説明

搬送装置及び画像形成装置

【課題】記録媒体の搬送異常が発生した場合に、記録媒体の搬送に係る駆動手段の温度上昇を抑制する。
【解決手段】搬送装置は、搬送異常が発生した場合に、搬送部材を駆動する駆動手段への電力の供給を停止させる。搬送装置は、駆動させる搬送部材が異なる複数の駆動手段を備える場合に、搬送異常が発生した箇所を特定し、その箇所に関係する駆動手段への電力供給のみを停止させる。例えば、センサ1411〜1413によって図示のような状態で記録媒体(二点鎖線中の太い実線部分)が詰まった場合、搬送装置は、搬送部材1211〜1214のうち、搬送部材1212及び1213を駆動させる駆動手段への電力供給を停止させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、早期に解消できない異常が検出された場合に、装置内の電源を遮断して節電する画像形成装置について記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−52503号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、記録媒体の搬送異常が発生した場合に、記録媒体の搬送に係る駆動手段の温度上昇を抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の請求項1に係る搬送装置は、あらかじめ定められた搬送経路に沿って設けられ、駆動力が与えられることにより記録媒体を搬送する搬送手段と、前記搬送手段を駆動する電力を供給する電力供給手段と、前記搬送経路における前記記録媒体の搬送異常を検知する検知手段とを有する搬送装置であって自装置と異なる他の搬送装置の前記搬送経路に記録媒体を供給する媒体供給手段と、前記他の搬送装置から、搬送異常が検知されたことを表す異常情報を取得する異常情報取得手段と、前記異常情報取得手段により異常情報が取得されると、前記電力供給手段に電力の供給を停止させる指示を表す停止情報を前記他の搬送装置に供給する情報供給手段とを備える構成を有する。
【0006】
本発明の請求項2に係る搬送装置は、あらかじめ定められた搬送経路に沿った複数の位置に設けられ、駆動力が与えられることにより記録媒体を搬送する複数の搬送部材と、各々が異なる前記搬送部材を駆動する複数の駆動手段と、各々が異なる前記駆動手段に電力を供給する複数の電力供給手段と、前記搬送経路の複数の位置において前記記録媒体の搬送異常を検知する複数の検知手段とを有する搬送装置であって自装置と異なる他の搬送装置の前記搬送経路に記録媒体を供給する媒体供給手段と、前記他の搬送装置から、搬送異常が検知された位置を表す異常情報を取得する異常情報取得手段と、前記異常情報取得手段により取得された異常情報が表す位置に応じた搬送部材を駆動する駆動手段に電力を供給する電力供給手段に電力の供給を停止させる指示を表す停止情報を前記他の搬送装置に供給する情報供給手段とを備える構成を有する。
【0007】
本発明の請求項3に係る搬送装置は、請求項2に記載の構成において、前記搬送異常に係る前記記録媒体の搬送方向についての長さを記憶する記憶手段を備え、前記情報供給手段が、電力の供給を停止させる前記電力供給手段を、前記記憶手段に記憶された長さに応じて決定する決定手段を備える構成を有する。
本発明の請求項4に係る搬送装置は、請求項2又は3に記載の構成において、前記搬送経路が複数あり、前記搬送異常に係る前記記録媒体が進行する搬送経路を記憶する記憶手段を備え、前記情報供給手段が、電力の供給を停止させる前記電力供給手段を、前記記憶手段に記憶された搬送経路に応じて決定する決定手段を備える構成を有する。
本発明の請求項5に係る搬送装置は、請求項1ないし4のいずれかに記載の構成において、前記媒体供給手段が、あらかじめ定められた搬送経路に沿って設けられ、駆動力が与えられることにより記録媒体を搬送する搬送部材と、前記搬送部材を駆動する駆動手段と、前記駆動手段に電力を供給する電力供給手段と、前記搬送経路における前記記録媒体の搬送異常を検知する検知手段とを備え、前記電力供給手段が、自装置の前記検知手段と前記他の搬送装置の前記検知手段とが搬送異常を検知した場合に、前記駆動手段への電力の供給を停止する構成を有する。
