34、34の離間は生じにくくなる。よって、搬送に伴って生じる虞のある、第2搬送ローラー13Aの歪みや変形等を抑制することができる。
【0065】
また、上述した端面調整加工を、図3に示す保持領域Fに対応する箇所にのみ施してもよい。
【0066】
次に、金属板30に対して、図11及び図12に示す順送プレス加工における曲げ加工(ステップS13)を施し、金属板30を円筒状に成形する。
図11は、金属板30に対する曲げ加工の前半の工程を示す概略図であって、(a)は第1の工程を示す断面図、(b)は第2の工程を示す断面図、(c)は曲げ加工で用いられる芯金208の配置を示す断面図である。
図12は、金属板30に対する曲げ加工の後半の工程を示す概略図であって、(a)は第3の工程を示す断面図、(b)は第4の工程を示す断面図、(c)は第5の工程を示す断面図である。なお、図11及び図12は、図7におけるC−C線視での断面図である。
【0067】
まず、図11(a)に示すように、第1雄型201と第1雌型202とで金属板30を押圧し、金属板30の幅方向での両縁部を略円弧状に曲げる。なお、図11(a)では、金属板30と、第1雄型201及び第1雌型202との間にそれぞれ隙間が形成されているが、この隙間は実際には存在せず、金属板30と、第1雄型201及び第1雌型202とは互いに密着している。これは、図11(b)、図12(a)ないし(c)においても同様である。
【0068】
次に、図11(b)に示すように、第2雄型203と第2雌型204とで金属板30を押圧し、金属板30の幅方向での中央部を略円弧状に曲げる。この曲げ加工により、金属板30の断面形状は第2雄型203側に開口する略C字状となる。
【0069】
次に、図11(c)に示すように、第1上型205及び第2上型206と、下型207との間に断面視略C字状に成形された金属板30を配置し、且つ、金属板30の内側に円柱状の芯金208を配置する。ここで、第1上型205、第2上型206及び下型207の、それぞれのプレス面205a、206a及び207aは、いずれも成形されるローラー本体31の外周面31aに応じた形状となっている。また、芯金208の外周面は、成形されるローラー本体31の内周面31bに応じた形状となっている。なお、第1上型205及び第2上型206は、互いに独立して移動可能である。
【0070】
次に、図12(a)に示すように、芯金208を静止させた状態で、第1上型205を下型207に向かって移動させ、金属板30の一対の端面34、34の一方側を押圧し、略半円状に曲げる。なお、第1上型205及び第2上型206と同様に、下型207を一対の割型とし、図12(a)に示す工程の際に、第1上型205と同じ側の下型を第1上型205に向かって移動させてもよい。
【0071】
次に、図12(b)に示すように、芯金208を下型207に向けて多少移動させるとともに、第2上型206を下型207に向かって移動させ、金属板30の第2端面35側を押圧し、略半円状に曲げる。
【0072】
次に、図12(c)に示すように、第1上型205、第2上型206及び芯金208をともに下型207に向かって移動させ、金属板30を押圧する。このとき、第1上型205及び第2上型206は、下型207に当接している。この押圧により、金属板30は略円筒状に成形され、金属板30からローラー本体31が成形される。なお、この工程で、金属板30の一対の端面34、34は外周面31a側で互いに当接する。一方、一対の端面34、34の内周面31b側には、隙間37が形成される。
【0073】
本実施形態では、端面調整加工で金属板30に変形が生じた後の金属板30の幅が、延在方向に関していずれの部分でも略同一の大きさとなる。そのため、曲げ工程で金属板30からローラー本体31を成形すると、高い精度の径や真円度等を備えたローラー本体31を成形することができる。高い精度のローラー本体31を成形できるため、後述するセンターレス研磨加工の加工量を少なくでき、製造のコストを抑制することができる。
【0074】
また、一対の端面34、34の内周面31b側に隙間37が形成されるため、ローラー本体31に曲げやねじり等の力が加えられた場合に、内周面31b側で一対の端面34、34が互いに当接することにより外周面31a側に隙間や凹部等が生じることが防止される。よって、一対の端面34、34を外周面31a側のみで確実に接触させることができる。
【0075】
なお、ローラー本体31(搬送ローラー13)は、鋼板コイルによる巻きぐせが残った大型金属板60を用いて成形されるので、コイルの内周側であった面がローラー本体31の内周面となるように成形することが好ましい。すなわち、鋼板コイルによる大型金属板60の巻きぐせは、鋼板コイルの内周面であった面が凹面となるような反りである。つまり、ローラー本体31を成形する大型金属板60には、ローラー本体31の内周面側に反るような巻きぐせが残っている。
【0076】
そのため、少なくともローラー本体31の繋ぎ目36を開く方向には巻きぐせが作用しなくなる。したがって、ローラー本体31の外周面側に反るような巻きぐせが残っている場合と比較して、ローラー本体31の繋ぎ目36を開き難くするができる。これにより、ローラー本体31の繋ぎ目36を開く方向に応力が作用した場合であっても、繋ぎ目36が開くことを防止することができ、高い搬送精度が得られる搬送ローラー13が得られる。
【0077】
また、ローラー本体31の周方向(曲げ方向)と鋼板コイルの巻回方向(大型金属板60の圧延方向)とが同一となっている。そのため、ローラー本体31を成形する大型金属板60の曲げ方向と巻きぐせによる反りの方向とを一致させることができる。これにより、ローラー本体31を成形する大型金属板60の巻きぐせが、ローラー本体31の繋ぎ目36を閉じる方向に作用する。したがって、ローラー本体31の繋ぎ目36の開きをより効果的に防止することができる。
以上で金属板30の曲げ加工が終了し、金属板30は円筒状に成形される。
【0078】
