説明

搬送装置、画像形成装置、被搬送媒体搬送方法、プログラム

【課題】2つのローラ間のトルクの受け渡しを低減できる搬送装置等を提供すること。
【解決手段】被搬送媒体53を搬送する第1の搬送回転手段18、20と、第1の回転体駆動手段64、61と、第2の搬送回転手段12と、第2の回転体駆動手段66と、第1の搬送回転手段に作用するトルク情報を取得するトルク情報検出手段67、76と、被搬送媒体が前記第1の搬送回転手段にのみ搬送される際に前記トルク検出手段が検出したトルク情報と、前記第1の搬送回転手段と前記第2の搬送回転手段の両方に搬送される際に前記トルク検出手段が検出したトルク情報とを比較した比較結果に応じて、前記第2の回転体駆動手段の回転速度を制御する、ことを特徴とする搬送装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート状の被搬送媒体を搬送する搬送装置等に関し、特に、被搬送媒体を搬送する搬送回転手段の回転速度を制御する搬送装置、画像形成装置、被搬送媒体搬送方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置は、転写部において中間転写ベルトや感光体ドラムに形成されたトナー画像を記録紙に転写して、その後、熱と圧力により記録紙に定着させる。転写部では転写ローラが記録紙を中間転写ベルトや感光体ドラムに圧接させる。この転写部の下流には定着装置があり、記録紙のサイズが所定以上になると記録紙が、転写ローラと中間転写ベルト等とに狭持された状態で定着装置に到達する。ここで、定着装置の定着ローラと転写ローラはその回転速度が別々に制御されているので、記録紙が転写ローラと定着ローラに跨った状態となると、両者の回転速度のわずかな違いにより、定着装置による記録紙の引っ張りや二次転ローラによる押し込み(以下、トルクの受け渡しという)を生じさせることが知られている。
【0003】
2つローラ間でトルクの受け渡しが発生すると、上流と下流のローラのいずれかでスリップが発生する等、画質の低下や色ずれをもたらすことがある。特に、記録紙の秤量(単位面積の重さ)が大きく(こしの強い記録紙だと)、上流のローラの周速が下流のローラの周速より早いと、押し込みによるスリップが発生するおそれが高くなる。
【0004】
この点について、定着装置の上流において、記録紙に意図的なループを形成させる技術が知られている(例えば、特許文献1参照。)。特許文献1には、適正なループ量を定めておきこの値と実際のループ量の比較結果を用いて、所定時間ごとに定着ローラの回転速度を補正する画像形成装置が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された画像形成装置では、適正ループ量を予め記憶しておかなければならず、この適正ループ量に定着ローラの回転速度の補正量が依存してしまうという問題がある。例えば、2つのローラ間のトルクの受け渡し量は、その日の湿度や機器の経年変化により変化すると考えられるので、予め適正ループ量を定めることも困難である。このため、適正ループ量と実際のループ量の比較結果により制御された定着ローラの回転速度が正確であるという保証もない。また、特に秤量が大きい記録紙は、ループを作ることが困難な場合も多い。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑み、2つのローラ間のトルクの受け渡しを低減できる搬送装置、画像形成装置、被搬送媒体搬送方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明は、シート状の被搬送媒体を回転方向に搬送する第1の搬送回転手段(例えば、二次転ローラ、中転ローラ)と、前記第1の搬送回転手段の下流又は上流に配置された、被搬送媒体を回転方向に搬送する第2の搬送回転手段(下流:例えば、定着ローラ、上流:例えば、レジストローラ)と、前記第1の搬送回転手段を回転駆動する第1の回転体駆動手段と、前記第2の搬送用回手段を回転駆動する第2の回転体駆動手段と、前記第1の回転体駆動手段の回転速度を検出する第1の回転速度検出手段と、前記第2の回転体駆動手段の回転速度を検出する第2の回転速度検出手段と、前記第1の回転体駆動手段の回転速度を第1の目標速度に制御する第1の速度制御手段と、前記第2の回転体駆動手段の回転速度を第2の目標速度に制御する第2の速度制御手段と、前記第1の搬送回転手段に作用するトルクのトルク情報を取得するトルク情報取得手段と、を有し、前記第2の速度制御手段は、被搬送媒体が前記第1の搬送回転手段にのみ搬送される際に前記トルク情報取得手段が取得したトルク情報と、前記第1の搬送回転手段と前記第2の搬送回転手段の両方に搬送される際に前記トルク情報取得手段が取得したトルク情報とを比較した比較結果に応じて、前記第2の回転体駆動手段の回転速度を制御する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
2つのローラ間のトルクの受け渡しを低減できる搬送装置、画像形成装置、被搬送媒体搬送方法及びプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】画像形成装置の全体構成図の一例である。
【図2】画像形成装置の中間転写ベルトにおける二次転写部の構成を説明する図の一例である。
【図3】二次転写部と定着装置の概略構成図の一例である。
【図4】記録紙を介して二次転ローラと定着ローラの間で授受されるトルクを模式的に説明する図の一例である。
【図5】画像形成装置の制御装置のハードウェアブロック図の一例である。
【図6】トルクセンサを説明する図の一例である。
【図7】定着モータの制御ブロック図の一例である。
【図8】画像形成装置が定着ローラの回転速度を制御する手順を示すフローチャート図の一例である。
【図9】中間転写ベルトと定着装置の概略構成図の一例である。
【図10】中転モータの制御ブロック図の一例である。
【図11】画像形成装置が定着ローラの回転速度を制御する手順を示すフローチャート図の一例である。
【図12】二次転写部とレジストローラの概略構成図の一例である。
【図13】レジストモータの制御ブロック図の一例である。
【図14】画像形成装置がレジストローラの回転速度を制御する手順を示すフローチャート図の一例である。
【図15】画像形成装置の制御装置のハードウェアブロック図の一例である(実施例4)。
【図16】定着モータの制御ブロック図の一例である。
【図17】画像形成装置が定着ローラの回転速度を制御する手順を示すフローチャート図の一例である(実施例4)。
【図18】定着モータの制御ブロック図の一例である。
【図19】定着モータの制御ブロック図の変形例の別の一例である。
【図20】画像形成装置が定着ローラの回転速度を制御する手順を示すフローチャート図の一例である(実施例4の変形例)。
【図21】画像形成装置の制御装置の制御ブロック図の一例である(実施例5)。
【図22】画像形成装置の制御装置の制御ブロック図の一例である(実施例6)。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しながら実施例を挙げて説明する。
【実施例1】
【0011】
本実施例の画像形成装置100の特徴部の概略を説明する。本実施例の画像形成装置100は、二次転ローラのトルクを計測して、トルクの受け渡しによるトルクの変動分に応じて定着ローラの回転速度を補正することで、2つのローラ間のトルクの受け渡しを低減する。すなわち、計測したトルクの変動分に応じて定着ローラの回転速度を補正するので、2つのローラ間でのトルクの受け渡しが低減され、記録紙の引っ張りや押し込みを防止することができる。例えば、秤量の大きい記録紙の場合は、トルクの変動分も大きくなり、定着ローラの回転速度の補正量も大きくなるので、秤量の大きさに関係なく、2つのローラ間でのトルクの受け渡しを低減できる。したがって、2つのローラ間のトルクの受け渡しによる画質の低下や色ずれを抑制することができる。なお、記録紙としては普通紙が一般的だが、記録紙は、光沢紙、厚紙、ハガキ等の紙類、OHPシート、フィルム等、シート状であればよい。
【0012】
〔画像形成装置の概略構成〕
図1は、画像形成装置100全体構成図の一例を示す。画像形成装置100は、自動原稿送り装置(ADF)140と、画像読み取り部130、書き込みユニット110、画像形成部120、及び、給紙ユニット150を有する。ADF140は、原稿給紙台上に積載された原稿を1枚ずつ画像読み取り部のコンタクトガラス上に搬送し、原稿の画像データを読み取った後に排紙トレイ上に排出する。
【0013】
原稿読み取り部130は、原稿を載置するためのコンタクトガラス11と、光学走査系を有し、光学走査系は、露光ランプ41、第1ミラー42、第2ミラー43、第3ミラー44、レンズ45及びフルカラーCCD46を備える。露光ランプ41及び第1ミラー42は、第1キャリッジに装備され、第1キャリッジは、原稿を読み取る際に、ステッピングモータによって一定速度で副走査方向に移動する。第2ミラー43及び第3ミラー44は、第2キャリッジに装備され、第2キャリッジは、原稿を読み取る際に、ステッピングモータによって第1キャリッジのほぼ1/2の速度で移動する。そして、第1キャリッジ及び第2キャリッジが移動することによって、原稿の画像面が光学的に走査され、読み取られたデータがレンズによってフルカラーCCD46の受光面に結像され、光電変換される。
【0014】
次に、フルカラーCCD(又はフルカラーラインCCD)46によって、赤(R)、緑(G)及び青(B)の各色に光電変換された画像データは、不図示の画像処理回路でA/D変換された後に画像処理回路によって各種の画像処理(γ補正、色変換、画像分離、階調補正等)が施される。
【0015】
ユーザが複写する操作を指示した場合や、画像形成装置100をプリンタとして利用する場合、書き込みユニット110が各色毎に感光体ドラムに潜像を形成する。図では、4つの感光体ユニット13(イエロー用の13y,マゼンダ用の13m,シアン用の13c,ブラック用の13k)が、中間転写ベルト14の搬送方向に沿って並設されている。各感光体ユニット13y、13m、13c、13kには、像担持体であるドラム状の感光体ドラム27y、27m、27c、27kと、感光体ドラム27y、27m、27c、27kを帯電させる帯電装置48y、48m、48c、48k、露光装置47y、47m、47c、47k、現像装置16y、16m、16c、16k及びクリーニング装置49y、49m、49c、49kが設けられている。
【0016】
露光装置47y、47m、47c、47kは、例えば、図示の例では感光体ドラム27y、27m、27c、27kの軸方向(主走査方向)に配置された発光ダイオード(LED)アレイとレンズアレイからなるLED書込み方式にて露光する。露光装置47y、47m、47c、47kは、各色毎に光電変換された画像データに応じてLEDを発光して感光体ドラム27y、27m、27c、27k上に静電潜像を形成する。現像装置16y、16m、16c、16kは、現像剤を担持して回転する現像ローラが、感光体ドラム27y、27m、27c、27k上に形成された静電潜像をトナーで可視化することで各色毎にトナー像を形成する。
【0017】
