搬送用ベルト、搬送用プーリ、及び搬送システム
【課題】搬送用ベルトの耐久性を高める。
【解決手段】搬送用プーリは、その外周面に周方向に沿って設けられた溝部22を有する。溝部22の溝底面22Aの断面は半円弧である。搬送用プーリには、搬送用ベルト10を掛け回す。搬送用ベルト10のベルト下部12は半円部であり、ベルト下部12が溝部22に係合する。半円部の半円弧は、溝底部の半円弧の曲率半径より小さい曲率半径を有する。
【解決手段】搬送用プーリは、その外周面に周方向に沿って設けられた溝部22を有する。溝部22の溝底面22Aの断面は半円弧である。搬送用プーリには、搬送用ベルト10を掛け回す。搬送用ベルト10のベルト下部12は半円部であり、ベルト下部12が溝部22に係合する。半円部の半円弧は、溝底部の半円弧の曲率半径より小さい曲率半径を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば硬貨の搬送に使用される搬送用ベルト、搬送用プーリ、及び搬送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
自動改札機、現金預金支払機、両替機、レジスター等の硬貨処理機では、硬貨を搬送するために搬送用ベルトが使用されている。搬送用ベルトとしては、搬送面が円形の丸ベルトや、搬送面が平面である平ベルトが広く使用される。丸ベルトは、下部断面が円弧状の溝部に係合された状態で走行されるために、走行中にベルトがプーリから外れにくく、走行安定性に優れる。
【0003】
しかし、丸ベルトを用いて硬貨を搬送させようとすると、硬貨は線接触により丸ベルトによって搬送されるので、硬貨は不安定に搬送される。また、線接触により硬貨を搬送する場合、プーリから作用される圧力が接触部に集中するため、接触部が磨耗されやすいという問題もある。
【0004】
一方、平ベルトは搬送物を面接触により搬送するので、搬送物を安定して搬送することができるが、一般に丸ベルトより安定して走行させることが難しく、走行中に蛇行してプーリから外れやすいという問題がある。
【0005】
特許文献1には、上記蛇行を防止するために、ベルト本体の下面に長手方向に沿って断面V型のガイド部が設けられた平ベルトが開示されている。しかし、搬送物が硬貨のように不安定な挙動を示す場合、ベルトに偏った荷重が作用されやすく、V型のガイドでは充分にベルト走行を安定させることができない。
【特許文献1】特開平10−35845号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、例えば搬送用ベルトを略半円形にし、半円部の平面で搬送物を搬送するとともに、半円部の円弧面を、プーリの溝部に係合させることが考えられる。このベルトでは、搬送物が面接触で搬送されるので、搬送物を安定させて搬送することができる。また、面接触により搬送物を搬送すると、搬送物から作用される圧力が特定の部分に集中されることはなく、ベルトの特定の部分が集中的に磨耗されることはないので、搬送用ベルトの寿命を長くすることができる。さらに、プーリの溝部と円弧面は安定的に係合されるので、ベルトは偏った荷重が作用されてもプーリから外れにくく、走行安定性にも優れる。
【0007】
ところで、従来の搬送用の丸ベルトでは、くさび効果によって、ベルトを安定的に走行させるために、ベルト径を、プーリの溝部の内径より大きくすることが一般的である。すなわち、ベルトの両側面の幅を溝部の両側面の離間距離より大きくし、ベルトの両側面を溝部の両側面に接触させ、ベルトを安定的に走行させることが一般的である。
【0008】
したがって、上記半円状ベルトの半円部の径もプーリの溝部の内径より大きくすることが考えられる。しかし、上記半円部の径をプーリの溝部の内径より大きくし、ベルトの両側面の幅を溝部の両側面の離間距離より大きくすると、ベルト側面が溝部の側面に押圧され、ベルト側面に応力が集中的に作用されるので、ベルト側面からベルトが破損され、ベルトの寿命が短くなるという不具合が生じる。
【0009】
そこで、本発明は上記問題点に鑑みて成されたものであり、半円部を有する搬送用ベルトにおいて、ベルト側面に応力が集中的に作用されるのを防止し、耐久性が良好な搬送用ベルトを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る搬送用ベルトは、底部が断面半円弧状で構成される溝部が、周方向に沿って外周面に設けられたプーリに、掛け回される搬送用ベルトであって、溝部に係合する断面半円弧状の半円部がベルト下部に設けられ、半円部の曲率半径は、底部の曲率半径より小さいことを特徴とする。
【0011】
ベルト上面は平面であることが好ましい。本発明に係る搬送用ベルトのベルト上面は、搬送面として構成されるが、このような構成により、搬送物はベルトに面接触して搬送される。
【0012】
ベルト上部の両側端からベルトの幅方向に突出する鍔部が設けられることが好ましい。このような構成によれば、ベルトに偏った圧力が作用されても、鍔部がプーリに係合し、ベルトが大きく傾くのが防止される。
【0013】
鍔部の下面から半円部の頂部までの距離が、溝部の溝深さより大きくても良い。このような構成によれば、ベルトに圧力が作用されない状態では、半円部は、頂部以外溝部に接触しないので、ベルト側面に応力が作用されにくく、ベルトの耐久性が向上する。
【0014】
鍔部の下面から半円部の頂部までの距離は、溝部の溝深さより小さくても良い。このような構成によれば、ベルトに圧力が作用されない状態では、鍔部がプーリの外周面に接触するが、半円部は溝内周面に接触しない。したがって、ベルト側面に応力が作用されにくく、ベルトの耐久性が向上する。
【0015】
上記搬送用ベルトはゴムから形成され、ゴムの硬さは例えば60〜80である。また、上記搬送用ベルトは、例えばエチレンプロピレンゴム、エチレンプロピレンジエン共重合体、水素化ニトリルゴム、水素化ニトリルゴムに不飽和カルボン酸金属塩を添加したもの、クロロスルフォン化ポリエチレン、塩素化ポリエチレン、クロロプレンゴム、ウレタンゴム、エピクロルヒドリンゴム、アクリルゴム、フッ素ゴム、及びシリコーンゴムから選択された少なくとも1種のゴムから形成されても良い。
【0016】
本発明に係る搬送用プーリは、断面半円弧状の半円部がベルト下部に設けられた搬送用ベルトが、掛け回される搬送用プーリであって、底部が断面半円弧状で構成され、上記半円部が係合する溝部が、周方向に沿って外周面に設けられ、底部の曲率半径は、半円部の曲率半径より大きいことを特徴とする。
