説明

搬送装置及び画像形成装置

【課題】本発明は、記録紙やフィルム等のシート状部材を安定してかつシワ等を発生させることなく搬送する搬送装置及び当該搬送装置を備えた画像形成装置に関する。
【解決手段】転写部10は、感光体11及び転写ローラ12の軸方向の長さが、シート状部材4の幅よりも長く形成されており、感光体11は、感光体11の中央部のシート状部材4の通過するシート通過領域11aと感光体11の両端側のシート状部材4の通過しないシート非通過領域11bとに分かれていて、シート通過領域11aは、シート状部材4が通過するのに必要十分な幅を有している。感光体11は、シート通過領域11aの直径が、シート非通過領域11bの直径よりも所定量だけ小さく形成されており、このシート非通過領域11bの半径とシート通過領域11aの半径との差は、シート状部材4の厚さHよりも小さくなっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送装置及び画像形成装置に関し、詳細には、記録紙やフィルム等のシート状部材を安定してかつシワ等を発生させることなく搬送する搬送装置及び当該搬送装置を備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置や画像読取装置等においては、用紙やシート等のシート状部材を搬送して、当該シート状部材に画像形成を行ったり、当該シート状部材に描かれている画像を読み取ったりする。特に、電子写真方式の画像形成装置においては、感光体や中間転写部材等の像担持体と対向する位置にローラが配設されていて、回転する像担持体とローラとの間に記録紙等のシート状部材を送り込み、当該像担持体とローラによってシート状部材を搬送しつつ、当該シート状部材に感光体や中間転写部材上の現像剤像(トナー像等)を転写して画像形成を行う。
【0003】
ところが、このような像担持体とローラとの間にシート状部材を送り込んで、シート状部材を像担持体とローラで搬送する場合、シート状部材が連続的に送り込まれてくる場合には、問題とならないが、シート状部材が非連続に像担持体とローラとの間に送り込まれてくると、シート状部材が像担持体とローラの間に入り込むときと、出るときに、瞬間的に大きな負荷変動が発生し、像担持体とローラの回転の等速性が乱されて、シート状部材の搬送に等速性が失われて種々の問題を引き起こす。例えば、薄いフィルムを搬送する場合には、当該フィルムにシワが寄ったり、途中で断裂するおそれがあり、また、シート状部材の搬送速度の変動によって、ショックジターといわれる画像の位置ずれや色ずれが発生したり、さらには、速度変動による倍率誤差が発生する。
【0004】
そこで、本出願人は、先に、画像形成装置の転写部の手前に、転写材の一部に突部を形成する案内部材を設けて、記録紙を僅かに盛り上げた状態で転写部に進入させることで、僅かな進入時差を発生させ、記録紙の突入による負荷変動を和らげて、ショックジターを防止する技術を提案している(特許文献1参照)。
【0005】
また、従来、画像形成装置の2次転写部を、中間転写体のかけ渡されている複数のローラ部材のうち少なくとも2つのローラ部材を中間転写体を挟んで2次転写部材と圧接させて配設したものとするとともに、当該2つのローラ部材の間の中間転写体の現像剤像担持面側の部分を2次転写部表面に巻き付かせたものとすることで、トナー画像と記録紙との密着度を向上させ、画像品質の向上を図った画像形成装置が提案されている(特許文献2参照)。
【0006】
一方、画像形成装置等においては、無端ベルトを用いて用紙やシート等のシート状部材を搬送するものがあり、この場合、無端ベルトにかかる張力に僅かなばらつきが発生すると、無端ベルトが一方に寄ってしまったり、蛇行するおそれがある。例えば、薄いフィルムを搬送する場合、フィルムにシワが寄ったり、左右方向にばらついて搬送されるおそれがある。
【0007】
特に、画像形成装置においては、無端ベルトを使用した搬送機構を感光体や中間転写部材等の像担持体に使用したものがあり、この無端ベルト状の像担持体が一方に寄ってしまったり、蛇行すると、画像品質が低下する。
【0008】
そこで、本出願人は、先に、無端状の転写ベルトの転写領域外の裏面に誘導リブを設け、転写ベルトの架け渡される複数のローラに案内溝を設けて、この案内溝に転写ベルトの誘導リブを進入させることで、転写ベルトに寄りが発生するのを防止した画像形成装置を提案している(特許文献3参照)。
【0009】
さらに、本出願人は、先に、無端状の転写ベルトの内面の両側縁に滑り止め部材を設け、当該滑り止め部材の側面を転写ベルトの架け渡されているローラの端部あるいは当該ローラの両側に同軸で回転するように設けられた規制コロの端部に当てて、転写ベルトの幅方向を規制して、転写ベルトの偏りを防止した画像形成装置を提案している(特許文献4参照)。
【0010】
なお、ベルトの寄りを規制する他の方法としては、ウラウン状のローラを使用する方法、ベルトの張り渡されるローラを傾けることでベルトの寄りを調整する方法、ローラの幅方向にテーパ部を設けて寄ったベルトを戻す方法がある。
【0011】
【特許文献1】特開2002−80143号公報
【特許文献2】特開2004−29054号公報
【特許文献3】特開平9−281815号公報
【特許文献4】特開2003−302843号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、上記従来技術にあっては、シート状部材に断裂やシワを発生させることなく、シート状部材を適切に搬送し、また、無端ベルトに偏りやシワが発生するのを防止して、無端ベルト上をシート状部材を適切に搬送する上で、なお改良の必要があった。
【0013】
すなわち、上記特許文献1記載の従来技術は、記録紙の突入による負荷変動を和らげることはできるが、記録紙が入った瞬間に発生する像担持体と当該像担持体に対向する位置に配設されているローラとが離れることによって発生する慣性モーメントの変動までは抑えることができい。また、また、特許文献2記載の従来技術にあっても、同様に、記録紙が入った瞬間に発生する慣性モーメントの変動を抑制することができない。
【0014】
これらの場合、慣性モーメントの変動を抑制するためには、ローラ等による予圧を高くすることで対応することもできるが、ローラ等による予圧を高くすると、機構の定常負荷が増加することとなり、予圧を高くするのにも限界があり、慣性モーメントの変動を適切に抑制することはできない。
【0015】
そして、慣性モーメントが変動すると、画像品質が直接影響を受け、画像品質が悪化するおそれがある。
【0016】
また、上記特許文献3及び特許文献4記載の従来技術及びその他のウラウン状のローラを使用する方法、ベルトの張り渡されるローラを傾けることでベルトの寄りを調整する方法、ローラの幅方向にテーパ部を設けて寄ったベルトを戻す方法にあっては、ベルトの寄り防止のために、専用の新たな機構を設ける必要があり、コストが高く付く、特に、ベルトの裏面に誘導リブを設ける場合、誘導リブをベルトの裏面に精度良く均一に設ける必要があり、高度な技術を必要とし、コストが高く付くという問題がある。
