説明

搬送装置

【課題】搬送対象物が吊り下げられたか否かに係らず地震による上下振動を抑制することができ、且つ小型化できる搬送装置を提供する。
【解決手段】クレーン装置1はガーダ2、ガーダ2上を移動するトロリ3及び動吸振器型の制振装置5を備える。トロリ3に設置された制振装置5では、ばね部材7及び8が結合点18で連結され、ばね部材7が錘6に、ばね部材8がトロリ3に取り付けられる。減衰装置16が設けられる。連結装置10は、結合点18を取り囲み、トロリ3に取り付けられた支持部材9に設置される。連結装置10が結合点を拘束しているとき、ばね部材7が作用する制振装置5の固有振動数が、空荷状態のクレーン装置本体の固有振動数に同調する。連結装置10が結合点を拘束していないとき、ばね部材7及び8が作用する制振装置5の固有振動数は、吊荷状態のクレーン装置本体の固有振動数に同調する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送装置に係り、特に、原子力プラントに適用するのに好適なガーダ及びトロリを有する搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
天井クレーンなどの、ガーダ及びガーダ上に移動可能に設けられたトロリを有する搬送装置は、一般的に水平方向に広がりを有する構造であるため、上下方向の地震力の影響を受け易くなっている。この搬送装置は、吊荷の有無及びその質量、及びガーダ上におけるトロリの位置によって固有振動数が変わることが特徴である。このような特徴を有する搬送装置において、上下方向の振動を、いわゆる動吸振器と呼ばれる制振装置によって低減させることが提案されている。この場合には、制振装置の固有振動数を搬送装置本体の固有振動数に同調させる必要がある。
【0003】
特開2000−238987号公報は、その制振装置を備えたクレーン装置を記載している。このクレーン装置は、トロリが搬送対象物を吊っていない空荷の状態でクレーン装置本体の固有振動数に同調させた第1制振装置、及びトロリが搬送対象物を吊っている吊荷の状態でクレーン装置本体の固有振動数に同調させた第2制振装置を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−238987号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
動吸振器型の制振装置で搬送装置の振動を低減するためには、制振装置の固有振動数を搬送装置本体の固有振動数に同調させる必要がある。特開2000−238987号公報に記載されたクレーン装置では、その固有振動数の同調を実現するために、異なる状態でのクレーン装置本体の固有振動数に別々に同調させた固有振動数を有する第1及び第2制振装置を設けている。固有振動数が異なる複数の制振装置をクレーン装置に設置しているので、これらの制振装置に設けられた各錘の荷重がクレーン装置に加わり、クレーン装置の重量が増大する。各錘の荷重が加わるクレーン装置の強度を高める必要があり、且つクレーン装置を移動させるモータの容量を増大する必要がある。これは、クレーン装置の大型化につながる。
【0006】
本発明の目的は、搬送対象物が吊り下げられたか否かに係らず地震による上下振動を抑制することができ、且つ小型化できる搬送装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した目的を達成する本発明の特徴は、制振装置が、制振装置の固有振動数を、トロリがガーダの長手方向の中央部に位置している状態での吊荷時における搬送装置本体の固有振動数に同調させる第1制振機構、制振装置の固有振動数を、トロリが前記ガーダの長手方向の中央部に位置している状態での空荷時における搬送装置本体の固有振動数に同調させる第2制振機構、及び吊荷時に第1制振機構を作動状態にし、空荷時に前記第2制振機構を作動状態にする切替装置を有し、第1制振機構及び第2制振機構は錘を共有していることにある。
【0008】
制振装置が錘を共有する第1制振機構及び第2制振機構を有し、空荷時に第1制振機構を作動状態にし、吊荷時に第2制振機構を作動状態にする切替装置を有しているので、搬送対象物が吊り下げられたか否かに係らず地震による搬送装置の上下振動を抑制することができる。また、錘を第1制振機構及び第2制振機構で共有しているので、制振装置を備えた搬送装置の重量を低減することができ、搬送装置を小型化することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、搬送対象物が吊り下げられたか否かに係らず地震による搬送装置の上下振動を抑制することができ、且つガータ及びトロリを有するその搬送装置を小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の好適な一実施例である実施例1の、沸騰水型原子力プラントに用いられるクレーン装置である搬送装置の構成図である。
