説明

搬送装置および液体噴射装置

【課題】吸引孔に被搬送物の裏面を吸引させながら搬送する搬送装置および液体噴射装置において排気効率を改善する。
【解決手段】円筒形の周面541、および、周面541に開口し、減圧されて外気を吸引する複数のローラ吸引孔542を有し、複数のローラ吸引孔542により被記録媒体400の裏面402を吸引して搬送する搬送ローラ540と、搬送ローラ540の複数のローラ吸引孔542のうち、被記録媒体400を吸引していない領域の少なくとも一部のローラ吸引孔542を封止する搬送側封止部材640とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送装置および液体噴射装置に関する。本発明は、特に、被搬送物を吸引して搬送する搬送ローラを有する搬送装置および液体噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンタにおいて、被記録材に傷が付くことを防止することが望まれている。例えば、特許文献1には、インクジェット記録ヘッドの下流側に位置する排紙駆動ローラが負圧を発生させるファン装置に接続され、排紙駆動ローラの外周面に穿設された吸引孔に被記録材の裏面を吸引させながら排紙駆動ローラを回転駆動させるインクジェットプリンタが記載されている(特許文献1)。
【特許文献1】特開2003−191552号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1に記載されたインクジェットプリンタにおいても、被記録材が搬送従動ローラと搬送駆動ローラとに挟まれて搬送されている。その結果、記録面にローラに挟まれてできた圧痕等の傷が付くことがある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するために、本発明の第1の形態においては、円筒形の周面、および、周面に開口し、減圧されて外気を吸引する複数のローラ吸引孔を有し、複数のローラ吸引孔により被搬送物の裏面を吸引して搬送する搬送ローラと、搬送ローラの複数のローラ吸引孔のうち、被搬送物を吸引していない領域の少なくとも一部のローラ吸引孔を封止する搬送側封止部材とを備える搬送装置が提供される。これにより、被搬送物の表面における傷の発生を抑制しつつ、強い力で被搬送物を確実に搬送することができる。
【0005】
上記搬送装置において、搬送ローラよりも被搬送物の搬送方向の下流側に配され、被搬送物を裏面から支持する平坦面を有するプラテンをさらに備え、搬送ローラにおける被搬送物の裏面に対する摩擦力は、プラテンにおける被搬送物の裏面に対する摩擦力と比較して大きくてもよい。これにより、被搬送物を確実に搬送でき、また、搬送経路中において、プラテンの平坦面に垂直な方向における位置を確実に保持できる。
【0006】
上記搬送装置において、プラテンは、平坦面に開口し、減圧されて外気を吸引する複数のプラテン吸引孔を有してもよい。これにより、搬送経路中において、プラテンの平坦面に垂直な方向における位置を、より確実に保持できる。
【0007】
上記搬送装置において、搬送ローラの周面の静摩擦係数は、プラテンの平坦面の動摩擦係数と比較して大きくてもよい。これにより、搬送ローラにおける被搬送物の裏面に対する摩擦力をプラテンにおける被搬送物の裏面に対する摩擦力よりも大きくすることができ、被搬送物を確実に搬送できる。
【0008】
上記搬送装置において、搬送ローラにおける被搬送物を吸引する吸引力は、プラテンにおける被搬送物を吸引する吸引力と比較して大きくてもよい。これにより、搬送ローラにおける被搬送物の裏面に対する摩擦力をプラテンにおける被搬送物の裏面に対する摩擦力よりも大きくすることができ、被搬送物を確実に搬送できる。
【0009】
上記搬送装置において、搬送ローラにおいて被搬送物に封止される複数のローラ吸引孔の面積の合計は、プラテンにおいて被搬送物に封止される複数のプラテン吸引孔の面積の合計と比較して大きくてもよい。これにより、搬送ローラにおける被搬送物の裏面に対する摩擦力をプラテンにおける被搬送物の裏面に対する摩擦力よりも大きくすることができ、被搬送物を確実に搬送できる。
【0010】
上記搬送装置において、プラテンよりも被搬送物の搬送方向の下流側に配され、円筒形の周面、および、周面に開口し、減圧されて外気を吸引する複数のローラ吸引孔を有し、複数のローラ吸引孔により被搬送物の裏面を吸引する排出ローラと、排出ローラの複数のローラ吸引孔のうち、被搬送物を吸引していない領域の少なくとも一部のローラ吸引孔を封止する排出側封止部材とをさらに備える請求項2に記載の搬送装置。これにより、排出側における被搬送物表面の傷の発生を抑制することができ、被搬送物の表面における傷の発生をより抑制しながら、被搬送物を搬送できる。
【0011】