本発明の請求項6に係る搬送装置は、前記他の搬送装置が、前記搬送異常に係る前記記録媒体の排出に係る動作を検知する動作検知手段を備え、前記他の搬送装置から、前記動作が検知されたことを表す動作情報を取得する動作情報取得手段を備え、前記電力供給手段が、前記動作情報が取得された場合に、電力の供給の停止を一時的に解除する構成を有する。
【0008】
本発明の請求項7に係る画像形成装置は、請求項1ないし5のいずれかに記載の搬送装置を前記記録媒体の搬送機構として備え、前記搬送機構により搬送される記録媒体に画像を形成する画像形成手段を備える構成を有する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の請求項1、2又は7の構成によれば、記録媒体の搬送異常が発生した場合に、記録媒体の搬送に係る駆動手段の温度上昇を抑制することができる。
本発明の請求項3又は4の構成によれば、同構成を有しない場合に比べ、搬送異常に寄与している原因箇所である可能性がより低い駆動手段への電力供給を停止しないようにすることができる。
本発明の請求項5の構成によれば、自装置との他の搬送装置の双方に関連する搬送異常において、記録媒体の搬送に係る駆動手段の温度上昇を抑制することができる。
本発明の請求項6の構成によれば、同構成を有しない場合に比べ、搬送異常に係る記録媒体の排出を容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】画像形成システムの概略構成を示す図
【図2】画像形成装置及び後処理装置のハードウェア構成を示すブロック図
【図3】搬送手段及び検知手段の構成を示す図
【図4】画像形成装置が実行する動作を示すフローチャート
【図5】搬送異常の態様を示す図
【図6】検索テーブルを示す図
【図7】検索テーブルを示す図
【図8】検索テーブルを示す図
【図9】複数の搬送経路を有する構成を示す図
【発明を実施するための形態】
【0011】
[実施形態]
図1は、本発明の一実施形態である画像形成システムの概略構成を示す図である。本実施形態の画像形成システム10は、画像形成装置100と、後処理装置200とを備える。画像形成装置100及び後処理装置200は、いずれも、記録媒体を搬送する搬送機構を有する。すなわち、画像形成装置100及び後処理装置200は、本発明における搬送装置の一例に相当するものである。本実施形態は、画像形成装置100が後述する給電制御の動作主体、すなわち給電制御を行う側(搬送装置)であり、後処理装置200が給電制御の客体、すなわち給電制御に従って実際に動作する側(他の搬送装置)である例を示すものである。
【0012】
画像形成装置100と後処理装置200とは、連結して使用されるものである。ここにおいて、連結とは、一方の装置と他方の装置とが通信を行い得るとともに、双方の搬送経路とが組み合わされて連続した搬送経路を形成する状態のことをいう。図1において、二点鎖線は、記録媒体の搬送経路を示している。
【0013】
本実施形態における記録媒体は、あらかじめ定められた搬送経路に沿って搬送される被搬送媒体の一例である。記録媒体は、本実施形態においては、シート状のいわゆる用紙であるとするが、その材質などは特に限定されない。また、本実施形態において使用される用紙には、サイズの異なるものがあり、例えば、A4サイズ(210×297mm)とA3サイズ(297×420mm)とがある。記録媒体は、各々のサイズに応じた収容手段に収容され、搬送経路に供給される。なお、本発明に係る搬送装置により搬送される被搬送媒体は、シート状でなくともよい。
【0014】
図2は、画像形成装置100及び後処理装置200のハードウェア構成を示すブロック図である。画像形成装置100は、制御手段110と、搬送手段120と、電力供給手段130と、検知手段140と、画像形成手段150と、記憶手段160と、通信手段170とを備える。制御手段110は、CPU(Central Processing Unit)等の演算処理装置やメモリを備え、プログラムを実行することにより画像形成装置100の各部の動作を制御する。制御手段110は、記録媒体の搬送異常が検知されたことを示す異常情報を取得する異常情報取得手段111と、後処理装置200において電力供給を制御するための電力制御情報を供給する情報供給手段112に相当する機能を実現する。なお、電力制御情報とは、後述する停止情報と復帰情報の総称である。