感光体ドラム27y、27m、27c、27kに形成されたトナー像は、感光体ドラム27y、27m、27c、27kと中間転写ベルト14とが接する位置(以下、一次転写位置という)で、中間転写ベルト14上に転写される。感光体ドラム27y、27m、27c、27kには、中間転写ベルト14を介して中間転写ローラ26y、26m、26c、26kが感光体ユニット13y、13m、13c、13kと対にそれぞれ対向配置されている。各中間転写ローラ26y、26m、26c、26kは、それぞれ中間転写ベルト14の内周面に当接され中間転写ベルト14を各感光体の表面に接触させる。中間転写ローラ26y、26m、26c、26kにそれぞれに電圧が印可されることで、感光体ドラム27y、27m、27c、27kのトナー像が中間転写ベルト14に転写されるための中間転写電界が発生する。中間転写電界の作用により、中間転写ベルト14上にトナー画像が形成される。各色のトナー画像は重畳して転写され、フルカラーのトナー画像が中間転写ベルト14に形成される。
【0018】
全ての色の作像と転写が終了した時点で、中間転写ベルト14とタイミングを合わせて給紙トレイ22から記録紙53が給紙され、二次転写部50で中間転写ベルト14から4色同時に記録紙53へトナー像が二次転写される。
【0019】
記録紙53は、第1トレイ22a、第2トレイ22b、第3トレイ22c、第4トレイ22d、又は、両面ユニット(不図示)のいずれかから選択される。各給紙トレイ22a〜22dは、内部に収容された記録紙53を一番上のものから順次送り出す給紙ローラ28、給紙ローラ28によって重送されてしまった複数の記録紙53を個々に分離してから搬送路23に送り出す分離ローラ31を有している。これにより、記録紙53は、搬送路23に向けて搬送開始される。
【0020】
給紙ユニット150は、搬送路23の途中に適宜設けられた複数の搬送ローラ対29等を備えている。搬送ローラ対29は、給紙トレイ22から搬送された記録紙53を後段の搬送ローラ対29、書き込みユニット110の給紙路32に向けて送り出す。給紙路32に送り込まれた記録紙53は、その先端がレジストセンサ51によって検出された後、所定時間が経過すると、レジストローラ33に突き当てられて一端停止する。このレジストローラ33は、挟み込んだ記録紙53を所定のタイミング(副走査有効期間信号(FGATE)に同期して)で二次転ローラ18の位置まで送り込む。所定のタイミングは、中間転写ベルト14の回転によりフルカラーの重ね合わせトナー画像が二次転ローラ18の位置まで搬送されたタイミングである。
【0021】
二次転ローラ18は、斥力ローラ17と対向配置される。画像形成装置100は、印刷時に二次転ローラ18を中間転写ベルト14に当接させる。二次転ローラ18は二次転モータにより二次転モータの外周の速度が中間転写ベルト14の表面速度と同じになるよう制御されている。
【0022】
記録紙53は、中間転写ベルト14から分離器(不図示)により分離された後に、搬送ベルト24によって定着装置19まで搬送され、定着装置19は記録紙53にトナー像を定着させる。片面印刷の場合、定着後の記録紙53は、排紙トレイ21上に排出される。
【0023】
本実施例と以下の実施例では、上述した電子写真方式で画像を記録紙53に形成するが、インク滴を吐出して画像を形成するインクジェット方式、昇華型熱転写方式、ドットインパクト方式を画像形成部120に採用してもよい。すなわち、本実施例は記録紙53の搬送方法に特徴を有するのであり、画像形成方法の制限を受けない。
【0024】
図2は、画像形成装置100の中間転写ベルト14における二次転写部50の構成を説明する図の一例である。なお、図2において図1と同一部の説明は省略する。中間転写ベルト14は、中転ローラ20の回転力により図示、時計回りに回転する。また、中転ローラ20は、中転モータ61により回転駆動される。中転ローラ20と中転モータ61は、それぞれ同軸に回転するギアを有し、両者のギアが噛合して得られる動力の伝達により、中転ローラ20が回転する。なお、中間転写ベルト14内のテンションローラ15と斥力ローラ17は、中転ローラ20の回転に従動して回転する従動ローラである。また、テンションローラ15は、中間転写ベルト14に所定の張力を付与するローラである。なお、テンションローラ15の位置に中転ローラ20を配置してもよい。また、ローラ52は中間転写ベルト14内の3つのローラと中間転写ベルト14の密着性、中間転写ベルト14の位置を調整するローラである。
【0025】
図3は、二次転写部50と定着装置19の概略構成図の一例を示す。なお、図3では、中間転写ベルト14を省略した。二次転ローラ18は、二次転モータ64の回転力により回転駆動される。図では、二次転ローラ18の回転軸と二次転モータ64の回転軸が同軸になるよう、二次転ローラ18に二次転モータ64が接続されている。なお、動力の伝達方法は一例であり、二次転ローラ18と二次転モータ64と同軸に回転する一対のギアが噛合して得られる動力の伝達により、二次転ローラ18が回転してもよい。
【0026】
また、二次転モータ64には二次転ローラ18の速度を検出するための二次転エンコーダ63が配置されている。二次転エンコーダ63は、単位時間当たりにセンサを通過するスリット数から二次転ローラ18の回転速度を検出し、二次転モータ制御部71Aに出力する。なお、二次転エンコーダ63は、二次転モータ64の回転速度に応じた周波数のパルス信号を出力するFG(Frequency Generator)でもよい。
【0027】
また、二次転ローラ18には、二次転ローラ18に作用するトルクを検出するトルクセンサ67が配置されている。トルクセンサ67については後述するが、トルクセンサ67により二次転ローラ18と定着ローラ12の間で受け渡されるトルクの検出が可能となる。
【0028】
二次転ローラ18は、中間転写ベルトを介して斥力ローラ17に押し当てられるように配置される。すなわち、二次転ローラ18は斥力ローラ17の方向に付勢されており、少なくとも記録紙53が二次転ローラ18と中間転写ベルトの間を通過する際は、二次転ローラ18と斥力ローラ17が記録紙53を狭持する。二次転ローラ18は、狭持した圧力及び二次転写ローラ18に印可された電圧により生じる二次転写電界により、中間転写ベルト上のトナー像を記録紙53へ二次転写させる。
【0029】
また、記録紙53の搬送方向で二次転写部50の下流側には、画像が転写された記録紙53上のトナー画像を定着させる定着装置19が配置されている。定着装置19は、定着ローラ12と加圧ローラ25とを有する。定着ローラ12は、定着モータ66の回転力により回転駆動される。図では、定着ローラ12の回転軸と同軸に定着モータ66が接続されている。また、定着ローラ12には定着ローラ12の回転速度を検出するための定着エンコーダ65が配置されている。定着エンコーダ65は、単位時間当たりにセンサを通過するスリット数から定着ローラ12の回転速度を検出し、定着モータ制御部71Bに出力する。
【0030】
搬送方向のサイズが所定サイズ以上の記録紙53は、二次転写部50を通過し終わる前に、定着装置19に突入する。この場合、記録紙53は二次転写部50と定着装置19の間を跨った形となり、二次転写部50と定着装置19の間でトルクの受け渡しが生じうる。本実施例の画像形成装置100は、このトルクの受け渡しを低減する。なお、「跨る」とは、上流と下流のローラのいずれにおいても、記録紙53が0より大きい力で狭持された状態をいう。
【0031】
〔トルクの受け渡し〕
二次転写部50と定着装置19の間で生じるトルクの受け渡しについて説明する。
図4(a)は、二次転ローラ18のみにより搬送される記録紙53を、図4(b)は二次転ローラ18と定着装置19の双方に跨った状態で搬送される記録紙53を、図4(c)は定着装置19のみにより搬送される記録紙53を、それぞれ示す。
【0032】
二次転ローラ18のみにより記録紙53が搬送される際の、二次転ローラ18の回転速度V〔rad/s〕よび定着ローラ12の回転速度V〔m/s〕は次式で表される。ただし、式を簡単にするため摩擦抵抗等は無視している。
【0033】
回転体の運動方程式(トルクT〔N/m〕=回転慣性モーメントJ〔kg・m2〕×角加速度α〔rad/s2])から、
回転速度V〔rad/s〕=∫{T/J}
の関係がある。なお、回転体の半径をrとすれば、回転体の外周の速度〔m/s〕は「速度=回転速度V×半径r」である。二次転ローラ18と定着ローラ12の半径rに応じて、二次転ローラ18と定着ローラ12の外周の速度が同程度になるように設計されている。
【0034】
V1= ∫{T/J} …(1)
V2= ∫{T/J} …(2)
(T:二次転モータ64の駆動トルク,T:定着モータ66の駆動トルク,J:二次転ローラ18の回転慣性モーメント、J:定着ローラ12の回転慣性モーメント)
二次転ローラ18において回転慣性モーメントJが一定(負荷変動が発生せず一定)であれば、一定の駆動トルクTで二次転モータ64は二次転ローラ18の回転速度をVに維持することができる。同様に定着ローラ12は回転慣性モーメントJが一定(負荷変動が発生せず一定)であれば、定着モータ66は一定の駆動トルクTで定着ローラ12を回転速度をVに維持することができる。
【0035】
次に、図4(b)のように、記録紙53が二次転写部50と定着装置19を跨った状態になると、回転速度V1とV2が完全に一致しない限り2つのローラ間で記録紙53の引っ張りや押し込みが発生する。図4(b)では引っ張りや押し込みによる力をトルクTcで表す。
【0036】
ここで、二次転ローラから定着ローラに押し込み力が作用した場合を考えると、作用反作用の法則により定着ローラには図示左向きのトルクTcが作用し、二次転ローラには図示右向きのトルクTcが作用する。トルクTやトルクTに合わせて、左向きをトルクTcの正に取ると、二次転ローラから定着ローラに押し込み力が作用した場合、定着ローラには、左向きの正のトルクTcが作用し、二次転ローラには右向きの負のトルクTcが反作用する。
【0037】
逆に、定着ローラが二次転ローラから記録紙を引っ張る場合、定着ローラには、張力として右向きの負のトルクTcが作用し、二次転ローラには左向きの正のトルクTcが反作用する。
【0038】
したがって、図4(b)の状態では、二次転モータ64の駆動トルクT'、定着モータ66の駆動トルクT'は次のようになる。
'=T−Tc …(3)
'=T+Tc …(4)
これらを式(1)(2)に代入すると、二次転ローラ18の速度V´および定着ローラ12の回転速度V´は次式で表される。ただし、式を簡単にするため摩擦抵抗等は無視している。
【0039】
V1'=∫{(T'+Tc)/J} …(5)
V2'=∫{(T'−Tc)/J} …(6)
(T´:二次転モータ64の駆動トルクのうち二次転ローラ18に加わるトルク,T´:定着モータ66の駆動トルクのうち定着ローラ12に加わるトルク)
したがって、式(3)と(4)がどちらも成立する場合、2つのローラ間で記録紙53の引っ張りや押し込みが発生していても、二次転ローラ18の回転速度V1と定着ローラ12の回転速度V2は変化しないので、次式が成り立つ。
【0040】
V1=V1'
V2=V2'