上記搬送装置において、被搬送物は自重により排出されてもよい。これにより、排出側における被搬送物表面の傷の発生を抑制することができ、被搬送物の表面における傷の発生をより抑制しながら、被搬送物を搬送できる。
【0012】
上記搬送装置において、搬送ローラの周面に被搬送物が巻き付けられる巻き付け角が180度以上であってもよい。これにより、搬送ローラに被搬送物をより確実に吸引させることができ、被搬送物を確実に搬送できる。
【0013】
本発明の第2の形態においては、被記録媒体の表面に対して液体を噴射する液体噴射ヘッドと、円筒形の周面、および、周面に開口して減圧源に連通した複数のローラ吸引孔を有し、複数のローラ吸引孔により被噴射媒体の裏面を吸引して液体噴射ヘッドに対向する位置に搬送する搬送ローラと、搬送ローラの複数のローラ吸引孔のうち、被噴射媒体を吸引していない領域の少なくとも一部のローラ吸引孔を封止する搬送側封止部材とを備える液体噴射装置を提供する。これにより、搬送側封止部材がない場合と比較して少ない動力でも被噴射媒体の記録面に傷が発生することを抑制しながら、被噴射媒体を搬送できる。
【0014】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではなく、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではなく、また実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【実施例1】
【0016】
図1は、本実施形態に係るインクジェット式記録装置100の斜視図である。インクジェット式記録装置100は、装置本体110と、装置本体110を支持する本体支持部120とを備える。装置本体110の上部には給送部130が配され、装置本体110の下部には排出部160が配されている。装置本体110および給送部130はそれぞれ、本体カバー112およびロールカバー132により覆われる。インクジェット式記録装置100はさらに、ユーザにより操作される操作パネル180を有する。
【0017】
本体支持部120は、左右に一対配され装置本体110を下側から支持する支柱部材122を有する。支柱部材122の下方には、各々、水平な板状の基台部材124を有する。基台部材124の下方には、インクジェット式記録装置100を移動させるためのキャスタ128、および、インクジェット式記録装置100を固定するためのジャッキ127が配される。さらに一対の支柱部材122の間には横木部材126が渡されている。
【0018】
図2は、装置本体110の内部を模式的に示す断面図である。インクジェット式記録装置100は、被記録媒体400を給送する給送部130と、給送部130により給送された被記録媒体400に記録をする記録部140と、記録部140により記録された被記録媒体400を排出する排出部160と、インクジェット式記録装置100全体を制御する制御部1000とを備える。
【0019】
給送部130は、ロール状に巻かれた被記録媒体400を保持する給送ローラ230と、給送ローラ230を回転駆動する給送モータ134と、給送ローラ230を保持する給送ローラ支持部136とを有する。給送ローラ230は、ロール状の被記録媒体400に結合されて一体的に回転する給送ローラスピンドル232と、被記録媒体400の幅方向の両端に配され、給送ローラスピンドル232より大径の給送ローラフランジ234と、給送ローラスピンドル232に回転に対する回転負荷を与える給送ローラ負荷部236とを有する。給送ローラ負荷部236は、給送ローラスピンドル232に回転に対する回転負荷を与えることにより、制御部1000からの要求量以上に被記録媒体400が給送されることを防止する。なお、被記録媒体400は、被搬送物および被噴射媒体の一例であり、被記録媒体400としては、紙の他、熱収縮フィルムのような樹脂フィルム、テキスタイル製品等が用いられる。
【0020】
記録部140は、被記録媒体400の表面401に対してインクを噴射するインク噴射部240と、被記録媒体400をインク噴射部240に対向する位置まで搬送する搬送部340とを備える。インク噴射部240は、記録ヘッド246と、当該記録ヘッド246を支持するキャリッジ245と、キャリッジ245を支持する案内部241と、記録ヘッド246にインクを供給するインクカートリッジ248とを備える。案内部241は被記録媒体400の幅方向に延伸してキャリッジ245を支持するガイドレール242と、ガイドレール242の長手方向に平行に掛け渡されたタイミングベルト244と、タイミングベルト244を回転駆動するキャリッジモータ243とを有する。キャリッジ245は、タイミングベルト244の一部を把持している。この構成により、キャリッジモータ243がタイミングベルト244を回転駆動することにより、キャリッジ245が記録ヘッド246と共にガイドレール242の長手方向に沿って往復移動する。