【0017】
そこで、本発明は、ローラ間にシート状部材が進入した際に当該ローラ間が離れ難くするとともにシート状部材に寄りやシワを発生させることなく、安定してかつ適切に搬送する搬送装置及び当該搬送装置を備えた画像形成装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0018】
請求項1記載の発明の搬送装置は、所定の回転速度で回転駆動される回転ローラに所定の予圧で従動ローラが当接して、当該回転ローラと当該従動ローラとの当接位置にシート状部材が送り込まれると、当該シート状部材を当該回転ローラと当該従動ローラで搬送する搬送装置において、前記回転ローラと前記従動ローラは、その軸方向の長さが、前記シート状部材の搬送方向と直交する方向の幅の長さよりも長く形成され、当該従動ローラが、その軸方向において前記シート状部材の通過するシート通過領域と当該シート状部材の通過しないシート非通過領域とを有し、当該従動ローラの当該シート通過領域部分の直径が当該シート非通過領域部分の直径よりも細く形成されていることにより、上記目的を達成している。
【0019】
この場合、例えば、請求項2に記載するように、前記従動ローラは、その表面が弾性体で形成されているものであってもよい。
【0020】
また、例えば、請求項3に記載するように、前記従動ローラは、前記シート通過領域部分の表面と前記シート非通過領域部分の表面とがそれぞれ弾性係数の異なる弾性体で形成されていてもよい。
【0021】
請求項4記載の発明の搬送装置は、所定の回転速度で回転駆動される回転ローラに所定の予圧で従動ローラが当接して、当該回転ローラと当該従動ローラとの当接位置にシート状部材が送り込まれると、当該シート状部材を当該回転ローラと当該従動ローラで搬送する搬送装置において、前記回転ローラと前記従動ローラは、その軸方向の長さが、前記シート状部材の搬送方向と直交する方向の幅の長さよりも長く形成され、当該回転ローラが、その軸方向において前記シート状部材の通過するシート通過領域と当該シート状部材の通過しないシート非通過領域とを有し、当該回転ローラの当該シート通過領域部分の直径が当該シート非通過領域部分の直径よりも細く形成されていることにより、上記目的を達成している。
【0022】
この場合、例えば、請求項5に記載するように、前記従動ローラは、その表面が弾性体で形成されているものであってもよい。
【0023】
また、例えば、請求項6に記載するように、前記回転ローラは、前記従動ローラよりも所定量大きな慣性モーメントが付加されていてもよい。
【0024】
請求項7記載の発明の搬送装置は、少なくとも1つが回転駆動される複数の支持ローラに架け渡されて当該回転駆動される支持ローラによって回転駆動される所定幅を有する無端ベルトと、当該無端ベルトを挟んで前記支持ローラの1つを対向支持ローラとして対向するとともに所定の予圧で当該対向支持ローラ方向に付勢されて当該無端ベルトとともに回転する従動ローラと、を備え、当該従動ローラと当該無端ベルトとの当接位置にシート状部材が送り込まれると、当該シート状部材を当該無端ベルトと当該従動ローラで搬送する搬送装置において、前記従動ローラと前記対向支持ローラは、その軸方向の長さが、前記無端ベルトの幅の長さよりも長く形成され、当該対向支持ローラが、その軸方向において前記無端ベルトの通過するベルト通過領域と当該無端ベルトの通過しないベルト非通過領域とを有し、当該対向支持ローラの当該ベルト通過領域部分の直径が当該ベルト非通過領域部分の直径よりも細く形成されていることにより、上記目的を達成している。
【0025】
この場合、例えば、請求項8に記載するように、前記対向支持ローラは、その表面が弾性体で形成されているものであってもよい。
【0026】
また、例えば、請求項9に記載するように、前記対向支持ローラは、前記ベルト通過領域部分の表面と前記ベルト非通過領域部分の表面とがそれぞれ弾性係数の異なる弾性体で形成されていてもよい。
【0027】
請求項10記載の発明の搬送装置は、少なくとも1つが回転駆動される複数の支持ローラに架け渡されて当該回転駆動される支持ローラによって回転駆動される所定幅を有する無端ベルトと、当該無端ベルトを挟んで前記支持ローラの1つを対向支持ローラとして対向するとともに所定の予圧で当該対向支持ローラ方向に付勢されて当該無端ベルトとともに回転する従動ローラと、を備え、当該従動ローラと当該無端ベルトとの当接位置にシート状部材が送り込まれると、当該シート状部材を当該無端ベルトと当該従動ローラで搬送する搬送装置において、前記従動ローラと前記対向支持ローラは、その軸方向の長さが、前記無端ベルトの幅の長さよりも長く形成され、当該従動ローラが、その軸方向において前記無端ベルトの通過するベルト通過領域と当該ベルト状部材の通過しないベルト非通過領域とを有し、当該従動ローラの当該ベルト通過領域部分の直径が当該ベルト非通過領域部分の直径よりも細く形成されていることにより、上記目的を達成している。
【0028】
この場合、例えば、請求項11に記載するように、前記従動ローラは、その表面が弾性体で形成されているものであってもよい。
【0029】
また、例えば、請求項12に記載するように、前記従動ローラは、前記ベルト通過領域部分の表面と前記ベルト非通過領域部分の表面とがそれぞれ弾性係数の異なる弾性体で形成されていてもよい。
【0030】
さらに、例えば、請求項13に記載するように、前記対向支持ローラは、前記従動ローラよりも所定量大きな慣性モーメントが付加されていてもよい。
【0031】
上記各請求項において、例えば、請求項14に記載するように、前記搬送装置は、前記従動ローラまたは前記回転ローラが、その軸方向の中央部分に前記シート通過領域を有し、当該シート通過領域の外側両側に前記シート非通過領域を有し、前記対向支持ローラまたは前記従動ローラが、その軸方向の中央部分に前記ベルト通過領域を有し、当該ベルト通過領域の外側両側に前記ベルト非通過領域を有していてもよい。
【0032】
請求項15記載の発明の画像形成装置は、画像転写位置に送り込まれてきたシート状部材を搬送装置で搬送しつつ当該シート状部材に画像形成する画像形成装置において、前記搬送装置として請求項1から請求項14のいずれかに記載の搬送装置が用いられていることにより、上記目的を達成している。
【発明の効果】
【0033】
