説明

搬送装置

【課題】第1軸方向、第2軸方向の等速移動区間を長くでき、また、第1軸方向および第2軸方向のうち、いずれかの方向で単独で行われる加速・減速の回数を少なくする。
【解決手段】第1軸ガイド8に沿って移動するスライダー9の移動方向J1と、第2軸ガイド10に沿って移動するホルダー11の移動方向J2が、ホルダー11に取り付けられたチャック6の把持および把持解除の前後に行われる垂直方向の上下移動並びに搬送対象物を搬送元から搬送先に向かって運ぶための水平方向の搬送移動とに対し、平行ではなく、チャック6が搬送対象物を把持してから搬送先で把持解除するまでのホルダー11の移動を、第1軸駆動機構によるスライダー9のJ1方向への移動と第2軸駆動機構によるホルダー11のJ2方向への移動とを合成することによって行わせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はチャックの2次元移動によって搬送対象物を搬送元から搬送先に搬送する搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
2次元運動機構としては特許文献1に開示されたものがある。これは、X軸駆動機構によってX軸方向に移動されるX軸移動ビームと、Y軸駆動機構によってY軸方向に移動されるY軸移動ビームとを備え、これらX軸移動ビームとY軸移動ビームによってスライダーをXY軸方向(2次元方向)に移動させる構成である。
【0003】
この2次元運動機構を搬送装置として利用する場合、スライダーに搬送対象物を把持するチャックを取り付けるが、チャックは把持動作および把持解除動作の前後に上下方向、左右方向の移動を必要とする。このため、2次元運動機構のX軸方向を垂直(上下)方向、Y軸方向を水平方向に定め、搬送元ではX軸移動ビームを上下方向に往復移動させることにより、チャックを搬送対象物が置かれている位置まで下げ、チャックで搬送対象物を把持して持ち上げる。次に、Y軸移動ビームを水平方向に移動させてチャックにより把持した搬送対象物を搬送元から搬送先へと運び、搬送先ではX軸移動ビームを上下方向に往復移動させることにより、搬送対象物を載置位置まで下げてチャックの把持解除を行い、そしてチャックを上昇させる、というように構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−230991号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のように2次元運動機構を搬送装置に利用した場合、運動機構のY軸方向(第1軸方向)とX軸方向(第2軸方向)とは、それぞれ、チャックが把持した搬送対象物を搬送元から搬送先へ運ぶ際のホルダーの移動方向(水平方向)とチャックが把持・把持解除する際のホルダーの移動方向(上下方向)とに対し、それぞれ平行となるように定められる。このため、搬送元で搬送対象物を把持して搬送先で搬送対象物の把持を解除するまでの搬送動作中、X軸移動ビームとY軸移動ビームのいずれか一方しか動作していない形態のものとなる。
【0006】
X軸移動ビームおよびY軸移動ビームの移動動作は加速・減速を伴い、移動距離がある程度長い場合には、加速過程で把持対象物の質量などに応じて定められた最高速度に達すると、その後は等速移動を行って減速過程に入るが、X軸移動ビームが上下方向の移動を担い、Y軸移動ビームが水平の移動を担う2次元運動機構では、X軸移動ビームおよびY軸移動ビームの等速移動区間(最高速での移動区間)が比較的短いので、平均移動速度が低くなる。また、搬送対象物を把持した後の上方への移動、搬送先への水平移動、搬送対象物の把持を解く前の下方への移動は、いずれもX軸移動ビームおよびY軸移動ビームの単独での加速・減速であるので、加減速回数(6回)が多くなる。
【0007】
このように、従来の2次元運動機構を使用した搬送装置では、X軸移動ビームおよびY軸移動ビームの平均移動速度が低く、また、移動動作中のX軸移動ビームおよびY軸移動ビームの単独での加速・減速が多数回繰り返されるため、搬送に要する時間が長くなるという問題があった。