【0021】
なお、インクは被記録媒体400に噴射される液体の一例であり、顔料インク、水性インク、紫外線硬化インク等が用いられる。インクが紫外線硬化インク含む場合には、キャリッジ245は紫外線照射装置を備えてもよい。また、本実施形態においては、インクカートリッジ248は装置本体110に着脱可能に固定されておりキャリッジ245と一緒に往復移動することはないが、インクカートリッジ248がキャリッジ245に搭載されキャリッジ245と供に往復移動する態様であってもよい。
【0022】
搬送部340は、被記録媒体400の裏面402を吸引してインク噴射部240に対向する位置まで搬送する搬送側駆動部440と、被記録媒体400の表面401に当接して被記録媒体400に連れ回される搬送従動ローラ342と、記録ヘッド246に対向して配されたプラテン740を有する。プラテン740は被記録媒体400の搬送方向Mに沿った平坦面を有することにより、当該平坦面において被記録媒体400を裏面402から支持する。これにより、被記録媒体400はプラテン740上でインク噴射方向Lに対して垂直に支持される。
【0023】
本実施例においては、プラテン740の平坦面は水平面に対して傾斜している。また、搬送側駆動部440およびプラテン740は、減圧されて外気を吸引するように、それぞれ、排気ダクトを介して搬送側排気部446およびプラテン側排気部746に接続されている。なお、図2においては、図面を簡略化することを目的として、外気の排気ダクトを点線で表している。
【0024】
上記構成により、給送部130による被記録媒体400の給送と、搬送側駆動部440による被記録媒体400のプラテン740への搬送と、プラテン740上を往復移動する記録ヘッド246による被記録媒体400の表面401に対するインクの吐出とが繰り返されることにより、被記録媒体400上に順次、記録がなされる。記録された被記録媒体400は下方の排出部160に送られ、自重により装置本体110から下方へ排出される。これにより、排出部160において被記録媒体400の表面401がローラ等に接触しないので、被記録媒体400の表面401に傷が発生することを抑制することができ、被記録媒体400の表面における傷の発生をより抑制しながら、被記録媒体400を搬送することができる。
【0025】
以下、図3乃至図5を用いて、本実施形態に係る搬送部340を詳細に説明する。図3は、搬送部340の概要を示す斜視図である。図4は、記録部140の内部を主走査方向Sに垂直な平面で切断して模式的に示した断面図であり、図5は、搬送側駆動部440を、搬送方向Mに垂直な平面で切断して模式的に示した断面図である。
【0026】
図3に示す通り、搬送部340の搬送従動ローラ342は、搬送部支持部材111に回転可能に支持された軸部343を有する。また、搬送部340の搬送側駆動部440は、搬送側排気部446、搬送ローラ540および搬送側封止部材640を有する。さらに、搬送側駆動部440は、搬送ローラ540を回転駆動する搬送モータ442を有する。
【0027】
図5に示す通り、搬送ローラ540は、主走査方向Sに延伸した中空の周面541と、周面541の両端に設けられ、軸受部546を備える一対の側面549と、周面541と一対の側面549に囲まれたローラ減圧室543とを有する。周面541には、ローラ吸引孔542が、周面541の外周面911と内周面912とを貫通して設けられている。ローラ吸引孔542が減圧されて外気を吸引することにより、搬送ローラ540は、複数のローラ吸引孔542により被記録媒体400の裏面402を吸引して搬送する。ローラ吸引孔542の吸引力が大きくなると、被記録媒体400が搬送ローラ540に密着しながら搬送される。
【0028】
ここで、周面541には、周面541の周方向に等間隔に配置されたローラ吸引孔542の列が、周面541の長手方向に、複数列、オフセット配置されている。本実施形態においてローラ吸引孔542は同径の円状であるが、ローラ吸引孔542の形状または配列はこれに限られるものではなく、長径状でもよく、径の異なるローラ吸引孔542が混在していてもよい。また周面541の場所によってローラ吸引孔542の密度が異なってもよい。
【0029】
また、搬送ローラ540は、さらに、一対の側面549の中心を貫通する軸部544を有する。軸部544は主走査方向Sに延伸した中空の管形状を有しており、搬送部支持部材111に固定されている。側面549は軸受部546のベアリング部材547を介して軸部544に回転可能に支持されている。これにより、周面541は軸部544を中心として、周面541の周方向に回転する。
【0030】