本発明の搬送装置によれば、所定の回転速度で回転駆動される回転ローラと当該回転ローラに所定の予圧で当接する従動ローラの軸方向の長さを、当該回転ローラと当該従動ローラの搬送するシート状部材の幅の長さよりも長く形成し、当該従動ローラまたは当該回転ローラを、その軸方向においてシート状部材の通過するシート通過領域と当該シート状部材の通過しないシート非通過領域とを有したものとし、当該シート通過領域部分の直径を当該シート非通過領域部分の直径よりも細く形成しているので、ローラ間にシート状部材が進入した際に当該ローラ間が離れ難くすることができるとともに、シート状部材に寄りやシワが発生するのを防止することができ、シート状部材を安定してかつ適切に搬送することができる。
【0034】
また、本発明の搬送装置は、無端ベルトが架け渡され少なくとも1つが回転駆動されることで当該無端ベルトを回転させる複数の支持ローラのうちの1つを対向支持ローラとして、当該対向支持ローラと無端ベルトを挟んで対向するとともに所定の予圧で当該対向支持ローラ方向に付勢されて当該無端ベルトとともに回転する従動ローラの軸方向の長さを、無端ベルトの幅の長さよりも長く形成し、当該対向支持ローラまたは従動ローラを、その軸方向において無端ベルトの通過するベルト通過領域と無端ベルトの通過しないベルト非通過領域とを有したものとし、当該ベルト通過領域部分の直径を当該ベルト非通過領域部分の直径よりも細く形成しているので、無端ベルトと従動ローラの間にシート状部材が進入した際に従動ローラと対向支持ローラが離れ難くすることができるとともに、無端ベルトに寄りやシワが発生するのを防止することができ、シート状部材を安定してかつ適切に搬送することができる。
【0035】
さらに、本発明の画像形成装置は、画像転写位置に送り込まれてきたシート状部材を搬送装置で搬送しつつ当該シート状部材に画像形成する際に、搬送装置として請求項1から請求項14のいずれかに記載の搬送装置を用いているので、シート状部材を安定してかつ適切に搬送することができ、画像品質を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下、本発明の好適な実施例を添付図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下に述べる実施例は、本発明の好適な実施例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。
【実施例1】
【0037】
図1〜図3は、本発明の搬送装置及び画像形成装置の第1実施例を示す図であり、図1は、本発明の搬送装置及び画像形成装置の第1実施例を適用した画像形成装置の転写部1の要部概略斜視図である。
【0038】
図1において、画像形成装置の転写部(搬送装置)1は、感光体(回転ローラ)2と転写ローラ(従動ローラ)3が相対向するとともに、その軸方向が並行でかつ方向が一致する状態で配設されており、感光体2と転写ローラ3との間には、記録紙やフィルム等のシート状部材4が、画像形成装置の図示しない給紙部から搬送されてくる。転写ローラ3は、シート状部材4への搬送力の伝達が、感光体2とシート状部材4の摩擦特性によって変化するため、感光体2の方向にばね等で押し付けられて予圧がかけられており、シート状部材4が滑らないようになっている。
【0039】
転写部1は、モータ等によって直接または減速機構を介して感光体2を図1に矢印で示す反時計方向に回転駆動させ、この感光体2に圧接されている転写ローラ3が感光体2とともに図1に矢印で示す時計方向に回転することで、シート状部材4を搬送する。
【0040】
画像形成装置は、印刷機、電子写真方式の複写装置、プリンタ、ファクシミリ装置等の画像形成装置であり、転写部1は、当該画像形成装置の画像の転写部である。
【0041】
そして、画像形成装置は、転写部1の感光体2を回転させながら帯電部で一様に帯電した後、レーザ、LED(Light Emitting Diode)アレイ等の書込部で画像データに基づいて変調させ書込光を感光体2に照射して感光体2に静電潜像を形成し、当該静電潜像の形成された感光体2に現像器からトナーを供給してトナー画像を形成する。画像形成装置は、このトナー画像の形成された感光体2と転写ローラ3との間にタイミング調整したシート状部材4を搬送し、感光体2と転写ローラ3とでシート状部材4を挟み込んで当該シート状部材4を搬送しつつ感光体2上のトナー画像を転写ローラ3の転写電圧でシート状部材4に転写する。画像形成装置は、トナー画像の転写の完了した感光体2を図示しないクリーニング部でクリーニングした後、帯電部で再度一様に帯電させて、次の画像形成を行う。
【0042】
そして、本実施例の転写部1は、感光体2及び転写ローラ3の軸方向の長さLが、シート状部材4の幅(搬送方向と直交する方向の長さ)Hよりも長く形成されており、転写ローラ3は、図2に示すように、シート状部材4の通過するシート通過領域3aとシート状部材4の通過しないシート非通過領域3bとに分かれていて、シート通過領域3aは、シート状部材4が通過するのに必要十分な幅を有している。このシート通過領域3aは、転写ローラ3の中央部に形成されており、シート非通過領域3bは、この中央部のシート通過領域3aの両側の端部に連続する状態で形成されている。転写ローラ3は、図2に示すように、シート通過領域3aの部分での直径raが、シート非通過領域3bの部分での直径rbよりも所定量だけ小さく(細く)形成されており、このシート非通過領域3bの半径(rb/2)とシート通過領域3aの半径(ra/2)との差rcは、シート状部材4の厚さHよりも小さく(rc=rb/2−ra/2<H)なっている。
【0043】
したがって、転写ローラ3のシート通過領域3aと感光体2との間に送り込まれたシート状部材4は、転写ローラ3のシート通過領域3aと感光体2とに挟まれた状態で搬送されるとともに、その両側端が、転写ローラ3のシート非通過領域3bのシート通過領域3a側の側壁にガイドされた状態で搬送される。
【0044】
そして、転写ローラ3は、その表面が、エチレンプロピレンゴム(EPゴム)、ウレタンゴム、シリコンゴムあるいはクロロブレンゴム等の弾性体で形成されている。
【0045】
また、転写ローラ3は、シート通過領域3aの表面の弾性体とシート非通過領域3bの表面の弾性体とが、その硬度が異なる弾性体が用いられており、この場合、転写ローラ3を作製する場合、転写ローラ3の全体を一体として作製するものに限るものではなく、両側のシート非通過領域3bと中央のシート通過領域3aとに分けて作製してもよく、このようにして作製すると、効率的に、転写ローラ3を作製することができる。
【0046】
そして、転写ローラ3は、例えば、シート通過領域3aの表面の弾性体の硬度がシート非通過領域3bの表面の弾性体の硬度よりも高く、硬いものであってもよいし、逆に、シート通過領域3aの表面の弾性体の硬度がシート非通過領域3bの表面の弾性体の硬度よりも低く、柔らかいものであってもよい。
【0047】