具体的には、Tが正値の場合、記録紙53は定着ローラ12に押し込まれている状態となるが、例えば、秤量が小さいため、記録紙53がたわみ、押されているが定着ローラ12の回転速度は変化していない状態となる。また、Tが負値の場合、記録紙53は定着ローラ12に引っ張られている状態であり、二次転ローラ18は定着ローラ12に引っ張られている状態となるが、例えば、引っ張る力が小さいため、引っ張られているが二次転ローラ18の回転速度は変化していない状態となる。
【0041】
これに対し、Tが発生することで次式の状態となると、
'≠T−Tc …(7)
'≠T+Tc …(8)
記録紙53を介したトルクの受け渡しにより、二次転ローラ18又は定着ローラ12に回転速度の変化が生じたことになる。例えば、トルクTcが正値の場合、二次転ローラ18の回転速度Vが定着ローラ12の回転速度Vより大きいため、定着ローラ12の回転速度V'を大きくする。トルクTcが負値の場合、定着ローラ12の回転速度Vが二次転ローラ18の回転速度Vより大きいため、二次転ローラ18の回転速度V'を大きくする。
【0042】
V1≠V1' …(9)
V2≠V2' …(10)
したがって、トルクTcをゼロにすることができれば、式(3)と(4)がどちらも成立する場合はもちろん、式(7)と(8)の状態になる前に、2つのローラ間でトルクTcの受け渡しが生じないことがわかる。本実施例の画像形成装置100は、トルクTcをゼロにするように、定着ローラ12の回転速度を制御する。
【0043】
次に、記録紙53が二次転ローラ18を抜けた直後は、定着ローラ12のみが記録紙53を搬送する状態になる。なお、説明のため、式(3)と(4)が成り立っている仮定するが、本実施例の画像形成装置100はトルクTcをゼロにするので、式(3)と(4)が成り立つか否かは、本実施例の画像形成装置100を実現する上では影響がない。
【0044】
記録紙53が二次転ローラ18を抜けた直後、記録紙53を介して発生していたトルクTが二次転ローラ18と定着ローラ12に作用しなくなる。したがって、二次転ローラ18の回転速度V''および定着ローラ12の回転速度V''は次式で表される。
【0045】
V1''= ∫{T'/J} …(11)
V2''= ∫{T'/J} …(12)
式(3)(4)より、次式が成立する。
【0046】
≠T' …(13)
≠T' …(14)
したがって、二次転ローラ18および定着ローラ12で速度変動が発生する。
【0047】
V1≠V1''
V2≠V2''
しかし、上記のように記録紙53が2つのローラを跨った状態においてトルクTがゼロに制御されていれば、トルクTcの受け渡しが発生していないため、記録紙53が二次転ローラ18を抜けた際(直後でも)、速度変動の発生を防ぐことができる。
【0048】
〔制御部の構成〕
図5は、画像形成装置100の制御装置200のハードウェアブロック図の一例を示す。モータ駆動回路68には、二次転モータ制御部71Aと、定着モータ制御部71Bが接続されている。二次転モータ制御部71Aは、二次転モータ制御コントローラ74、モータ駆動信号生成部72A及びA/Dコンバータ73Aを有し、定着モータ制御部71Bは、定着モータ制御コントローラ75、トルク制御部76、モータ駆動信号生成部72B及びA/Dコンバータ73Bを有する。二次転モータ制御部71Aには、インバータ69Aを介して二次転モータ64と、二次転エンコーダ63が接続されている。また、定着モータ制御部71Bには、インバータ69Bを介して定着モータ66と、定着エンコーダ65と、トルクセンサ67が接続されている。
【0049】
メイン制御部78には、操作部77及びメモリ装着部79が接続されている。操作部77は、例えば、液晶表示部とタッチパネルが一体に実装され、メニュー表示とその選択の入力を兼ねたユーザインターフェイスとなる。また、操作部77は、スキャナ機能、ファクシミリ機能、複写機能をそれぞれ切り替える選択キー、テンキー、スタートキー、リセットキー、電源のスイッチ、等の各種のハードキーを有する。メモリ装着部79は、記憶媒体80が着脱可能である。記憶媒体80にはプログラムが記憶されていて、メイン制御部78はメモリ装着部79を介してプログラムを読み込み、不図示のHDDやROM等に記憶する。
【0050】
メイン制御部78、二次転モータ制御部71A及び定着モータ制御部71Bは、いずれもCPU、DSP、RAM、ROM、EEPROM、入出力インターフェイス、フラッシュメモリ及びASIC(Application Specific Integrated Circuit)等を備えたコンピュータ(マイコン)を実体とする。また、二次転モータ制御部71Aと定着モータ制御部71Bを別体とするのでなく、1つのマイコンに別々の機能として搭載してもよい。
【0051】
二次転モータ制御コントローラ74や定着モータ制御コントローラ75は、CPUがプログラムを実行するか又はDSP、ASIC等のICにより実現される。二次転モータ制御コントローラ74はモータ駆動信号生成部72Aに回転速度を指示する。本実施例では二次転モータ64の回転速度は一定であるとするが、メイン制御部78は厚紙の記録紙53の印刷時には回転速度を下げるよう二次転モータ制御コントローラ74に要求するなど、回転速度を可変に制御することもできる。
【0052】
二次転モータ制御コントローラ74は、二次転エンコーダ63の検出した回転速度と目標の回転速度(以下、目標速度という)を比較してから、例えばPI制御に準じた演算を行いモータ駆動信号生成部に指示する速度を決定する。なお、この目標速度は、二次転ローラ18の外周の速度が、中間転写ベルト14の表面速度と同定度となるように定められている。
【0053】
モータ駆動信号生成部は6つのFETからなるインバータ69Aと接続されている。モータ駆動信号生成部72Aは速度指示に基づき決定した定電圧と例えば所定の周波数の三角波(キャリア波)と比較して、両者のクロス点からPWM信号のデューティ比を決定する。モータ駆動信号生成部72Aは、このデューティ比のPWM信号を生成し6つのFETにそれぞれ出力する。PWM信号により各FETはオン/オフを繰り返し、オン/オフに応じたU相、V相及びW相の各電流がそれぞれ二次転モータ64に入力される。
【0054】
A/Dコンバータ73Aは、抵抗RL1側に流れる駆動電流をA/D変換して二次転モータ制御コントローラ74に出力する。二次転モータ制御コントローラ74は、駆動電流と基準値を比較して駆動電流が過大な場合、モータ駆動信号生成部72AにPWM信号の出力を抑制するよう指示する。こうすることで、インバータ69Aを構成するFETが加熱等により損傷することを防止できる。
【0055】
定着モータ制御コントローラ75による定着モータ66の制御は二次転モータ64の制御とほぼ同じであるが、本実施例では、トルクセンサ67が定着モータ制御コントローラ75(トルク制御部76)に接続されている点に特徴がある。
【0056】
図6を用いて、トルクセンサ67について簡単に説明する。トルクセンサ67としてはどのようなものを用いてもよいが、図6には「ロードセル+スリップリング」方式のトルクセンサ67の一例を示した。この他、位相差方式のトルクセンサ67を採用してもよい。
【0057】
二次転ローラ18の回転軸に、二次転ローラ18と一緒に回転するトルクセンサ67のセンサ軸82が連結されている。センサ軸82にはロードセル85が埋設され、スリップリング86が全周に渡って装着されている。ロードセル85はひずみの大きさを電気信号に変換するセンサである。
【0058】
センサ軸82は、ベアリングを介して筐体81により筒状に覆われ、筐体81に検出部84が配置されている。検出部84は、スリップリング86に付勢力を持って接触するブラシ83を有しスリップリング86と電気的に接続されている。このブラシ83は、センサ軸82が回転することで、スリップリング86の表面を摺動する。
【0059】
センサ軸82にトルクが作用してセンサ軸82がねじれると、ロードセル85にねじれによるひずみが生じる。ロードセル85はひずみに応じた電圧/電流を発生させるので、検出部84はセンサ軸82、スリップリング86及びブラシ83を介して電圧/電流を検出する。検出部84は、電圧/電流を二次転ローラ18のトルク値に変換する。トルクセンサ67は、アナログ値のトルク値又はデジタル値のトルク値を定着モータ制御コントローラ75に出力する。前者の場合、トルク値はトルク制御部76に常に入力されるので、トルク制御部76は所定のサンプリング周期でトルク値を取り込む。後者の場合、トルク値は定期的に入力されるので、トルク制御部76は定期的にトルク値を取り込む。
【0060】
従来、定着モータ制御コントローラ75は、定着エンコーダ65の検出した回転速度と目標速度の比較結果から、例えばPI制御に準じた演算を行いモータ駆動信号生成部に指示する速度を決定していた。本実施例では、定着モータ制御コントローラ75は、トルク制御部76が、二次転ローラ18に作用する平均トルクTavとトルクセンサ67が検出した実測トルクとの比較結果から、定着ローラ12の回転速度の補正値を算出する。そして、定着モータ制御部71Bは、補正値によりモータ駆動信号生成部72Bに指示する速度を補正する。なお、実測トルクは、図4(a)の段階のT、図4(b)の段階のT'、図4(c)の段階のT''の場合がある。
【0061】
図7(a)に、定着モータ66の制御ブロック図の一例を示す。また、図7(b)に従来の定着モータ66の制御ブロック図の一例を示す。図7(b)に示すように、また、上述したように、定着ローラ12と二次転ローラ18の回転速度は、それぞれ別々にフィードバック制御されていた。すなわち、二次転モータ制御コントローラ74は、目標速度と二次転ローラ18の回転速度の偏差(P)と偏差の積分値(I)にそれぞれゲインを考慮して制御量(速度指示)を決定し、定着モータ制御コントローラ75は、目標速度と定着ローラ12の回転速度の偏差(P)と偏差の積分値(I)にそれぞれゲインを考慮して制御量(速度指示)を決定していた。
【0062】
これに対し、本実施例では、二次転ローラ18の回転速度の制御方法は従来と同じであるが、定着モータ66の回転速度の制御に、トルク値のフィードバック制御を加える。トルク制御部76には、平均トルクTavから実測トルクT'を減じたトルク偏差が入力される。トルク偏差は上記のトルクTcに対応し、平均トルクTavは図4(a)のトルクTに相当する。以下、トルク偏差をトルク偏差Tcという。
【0063】
二次転ローラが記録紙を定着ローラに押し込んでいる場合、二次転ローラには右向きの負のトルク偏差Tcが反作用するので、平均トルクTav<T'である。逆に、定着ローラが二次転ローラから記録紙を引っ張っている場合、二次転ローラには左向きの正のトルク偏差Tcが反作用するので、平均トルクTav>T'である。
【0064】
平均トルクTavとは、二次転ローラ18のみが記録紙53を搬送する際の二次転ローラ18に作用するトルクの平均的な値をいう。トルク値はトルクセンサ67がトルク制御部76に入力するので、トルク制御部76は、所定時間のトルク値の平均を平均トルクTavとする。トルク制御部76が平均トルクTavを算出するのは、二次転ローラ18と定着ローラ12の間で受け渡されるトルク偏差Tcを知るためなので、平均トルクTavは、記録紙53が二次転ローラ18の通過を開始してから定着ローラ12に到達するまでに検出されたトルク値である。したがって、トルク値の平均を算出するための所定時間は、記録紙53が二次転ローラ18を通過してから定着ローラ12に到達するまでの時間を最大とする。この時間は二次転ローラ18と定着ローラ12までの距離と記録紙53の搬送速度から予め算出可能である。また、トルク制御部76は、記録紙53が二次転ローラ18を通過してから平均トルクTavを算出するための十分な数のトルク値を取得する必要があるので、平均トルクTavを算出するための最小の所定時間は、トルク制御部76がトルクセンサ67からトルク値を取得するサイクル時間に依存して定まる。本実施例では、例えば所定時間を「0.1秒」程度とする。