また、一対の側面549のうち、少なくとも一方の側面549は歯車548を有する。歯車548は搬送モータ442に結合した歯車443とかみ合わされており、側面549と周面541は周面541の両端部で結合しているので、搬送モータ442の回転駆動力が周面541に伝達され、周面541は軸部544を中心として回転する。
【0031】
軸部544において、一対の側面549に挟まれたローラ減圧室543内部に相当する箇所には軸部吸引孔545を有する。軸部544の一方の端部は、搬送側排気部446の吸気ダクト447と結合しており、軸部544内の空気は吸気ダクト447を介して吸引ファン448に吸引され、排気ダクト449を通って装置本体110の外部に排出される。これにより、ローラ減圧室543内部が減圧されて、搬送ローラ540はローラ吸引孔542から外気を吸引する。これにより、ローラ吸引孔542が被記録媒体400の裏面402を吸引しながら周面541が回転するので、搬送ローラ540は被記録媒体400の裏面402を吸引しながら搬送することができ、搬送時に被記録媒体400の表面401に傷が発生することを抑制できる。
【0032】
図4に示す通り、搬送側封止部材640は、ローラ減圧室543の内部に設けられる。搬送側封止部材640は主走査方向Sに延伸する略半円柱形状を有しており、主走査方向Sに延伸する平面状の内面642と曲面状の周面644とを有する。搬送側封止部材640は、内面642の中心部641が軸部544の延伸方向に沿って軸部544と結合しており、軸部544は搬送部支持部材111に固定されている。よって、周面541が回転している場合であっても、搬送側封止部材640は回転することなく固定されている。
【0033】
また、搬送側封止部材640の周面644は、主走査方向Sに垂直な断面が、周面541の内周面912と同心円状になるように配置されている。周面644の外周部分と周面541の内周面912との距離を短くすることにより、吸引ファン448が外気を吸引するときの抵抗(以下、外気の吸引抵抗、或いは、単に吸引抵抗と言う場合がある。)を大きくして、周面644に対向する部分に存在するローラ吸引孔542を搬送側封止部材640で封止する。本明細書において「封止する」とは、周面541と搬送側封止部材640が接触して摺動している場合だけでなく、周面541と搬送側封止部材640が接触していなくても、周面644に対向する領域におけるローラ吸引孔542からの吸引抵抗が、周面644に対向していない領域における吸引抵抗と比較して大きい場合も含む。
【0034】
ここで、搬送ローラ540においてプラテン740に対向する領域の反対側に被記録媒体400が巻きつけられ、被記録媒体400が巻きつけられた領域に配されているローラ吸引孔542は当該被記録媒体400を吸引する。本実施形態において、搬送側封止部材640は周面644がプラテン740側を向くように配されているので、搬送側封止部材640は被記録媒体400を吸引していない領域の少なくとも一部のローラ吸引孔542を封止する。搬送ローラ540が被記録媒体400を吸引して搬送している場合において、搬送側封止部材640がなければ、被記録媒体400を吸引していないローラ吸引孔542から外気を吸引してしまう分だけローラ減圧室543の負圧が弱くなり、吸引力が低下する。しかしながら、本実施形態によれば、搬送側封止部材640が被記録媒体400を吸引していない領域の少なくとも一部のローラ吸引孔542を封止するので、被記録媒体400の表面401における傷の発生を抑制しながら、被記録媒体400を強い力で正確に搬送することができる。
【0035】
図3に示す通り、プラテン740は、中空の略直方体形状を有しており、被記録媒体400の搬送方向Mに沿った平坦な面を有する吸引面741と、吸引面741に開口して、減圧されて外気を吸引する複数のプラテン吸引孔742とを有する。吸引面741には、搬送方向Mに沿って等間隔に配置されたプラテン吸引孔742の列が、主走査方向Sに、複数列、オフセット配置されている。本実施形態においてプラテン吸引孔742は同径の円状であるが、プラテン吸引孔742の形状または配列はこれに限られるものではなく、長径状でもよく、径の異なるプラテン吸引孔742が混在していてもよい。また吸引面741の場所によってプラテン吸引孔742の密度が異なってもよい。
【0036】
吸引面741は、記録ヘッド246に対向するように設置される。プラテン740において吸引面741と対向する面である背面745には、プラテン側排気部746の吸気ダクト867が結合されており、プラテン740の内部の空気は、吸気ダクト867を介して吸気ファン868に吸引され、排気ダクト869を通って装置本体110の外部に排出される。これにより、プラテン740の内部が減圧されてプラテン減圧室747を形成する。これにより、プラテン吸引孔742は減圧されて外気を吸引する。これにより、被記録媒体400は裏面402をプラテン吸引孔742に吸引されながら吸引面741に沿って搬送方向Mに搬送されるので、インク噴射方向Lにおける記録ヘッド246と被記録媒体400の表面401との距離を、より確実に保持できる。