【図2】図1に示す制振装置の構成図であり、(A)は制振装置の拡大図、(B)は(A)のB−B断面図である。
【図3】本発明の他の実施例である実施例2の、沸騰水型原子力プラントに用いられるクレーン装置である搬送装置の構成図である。
【図4】本発明の他の実施例である実施例3の、沸騰水型原子力プラントに用いられるクレーン装置である搬送装置の構成図である。
【図5】本発明の他の実施例である実施例4の、沸騰水型原子力プラントに用いられるクレーン装置である搬送装置の構成図である。
【図6】図5に示す制振装置の構成図であり、(A)は(B)のA1−A1断面図、(B)は(A)のB1−B1断面図である。
【図7】本発明の他の実施例である実施例5の、沸騰水型原子力プラントに用いられるクレーン装置である搬送装置の構成図である。
【図8】本発明の他の実施例である実施例6の、沸騰水型原子力プラントに用いられるクレーン装置である搬送装置の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施例を、図面を参照して以下に説明する。
【実施例1】
【0012】
本発明の好適な一実施例である実施例1の搬送装置を、図1及び図2を用いて説明する。本実施例の搬送装置であるクレーン装置1は、例えば、沸騰水型原子力プラントの原子炉建屋内の天井クレーンとして使用される。
【0013】
クレーン装置1は、ガーダ2、トロリ3及び制振装置5を備えている。ガーダ2は、原子炉建屋内で天井付近に設置されたガイドレール4上に移動可能に設置される。トロリ3は、ガーダ2の上面に設けられたガイドレール(図示せず)上に移動可能に設置され、搬送対象物20を吊るす吊り装置(図示せず)を設けている。
【0014】
動吸振器型の制振装置5は、錘6、ばね部材7,8、支持部材9及び連結装置(拘束装置)10を備えている。ばね部材7,8はコイルばねである。連結装置10は、支持枠11、及び押し付け装置12A,12Bを有する。ばね部材8が結合点17でトロリ3の上面に取り付けられている。ばね部材7は結合点(拘束点)18でばね部材8に取り付けられている。ばね部材7及び8はトロリ3の上面に対して垂直な方向に伸びている。錘6は、ばね部材7に取り付けられている。錘6は、ばね部材7及び8によって支持されると共に、トロリ3の上面に取り付けられた減衰装置16によっても支持される。減衰装置16としては、例えば、オイルダンパ、磁気ダンパ及びメカトロダンパのうちのいずれかを用いる。
【0015】
矩形の環状になっている支持枠11が、ばね部材7とばね部材8の結合点18の周囲を取り囲んでいる。支持枠11が、トロリ3の上面に設置されている支持部材9に取り付けられている。押し付け装置12A,12Bが、支持枠11の内面に互いに向かい合うように設けられる。押し付け装置12Aが、支持スリーブ13A、ネジロッド14A及びネジロッド14Aの先端に設けられた押し板15Aを有する。押し付け装置12Bが、支持スリーブ13B、ネジロッド14B及びネジロッド14Bの先端に設けられた押し板15Bを有する。内面にネジが形成された支持スリーブ13A,13Bが支持枠11に設置される。ネジロッド14Aの外面にはネジが形成されており、ネジロッド14Aの一部が支持スリーブ13A内に挿入されている。ネジロッド14Aの外面に形成されたネジが、支持スリーブ13Aの内面に形成されたネジと噛み合っている。ネジロッド14Bの外面にはネジが形成されており、ネジロッド14Bの一部が支持スリーブ13B内に挿入されている。ネジロッド14Bの外面に形成されたネジが、支持スリーブ13Bの内面に形成されたネジと噛み合っている。回転用のハンドル(図示せず)が押し板15A,15Bにそれぞれ設けられる。ばね部材7とばね部材8の結合点18が、押し付け装置12Aと押し付け装置12Bの間、具体的には、押し板15Aと押し板15Bの間に配置される。
【0016】
クレーン装置1は、トロリ3に搬送対象物(例えば、原子炉建屋内に設置された(または設置される)機器)20を吊るしてガーダ2により搬送するとき、すなわち、吊荷状態のときには、トロリ3が移動によってガーダ2の長手方向の中央部に位置される。搬送対象物20を降ろし、トロリ3に搬送対象物20を吊っていない状態、すなわち、空荷状態でガーダ2を元の位置まで搬送するときも、トロリ3はガーダ2の長手方向の中央部に位置している。
【0017】