【0008】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたもので、その目的は、第1軸方向、第2軸方向の等速移動区間を長くでき、また、第1軸方向および第2軸方向のうち、いずれかの方向で単独で行われる加速・減速の回数を少なくすることができ、搬送に要する時間を短縮することが可能な搬送装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の発明は、第1軸方向と第2軸方向が、ホルダーに取り付けられたチャックの把持・把持解除の前後に行われる把持側往復移動方向と、把持解除側往復移動方向並びに搬送対象物を搬送元から搬送先に向かって運ぶための搬送移動方向とに対し、平行ではなく、チャックが前記搬送対象物を把持してから前記搬送先で把持解除するまでのホルダーの移動を、前記第1軸駆動機構による前記第1軸ガイドの前記第1軸方向への移動と前記第2軸駆動機構による前記ホルダーの前記第2軸方向への移動とを合成することによって行わせるので、第1軸方向および第2軸方向の等速移動区間を長くすることが可能で、しかも、第1軸方向または第2軸方向のいずれかの方向の移動について、単独での加速・減速の回数を減らすことができる。
【0010】
請求項2の発明では、チャックの移動軌跡中の第1位置〜第4位置を結ぶ四辺形の2本の対角線に対して第1軸方向および第2軸方向が平行であるので、第1軸方向および第2軸方向の移動距離を最短とすることができる。
請求項3の発明では、第1軸方向および第2軸方向をチャックの移動軌跡に応じて変えることができるので、状況に応じてホルダーの移動軌跡を変えた場合、それぞれの移動軌跡に対して第1軸方向および第2軸方向を、短時間搬送にとって最適な方向に変えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1の実施形態における搬送装置全体の概略構成を示す正面図
【図2】図1のA−A線に沿って切断して示す断面図
【図3】図1のB−B線に沿って切断して示す断面図
【図4】図1のC−C線に沿って切断して示す拡大断面図
【図5】スライダーの第1軸方向への移動およびホルダーの第2軸方向への移動の合成によって得られるチャックの移動方向を示す図
【図6】部品搬送のためのチャックの移動軌跡を示す図
【図7】部品搬送時の第2軸ガイド、ホルダーおよびチャックの移動を順に示す図
【図8】(a)および(b)は部品搬送時における第1軸ガイドに対するスライダーおよび第2軸ガイドに対するホルダーの移動方向と速度とを示す図、(c)は従来の搬送装置の一例を示す概略図、(d−1)および(d−2)は従来のチャックの軌跡の一例を示す図および同軌跡のときの2部材の移動方向と速度を示す図、(e−1)および(e−2)は従来のチャックの軌跡の他の例を示す図および同軌跡のときの2部材の移動方向と速度を示す図
【図9】本発明の第2の実施形態を示し、(a)は搬送装置の概略図、(b)は部品搬送時のチャックの軌跡を示す図
【図10】本発明の第3の実施形態を示す図9相当図
【図11】本発明の第4の実施形態を示す図1相当図
【図12】平面図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施形態により具体的に説明する。
(第1の実施形態)
図1〜図8は本発明の第1の実施形態を示している。この第1の実施形態の搬送装置1は、図1に示すように、部品2をコンベア3上の製品主体4に組み付ける組立ロボットを兼用する。部品2は、コンベア3の横方向、例えば左方に設置されたシュート5により送られてきて図示しない間欠送り機構によって1個ずつシュート5の先端部に送られる。そして、製品主体4がコンベア3により所定の組立位置に送られてくると、搬送装置1は、シュート5の先端にある部品2をチャック6により把持して当該シュート5からコンベア3へと搬送し、当該部品2を製品主体4の穴4aに挿入して組み付ける。従って、部品2は搬送対象物、シュート5の先端が搬送元、組立位置にある製品主体4が搬送先となる。なお、シュート5の先端にある部品2が搬送されると、その都度、次の部品2がシュート5の先端に自動供給される。