【0037】
また、プラテン740は、吸引面741と背面745とに接する一対の側面である、上流側側面743および下流側側面744を有する。上流側側面743は、周面541に対向するように配され、周面541の外周面911に沿った形状を有する曲面部831と、曲面部831からインク噴射方向Lに延伸する平面部832とを有する。プラテン740は、曲面部831と平面部832が接する稜線833が、周面541を吸引面741に平行な平面で切断したときに周面541上にできる直線のうち最もプラテン740側の直線である線P6と対向するように配される。
【0038】
これにより、搬送ローラ540とプラテン740を近接して配置することができ、装置を小型化することができる。また、曲面部831が周面541上のローラ吸引孔542を外周面911側から封止することにより、より少ない動力で被記録媒体400を周面541に吸引させることができる。さらに、平面部832と周面541との距離は、曲面部831と周面541との距離よりも離れているので、周面541が被記録媒体400を吸引している場合であっても、周面541の全面が封止されることがなく、搬送側排気部446に異常な負荷がかかることを抑制できる。
【0039】
なお、本実施形態においては、搬送側封止部材640が周面541の内周面912からローラ吸引孔542を封止しており、曲面部831が周面541の外周面911からローラ吸引孔542を封止している。これに代えて、ローラ吸引孔542は、外周面911側からだけ封止されていてもよく、内周面912側からだけ封止されていてもよい。
【0040】
また、本実施形態においては、搬送側封止部材640は半円柱形状を有しており、搬送側封止部材640が結合されている軸部544は、搬送部支持部材111に固定されている。しかしながら、例えば、断面が中心角が180°よりも小さな扇形で、柱状形状の搬送側封止部材640を用いた場合には、軸部544を回転させることで、ローラ吸引孔542が両側から封止される箇所の面積を変化させることができる。
【0041】
この場合に、搬送ローラ540を回転駆動している搬送モータ442にかかるトルクまたは搬送モータ442の電流値、或いは、ローラ減圧室543内の圧力が所定の範囲内になるように、軸部544を回転させてもよい。或いは、搬送側封止部材640の断面形状を変化させたり、搬送側封止部材640の周面644と周面541の内周面912との距離を変化させてもよい。これにより、被記録媒体400の搬送量に影響を与えることなく、ローラ吸引孔542の吸引力を制御できる。また、搬送側排気部446に異常な負荷がかかることを抑制できる。
【0042】
さらに、プラテン740は、吸引面741の上面と、周面541において周面541に吸引されていた被記録媒体400が周面541から離れだす点P5とが同一平面上にあるように配される。このとき、吸引面741と上流側側面743とが接する上流側角部834と点P5により形成される直線とは離れており、周面541において点P5により形成される直線からプラテン740側における位置では、ローラ吸引孔542は搬送側封止部材640に封止されるので吸引力が弱くなっている。つまり、当該位置において、被記録媒体400が周面541から離れやすくなっている。そこで、このような構成により、被記録媒体400が搬送ローラ540からプラテン740に搬送されるときに、被記録媒体400の裏面402が上流側角部834に接触して傷が発生することを抑制することができる。
【0043】
なお、プラテン740の上流側角部834は搬送ローラ540側に向けて先が尖った形状を有しているが、丸みを帯びた形状としてもよい。また、本実施形態においては、吸引面741と点P5は同一平面状にあるが、吸引面741が点P5よりもインク噴射方向Lの方向に離れている態様でもよい。このような構成により、周面541から離れた被記録媒体400が滑らかに吸引面741に搬送されるので、被記録媒体400の裏面402における傷の発生をより抑制することができる。
【0044】
さらに、プラテン740の上流側側面743と対向する下流側側面744と、吸引面741とが接する下流側角部844は、丸みを帯びた形状を有している。これにより、被記録媒体400が自重により排出されるときに、被記録媒体400の裏面402に傷が発生することを抑制することができる。
【0045】