【0017】
本発明に係る搬送システムは、底部が断面半円弧状で構成される溝部が、周方向に沿って外周面に設けられた搬送用プーリと、断面半円弧状の半円部がベルト下部に設けられた搬送用ベルトとを備え、搬送用ベルトは、半円部が溝部に係合して、搬送用プーリに掛け回され、底部の曲率半径は、半円部の曲率半径より大きいことを特徴とする。
【0018】
本発明に係る搬送用ベルトは、底部が断面半円弧状で構成される溝部が、周方向に沿って外周面に設けられたプーリに、掛け回される搬送用ベルトであって、溝部に係合する断面半円弧状の半円部がベルト下部に設けられるとともに、ベルト上部の両側端からベルトの幅方向に突出する鍔部が設けられ、鍔部の下面から半円部の頂部までの距離が、溝部の溝深さより小さいことを特徴とする。このような構成によれば、ベルトに圧力が作用されない状態では、鍔部がプーリの外周面に接触するが、半円部は溝内周面に接触しない。したがって、ベルト側面に応力が作用されにくく、ベルトの耐久性が向上する。
【発明の効果】
【0019】
本発明においては、ベルト下部の半円部の曲率半径が、半円弧を呈する溝底部の曲率半径より小さいので、ベルト側面に高い応力が作用されず、半円部の磨耗や亀裂が防止され、搬送用ベルトの耐久性を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
図1、2は本発明の第1の実施形態に係る搬送用ベルトを説明するための図である。
【0021】
搬送用ベルト10は、無端状に形成され、搬送用ベルト10のベルト下部12が曲率半径R1の断面半円弧状の半円部で構成される。搬送用ベルト10のベルト上部13は、図2に示すように断面略矩形から成り、その両側端には、ベルト上部13と一体に形成され、ベルトの幅方向に延出する鍔部14が設けられる。鍔部14の上面はベルト上部13の上面とともに、搬送用ベルト10のベルト上面15を構成し、ベルト上面15は同一平面に形成される。
【0022】
搬送用ベルトは、ゴム、合成樹脂、熱可塑性エラストマー等の弾性材料によって形成される。搬送用ベルトがゴムから形成される場合、その硬さは60〜80であることが好ましい。なお、ゴムの硬さは、JIS K6253−1997 TypeAによって測定された硬さをいう。硬さが60より低いと、ベルト強度が低下する一方、硬さが80より高いとベルトの屈曲性が低下する。搬送用ベルト10のゴムとしては、エチレンプロピレンゴム(EPR)、エチレンプロピレンジエン共重合体(EPDM)、水素化ニトリルゴム、水素化ニトリルゴムに不飽和カルボン酸金属塩を添加したもの、クロロスルフォン化ポリエチレン、塩素化ポリエチレン、クロロプレンゴム、ウレタンゴム、エピクロルヒドリンゴム、アクリルゴム、フッ素ゴム、シリコーンゴム、又はこれらの混合物等が使用される。
【0023】
図2に示すように、搬送用ベルト10は、中心面Yを中心に左右対称に形成され、すなわちベルト下部(半面部)12を形成する半円弧の曲率中心Aは中心面Yに設けられる。ベルト下部12の外周面は半円弧面12Aに形成されるとともに、半円弧面12Aの上方には、ベルト上部13の側面である上部外側面13Aが接続される。上部外側面13Aは、中心面Yに平行な平面状に形成され、半円弧面12Aの一部とともにベルト側面を形成する。ベルト外周面において、上部外側面13Aの上方には接続面16Aが設けられ、接続面16Aは、鍔部14の下面であって平面状を呈する鍔下面14Aと、上部外側面13Aとを接続する。なお、接続面16Aは、その中心角度が90°の弧面であって、その曲率半径はベルト下部12の曲率半径R1より小さい。
【0024】
図3は、本実施形態に係る搬送システムを示す平面図である。搬送用ベルト10は例えば2つの搬送用プーリ20に掛け回して使用される。ここで、各搬送用プーリ20は固定面Pの上方に固定面Pから僅かに離間して設けられる。搬送用プーリ20は、軸Xを中心に回転可能な略円筒形状を呈し、その外周面は円周面21から形成されるとともに、円周面21から凹む溝部22が周方向に沿って設けられる。搬送用ベルト10は、そのベルト下部12が溝部22に係合されて、搬送用プーリ20に掛け回される。搬送用ベルト10は、搬送用プーリ20の回転に伴って回転し、硬貨Cを、ベルト上面15と固定面Pとで挟み込んで搬送する。
【0025】
図4はプーリの溝部を示す拡大断面図である。溝部22は、その溝底部22Aの断面が曲率半径R2の半円弧状に形成される。溝部22は中心面Y’を中心に左右対称に形成され、すなわち、中心面Y’には、溝底部22Aを形成する半円弧の曲率中心A’が設けられる。溝内周面において、溝底部22Aの上方には、中心面Yに対して外側に広がる弧状の上部内側面22Bが設けられる。上部内側面22Bの上方にはさらに接続面22Cが設けられ、接続面22Cは、搬送プーリ20の円周面21と、上部内側面22Bを接続する。なお、接続面22Cは、その中心角度が90°の弧面であって、その曲率半径は溝底部22Aの曲率半径R2より小さい。また、上部内側面22Bはその曲率半径が溝底部22Aの曲率半径R2より大きい。なお、上部内側面22Bは、外側に広がる平面であっても良い。
【0026】
本実施形態において、搬送用ベルト10のベルト下部(半円部)12の曲率半径R1(図2参照)は、溝底部22Aの曲率半径R2より小さく設定されるとともに、ベルト接触部高さ(鍔下面14Aとベルト頂部P1との距離)H1(図2参照)が溝部の溝深さ(プーリの円周面21と溝先端部P2との距離)H2より大きく設定される。また、搬送用ベルト10の上部外側面13A同士の離間距離W1は、溝部22の上部内側面22B同士の離間距離W2より小さい。なお、本明細書において、離間距離W1、W2とは、上部外側面13A、上部内側面22Bの最上部における離間距離をいう。
【0027】
図5は、溝部22に搬送用ベルト10が係合したときの状態を示す。なお、図5の状態は、搬送用ベルト10に、搬送用プーリ20や固定面P(図3参照)によって圧力が作用されていないときの状態を示し、搬送用ベルト10は圧力によって弾性変形されていない。
【0028】
図2、4を参照して上述したように、ベルト下部12の曲率半径R1は、溝底部22Aの曲率半径R2より小さく、かつベルトの接触高さH1は溝深さH2より大きいので、図5に示す状態では、ベルト下部12の頂部P1は、溝先端部P2に接触するが、半円弧面12Aの頂部P1以外の部分、及び上部外側面13Aは溝部22の内周面に接触しない。また、鍔下面14Aも同様にプーリの円周面21に接触しない。すなわち、図5の状態では、搬送用ベルト10は、ベルトの頂部P1が溝先端部P2に線接触して、搬送用プーリ20に係合される。