クレーン装置1が空荷状態のとき、押し付け装置12A,12Bが結合点18に押し付けられ、この結合点18が連結装置10を介して支持部材9に結合される。すなわち、ばね部材8が、支持部材9及び連結装置10によって拘束される。クレーン装置1が吊荷状態のとき、押し付け装置12A,12Bが結合点18から離される。すなわち、ばね部材8が、支持部材9及び連結装置10によって拘束されない。
【0018】
吊荷状態及び空荷状態のときにおいて連結装置10が上記のように作用する本実施例のクレーン装置1では、制振装置5の固有振動数を、トロリ3がガーダ2の長手方向の中央部に位置している状態で且つ吊荷状態でのクレーン装置1の本体の固有振動数、及びトロリ3がガーダ2の長手方向の中央部に位置している状態で且つ空荷状態でのクレーン装置1の本体の固有振動数に同調させるために、ばね部材7及び8のそれぞれの剛性は、以下のように設定される。なお、クレーン装置1の本体とは、クレーン装置1の構成から制振装置5を除外した部分の構成であり、以後、クレーン装置本体という。
【0019】
空荷状態では、上記したように、結合点18を支持部材9及び連結装置10によって拘束する。このため、空荷状態で地震が発生したときには、錘6及びばね部材7の作用により、制振装置5の固有振動数を、トロリ3がガーダ2の長手方向の中央部に位置している状態で空荷状態でのクレーン装置本体の固有振動数に同調させる。錘6の質量をM、ばね部材7の剛性をKs1としたとき、トロリ3がガーダ2の長手方向の中央部に位置している状態で空荷状態における制振装置5の固有振動数fs1は、(1)式で表される。
【0020】
【数1】

【0021】
その固有振動数fs1が、トロリ3がガーダ2の長手方向の中央部に位置している状態で空荷状態でのクレーン装置本体の固有振動数に同調するように、ばね部材7の剛性Ks1が設定される。これらの固有振動数を同調させるために、例えば、動吸振器の定点理論に基づいて、(2)式の条件を満たすように、制振装置5の固有振動数が設定される。
【0022】
【数2】

【0023】
ここで、fはクレーン装置本体の固有振動数、Mはクレーン装置本体のうち振動に寄与する部分の質量である。Mとしては、例えば、振動モード解析におけるモード有効質量などを使えば良い。以降の各実施例でも同様の考え方により、制振装置5の固有振動数をクレーン装置本体の固有振動数に同調させることができる。
【0024】
トロリ3がガーダ2の長手方向の中央部に位置している状態における吊荷状態では、上記したように、結合点18が支持部材9及び連結装置10によって拘束されない。このため、地震発生時には、互いに連結されて錘6を支持するばね部材7及び8が直列に変形する。そして、錘6及びばね部材7及び8の作用により、制振装置5の固有振動数を、空荷状態に比べて低下する吊荷状態でのクレーン装置本体の固有振動数に同調させる。ばね部材8の剛性をKs2としたとき、トロリ3がガーダ2の長手方向の中央部に位置している状態での吊荷状態における制振装置5の固有振動数fs2は、(3)式で表される。
【0025】
【数3】

【0026】
その固有振動数fs2が、トロリ3がガーダ2の長手方向の中央部に位置している状態での吊荷状態のクレーン装置本体の固有振動数に同調するように、ばね部材8の剛性Ks2が、例えば、動吸振器の定点理論に基づいて、設定される。ばね部材7の剛性Ks1は、前述のように、固有振動数fs1が空荷状態のクレーン装置本体の固有振動数に同調するように設定されている。
【0027】
空荷状態及び吊荷状態でのクレーン装置1の運転を以下に説明する。クレーン装置1には、クレーン装置1を操作する運転員が乗る運転室(図示せず)が設けられている。クレーン装置1は、例えば、沸騰水型原子力プラントの運転が停止されている定期検査期間に使用される。運転員は、クレーン装置1を空荷状態で運転する前に、ガーダ2に上がって、押し板15A,15Bに設けられたそれぞれのハンドルを持って各ハンドルを順番に一方向に回転させる。この操作によって、ネジロッド14Aが回転しながら支持スリーブ13Aから結合点18に向って移動し、押し板15Aが結合点18に押し付けられる。ネジロッド14Bも回転しながら支持スリーブ13Bから結合点18に向って移動し、押し板15Bが結合点18に押し付けられる。この結果、結合点18が支持部材9及び連結装置10によって拘束される。結合点18が拘束された後、運転員が運転室内に戻ってガーダ2及びトロリ3を移動させ、トロリ3を原子炉建屋内に設置された原子炉圧力容器の真上まで移動させる。
【0028】