また、搬送従動ローラ342は、搬送ローラ540の周面541に被記録媒体400が巻き付けられる巻き付け角Rが180度以上になるように配置される。これにより、搬送ローラ540に被記録媒体400をより確実に吸引させることができ、被記録媒体400を確実に搬送できる。具体的には、周面541を主走査方向Sに垂直な平面で切断した断面において、周面541の中心を中心として、周面541において周面541が被記録媒体400の巻き付けを開始した点P3と、点P5とがなす角度が180度以上になるように配置される。本実施形態においては、巻きつけ角Rが180度となるように配置されている。
【0046】
また、搬送従動ローラ342は、搬送従動ローラ342の外周が被記録媒体400の表面401と接触する点P4と点P3とが離れるように配される。これにより、被記録媒体400が搬送従動ローラ342と周面541とに挟まれて、被記録媒体400に傷が発生することを抑制できる。
【0047】
このとき、プラテン740は、プラテン740の搬送ローラ540側に、吸引面741の外面から背面745の外面までのインク噴射方向Lの高さが周面541の外径よりも小さくなる部分を有する。これにより、搬送ローラ540の周面541に被記録媒体400が巻き付けられる巻き付け角が180度以上となっている場合であっても、搬送ローラ540とプラテン740とを隣接して配置することができる。
【0048】
ここで、本実施形態においては、搬送ローラ540における被記録媒体400の裏面402に対する摩擦力は、プラテン740における被記録媒体400の裏面402に対する摩擦力と比較して大きくなるよう構成されている。これにより、被搬送物を確実に搬送でき、また、搬送経路中において、プラテンの平坦面に垂直な方向における位置を確実に保持できる。
【0049】
搬送ローラ540における被記録媒体400の裏面402に対する摩擦力は、被記録媒体400の裏面402と周面541との接触面積と、当該接触部分において被記録媒体400にかかる押圧力と、周面541の外周面911と被記録媒体400における裏面402との間の静止摩擦係数に依存する。一方、プラテン740における被記録媒体400の裏面402に対する摩擦力は、被記録媒体400の裏面402と吸引面741との接触面積と、当該接触部分において被記録媒体400にかかる押圧力と、吸引面741の外面と被記録媒体400における裏面402との間の動摩擦係数に依存する。そこで、本実施形態においては、搬送ローラ540の周面541の静摩擦係数は、プラテン740の平坦面である吸引面741の動摩擦係数と比較して大きい。
【0050】
また、本実施形態においては、被記録媒体400にかかる押圧力の大部分は被記録媒体400にかかる吸引力であり、吸引力は、吸引孔の面積と減圧室の圧力に依存する。そこで、本実施形態においては、搬送ローラ540における被記録媒体400を吸引する吸引力は、プラテンにおける被搬送物を吸引する吸引力と比較して大きい。具体的には、搬送ローラ540において被記録媒体400に封止される複数のローラ吸引孔542の面積の合計は、プラテン740において被記録媒体400に封止される複数のプラテン吸引孔742の面積の合計と比較して大きい。これらの構成により、搬送ローラ540における被記録媒体400の裏面402に対する摩擦力を、プラテン740における被記録媒体400の裏面402に対する摩擦力と比較して大きくすることができ、被記録媒体400を確実に搬送できる。
【0051】
以上の構成により、給送部130から給送されてきた被記録媒体400は、表面401が搬送従動ローラ342に接触しながら、搬送従動ローラ342の外周に沿って180度方向を変えられ、搬送ローラ540に送られる。搬送ローラ540においては、裏面402が複数のローラ吸引孔542に吸引されながら周面541が回転することにより、搬送ローラ540よりも搬送方向Mの下流側に配されるプラテン740に搬送される。
【0052】
プラテン740は記録ヘッド246に対向する位置に配されており、プラテン740上に搬送された被記録媒体400の表面401に記録ヘッド246からインクが吐出される。プラテン740は平坦な吸引面741を有しており、吸引面741にはプラテン吸引孔742が設けられ、被記録媒体400を裏面402から保持しているので、被記録媒体400の表面401と記録ヘッド246との距離を一定に保つことができ、記録品質を向上させることができる。表面401にインクが吐出された被記録媒体400は、除電部154により静電気を除去されたのち、排出部160へ搬送される。以上、本実施形態によれば、被記録媒体400の表面401に傷が発生することを抑制しながら、強い力で確実に被記録媒体400を搬送することができる。
【実施例2】
【0053】
図6は、別の実施形態に係る記録部142の内部を模式的に示す断面図である。本実施形態に係る記録部142は、排出ローラ570と排出側封止部材670とを備える排出側駆動部470を更に備え、吸引面741が水平に設置されている点が、図1から図6の記録部140と異なる。