【0015】
搬送手段120は、制御手段110からの指示に応じて、記録媒体をあらかじめ定められた搬送経路に沿って搬送する。電力供給手段130は、リレー回路等を備え、搬送手段120に供給する電力を制御する。電力供給手段130は、制御手段110からの指示に応じて、電力を供給したり、電力の供給を停止したりする。検知手段140は、記録媒体の搬送異常を検知するセンサを備え、センサによる検知結果を制御手段110に供給する。画像形成手段150は、記録媒体の搬送経路の途中の決められた位置に設けられ、搬送されてきた記録媒体に画像を形成する。画像形成手段150の記録方式は、特に限定されないが、例えば、電子写真方式である。記憶手段160は、ハードディスクやフラッシュメモリ等の書き換え可能な記憶媒体を備え、制御手段110が処理を実行するために必要なデータを記憶する。記憶手段160が記憶するデータには、搬送異常の態様とその対処との組み合わせを記述した検索テーブルが含まれる。通信手段170は、画像形成装置100と後処理装置200とが連結するためのコネクタ等を備え、後処理装置200との間におけるデータの送受信を行う。
【0016】
図3は、搬送手段120及び検知手段140の構成を示す図である。同図において、二点鎖線は、記録媒体の搬送経路を示している。搬送手段120は、搬送部材1211、1212、1213、…、121l(以下、これらを総称する場合には「搬送部材121」と表記する。)と、駆動手段1221、1222、…、122m(以下、これらを総称する場合には「駆動手段122」と表記する。)とを備える。また、検知手段140は、センサ1411、1412、…、141n(以下、これらを総称する場合には「センサ141」と表記する。)を備える。
【0017】
搬送部材121は、搬送経路に沿って設けられた1対の円柱状のロール部材を対向するように組み合わせてなる部材であり、これらのロール部材により記録媒体を挟み込み、駆動手段122により駆動力を与えられることによって記録媒体を搬送する。駆動手段122は、電力に応じた駆動力を発生させるモータや、駆動力を伝達するギヤ等を備え、対応する搬送部材121を駆動する。駆動手段122は、電力供給手段130により供給される電力に応じて動作する。
【0018】
センサ141は、記録媒体の有無を検知するセンサであり、各々があらかじめ定められた位置に設けられている。センサ141は、本実施形態においては、搬送経路に向かって光を照射し、その光を感知したか否かによって記録媒体の存在を検知する。本実施形態のセンサ141は、記録媒体を検知した状態(以下「オン状態」という。)とそうでない状態(以下「オフ状態」という。)とを識別可能な検知信号を制御手段110に供給する。
【0019】
なお、搬送部材121、駆動手段122及びセンサ141の数(すなわちl、m及びnの各値)は、特に限定されず、搬送する記録媒体のサイズや搬送経路の長さなどに応じて定められてよいものである。また、搬送部材121の数と駆動手段122の数とが同数である必要はなく、1の駆動手段122により複数の搬送部材121を駆動する箇所があってもよい。センサ141の数も、搬送部材121又は駆動手段122の数に依存しない。
【0020】
後処理装置200は、制御手段210と、搬送手段220と、電力供給手段230と、検知手段240と、後処理手段250と、通信手段260とを備える。制御手段210は、CPU等の演算処理装置やメモリを備え、プログラムを実行することにより後処理装置200の各部の動作を制御する。制御手段210は、画像形成装置100から電力制御情報を取得すると、電力制御情報が示す内容に応じて電力供給手段230を動作させる。
【0021】