【0029】
通常、搬送用ベルト10は搬送用プーリ20及び固定面P(図3参照)から圧力が作用された状態で使用され、搬送用ベルト10は図5において上下から圧縮されて使用される。搬送用ベルトが圧縮される場合、鍔下面14Aはプーリの円周面21に接触し、またベルトが変形し、ベルト側面(すなわち、上部外側面13A及び半円弧面12Aの一部)が溝側面に接触する場合がある。しかし、上述したように、ベルト下部12の曲率半径R1が溝底部22Aの曲率半径R2より小さいので、ベルトの両側面が共に溝部22の両側面に接触することはない。すなわち、ベルト下部12は溝部22によって挟まれることはなく、ベルトの側面に高い応力が作用されることはない。
【0030】
以上のように本実施形態においては、半円部12が溝部22に係合するとき、ベルト側面に高い応力が作用されないので、搬送用ベルト10はベルト側面の磨耗や亀裂によって破損されにくく、耐久性が良好となる。
【0031】
また、本実施形態においては、搬送用ベルト10が走行中に傾くと、鍔部14が搬送用プーリ20の外周面(円周面21)に接触するので、搬送用ベルト10の走行中の傾きが抑制され、ベルトは安定的に走行することができる。さらに、本実施形態においては、搬送物である硬貨Cは、同一平面から成るベルト上面15によって搬送されるので、硬貨Cは面接触により安定的に搬送される。また、本実施形態では、互いに断面半円弧形状を呈するベルト下部12と、溝底部22Aが組み合わされて構成されるので、ベルト走行を安定させることができる。
【0032】
図6は、第2の実施形態における搬送用ベルト10の断面図である。以下第2の実施形態について第1の実施形態との相違点を中心に説明する。
【0033】
第2の実施形態において、第1の実施形態と異なる点はベルト接触部高さ(鍔下面14Aとベルト頂部P1との距離)H1が溝部の溝深さ(プーリの外周面21と溝先端部との距離)H2(図4参照)より小さく設定される点である。すなわち、第2の実施形態では、ベルト上部13の上部外側面13Aの上下方向の長さが、第1の実施形態より短く設定され、これによりベルト接触部高さH1が溝部の溝深さH2より小さく設定される。その他のベルトの構成は第1の実施形態の構成と同様であるので説明は省略する。また、第2の実施形態に係る搬送用プーリは第1の実施形態の搬送用プーリ20と同様であるので、その説明は省略する。
【0034】
図7は、第2の実施形態において、溝部22に搬送用ベルト10が係合するときの状態を示す。なお、図7の状態は、搬送用ベルト10に、プーリや固定面によって圧力が作用されていないときの状態を示し、搬送用ベルト10は圧力によって弾性変形されていない。
【0035】
第2の実施形態では、ベルト下部12の曲率半径R1は、溝底部22Aの曲率半径R2(図2参照)より小さく、かつベルトの接触高さH1は溝深さH2より小さいので、図7に示す状態では、ベルト下部12の半円弧面12A、及びベルト上部13の上部外周面13Aは、溝部22の内周面に接触しない。一方、鍔下面14Aは搬送プーリ20の円周面21に接触している。すなわち、図7の状態では、搬送用ベルト10は、鍔下面14が搬送プーリ20の円周面21に接触し、溝部22に係合される。
【0036】
搬送用ベルト10は上述したように、通常上下から圧縮されて使用され、搬送用ベルト10が圧縮される場合、ベルトが変形し、ベルトの半円弧面12A及び上部外側面13Aが溝内周面に接触する場合がある。しかし、ベルト下部12の曲率半径R1が溝底部22Aの曲率半径R2より小さいので、ベルトの両側面が共に溝部22の両側面に接触することはなく、第1の実施形態と同様に、ベルト側面に高い応力が作用されることはない。したがって、本実施形態でも、搬送用ベルト10はベルト側面から破損されることはなく、耐久性が良好となる。
【0037】
なお、本実施形態では、ベルト下部12が溝部22に係合しているとき、鍔部14の下面が搬送用プーリ20の円周面21に接触しているので、搬送用ベルト10の走行中の傾きが抑制される。
【0038】
なお、第1及び第2の実施形態においては、搬送用ベルト10の上部外周面13Aは中心面Yに対して平行であったが、中心面Yに対して広がるように傾いて設けられても良く、例えば弧面から形成されても良い。ただし、上部外周面13Aは、図5、7の状態において、上方に進むに従って、溝部22の内周面から遠ざかったほうが良い。
【0039】
以下本発明について、実施例を用いてさらに詳細に説明するが、本発明は以下に説明する実施例に限定されるわけではない。
【実施例】
【0040】
[実施例1]
実施例1は、第1の実施形態に対応する実施例であった。実施例1の搬送用ベルトは、周長さが500mm、ベルト幅が6mm、ベルト高さが4mm、鍔部の高さが1mm、ベルト接触部高さ(鍔下面とベルト頂部との距離)H1が3mm、ベルト下部(半円部)12の曲率半径R1が1.8mmであった。そして、ベルト上部の上部側面は中心面Yに平行な平面であり、この上部側面と鍔下面を接続する接続面の曲率半径は0.5mmであった。また、上部外側面の離間距離W1は、3.6mmであった。
【0041】
実施例1の搬送用プーリは、その直径が19.4mm、軸方向の長さが30mmであり、搬送用プーリの外周面に設けられた溝部は、その中心面Y’が軸方向の端部から7mmの位置にあった。そして、溝部はその溝深さH2が2.9mm、溝底部の曲率半径R2が1.9mmであった。また、上部内側面は外側に広がる断面直線状の平面であるとともに、上部内側面とプーリの円周面を接続する接続面の曲率半径は0.5mmであった。上部内側面の離間距離W2は、4.2mmであった。
【0042】
すなわち、実施例1では、ベルトの接触部高さH1が溝深さH2より大きく、かつベルト下部の曲率半径R1が、溝底部の曲率半径R2より小さかった。
【0043】
[実施例2]
実施例2は、第2の実施形態に対応する実施例であった。実施例2の搬送用ベルトは、周長さが500mm、ベルト幅が6mm、ベルト高さが3.6mm、鍔部の高さが1mm、ベルト接触部高さ(鍔下面とベルト頂部との距離)H1が2.6mm、ベルト下部(半円部)の曲率半径R1が1.8mmであった。そして、ベルト上部の上部外側面は中心面Yに平行な平面であり、この上部外側面と鍔下面を接続する接続面の曲率半径は0.5mmであった。また、上部外側面の離間距離W1は、3.6mmであった。なお、実施例2の搬送用プーリは実施例1と同様のものを用いた。