【0054】
排出ローラ570は、プラテン740よりも被記録媒体400の搬送方向Mの下流側に配され、円筒形の周面571、および、周面571に開口して、減圧されて外気を吸引する複数のローラ吸引孔572を有しており、複数のローラ吸引孔572により被記録媒体400の裏面402を吸引する。また、排出側封止部材670は、排出ローラ570の複数のローラ吸引孔572のうち、被搬送物を吸引していない領域の少なくとも一部のローラ吸引孔572を封止する。
【0055】
本実施形態において、排出ローラ570は、搬送ローラ540と同様の構造を有しており、周面541と同径で円筒形の周面571と、周面571に開口して、減圧されて外気を吸引する複数のローラ吸引孔572と、周面571に囲まれたローラ減圧室573と、主走査方向Sに延伸した中空管形状の軸部574とを有する。軸部574は装置本体110に固定されており、排出ローラ570は軸部574により回転可能に支持されている。また、軸部574は排出側排気部476に結合されており、ローラ減圧室573の内部に相当する部分に開孔を有するので、ローラ減圧室573内部の空気は、吸気ダクト477を介して吸引ファン478に吸引され、排気ダクト479より装置本体110の外部に排出される。ローラ吸引孔572が被記録媒体400の裏面402を吸引しながら周面571が回転することで、排出ローラ570は被記録媒体400を排出できる。
【0056】
また、排出ローラ570の内部には、排出側封止部材670が設けられる。排出側封止部材670は、断面が中心角が180°より大きな扇形で、主走査方向Sに延伸する柱状形状を有しており、主走査方向Sに延伸する平面状の内面672および内面673と、曲面状の周面674とを有する。内面672は水平面に垂直に配されており、内面673は水平に配されている。排出側封止部材670は、内面672と内面673が接している中心部671と、内面672と、内面673とが、軸部574に接するように軸部574に結合されている。
【0057】
また、周面674は、周面571のうち、プラテン740側の半面と、下部の半面の位置にあるローラ吸引孔572を封止する。このとき、排出ローラ570の周面571に被記録媒体400が巻き付けられる巻き付け角Rは、およそ90度であることが好ましい。これにより、被記録媒体400を自然に下方に排出することができる。
【0058】
また、本実施態様においては、プラテン740の側面のうち、排出ローラ570に対向する下流側側面744も、周面571の外周に沿った形状を有する曲面部841と、曲面部831からインク噴射方向Lに延伸する平面部842とを有する。プラテン740は、曲面部841と平面部842が接する稜線843が、周面571を吸引面741に平行な平面で切断したときに周面571上にできる直線のうち最もプラテン740側の直線である線P6と対向するように配される。
【0059】
本実施形態においては、以上の構成により、吸引面741が水平に配されている場合であっても、被記録媒体400を挟むことなく排出することができる。これにより、排出側における被記録媒体400の表面401における傷の発生を抑制することができ、被記録媒体400の表面401における傷の発生をより抑制しながら、被記録媒体400を搬送できる。
【0060】
上記実施形態において、上記インクジェット式記録装置100は、液体噴射装置の一例である。しかしながら、液体噴射装置はインクジェット式記録装置100に限られない。液体噴射装置の他の例は、液晶ディスプレイのカラーフィルタを製造するカラーフィルタ製造装置、有機ELディスプレイ、FED(面発光ディスプレイ)等の電極を形成する電極形成装置、バイオチップを製造するバイオチップ製造装置等であってもよい。
【0061】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】インクジェット式記録装置100の斜視図である。
【図2】装置本体110の内部を模式的に示す断面図である。
【図3】搬送部340の概要を示す斜視図である。
【図4】記録部140の内部を模式的に示す断面図である(実施例1)。
【図5】搬送側駆動部440の内部を模式的に示す断面図である。
【図6】記録部142の内部を模式的に示す断面図である(実施例2)。
【符号の説明】
【0063】