【0065】
トルク制御部76は、例えば、平均トルクTavと実測トルクT'のトルク偏差Tcとトルク偏差Tcの積分値にそれぞれゲインを考慮して補正量を決定する。駆動トルク、回転慣性モーメント及び回転速度の間には上述した関係があるので、トルク制御部76は、トルク偏差Tcと定着ローラ12の回転慣性モーメントJから補正量に相当する回転速度をおよそ見積もることができる。実際には、補正量に相当する回転速度を実験的に調整してゲインを決定しておく。トルク制御部76は、平均トルクTavと実測トルクT'のトルク偏差Tcを回転速度の補正量に変換して定着モータ制御コントローラ75に出力する。
【0066】
以上から定着モータ制御コントローラ75の制御手順を説明する。定着モータ制御コントローラ75は、定着ローラ12の目標速度から現時刻の定着ローラ12の回転速度を減算する(速度偏差)。トルク制御部76は、現時刻とほぼ同時刻の二次転ローラ18に作用する実測トルクT'をトルクセンサ67から取得し、平均トルクTavから減算してトルク偏差Tcを算出する。定着モータ制御コントローラ75は速度偏差に応じた回転速度の操作量を、トルク制御部76はトルク偏差に応じた補正量に対応する操作量をそれぞれ算出する。そして、定着モータ制御部71Bは、2つの操作量を加算した速度指示を、モータ駆動信号生成部72Bに入力する。この制御により、定着モータ制御部71Bは、トルク偏差Tc=0とすること、すなわち式(3)(4)においてT=T'、 T=T'とすることができる。
【0067】
〔動作手順〕
図8は、本実施例の画像形成装置100が定着ローラ12の回転速度を制御する手順を示すフローチャート図の一例である。図8のフローチャート図は、例えば、画像形成装置100が記録紙53への印刷を開始するとスタートする。
【0068】
メイン制御部78は、二次転モータ制御コントローラ74と、定着モータ制御コントローラ75に、駆動指令を送信する。このとき、メイン制御部78は目標速度を指示してもよいが、目標速度は二次転モータ64と定着モータ66の外周の速度が同じになるように指示される。
【0069】
駆動指令を受けると、まず、二次転モータ制御コントローラ74が二次転モータ64の速度制御を開始する(S10)。
【0070】
次に、定着モータ制御コントローラ75が、定着モータ66の速度制御を開始する(S20)。トルク制御部76は、トルクセンサ67が検出するトルク値の取得を開始する。
【0071】
次に、トルク制御部76は、二次転ローラ18に記録紙53が突入したか否かを判定する(S30)。記録紙53が二次転ローラ18に突入したか否かを判定する方法には、次のような方法がある。
(1)トルクセンサ67が検出したトルク値を監視する
(2)レジストローラ33が記録紙53の搬送を開始したことを検出する
(3)抵抗RL1を流れる駆動電流を監視する
二次転ローラ18に作用するトルク値は、記録紙53を搬送している間は搬送しない場合よりも大きくなる。トルク制御部76は、メイン制御部78から駆動指令を受信した後、二次転ローラ18の回転速度が安定する時間の経過を待ち、トルク値を監視する。そして、トルク制御部76は、例えば、トルク値の変化速度(勾配)が所定値以上になると、二次転ローラ18に記録紙53が突入したと判定する。
【0072】
また、上記のように、レジストローラ33は中間転写ベルトのトナー画像が記録紙53に印刷されるようにタイミングを調整して搬送を再開する。レジストローラ33が搬送開始したことはメイン制御部78が検知するので、トルク制御部76はメイン制御部78からレジストローラ33が搬送開始したとの通知を受ける。レジストローラ33から二次転ローラ18までの距離と搬送速度は既知なので、トルク制御部76は通知を受けてから所定時間が経過すると、二次転ローラ18に記録紙53が突入したと判定することができる。なお、この他、二次転ローラ18の近くのセンサが検出する記録紙53の通過の検出を利用してもよい。
【0073】
また、抵抗RL1を流れる駆動電流は、二次転ローラ18の付加が大きくなると増大する。したがって、二次転ローラ18に記録紙53が突入すると、抵抗RL1を流れる駆動電流が増大する。通常、この駆動電流はトルク制御部76が検知していないので、トルク制御部76は、例えばメイン制御部78から二次転モータ制御部71Aが取得した抵抗RL1を流れる駆動電流を取得する。トルク制御部76は、例えば、駆動電流の変化速度(勾配)が所定値以上になると、二次転ローラ18に記録紙53が突入したと判定する。なお、トルク制御部76は、二次転モータ制御コントローラ74から、二次転ローラ18に記録紙53が突入したとの通知を受けてもよい。
【0074】
なお、上記(1)〜(3)の判定方法は、どれか1つ以上を採用してもよいし、全てを採用しておき、1つ以上の判定方法で判定が成立した場合に記録紙53が二次転ローラ18に突入したと判定してもよい。
【0075】
トルク制御部76は、二次転ローラ18に記録紙53が突入したと判定した場合(S30のYes)、トルクセンサ67が検出する実測トルクTから平均トルクTavを算出する(S40)。上記のように、トルク制御部76は、二次転ローラ18に記録紙53が突入してから「0.1秒」程度の間のトルク値の平均を算出する。
【0076】
平均トルクTavを取得すると、トルク制御部76は、図7(a)のトルク制御部76への入力に、算出した平均トルクTavを設定する(S50)。
【0077】
そして、トルク制御部76は、定着モータ66の回転速度を、トルク偏差Tcにより補正することを開始する(S60)。定着ローラ12に記録紙53が突入するまで、平均トルクTavと実測トルクTはほぼ同程度なので、トルク偏差Tcはゼロである。したがって、トルク偏差Tcによる回転速度の補正は、定着モータ66の回転速度に影響しない。このため、定着ローラ12に記録紙53が突入する前から、定着モータ66の回転速度の制御にトルク偏差Tcによる補正を加えても問題がない。
ついで、トルク制御部76は、定着ローラ12に記録紙53が突入したか否かを判定する(S70)。この判定は、定着ローラ12への記録紙53の突入の直後は実測トルクT'が不安定になるので、突入の直後の実測トルクT'を定着ローラ12の回転速度の補正に用いないように処理するための判定である。なお、定着ローラ12に記録紙53が突入したことは、例えば、ステップS30で二次転ローラ18に記録紙53が突入したと判定されてから所定時間が経過したこと、抵抗RL2に流れる駆動電流の急激な変化、その他、所定のセンサが記録紙53を検知したこと等、により検出される。
【0078】
トルク制御部76は、定着ローラ12に記録紙53が突入したと判定した場合(S70のYes)、トルクセンサ67が検出する実測トルクT'の取得を一時的に中断する(S80)。トルク制御部76は、例えば、定着ローラ12に記録紙53が突入したと判定するまでに取得した実測トルクTをダミーとしてトルク偏差の補正に利用する。すなわち、トルク制御部76は、定着ローラ12に記録紙53が突入したと判定しても、定着ローラ12に記録紙53が突入する前の実測トルクTを一時に使用する。なお、「取得を一時的に中断」するとは、取得しても制御に使用しないことを含む。
【0079】
定着ローラ12へ記録紙53が突入したことによる実測トルクT'の不安定な変動は短時間で収まるので、実測トルクT'の取得を中断する「一時的な時間」は、短時間(例えば、10μ秒から数100μ秒程度)とすることができる。
【0080】
つぎに、トルク制御部76は、トルクセンサ67が検出する実測トルクT'の取得を再開する(S90)。以降、トルク制御部76は、平均トルクTavから実測トルクT'を減じたトルク偏差Tcに応じて、回転速度の補正量を算出する。こうすることで、式(3)(4)でTc=0となるように、定着モータ66の回転速度を制御することができる。
【0081】
その後、時間が経過すると、記録紙53の全体が二次転ローラ18を通過し(S100)、さらに、記録紙53の全体が定着ローラ12を通過する(S110)。記録紙53の全体が二次転ローラ18を通過して、記録紙53の全体が定着ローラ12を通過する前、定着ローラの回転速度は、トルク偏差Tcによる補正を受ける。すなわち、定着モータ制御部71Bは、記録紙が二次転ローラを通過したにも拘わらず、トルク偏差Tcがゼロになるように定着モータ66の回転速度を制御してしまう。しかし、既に記録紙53の全体が二次転ローラ18を通過しているので、定着ローラ12の回転速度が変化しても、二次転写部50による転写に大きな影響はない。このため、記録紙53が二次転ローラ18から通過した後も、定着モータ66の回転速度の制御にトルク偏差による補正を加えても問題がない。また、こうすることで、複数枚の記録紙53を印刷する間は、ステップS60からトルク偏差Tcによる回転速度の補正を継続でき、フィードバック制御による回転速度を安定しやすくできる。
【0082】
次に、定着モータ制御部71Bと二次転モータ制御部71Aは、メイン制御部78から定着ローラ12と二次転ローラ18の停止要求を受信したか否かを判定する(S120)。メイン制御部78が出力する停止要求は、例えば、記録紙53への印刷が完了したことや用紙詰まりがあったことを意味する。
【0083】
メイン制御部78から定着ローラ12と二次転ローラ18の停止要求を受信しない場合(S120No)、定着モータ制御部71Bと二次転モータ制御部71AはステップS30からの処理を繰り返す。すなわち、2枚目以降の記録紙53への印刷を繰り返す。
【0084】
メイン制御部78から定着ローラ12と二次転ローラ18の停止要求を受信した場合(S120Yes)、定着モータ制御部71Bと二次転モータ制御部71Aは、制御を終了する(S130)。これにより、定着ローラ12と二次転ローラ18は停止する。
【0085】
以上説明したように、本実施例の画像形成装置100は、二次転ローラ18と定着ローラ12の間で受け渡たされるトルク偏差Tcがゼロになるように、定着モータ66の回転速度を制御することで、記録紙53の引っ張りや押し込みを防止することができる。ユーザが秤量の大きい記録紙53に印刷する場合、定着ローラ12の補正量が自動的に大きくなるので、秤量の大きさに関係なく、2つのローラ間でのトルクの受け渡しを低減できる。したがって、2つのローラ間のトルクの受け渡しによる画質の低下や色ずれを抑制することができる。
【0086】
また、本実施例では、記録紙53の搬送を例に説明したが、2つのローラに被搬送媒体が跨る、ガラスシート、鉄板等の搬送装置又は搬送方法に好適に適用できる。
【実施例2】
【0087】
実施例1では、二次転ローラ18に作用するトルクをトルクセンサ67により検出し、二次転ローラ18と定着ローラ12の間で受け渡されるトルク偏差Tcがゼロになるように、定着ローラ12の回転速度を制御した。本実施例では、中転ローラ20に作用するトルクをトルクセンサ67により検出して、定着ローラ12の回転速度を制御する画像形成装置100について説明する。なお、ハードウェアブロック図は省略する。