【0044】
すなわち、実施例2では、ベルトの接触部高さH1が溝深さH2より小さく、かつベルト下部の曲率半径R1は、溝底部の曲率半径R2より小さかった。
【0045】
[比較例1]
比較例1の搬送用ベルトは、周長さが500mm、ベルト幅が6mm、ベルト高さが4mm、鍔部14の高さが1mm、ベルト接触部高さ(鍔下面とベルト頂部との距離)H1が3mm、ベルト下部の曲率半径R1が2.0mmであった。そして、ベルト上部の上部側面は中心面Yに平行な平面であり、この上部側面と鍔下面を接続する接続面の曲率半径は0.5mmであった。また、上部外側面の離間距離W1は、4.0mmであった。比較例1の搬送用プーリは実施例1と同様のものを用いた。
【0046】
すなわち、比較例1は、ベルト下部12の曲率半径R1がプーリの溝底部の曲率半径R2より大きく、かつベルトの接触部高さH1が溝深さH2より大きかった。
【0047】
[ベルト評価]
上記実施例、比較例の搬送システムについて、走行試験を行い、各搬送用ベルトの耐久性について評価した。図8は本走行試験で用いる走行試験機50を模式的に示す。図8に示すように、走行試験機50は、上述の搬送用プーリ20を2つ用意し、図8において左側のプーリを従動プーリ、右側のプーリを原動プーリとした。この2つの搬送用プーリ20に搬送用ベルト10を取付伸張率が8%となるように取り付けた。このとき、搬送用ベルト10のベルト下部が、搬送用プーリ20の溝部に係合していた。取り付けた搬送用ベルト10を、1.6m/sの速度で回転させ、ベルトが破壊されるまでの時間を測定した。なお、ロードセル40によって測定された取付初期荷重は25Nであった。
【0048】
実施例1、2及び比較例1の各ベルトについて、それぞれ走行試験を3回実施した。なお、1回目の試験では、実施例1、2に関しては、ベルトは破壊されていなかったが、1000時間で試験を中止した。本走行試験の結果を表1に示す。
【0049】
【表1】
【0050】
表1の結果から明らかなように、比較例1では100時間経過前にベルトが破断されるか、又はベルト下部の半円部に割れが生じた。すなわち、比較例1では、ベルト下部12の曲率半径R1がプーリの溝底部の曲率半径R2より大きいため、ベルト下部の半円部に高い応力が作用され、ベルトが早期に破壊されたと考えられる。特に、比較例1の2〜3回目の結果では半円部に割れが生じており、これら結果より、ベルト下部の半円部には高い応力が作用されたことが理解できる。
【0051】
それに対して、実施例1、2では、2〜3回目の結果が示すように、2000時間走行させても、ベルトは破壊されなかった。すなわち、実施例1、2では、ベルト下部の曲率半径R1が、溝底部の曲率半径R2より小さくしたため、ベルト側面に高い応力が作用されず、これにより耐久性が向上したと考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】第1の実施形態に係る搬送用ベルトの破断斜視図である。
【図2】第1の実施形態に係る搬送用ベルトの拡大断面図である。
【図3】本発明に係る搬送システムを示すための平面図である。
【図4】プーリの溝部を示す拡大断面図である。
【図5】第1の実施形態において、搬送用ベルトがプーリの溝部に係合されたときの状態を示す断面図である。
【図6】第2の実施形態に係る搬送用ベルトの拡大断面図である。
【図7】第2の実施形態において、搬送用ベルトがプーリの溝部に係合されたときの状態を示す断面図である。
【図8】ベルト評価で用いた走行試験機を示す模式図である。
【符号の説明】
【0053】
10 搬送用ベルト
12 ベルト下部(半円部)
13 ベルト上部
14 鍔部
15 ベルト上面
20 搬送用プーリ
21 円周面
22 溝部
22A 溝底部
H1 ベルト接触部高さ
H2 溝深さ
R1 ベルト下部の曲率半径
R2 溝底部の曲率半径
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば硬貨の搬送に使用される搬送用ベルト、搬送用プーリ、及び搬送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
自動改札機、現金預金支払機、両替機、レジスター等の硬貨処理機では、硬貨を搬送するために搬送用ベルトが使用されている。搬送用ベルトとしては、搬送面が円形の丸ベルトや、搬送面が平面である平ベルトが広く使用される。丸ベルトは、下部断面が円弧状の溝部に係合された状態で走行されるために、走行中にベルトがプーリから外れにくく、走行安定性に優れる。
【0003】
しかし、丸ベルトを用いて硬貨を搬送させようとすると、硬貨は線接触により丸ベルトによって搬送されるので、硬貨は不安定に搬送される。また、線接触により硬貨を搬送する場合、プーリから作用される圧力が接触部に集中するため、接触部が磨耗されやすいという問題もある。
【0004】
一方、平ベルトは搬送物を面接触により搬送するので、搬送物を安定して搬送することができるが、一般に丸ベルトより安定して走行させることが難しく、走行中に蛇行してプーリから外れやすいという問題がある。
【0005】
特許文献1には、上記蛇行を防止するために、ベルト本体の下面に長手方向に沿って断面V型のガイド部が設けられた平ベルトが開示されている。しかし、搬送物が硬貨のように不安定な挙動を示す場合、ベルトに偏った荷重が作用されやすく、V型のガイドでは充分にベルト走行を安定させることができない。
【特許文献1】特開平10−35845号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、例えば搬送用ベルトを略半円形にし、半円部の平面で搬送物を搬送するとともに、半円部の円弧面を、プーリの溝部に係合させることが考えられる。このベルトでは、搬送物が面接触で搬送されるので、搬送物を安定させて搬送することができる。また、面接触により搬送物を搬送すると、搬送物から作用される圧力が特定の部分に集中されることはなく、ベルトの特定の部分が集中的に磨耗されることはないので、搬送用ベルトの寿命を長くすることができる。さらに、プーリの溝部と円弧面は安定的に係合されるので、ベルトは偏った荷重が作用されてもプーリから外れにくく、走行安定性にも優れる。
【0007】
ところで、従来の搬送用の丸ベルトでは、くさび効果によって、ベルトを安定的に走行させるために、ベルト径を、プーリの溝部の内径より大きくすることが一般的である。すなわち、ベルトの両側面の幅を溝部の両側面の離間距離より大きくし、ベルトの両側面を溝部の両側面に接触させ、ベルトを安定的に走行させることが一般的である。