100 インクジェット式記録装置、110 装置本体、111 搬送部支持部材、112 本体カバー、120 本体支持部、122 支柱部材、124 基台部材、126 横木部材、127 ジャッキ、128 キャスタ、130 給送部、132 ロールカバー、134 給送モータ、136 給送ローラ支持部、140 記録部、142 記録部、152 排出ダクト、154 除電部、160 排出部、180 操作パネル、230 給送ローラ、232 給送ローラスピンドル、234 給送ローラフランジ、236 給送ローラ負荷部、240 インク噴射部、241 案内部、242 ガイドレール、243 キャリッジモータ、244 タイミングベルト、245 キャリッジ、246 記録ヘッド、247 ノズル、248 インクカートリッジ、340 搬送部、342 搬送従動ローラ、343 軸部、400 被記録媒体、401 表面、402 裏面、440 搬送側駆動部、442 搬送モータ、443 歯車、446 搬送側排気部、447 吸気ダクト、448 吸引ファン、449 排気ダクト、470 排出側駆動部、476 排出側排気部、477 吸気ダクト、478 吸引ファン、479 排気ダクト、540 搬送ローラ、541 周面、542 ローラ吸引孔、543 ローラ減圧室、544 軸部、545 軸部吸引孔、546 軸受部、547 ベアリング部材、548 歯車、549 側面、570 排出ローラ、571 周面、572 ローラ吸引孔、573 ローラ減圧室、574 軸部、640 搬送側封止部材、641 中心部、642 内面、644 周面、670 排出側封止部材、671 中心部、672 内面、673 内面、674 周面、740 プラテン、741 吸引面、742 プラテン吸引孔、743 上流側側面、744 下流側側面、745 背面、746 プラテン側排気部、747 プラテン減圧室、831 曲面部、832 平面部、833 稜線、834 上流側角部、841 曲面部、842 平面部、843 稜線、844 下流側角部、867 吸気ダクト、868 吸気ファン、869 排気ダクト、911 外周面、912 内周面、1000 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒形の周面、および、前記周面に開口し、減圧されて外気を吸引する複数のローラ吸引孔を有し、前記複数のローラ吸引孔により被搬送物の裏面を吸引して搬送する搬送ローラと、
前記搬送ローラの前記複数のローラ吸引孔のうち、前記被搬送物を吸引していない領域の少なくとも一部のローラ吸引孔を封止する搬送側封止部材と
を備える搬送装置。
【請求項2】
前記搬送ローラよりも前記被搬送物の搬送方向の下流側に配され、前記被搬送物を裏面から支持する平坦面を有するプラテンをさらに備え、
前記搬送ローラにおける前記被搬送物の裏面に対する摩擦力は、前記プラテンにおける前記被搬送物の裏面に対する摩擦力と比較して大きい請求項1に記載の搬送装置。
【請求項3】
前記プラテンは、前記平坦面に開口し、減圧されて外気を吸引する複数のプラテン吸引孔を有する請求項2に記載の搬送装置。
【請求項4】
前記搬送ローラの前記周面の静摩擦係数は、前記プラテンの前記平坦面の動摩擦係数と比較して大きい請求項3に記載の搬送装置。
【請求項5】
前記搬送ローラにおける前記被搬送物を吸引する吸引力は、前記プラテンにおける前記被搬送物を吸引する吸引力と比較して大きい請求項3に記載の搬送装置。
【請求項6】
前記搬送ローラにおいて前記被搬送物に封止される前記複数のローラ吸引孔の面積の合計は、前記プラテンにおいて前記被搬送物に封止される前記複数のプラテン吸引孔の面積の合計と比較して大きい請求項5に記載の搬送装置。
【請求項7】
前記プラテンよりも前記被搬送物の搬送方向の下流側に配され、円筒形の周面、および、前記周面に開口し、減圧されて外気を吸引する複数のローラ吸引孔を有し、前記複数のローラ吸引孔により前記被搬送物の裏面を吸引する排出ローラと、
前記排出ローラの前記複数のローラ吸引孔のうち、前記被搬送物を吸引していない領域の少なくとも一部のローラ吸引孔を封止する排出側封止部材と
をさらに備える請求項2に記載の搬送装置。
【請求項8】
前記搬送ローラの前記周面に前記被搬送物が巻き付けられる巻き付け角が180度以上である請求項1に記載の搬送装置。
【請求項9】
被噴射媒体の表面に対して液体を噴射する液体噴射ヘッドと、
円筒形の周面、および、前記周面に開口して減圧源に連通した複数のローラ吸引孔を有し、前記複数のローラ吸引孔により前記被噴射媒体の裏面を吸引して前記液体噴射ヘッドに対向する位置に搬送する搬送ローラと、
前記搬送ローラの前記複数のローラ吸引孔のうち、前記被噴射媒体を吸引していない領域の少なくとも一部のローラ吸引孔を封止する搬送側封止部材と
を備える液体噴射装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2009−96589(P2009−96589A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−269559(P2007−269559)
【出願日】平成19年10月16日(2007.10.16)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】