説明

搬送装置および物品管理システム

【課題】多数のRFIDタグ付き物品を搬送・管理するのに好適であり、簡易な構成で高い信頼性を有する搬送装置。
【解決手段】搬送装置はフォークリフトであり、RFIDタグ付き物品はRFIDタグが付された荷物である。フォークリフトのフォーク部に、リーダライタとの無線通信を行うための第1アンテナと、第1アンテナにケーブルで接続され、RFIDタグと無線通信を行うための第2アンテナとを有し、かつ、無線信号を増幅するための電源を有していない中継装置が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、RFIDタグ付き物品を搬送するための搬送装置、ならびに、この搬送装置を用いた物品管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
物品の管理システムとして、RFID(Radio Frequency Identification)タグを用いたRFIDシステムが知られている。RFIDタグは、タグ毎に識別可能な情報を保有しており、物品管理システムでは、各物品に貼り付けられたRFIDタグとリーダライタとの無線通信によって、各物品の管理情報が読み書きされる。具体的には、たとえば工場や倉庫では、搬送される物品や搬送用パレットにRFIDタグを付けておき、この情報をリーダライタにて読み書きすることで、物品の搬送先や在庫の管理を行うといった物品管理システムが利用されている。
【0003】
このような物品管理システムにおいて、リーダライタは、たとえば特許文献1に記載されているように、トラックが通過するゲートに設けられていたり、たとえば特許文献2や特許文献3に記載されているように、フォークリフトに搭載されていたりする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−205820号公報
【特許文献2】特開2002−321899号公報
【特許文献3】特開2006−347713号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、搬送する物品の数が多くなると、すなわちRFIDタグの数が増えると、他のRFIDタグの影になったRFIDタグや物品中の金属物や磁性体の影になったRFIDタグを読み取ることが難しくなる。そこで、リーダライタをゲートに配置する場合は、リーダライタの出力を大きくするとともに、様々な角度から読み書きができるよう、リーダライタのアンテナをゲートの側面や天面など様々な位置に配置する必要がある。また、リーダライタをフォークリフトのような搬送装置に設ける場合、リーダライタには搬送装置の揺れや振動に対する高い信頼性が求められるし、搬送装置にはリーダライタを設置するためのスペースが必要になる。
【0006】
本発明は上述した実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、多数のRFIDタグ付き物品を搬送・管理するのに好適であって、簡易な構成で信頼性の高い搬送装置を提供することにある。また、本発明の他の目的は、簡易な構成で信頼性の高い物品管理システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、RFIDタグ付き物品を搬送するための搬送装置であって、
この搬送装置には、搬送装置の近傍に設置されたリーダライタと前記物品に付された前記RFIDタグとの無線通信を補助するための中継装置が設けられており、前記中継装置は、前記リーダライタと無線信号の送受を行うための第1アンテナと、前記第1アンテナに有線で接続され、前記物品に付された前記RFIDタグと無線信号の送受を行うための第2アンテナとを備え、かつ、前記無線信号を増幅するための電源を有していない、ことを特徴とする搬送装置に関するものである。
【0008】