最後に、図13に示すように、ローラー本体31と連結部63との間を、カットラインGに従って切断する。図13は、ローラー本体31を枠部62から切り離す工程を示す概略図である。
以上で、順送プレス加工(ステップS1)によるローラー本体31の成形が完了する。
【0079】
次に、略円筒状に成形されたローラー本体31の外周面に対して、公知のセンターレス研磨加工を施す(ステップS2)。この研磨加工によって、ローラー本体31の径、真円度及び反りの精度が適切な範囲に調整される。
【0080】
次に、ローラー本体31にめっき処理を施す(ステップS3)。このめっき処理によって、ローラー本体31の内外周面、一対の端面34、34、及び一対の第2端面35、35にめっき層38が形成される。なお、例えSECC等の予めめっき層が形成されている鋼板を用いたとしても、端面34や第2端面35は打ち抜き加工により鋼板の基材が露出し、腐食しやすくなっているため、端面34及び第2端面35にはこの工程によって十分なめっき層を形成する必要がある。
【0081】
最後に、ローラー本体31の外周面31aにおける保持領域Fに、高摩擦層32を形成する。まず、ローラー本体31の両端部をマスキングし、エポキシ系樹脂やポリエステル系樹脂を溶媒中に分散させ、この溶液をローラー本体31の外周面に塗布し、樹脂層を形成する。次に、粉体塗装法を用いてアルミナ粒子等のセラミックス粒子を、上記樹脂層の表面に付着させる。最後に、加熱処理により樹脂層を硬化させ、セラミックス粒子が表面に配置された高摩擦層32が形成される。
【0082】
なお、高摩擦層32を形成する方法としては、粉体塗装法の代わりに、セラミックス粒子を溶媒中に分散させ、この溶液を上記樹脂層の表面に塗布してもよい。また、予めセラミックス粒子をエポキシ系樹脂やポリエステル系樹脂とともに溶媒中に分散させ、この溶液をローラー本体31の外周面に塗布することで、セラミックス粒子を含んだ樹脂層を形成してもよい。
以上の方法によって、搬送ローラー13の成形が完了する。
【0083】
なお、ローラー本体31(搬送ローラー13)の両端部には、上述したようにその一方あるいは両方に、図2に示した第1駆動ギア23や第3駆動ギア25など、種々の連結部品に連結するための係合部が形成されている。例えば、図14(a)、(b)に示すように、円筒状のパイプ(中空パイプ)からなるローラー本体31の相対向する位置、すなわちローラー本体31の直径を規定する二点の形成面に、それぞれ貫通孔71a、71aを形成し、これら一対の貫通孔71a、71aを含んでなる係合孔(係合部)71を形成することができる。この係合孔71によれば、歯車等の連結部品72を軸やピン等(図示せず)によって固定することができる。
【0084】
また、図15(a)、(b)に示すように、ローラー本体31の端部にDカット状の係合部73を形成することもできる。この係合部73は、円筒状の中空パイプ(ローラー本体31)の端部に形成されたもので、図15(a)に示すようにその一部が平面視矩形状に切り欠かれた開口73aを有し、これによって図15(b)に示すように端部側面の外形が見掛け上D状に形成されたものである。
【0085】
したがって、歯車等の連結部品(図示せず)を、この見掛け上D状に形成された係合部73に係合させることにより、該連結部品をローラー本体31(搬送ローラー13)に対し空回りさせることなく、取り付けることができる。また、この係合部73については、中空パイプ(ローラー本体31)の内部孔に通じる溝状の開口73aが形成されていることから、この開口73aを利用することによっても、連結部品をローラー本体31に対し空回りさせることなく取り付けることができる。具体的には、連結部品に凸部を形成しておき、この凸部を開口73aに嵌合させることにより、空回りを防止することができる。
【0086】
また、図16(a)、(b)に示すように、ローラー本体31の端部に溝74aとDカット部74bとを有した係合部74を形成することもできる。この係合部74において、Dカット部74bはローラー本体31の端部に形成されており、溝74aはDカット部74bより内側に形成されている。溝74aは、図16(a)に示すように、ローラー本体31がその周方向に略半分切り欠かれて形成されたものである。Dカット部74bは、溝74aの外側において該溝74aと直交する方向に延在する開口74cを有し、この開口74cの両側に、一対の折曲片74d、74dを有したものである。すなわち、図16(b)に示すようにこれら一対の折曲片74d、74dがローラー本体31の中心軸側に折曲させられたことにより、これら折曲片74d、74dに対応する部分が、ローラー本体31の円形の外周面から凹んだ状態となっている。
【0087】
したがって、歯車等の連結部品(図示せず)を、溝74aに係合させまたはDカット部74bに係合させることにより、該連結部品をローラー本体31(搬送ローラー13)に対し空回りさせることなく、取り付けることができる。また、この係合部74では、折曲片74d間に形成された開口74cを利用することによっても、連結部品をローラー本体31に対し空回りさせることなく取り付けることができる。具体的には、連結部品に凸部を形成しておき、この凸部を開口74cに嵌合させることにより、空回りを防止することができる。
【0088】
また、図17(a)、(b)に示すように、ローラー本体31の端部に溝75aと開口75bとを有した係合部75を形成することもできる。この係合部75において、開口75bはローラー本体31の外端に形成されており、溝75aは開口75bより内側に形成されている。溝75aは、図17(a)に示すように、ローラー本体31がその周方向に略半分切り欠かれて形成されたものである。開口75bは、溝75aの外側においてローラー本体31の一部が平面視矩形状に切り欠かれ、これによって図17(b)に示すように端部側面の外形が見掛け上D状に形成されたものである。
【0089】