搬送手段220、電力供給手段230及び検知手段240は、詳細の図示を省略するが、画像形成装置100の同名の手段と共通する機能を有する。すなわち、搬送手段220は、搬送部材121に対応する搬送部材221と、駆動手段122に対応する駆動手段222とを備え、検知手段240は、センサ141に対応するセンサ241を備える。ただし、搬送部材221、駆動手段222及びセンサ241は、これらの数や配置については、画像形成装置100と異なっていてよい。通信手段260は、画像形成装置100の通信手段170に対応する通信手段であり、画像形成装置100との間におけるデータの送受信を行う。
【0022】
後処理手段250は、記録媒体の搬送経路の途中の決められた位置に設けられ、搬送されてきた記録媒体にあらかじめ定められた後処理を行う。ここにおいて、後処理とは、記録媒体に対して施す加工等の処理をいい、例えば、記録媒体にパンチ穴を形成する処理、記録媒体の積み重ね(スタック)や並び替え(ソート)を行う処理、複数の記録媒体を綴じる(ステープル)処理などが該当する。本実施形態の後処理手段250は、これらの後処理のいずれかを行うものであってもよいし、複数の後処理を組み合わせて行うものであってもよい。
【0023】
本実施形態の画像形成システム10の構成は、以上のとおりである。この構成のもと、画像形成装置100は、使用者の指示に応じたサイズの記録媒体を選択して搬送経路に供給し、記録媒体に画像を形成する。画像形成装置100は、画像が形成された記録媒体をさらに搬送し、これを後処理装置200に供給する。すなわち、このとき画像形成装置100の搬送手段120は、後処理装置200に記録媒体を供給する媒体供給手段として機能する。後処理装置200は、記録媒体が供給されると、これに後処理を行う。
【0024】
画像形成装置100及び後処理装置200は、以上の処理を実行中に、記録媒体の搬送異常を監視している。記録媒体の搬送異常とは、記録媒体が予定どおりに搬送されないことをいうものである。この搬送異常には、記録媒体が詰まることによって生じるものと、駆動手段122(又は222)の異常によって生じるものとが考えられるが、いずれの理由であるかは、使用者等が確認をしなければ明らかにならない。しかし、後者の理由によって搬送異常が生じた場合、モータの温度が上昇するなどして、本来の機能や耐久性が得られなくなる可能性がある。そこで、画像形成装置100の制御手段110は、搬送異常を検知した場合に、画像形成処理や後処理を一旦中断させるとともに、駆動手段122(又は222)への電力供給を遮断し、駆動手段122(又は222)に温度の上昇要因となる電力が到達しないようにする給電制御を行う。このときの画像形成装置100の動作は、以下のとおりである。
【0025】
図4は、画像形成装置100が実行する動作を示すフローチャートである。同図に示すように、画像形成装置100の制御手段110は、異常情報が取得されたか否かを判断する(ステップS1)。異常情報は、搬送異常が搬送経路のどの位置において生じたかによって生成の態様が異なる。すなわち、異常情報は、画像形成装置100において生成される場合と、後処理装置200において生成される場合と、双方において生成される場合とがある。画像形成装置100及び後処理装置200の双方において異常情報が生成される場合とは、1枚の記録媒体が画像形成装置100と後処理装置200の間に跨った状態で搬送異常が生じる場合である。このような搬送異常のことを、以下では特に「跨り異常」という。制御手段110は、異常情報が取得されるまで、ステップS1の判断を繰り返す。
【0026】
本実施形態における異常情報は、各センサ141(又は241)によるオン状態とオフ状態の組み合わせを記述したものである。すなわち、本実施形態の異常情報は、どのセンサ141(又は241)がオン状態であり、どのセンサ141(又は241)がオフ状態であるかを示している。この異常情報によると、搬送異常がなければオフ状態になるはずであるセンサ141(又は241)がオフ状態になっていなかったり、あるいは、搬送異常がなければオン状態になるはずであるセンサ141(又は241)がオン状態になっていなかったりしていることがわかるため、搬送異常の位置が特定される。
【0027】