また、本発明は、RFIDタグ付き物品を搬送するための搬送装置と、この搬送装置の近傍に設置されたリーダライタと、を備える物品管理システムであって、前記搬送装置には、前記リーダライタと前記物品に付された前記RFIDタグとの無線通信を補助するための中継装置が設けられており、前記中継装置は、前記リーダライタと無線信号の送受を行うための第1アンテナと、前記第1アンテナに有線で接続され、前記物品に付された前記RFIDタグと無線信号の送受を行うための第2アンテナとを備え、かつ、前記無線信号を増幅するための電源を有していない、ことを特徴とする物品管理システムに関するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、多数のRFIDタグ付き物品を搬送・管理するのに好適であって、簡易な構成で信頼性の高い搬送装置を提供することができる。また、簡易な構成で信頼性の高い物品管理システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施例1に係る搬送装置および物品管理システムの概略図である。
【図2】本発明の実施例2に係る搬送装置および物品管理システムの概略図である。
【図3】本発明の実施例3に係る搬送装置および物品管理システムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<実施例1>
本実施例は、RFIDタグ付き物品を搬送するための搬送装置、ならびに、この搬送装置と搬送装置近傍に設置されたリーダライタとを備える物品管理システムに関する。
【0012】
具体的には、図1(A)に示すように、搬送装置はフォークリフトであり、RFIDタグ付き物品はRFIDタグが付された荷物である。無線信号としては、たとえばUHF帯の高周波信号が用いられる。
【0013】
このフォークリフトは、基本的には、動力付きの車両本体の前面部に上下に可動なフォーク部を備えた一般的なフォークリフトであるが、特に、リーダライタとRFIDタグとの通信を補助するための中継装置を備えていることを主たる特徴としている。
【0014】
フォークリフトに搭載された中継装置は、リーダライタと無線信号の送受を行うための第1アンテナと、物品に付されたRFIDタグと無線信号の送受を行うための第2アンテナとを備えており、無線信号を増幅するための電源は有していない。第1アンテナと第2アンテナとは50Ωケーブルのような有線で接続されている。
【0015】
この中継装置は、フォークリフトの近傍に設置されたリーダライタと搬送される物品に付されたRFIDタグとの無線通信を補助する。すなわち、図1(B)に示すように、リーダライタからRFIDタグに無線信号を送信する場合、リーダライタアンテナから第1アンテナに無線で信号が送信され、第1アンテナから第2アンテナに有線で信号が送信され、第2アンテナから各荷物に付された各RFIDタグのアンテナに無線で信号が送信される。RFIDタグからリーダライタに無線信号を送信する場合、各荷物に付された各RFIDタグから第2アンテナに無線で信号が送信され、第2アンテナから第1アンテナに有線で信号が送信され、第1アンテナからリーダライタアンテナに無線で信号が送信される。
【0016】
このように、中継装置は、搬送される物品(荷物)の近傍に配置されるため、RFIDタグの近傍から情報を読み書きすることができ、多数のRFIDタグ付き物品を搬送・管理するに際し、必ずしも高出力のリーダライタを用いる必要はない。特に、この中継装置は、無線信号を増幅するための電源を有していないため、すなわち、電池やその制御回路、増幅回路等を持たない無電源の中継装置であって、2つのアンテナとこれらを接続するためのケーブルのみで実質的に構成されているため、フォークリフトの始動や移動にともなう揺れや振動で故障することが少なく、信頼性の高いシステムを構築できる。また、リーダライタ本体には、通常、情報処理装置やこれを駆動するための電源装置、情報を表示するための表示装置等が備えられており、比較的大きなスペースを占めるが、本実施例によれば、フォークリフトにはリーダライタ本体を設置するためのスペースは必要無く、フォークリフトの構成を簡素化できるとともに、簡易な構成かつ低コストで物品管理システムを構築できる。
【0017】
なお、本実施例において、中継装置はフォークリフトのフォーク部に設置されている。すなわち、第1アンテナ、第2アンテナの両アンテナがフォーク部に設けられている。第1アンテナは車両本体側に設けられていてもよいが、第1アンテナと第2アンテナとをケーブルで接続する必要があり、フォーク部の上下動にともない断線の可能性が生じることから、両アンテナをフォーク部に設けることが好ましい。中継装置は、上述したように、2つのアンテナとこれらを接続するためのケーブルのみで実質的に構成されているため、スペースの小さなフォーク部に容易に設置することができる。