トロリ3がガーダ2の長手方向の中央部に位置している状態であって空荷状態でのその移動中に地震が発生したとする。制振装置5において結合点18が支持部材9及び連結装置10によって拘束されているので、ばね部材8は地震時に作用しない。錘6及びばね部材7の作用によって制振装置5の固有振動数fs1が空荷状態でのクレーン装置本体の固有振動数に同調されている関係上、トロリ3がガーダ2の長手方向の中央部に位置している状態で空荷状態での地震時には、クレーン装置1の上下方向の振動が錘6及びばね部材7の作用によって吸収される。したがって、空荷状態での地震時において、制振装置5がクレーン装置1の上下方向の振動を抑制することができる。
【0029】
沸騰水型原子力プラントの定期検査期間においては、原子炉圧力容器の蓋が外され、原子炉圧力容器内に設置されている蒸気乾燥器及び気水分離器が原子炉圧力容器から取り出される。取り外された上記の蓋、蒸気乾燥器及び気水分離器は、搬送対象物20であり、クレーン装置1によって搬送される。気水分離器が原子炉圧力容器から取り出された後、炉心に装荷されている燃料集合体の一部が新燃料集合体と交換される。燃料集合体の交換には、燃料交換機が用いられる。
【0030】
空荷状態でクレーン装置1が運転され、トロリ3が原子炉圧力容器の真上に到達したとする。トロリ3からフック(図示せず)が降ろされ、原子炉圧力容器の蓋がフックに吊るされる。トロリ3及びガーダ2が、運転室内の運転員の操作により移動され、トロリ3に吊るしている蓋を原子炉建屋内の所定の位置まで搬送する。この蓋の移送時には、クレーン装置1は吊荷状態で運転される。
【0031】
クレーン装置1は吊荷状態で運転される前、具体的には、搬送対象物20である蓋をトロリ3に吊るす前に、運転員が、ガーダ2に上がって押し板15A,15Bに設けられたそれぞれのハンドルを、結合点18を拘束する場合とは逆方向に回転させる。このハンドル操作によって、ネジロッド14Aが逆回転して支持スリーブ13A内に入り込み、押し板15Aが結合点18から離れる。ネジロッド14Bも逆回転しながら支持スリーブ13B内に入り込み、押し板15Bが結合点18から離れる。このため、支持部材9及び連結装置10による結合点18の拘束が解除される。錘6の重量はばね部材7及び8で支持され、地震時にはばね部材7及び8が共に変形する。支持部材9及び連結装置10による結合点18の拘束解除により、制振装置5の固有振動数が、空荷状態でのクレーン装置本体の固有振動数に同調されていた固有振動数fs1から、吊荷状態のクレーン装置本体の固有振動数に同調する固有振動数fs2に設定される。
【0032】
吊荷状態でのクレーン装置1の移動中に地震が発生した場合には、錘6及びばね部材7及び8の作用によって制振装置5の固有振動数fs2が、トロリ3がガーダ2の長手方向の中央部に位置している状態で吊荷状態のクレーン装置本体の固有振動数に同調されている関係上、吊荷状態での地震では、クレーン装置1の上下方向の振動が錘6及びばね部材7及び8の作用によって吸収される。したがって、本実施例は、吊荷状態での地震時においても、制振装置5がクレーン装置1の上下方向の振動を抑制することができる。
【0033】
本実施例は、押し付け装置12A,12Bのハンドル操作によって、支持部材9及び連結装置10により結合点18(ばね部材7とばね部材8の接続部)を拘束している状態(結合点18の拘束状態)及びこれらにより結合点18を拘束していない状態(結合点18の非拘束状態)を切り替えることができる。このため、制振装置5の固有振動数を、トロリ3がガーダ2の長手方向の中央部に位置している状態での空荷状態のクレーン装置本体の固有振動数に同調する固有振動数fs1から、トロリ3がガーダ2の長手方向の中央部に位置している状態での吊荷状態のクレーン装置本体の固有振動数に同調する固有振動数fs2に変更することができる。すなわち、制振装置5は、制振装置5の固有振動数を空荷状態と吊荷状態で変更することができる。
【0034】
このように、クレーン装置1は、制振装置5を備えているので、制振装置5の固有振動数を変更することができ、トロリ3に物体(搬送対象物)が吊り下げられたか否かに係らず地震による上下振動を抑制することができる。
【0035】
また、本実施例は、特開2000−238987号公報に記載されたクレーン装置のように、空荷状態でのクレーン装置本体の固有振動数に同調させた第1制振装置、及び吊荷状態でのクレーン装置本体の固有振動数に同調させた第2制振装置を備える必要がないので、クレーン装置1を小型化することができる。具体的には、1つの制振装置5で空荷状態及び吊荷状態のそれぞれで地震が生じてもクレーン装置1の上下振動を抑制することができるので、特開2000−238987号公報に記載されたクレーン装置に比べて錘の数を少なくすることができる。特開2000−238987号公報に記載されたクレーン装置では、錘の数が多いのでクレーン装置の重量が増加し、クレーン装置の強度を高める必要がある。このため、クレーン装置が大型化する。これに対して、本実施例のクレーン装置1は、上記したように錘の数が少ないので、特開2000−238987号公報に記載されたクレーン装置に比べて小型化することができる。