したがって、歯車等の連結部品(図示せず)を、溝75aに係合させまたは開口75bによって形成された見掛け上D状に形成された部位に係合させることにより、該連結部品をローラー本体31(搬送ローラー13)に対し空回りさせることなく、取り付けることができる。また、この係合部75でも、図15(a)、(b)に示した係合部73と同様に、開口75bを利用することによって、連結部品をローラー本体31に対し空回りさせることなく取り付けることができる。
【0090】
このような係合孔71や係合部73、74、75を形成するには、金属板30を曲げ加工して得られたローラー本体31に対して、さらに切削加工等を施すことで行うこともできる。しかし、その場合には、ローラー本体31に対して係合部の形成だけのために別途加工工程を追加することで、コストや時間についての効率が低下してしまう。そこで、本発明の製造方法では、ローラー本体31を曲げ加工(S13)によって成形する前に、打ち抜き加工(S11)によって係合部となる展開係合部を金属板30に形成しておき、その後、金属板30を曲げ加工によりローラー本体31を成形する際に、係合部も同時に形成する。
【0091】
具体的には、図6に示した大型金属板60から図7に示したような細長い略矩形板状の金属板30を成形する際、この大型金属板60から小型の金属板30への加工と同時に、得られる金属板30の端部に、切欠状、突片状、孔状、あるいは溝状等の展開係合部を形成する。
【0092】
例えば、図18(a)に示すように金属板30の端部の所定位置に一対の貫通孔71a、71aを加工し、これらを展開係合部76aとしておくことにより、この金属板30を曲げ加工することで一対の貫通孔71a、71aを対向させ、図14に示した係合孔71を形成することができる。
【0093】
また、図18(b)に示すように、金属板30の端部を所定形状に切り欠いて一対の切欠部73b、73bからなる展開係合部73cとしておくことにより、この金属板30を曲げ加工することで図15に示した係合部73を形成することができる。
【0094】
さらに、図18(c)に示すように、金属板30の端部を所定形状に切り欠いて展開係合部76bとしておくことにより、この金属板30を曲げ加工することで図16に示した係合部74を形成することができる。すなわち、展開係合部76bとして、一対の切欠部(凹部)74e、74eと一対の突片74f、74fとを形成しておくことにより、係合部74を形成することができる。ただし、この例では、金属板30を曲げ加工した後、一対の突片74f、74fを内側に折り曲げ加工して折曲片74dとする必要があるため、加工工程についてのコストや時間の効率化を十分に高めるにはやや不十分である。
【0095】
そこで、図18(d)に示すように、金属板30の端部を所定形状に切り欠いて展開係合部76cとしておくことにより、この金属板30を曲げ加工することで図17に示した係合部75を形成することができる。すなわち、展開係合部76cとして、一対の切欠部(凹部)75c、75cと一対の突片75d、75dとを形成しておくことにより、係合部75を形成することができる。この例では、金属板30を曲げ加工した際に一対の突片75d、75dも円弧状に曲げることにより、これら突片75d、75d間に図17(b)に示した開口75bを形成することができる。したがって、曲げ加工によって形成したローラー本体31に対し、さらに加工を追加する必要がなく、これにより加工工程についてのコストや時間の効率化を十分に高めることができる。
【0096】
ここで、図18(b)〜(d)に示した例では、図15、図16、図17に示した係合部73、74、75が繋ぎ目36を挟んで形成されるよう、金属板30の両端部に展開係合部73c、76b、76cを形成している。このように、展開係合部73c、76b、76cを両端部に形成することにより、形成するローラー本体31の繋ぎ目36を、このローラー本体31の長さより短くすることができる。したがって、繋ぎ目36の形成の際に端面34、35が部分的に当接し干渉することなどによる、ローラー本体31の変形を抑えることが可能になる。
【0097】
ただし、本発明はこれに限定されることなく、図19(a)〜(c)に示すように、展開係合部を金属板30の両端部に形成することなく、その幅方向(曲げ方向)における中心線の近傍に形成することもできる。すなわち、図19(a)に示すように端部に細長い矩形状の切欠からなる展開係合部76dを形成することで、図15に示した係合部73を形成することができる。また、図19(b)に示すようなT字状の切欠からなる展開係合部76eを形成することで、図16に示した係合部74を形成することができ、さらに、図19(c)に示すような略T字状の切欠からなる展開係合部76fを形成することで、図17に示した係合部75を形成することができる。
このように展開係合部76d〜76fを曲げ方向における中心線の近傍に形成すれば、これら展開係合部76d〜76fから得られる係合部73〜75を、より精度良く形成することができる。
【0098】
以上説明したように本実施形態の搬送ローラー13の製造方法では、大型金属板60から打ち抜き加工によって小型の金属板30を成形する際に、展開係合部も同時に形成し、さらに、金属板30を曲げ加工する際に、展開係合部から係合部71、73、74、75を形成するようにしたので、ローラー本体31を形成した後、係合部の形成だけのために別途加工工程を追加する必要がなくなる。
したがって、追加する加工工程にかかるコストや時間が不要になることで、搬送ローラー13自体の十分なコストダウンが可能になり、生産性も向上する。特に、大型金属板を小型化する際に展開係合部を一括して形成するので、工程を一層簡略化することができる。
【0099】
また、図13に示したように本実施形態における搬送ローラー13(ローラー本体31)では、その繋ぎ目36を、円筒状の中空パイプからなるローラー本体31の中心軸と平行になるように形成したが、本発明はこれに限定されることなく、例えば基材となる金属板30の一対の端部間に形成される繋ぎ目を、円筒状パイプ(ローラー本体)の外周面上における、該円筒状パイプの中心軸に平行な直線上において、該直線に対して線分で重なることなく、一つあるいは複数の点でのみ重なるように形成してもよい。