【0013】
搬送装置1は、コンベア3が設置されたフロアに据え付けられる基体7を備え、この基体7に、長尺な第1軸ガイド8が水平方向に対して45度傾斜する状態で固定されている。第1軸ガイド8には、図2および図3に示すように、スライダー9が当該第1軸ガイド8の長手方向に沿う方向、つまりJ1で示す第1軸方向に移動可能に支持されており、このスライダー9に、長尺な第2軸ガイド10が水平方向に対して45度傾斜する状態、つまり第1軸ガイド8と直交する状態で固定されている。
【0014】
更に、第2軸ガイド10には、図3および図4に示すように、ホルダー11が当該第2軸ガイド10の長手方向に沿う方向、つまりJ2で示す第2軸方向に移動可能に支持されている。以上のことから、第1軸(J1)と第2軸(J2)とは互いに直交し、それぞれ水平方向に対して45度傾斜している。ホルダー11には、チャック取付脚12が固定されている。チャック取付脚12は、ホルダー11から垂直下方に突出し、下端部に前記チャック6が開閉可能に取り付けられている。
【0015】
さて、第1軸ガイド8および第2軸ガイド10には、それぞれスライダー9およびホルダー11を移動させるための第1軸駆動機構13および第2軸駆動機構14が設けられている。これら第1軸駆動機構13および第2軸駆動機構14は、ボールねじ機構15、つまりボールねじナット16および17にねじシャフト18および19を螺合させて構成した機構を主体としている。第1軸駆動機構13において、ボールねじナット16は、図2に示すようにスライダー9に固定され、ねじシャフト18は、第1軸ガイド8に、回転中心軸線を第1軸に一致させた状態で回転可能に支持されている。また、第2軸駆動機構14において、ボールねじナット17は、図3に示すようにホルダー11に固定され、ねじシャフト19は、第2軸ガイド10に、回転中心軸線を第2軸に一致させた状態で回転可能に支持されている。
【0016】
第1軸ガイド8および第2軸ガイド10の一端側には、第1軸駆動機構13および第2軸駆動機構14のねじシャフト18および19を回転駆動するモータ20および21が固定されている。そして、モータ20によりねじシャフト18が回転されると、スライダー9ひいては第2軸ガイド10がねじシャフト18の軸方向である第1軸方向に移動し、モータ21によりねじシャフト19が回転されると、ホルダー11がねじシャフト19の軸方向である第2軸方向に移動する。
【0017】
さて、チャック6は一対の把持爪6aを開閉させて部品2を把持し、或いは把持解除する。このため、部品2を把持する際、或は、その把持を解除する際には、チャック6を上下方向(垂直方向)に直線的に往復移動させる必要がある。つまり、部品2を把持する際には、把持爪6aを開いた状態でチャック6を下方に移動させ、部品2の上部が一対の把持爪6aの内側に入ったところでチャック6の下方への移動を停止し、一対の把持爪6aを閉動作させる。この把持爪6aの閉動作によりチャック6は部品2を把持する。この後、チャック6を上方に移動させて把持した部品2がシュート5の内面や他の部品2に横方向から当たらないようにして当該把持した部品2をシュート5から引き上げる。以上の上下移動を把持側往復移動という。なお、チャック6の把持爪6aは、モータ或は空圧シリンダなどの動作源(図示せず)によって開閉される。
【0018】
部品2の把持を解除する際には、部品2が製品本体4の穴4aの直上に位置した状態で、チャック6を下方に移動させ、部品2の下部が製品主体4の穴4a内に挿入されたところでチャック6の下方への移動を停止し、一対の把持爪6aを開動作させる。この把持爪6aの開動作によりチャック6は部品2の把持を解除する。この後、把持爪6aが製品主体4の穴4a内に挿入された部品2に当たらないように、チャック6を上方に移動させる。以上を把持解除側往復移動という。