【0036】
本実施例で用いられる制振装置5は、ばね部材7,8としてコイルばねを用いているので、剛性の設定が容易である。コイルばねを用いる制振装置5は、板ばね部材を有する、実施例4で使用される制振装置5A、及び結合部材29及びばね部材31を有する、実施例5で使用される制振装置5Bに比べて小型化できる。
【0037】
ネジロッド14A,14Bの回転をモータによって行うように、押し付け装置12A,12Bの構成を変更してもよい。
【0038】
本実施例のクレーン装置1に含まれる制振装置5は、錘6及びばね部材7及び8を有する第1制振機構、この第1制振機構に含まれる錘6及びばね部材7を有する第2制振機構、及び吊荷時に第1制振機構を作動状態にし、及び空荷時に第2制振機構を作動状態にする切替装置である連結装置10を備えている。第1制振機構及び第2制振機構は錘6を共有している。
【実施例2】
【0039】
本発明の他の実施例である実施例2の搬送装置を、図3を用いて説明する。本実施例の搬送装置であるクレーン装置1Aは、例えば、沸騰水型原子力プラントの原子炉建屋内の天井クレーンとして使用される。クレーン装置1Aは、クレーン装置1において制振装置5の設置位置をトロリ3からガーダ2に変更した構成を有する。クレーン装置1Aの他の構成は、クレーン装置1と同じである。
【0040】
制振装置5は、トロリ3の移動に障害とならない位置で、ガーダ2の長手方向の中央部でガーダ2の上面に設置される。支持部材9及び減衰装置16がガーダ2の上面に設置され、ばね部材8も結合点17でガーダ2の上面に取り付けられる。
【0041】
本実施例は、実施例1で生じる各効果を得ることができる。
【実施例3】
【0042】
本発明の他の実施例である実施例3の搬送装置を、図4を用いて説明する。本実施例の搬送装置であるクレーン装置1Bは、例えば、沸騰水型原子力プラントの原子炉建屋内の天井クレーンとして使用される。クレーン装置1Bは、クレーン装置1において制振装置5の設置位置をトロリ3からガーダ2に変更した構成を有する。クレーン装置1Bの他の構成は、クレーン装置1と同じである。
【0043】
制振装置5は、ガーダ2に設けられた、トロリ3が移動するガイドレール(図示せず)の下方で、ガーダ2に設けられている。ガーダ2は、2つのボックス構造体を両端部で結合した構成になっている。2つのボックス構造体のそれぞれの上面に、トロリ3が移動するガイドレールが1本ずつ設置されている。各ボックス構造体は、強度を確保するために、所定間隔で配置された複数の隔壁22を設けている。制振装置5は、ガーダ2の長手方向の中央部で隣り合う隔壁22間で、ボックス構造体の底面に設置される。支持部材9及び減衰装置16がガーダ2の底部材の上面に設置され、ばね部材8も結合点17でガーダ2の底部材の上面に取り付けられる。吊荷状態のとき、トロリ3に搬送対象物20を吊るすワイヤは、トロリ3の移動に伴って2つのボックス構造体の間を移動する。
【0044】
本実施例も、実施例1で生じる各効果を得ることができる。本実施例は、制振装置5がガーダ2の1つのボックス構造体の底面に設置されるので、ガーダ2の幅を実施例2よりも狭くすることができる。
【実施例4】
【0045】
本発明の他の実施例である実施例4の搬送装置を、図5及び図6を用いて説明する。本実施例の搬送装置であるクレーン装置1Cは、例えば、沸騰水型原子力プラントの原子炉建屋内の天井クレーンとして使用される。クレーン装置1Cは、クレーン装置1において制振装置5を制振装置5Aに替えた構成を有する。クレーン装置1Cの他の構成は、クレーン装置1と同じである。クレーン装置1Cでは、実施例1と異なる制振装置5Aの構成について説明する。
【0046】
動吸振器型の制振装置5Aはトロリ3の上面に設置されている。制振装置5Aは、錘6、支持部材25、梁状(または板状)のばね部材(板ばね部材)26及び連結装置(拘束装置)10を備えている。支持部材25がトロリ3の上面に垂直に設置されている。ばね部材26が、結合点27で支持部材25に取り付けられ、水平方向に伸びている。錘6がばね部材26の先端部に取り付けられる。実施例1で用いられる連結装置10がトロリ3の上面に設置される。ばね部材26が、連結装置10に設けられた押し付け装置12Aの押し板15Aと押し付け装置12Bの押し板15Bの間に配置される。連結装置10は、押し板15A及び15Bがばね部材26の支持部(拘束点)28に面するようにトロリ3に設置される。連結装置10の支持枠11が、実施例1に用いられた支持部材9の機能を兼ねており、支持部28の位置でばね部材26を取り囲んでいる。