【0100】
具体的には、図20(a)に示すように繋ぎ目81として、ローラー本体31の中心軸C1に平行となることなくこれに交差するように、ローラー本体31の外周面をその周方向に延びつつ、ローラー本体31の一端から他端にかけて延在するように形成してもよい。このように繋ぎ目81を形成するには、基材となる金属板として、図7に示したような細長い矩形状の金属板30でなく、図20(b)に示すように細長い平行四辺形の金属板30Aを用い、符号C2で示す直線が中心軸となるように曲げ加工する。これにより、図20(a)に示したローラー本体31が得られ、繋ぎ目81が中心軸C1に対して非平行となる。
【0101】
なお、図20(a)に示したローラー本体31では、その繋ぎ目81が、ローラー本体31の一端から他端にかけて、その周面を一周未満しか回らないように形成している。これは、金属板30Aの曲げ加工を容易にするためである。ただし、図20(c)に示すように繋ぎ目82が、ローラー本体31の一端から他端にかけて、その周面を一周以上回るように、すなわち螺旋状に回るように形成してもよい。その場合には、基材となる金属板として、図20(b)に示した細長い平行四辺形の金属板30Aにおける、角度γをより鋭角にすればよい。
【0102】
また、図21(a)に示すように繋ぎ目83を、サイン波等の曲線からなる波線状に形成してもよい。このように繋ぎ目83を形成するには、基材となる金属板として、図21(b)に示すように、細長い略矩形状で、その両方の長辺が波線状に形成された金属板30Bを用い、符号C2で示す直線が中心軸となるように曲げ加工する。なお、波線状に形成された一対の長辺は、曲げ加工によってこれらが近接させられるため、当然ながら互いに対応する箇所間では、一方の長辺が山部となる場合に他方の長辺では谷部となり、逆に、一方の長辺が谷部となる場合に他方の長辺では山部となるように形成する。また、この例では、繋ぎ目83の中心線がローラー本体31の中心軸と平行になるように形成したが、この繋ぎ目83の中心線も、ローラー本体31の中心軸と非平行になるように形成してもよい。その場合に、基材となる金属板として、図20(b)に示したような細長い平行四辺形の金属板で、かつ、その両方の長辺が波線状に形成されたものを用いればよい。
【0103】
また、図22(a)に示すように繋ぎ目84を、鉤状に折れ曲がった波線状に形成してもよい。このように繋ぎ目84を形成するには、基材となる金属板として、図20(b)に示すように、細長い略矩形状で、その両方の長辺が鉤状に折れ曲がった波線状に形成された金属板30Cを用い、符号C2で示す直線が中心軸となるように曲げ加工する。
この金属板30Cにおいても、波線状に形成された一対の長辺において互いに対応する箇所間では、一方の長辺が山部となる場合に他方の長辺では谷部となり、逆に、一方の長辺が谷部となる場合に他方の長辺では山部となるように形成する。なお、この例でも、繋ぎ目84の中心線がローラー本体31の中心軸と平行になるように形成したが、繋ぎ目83の場合と同様に、ローラー本体31の中心軸と非平行になるように形成してもよい。
【0104】
また、繋ぎ目については、図20〜図22に示した例に限定されることなく、種々の形状を採用することができる。例えば、図21(a)に示した曲線からなる波線と、図22(a)に示した折れ曲がった波線とを組み合わせてもよく、これらに、図20に示したような斜めの線を組み合わせてもよい。
【0105】
このように繋ぎ目81〜84を、円筒状パイプ(ローラー本体31)の中心軸に平行な直線に対して線分で重なることなく、一つあるいは複数の点でのみ重なるように形成すれば、このローラー本体31を有してなる搬送ローラー13は、従動ローラー14と協働して記録紙Pを搬送する際、つまり紙送りをする際、記録紙Pの搬送速度が一定になり、搬送ムラがより確実に防止されたものとなる。
【0106】
すなわち、図23に示すように搬送ローラー13が紙送りの際に記録紙Pと接する箇所は、基本的にはその外周面上の直線L、つまり中心軸C1と平行な直線Lとなる。したがって、図13に示したように搬送ローラー13(ローラー本体31)の繋ぎ目36がローラー本体31の中心軸と平行である場合、この搬送ローラー13はその繋ぎ目36全体が一時的(瞬間的)に記録紙Pに接することになる。すると、本実施形態の搬送ローラー13では上述したようにその繋ぎ目36に起因して溝が形成されていないため、問題にはならないものの、仮に繋ぎ目36に起因して溝が形成されていると、この溝が一時的にかつ同時に記録紙Pに接し、したがって記録紙Pの全幅が一時的に繋ぎ目36に起因する溝に接することになる。その結果、この溝では搬送ローラー13の他の外周面に比べて凹みがあり、記録紙Pに対する接触抵抗が小となっているため、記録紙Pの搬送速度が一時的に低下し、搬送ムラを生じてしまう。
【0107】
もっとも、図20(a)、(c)、図21(a)、図22(a)に示したように繋ぎ目81〜84を形成すれば、仮にこれら繋ぎ目に起因して溝が形成されたとしても、この溝が紙送りの際に同時に記録紙Pに接触する箇所が、一つあるいは複数の点のみとなる。したがって、搬送ローラー13の他の面(線)が当たるときに比べほとんど接触抵抗に変化がなく、これにより、記録紙Pの搬送速度が一定になり、搬送ムラが防止されるようになる。
【0108】
また、円筒状の中空パイプからなる搬送ローラー13(ローラー本体31)の繋ぎ目については、上述した例以外にも、例えば図24(a)に示すように、ローラー本体31の中心軸と平行な直線部85aとこれに直交する直線部85bとからなる、矩形波状の折曲部85を有して形成されていてもよい。このような折曲部85を有してなる繋ぎ目にあっても、この繋ぎ目に起因して仮に溝が形成された場合に、この溝が紙送りの際に記録紙Pの幅全体に同時に接触することがないため、記録紙Pの搬送速度がほぼ一定になり、搬送ムラが防止される。