【0018】
本実施例において、第1アンテナはフォーク部の側面に設けられており、第2アンテナはフォーク部の正面(パレット側)に設けられている。特に、第1アンテナはリーダライタの方向に指向性を持つ指向性アンテナであり、第2アンテナはRFIDタグの方向に指向性を持つ指向性アンテナであることが好ましい。指向性アンテナとしては、パッチアンテナやパラボラアンテナ、ダイポールアンテナ等を利用することができるが、簡易な構成でありながらも金属物上に配置可能であって指向性を持ったパッチアンテナが好ましい。また、リーダライタアンテナ−第1アンテナ間の送受信信号と、第2アンテナ−RFIDタグアンテナ間の送受信信号との混信を避けるため、第1アンテナの指向方向と第2アンテナの指向方向とは異なっていることが好ましい。具体的には、各アンテナがパッチアンテナのような指向性アンテナであって、第1アンテナの指向方向がフォークリフトの側面または後方に向けられており、第2アンテナの指向方向がフォークリフトの前方に向けられていることが好ましい。
【0019】
また、リーダライタアンテナ−第1アンテナ間の送受信信号と、第2アンテナ−RFIDタグアンテナ間の送受信信号との混信を避けるため、リーダライタアンテナ−第1アンテナ間で利用される無線信号の偏波と第2アンテナ−RFIDタグアンテナ間で利用される無線信号の偏波とが異なっていることが好ましい。具体的には、リーダライタアンテナ−第1アンテナ間で直線偏波を利用する場合、第2アンテナ−RFIDタグアンテナ間では円偏波を利用する、あるいは、リーダライタアンテナ−第1アンテナ間で円偏波を利用する場合、第2アンテナ−RFIDタグアンテナ間では直線偏波を利用する等のように、直線偏波と円偏波とを使い分けることが好ましい。また、たとえば、リーダライタアンテナ−第1アンテナ間で右旋偏波を利用する場合、第2アンテナ−RFIDタグアンテナ間では左旋偏波を利用する、リーダライタアンテナ−第1アンテナ間で左旋偏波を利用する場合、第2アンテナ−RFIDタグアンテナ間では右旋偏波を利用する等のように、右旋偏波と左旋偏波を使い分けてもよい。
【0020】
<実施例2>
図2(A)に示すように、本実施例の物品管理システムでは、実施例1の物品管理システムの構成に加え、リーダライタを備えたゲートを有する。すなわち、フォークリフトの近傍にはゲートが設置されており、このゲートには、リーダライタに接続され、荷物に付されたRFIDタグとの無線通信を行うためのアンテナが設けられている。
【0021】
図2(A)および(B)に示すように、本実施例におけるリーダライタは、フォークリフト側に設けられた第1アンテナに無線を介して接続されるとともに、ケーブルを介して第1ゲートに設けられたアンテナA、第2ゲートに設けられたアンテナBにそれぞれ接続されている。なお、アンテナAおよびアンテナBも指向性アンテナであり、それぞれフォークリフトを両側から挟み込むように配置されており、ゲートを通過するフォークリフトの方向に指向性を有している。
【0022】
したがって、このフォークリフトがゲートを通過する際、各荷物に付された各RFIDタグは、第2アンテナ、アンテナAおよびアンテナBから無線信号を受け、つまり異なる方向から無線信号を受けるため、パレット上に多数の荷物が積み重ねられていても、各荷物に付されたRFIDタグの読み取り精度を確保することができる。
【0023】
なお、リーダライタとアンテナAおよびアンテナBとは、上述のようにケーブル等の有線で接続してもよいが、無線で接続してもよい。
【0024】
<実施例3>
図3(A)に示すように、パレットに第1アンテナおよび第2アンテナが設けられていてもよい。すなわち、搬送装置はパレットを有しており、中継装置はパレットに設置されていてもよい。この第1アンテナと第2アンテナも、実施例1における第1アンテナと第2アンテナと同様、ケーブル等の有線を介して接続されている。
【0025】
本実施例の場合、第1アンテナをパレットの側面に配置し、第2アンテナを上方に指向性を有する指向性アンテナとし、かつ、パレットの上面に配置することが好ましい。特に、本実施例のように、フォーク部には、図中右方向に指向性を有するフォーク側第2アンテナを有し、パレットには、図中上方向に指向性を有するパレット側第2アンテナを有していれば、パレットに積まれた複数の荷物に付されたRFIDタグを精度良く読み取ることができる。