【0008】
したがって、上記半円状ベルトの半円部の径もプーリの溝部の内径より大きくすることが考えられる。しかし、上記半円部の径をプーリの溝部の内径より大きくし、ベルトの両側面の幅を溝部の両側面の離間距離より大きくすると、ベルト側面が溝部の側面に押圧され、ベルト側面に応力が集中的に作用されるので、ベルト側面からベルトが破損され、ベルトの寿命が短くなるという不具合が生じる。
【0009】
そこで、本発明は上記問題点に鑑みて成されたものであり、半円部を有する搬送用ベルトにおいて、ベルト側面に応力が集中的に作用されるのを防止し、耐久性が良好な搬送用ベルトを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る搬送用ベルトは、底部が断面半円弧状で構成される溝部が、周方向に沿って外周面に設けられたプーリに、掛け回される搬送用ベルトであって、溝部に係合する断面半円弧状の半円部がベルト下部に設けられ、半円部の曲率半径は、底部の曲率半径より小さいことを特徴とする。
【0011】
ベルト上面は平面であることが好ましい。本発明に係る搬送用ベルトのベルト上面は、搬送面として構成されるが、このような構成により、搬送物はベルトに面接触して搬送される。
【0012】
ベルト上部の両側端からベルトの幅方向に突出する鍔部が設けられることが好ましい。このような構成によれば、ベルトに偏った圧力が作用されても、鍔部がプーリに係合し、ベルトが大きく傾くのが防止される。
【0013】
鍔部の下面から半円部の頂部までの距離が、溝部の溝深さより大きくても良い。このような構成によれば、ベルトに圧力が作用されない状態では、半円部は、頂部以外溝部に接触しないので、ベルト側面に応力が作用されにくく、ベルトの耐久性が向上する。
【0014】
鍔部の下面から半円部の頂部までの距離は、溝部の溝深さより小さくても良い。このような構成によれば、ベルトに圧力が作用されない状態では、鍔部がプーリの外周面に接触するが、半円部は溝内周面に接触しない。したがって、ベルト側面に応力が作用されにくく、ベルトの耐久性が向上する。
【0015】
上記搬送用ベルトはゴムから形成され、ゴムの硬さは例えば60〜80である。また、上記搬送用ベルトは、例えばエチレンプロピレンゴム、エチレンプロピレンジエン共重合体、水素化ニトリルゴム、水素化ニトリルゴムに不飽和カルボン酸金属塩を添加したもの、クロロスルフォン化ポリエチレン、塩素化ポリエチレン、クロロプレンゴム、ウレタンゴム、エピクロルヒドリンゴム、アクリルゴム、フッ素ゴム、及びシリコーンゴムから選択された少なくとも1種のゴムから形成されても良い。
【0016】
本発明に係る搬送用プーリは、断面半円弧状の半円部がベルト下部に設けられた搬送用ベルトが、掛け回される搬送用プーリであって、底部が断面半円弧状で構成され、上記半円部が係合する溝部が、周方向に沿って外周面に設けられ、底部の曲率半径は、半円部の曲率半径より大きいことを特徴とする。
【0017】
本発明に係る搬送システムは、底部が断面半円弧状で構成される溝部が、周方向に沿って外周面に設けられた搬送用プーリと、断面半円弧状の半円部がベルト下部に設けられた搬送用ベルトとを備え、搬送用ベルトは、半円部が溝部に係合して、搬送用プーリに掛け回され、底部の曲率半径は、半円部の曲率半径より大きいことを特徴とする。
【0018】
本発明に係る搬送用ベルトは、底部が断面半円弧状で構成される溝部が、周方向に沿って外周面に設けられたプーリに、掛け回される搬送用ベルトであって、溝部に係合する断面半円弧状の半円部がベルト下部に設けられるとともに、ベルト上部の両側端からベルトの幅方向に突出する鍔部が設けられ、鍔部の下面から半円部の頂部までの距離が、溝部の溝深さより小さいことを特徴とする。このような構成によれば、ベルトに圧力が作用されない状態では、鍔部がプーリの外周面に接触するが、半円部は溝内周面に接触しない。したがって、ベルト側面に応力が作用されにくく、ベルトの耐久性が向上する。
【発明の効果】
【0019】
本発明においては、ベルト下部の半円部の曲率半径が、半円弧を呈する溝底部の曲率半径より小さいので、ベルト側面に高い応力が作用されず、半円部の磨耗や亀裂が防止され、搬送用ベルトの耐久性を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
図1、2は本発明の第1の実施形態に係る搬送用ベルトを説明するための図である。
【0021】
搬送用ベルト10は、無端状に形成され、搬送用ベルト10のベルト下部12が曲率半径R1の断面半円弧状の半円部で構成される。搬送用ベルト10のベルト上部13は、図2に示すように断面略矩形から成り、その両側端には、ベルト上部13と一体に形成され、ベルトの幅方向に延出する鍔部14が設けられる。鍔部14の上面はベルト上部13の上面とともに、搬送用ベルト10のベルト上面15を構成し、ベルト上面15は同一平面に形成される。
【0022】
搬送用ベルトは、ゴム、合成樹脂、熱可塑性エラストマー等の弾性材料によって形成される。搬送用ベルトがゴムから形成される場合、その硬さは60〜80であることが好ましい。なお、ゴムの硬さは、JIS K6253−1997 TypeAによって測定された硬さをいう。硬さが60より低いと、ベルト強度が低下する一方、硬さが80より高いとベルトの屈曲性が低下する。搬送用ベルト10のゴムとしては、エチレンプロピレンゴム(EPR)、エチレンプロピレンジエン共重合体(EPDM)、水素化ニトリルゴム、水素化ニトリルゴムに不飽和カルボン酸金属塩を添加したもの、クロロスルフォン化ポリエチレン、塩素化ポリエチレン、クロロプレンゴム、ウレタンゴム、エピクロルヒドリンゴム、アクリルゴム、フッ素ゴム、シリコーンゴム、又はこれらの混合物等が使用される。
【0023】
図2に示すように、搬送用ベルト10は、中心面Yを中心に左右対称に形成され、すなわちベルト下部(半面部)12を形成する半円弧の曲率中心Aは中心面Yに設けられる。ベルト下部12の外周面は半円弧面12Aに形成されるとともに、半円弧面12Aの上方には、ベルト上部13の側面である上部外側面13Aが接続される。上部外側面13Aは、中心面Yに平行な平面状に形成され、半円弧面12Aの一部とともにベルト側面を形成する。ベルト外周面において、上部外側面13Aの上方には接続面16Aが設けられ、接続面16Aは、鍔部14の下面であって平面状を呈する鍔下面14Aと、上部外側面13Aとを接続する。なお、接続面16Aは、その中心角度が90°の弧面であって、その曲率半径はベルト下部12の曲率半径R1より小さい。