【0109】
また、この折曲部85については、図24(b)に示すようにローラー本体31の長さ全体に亘って形成されていてもよく、図24(c)に示すように、その中央部を除く両端部に選択的に形成されていてもよい。図24(c)に示したように折曲部85を両端部にのみ形成する場合には、これら折曲部85間はローラー本体31の中心軸と平行な中央直線部86となる。ただし、図示しないものの、折曲部85間の中央直線部を、図20(a)に示したように中心軸C1と非平行となる斜め線に形成してもよい。
また、このように折曲部85を両端部にのみ形成し、その間の中央部については中央直線部86とした場合、図3に示した高摩擦層32の形成領域を中央直線部86に対応させるのが好ましい。
【0110】
繋ぎ目に折曲部85を形成し、したがってこの折曲部85を凹凸による嵌合部にすると、これら折曲部85(嵌合部)では設計通りに嵌合させ、凸部の先端とこれに対応する凹部との間を隙間なく近接させる(突き合わせる)のが難しくなる。したがって、ローラー本体31の全長に亘って折曲部85を形成すると、ローラー本体31に歪みや捩れ等が生じ易くなる。そこで、図24(c)に示したように折曲部85を両端部にのみ形成すれば、このような歪みや捩れ等が生じるのを抑えることができる。また、特に記録紙Pに直接接する領域となる高摩擦層32に対応する中央部を、折曲部85とすることなく中央直線部86とすることにより、記録紙Pに直接接する領域に歪みや捩れ等が生じるのを確実に防止することができる。
【0111】
なお、円筒状の中空パイプからなる搬送ローラー13(ローラー本体31)の繋ぎ目については、上述の例以外にも、例えば図25(a)に示すように折曲部88における交差部88aを、ローラー本体31の中心軸に対して非平行とし、折曲部88における凸片88bの先端側の角度εを鈍角(180°未満)に形成してもよい。このようにすれば、金属板の曲げ加工において一対の端面を近接させた際、凸片88bの先端を対応する凹部に嵌合させ易くなり、したがって、ローラー本体31に歪みや捩れ等が生じるのを抑制することができる。
【0112】
また、図24(c)に示したように折曲部85を両端部のみに形成した構造において、折曲部85を、例えば図25(b)に示すように図21(a)に示した曲線からなる波線89aに代えてもよく、さらに、図25(c)に示すように図22(a)に示した折れ曲がった波線89bに代えてもよい。
また、図24(a)に示した矩形波状の折曲部85と、図25(b)に示した曲線からなる波線89aとを組み合わせて繋ぎ目を形成してもよく、矩形波状の折曲部85と、図25(c)に示した折れ曲がった波線89bとを組み合わせて繋ぎ目を形成してもよい。
【0113】
また、図26に示すように、一対の端面34、34の一方側に凸部39を設け、他方側に凸部39が嵌合できる凹部40を設けてもよい。凸部39及び凹部40は、凹部40に凸部39が嵌合することで、ローラー本体31にねじりの力が加えられた場合等に、一対の端面34、34の延在方向でのずれを防止するためのものである。凸部39の先端部39aと、凹部40の底部40aとは、互いに平行している。なお、凸部39及び凹部40は、搬送ローラー13の保持領域F以外、及び搬送ローラー13を支持する軸受(図示せず)の支持領域以外に設けられることが好ましい。
【0114】
なお、ローラー本体31が成形された状態では、凸部39は凹部40に隙間なく嵌合しているが、凸部39の先端部39aと、凹部40の底部40aとの間には所定の隙間41が形成されている。この隙間41は、一対の端面34、34を互いに均一に接触させるために設けられるものである。
【0115】
また、搬送ローラー13において、ローラー本体31に形成された繋ぎ目36の一部に、図27(a)に示すように、開口90を設けてもよい。
繋ぎ目36はローラー本体31の全長に亘って形成されるので、搬送ローラー13を回転自在に支持する軸受(図示せず)に供給したグリスが搬送ローラー13の表面に付着すると、グリスは繋ぎ目36を毛細管現象により伝わり流れるようになる。特に、搬送ローラー13の強度を向上させるため、繋ぎ目36における一対の端面34、34間の隙間を小さくする程、グリスの毛細管現象が強くなって、グリスが繋ぎ目36に沿って流れやすくなる。
【0116】
そこで、図27(b)に示すように、ローラー本体31に形成された繋ぎ目36の一部に、開口90を設ける。この開口90は、繋ぎ目36を形成する一対の端面34、34にそれぞれ設けられた切欠部91、92により形成される。一対の端面34、34を突き合わせたときに、切欠部91、92の間の最大距離dが例えば1mm程度以上となるように設定され、開口90として機能する。
【0117】
開口90は、搬送ローラー13(ローラー本体31)の全長に亘って形成された繋ぎ目36のうち、高摩擦層32が形成された領域と上記軸受に支持される領域を除く領域に設けられる。つまり、高摩擦層32は搬送ローラー13のほぼ中央部に形成され、搬送ローラー13の両端側が軸受に支持されるので、搬送ローラー13には少なくとも2つの開口90が設けられる。
【0118】
開口90は、上記軸受に供給(塗布)されたグリス(潤滑油)が繋ぎ目36(一対の端面34、34の隙間)に沿って高摩擦層32まで達することを防止する目的で設けられる。すなわち、繋ぎ目36の一部に開口90を設けることで、グリスの毛細管現象を止めている。具体的には、繋ぎ目36のうち、軸受に支持される領域と高摩擦層32が形成された領域の間に開口90を設けることで、グリスが高摩擦層32に達することを防止している。そして、開口90の大きさ(一対の切欠部91、92間の最大距離d)を調整することで、グリスの毛細管現象を確実に止めることができる。
【0119】