【0088】
図9は、中間転写ベルト14と定着装置19の概略構成図の一例を示す。なお、図9において図2と同一部の説明は省略する。中転ローラ20は、中転モータ61の回転力により回転駆動される。中転モータ61には中転ローラ20の回転速度を検出するための中転エンコーダ88が配置されている。中転エンコーダ88は、単位時間当たりにセンサを通過するスリット数から中転ローラ20の回転速度を検出し中転モータ制御部71Cに出力する。
【0089】
二次転ローラ18と中転ローラ20は、中間転写ベルト14を介して相互に負荷が作用するので、二次転モータ64と定着ローラ12に記録紙53が跨り、2つのローラ間でトルク偏差Tcが受け渡される場合、二次転ローラ18だけでなく中転ローラ20にもトルク偏差Tcと同程度のトルクの受け渡しが作用する。したがって、中転ローラ20に作用するトルクをトルクセンサ67で検出して、トルク値の平均トルクTavと、二次転ローラ18と定着ローラ12に記録紙53が跨った際のトルクとのトルク偏差Tcがゼロになるように、定着ローラ12の回転速度を制御することで、実施例1と同様の効果が得られる。
【0090】
図10は、中転モータの制御ブロック図の一例を示す。図10において図7(a)と同一部の説明は省略する。図10では、二次転モータ制御コントローラ74の替わりに中転モータ制御コントローラ87が、二次転モータ64の替わりに中転モータ61が、制御ブロック図に配置されている。トルクセンサ67は、二次転ローラ18に作用するトルクを検出したトルクセンサ67と同じものとしたが、中転ローラ20に作用するトルク範囲等に応じて適宜、設計できる。
【0091】
定着モータ制御コントローラ75は、定着ローラ12の目標速度から現時刻の定着ローラ12の回転速度を減算する(速度偏差)。トルク制御部76は、現時刻とほぼ同時刻の中転ローラ20に作用する実測トルクT'をトルクセンサ67から取得し、平均トルクTavから減算してトルク偏差Tcを算出する。定着モータ制御コントローラ75は速度偏差に応じた回転速度の操作量を、トルク制御部76はトルク偏差Tcに応じた補正量に対応する操作量をそれぞれ算出する。そして、定着モータ制御部71Bは、2つの操作量を加算した速度指示を、モータ駆動信号生成部72Bに入力する。この制御により、定着モータ制御部71Bは、トルク偏差Tc=0とすることができる。
【0092】
図11は、本実施例の画像形成装置100が定着ローラ12の回転速度を制御する手順を示すフローチャート図の一例である。図11では、主に図8と異なるステップを説明する。
【0093】
メイン制御部78は、中転モータ制御コントローラ87と、定着モータ制御コントローラ75に、駆動指令を送信する。当然ながら、メイン制御部78は二次転モータ制御コントローラ74にも駆動指令を送信する。
【0094】
駆動指令を受けると、まず、中転モータ制御コントローラ87は中転モータ61の速度制御を開始する(S11)。
【0095】
次に、定着モータ制御コントローラ75が、定着モータ66の回転速度の制御を開始する(S20)。トルク制御部76は、トルクセンサ67が検出するトルク値の取得を開始する。
【0096】
次に、トルク制御部76は、二次転ローラ18に記録紙53が突入したか否かを判定する(S30)。記録紙53が二次転ローラ18に突入したか否かを判定する方法は、実施例1と同様である。
【0097】
トルク制御部76は、二次転ローラ18に記録紙53が突入したと判定した場合(S30のYes)、トルクセンサ67が検出するトルク値から平均トルクTavを算出する(S40)。上記のように、トルク制御部76は、二次転ローラ18に記録紙53が突入してから「0.1秒」程度のトルク値の平均を算出する。
【0098】
平均トルクTavを取得すると、トルク制御部76は、図10のトルク制御部76への入力に、算出した平均トルクTavを設定する(S50)。
【0099】
そして、トルク制御部76は、定着モータ66の回転速度を、トルク偏差Tcにより補正することを開始する(S60)。
ついで、トルク制御部76は、定着ローラ12に記録紙53が突入したか否かを判定する(S70)。トルク制御部76は、定着ローラ12に記録紙53が突入したと判定した場合(S70のYes)、トルクセンサ67が検出する実測トルクT'の取得を一時的に中断する(S80)。つぎに、トルク制御部76は、トルクセンサ67が検出する実測トルクT'の取得を再開する(S90)。以降、トルク制御部76は、平均トルクTavから実測トルクT'を減じたトルク偏差Tcに応じて、回転速度の補正量を算出する。こうすることで、式(3)(4)でTc=0となるように、定着モータ66の回転速度を制御することができる。
【0100】
時間が経過すると、記録紙53の全体が二次転ローラ18を通過し(S100)、さらに、記録紙53の全体が定着ローラ12を通過する(S110)。
【0101】
次に、定着モータ制御部71Bと中転モータ制御部71Cは、メイン制御部78から定着ローラ12と中転ローラ20の停止要求を受信したか否かを判定する(S121)。
【0102】
メイン制御部78から定着ローラ12と中転ローラ20の停止要求を受信しない場合(S121のNo)、定着モータ制御部71Bと中転モータ制御部71Cは、ステップS30からの処理を繰り返す。すなわち、2枚目以降の記録紙53への印刷を繰り返す。
【0103】
メイン制御部78から定着ローラ12と中転ローラ20の停止要求を受信した場合(S121のYes)、定着モータ制御部71Bと中転モータ制御部71Cは、制御を終了する(S131)。これにより、定着ローラ12と中転ローラ20は停止する。
【0104】
本実施例の画像形成装置100は、二次転ローラ18と定着ローラ12の間で受け渡たされるトルク偏差Tcを、中転ローラ20に作用するトルクから算出し、トルク偏差Tcがゼロになるように定着モータ66の回転速度を補正することができる。したがって、2つのローラ間のトルクの受け渡しによる画質の低下や色ずれを抑制することができる。
【実施例3】
【0105】
実施例1では、二次転ローラ18よりも下流の定着ローラ12と二次転ローラ18の間のトルク偏差Tcの受け渡しについて説明したが、記録紙53は二次転ローラ18と上流のローラ(例えば、レジストローラ33)との間でも跨る可能性がある。
【0106】
図12は、二次転写部50とレジストローラ33の概略構成図の一例を示す。なお、図12において図3と同一部の説明は省略する。レジストローラ33と二次転ローラ18との間に記録紙53が跨れば、レジストローラ33と二次転ローラ18の回転速度(正確には外周部の速度)の差により、レジストローラ33と二次転ローラ18の間でトルクの受け渡しが発生する可能性がある。したがって、このような場合も、トルクの受け渡しがゼロになるように、上流のレジストローラ33の回転速度を制御することが好ましい。この場合、トルクの受け渡しがゼロになるように、二次転ローラ18の回転速度を制御することは、中転モータ61の回転速度の制御や、レジストローラ33から記録紙53の搬送を開始するタイミングの変更をもたらすため好ましくない。しかし、本実施例は、トルクの受け渡しがゼロになるように、二次転モータ64の回転速度を制御する可能性を排除するものではない。
【0107】
図示するように、レジストローラ33は、レジストモータ94の回転力により回転駆動される。図では、レジストローラ33の回転軸と同軸にレジストモータ94が接続されている。なお、動力の伝達方法は一例である。また、レジストモータ94にはレジストローラ33の回転速度を検出するためのレジストエンコーダ93が配置されている。レジストエンコーダ93は、単位時間当たりにセンサを通過するスリット数からレジストモータ94(レジストローラ33)の回転速度を検出し、レジストモータ制御部71Dに出力する。
【0108】
図13は、レジストモータ94の制御ブロック図の一例を示す。図13において図7(a)と同一部には同一の符号を付しその説明は省略する。図13では、トルク制御部76に平均トルクでなく「設定トルク」が入力される点で図7(a)と異なる。また、本実施例では、定着モータ66でなくレジストモータ94が制御対象となるので、レジストモータ制御コントローラ91がレジストローラ33を制御する制御ブロック図になる。
【0109】
ここで、レジストモータ制御部71Dが二次転ローラ18よりも上流のレジストローラ33の回転速度を、トルク偏差Tcの受け渡しがゼロになるように制御する場合、記録紙53が跨った状態が、二次転ローラ18だけが記録紙53を搬送する状態よりも先に生じる。すなわち、トルク制御部76は、二次転ローラ18だけが記録紙53を搬送する際に二次転ローラ18に作用する平均トルクTavを、記録紙53がレジストローラ33と二次転ローラ18とを跨る状態の間は、算出できない。このため、トルク制御部76は、次のような方法で、予め設定トルクをHDDやROM等に記憶しておく。
【0110】
(i)記録紙53の全体がレジストローラ33を通過した後、二次転ローラ18だけが記録紙53を搬送する状態にて、トルクセンサ67が検出するトルク値を、次の記録紙53への印刷時に利用できるよう、トルク制御部76が記憶しておく。トルク制御部76は、例えば、給紙トレー22a〜22d毎に過去10枚程度のトルク値の平均を記憶しておき、該平均を設定トルクとする。同じ給紙トレー22a〜22には同じ記録紙53が載置されることが多いので、秤量毎に設定トルクを記憶しておくことができる。なお、記録紙53の全体がレジストローラ33を通過したことは、例えば、レジストローラ33が記録紙53の搬送を開始してから、用紙サイズと搬送速度により定まる時間が経過することで検出される。
【0111】
(ii)予め、実験的に求めた設定トルクをHDDやROM等に記憶しておく。また、トルク制御部76が、湿度計や温度計から湿度と温度を検出して、記憶している平均トルクを補正してもよい。トルク値に影響する湿度と温度の影響を低減できる。なお、設定トルクは、用紙サイズ毎に求めておいてもよい。
【0112】
レジストモータ制御コントローラ91は、レジストローラ33の目標速度から現時刻のレジストローラ33の回転速度を減算する(速度偏差)。トルク制御部76は、現時刻とほぼ同時刻の二次転ローラ18に作用する実測トルクT'をトルクセンサ67から取得し、設定トルクから減算してトルク偏差Tcを算出する。レジストモータ制御コントローラ91は速度偏差に応じた回転速度の操作量を、トルク制御部76はトルク偏差Tcに応じた補正量に対応する操作量をそれぞれ算出する。そして、レジストモータ制御部71Dは、2つの操作量を加算した速度指示を、不図示のモータ駆動信号生成部に入力する。この制御により、レジストモータ制御部71Dは、トルク偏差Tc=0とすることができる。
【0113】
図14、本実施例の画像形成装置100がレジストローラ33の回転速度を制御する手順を示すフローチャート図の一例である。図14では、図8と同じステップに同じステップ番号を付した。
【0114】
メイン制御部78は、レジストモータ制御コントローラ91と、二次転モータ制御コントローラ74に駆動指令を送信する。
【0115】