さらに、転写部1は、感光体2の慣性モーメントが転写ローラ3の慣性モーメントよりも十分大きく形成されていても良く、感光体2の慣性モーメントを転写ローラ3の慣性モーメントよりも十分大きく形成する方法としては、例えば、感光体2を転写ローラ3よりも比重の高い材料で形成する方法、感光体2の回転軸にフライホイールを取り付ける方法等を用いることができる。
【0048】
次に、本実施例の作用を説明する。本実施例の転写部1は、感光体2と接触する転写ローラ3のシート通過領域3aの直径raをシート非通過領域3bの直径rbよりも小さくすることで、シート状部材4が非連続的に送り込まれることによる感光体2と転写ローラ3に与えるステップ的な外乱を小さく抑制するとともに、シート状部材4に寄りが発生するのを防止する。
【0049】
すなわち、画像形成装置においては、一般的に、シート状部材がロール紙等であって、転写部の感光体と転写ローラとの間に連続的に送り込まれる場合には、ステップ的な外乱が感光体と転写ローラに発生せず、問題とならないが、シート状部材がカット紙等であって断続的に感光体と転写ローラの間に送り込まれると、シート状部材の感光体と転写ローラとの間への進入・排出の動作が断続的に発生し、ステップ的な外乱として働いて、感光体と転写ローラに速度変動が発生する。このような速度変動を防止するために、一般的には、慣性モーメントを大きくして外乱に対する感度を低減させたり、制御機構のゲインを向上させて外乱抑圧効果を向上させることで対応している。また、定常的な外乱に対しては、制御機構に積分効果を設けたり、定常負荷相当をフィードフォワードしたりすることで抑制しており、さらに、周期的な変動成分についても、フィードフォワード等の方法で抑制している。
【0050】
ところが、カットフィルムやカット紙等のカット状のシート状部材であると、感光体と転写ローラの間への不連続的な進入と排出動作時のショックにより、感光体と転写ローラが瞬間的に離れてしまう現象が発生し、慣性モーメントが小さくなって、回転数が変化、すなわち、回転変動が発生する。そして、上記一般的な対処方法では、瞬間的な慣性モーメントの変化に対しては、効果がない。
【0051】
そこで、本実施例の画像形成装置の転写部1は、感光体2及び転写ローラ3の軸方向の長さLを、シート状部材4の幅Hよりも長く形成し、転写ローラ3に、図2に示したように、シート状部材4の通過するシート通過領域3aとシート状部材4の通過しないシート非通過領域3bとを設けて、シート通過領域3aを、シート状部材4が通過するのに必要十分な幅を有したものとしている。そして、転写ローラ3は、シート通過領域3aの直径raが、シート非通過領域3bの直径rbよりも所定量だけ小さく形成されており、かつ、シート非通過領域3bの半径(rb/2)とシート通過領域3aの半径(ra/2)との差rcは、シート状部材4の厚さHよりも小さく(rc=rb/2−ra/2<H)なっている。
【0052】
このような感光体2と転写ローラ3のシート通過領域3aとの間にシート状部材4が送り込まれてくると、シート通過領域3aの直径raがシート非通過領域3bの直径rbよりも小さく形成されているため、シート状部材4が送り込まれてくることによる感光体2と転写ローラ3に与える衝撃を抑制することができ、感光体2と転写ローラ3とが離れてしまうことを防止することができる。
【0053】
また、転写部1は、シート非通過領域3bの半径(rb/2)とシート通過領域3aの半径(ra/2)との差rcが、シート状部材4の厚さHよりも小さく(rc=rb/2−ra/2<H)なっているため、シート状部材4を感光体2と転写ローラ3のシート通過領域3aとの間に挟んだ状態で適切に搬送することができる。
【0054】
さらに、転写部1は、シート通過領域3aの直径raがシート非通過領域3bの直径rbよりも小さく形成されているため、シート状部材4の両側端を、転写ローラ3のシート非通過領域3bのシート通過領域3a側の側壁にガイドした状態で搬送することができ、シート状部材4に寄りが発生することを適切に防止した状態で搬送することができる。
【0055】
したがって、感光体2上のトナー画像を高精度にシート状部材4に転写することができ、画像品質を向上させることができる。
【0056】
また、本実施例の画像形成装置の転写部1は、転写ローラ3の表面を、エチレンプロピレンゴム(EPゴム)、ウレタンゴム、シリコンゴムあるいはクロロブレンゴム等の弾性体で形成しているため、シート状部材4の搬送時に、シート状部材4を感光体2と転写ローラの間でより一層適切に保持して搬送することができ、搬送性能をより一層向上させることができる。
【0057】
さらに、本実施例の画像形成装置の転写部1は、シート通過領域3aの表面の弾性体とシート非通過領域3bの表面の弾性体として、それぞれその硬度の異なる弾性体が用いられており、例えば、シート通過領域3aの表面の弾性体の硬度をシート非通過領域3bの表面の弾性体の硬度よりも高く、硬いものとすると、感光体2と転写ローラ3との予圧を大きめにすることで、シート状部材4の進入により転写ローラ3に変動が生じるが、周辺部であるシート非通過領域3bの弾性変形によって感光体2と転写ローラ3の接触状態が保たれ、速度変動を生じることなく、より一層適切にシート状部材4を搬送することができる。また、逆に、シート通過領域3aの表面の弾性体の硬度をシート非通過領域3bの表面の弾性体の硬度よりも低く、柔らかいものとすると、感光体2と転写ローラ3との間へのシート状部材4の進入により転写ローラ3のシート通過領域3aが変形するが、周辺部のシート非通過領域3bが変形しないため、感光体2と転写ローラ3の接触状態が保たれ、速度変動を生じることなく、より一層適切にシート状部材4を搬送することができる。
【0058】
また、本実施例の画像形成装置の転写部1は、感光体2の慣性モーメントが転写ローラ3の慣性モーメントよりも十分大きく形成されていると、たとえ感光体2と転写ローラ3との間に接触不良が発生しても、速度変動への影響を抑制することができる。
【0059】
すなわち、いま、感光体2の慣性モーメントをJ1、半径をr1とし、転写ローラ3の慣性モーメントをJ2、半径をr2とすると、転写ローラ3の感光体軸換算の慣性モーメントJ2’は、次式(1)で与えられる。
【0060】
J2’=J2(r1/r2)・・・(1)
この(1)式において、感光体2の慣性モーメントJ1が、転写ローラ3の感光体軸換算の慣性モーメントJ2’に対して十分に大きいと、速度変動への影響を適切に抑制することができる。例えば、J2’/J1=10に対して、J2’/J1=100であれば、慣性モーメントの変動による速度変動への影響は、1/10に低減することができる。
【0061】
なお、上記説明では、転写ローラ3に直径の小さい領域(シート通過領域3a)を形成しているが、直径の小さい領域を形成するのは、転写ローラ3に限るものではなく、感光体2に直径の小さい領域を形成しても良い。
【0062】