【0019】
ところで、第1軸ガイド8および第2軸ガイド10は水平方向に対して45度傾いている。つまり、チャック6が部品2を把持し、或いは把持を解除する際に必要な当該チャック6の上下移動方向および部品2を搬送元であるシュート5の先端部上方から搬送先である組立位置にある製品主体4の上方まで搬送するために必要なチャック6の水平方向移動に対し、第1軸および第2軸が異なる方向になっているのである。このため、チャック6を上下方向に移動させたり、チャック6を横方向(水平方向)に移動させたりするには、スライダー9或いはホルダー11を単独で第1軸方向或いは第2軸方向に移動させるのではなく、両方を同時に第1軸方向および第2軸方向に移動させる。
【0020】
このことを詳述する。まず、スライダー9およびホルダー11は、実際には第1軸および第2軸に沿って右上方向、左下方向および右下方向、左上方向に移動するが、以下では、右上方向と右下方向の移動を単に右方向の移動と称し、左下方向と左下方向の移動を単に左方向の移動と称することとする。
【0021】
チャック6を垂直上方に移動させるには、図5(a)に示すように、第1軸駆動機構13によりスライダー9(第2軸ガイド10)を右方向に移動させながら、スライダー9と同速度で第2軸駆動機構14によりホルダー11を左方向に移動させる。チャック6を右方向に水平移動させるには、図5(b)に示すように、第1軸駆動機構13によりスライダー9を右方向に移動させながら、スライダー9と同速度で第2軸駆動機構14によりホルダー11を右方向に移動させる。チャック6を垂直下方に移動させるには、図5(c)に示すように、第1軸駆動機構13によりスライダー9を左方向に移動させながら、スライダー9と同速度で第2軸駆動機構14によりホルダー11を右方向に移動させる。更に、チャック6を左方向に水平移動させるには、図5(d)に示すように、第1軸駆動機構13によりスライダー9を左方向に移動させながら、スライダー9と同速度で第2軸駆動機構14によりホルダー11を左方向に移動させる。
【0022】
次に、部品2を搬送元であるシュート5から搬送先である組立位置にある製品主体4まで搬送して当該製品主体4に組み付ける場合の作用を説明する。まず、チャック6がシュート5の先端部にある部品2の真上にある状態から、チャック6を垂直下方に移動させるべく、第1軸駆動機構13によりスライダー9を左方向に移動させると同時に、第2軸駆動機構14によりホルダー11を右方向に移動させる。そして、チャック6は、図6にP1で示す下降位置で停止したところで、図7(a)に示すように、一対の把持爪6aを閉じて部品2を把持する。この間、スライダー9およびホルダー11は、停止から加速して定速移動に移り減速して停止するが、第2軸ガイド10およびホルダー11が常に同速度で移動することによってチャック6は垂直下方に直線移動する。
【0023】
部品2の把持後、チャック6を直上の図6に示す所定位置P2に向けて上方へ直線移動させるべく、第1軸駆動機構13によりスライダー9を右方向に移動させると同時に、第2軸駆動機構14によりホルダー11を左方向に移動させる(図7(b)参照)。このときも、スライダー9およびホルダー11は、停止−加速−定速移動するが、その間、スライダー9およびホルダー11が同速度で移動することによってチャック6は垂直上方に直線移動する。
【0024】
チャック6が所定位置P2から所定距離だけ下方のPd2位置まで上昇したところで、第1軸駆動機構13のモータ20をそのまま定速回転に維持しながら、第2軸駆動機構14のモータ21を減速させてホルダー11の右移動を一定の減速度で減速させ、そして、停止したと同時にモータ21を逆回転方向に一定の加速度で加速させる。すると、スライダー9が定速度で右方向に移動するも、ホルダー11の左方向移動が減速して停止し、直ちに右方向移動に転じて加速してゆくため、チャック6は、図6に示すようにPd2位置から円弧状軌跡を描きながら右方向移動へと転換してゆく。
【0025】