駆動指令を受けると、まず、レジストモータ制御コントローラ91はレジストモータの速度制御を開始する(S12)。
【0116】
次に、二次転モータ制御コントローラ74が、二次転モータ64の回転速度の制御を開始する(S21)。
【0117】
ここで、本実施例では、トルク制御部76は、トルクセンサ67が検出するトルク値の取得を開始しない。
【0118】
次に、トルク制御部76は、二次転ローラ18に記録紙53が突入したか否かを判定する(S30)。記録紙53が二次転ローラ18に突入したか否かを判定する方法は、実施例1と同様である。
【0119】
トルク制御部76は、二次転ローラ18に記録紙53が突入したと判定した場合(S30のYes)、トルクセンサ67が検出する実測トルクT'の取得を一時的に中断する(S80)。つぎに、トルク制御部76は、トルクセンサ67が検出する実測トルクT'の取得を再開する(S90)。
【0120】
そして、トルク制御部76は、レジストローラ33の回転速度を、設定トルクと実測トルクT'とのトルク偏差Tcにより補正することを開始する(S60)。以降、トルク制御部76は、設定トルクから実測トルクT'を減じたトルク偏差Tcに応じて、レジストモータ94の回転速度の補正量を算出する。こうすることで、式(3)(4)でTc=0となるように、レジストモータ94の回転速度を制御することができる。
【0121】
時間が経過すると、記録紙53の全体がレジストローラ33を通過し(S101)、さらに、記録紙53の全体が二次転ローラ18を通過する(S100)。
【0122】
次に、二次転モータ制御部71Aとレジストモータ制御部71Dは、メイン制御部78から二次転ローラ18とレジストローラ33の停止要求を受信したか否かを判定する(S122)。
【0123】
メイン制御部78から二次転ローラ18とレジストローラ33の停止要求を受信しない場合(S122のNo)、二次転モータ制御部71Aとレジストモータ制御部71DはステップS30からの処理を繰り返す。すなわち、2枚目以降の記録紙53への印刷を繰り返す。
【0124】
メイン制御部78からレジストローラ33と二次転ローラ18の停止要求を受信した場合(S122のYes)、二次転モータ制御部71Aとレジストモータ制御部71Dは、制御を終了する(S132)。これにより、レジストローラ33と二次転ローラ18は停止する。
【0125】
本実施例の画像形成装置100は、二次転ローラ18と二次転ローラ18よりも上流のローラの間で受け渡たされるトルクがゼロになるように、上流のローラを駆動するモータの回転速度を補正するので、二次転ローラ18と二次転ローラ18より上流のローラとの間で生じる記録紙53の引っ張りや押し込みを防止することができる。
【0126】
なお、レジストローラは、二次転ローラ18の上流側において、記録紙53を狭持する直前のローラの一例に過ぎず、その名称はどのようなローラ(例えば、タイミング制御ローラ等)でもよい。
【実施例4】
【0127】
実施例1〜3では、いずれもトルクセンサ67が検出したトルクT'を利用してTC=0になるように、紙が跨った状態の定着モータ66やレジストモータ94の回転速度を制御していた。
【0128】
しかしながら、二次転モータ64の駆動電流とトルクには一定の関係があることが知られているので、トルクセンサ67を用いることなく、紙が跨った状態の定着モータ66と二次転モータ64においてトルクの授受がなくなるように、定着ローラ12の回転速度を制御することができる。
【0129】
図15は、本実施例の画像形成装置100の制御装置200のハードウェアブロック図の一例を示す。図15において図5と同一部には同一の符号を付しその説明は省略する。
【0130】
図15では、トルクセンサ67がなく、A/Dコンバータ73Aの出力が二次転モータ制御コントローラ74だけでなく、トルク制御部76に接続されている。したがって、抵抗RL1を流れる駆動電流の値がトルク制御部76に出力される。
【0131】
トルク制御部76は、次式により駆動電流をトルクに変換する。
トルク=駆動電流×モータ定数
このトルクは、二次転モータ64の回転速度を制御するためのトルクなので、トルクセンサ67が検出したトルクTやトルクT'と同じ情報を含んでいる。したがって、駆動電流をトルク制御部76に出力することでトルクセンサ67を不要にすることができる。
【0132】
図16は、定着モータ66の制御ブロック図の一例を示す。図16において図7(a)と同一部には同一の符号を付しその説明は省略する。図16では二次転ローラ18に接続されていたトルクセンサ67がないが、駆動電流からトルクを一意に求めることができるので、駆動電流が検出されることとトルクセンサ67がトルクTやトルクT'を検出することは、制御上必要な情報が得られているという意味で同等である。実際にはトルク制御部76がモータ定数を用いて駆動電流をトルクに変換する。以下、トルク制御部76が駆動電流から変換したトルクを算出トルクという。
【0133】
実施例1で説明したように、二次転ローラ18が定着ローラ12に記録紙53を押し込む場合、二次転ローラ18のトルクT'は平均トルクTavよりも大きくなる。これは、二次転ローラ18が定着ローラ12に記録紙53を押し込む場合、駆動電流は二次転ローラ18が単独で記録紙53を搬送する時の平均的な駆動電流よりも大きくなっていることを意味する。したがって、トルクT'が入力される制御系に駆動電流を入力しても、トルク偏差Tcをゼロにするという実施例1と同等の制御が可能である。
【0134】
〔動作手順〕
図17は、本実施例の画像形成装置100が定着ローラ12の回転速度を制御する手順を示すフローチャート図の一例である。図17のフローチャート図は、例えば、画像形成装置100が記録紙53への印刷を開始するとスタートする。
【0135】
メイン制御部78は、二次転モータ制御コントローラ74と、定着モータ制御コントローラ75に、駆動指令を送信する。このとき、メイン制御部78は目標速度を指示してもよいが、目標速度は二次転モータ64と定着モータ66の外周の速度が同じになるように指示される。
【0136】
駆動指令を受けると、まず、二次転モータ制御コントローラ74が二次転モータ64の速度制御を開始する(S10)。
【0137】
次に、定着モータ制御コントローラ75が、定着モータ66の速度制御を開始する(S20)。トルク制御部76は、A/Dコンバータ73Aを介して駆動電流の取得を開始し、モータ定数を掛けて算出トルクを算出する。
【0138】
次に、トルク制御部76は、二次転ローラ18に記録紙53が突入したか否かを判定する(S30)。記録紙53が二次転ローラ18に突入したか否かを判定する方法には、次のような方法がある。判定方法は、実施例1の「(1)トルクセンサ67が検出したトルク値を監視する」以外の方法を使用する。
【0139】
トルク制御部76は、二次転ローラ18に記録紙53が突入したと判定した場合(S30のYes)、算出トルクから平均トルクTavを算出する(S40)。上記のように、トルク制御部76は、二次転ローラ18に記録紙53が突入してから「0.1秒」程度の間のトルク値の平均を算出する。
【0140】
平均トルクTavを取得すると、トルク制御部76は、図15のトルク制御部76への入力に、算出した平均トルクTavを設定する(S50)。
【0141】
そして、トルク制御部76は、定着モータ66の回転速度を、トルク偏差Tcにより補正することを開始する(S60)。定着ローラ12に記録紙53が突入するまで、平均トルクTavと算出トルクはほぼ同程度なので、トルク偏差Tcはゼロである。したがって、トルク偏差Tcによる回転速度の補正は、定着モータ66の回転速度に影響しない。このため、定着ローラ12に記録紙53が突入する前から、定着モータ66の回転速度の制御にトルク偏差Tcによる補正を加えても問題がない。
ついで、トルク制御部76は、定着ローラ12に記録紙53が突入したか否かを判定する(S70)。この判定は、定着ローラ12への記録紙53の突入の直後は駆動電流が不安定になるので、突入の直後の駆動電流を定着ローラ12の回転速度の補正に用いないように処理するための判定である。なお、定着ローラ12に記録紙53が突入したことは、例えば、ステップS30で二次転ローラ18に記録紙53が突入したと判定されてから所定時間が経過したこと、その他、所定のセンサが記録紙53を検知したこと等、により検出される。
【0142】
トルク制御部76は、定着ローラ12に記録紙53が突入したと判定した場合(S70のYes)、駆動電流の取得を一時的に中断する(S81)。トルク制御部76は、例えば、定着ローラ12に記録紙53が突入したと判定するまでに取得した駆動電流から算出した算出トルクをダミーとしてトルク偏差Tcの補正に利用する。すなわち、トルク制御部76は、定着ローラ12に記録紙53が突入したと判定しても、定着ローラ12に記録紙53が突入する前の算出トルクを一時に使用する。なお、「取得を一時的に中断」するとは、取得しても制御に使用しないことを含む。
【0143】
定着ローラ12へ記録紙53が突入したことによる駆動電流(算出トルク)の不安定な変動は短時間で収まるので、駆動電流の取得を中断する「一時的な時間」は、短時間(例えば、10μ秒から数100μ秒程度)とすることができる。
【0144】
つぎに、トルク制御部76は、駆動電流の取得と算出トルクの算出を再開する(S91)。以降、トルク制御部76は、平均トルクTavから算出トルクを減じたトルク偏差Tcに応じて、回転速度の補正量を算出する。こうすることで、式(3)(4)でTc=0となるように、定着モータ66の回転速度を制御することができる。
【0145】
その後、時間が経過すると、記録紙53の全体が二次転ローラ18を通過し(S100)、さらに、記録紙53の全体が定着ローラ12を通過する(S110)。記録紙53の全体が二次転ローラ18を通過して、記録紙53の全体が定着ローラ12を通過する前、定着ローラ12の回転速度は、トルク偏差Tcによる補正を受ける。すなわち、定着モータ制御部71Bは、記録紙53が二次転ローラ18を通過したにも拘わらず、トルク偏差Tcがゼロになるように定着モータ66の回転速度を制御してしまう。
【0146】
しかし、既に記録紙53の全体が二次転ローラ18を通過しているので、定着ローラ12の回転速度が変化しても、二次転写部50による転写に大きな影響はない。このため、記録紙53が二次転ローラ18から通過した後も、定着モータ66の回転速度の制御にトルク偏差Tcによる補正を加えても問題がない。また、こうすることで、複数枚の記録紙53を印刷する間は、ステップS60からトルク偏差Tcによる回転速度の補正を継続でき、フィードバック制御による回転速度を安定しやすくできる。
【0147】
次に、定着モータ制御部71Bと二次転モータ制御部71Aは、メイン制御部78から定着ローラ12と二次転ローラ18の停止要求を受信したか否かを判定する(S120)。メイン制御部78が出力する停止要求は、例えば、記録紙53への印刷が完了したことや用紙詰まりがあったことを意味する。
【0148】
メイン制御部78から定着ローラ12と二次転ローラ18の停止要求を受信しない場合(S120No)、定着モータ制御部71Bと二次転モータ制御部71AはステップS30からの処理を繰り返す。すなわち、2枚目以降の記録紙53への印刷を繰り返す。
【0149】