すなわち、この場合、図3に示すように、画像形成装置の転写部(搬送装置)10は、感光体(回転ローラ)11と転写ローラ(従動ローラ)12が相対向するとともに、その軸方向が並行でかつ方向が一致する状態で配設されており、感光体11と転写ローラ12との間には、記録紙やフィルム等のシート状部材4(図示略)が、画像形成装置の図示しない給紙部から搬送されてくる。
【0063】
転写部10は、感光体11及び転写ローラ12の軸方向の長さLが、シート状部材4の幅H(図1参照)よりも長く形成されており、感光体11は、シート状部材4の通過するシート通過領域11aとシート状部材4の通過しないシート非通過領域11bとに分かれていて、シート通過領域11aは、シート状部材4が通過するのに必要十分な幅を有している。このシート通過領域11aは、感光体11の中央部に形成されており、シート非通過領域11bは、この中央部のシート通過領域11aの両側の端部に連続する状態で形成されている。感光体11は、シート通過領域11aの直径rdが、シート非通過領域11bの直径reよりも所定量だけ小さく形成されており、このシート非通過領域11bの半径(re/2)とシート通過領域11aの半径(rc/2)との差rfは、シート状部材4の厚さHよりも小さく(rf=re/2−rc/2<H)なっている。
【0064】
したがって、感光体11のシート通過領域11aと転写ローラ12との間に送り込まれたシート状部材4は、感光体11のシート通過領域11aと転写ローラ12とに挟まれた状態で搬送されるとともに、その両側端が、感光体11のシート非通過領域11bのシート通過領域11a側の側壁にガイドされた状態で搬送される。
【0065】
そして、転写ローラ3の表面を、エチレンプロピレンゴム(EPゴム)、ウレタンゴム、シリコンゴムあるいはクロロブレンゴム等の弾性体で形成する。
【0066】
また、転写ローラ12は、感光体11のシート通過領域11aと対向する部分の表面の弾性体と、シート非通過領域11bと対向する部分の表面の弾性体とが、その硬度が異なる弾性体が用いられていてもよい。この場合、転写ローラ12を作製する場合、転写ローラ12の全体を一体として作製するものに限るものではなく、両側のシート非通過領域11bに対向する部分と中央のシート通過領域11aに対向する部分とに分けて作製してもよく、このようにして作製すると、転写ローラ12を効率的に作製することができる。
【0067】
そして、転写ローラ3は、例えば、感光体11のシート通過領域11aに対向する部分の表面の弾性体の硬度がシート非通過領域3bに対向する部分の表面の弾性体の硬度よりも高く、硬いものであってもよいし、逆に、シート通過領域3aに対向する部分の表面の弾性体の硬度がシート非通過領域3bに対向する部分の表面の弾性体の硬度よりも低く、柔らかいものであってもよい。
【0068】
さらに、転写部10においても、感光体11の慣性モーメントが転写ローラ12の慣性モーメントよりも十分大きく形成されていても良く、このようにすることで、たとえ感光体11と転写ローラ12の接触が不良となっても、速度変動への影響を極力抑制することができる。そして、この場合、感光体11の慣性モーメントが転写ローラ12の慣性モーメントよりも十分大きく形成する方法としては、例えば、感光体11を転写ローラ12よりも比重の高い材料で形成する方法、感光体11の回転軸にフライホイールを取り付ける方法等を用いることができる。
【実施例2】
【0069】
図4〜図6は、本発明の搬送装置及び画像形成装置の第2実施例を示す図であり、図4は、本発明の搬送装置及び画像形成装置の第2実施例を適用した画像形成装置の転写部20の要部概略斜視図である。
【0070】
図4において、画像形成装置の転写部(搬送装置)20は、無端状の中間転写ベルト(無端ベルト)21が支持ローラとしての駆動ローラ22、従動ローラ23及び対向ローラ24に張り渡されており、中間転写ベルト21を挟んで対向ローラ(対向支持ローラ)24に転写ローラ(従動ローラ)25が所定の予圧がかけられた状態で配設されている。この画像形成装置は、例えば、1サイクルで多色(例えば、ブラック、シアン、マゼンタ、イエローの4色)のトナー画像を重ねてカラー画像をタンデム方式で形成することで、高速化を実現する電子写真方式のカラープリンタ等のカラー画像形成装置である。
【0071】
上記駆動ローラ22は、モータ26によって直接またはギア、タイミングベルト及びプーリ等の伝達機構を介して図4に矢印で示す反時計方向に回転駆動され、転写ローラ25と対向ローラ24に架け渡されている中間転写ベルト21との間には、画像形成装置の図示しない給紙部から記録紙やフィルム等のシート状部材27が搬送されてくる。
【0072】
画像形成装置は、駆動ローラ22と従動ローラ23の間の中間転写ベルト21上には、図示しない4組の感光体が並べられており、ブラック、シアン、マゼンタ、イエローの各色のトナー画像が現像される。画像形成装置は、感光体上の各色のトナー画像を、中間転写ベルト21上に順次重ね合わせて1次転写させ、4色を重ねたカラー画像を中間転写ベルト21上に形成する。画像形成装置の転写部20は、中間転写ベルト21上に1次転写されたカラーのトナー画像を、中間転写ベルト21が対向ローラ24と転写ローラ25に挟まれた位置で中間転写ベルト21からシート状部材27へ2次転写する。
【0073】
なお、2次転写の予圧のかけ方、すなわち、転写ローラ25の対向ローラ24方向への付勢の方法やローラ22〜25の配置及び個数は何ら限定されるものではない。
【0074】
そして、本実施例の画像形成装置の転写部20は、中間転写ベルト21を間に挟んで対向している対向ローラ24及び転写ローラ25の軸方向の長さLが、中間転写ベルト21の幅(搬送方向と直交する方向の長さ)Hよりも長く形成されており、対向ローラ24は、図5(a)、(b)に示すように、中間転写ベルト21の通過するベルト通過領域24aと中間転写ベルト21の通過しないベルト非通過領域24bとに分かれていて、ベルト通過領域24aは、中間転写ベルト21が通過するのに必要十分な幅を有している。対向ローラ24は、図5(b)に示すように、ベルト通過領域24aの直径raが、ベルト非通過領域24bの直径rbよりも所定量だけ小さく形成されており、このベルト非通過領域24bの半径(rb/2)とベルト通過領域24aの半径(ra/2)との差rcは、シート状部材27の厚さHよりも小さく(rc=rb/2−ra/2<H)なっている。
【0075】
したがって、対向ローラ24のベルト通過領域24aに入り込んでいる中間転写ベルト21と転写ローラ25との間に送り込まれたシート状部材27は、中間転写ベルト21と転写ローラ25とに挟まれた状態で、かつ、十分な摩擦力が働く状態で搬送される。
【0076】
そして、対向ローラ24は、その表面が、エチレンプロピレンゴム(EPゴム)、ウレタンゴム、シリコンゴムあるいはクロロブレンゴム等の弾性体で形成されている。
【0077】