そして、第2軸駆動機構14のモータ21が第1軸駆動機構13のモータ20と同速度(ホルダー11が第2軸ガイド10と同速度)になったところで、第2軸駆動機構14のモータ21を定速回転に切り換える。すると、チャック6は、上記位置P2から所定距離水平に右方向へ隔たった位置Pr2で右方向の水平移動に転じ、組立位置にある製品主体4の穴4aの直上位置P3に向かって水平に移動してゆくようになる(図7(c),(d)参照)。
【0026】
右方向への水平移動によってチャック6が位置P3より所定距離手前(左方)の位置Pl3に達すると、今度は、第2軸駆動機構14のモータ21をそのまま定速回転に維持しながら、第1軸駆動機構13のモータ20を減速させて第2軸ガイド10の右移動を一定の減速度で減速させ、停止したと同時にモータ20を逆回転方向に一定の加速度で加速させる。すると、ホルダー11が定速度で右方向に移動するも、スライダー9の右方向移動が減速して停止し、直ちに左方向移動に転じて加速してゆくため、チャック6は位置Pl3から円弧状軌跡を描きながら下方向移動へと方向転換してゆく。そして、ホルダー11がスライダー9と同速度になったところで、第2軸駆動機構14のモータ21を第1軸駆動機構13のモータ20と同速の定速回転に切り換える。このため、チャック6は、上記位置P3から所定距離下方向へ隔たった位置Pd3で鉛直下方へと直線移動してゆくようになる(図7(e)参照)。
【0027】
その後、両モータ20,21を減速させる。これによりチャック6が部品2を製品主体4の穴4a内へゆっくりと挿入してゆくようになる。そして、チャック6が部品2を穴4a内に挿入し終える位置P4に達すると、両モータ20,21が停止し、従ってチャック6が最下降位置P4で停止する。次にチャック6は、把持爪6aを開き、部品2の把持を解除する(図7(f)参照)。
【0028】
その後、前述したと同様にしてチャック6が垂直上方に移動して部品2から離れてゆく。位置Pd3に達したところで、第1軸駆動機構13のモータ20を減速し停止したら直ちに逆方向に回転させ、且つ加速させる。これにより、チャック6が位置Pd3から位置Pl3に向かって円弧を描きながら移動し、位置P13で第1軸駆動機構13のモータ20が第2軸駆動機構14のモータ21と定速で回転することから、チャック6が位置P2に向かって左方に水平移動してゆくようになる。
【0029】
左方向への水平移動によってチャック6が位置P2より所定距離手前(右方)の位置Pr2に達すると、今度は、第1軸駆動機構13のモータ20をそのまま定速回転に維持しながら、第2軸駆動機構14のモータ21を減速させてホルダー11の左移動を一定の減速度で減速させ、停止したと同時にモータ21を逆回転方向に一定の加速度で加速させる。すると、スライダー9が定速度で左方向に移動するも、ホルダー11の左方向移動が減速して停止し、直ちに右方向移動に転じて加速してゆくため、チャック6は位置Pr2から円弧状軌跡を描きながら下方向移動へと方向転換してゆく。そして、第1軸駆動機構13のモータ20と同速度になったところで、モータ21を定速回転に切り替えて移動に切り替える。このため、チャック6は、上記位置P2から所定距離下方向へ隔たった位置Pd2で鉛直下方へと移動してゆくようになる。
【0030】
その後、両モータ20,21を減速させ、これによりチャック6が一対の把持爪6a内にシュート5の先端にある部品2を入り込ませるようにゆっくりと下降し、P1に位置したところで両モータ20,21の停止により停止する。以後、前述したと同様にして部品2をシュート5から引き上げて製品主体4へと搬送する動作に移行する。
【0031】
以上の部品2を位置P1で把持してから位置P4で部品の把持を解除するまでのスライダー9およびホルダー11の移動方向と移動速度とを示すと、図8(a)および(b)のようになる。この図8(a)および(b)から明らかなように、スライダー9(モータ20)は、位置P1から位置Pl3と位置Pd3の中間(モータ20の回転方向が切り替る時)までの間は、右方向移動であり、一方、ホルダー11(モータ21)は、位置Pd2とPr2の中間(モータ21の回転方向が切り替る時)から位置P4までの間は、右方向移動である。このため、第2軸ガイド10、ホルダー11が停止することなく移動し続けることができる距離が長くなり、従って、最高速度で定速度移動できる区間が長くなる。