なお、繋ぎ目36を形成する一対の端面34、34のそれぞれに、開口90を形成するための切欠部91、92を形成する場合に限らない。つまり、図27(c)に示すように、繋ぎ目36を形成する一対の端面34、34の一方にのみに切欠部93を形成して、切欠部93と他方の端面34とにより開口90が形成される場合であってもよい。また、開口90の形状としては、矩形に限らず、円形等であってよい。
【0120】
続いて、本実施形態におけるプリンター1の動作を、図1ないし図3を参照して説明する。
図1及び図2に示すように、給紙部2における給紙ローラー12の回転により、給紙トレー11に載置された記録紙Pが搬送部3に向けて供給される。駆動部6の作動により、搬送ローラー13が回転する。また、搬送ローラー13の外周面と接触して設けられる従動ローラー14が、搬送ローラー13と相反する方向で回転する。給紙部2から供給された記録紙Pは、搬送ローラー13と従動ローラー14との間に挟持され、また、搬送ローラー13の保持領域Fには高摩擦層32が形成されているため、記録紙Pは搬送ローラー13に保持される。よって、記録紙Pは搬送ローラー13の回転とともに正確に搬送される。
【0121】
ここで、図3に示すように、一対の端面34、34は外周面31a側で互いに接しており、繋ぎ目36において外周面31a側に開口する隙間や凹部等は存在しない。そのため、搬送ローラー13が回転してもその外周面31aは記録紙Pと常に接触することができる。よって、外周面31aと記録紙Pとの間で滑り等が発生せず、記録紙Pを高い精度で搬送することができる。
【0122】
搬送ローラー13の回転により、記録紙Pは、プラテン15におけるダイヤモンドリブ16の頂面上に搬送される。ダイヤモンドリブ16上に載置された記録紙Pに対して、キャリッジ20とともに適切な位置に移動した噴射ヘッド19からインクが噴射され、文字や画像等の情報が印刷される。この印刷後、記録紙Pは排紙部4の排紙ローラー17及び排紙ギザローラー18の回転により排出される。
以上で、本実施形態におけるプリンター1の動作が完了する。
【0123】
したがって、本実施形態によれば以下の効果を得ることができる。
本実施形態によれば、円筒状に成形される前の金属板30に端面34の調整を施したとしても、高い精度の径や真円度等を備えたローラー本体31を成形できるという効果がある。
【0124】
〔第2実施形態〕
本実施形態における搬送ローラー13を成形する方法を、図28を参照して説明する。
図28は、本実施形態における端面調整加工の工程を示す概略図であって、(a)は金属板30の配置を示す断面図、(b)は第2調整用雌型130の底面図、(c)は金属板30の平面図である。また、図28において、図9及び図10に示す第1の実施形態の構成要素と同一の要素については同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0125】
図28に示すように、端面調整加工に用いられる第2調整用雌型130と第2調整用雄型140との間に、金属板30を配置する。第2調整用雌型130には、金属板30が配置される凹部131が形成されている。凹部131は、金属板30の延在方向に延びており、第2調整用雄型140に対向して形成され、底面132と、一対の内側面133、133と、一対の内側面134、134とを備えている。底面132は、金属板30の板厚方向での板面が当接する面であって、第2調整用雄型140に対向する平面状に形成されている。
【0126】
一対の内側面133は、金属板30の一対の端面34、34を調整するための平面状の側面であって、いずれも金属板30の延在方向に平行して且つ一方向に延びて形成されている。また、一対の内側面133は互いに平行して延在している。一対の内側面133、133は、底面132から第2調整用雄型140に向かうに従い、漸次互いに離間するように傾斜している。すなわち、一対の内側面133、133の間の幅は、底面132から第2調整用雄型140に向かうに従い漸次幅広となっている。
【0127】
一対の内側面134は、金属板30の一対の第2端面35、35の変位を規制するために設けられる平面状の側面であって、いずれも金属板30の幅方向に平行して且つ一方向に延びて形成されている。また、一対の内側面134は互いに平行して延在している。一対の内側面134は、底面132と直交している。また、一対の内側面134、134の間の距離は、打ち抜き加工後の金属板30の全長と略同一となっている。一対の内側面134、134は、いずれも連結部63が通る開口部を有している。
【0128】
第2調整用雄型140には、第2調整用雌型130側に向かって突出する凸部141が設けられている。凸部141における第2調整用雌型130側の頂面は、底面132と平行する平面状に形成されている。凸部141の突出高さは、凹部131内に配置された金属板30をプレスして調整できる大きさに設定されている。
【0129】
第2調整用雌型130と第2調整用雄型140とを互いに当接させて、金属板30をプレスする。ここで、金属板30は板厚方向でプレスされるため、金属板30は金属板30の幅方向及び延在方向のいずれにも伸長しようとする。もっとも、本実施形態では、一対の第2端面35、35と対向して一対の内側面134、134が設けられるため、一対の第2端面35、35の変位は規制され、金属板30の延在方向での両端部の変位も抑制される。よって、端面調整加工により、金属板30の幅が延在方向に関して変化してしまうことを抑制することができ、打ち抜き加工後における金属板30の幅W1及び幅W2の違いを少なくすることができる。
【0130】
したがって、本実施形態によれば以下の効果を得ることができる。
本実施形態によれば、第1の実施形態によって得られる効果に加え、金属板30の幅が延在方向に関して変化してしまうことを抑制できるという効果がある。
【0131】
〔第3実施形態〕
本実施形態における第3搬送ローラー(搬送ローラー)13Bを成形する方法を、図29から図31を参照して説明する。