また、対向ローラ24は、ベルト通過領域24aの表面の弾性体とベルト非通過領域24bの表面の弾性体とが、その硬度が異なる弾性体が用いられており、この場合、対向ローラ24を作製する場合、対向ローラ24の全体を一体として作製するものに限るものではなく、両側のベルト非通過領域24bと中央のベルト通過領域24aとに分けて作製してもよく、このようにして作製すると、効率的に、対向ローラ24を作製することができる。
【0078】
そして、対向ローラ24は、例えば、ベルト通過領域24aの表面の弾性体の硬度がベルト非通過領域24bの表面の弾性体の硬度よりも高く、硬いものであってもよいし、逆に、ベルト通過領域24aの表面の弾性体の硬度がベルト非通過領域24bの表面の弾性体の硬度よりも低く、柔らかいものであってもよい。
【0079】
さらに、転写部1は、対向ローラ24の慣性モーメントが転写ローラ25の慣性モーメントよりも十分大きく形成されていても良く、対向ローラ24の慣性モーメントを転写ローラ25の慣性モーメントよりも十分大きく形成する方法としては、例えば、対向ローラ24を転写ローラ25よりも比重の高い材料で形成する方法、対向ローラ24の回転軸にフライホイールを取り付ける方法等を用いることができる。
【0080】
次に、本実施例の作用を説明する。本実施例の転写部20は、転写ローラ25と対向して中間転写ベルト21上のトナー画像をシート状部材27に転写する位置で中間転写ベルト21の回転を保持する対向ローラ24に、ベルト通過領域24aとベルト非通過領域24bを設け、ベルト通過領域24aの直径raをベルト非通過領域24bの直径rbよりも小さくすることで、シート状部材27が非連続的に送り込まれることによる対向ローラ24と転写ローラ25に与えるステップ的な外乱を小さく抑制するとともに、中間転写ベルト21に寄りが発生するのを防止する。
【0081】
すなわち、画像形成装置においては、一般的に、シート状部材がロール紙等であって、転写部の転写ローラと中間転写ベルトとの間に連続的に送り込まれる場合には、ステップ的な外乱が転写ローラや中間転写ベルトに発生せず、問題とならないが、シート状部材がカット紙等であって断続的に転写ローラと中間転写ベルトの間に送り込まれると、シート状部材の転写ローラと中間転写ベルトとの間への進入・排出の動作が断続的に発生し、ステップ的な外乱として働いて、転写ローラと中間転写ベルト、特に、中間転写ベルトに速度変動が発生する。
【0082】
このような速度変動が中間転写ベルトに発生すると、2次転写で発生する画像の倍率誤差や白スジ・黒スジ等の画像悪化の問題だけでなく、中間転写ベルトの上部に配置される1次転写部にも影響が発生する。例えば、1次転写では、4色のトナー画像を数十μmレベルの精度で重ね合わせる必要があるため、各色の1次転写部分の距離(間隔)と静電潜像の書込タイミングが高精度に管理されているが、この条件は、中間転写ベルトが一定速度で駆動されている条件下で成立するものであり、中間転写ベルトの速度が変動してしまうと、各色の1次転写位置にずれが生じることとなり、中間転写ベルト上のトナー画像に色ずれが発生する。
【0083】
このような速度変動を防止するために、一般的には、慣性モーメントを大きくして外乱に対する感度を低減させたり、制御機構のゲインを向上させて外乱抑圧効果を向上させることで対応している。また、定常的な外乱に対しては、制御機構に積分効果を設けたり、定常負荷相当をフィードフォワードしたりすることで抑制しており、さらに、周期的な変動成分についても、フィードフォワード等の方法で抑制している。
【0084】
ところが、カットフィルムやカット紙等のカット状のシート状部材であると、中間転写ベルト21を挟んで配置されている対向ローラと転写ローラが瞬間的に離れてしまう現象が発生し、慣性モーメントが小さくなって、回転数が変化、すなわち、回転変動が発生する。そして、上記一般的な対処方法では、瞬間的な慣性モーメントの変化に対しては、効果がない。
【0085】
そこで、本実施例の画像形成装置の転写部20は、中間転写ベルト21を間に挟んで対向している対向ローラ24及び転写ローラ25の軸方向の長さLを、中間転写ベルト21の幅Hよりも長く形成し、対向ローラ24を、図5(a)、(b)に示したように、中間転写ベルト21の通過するベルト通過領域24aと中間転写ベルト21の通過しないベルト非通過領域24bとに分けて、ベルト通過領域24aを、中間転写ベルト21が通過するのに必要十分な幅を有したものとしている。さらに、対向ローラ24のベルト通過領域24aの直径raを、ベルト非通過領域24bの直径rbよりも所定量だけ小さく形成しており、このベルト非通過領域24bの半径(rb/2)とベルト通過領域24aの半径(ra/2)との差rcを、シート状部材27の厚さHよりも小さく(rc=rb/2−ra/2<H)している。
【0086】
このような転写ローラ25と対向ローラ24のベルト通過領域24aにはまり込んだ状態で搬送移動される中間転写ベルト21との間にシート状部材27が送り込まれてくると、ベルト通過領域24aの直径raがベルト非通過領域24bの直径rbよりも小さく形成されているため、シート状部材27が送り込まれてくることによる対向ローラ24と転写ローラ25に与える衝撃を抑制することができ、対向ローラ24と転写ローラ25とが離れてしまうことを防止することができる。
【0087】
また、転写部20は、対向ローラ24のベルト非通過領域24bの半径(rb/2)とベルト通過領域24aの半径(ra/2)との差rcが、シート状部材27の厚さHよりも小さく(rc=rb/2−ra/2<H)なっているため、中間転写ベルト21と転写ローラ25との間に挟んだ状態でシート状部材27を適切に搬送することができる。
【0088】
さらに、転写部20は、対向ローラ24のベルト通過領域24aの直径raがベルト非通過領域24bの直径rbよりも小さく形成されているため、中間転写ベルト21の両側端を、対向ローラ24のベルト非通過領域24bのベルト通過領域24a側の側壁にガイドした状態で搬送することができ、中間転写ベルト21にベルト寄りが発生することを適切に防止した状態で搬送することができる。
【0089】
したがって、中間転写ベルト21上のトナー画像を高精度にシート状部材27に転写することができ、画像品質を向上させることができる。
【0090】
また、本実施例の画像形成装置の転写部20は、対向ローラ24の表面を、エチレンプロピレンゴム(EPゴム)、ウレタンゴム、シリコンゴムあるいはクロロブレンゴム等の弾性体で形成しており、また、転写ローラ25を対向ローラ24方向に予圧がかかった状態となっているため、シート状部材27の進入時に、対向ローラ24や転写ローラ25に多少の変形が生じても、中間転写ベルト21を挟んだ対向ローラ24と転写ローラ25が離れたり、中間転写ベルト21が離れることを抑制することができ、搬送性能をより一層向上させることができる。
【0091】