【0047】
錘6のばね部材26への取り付け位置と結合点27との間の長さをL1、及び錘6のばね部材26への取り付け位置と支持部28との間の長さをL2とする。トロリ3がガーダ2の長手方向の中央部に位置している状態で且つ空荷状態での地震時において、クレーン装置1Cの振動を抑制する場合には、押し板15A及び15Bを支持部28でばね部材26に接触させて支持部28を拘束し、ばね部材26を長さL2の範囲で変形させる。この長さL2は、その範囲でばね部材26が曲げ変形する際における制振装置5Aの固有振動数fs1が、トロリ3がガーダ2の長手方向の中央部に位置している状態での空荷状態のクレーン装置本体の固有振動数に同調するように、設定される。トロリ3がガーダ2の長手方向の中央部に位置している状態で且つ吊荷状態での地震時において、クレーン装置1Cの振動を抑制する場合には、押し板15A及び15Bをばね部材26から離して支持部28の拘束を解除し、ばね部材26を長さL1の範囲で変形させる。この長さL1は、その範囲でばね部材26が曲げ変形する際における制振装置5Aの固有振動数fs2が、トロリ3がガーダ2の長手方向の中央部に位置している状態で吊荷状態のクレーン装置本体の固有振動数に同調するように、設定される。トロリ3の上面に取り付けられた減衰装置16は、錘6のばね部材26への取り付け位置と支持部28との間でばね部材26に取り付けられている。なお、長さL1及びL2は、錘6の重量、及びばね部材26の断面特性に依存することは言うまでも無い。
【0048】
トロリ3がガーダ2の長手方向の中央部に位置している状態での空荷状態及び吊荷状態で地震が発生したときにおけるクレーン装置1Cの振動抑制について、説明する。
【0049】
空荷状態でクレーン装置1Cが運転される前において、実施例1と同様に、運転員が押し板15A,15Bに設けられた各ハンドルを回転させてネジロッド14A,14Bを支持部28に向って移動させる。押し板15A及び15Bが支持部28でばね部材26に接触し、ばね部材26が押し板15A及び15Bによって挟まれる。ばね部材26の支持部28が連結装置10によって拘束される。
【0050】
トロリ3がガーダ2の長手方向の中央部に位置しているときで、空荷状態のときに地震が発生した場合には、ばね部材26は、支持部28を基点にして曲げ変形する。錘6、及びばね部材7の長さL2の部分の作用によって、制振装置5の固有振動数fs1が、トロリ3がガーダ2の長手方向の中央部に位置している状態での空荷状態のクレーン装置本体の固有振動数に同調されている関係上、この空荷状態での地震では、クレーン装置1Cの上下方向の振動が錘6、及びばね部材7の長さL2の部分の作用によって吸収される。したがって、その空荷状態での地震時において、制振装置5Aがクレーン装置1Cの上下方向の振動を抑制することができる。
【0051】
吊荷状態でクレーン装置1Cが運転される前において、実施例1と同様に、運転員が、支持部28を拘束する場合とは逆方向に回転させる。押し板15A,15Bが支持部28から離れる。このため、連結装置10によるばね部材26の支持部28の拘束が解除される。
【0052】
トロリ3がガーダ2の長手方向の中央部に位置しているときで、吊荷状態のときに地震が発生した場合には、ばね部材26は、結合点27を基点にして曲げ変形する。錘6、及びばね部材7の長さL1の部分の作用によって、制振装置5の固有振動数fs2が、トロリ3がガーダ2の長手方向の中央部に位置している状態での吊荷状態のクレーン装置本体の固有振動数に同調されている関係上、その吊荷状態での地震では、クレーン装置1Cの上下方向の振動が錘6、及びばね部材7の長さL1の部分の作用によって吸収される。したがって、その吊荷状態での地震時においても、制振装置5Aがクレーン装置1Cの上下方向の振動を抑制することができる。
【0053】
制振装置5Aが設けられた本実施例のクレーン装置1Cでも、実施例1で生じる各効果を得ることができる。本実施例で用いる制振装置5Aは、板ばね部材26を水平方向に伸びるように配置しているので、高さを低くすることができる。このため、制振装置5Aは、上下方向のスペースを小さくすることができる。水平方向に伸びる板ばね部材26を用いているため、連結装置10で板ばね部材26を拘束する支持部28の位置を水平方向の任意の位置に設定することができる。
【0054】