図29は、本実施形態における第3搬送ローラー13Bの構成を示す概略図であって、(a)は側面図、(b)は(a)のE−E線視断面図、(c)は(a)の端部断面図である。図30は、端面調整加工における金属板30の配置を示す概略図であって、(a)は断面図、(b)は第3調整用雌型150の底面図である。図31は、端面調整加工の工程を示す概略図であって、(a)は調整時の金属板30の平面図、(b)は調整時の幅方向での断面図、(c)は調整時の延在方向での断面図である。
また、図29から図31において、図3、図9及び図10に示す第1の実施形態の構成要素、並びに図28に示す第2の実施形態の構成要素と同一の要素については同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0132】
図29に示すように、第3搬送ローラー13Bは、第3ローラー本体31Bと、高摩擦層32とを有している。第3ローラー本体31Bは、略一定の板厚の金属板を曲げて円筒状に成形した軸部材であって、金属板の一対の端面34、34が互いに接する繋ぎ目36を有している。
【0133】
第3ローラー本体31Bの軸方向での端面である第2端面45は、外周面31aから内周面31bに向かうに従い、漸次軸方向での中央部に向かって傾斜している。なお、第3ローラー本体31Bの逆側の第2端面45も同様の形状となっている。
【0134】
次に、本実施形態における端面調整加工を、図30及び図31を参照して説明する。
図30に示すように、端面調整加工に用いられる第3調整用雌型150と第2調整用雄型140との間に、金属板30を配置する。第3調整用雌型150には、金属板30が配置される第2凹部151が形成されている。第2凹部151は、金属板30の延在方向に延びており、第2調整用雄型140に対向して形成され、底面152と、一対の内側面153、153と、一対の内側面154、154とを備えている。底面152は、金属板30の板厚方向での板面が当接する面であって、第2調整用雄型140に対向する平面状に形成されている。
【0135】
一対の内側面153は、金属板30の一対の端面34、34を調整するための平面状の側面であって、いずれも金属板30の延在方向に平行して且つ一方向に延びて形成されている。また、一対の内側面153は互いに平行して延在している。一対の内側面153、153は、底面152から第2調整用雄型140に向かうに従い、漸次互いに離間するように傾斜している。すなわち、一対の内側面153、153の間の幅は、底面152から第2調整用雄型140に向かうに従い漸次幅広となっている。
【0136】
一対の内側面154は、金属板30の一対の第2端面45、45を調整するための平面状の側面であって、いずれも金属板30の幅方向に平行して且つ一方向に延びて形成されている。また、一対の内側面154は互いに平行して延在している。一対の内側面154、154は、底面152から第2調整用雄型140に向かうに従い、漸次互いに離間するように傾斜している。すなわち、一対の内側面154、154の間の幅は、底面152から第2調整用雄型140に向かうに従い漸次幅広となっている。一対の内側面154、154は、いずれも連結部63が通る開口部を有している。
【0137】
図31に示すように、第3調整用雌型150と第2調整用雄型140とを互いに当接させて、金属板30をプレスする。ここで、金属板30は板厚方向でプレスされるため、金属板30は金属板30の幅方向及び延在方向のいずれにも伸長しようとする。本実施形態では、一対の第2端面45、45を調整するための一対の内側面154、154が設けられるため、一対の第2端面45、45の変位は規制され、金属板30の延在方向での両端部の変位も抑制される。よって、端面調整加工により、金属板30の幅が延在方向に関して変化してしまうことを抑制することができ、打ち抜き加工後における金属板30の幅W1及び幅W2の違いを少なくすることができる。また、一対の端面34、34だけでなく、一対の第2端面45、45も調整される。
【0138】
したがって、本実施形態によれば以下の効果を得ることができる。
本実施形態によれば、第1の実施形態によって得られる効果に加え、金属板30の幅が延在方向に関して変化してしまうことを抑制できるという効果がある。
【0139】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0140】
例えば、上記実施形態では、打ち抜き加工後の金属板30はその中央部の幅W1が両端部の幅W2よりも狭くなっているが、これに限定されるものではなく、端面調整加工における金属板30に生じる変型に応じた形状で金属板30を成形してよい。例えば、端面調整加工を施すことで、上記実施形態とは逆に両端部の幅が中央部の幅よりも大きくなる場合には、打ち抜き加工後の金属板30における中央部の幅W1を両端部の幅W2よりも広くしてもよい。
【符号の説明】
【0141】
13…搬送ローラー、13A…第2搬送ローラー(搬送ローラー)、13B…第3搬送ローラー(搬送ローラー)、30…金属板、31a…外周面(他板面)、31b…内周面(一板面)、34…端面、34a…一端面(一方の端面)、34b…他端面(他方の端面)、35…第2端面、37…隙間、37A…第2隙間(隙間)、45…第2端面
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属板の一対の端面を対向させ円筒状に成形された搬送ローラーの製造方法であって、
前記金属板を成形する金属板成形工程と、
前記一対の端面のうち少なくとも一方の端面を調整する調整工程と、
前記金属板を曲げて円筒状に成形する曲げ工程とを有し、
前記金属板成形工程では、前記調整工程で前記金属板に生じる変形に応じた形状で前記金属板を成形することを特徴とする搬送ローラーの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の搬送ローラーの製造方法において、