さらに、本実施例の画像形成装置の転写部20は、対向ローラ24のベルト通過領域24aの表面の弾性体とベルト非通過領域24bの表面の弾性体とが、その硬度が異なる弾性体が用いられており、例えば、シート通過領域24aの表面の弾性体の硬度がシート非通過領域24bの表面の弾性体の硬度よりも高く、硬いものとすると、対向ローラ24と転写ローラ25との予圧を大きめにすることで、シート状部材27の進入により対向ローラ24に変動が生じるが、周辺部であるベルト非通過領域24bの弾性変形によって対向ローラ24と転写ローラ25の接触状態が保たれ、速度変動を生じることなく、より一層適切にシート状部材27を搬送することができる。また、逆に、ベルト通過領域24aの表面の弾性体の硬度がベルト非通過領域24bの表面の弾性体の硬度よりも低く、柔らかいものとすると、対向ローラ24に保持されている中間転写ベルト21と転写ローラ25との間へのシート状部材27の進入により対向ローラ24のベルト通過領域24aが変形するが、周辺部のベルト非通過領域24bが変形しないため、対向ローラ24と転写ローラ25の接触状態が保たれ、速度変動を生じることなく、より一層適切にシート状部材27を搬送することができる。
【0092】
また、本実施例の画像形成装置の転写部20は、対向ローラ24の慣性モーメントが転写ローラ25の慣性モーメントよりも十分大きく形成されていると、上記第1実施例の場合と同様に、たとえ対向ローラ24と転写ローラ25との間に接触不良が発生しても、速度変動への影響を抑制することができる。
【0093】
なお、上記説明では、対向ローラ24に直径の小さい領域(ベルト通過領域24a)を形成しているが、直径の小さい領域を形成するのは、対向ローラ24に限るものではなく、転写ローラ25に直径の小さい領域を形成しても良い(図6参照)。なお、以下の説明では、上記図4及び図5と同様の構成部分には、図示しない部分であっても、図4及び図5で用いた符号をそのまま用いて説明する。
【0094】
すなわち、この場合、図6(a)、(b)に示すように、画像形成装置の転写部(搬送装置)30は、中間転写ベルト21を間に挟んで対向している対向ローラ(対向支持ローラ)31及び転写ローラ(従動ローラ)32の軸方向の長さLが、中間転写ベルト21の幅Hよりも長く形成されており、転写ローラ32は、図6(a)、(b)に示すように、中間転写ベルト21の通過するベルト通過領域32aと中間転写ベルト21の通過しないベルト非通過領域32bとに分かれていて、ベルト通過領域32aは、中間転写ベルト21が通過するのに必要十分な幅を有している。対向ローラ31は、図6(b)に示すように、ベルト通過領域32aの直径rdが、ベルト非通過領域32bの直径reよりも所定量だけ小さく形成されており、このベルト非通過領域32bの半径(re/2)とベルト通過領域32aの半径(rd/2)との差rfは、シート状部材27の厚さHよりも小さく(rf=re/2−rd/2<H)なっている。
【0095】
したがって、転写ローラ32のベルト通過領域32aに入り込んでいる中間転写ベルト21と転写ローラ32との間に送り込まれたシート状部材27は、中間転写ベルト21と転写ローラ32とに挟まれた状態で、かつ、十分な摩擦力が働く状態で搬送される。
【0096】
そして、転写ローラ32は、その表面が、エチレンプロピレンゴム(EPゴム)、ウレタンゴム、シリコンゴムあるいはクロロブレンゴム等の弾性体で形成されている。
【0097】
また、転写ローラ32は、ベルト通過領域32aの表面の弾性体とベルト非通過領域32bの表面の弾性体とが、その硬度の異なる弾性体が用いられており、この場合、転写ローラ32を作製する場合、転写ローラ32の全体を一体として作製するものに限るものではなく、両側のベルト非通過領域32bと中央のベルト通過領域32aとに分けて作製してもよく、このようにして作製すると、効率的に、転写ローラ32を作製することができる。
【0098】
そして、転写ローラ32は、ベルト通過領域32aの表面の弾性体の硬度がベルト非通過領域32bの表面の弾性体の硬度よりも高く、硬いものであってもよいし、逆に、ベルト通過領域32aの表面の弾性体の硬度がベルト非通過領域32bの表面の弾性体の硬度よりも低く、柔らかいものであってもよい。
【0099】
転写ローラ32のベルト通過領域32aの表面の弾性体の硬度がベルト非通過領域32bの表面の弾性体の硬度よりも高く、硬いときには、転写ローラ32と対向ローラ31との予圧を大きめに設定することで、シート状部材21の進入により転写ローラ32に変動が生じるが、周辺部のベルト非通過領域32bの弾性変形により、対向ローラ31と転写ローラ32との接触が保たれる。
【0100】
逆に、転写ローラ32のベルト通過領域32aの表面の弾性体の硬度がベルト非通過領域32bの表面の弾性体の硬度よりも低く、柔らかいときには、シート状部材21の進入により転写ローラ32が変形するが、周辺部のベルト非通過領域32bは変形しないため、対向ローラ31と転写ローラ32との接触が保たれる。したがって、搬送性能をより一層向上させることができる。
【0101】
さらに、転写部30においても、対向ローラ31の慣性モーメントが転写ローラ32の慣性モーメントよりも十分大きく形成されていても良く、このようにすることで、たとえ対向ローラ31と転写ローラ32の接触が不良となっても、速度変動への影響を極力抑制することができる。そして、この場合、対向ローラ31の慣性モーメントを転写ローラ32の慣性モーメントよりも十分大きく形成する方法としては、例えば、対向ローラ31を転写ローラ32よりも比重の高い材料で形成する方法、対向ローラ31の回転軸にフライホイールを取り付ける方法等を用いることができる。
【0102】
以上、本発明者によってなされた発明を好適な実施例に基づき具体的に説明したが、本発明は上記のものに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0103】
記録紙やフィルム等のシート状部材をローラ間またはローラ間の間に無端ベルトを挟んだ状態で、安定してかつシワ等を発生させることなく搬送する搬送装置及び当該搬送装置を備えた電子写真方式の複写装置、プリンタ等の画像形成装置に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0104】
【図1】本発明の搬送装置及び画像形成装置の第1実施例を適用した画像形成装置の転写部の要部概略斜視図。
【図2】図1の感光体と転写ローラ部分の正面図(a)と側面図(b)。
【図3】図1の感光体と転写ローラの他の例の両ローラ部分の正面図(a)と側面図(b)。
【図4】本発明の搬送装置及び画像形成装置の第2実施例を適用した画像形成装置の転写部の要部概略斜視図。
【図5】図4の対向ローラと転写ローラ部分の正面図(a)と側面図(b)。
【図6】図4の対向ローラと転写ローラの他の例の両ローラ部分の正面図(a)と側面図(b)。