例えば、図5に示す例のように、搬送異常が発生した場合において、センサ1411がオフ状態であり、センサ1412がオン状態であると、少なくとも搬送部材1211には記録媒体(搬送経路中の太い実線部分)が挟み込まれておらず、搬送異常の原因の対象外であることが明らかになる。同様に、センサ1412がオン状態であり、センサ1413がオフ状態であると、少なくとも搬送部材1214には記録媒体が挟み込まれておらず、搬送異常の原因の対象外であることが明らかになる。そうすると、この例においては、搬送部材1212及び1213が設けられた位置について、搬送異常に寄与している原因箇所である可能性があるということが明らかになる。
【0028】
異常情報が取得された場合、制御手段110は、搬送異常が搬送経路のどの位置において生じたかを判断する。具体的には、制御手段110は、異常情報が後処理装置200から取得されたか(ステップS2)、あるいは自装置において生じたか(ステップS3)を判断する。ステップS2の判断が「NO」である場合は、異常情報が画像形成装置100のみにおいて生成された場合である。また、ステップS2の判断が「YES」であり、ステップS3の判断が「NO」である場合は、異常情報が後処理装置200のみにおいて生成された場合である。一方、ステップS2及びS3の判断がともに「YES」である場合は、異常情報が画像形成装置100と後処理装置200の双方において生成された場合であり、跨り異常が生じている場合である。
【0029】
後処理装置200のみの搬送異常である場合、制御手段110は、記憶手段160に記憶された検索テーブルを参照して検索を行うことにより、電力供給を停止する駆動手段222を決定する(ステップS4)。そして、制御手段110は、特定した駆動手段222への電力供給を停止させる旨を記述した停止情報を、通信手段170を介して後処理装置200に送信する(ステップS5)。後処理装置200は、停止情報を受信すると、停止情報の記述内容に従って駆動手段222への電力供給を停止させる。
【0030】
一方、画像形成装置100、すなわち自装置のみの異常である場合、制御手段110は、記憶手段160に記憶された検索テーブルを参照して検索を行うことにより、電力供給を停止する駆動手段122を決定する(ステップS6)。そして、制御手段110は、決定した駆動手段122に対応する電力供給手段130に対して、電力供給を停止させる指示を与える(ステップS7)。なお、制御手段110は、ステップS6において停止の対象とされたもの以外の駆動手段122に対しては、電力の供給を妨げない。ただし、電力を供給されている駆動手段122は、対応する搬送部材121を電力供給中に常に駆動させているわけではない。つまり、搬送部材121が停止して記録媒体を搬送していない状態には、対応する駆動手段122に電力が供給されていない場合と、対応する駆動手段122に電力が供給されているが駆動はしていない場合とがある。
【0031】
また、跨り異常である場合、制御手段110は、記憶手段160に記憶された検索テーブルを参照して検索を行うことにより、電力供給を停止する駆動手段122及び222を決定する(ステップS8)。そして、制御手段110は、決定した(自装置の)駆動手段122については、その駆動手段122に対応する電力供給手段130に対して、電力供給を停止させる指示を与え(ステップS9)、決定した(後処理装置200の)駆動手段222については、その駆動手段222への電力供給を停止させる旨を記述した停止情報を後処理装置200に送信する(ステップS10)。
【0032】
図6は、記憶手段160に記憶された検索テーブルを示す図である。同図に示すように、記憶手段160に記憶された検索テーブルは、異常情報とその異常情報に対応する電力供給手段130(又は230)を示す情報とが組み合わされて記述されている。上述したように、異常情報、すなわち各センサ141(又は241)のオン・オフ状態の組み合わせは、搬送異常に寄与している可能性がある搬送部材121(又は221)を特定可能な情報である。搬送部材121(又は221)を駆動する駆動手段122(又は222)はあらかじめ決められているため、異常情報が特定されれば、搬送異常に寄与している可能性がある搬送部材121(又は221)を駆動している駆動手段122(又は222)も特定され、その結果、その駆動手段122(又は222)に電力を供給している電力供給手段130(又は230)も特定される。記憶手段160に記憶された検索テーブルは、このような異常情報と電力供給手段130(又は230)の組み合わせを、それぞれの異常情報についてあらかじめ特定しておいて記述したものである。ゆえに、制御手段110は、取得した異常情報とこの検索テーブルとがあれば、発生した搬送異常に寄与している可能性がある搬送部材121(又は221)に駆動力が与えられないように制御可能である。