前記金属板成形工程では、前記端面の延在方向での中央部から両端部にそれぞれ向かうに従い漸次幅広となる形状で前記金属板を成形し、
前記調整工程では、前記一対の端面のうち少なくとも一方の端面と、前記金属板の板厚方向での一板面とで形成される角度が90°よりも大きくなるように調整し、
前記曲げ工程では、前記一板面と逆側の他板面が外周面となるように前記金属板を曲げて、前記一対の端面の少なくとも前記外周面側を互いに当接させて円筒状に成形することを特徴とする搬送ローラーの製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の搬送ローラーの製造方法において、
前記調整工程では、前記金属板における前記延在方向での一対の第2端面の変位を規制して、前記端面を調整することを特徴とする搬送ローラーの製造方法。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の搬送ローラーの製造方法において、
前記調整工程では、前記金属板における前記延在方向での一対の第2端面と、前記一板面とで形成される角度がいずれも90°よりも大きくなるように、前記一対の第2端面を調整することを特徴とする搬送ローラーの製造方法。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の搬送ローラーの製造方法において、
前記調整工程では、前記一対の端面をいずれも調整することを特徴とする搬送ローラーの製造方法。
【請求項6】
請求項1から4のいずれか一項に記載の搬送ローラーの製造方法において、
前記調整工程では、前記一方の端面のみを調整することを特徴とする搬送ローラーの製造方法。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の搬送ローラーの製造方法において、
前記曲げ工程では、前記一対の端面はその内周面側に隙間を有した状態で互いに当接されることを特徴とする搬送ローラーの製造方法。
【請求項1】
金属板の一対の端面を対向させ円筒状に成形された搬送ローラーの製造方法であって、
前記金属板を成形する金属板成形工程と、
前記一対の端面のうち少なくとも一方の端面を調整する調整工程と、
前記金属板を曲げて円筒状に成形する曲げ工程とを有し、
前記金属板成形工程では、前記調整工程で前記金属板に生じる変形に応じた形状で前記金属板を成形することを特徴とする搬送ローラーの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の搬送ローラーの製造方法において、
前記金属板成形工程では、前記端面の延在方向での中央部から両端部にそれぞれ向かうに従い漸次幅広となる形状で前記金属板を成形し、
前記調整工程では、前記一対の端面のうち少なくとも一方の端面と、前記金属板の板厚方向での一板面とで形成される角度が90°よりも大きくなるように調整し、
前記曲げ工程では、前記一板面と逆側の他板面が外周面となるように前記金属板を曲げて、前記一対の端面の少なくとも前記外周面側を互いに当接させて円筒状に成形することを特徴とする搬送ローラーの製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の搬送ローラーの製造方法において、
前記調整工程では、前記金属板における前記延在方向での一対の第2端面の変位を規制して、前記端面を調整することを特徴とする搬送ローラーの製造方法。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の搬送ローラーの製造方法において、
前記調整工程では、前記金属板における前記延在方向での一対の第2端面と、前記一板面とで形成される角度がいずれも90°よりも大きくなるように、前記一対の第2端面を調整することを特徴とする搬送ローラーの製造方法。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の搬送ローラーの製造方法において、
前記調整工程では、前記一対の端面をいずれも調整することを特徴とする搬送ローラーの製造方法。
【請求項6】
請求項1から4のいずれか一項に記載の搬送ローラーの製造方法において、
前記調整工程では、前記一方の端面のみを調整することを特徴とする搬送ローラーの製造方法。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の搬送ローラーの製造方法において、
前記曲げ工程では、前記一対の端面はその内周面側に隙間を有した状態で互いに当接されることを特徴とする搬送ローラーの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
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【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
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【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【公開番号】特開2011−121242(P2011−121242A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−279832(P2009−279832)
【出願日】平成21年12月9日(2009.12.9)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年12月9日(2009.12.9)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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