【0032】
しかも、スライダー9およびホルダー11の同時移動によってチャック6を上下動させ、水平移動させるので、第1軸ガイド8と第2軸ガイド10とが直交する本実施形態では、チャック6の定速移動速度としてはスライダー9およびホルダー11の速度の約1.4倍となる。
その上、チャック6により部品2を把持してから把持を解除するまでの間に、チャック2は方向転換するが、その方向転換のための第2軸ガイド10またはホルダー11の減速加速回数が多いと、部品2の搬送に要する時間が長くなるが、本実施形態では、方向転換のための第2軸ガイド10またはホルダー11の減速加速回数は、回と少ない。
【0033】
ここで、方向転換のための第2軸ガイド10またはホルダー11の減速加速回数には、部品2を把持した後のチャック6の上昇時の加速および部品2の把持解除のためのチャック6の下降時の減速も方向転換として数え、また、第2軸ガイド10およびホルダー11が同時に加減速する場合には1回として数える。
この方向転換のための第2軸ガイド10またはホルダー11の減速加速回数の数え方を本実施形態に該当させると、チャック位置P1から上昇する際の第2軸ガイド10およびホルダー11の同時加速、位置Pd2から位置Pr2までの間のホルダー11の減速加速、位置Pl3から位置Pd3までの間のスライダー9の減速加速、位置P4まで下降する際の第2軸ガイド10またはホルダー11の減速の合計4回となる。
【0034】
これに対し、従来装置では、6回である。この従来装置において、単独での加減速回数が6回であることについて、図8(c),(d−1)および(d−2)により説明する。まず、図8(c)は従来装置を示しており、基体101に、ホルダー102が垂直方向のJ2軸に沿って移動可能に設けられ、ホルダー102に取り付けられた水平アーム103に、スライダー104がJ1軸で示す水平方向に沿って移動可能に設けられ、スライダー104にチャック105を取り付けたチャック取付脚106が取り付けられている。そして、チャック105は、図8(d−1)に示すように、位置P1で部品107を把持した後、位置P2まで垂直に上昇して停止し、位置P2から水平右方向に移動して位置P3で停止し、その後、位置P3から垂直に下降して位置P4で停止し、部品105の把持を解除する。
【0035】
このP1−P2−P3−P4の軌跡を辿る場合のホルダー102とスライダー104の移動方向と移動速度は図8(d−2)のようになる。なお、図8(d−2)では、ホルダー102をJ2で示し、スライダー104をJ1で示した。この図8(d−2)から、ホルダー102の単独での加速および減速は合計4回、スライダー104の単独での加速および減速は合計2回で、前述した方向転換のためのホルダー102またはスライダー104の減速加速回数は、6回であることが分かる。
【0036】
図8(c)の従来装置であっても、ホルダー102が位置P1まで上昇する途中の位置Pd2で、ホルダー102が上方移動を減速すると同時に、スライダー104が水平右方向に加速移動し始め、スライダー104が位置P3に至る途中の位置Pl3で減速すると同時に、ホルダー102が下方向に加速移動し始めるというように動作させると、チャック105の移動軌跡は図8(e−1)のようになる。
【0037】
そして、このときのホルダー102とスライダー104の移動方向と移動速度は図8(e−2)のようになる。この図8(e−2)から、ホルダー102(J2で示す)とスライダー104(J1で示す)のうち、前述した方向転換のためのホルダー102またはスライダー104の減速加速回数は、位置P1から位置Pd2に向かって上昇する際の水平アーム102の加速時と、Pd2からPr2までのホルダー102とスライダー104が同時に減速加速する時と、Pl3からPd3までのスライダー104とホルダー102とが同時に減速加速する時と、位置P4に向ってスライダー104が下方に減速移動する時の4回である。