【0024】
図3は、本実施形態に係る搬送システムを示す平面図である。搬送用ベルト10は例えば2つの搬送用プーリ20に掛け回して使用される。ここで、各搬送用プーリ20は固定面Pの上方に固定面Pから僅かに離間して設けられる。搬送用プーリ20は、軸Xを中心に回転可能な略円筒形状を呈し、その外周面は円周面21から形成されるとともに、円周面21から凹む溝部22が周方向に沿って設けられる。搬送用ベルト10は、そのベルト下部12が溝部22に係合されて、搬送用プーリ20に掛け回される。搬送用ベルト10は、搬送用プーリ20の回転に伴って回転し、硬貨Cを、ベルト上面15と固定面Pとで挟み込んで搬送する。
【0025】
図4はプーリの溝部を示す拡大断面図である。溝部22は、その溝底部22Aの断面が曲率半径R2の半円弧状に形成される。溝部22は中心面Y’を中心に左右対称に形成され、すなわち、中心面Y’には、溝底部22Aを形成する半円弧の曲率中心A’が設けられる。溝内周面において、溝底部22Aの上方には、中心面Yに対して外側に広がる弧状の上部内側面22Bが設けられる。上部内側面22Bの上方にはさらに接続面22Cが設けられ、接続面22Cは、搬送プーリ20の円周面21と、上部内側面22Bを接続する。なお、接続面22Cは、その中心角度が90°の弧面であって、その曲率半径は溝底部22Aの曲率半径R2より小さい。また、上部内側面22Bはその曲率半径が溝底部22Aの曲率半径R2より大きい。なお、上部内側面22Bは、外側に広がる平面であっても良い。
【0026】
本実施形態において、搬送用ベルト10のベルト下部(半円部)12の曲率半径R1(図2参照)は、溝底部22Aの曲率半径R2より小さく設定されるとともに、ベルト接触部高さ(鍔下面14Aとベルト頂部P1との距離)H1(図2参照)が溝部の溝深さ(プーリの円周面21と溝先端部P2との距離)H2より大きく設定される。また、搬送用ベルト10の上部外側面13A同士の離間距離W1は、溝部22の上部内側面22B同士の離間距離W2より小さい。なお、本明細書において、離間距離W1、W2とは、上部外側面13A、上部内側面22Bの最上部における離間距離をいう。
【0027】
図5は、溝部22に搬送用ベルト10が係合したときの状態を示す。なお、図5の状態は、搬送用ベルト10に、搬送用プーリ20や固定面P(図3参照)によって圧力が作用されていないときの状態を示し、搬送用ベルト10は圧力によって弾性変形されていない。
【0028】
図2、4を参照して上述したように、ベルト下部12の曲率半径R1は、溝底部22Aの曲率半径R2より小さく、かつベルトの接触高さH1は溝深さH2より大きいので、図5に示す状態では、ベルト下部12の頂部P1は、溝先端部P2に接触するが、半円弧面12Aの頂部P1以外の部分、及び上部外側面13Aは溝部22の内周面に接触しない。また、鍔下面14Aも同様にプーリの円周面21に接触しない。すなわち、図5の状態では、搬送用ベルト10は、ベルトの頂部P1が溝先端部P2に線接触して、搬送用プーリ20に係合される。
【0029】
通常、搬送用ベルト10は搬送用プーリ20及び固定面P(図3参照)から圧力が作用された状態で使用され、搬送用ベルト10は図5において上下から圧縮されて使用される。搬送用ベルトが圧縮される場合、鍔下面14Aはプーリの円周面21に接触し、またベルトが変形し、ベルト側面(すなわち、上部外側面13A及び半円弧面12Aの一部)が溝側面に接触する場合がある。しかし、上述したように、ベルト下部12の曲率半径R1が溝底部22Aの曲率半径R2より小さいので、ベルトの両側面が共に溝部22の両側面に接触することはない。すなわち、ベルト下部12は溝部22によって挟まれることはなく、ベルトの側面に高い応力が作用されることはない。
【0030】
以上のように本実施形態においては、半円部12が溝部22に係合するとき、ベルト側面に高い応力が作用されないので、搬送用ベルト10はベルト側面の磨耗や亀裂によって破損されにくく、耐久性が良好となる。
【0031】
また、本実施形態においては、搬送用ベルト10が走行中に傾くと、鍔部14が搬送用プーリ20の外周面(円周面21)に接触するので、搬送用ベルト10の走行中の傾きが抑制され、ベルトは安定的に走行することができる。さらに、本実施形態においては、搬送物である硬貨Cは、同一平面から成るベルト上面15によって搬送されるので、硬貨Cは面接触により安定的に搬送される。また、本実施形態では、互いに断面半円弧形状を呈するベルト下部12と、溝底部22Aが組み合わされて構成されるので、ベルト走行を安定させることができる。
【0032】
図6は、第2の実施形態における搬送用ベルト10の断面図である。以下第2の実施形態について第1の実施形態との相違点を中心に説明する。
【0033】
第2の実施形態において、第1の実施形態と異なる点はベルト接触部高さ(鍔下面14Aとベルト頂部P1との距離)H1が溝部の溝深さ(プーリの外周面21と溝先端部との距離)H2(図4参照)より小さく設定される点である。すなわち、第2の実施形態では、ベルト上部13の上部外側面13Aの上下方向の長さが、第1の実施形態より短く設定され、これによりベルト接触部高さH1が溝部の溝深さH2より小さく設定される。その他のベルトの構成は第1の実施形態の構成と同様であるので説明は省略する。また、第2の実施形態に係る搬送用プーリは第1の実施形態の搬送用プーリ20と同様であるので、その説明は省略する。
【0034】
図7は、第2の実施形態において、溝部22に搬送用ベルト10が係合するときの状態を示す。なお、図7の状態は、搬送用ベルト10に、プーリや固定面によって圧力が作用されていないときの状態を示し、搬送用ベルト10は圧力によって弾性変形されていない。
【0035】
第2の実施形態では、ベルト下部12の曲率半径R1は、溝底部22Aの曲率半径R2(図2参照)より小さく、かつベルトの接触高さH1は溝深さH2より小さいので、図7に示す状態では、ベルト下部12の半円弧面12A、及びベルト上部13の上部外周面13Aは、溝部22の内周面に接触しない。一方、鍔下面14Aは搬送プーリ20の円周面21に接触している。すなわち、図7の状態では、搬送用ベルト10は、鍔下面14が搬送プーリ20の円周面21に接触し、溝部22に係合される。
【0036】