【符号の説明】
【0105】
1 転写部
2 感光体
3 転写ローラ
3a シート通過領域
3b シート非通過領域
4 シート状部材
10 転写部
11 感光体
11a シート通過領域
11b シート非通過領域
12 転写ローラ
20 転写部
21 中間転写ベルト
22 駆動ローラ
23 従動ローラ
24 対向ローラ
24a ベルト通過領域
24b ベルト非通過領域
25 転写ローラ
26 モータ
27 シート状部材
30 転写部
31 対向ローラ
32 転写ローラ
32a ベルト通過領域
32b ベルト非通過領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の回転速度で回転駆動される回転ローラに所定の予圧で従動ローラが当接して、当該回転ローラと当該従動ローラとの当接位置にシート状部材が送り込まれると、当該シート状部材を当該回転ローラと当該従動ローラで搬送する搬送装置において、前記回転ローラと前記従動ローラは、その軸方向の長さが、前記シート状部材の搬送方向と直交する方向の幅の長さよりも長く形成され、当該従動ローラが、その軸方向において前記シート状部材の通過するシート通過領域と当該シート状部材の通過しないシート非通過領域とを有し、当該従動ローラの当該シート通過領域部分の直径が当該シート非通過領域部分の直径よりも細く形成されていることを特徴とする搬送装置。
【請求項2】
前記従動ローラは、その表面が弾性体で形成されていることを特徴とする請求項1記載の搬送装置。
【請求項3】
前記従動ローラは、前記シート通過領域部分の表面と前記シート非通過領域部分の表面とがそれぞれ弾性係数の異なる弾性体で形成されていることを特徴とする請求項1記載の搬送装置。
【請求項4】
所定の回転速度で回転駆動される回転ローラに所定の予圧で従動ローラが当接して、当該回転ローラと当該従動ローラとの当接位置にシート状部材が送り込まれると、当該シート状部材を当該回転ローラと当該従動ローラで搬送する搬送装置において、前記回転ローラと前記従動ローラは、その軸方向の長さが、前記シート状部材の搬送方向と直交する方向の幅の長さよりも長く形成され、当該回転ローラが、その軸方向において前記シート状部材の通過するシート通過領域と当該シート状部材の通過しないシート非通過領域とを有し、当該回転ローラの当該シート通過領域部分の直径が当該シート非通過領域部分の直径よりも細く形成されていることを特徴とする搬送装置。
【請求項5】
前記従動ローラは、その表面が弾性体で形成されていることを特徴とする請求項4記載の搬送装置。
【請求項6】
前記回転ローラは、前記従動ローラよりも所定量大きな慣性モーメントが付加されていることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の搬送装置。
【請求項7】
少なくとも1つが回転駆動される複数の支持ローラに架け渡されて当該回転駆動される支持ローラによって回転駆動される所定幅を有する無端ベルトと、当該無端ベルトを挟んで前記支持ローラの1つを対向支持ローラとして対向するとともに所定の予圧で当該対向支持ローラ方向に付勢されて当該無端ベルトとともに回転する従動ローラと、を備え、当該従動ローラと当該無端ベルトとの当接位置にシート状部材が送り込まれると、当該シート状部材を当該無端ベルトと当該従動ローラで搬送する搬送装置において、前記従動ローラと前記対向支持ローラは、その軸方向の長さが、前記無端ベルトの幅の長さよりも長く形成され、当該対向支持ローラが、その軸方向において前記無端ベルトの通過するベルト通過領域と当該無端ベルトの通過しないベルト非通過領域とを有し、当該対向支持ローラの当該ベルト通過領域部分の直径が当該ベルト非通過領域部分の直径よりも細く形成されていることを特徴とする搬送装置。
【請求項8】
前記対向支持ローラは、その表面が弾性体で形成されていることを特徴とする請求項7記載の搬送装置。
【請求項9】
前記対向支持ローラは、前記ベルト通過領域部分の表面と前記ベルト非通過領域部分の表面とがそれぞれ弾性係数の異なる弾性体で形成されていることを特徴とする請求項7記載の搬送装置。
【請求項10】
少なくとも1つが回転駆動される複数の支持ローラに架け渡されて当該回転駆動される支持ローラによって回転駆動される所定幅を有する無端ベルトと、当該無端ベルトを挟んで前記支持ローラの1つを対向支持ローラとして対向するとともに所定の予圧で当該対向支持ローラ方向に付勢されて当該無端ベルトとともに回転する従動ローラと、を備え、当該従動ローラと当該無端ベルトとの当接位置にシート状部材が送り込まれると、当該シート状部材を当該無端ベルトと当該従動ローラで搬送する搬送装置において、前記従動ローラと前記対向支持ローラは、その軸方向の長さが、前記無端ベルトの幅の長さよりも長く形成され、当該従動ローラが、その軸方向において前記無端ベルトの通過するベルト通過領域と当該ベルト状部材の通過しないベルト非通過領域とを有し、当該従動ローラの当該ベルト通過領域部分の直径が当該ベルト非通過領域部分の直径よりも細く形成されていることを特徴とする搬送装置。
【請求項11】
前記従動ローラは、その表面が弾性体で形成されていることを特徴とする請求項10記載の搬送装置。
【請求項12】
前記従動ローラは、前記ベルト通過領域部分の表面と前記ベルト非通過領域部分の表面とがそれぞれ弾性係数の異なる弾性体で形成されていることを特徴とする請求項10記載の搬送装置。
【請求項13】
前記対向支持ローラは、前記従動ローラよりも所定量大きな慣性モーメントが付加されていることを特徴とする請求項7から請求項12のいずれかに記載の搬送装置。
【請求項14】
前記搬送装置は、前記従動ローラまたは前記回転ローラが、その軸方向の中央部分に前記シート通過領域を有し、当該シート通過領域の外側両側に前記シート非通過領域を有し、前記対向支持ローラまたは前記従動ローラが、その軸方向の中央部分に前記ベルト通過領域を有し、当該ベルト通過領域の外側両側に前記ベルト非通過領域を有していることを特徴とする請求項1から請求項13のいずれかに記載の搬送装置。
【請求項15】
画像転写位置に送り込まれてきたシート状部材を搬送装置で搬送しつつ当該シート状部材に画像形成する画像形成装置において、前記搬送装置として請求項1から請求項14のいずれかに記載の搬送装置が用いられていることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−193238(P2006−193238A)
【公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−4171(P2005−4171)
【出願日】平成17年1月11日(2005.1.11)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】