【0038】
しかしながら、位置Pd2からPr2までの間、および位置Pl3から位置Pd3までの間でのホルダー102とスライダー104の加減速度は、チャック107に円弧状軌跡を取らせる関係で小さく設定される上、ホルダー102の垂直移動距離、スライダー104の水平移動距離は短いので、高速度での定速移動距離が短く、したがって、部品107の搬送に要する時間が長くなる。
【0039】
これに対し、本実施形態では、位置P1から位置P4までの間で、ホルダー11とスライダー9のうちの一方しか加速、減速しない時期は4回で、しかも、ホルダー11とスライダー9の連続移動距離は長いので、結果として、部品2の搬送の所要時間を短縮できるものである。
【0040】
(第2の実施形態)
図9は本発明の第2の実施形態を示す。この実施形態は、上述の第1の実施形態において、部品2を把持するときのチャック6の位置を第1位置A1、部品2を把持した後に垂直上方へと移動し、そして、水平方向へと方向転換するために垂直上方への直線移動から円弧状移動に移るときのチャック6の位置(Pd2に相当:把持側復移動の終点)を第2位置A2、把持した部品2を製品主体4の穴4aに挿入するために、円弧状移動から垂直下方への直線移動に移るときのチャック6の位置(Pd3に相当:把持解除側復移動の始点)を第3位置A3、把持を解除する位置を第4位置A4としたとき、これら第1位置A1〜第4位置A4を結んでできる四辺形A1,A2,A3,A4を仮定し、この四辺形の2つの対角線のうち、第1位置A1と第3位置A3とを結ぶ対角線D1と平行となるように第1軸ガイド8の傾きを設定し、第2位置と第4位置とを結ぶ対角線と平行となるように第2軸ガイド10の傾きを設定したものである。
このようにすると、部品2を搬送元から搬送先まで搬送するためのスライダー9とホルダー11の移動距離が最短に近いものとすることができ、より短時間で部品2を把持して製品主体4に組み付けることができる。
【0041】
(第3の実施形態)
図10は本発明の第3の実施形態を示す。これは、チャック6の上下方向の移動距離が部品2を把持して上昇するときの上方への移動距離と、把持した部品2を製品主体4に向って降ろすときの下方への移動距離とが異なる場合に対応したもので、この場合も上記第2の実施形態と同様の四辺形A1,A2,A3,A4を仮定し、その2つの対角線に平行となるように第1軸ガイド8および第2軸ガイド10を交差させたものである。
【0042】
(第4の実施形態)
図11および図12は本発明の第4の実施形態を示す。これは、基体7に対する第1軸ガイド8の交差角、第1軸ガイド8に対する第2軸ガイド10の交差角、第2軸ガイド10に対するチャック支持脚12の交差角を可変にしたものである。
即ち、基体7に角度設定用の例えばステッピングモータからなる第1のモータ22が取り付けられ、この第1のモータ22の回転軸22aに第1軸ガイド8が取り付けられている。従って、第1のモータ22の回転角度を適宜選択することによって基体7に対する第1軸ガイド8の交差角を自在に変えることができる。
【0043】
スライダー9に角度設定用の例えばステッピングモータからなる第2のモータ23が取り付けられ、この第2のモータ23の回転軸23aに第2軸ガイド10が取り付けられている。従って、第2のモータ23の回転角度を適宜選択することによって第1軸ガイド8に対する第2軸ガイド10の交差角を自在に変えることができる。
【0044】
更に、ホルダー11に角度設定用の例えばステッピングモータからなる第3のモータ24が取り付けられ、この第3のモータ24の回転軸24aにチャック支持脚12が取り付けられている。従って、第3のモータ24の回転角度を適宜選択することによって第2軸ガイド10に対するチャック支持脚12の交差角を自在に変えることができる。
【0045】