メイン制御部78から定着ローラ12と二次転ローラ18の停止要求を受信した場合(S120Yes)、定着モータ制御部71Bと二次転モータ制御部71Aは、制御を終了する(S130)。これにより、定着ローラ12と二次転ローラ18は停止する。
【0150】
以上のように、本実施例によれば、トルクセンサ67を用いることなく駆動電流を検出することで、実施例1と同様に、記録紙53の引っ張りや押し込みを防止することができる。
【0151】
〔変形例〕
・変形例1
本実施例では、駆動電流から算出トルクを算出して実施例1のトルクT'の代わりにしたが、駆動電流と算出トルクに比例関係があるため、算出トルクという物理量に変換しなくても同様の制御が可能である。
【0152】
図18は、定着モータ66の制御ブロック図の一例を示す。図18において図16と同一部には同一の符号を付しその説明は省略する。図18では、平均電流と駆動電流がトルク制御部76に入力されている。平均電流は、記録紙53が二次転写ローラのみで搬送され定着ローラ12に到達するまでの駆動電流の平均的な値である。
【0153】
これまで説明したように、定着モータ制御コントローラ75はメイン制御部78から駆動指令又は目標の回転速度を受け付けるので、定着モータ制御コントローラ75にとって目標速度は既知になる。本実施例では、この目標速度になるように、目標トルクと算出トルクからトルク偏差Tcを求め、定着ローラ12の速度を制御したが、平均電流と駆動電流から電流偏差を求め、定着ローラ12の速度を制御しても、電流偏差にかかるゲインが変わるだけで定着モータ制御コントローラ75の制御は変わらない。
【0154】
したがって、算出トルクと平均トルクの代わりに駆動電流と平均電流を用いても、定着モータ制御コントローラ75はトルクの授受がなくなるように定着ローラ12の速度を制御することができる。
【0155】
・変形例2
図19は、定着モータ66の制御ブロック図の変形例の別の一例を示す。図19において図16と同一部には同一の符号を付しその説明は省略する。図19では、平均指示トルクとトルク指示信号がトルク制御部76に入力されている。
【0156】
トルク指示信号は、二次転モータ制御コントローラ74が二次転モータ64に指示する速度指示をトルク値に変換した値である。二次転モータ制御コントローラ74と定着モータ制御コントローラ75とを直接接続するか、又は、メイン制御部を経由して両者を接続する。速度指示からトルク値への変換は二次転モータ制御コントローラ74で行っても、トルク制御部76で行ってもよい。平均指示トルクは、二次転ローラ18が単体で記録紙53を搬送している状態の、トルク指示信号の平均的な値である。
【0157】
トルク指示信号は、二次転ローラ18の回転速度に基づきフィードバック制御された速度指示を反映しているので、二次転ローラ18と定着ローラ12の間で速度に影響するほどトルクの授受がある場合、トルク指示信号も二次転ローラ18の速度に応じて変動する。このため、記録紙53が二次転ローラ18と定着ローラ12に跨っている状態では、平均指示トルクとトルク指示信号の間ではトルク偏差Tcが生じる。
【0158】
実施例1にて説明した場合と同様、二次転ローラ18から定着ローラ12に押し込み力が作用した場合、二次転ローラ18には右向きの負のトルクTcが反作用するので、トルク指示信号は、二次転ローラ18が単体で記録紙53を搬送している場合よりも大きくなる。逆に、定着ローラ12が二次転ローラ18から記録紙53を引っ張る場合、二次転ローラ18には左向きの正のトルクTcが反作用するので、トルク指示信号は、二次転ローラ18が単体で記録紙53を搬送している場合よりも小さくなる。すなわち、算出トルク又は駆動電流からトルク偏差Tcを求めても、トルク指示信号からトルク偏差Tcを求めても、これら2つのトルクTcは同等の値として扱うことができる。
【0159】
このため、実施例1や本実施例の図16、図18と同様、平均指示トルクとトルク指示信号のトルク偏差Tcに応じて、定着モータ制御コントローラ75が定着ローラ12の速度を制御することで、二次転ローラ18と定着ローラ12の間のトルクの授受をなくすことができる。
【0160】
図20は、図18の画像形成装置100が定着ローラ12の回転速度を制御する手順を示すフローチャート図の一例である。
【0161】
メイン制御部78は、二次転モータ制御コントローラ74と、定着モータ制御コントローラ75に、駆動指令を送信する。このとき、メイン制御部78は目標速度を指示してもよいが、目標速度は二次転モータ64と定着モータ66の外周の速度が同じになるように指示される。
【0162】
駆動指令を受けると、まず、二次転モータ制御コントローラ74が二次転モータ64の速度制御を開始する(S10)。
【0163】
次に、定着モータ制御コントローラ75が、定着モータ66の速度制御を開始する(S20)。トルク制御部76は、二次転モータ制御コントローラ74が二次転モータ64に指示するトルク指示信号を取得する。
【0164】
次に、トルク制御部76は、二次転ローラ18に記録紙53が突入したか否かを判定する(S30)。記録紙53が二次転ローラ18に突入したか否かを判定する方法には、次のような方法がある。判定方法は、実施例1の「(1)トルクセンサ67が検出したトルク値を監視する」以外の方法を使用する。
【0165】
トルク制御部76は、二次転ローラ18に記録紙53が突入したと判定した場合(S30のYes)、トルク指示信号から平均指示トルクを算出する(S40)。トルク制御部76は、二次転ローラ18に記録紙53が突入してから「0.1秒」程度の間のトルク指示信号の平均である平均指示トルクを算出する。
【0166】
平均指示トルクを取得すると、トルク制御部76は、図15のトルク制御部76への入力に、算出した平均指示トルクを設定する(S50)。
【0167】
そして、トルク制御部76は、定着モータ66の回転速度を、トルク偏差Tcにより補正することを開始する(S60)。定着ローラ12に記録紙53が突入するまで、平均指示トルクとトルク指示信号はほぼ同程度なので、トルク偏差Tcはゼロである。したがって、トルク偏差Tcによる回転速度の補正は、定着モータ66の回転速度に影響しない。このため、定着ローラ12に記録紙53が突入する前から、定着モータ66の回転速度の制御にトルク偏差Tcによる補正を加えても問題がない。
ついで、トルク制御部76は、定着ローラ12に記録紙53が突入したか否かを判定する(S70)。この判定は、定着ローラ12への記録紙53の突入の直後はトルク指示信号が不安定になるので、突入の直後のトルク指示信号を定着ローラ12の回転速度の補正に用いないように処理するための判定である。なお、定着ローラ12に記録紙53が突入したことは、例えば、ステップS30で二次転ローラ18に記録紙53が突入したと判定されてから所定時間が経過したこと、その他、所定のセンサが記録紙53を検知したこと等、により検出される。
【0168】
トルク制御部76は、定着ローラ12に記録紙53が突入したと判定した場合(S70のYes)、トルク指示信号の取得を一時的に中断する(S82)。トルク制御部76は、例えば、定着ローラ12に記録紙53が突入したと判定するまでに取得したトルク指示信号をダミーとしてトルク偏差Tcの補正に利用する。すなわち、トルク制御部76は、定着ローラ12に記録紙53が突入したと判定しても、定着ローラ12に記録紙53が突入する前のトルク指示を一時的に使用する。なお、「取得を一時的に中断」するとは、取得しても制御に使用しないことを含む。
【0169】
定着ローラ12へ記録紙53が突入したことによる駆動電流(算出トルク)の不安定な変動は短時間で収まるので、トルク指示信号の取得を中断する「一時的な時間」は、短時間(例えば、10μ秒から数100μ秒程度)とすることができる。
【0170】
つぎに、トルク制御部76は、トルク指示信号の取得を再開する(S92)。以降、トルク制御部76は、平均指示トルクからトルク指示信号を減じたトルク偏差Tcに応じて、回転速度の補正量を算出する。こうすることで、式(3)(4)でTc=0となるように、定着モータ66の回転速度を制御することができる。以降の処理は図17と同様であるので省略する。
【0171】
以上のように、本変形例によれば、トルクセンサ67を用いることなくトルク指示信号を検出することで、実施例1と同様に、記録紙53の引っ張りや押し込みを防止することができる。
【実施例5】
【0172】
実施例4の制御は、中転ローラに配置されていたトルクセンサ67をなくす場合にも適用できる。
【0173】
図21(a)〜(c)は、本実施例の画像形成装置100の制御装置200の制御ブロック図の一例を示す。図21において図10と同一部には同一の符号を付しその説明は省略する。
【0174】
図21(a)では、トルクセンサ67がなく、平均トルクと算出トルクがトルク制御に入力されている。すなわち、トルク制御部76は、トルクセンサ67が検出したトルク値でなく、平均トルクと、駆動電流から算出された算出トルクとのトルク偏差Tcを定着モータ制御コントローラ75に提供する。この算出トルクが、トルクセンサ67が検出したトルク値と同等であることは実施例4で説明したとおりである。定着モータ制御コントローラ75は、トルク偏差Tcがゼロになるように、定着モータ66の回転速度を制御することができる。
【0175】
なお、算出トルクは、トルク制御部76が中転モータの駆動電流を取得してモータ定数を掛けた値である。平均トルクは、二次転ローラ18が単体で記録紙53を搬送している状態の、算出トルクの平均値である。
【0176】
図21(b)では、平均電流と駆動電流がトルク制御部76に入力されている。トルク制御部76は、トルクセンサ67が検出したトルク値でなく、平均電流と駆動電流から電流偏差を求め、定着モータ制御コントローラ75に提供する。定着モータ制御コントローラ75は、電流偏差がゼロになるように、定着モータ66の回転速度を制御することができる。
【0177】
なお、この平均電流は、二次転ローラ18が単体で記録紙53を搬送している状態にある間、トルク制御部76が中転モータの駆動電流を取得して算出した駆動電流の平均値である。
【0178】
図21(c)では、平均指示トルクとトルク指示信号がトルク制御部76に入力されている。トルク制御部76は、トルクセンサ67が検出したトルク値でなく、平均指示トルクとトルク指示信号からトルク偏差Tcを求め、定着モータ制御コントローラ75に提供する。定着モータ制御コントローラ75は、トルク偏差Tcがゼロになるように、定着モータ66の回転速度を制御することができる。
【0179】
なお、トルク指示信号は、中転モータ制御コントローラが中転モータに指示する速度指示をトルク値に変換した値である。平均指示トルクは、二次転ローラ18が単体で記録紙53を搬送している状態の、トルク指示信号の平均的な値である。
【0180】
本実施例の画像形成装置100は、二次転ローラ18と定着ローラ12の間で受け渡たされるトルク偏差Tcを、トルクセンサ67を用いることなく、算出トルク、駆動電流、又は、トルク指示信号から求め、トルク偏差Tc又は電流偏差がゼロになるように定着モータ66の回転速度を補正することができる。
【実施例6】
【0181】
実施例4のようにトルクセンサ67を用いない制御は、レジストローラの回転速度の制御にも適用できる。
【0182】