【0033】
制御手段110は、以上のように電力供給を制御した後、搬送異常が解消されたか否かを判断する(ステップS11)。この判断は、例えば、使用者の操作に基づいて行われる。使用者は、画像形成装置100又は後処理装置200の搬送異常を確認し、詰まっている記録媒体を排出するなどして搬送異常の発生前の状態に戻すと、搬送異常による画像形成処理や後処理の中断を解除するための操作(ボタン押下等)を行う。搬送異常が解消された場合、制御手段110は、中断を解除し、画像形成装置100及び後処理装置200が中断前の動作を続行する状態にさせる復帰動作を行う(ステップS12)。制御手段110は、後処理装置200の復帰動作を行う場合、復帰動作を行わせる旨の指示を表す復帰情報を後処理装置200に送信する。後処理装置200の制御手段210は、この復帰情報を取得すると、自装置に対して復帰動作を行う。
【0034】
以上のとおり、本実施形態の画像形成システム10によれば、記録媒体の搬送異常が発生した場合に、搬送異常に寄与している原因箇所である可能性がある位置に設けられた搬送部材121(又は221)を駆動する駆動手段(又は222)への電力供給が遮断される給電制御が行われる。よって、本実施形態の画像形成システム10によれば、搬送異常の原因がいずれかの駆動手段122(又は222)の異常である場合であっても、その駆動手段122(又は222)に温度の上昇要因となる電力が到達しない。
【0035】
[変形例]
上述した実施形態は、本発明の一例である。本発明は、例えば、以下の変形例を適用可能である。なお、上述した実施形態及び以下の変形例は、必要に応じて、これらを組み合わせて適用してもよい。
【0036】
(変形例1)
図7は、検索テーブルの変形例を示す図である。同図に示す検索テーブルは、図6に示す検索テーブルに含まれる情報に加え、記録媒体の搬送方向についての長さを表す長さ情報を含む。図6の検索テーブルに代えて図7の検索テーブルを用いる場合、制御手段110は、搬送経路に供給した記録媒体のサイズとその搬送方向(縦長又は横長)の情報を一時的に記憶する。
【0037】
本例において、制御手段110は、搬送異常が発生すると、そのときに搬送経路を搬送中である記録媒体のサイズとその搬送方向を読み出すことにより、その記録媒体の搬送方向についての長さを特定する。そして、制御手段110は、異常情報と長さ情報とを検索キーに用いて検索テーブルを検索し、対応する電力供給手段130(又は230)を決定する。
【0038】
記録媒体の長さが異なると、その記録媒体を挟んでいる(可能性がある)搬送部材121(又は221)が異なる場合がある。例えば、搬送方向について長い記録媒体であるほど、より多くの搬送部材121(又は221)に挟まれている状態になり得るし、跨り異常が生じる可能性も高くなる。本例においては、給電制御において、長さ情報を用いることにより、記録媒体の長さを考慮した対処が行われる。
なお、上述した実施形態のように長さ情報を有しない場合にあっては、使用される記録媒体のうちの辺が最長であるものを基準として検索テーブルを構成すればよい。
【0039】
(変形例2)
本発明は、記録媒体の搬送経路が1通りでない場合を含むものである。記録媒体の搬送経路が複数通りある場合、検索テーブルは、記録媒体が搬送される搬送経路を特定する経路情報を含んでいると望ましい。
【0040】
図8は、検索テーブルの変形例であり、経路情報を含む検索テーブルを示す図である。同図に示す検索テーブルは、図6に示す検索テーブルに含まれる情報に加え、経路情報を含む。図6の検索テーブルに代えて図8の検索テーブルを用いる場合、制御手段110は、供給した記録媒体が進行する搬送経路を示す情報を一時的に記憶する。
【0041】