搬送用ベルト10は上述したように、通常上下から圧縮されて使用され、搬送用ベルト10が圧縮される場合、ベルトが変形し、ベルトの半円弧面12A及び上部外側面13Aが溝内周面に接触する場合がある。しかし、ベルト下部12の曲率半径R1が溝底部22Aの曲率半径R2より小さいので、ベルトの両側面が共に溝部22の両側面に接触することはなく、第1の実施形態と同様に、ベルト側面に高い応力が作用されることはない。したがって、本実施形態でも、搬送用ベルト10はベルト側面から破損されることはなく、耐久性が良好となる。
【0037】
なお、本実施形態では、ベルト下部12が溝部22に係合しているとき、鍔部14の下面が搬送用プーリ20の円周面21に接触しているので、搬送用ベルト10の走行中の傾きが抑制される。
【0038】
なお、第1及び第2の実施形態においては、搬送用ベルト10の上部外周面13Aは中心面Yに対して平行であったが、中心面Yに対して広がるように傾いて設けられても良く、例えば弧面から形成されても良い。ただし、上部外周面13Aは、図5、7の状態において、上方に進むに従って、溝部22の内周面から遠ざかったほうが良い。
【0039】
以下本発明について、実施例を用いてさらに詳細に説明するが、本発明は以下に説明する実施例に限定されるわけではない。
【実施例】
【0040】
[実施例1]
実施例1は、第1の実施形態に対応する実施例であった。実施例1の搬送用ベルトは、周長さが500mm、ベルト幅が6mm、ベルト高さが4mm、鍔部の高さが1mm、ベルト接触部高さ(鍔下面とベルト頂部との距離)H1が3mm、ベルト下部(半円部)12の曲率半径R1が1.8mmであった。そして、ベルト上部の上部側面は中心面Yに平行な平面であり、この上部側面と鍔下面を接続する接続面の曲率半径は0.5mmであった。また、上部外側面の離間距離W1は、3.6mmであった。
【0041】
実施例1の搬送用プーリは、その直径が19.4mm、軸方向の長さが30mmであり、搬送用プーリの外周面に設けられた溝部は、その中心面Y’が軸方向の端部から7mmの位置にあった。そして、溝部はその溝深さH2が2.9mm、溝底部の曲率半径R2が1.9mmであった。また、上部内側面は外側に広がる断面直線状の平面であるとともに、上部内側面とプーリの円周面を接続する接続面の曲率半径は0.5mmであった。上部内側面の離間距離W2は、4.2mmであった。
【0042】
すなわち、実施例1では、ベルトの接触部高さH1が溝深さH2より大きく、かつベルト下部の曲率半径R1が、溝底部の曲率半径R2より小さかった。
【0043】
[実施例2]
実施例2は、第2の実施形態に対応する実施例であった。実施例2の搬送用ベルトは、周長さが500mm、ベルト幅が6mm、ベルト高さが3.6mm、鍔部の高さが1mm、ベルト接触部高さ(鍔下面とベルト頂部との距離)H1が2.6mm、ベルト下部(半円部)の曲率半径R1が1.8mmであった。そして、ベルト上部の上部外側面は中心面Yに平行な平面であり、この上部外側面と鍔下面を接続する接続面の曲率半径は0.5mmであった。また、上部外側面の離間距離W1は、3.6mmであった。なお、実施例2の搬送用プーリは実施例1と同様のものを用いた。
【0044】
すなわち、実施例2では、ベルトの接触部高さH1が溝深さH2より小さく、かつベルト下部の曲率半径R1は、溝底部の曲率半径R2より小さかった。
【0045】
[比較例1]
比較例1の搬送用ベルトは、周長さが500mm、ベルト幅が6mm、ベルト高さが4mm、鍔部14の高さが1mm、ベルト接触部高さ(鍔下面とベルト頂部との距離)H1が3mm、ベルト下部の曲率半径R1が2.0mmであった。そして、ベルト上部の上部側面は中心面Yに平行な平面であり、この上部側面と鍔下面を接続する接続面の曲率半径は0.5mmであった。また、上部外側面の離間距離W1は、4.0mmであった。比較例1の搬送用プーリは実施例1と同様のものを用いた。
【0046】
すなわち、比較例1は、ベルト下部12の曲率半径R1がプーリの溝底部の曲率半径R2より大きく、かつベルトの接触部高さH1が溝深さH2より大きかった。
【0047】
[ベルト評価]
上記実施例、比較例の搬送システムについて、走行試験を行い、各搬送用ベルトの耐久性について評価した。図8は本走行試験で用いる走行試験機50を模式的に示す。図8に示すように、走行試験機50は、上述の搬送用プーリ20を2つ用意し、図8において左側のプーリを従動プーリ、右側のプーリを原動プーリとした。この2つの搬送用プーリ20に搬送用ベルト10を取付伸張率が8%となるように取り付けた。このとき、搬送用ベルト10のベルト下部が、搬送用プーリ20の溝部に係合していた。取り付けた搬送用ベルト10を、1.6m/sの速度で回転させ、ベルトが破壊されるまでの時間を測定した。なお、ロードセル40によって測定された取付初期荷重は25Nであった。
【0048】
実施例1、2及び比較例1の各ベルトについて、それぞれ走行試験を3回実施した。なお、1回目の試験では、実施例1、2に関しては、ベルトは破壊されていなかったが、1000時間で試験を中止した。本走行試験の結果を表1に示す。
【0049】
【表1】
【0050】
表1の結果から明らかなように、比較例1では100時間経過前にベルトが破断されるか、又はベルト下部の半円部に割れが生じた。すなわち、比較例1では、ベルト下部12の曲率半径R1がプーリの溝底部の曲率半径R2より大きいため、ベルト下部の半円部に高い応力が作用され、ベルトが早期に破壊されたと考えられる。特に、比較例1の2〜3回目の結果では半円部に割れが生じており、これら結果より、ベルト下部の半円部には高い応力が作用されたことが理解できる。
【0051】
それに対して、実施例1、2では、2〜3回目の結果が示すように、2000時間走行させても、ベルトは破壊されなかった。すなわち、実施例1、2では、ベルト下部の曲率半径R1が、溝底部の曲率半径R2より小さくしたため、ベルト側面に高い応力が作用されず、これにより耐久性が向上したと考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】第1の実施形態に係る搬送用ベルトの破断斜視図である。
【図2】第1の実施形態に係る搬送用ベルトの拡大断面図である。
【図3】本発明に係る搬送システムを示すための平面図である。
【図4】プーリの溝部を示す拡大断面図である。
【図5】第1の実施形態において、搬送用ベルトがプーリの溝部に係合されたときの状態を示す断面図である。
【図6】第2の実施形態に係る搬送用ベルトの拡大断面図である。