図22(a)〜(c)は、本実施例の画像形成装置100の制御装置200の制御ブロック図の一例を示す。図22において図13と同一部には同一の符号を付しその説明は省略する。
【0183】
図22(a)では、トルクセンサ67がなく、平均トルクと算出トルクがトルク制御部76に入力されている。すなわち、トルク制御部76は、トルクセンサ67が検出したトルク値でなく、平均トルクと駆動電流から算出された算出トルクとのトルク偏差Tcをレジストモータ制御コントローラ91に提供する。レジストモータ制御コントローラ91は、トルク偏差Tcがゼロになるように、レジストモータ94の回転速度を制御することができる。なお、平均トルクと算出トルクは図16に示したものと同じである。
【0184】
図22(b)では、平均電流と駆動電流がトルク制御部76に入力されている。トルク制御部76は、トルクセンサ67が検出したトルク値でなく、平均電流と駆動電流から駆動電流から電流偏差を求め、レジストモータ制御コントローラ91に提供する。レジストモータ制御コントローラ91は、電流偏差がゼロになるように、レジストモータ94の回転速度を制御することができる。なお、平均電流と駆動電流は図18に示したものと同じである。
【0185】
図22(c)では、平均指示トルクとトルク指示信号がトルク制御部76に入力されている。トルク制御部76は、トルクセンサ67が検出したトルク値でなく、平均指示トルクとトルク指示信号からトルク偏差Tcを求め、レジストモータ制御コントローラ91に提供する。レジストモータ制御コントローラ91は、トルク偏差Tcがゼロになるように、レジストモータ94の回転速度を制御することができる。なお、平均指示トルクとトルク指示信号は図19に示したものと同じである。
【0186】
以上説明したように、本実施例の画像形成装置100は、二次転ローラ18とレジストローラの間で受け渡たされるトルク偏差Tcを、トルクセンサ67を用いることなく、算出トルク、駆動電流、又は、トルク指示信号から求め、トルク偏差Tc又は電流偏差がゼロになるようにレジストモータ94の回転速度を補正することができる。
【符号の説明】
【0187】
12 定着モータ
14 中間転写ベルト
15 テンションローラ
17 斥力ローラ
18 二次転ローラ
20 中転ローラ
33 レジストローラ
50 二次転写部
53 記録紙
61 中転モータ
63 二次転エンコーダ
64 二次転モータ
65 定着エンコーダ
66 定着モータ
67 トルクセンサ
71A 二次転モータ制御部
71B 定着モータ制御部
71C 中転モータ制御部
71D レジストモータ制御部
74 二次転モータ制御コントローラ
75 定着モータ制御コントローラ
76 トルク制御部
87 中転モータ制御コントローラ
91 レジストモータ制御コントローラ
93 レジストエンコーダ
94 レジストモータ
100 画像形成装置
200 制御装置
【先行技術文献】
【特許文献】
【0188】
【特許文献1】特開2008−158076号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状の被搬送媒体を回転方向に搬送する第1の搬送回転手段と、
前記第1の搬送回転手段の下流又は上流に配置された、被搬送媒体を回転方向に搬送する第2の搬送回転手段と、
前記第1の搬送回転手段を回転駆動する第1の回転体駆動手段と、
前記第2の搬送用回手段を回転駆動する第2の回転体駆動手段と、
前記第1の搬送回転手段の回転速度を検出する第1の回転速度検出手段と、
前記第2の搬送回転手段の回転速度を検出する第2の回転速度検出手段と、
前記第1の回転体駆動手段の回転速度を第1の目標速度に制御する第1の速度制御手段と、
前記第2の回転体駆動手段の回転速度を第2の目標速度に制御する第2の速度制御手段と、
前記第1の搬送回転手段に作用するトルクのトルク情報を取得するトルク情報取得手段と、を有し、
前記第2の速度制御手段は、被搬送媒体が前記第1の搬送回転手段にのみ搬送される際に前記トルク情報取得手段が取得したトルク情報と、前記第1の搬送回転手段と前記第2の搬送回転手段の両方に搬送される際に前記トルク情報取得手段が取得したトルク情報とを比較した比較結果に応じて、前記第2の回転体駆動手段の回転速度を制御する、
ことを特徴とする搬送装置。
【請求項2】
前記トルク情報取得手段は、前記第1の回転体駆動手段の駆動電流をトルク情報とする、ことを特徴とする請求項1記載の搬送装置。
【請求項3】
前記トルク情報取得手段は、前記第1の回転体駆動手段の駆動電流に所定の定数を乗じた値をトルク情報とする、ことを特徴とする請求項1記載の搬送装置。
【請求項4】
前記トルク情報取得手段は、前記第1の速度制御手段が前記第1の回転体駆動手段に指示するトルク指示信号をトルク情報とする、ことを特徴とする請求項1記載の搬送装置。
【請求項5】
前記トルク情報取得手段は、前記第1の搬送回転手段に作用するトルクを検出するトルクセンサの検出値をトルク情報とする、ことを特徴とする請求項1記載の搬送装置。
【請求項6】
被搬送媒体が前記第1の搬送回転手段にのみ搬送される際に前記トルク情報取得手段が取得したトルク情報と、前記第1の搬送回転手段と前記第2の搬送回転手段の両方に搬送される際に前記トルク情報取得手段が取得したトルク情報とを比較して、被搬送媒体を介して前記第1の搬送回転手段と前記第2の搬送回転手段の間で受け渡される授受トルクを推定するトルク推定手段、を有することを特徴とする請求項2〜5いずれか1項記載の搬送装置。
【請求項7】
前記トルク推定手段は、
被搬送媒体が前記第1の搬送回転手段のみにより搬送されている間に、前記トルク情報取得手段が取得した複数個のトルク情報の平均値と、前記第1の搬送回転手段と前記第2の搬送回転手段の両方に搬送される際に前記トルク情報取得手段が取得したトルク情報とを比較して、前記授受トルクを推定する、ことを特徴とする請求項6記載の搬送装置。
【請求項8】
前記トルク推定手段は、
被搬送媒体が前記第1の搬送回転手段のみにより搬送されている状態から、前記第2の搬送回転手段に被搬送媒体が突入した直後から、所定時間、
前記第2の搬送回転手段に被搬送媒体が突入する前に前記トルク情報取得手段が取得したトルク情報と、被搬送媒体が前記第1の搬送回転手段のみにより搬送されている間に前記トルク情報取得手段が取得したトルク情報とを比較して、前記授受トルクを推定する、ことを特徴とする請求項6記載の搬送装置。
【請求項9】
前記トルク推定手段は、
被搬送媒体が前記第1の搬送回転手段に突入した後、前記第2の搬送回転手段に突入する前から前記授受トルクの推定を開始して、
前記第2の速度制御手段は、前記授受トルクに応じて前記第2の回転体駆動手段の回転速度を制御する、
ことを特徴とする請求項6項記載の搬送装置。
【請求項10】
前記トルク推定手段は、
被搬送媒体の末尾が前記第1の搬送回転手段を通過した後も、前記授受トルクの推定を継続し、
前記第2の速度制御手段は、前記授受トルクに応じて前記第2の回転体駆動手段の回転速度を制御する、
ことを特徴とする請求項6項記載の搬送装置。
【請求項11】
前記トルク推定手段は、
被搬送媒体が前記第1の搬送回転手段のみにより搬送されている間のトルク情報を、前記トルク情報取得手段により取得することなく、予め記憶手段に記憶しておく、
ことを特徴とする請求項6記載の搬送装置。
【請求項12】
前記第1の搬送回転手段は、被搬送媒体を直接搬送する回転体、又は、前記第2の搬送回転手段と被搬送媒体を介してトルクを授受する回転体から、無端ベルトを介してトルク干渉を受ける回転体である、
ことを特徴とする請求項1〜11いずれか1項記載の搬送装置。
【請求項13】
前記第1の搬送回転手段は二次転ローラであり、前記第2の搬送回転手段は定着ローラである、
ことを特徴とする請求項1〜12いずれか1項記載の搬送装置。
【請求項14】
前記第1の搬送回転手段は中転ローラであり、前記第2の搬送回転手段は定着ローラである、
ことを特徴とする請求項1〜12いずれか1項記載の搬送装置。
【請求項15】
前記第1の搬送回転手段は二次転ローラであり、前記第2の搬送回転手段はレジストローラである、
ことを特徴とする請求項1〜12いずれか1項記載の搬送装置。
【請求項16】
請求項1〜15いずれか1項記載の搬送装置と
被搬送媒体に画像を形成する画像形成手段と、
を有する画像形成装置。
【請求項17】
シート状の被搬送媒体を回転方向に搬送する第1の搬送回転手段と、
前記第1の搬送回転手段の下流又は上流に配置された、被搬送媒体を回転方向に搬送する第2の搬送回転手段と、
前記第1の搬送回転手段を回転駆動する第1の回転体駆動手段と、
前記第2の搬送用回手段を回転駆動する第2の回転体駆動手段と、
前記第1の回転体駆動手段の回転速度を検出する第1の回転速度検出手段と、
前記第2の回転体駆動手段の回転速度を検出する第2の回転速度検出手段と、
前記第1の回転体駆動手段の回転速度を第1の目標速度に制御する第1の速度制御手段と、
前記第2の回転体駆動手段の回転速度を第2の目標速度に制御する第2の速度制御手段と、を有する搬送装置の被搬送媒体搬送方法であって、
トルク情報取得手段が、前記第1の搬送回転手段に作用するトルクのトルク情報を取得するステップと、
前記第2の速度制御手段が、被搬送媒体が前記第1の搬送回転手段にのみ搬送される際に前記トルク情報取得手段が取得したトルク情報と、前記第1の搬送回転手段と前記第2の搬送回転手段の両方に搬送される際に前記トルク情報取得手段が取得したトルク情報とを比較した比較結果に応じて、前記第2の回転体駆動手段の回転速度を制御するステップと、
を有することを特徴とする被搬送媒体搬送方法。
【請求項18】
シート状の被搬送媒体を回転方向に搬送する第1の搬送回転手段と、
前記第1の搬送回転手段の下流又は上流に配置された、被搬送媒体を回転方向に搬送する第2の搬送回転手段と、
前記第1の搬送回転手段を回転駆動する第1の回転体駆動手段と、
前記第2の搬送用回手段を回転駆動する第2の回転体駆動手段と、
前記第1の回転体駆動手段の回転速度を検出する第1の回転速度検出手段と、
前記第2の回転体駆動手段の回転速度を検出する第2の回転速度検出手段と、
前記第1の回転体駆動手段の回転速度を第1の目標速度に制御する第1の速度制御手段と、
前記第2の回転体駆動手段の回転速度を第2の目標速度に制御する第2の速度制御手段と、を有する搬送装置のコンピュータに、
前記第1の搬送回転手段に作用するトルクのトルク情報を取得するステップと、
被搬送媒体が前記第1の搬送回転手段にのみ搬送される際に前記トルク情報取得手段が取得したトルク情報と、前記第1の搬送回転手段と前記第2の搬送回転手段の両方に搬送される際に前記トルク情報取得手段が取得したトルク情報とを比較した比較結果に応じて、前記第2の回転体駆動手段の回転速度を制御するステップと、
実行させるプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2011−81347(P2011−81347A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−169709(P2010−169709)
【出願日】平成22年7月28日(2010.7.28)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】