【0026】
なお、本実施例においては、フォークリフトのフォーク部にも第1アンテナおよび第2アンテナが設けられているが、フォーク部には第1アンテナおよび第2アンテナからなる中継装置が設けられていなくてもよい。
【0027】
<他の実施例>
以上、本発明を具体的な実施例に基づき説明したが、本発明は上述した実施例に限定されるものではない。
【0028】
たとえば、一本のリーダライタアンテナに対して複数の第1アンテナを有していてもよいし、複数のリーダライタアンテナに対して複数の第1アンテナを有していてもよい。また、一本の第1アンテナに対して複数の第2アンテナが接続されていてもよい。
【0029】
また、この物品管理システムで用いられる信号の周波数帯は、UHF帯の高周波信号に限定されるものではなく、HF帯やSHF帯の高周波信号であって構わない。
【0030】
また、搬送装置は、フォークリフトに限定されるものではなく、トラック等の運送用車両であってもよいし、人力で移動させる台車であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0031】
以上のように、本発明は、RFIDタグ付き物品を搬送するための搬送装置、ならびに、この搬送装置を用いた物品管理システムに係るものであり、工場や倉庫における荷物の出荷・入荷管理や在庫管理等に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
RFIDタグ付き物品を搬送するための搬送装置であって、
この搬送装置には、搬送装置の近傍に設置されたリーダライタと前記物品に付された前記RFIDタグとの無線通信を補助するための中継装置が設けられており、
前記中継装置は、前記リーダライタと無線信号の送受を行うための第1アンテナと、前記第1アンテナに有線で接続され、前記物品に付された前記RFIDタグと無線信号の送受を行うための第2アンテナとを備え、かつ、前記無線信号を増幅するための電源を有していない、
ことを特徴とする搬送装置。
【請求項2】
前記搬送装置はフォークリフトであり、前記中継装置は前記フォークリフトのフォーク部に設置されている、請求項1に記載の搬送装置。
【請求項3】
前記搬送装置はパレットを有しており、前記中継装置は前記パレットに設置されている、請求項1〜2に記載の搬送装置。
【請求項4】
前記第1アンテナは前記リーダライタの方向に指向性を持つ指向性アンテナであり、前記第2アンテナは前記RFIDタグの方向に指向性を持つ指向性アンテナであって、前記第1アンテナの指向方向と前記第2アンテナの指向方向とは異なっている、請求項1〜3に記載の搬送装置。
【請求項5】
前記リーダライタ−前記第1アンテナ間で利用される無線信号の偏波と前記第2アンテナ−前記RFIDタグ間で利用される無線信号の偏波とが異なっている、請求項1〜4に記載の搬送装置。
【請求項6】
RFIDタグ付き物品を搬送するための搬送装置と、この搬送装置の近傍に設置されたリーダライタと、を備える物品管理システムであって、
前記搬送装置には、前記リーダライタと前記物品に付された前記RFIDタグとの無線通信を補助するための中継装置が設けられており、
前記中継装置は、前記リーダライタと無線信号の送受を行うための第1アンテナと、前記第1アンテナに有線で接続され、前記物品に付された前記RFIDタグと無線信号の送受を行うための第2アンテナとを備え、かつ、前記無線信号を増幅するための電源を有していない、
ことを特徴とする物品管理システム。
【請求項7】
前記搬送装置の近傍にゲートが設置されており、このゲートには、前記リーダライタに接続され、前記物品に付された前記RFIDタグとの無線通信を行うためのアンテナが設けられている、請求項6に記載の物品管理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−158394(P2012−158394A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−17002(P2011−17002)
【出願日】平成23年1月28日(2011.1.28)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】