本実施例のクレーン装置1に含まれる制振装置5Aは、錘6及びばね部材26を有する第1制振機構、この第1制振機構に含まれる錘6及びばね部材26の、錘6への取り付け部と支持部28との間の部分を有する第2制振機構、及び吊荷時に第1制振機構を作動状態にし、及び空荷時に第2制振機構を作動状態にする切替装置である連結装置10を備えている。第1制振機構及び第2制振機構は錘6を共有している。
【0055】
制振装置5Aは、実施例2及び3のようにガーダ2に取り付けてもよい。
【実施例5】
【0056】
本発明の他の実施例である実施例5の搬送装置を、図7を用いて説明する。本実施例の搬送装置であるクレーン装置1Dは、例えば、沸騰水型原子力プラントの原子炉建屋内の天井クレーンとして使用される。クレーン装置1Dは、クレーン装置1Cにおいて制振装置5Aを制振装置5Bに替えた構成を有する。クレーン装置1Dの他の構成は、クレーン装置1Cと同じである。クレーン装置1Dでは、実施例4と異なる制振装置5Bの構成について説明する。
【0057】
動吸振器型の制振装置5Bは、制振装置5Aにおいてばね部材26を結合部材29に替え、減衰装置16の設置位置を替えた構成を有する。制振装置5Bの他の構成は制振装置5Aと同じである。制振装置5Aと異なる制振装置5Bの構成を以下に説明する。
【0058】
結合部材29の一端部がピン30によって支持部材25に取り付けられ、錘6が結合部材29の他端部に取り付けられる。結合部材29は、剛体であり、支持部28において連結装置10の押し板15Aと押し板15Bの間に配置されている。結合部材29は、ばね部材31よりも剛であればよい。トロリ3の上面に設置された減衰装置16は、錘6に直接取り付けられる。トロリ3の上面に一端が取り付けられたばね部材31の他端が、結合点32で結合部材29に取り付けられる。
【0059】
トロリ3がガーダ2の長手方向の中央部に位置している状態での空荷状態では、連結装置10の押し板15A,15Bが結合部材29から離れており、連結装置10が結合部材29の支持部28を拘束していない。このような状態の空荷状態において地震によるクレーン装置1Dの上下方向の振動を抑制するために、結合部材29の支点であるピン30と結合点32との間の長さLK1は、トロリ3がガーダ2の長手方向の中央部に位置している状態で空荷状態での制振装置5Bの固有振動数fs1が、トロリ3がガーダ2の長手方向の中央部に位置している状態で空荷状態でのクレーン装置本体の固有振動数に同調するように、設定される。ピン30と錘6の重心との間の長さをL、ピン30と結合点32との間の長さをLk1、錘6の質量をM、ばね部材31の剛性をKとするとき、トロリ3がガーダ2の長手方向の中央部に位置している状態での空荷状態における制振装置5Bの固有振動数fs1は、(4)式で表される。
【0060】
【数4】

【0061】
(4)式では、簡単のため、結合部材29の質量を無視した。
【0062】
トロリ3がガーダ2の長手方向の中央部に位置している状態での吊荷状態では、連結装置10の押し板15A,15Bが支持部28で結合部材29に接触しており、連結装置10が結合部材29の支持部28を拘束している。このような状態の吊荷状態において地震によるクレーン装置1Dの上下方向の振動を抑制するために、ピン30と支持部28との間の長さLK2は、トロリ3がガーダ2の長手方向の中央部に位置している状態で吊荷状態での制振装置5Bの固有振動数fs2が、トロリ3がガーダ2の長手方向の中央部に位置している状態で吊荷状態でのクレーン装置本体の固有振動数に同調するように、設定される。この吊荷状態における制振装置5Bの固有振動数fs2は、(5)式で表される。
【0063】
【数5】

【0064】
トロリ3がガーダ2の長手方向の中央部に位置している状態での空荷状態及び吊荷状態で地震が発生したときにおけるクレーン装置1Cの振動抑制について、説明する。
【0065】
空荷状態にあるクレーン装置1Dの運転前に実施例4と同様な操作を行うことにより、押し板15A及び15Bを支持部28で結合部材29から離し、連結装置10による結合部材29の支持部28の拘束を解除する。
【0066】
トロリ3がガーダ2の長手方向の中央部に位置している空荷状態での地震時には、錘6、ピン30で支持された結合部材29及びばね部材31の作用によって制振装置5Bの固有振動数fs1が、トロリ3がガーダ2の長手方向の中央部に位置している状態で空荷状態でのクレーン装置本体の固有振動数に同調されている関係上、クレーン装置1Dの上下方向の振動が錘6、ピン30で支持された結合部材29及びばね部材31の作用によって吸収される。したがって、トロリ3がガーダ2の長手方向の中央部に位置している状態で空荷状態での地震時において、制振装置5Bがクレーン装置1Dの上下方向の振動を抑制することができる。