図9は、複数の搬送経路を有する構成を例示する図である。この構成は、記録媒体の表裏を反転する機構を備えるものであり、搬送部材1211〜1219を含んでいる。記録媒体を反転させない場合、記録媒体は、図9(a)中の矢印Aで示す経路を進行する。一方、記録媒体を反転させる場合、記録媒体は、図9(a)中の矢印B、C及びDで示す経路を進行する。
【0042】
記録媒体の搬送経路が複数あると、センサ141(又は241)の配置によっては、搬送異常が検知されたときに搬送経路を特定できない場合がある。例えば、センサ141が図9に示す配置である場合は、記録媒体(搬送経路中の太い実線部分)が図9(b)に示す位置にあるときと図9(c)に示す位置にあるときとを区別することができない。よって、センサ1413及び1414の検知結果によって搬送異常が検知された場合であっても、電力供給を停止すべき駆動手段122に対応する搬送部材121が搬送部材1212又は1219のいずれであるかを特定できないことがある。
【0043】
本例において、制御手段110は、搬送異常が発生すると、そのときに搬送経路を搬送中である記録媒体の搬送経路を示す情報を読み出すことにより、その記録媒体の搬送経路を特定する。そして、制御手段110は、異常情報と経路情報とを検索キーに用いて検索テーブルを検索し、対応する電力供給手段130(又は230)を決定する。
【0044】
(変形例3)
本発明に係る給電制御は、電力の供給を遮断しているときに、これを一時的に解除するものであってもよい。例えば、詰まっている記録媒体の排出に係る動作をする場合には、電力供給の遮断を解除し、記録媒体の排出を促進するように搬送を行ってもよい。ここにおいて、記録媒体の排出に係る動作とは、例えば、搬送経路に対応して設けられた排出用のカバーを開ける動作や、使用者が行う排出に必要な操作(ボタン押下等)である。本発明に係る搬送装置は、このような記録媒体の排出に係る動作を検知する動作検知手段を備え、かかる動作を検知した場合に、電力供給の遮断を一時的に解除する構成であってもよい。動作検知手段は、例えば、カバーの開閉を検知するセンサである。
【0045】
また、上述した跨り異常が発生した場合にあっては、搬送経路の上流側の搬送装置(画像形成装置100)において電力供給の遮断を一時的に解除して記録媒体を下流側に搬送させ、搬送経路の下流側の搬送装置(後処理装置200)において記録媒体の排出を行うようにしてもよい。この場合、下流側の搬送装置は、上述した動作検知手段を備えるとともに、記録媒体の排出に係る動作が検知されたことを表す動作情報を上流側の搬送装置に供給し、上流側の搬送装置は、動作情報を取得する動作情報取得手段を備え、動作情報が取得された場合に電力供給の遮断を一時的に解除し、記録媒体を下流側に搬送させたら再び電力供給を遮断する。
【0046】
(変形例4)
本発明に係る給電制御は、搬送異常が検知された位置にある搬送部材の駆動手段への電力供給を停止させるだけではなく、搬送異常が検知された位置の搬送部材とその前後にある搬送部材とに対応する駆動手段への電力供給を停止させるものであってもよい。また、本発明に係る給電制御は、搬送異常が検知された装置の駆動手段への電力供給を、部分的にではなく全体的に遮断するようにしてもよい。
【0047】
(変形例5)
本発明に係る画像形成システムは、複数の後処理装置(搬送装置)を連結した構成としてもよい。例えば、本発明に係る画像形成システムは、画像形成装置と、画像形成装置に連結する第1の後処理装置と、第1の後処理装置に連結する第2の後処理装置とを備える構成であってもよい。この場合において、給電制御の動作主体は、画像形成装置、第1の後処理装置又は第2の後処理装置のいずれであってもよい。また、本発明に係る画像形成システムは、記録媒体の裁断等の前処理を行う前処理装置と画像形成装置とを備える構成であってもよい。この場合において、画像形成装置が給電制御の動作主体となるのであれば、画像形成装置は、前処理装置から記録媒体の供給を受ける手段を備える。
【符号の説明】
【0048】
10…画像形成システム、100…画像形成装置、200…後処理装置、110、210…制御手段、120、220…搬送手段、130、230…電力供給手段、140、240…検知手段、150…画像形成手段、160…記憶手段、170、260…通信手段、250…後処理手段、121、221…搬送部材、122、222…駆動手段、141、241…センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