【図7】第2の実施形態において、搬送用ベルトがプーリの溝部に係合されたときの状態を示す断面図である。
【図8】ベルト評価で用いた走行試験機を示す模式図である。
【符号の説明】
【0053】
10 搬送用ベルト
12 ベルト下部(半円部)
13 ベルト上部
14 鍔部
15 ベルト上面
20 搬送用プーリ
21 円周面
22 溝部
22A 溝底部
H1 ベルト接触部高さ
H2 溝深さ
R1 ベルト下部の曲率半径
R2 溝底部の曲率半径
【特許請求の範囲】
【請求項1】
底部が断面半円弧状で構成される溝部が、周方向に沿って外周面に設けられたプーリに、掛け回される搬送用ベルトであって、
前記溝部に係合する断面半円弧状の半円部がベルト下部に設けられ、
前記半円部の曲率半径は、前記底部の曲率半径より小さいことを特徴とする搬送用ベルト。
【請求項2】
ベルト上面が平面であることを特徴とする請求項1に記載の搬送用ベルト。
【請求項3】
ベルト上部の両側端からベルトの幅方向に突出する鍔部が設けられることを特徴とする請求項1に記載の搬送用ベルト。
【請求項4】
前記鍔部の下面から前記半円部の頂部までの距離が、前記溝部の溝深さより大きいことを特徴とする請求項3に記載の搬送用ベルト。
【請求項5】
前記鍔部の下面から前記半円部の頂部までの距離が、前記溝部の溝深さより小さいことを特徴とする請求項3に記載の搬送用ベルト。
【請求項6】
ゴムから形成され、前記ゴムの硬さが60〜80であることを特徴とする請求項1に記載の搬送用ベルト。
【請求項7】
エチレンプロピレンゴム、エチレンプロピレンジエン共重合体、水素化ニトリルゴム、水素化ニトリルゴムに不飽和カルボン酸金属塩を添加したもの、クロロスルフォン化ポリエチレン、塩素化ポリエチレン、クロロプレンゴム、ウレタンゴム、エピクロルヒドリンゴム、アクリルゴム、フッ素ゴム、及びシリコーンゴムから選択された少なくとも1種のゴムから形成されることを特徴とする請求項1に記載の搬送用ベルト。
【請求項8】
断面半円弧状の半円部がベルト下部に設けられた搬送用ベルトが、掛け回される搬送用プーリであって、
底部が断面半円弧状で構成され、前記半円部が係合する溝部が、周方向に沿って外周面に設けられ、
前記底部の曲率半径は、前記半円部の曲率半径より大きいことを特徴とする搬送用プーリ。
【請求項9】
底部が断面半円弧状で構成される溝部が、周方向に沿って外周面に設けられた搬送用プーリと、
断面半円弧状の半円部がベルト下部に設けられた搬送用ベルトとを備え、
前記搬送用ベルトは、前記半円部が前記溝部に係合して、前記搬送用プーリに掛け回され、
前記半円部の曲率半径は、前記底部の曲率半径より小さいことを特徴とする搬送システム。
【請求項10】
底部が断面半円弧状で構成される溝部が、周方向に沿って外周面に設けられたプーリに、掛け回される搬送用ベルトであって、
前記溝部に係合する断面半円弧状の半円部がベルト下部に設けられるとともに、ベルト上部の両側端からベルトの幅方向に突出する鍔部が設けられ、
前記鍔部の下面から前記半円部の頂部までの距離が、前記溝部の溝深さより小さいことを特徴とする搬送用ベルト。
【請求項1】
底部が断面半円弧状で構成される溝部が、周方向に沿って外周面に設けられたプーリに、掛け回される搬送用ベルトであって、
前記溝部に係合する断面半円弧状の半円部がベルト下部に設けられ、
前記半円部の曲率半径は、前記底部の曲率半径より小さいことを特徴とする搬送用ベルト。
【請求項2】
ベルト上面が平面であることを特徴とする請求項1に記載の搬送用ベルト。
【請求項3】
ベルト上部の両側端からベルトの幅方向に突出する鍔部が設けられることを特徴とする請求項1に記載の搬送用ベルト。
【請求項4】
前記鍔部の下面から前記半円部の頂部までの距離が、前記溝部の溝深さより大きいことを特徴とする請求項3に記載の搬送用ベルト。
【請求項5】
前記鍔部の下面から前記半円部の頂部までの距離が、前記溝部の溝深さより小さいことを特徴とする請求項3に記載の搬送用ベルト。
【請求項6】
ゴムから形成され、前記ゴムの硬さが60〜80であることを特徴とする請求項1に記載の搬送用ベルト。
【請求項7】
エチレンプロピレンゴム、エチレンプロピレンジエン共重合体、水素化ニトリルゴム、水素化ニトリルゴムに不飽和カルボン酸金属塩を添加したもの、クロロスルフォン化ポリエチレン、塩素化ポリエチレン、クロロプレンゴム、ウレタンゴム、エピクロルヒドリンゴム、アクリルゴム、フッ素ゴム、及びシリコーンゴムから選択された少なくとも1種のゴムから形成されることを特徴とする請求項1に記載の搬送用ベルト。
【請求項8】
断面半円弧状の半円部がベルト下部に設けられた搬送用ベルトが、掛け回される搬送用プーリであって、
底部が断面半円弧状で構成され、前記半円部が係合する溝部が、周方向に沿って外周面に設けられ、
前記底部の曲率半径は、前記半円部の曲率半径より大きいことを特徴とする搬送用プーリ。
【請求項9】
底部が断面半円弧状で構成される溝部が、周方向に沿って外周面に設けられた搬送用プーリと、
断面半円弧状の半円部がベルト下部に設けられた搬送用ベルトとを備え、
前記搬送用ベルトは、前記半円部が前記溝部に係合して、前記搬送用プーリに掛け回され、
前記半円部の曲率半径は、前記底部の曲率半径より小さいことを特徴とする搬送システム。
【請求項10】
底部が断面半円弧状で構成される溝部が、周方向に沿って外周面に設けられたプーリに、掛け回される搬送用ベルトであって、
前記溝部に係合する断面半円弧状の半円部がベルト下部に設けられるとともに、ベルト上部の両側端からベルトの幅方向に突出する鍔部が設けられ、
前記鍔部の下面から前記半円部の頂部までの距離が、前記溝部の溝深さより小さいことを特徴とする搬送用ベルト。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【公開番号】特開2007−284200(P2007−284200A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−113547(P2006−113547)
【出願日】平成18年4月17日(2006.4.17)
【出願人】(000111085)ニッタ株式会社 (588)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年4月17日(2006.4.17)
【出願人】(000111085)ニッタ株式会社 (588)
【Fターム(参考)】
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