このようなものであれば、第2実施例および第3実施例に示す四辺形P1,P2,P3,P4がいかなる形であっても、その対角線と平行となるように第1軸ガイド8および第2軸ガイド10の角度を調節でき、且つチャック支持脚12も垂直下方を向くようにしてチャック6の把持、把持解除動作に支障が生じないようにすることができる。
【0046】
(その他の実施形態)
なお、本発明は上記し且つ図面に示す実施形態に限定されるものではなく、以下のような拡張或いは変更が可能である。
把持側往復移動方向と把持解除側往復移動方向とは平行(同一方向)でなくとも良い。
第1軸ガイド8およびホルダー11を共に水平面内で移動するように構成しても良い。
第1軸駆動機構13、第2軸駆動機構14は、ボールねじ機構に限られない。
【符号の説明】
【0047】
図面中、1は搬送装置、2は部品(搬送対象物)、6はチャック、7は基体、8は第1軸ガイド、9はスライダー、10は第2軸ガイド、11はホルダー、13は第1軸駆動機構、14は第2軸駆動機構を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1軸ガイドと、
前記第1軸ガイドに第1軸方向に移動可能に支持された第2軸ガイドと、
前記第2軸ガイドを前記第1軸方向に移動させる第1軸駆動機構と、
前記第2軸ガイドに前記第1軸方向と交差する第2軸方向に移動可能に支持され、搬送対象物を把持するチャックが取り付けられるホルダーと、
前記ホルダーを前記第2軸方向に移動させる第2軸駆動機構と、を具備し、
前記チャックが前記搬送対象物の搬送元にある前記搬送対象物を把持するために前記搬送元に置かれている前記搬送対象物に接近する往移動および前記把持対象物を把持して前記搬送元から離れる復移動からなる把持側往復移動方向と、前記チャックが把持した前記搬送対象物を前記搬送元から搬送先に向かって搬送するための搬送移動方向と、前記チャックが前記搬送対象物を前記搬送先に置くために当該搬送先に接近する往方向および前記把持対象物の把持を解除して前記搬送先から離れる復移動からなる把持解除側往復移動方向と、のそれぞれに対し、前記第1軸方向および前記第2軸方向が異なる方向となるように定め、
前記チャックが前記搬送元で前記搬送対象物を把持してから前記搬送先で前記搬送対象物の把持を解除するまでの前記ホルダーの移動を、前記第1軸駆動機構による前記第2軸ガイドの前記第1軸方向への移動と前記第2軸駆動機構による前記ホルダーの前記第2軸方向への移動とを合成することによって行わせることを特徴とする搬送装置。
【請求項2】
前記ホルダーの移動軌跡において、前記チャックが前記搬送元の前記把持対象物を把持するときの第1位置と、前記搬送元で前記チャックが前記搬送対象物を把持して前記復移動する際の当該復移動の終点となる第2位置と、前記チャックが前記搬送先に前記搬送対象物を置くために当該搬送先に接近する前記往移動の始点となる第3位置と、前記チャックが前記搬送先に前記搬送対象物を置いて把持を解除する第4位置とを結んで構成される四辺形の2本の対角線のうち、前記第1位置と前記第3位置とを結ぶ対角線に対して前記第1軸方向が平行となり、前記第2位置と前記第4位置とを結ぶ対角線に対して前記第2軸方向が平行となるように構成してなる請求項1記載の搬送装置。
【請求項3】
前記第1軸ガイドを支持するための基体を備え、
前記基体に対して前記第1軸ガイドを傾斜角調整可能に設け、前記第1軸ガイドに対し前記第2軸ガイドを傾斜角調整可能に設け、前記第2軸ガイドに対して前記ホルダーを傾斜角調整可能に設けたことを特徴とする請求項1または2記載の搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−208702(P2010−208702A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−53377(P2009−53377)
【出願日】平成21年3月6日(2009.3.6)
【出願人】(501428545)株式会社デンソーウェーブ (1,155)
【Fターム(参考)】