あらかじめ定められた搬送経路に沿って設けられ、駆動力が与えられることにより記録媒体を搬送する搬送手段と、
前記搬送手段を駆動する電力を供給する電力供給手段と、
前記搬送経路における前記記録媒体の搬送異常を検知する検知手段と
を有する搬送装置であって自装置と異なる他の搬送装置の前記搬送経路に記録媒体を供給する媒体供給手段と、
前記他の搬送装置から、搬送異常が検知されたことを表す異常情報を取得する異常情報取得手段と、
前記異常情報取得手段により異常情報が取得されると、前記電力供給手段に電力の供給を停止させる指示を表す停止情報を前記他の搬送装置に供給する情報供給手段と
を備えることを特徴とする搬送装置。
【請求項2】
あらかじめ定められた搬送経路に沿った複数の位置に設けられ、駆動力が与えられることにより記録媒体を搬送する複数の搬送部材と、
各々が異なる前記搬送部材を駆動する複数の駆動手段と、
各々が異なる前記駆動手段に電力を供給する複数の電力供給手段と、
前記搬送経路の複数の位置において前記記録媒体の搬送異常を検知する複数の検知手段と
を有する搬送装置であって自装置と異なる他の搬送装置の前記搬送経路に記録媒体を供給する媒体供給手段と、
前記他の搬送装置から、搬送異常が検知された位置を表す異常情報を取得する異常情報取得手段と、
前記異常情報取得手段により取得された異常情報が表す位置に応じた搬送部材を駆動する駆動手段に電力を供給する電力供給手段に電力の供給を停止させる指示を表す停止情報を前記他の搬送装置に供給する情報供給手段と
を備えることを特徴とする搬送装置。
【請求項3】
前記搬送異常に係る前記記録媒体の搬送方向についての長さを記憶する記憶手段を備え、
前記情報供給手段が、電力の供給を停止させる前記電力供給手段を、前記記憶手段に記憶された長さに応じて決定する決定手段を備える
ことを特徴とする請求項2に記載の搬送装置。
【請求項4】
前記搬送経路が複数あり、
前記搬送異常に係る前記記録媒体が進行する搬送経路を記憶する記憶手段を備え、
前記情報供給手段が、電力の供給を停止させる前記電力供給手段を、前記記憶手段に記憶された搬送経路に応じて決定する決定手段を備える
ことを特徴とする請求項2又は3に記載の搬送装置。
【請求項5】
前記媒体供給手段が、
あらかじめ定められた搬送経路に沿って設けられ、駆動力が与えられることにより記録媒体を搬送する搬送部材と、
前記搬送部材を駆動する駆動手段と、
前記駆動手段に電力を供給する電力供給手段と、
前記搬送経路における前記記録媒体の搬送異常を検知する検知手段とを備え、
前記電力供給手段が、自装置の前記検知手段と前記他の搬送装置の前記検知手段とが搬送異常を検知した場合に、前記駆動手段への電力の供給を停止する
ことを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の搬送装置。
【請求項6】
前記他の搬送装置が、前記搬送異常に係る前記記録媒体の排出に係る動作を検知する動作検知手段を備え、
前記他の搬送装置から、前記動作が検知されたことを表す動作情報を取得する動作情報取得手段を備え、
前記電力供給手段が、前記動作情報が取得された場合に、電力の供給の停止を一時的に解除する
ことを特徴とする請求項5に記載の搬送装置。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかに記載の搬送装置を前記記録媒体の搬送機構として備え、
前記搬送機構により搬送される記録媒体に画像を形成する画像形成手段を備える
ことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−162764(P2010−162764A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−6877(P2009−6877)
【出願日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】