【0067】
吊荷状態にあるクレーン装置1Dの運転前に実施例4と同様な操作を行うことにより、押し板15A及び15Bが支持部28で結合部材29に押し付けられる。このため、結合部材29の支持部28が連結装置10によって拘束される。
【0068】
トロリ3がガーダ2の長手方向の中央部に位置している吊荷状態での地震時には、錘6、支持部28で拘束された結合部材29及びばね部材31の作用によって制振装置5Bの固有振動数fs2が、トロリ3がガーダ2の長手方向の中央部に位置している状態で吊荷状態でのクレーン装置本体の固有振動数に同調されている関係上、クレーン装置1Dの上下方向の振動が錘6、支持部28で拘束された結合部材29及びばね部材31の作用によって吸収される。したがって、その吊荷状態での地震時において、制振装置5Bがクレーン装置1Dの上下方向の振動を抑制することができる。
【0069】
制振装置5Bが設けられた本実施例のクレーン装置1Dでも、実施例1で生じる各効果を得ることができる。制振装置5Bは、ピン30で支持された結合部材29及びばね部材31を用いているので、結合点32からの、結合部材29を拘束する位置までの長さを変更することによって、制振装置5Bの固有振動数を容易に調節することができる。ピン30で支持された結合部材29及びばね部材31を有する制振装置5Bは、制振装置5に比べて質量が小さい錘6を用いて所定の固有振動数に調節することができる。
【0070】
本実施例のクレーン装置1に含まれる制振装置5Bは、錘6、結合部材29及びばね部材31を有する第2制振機構、この第2制振機構に含まれる錘6、結合部材29の、支持部28と結合点32との間の部分、及びばね部材31を有する第1制振機構、及び吊荷時に第1制振機構を作動状態にし、及び空荷時に第2制振機構を作動状態にする切替装置である連結装置10を備えている。第1制振機構及び第2制振機構は錘6を共有している。
【0071】
制振装置5Bは、実施例2及び3のようにガーダ2に取り付けてもよい。
【実施例6】
【0072】
本発明の他の実施例である実施例6の搬送装置を、図8を用いて説明する。本実施例の搬送装置であるクレーン装置1Eは、例えば、沸騰水型原子力プラントの原子炉建屋内の天井クレーンとして使用される。クレーン装置1Eは、クレーン装置1において制振装置5を制振装置5Cに替えた構成を有する。クレーン装置1Eの他の構成は、クレーン装置1と同じである。
【0073】
クレーン装置1Eでは、実施例1と異なる制振装置5Cの構成について説明する。動吸振器型の制振装置5Cは、実施例1で用いられる制振装置5に連結装置(拘束装置)10A、ばね部材35及び支持部材36を追加した構成を有し、ガーダ2の上面に設置される。
【0074】
ばね部材35はばね部材7の上方に配置され、ばね部材35の下端部が結合点37でばね部材7の上端部に連結されている。ばね部材35の上端部は錘6に取り付けられる。連結装置10Aは、実施例1で用いられる連結装置10と同じ構成を有する。この連結装置10Aは連結装置10の上方に配置され、連結装置10Aの支持枠11が結合部37を取り囲んでいる。結合部37は、連結装置10Aの押し板15Aと押し板15Bの間に配置される。連結装置10Aの支持枠11は支持部材36に取り付けられている。
【0075】
制振装置5Eは、トロリ3の移動に障害とならない位置で、ガーダ2の長手方向の中央部でガーダ2の上面に設置される。支持部材9,36及び減衰装置16が、ガーダ2の上面に取り付けられる。ばね部材8が結合点17でガーダ2の上面に取り付けられる。
【0076】
ばね部材7,8及び35の剛性が、それぞれ、以下のように設定される。ばね部材7の剛性Ks1が、実施例1と同様に、空荷状態でトロリ3がガータ2の長手方向の中央に位置しているときにおける制振装置5Cの固有振動数fs1がそのときにおける空荷状態のクレーン装置本体の固有振動数に同調するように、設定される。ばね部材8の剛性Ks2が、実施例1と同様に、吊荷状態でトロリ3がガータ2の長手方向の中央に位置しているときにおける制振装置5Cの固有振動数fs2がそのときにおける吊荷状態のクレーン装置本体の固有振動数に同調するように、設定される。ばね部材35の剛性が、ばね部材7及び8の剛性と同様に、空荷状態でトロリ3がガータ2の長手方向の端部に位置しているときにおける制振装置5Cの固有振動数fs3がそのときにおける空荷状態のクレーン装置本体の固有振動数に同調するように、設定される。
【0077】
地震が発生したときにおけるクレーン装置1Eの振動抑制について説明する。
【0078】
連結装置10の押し板15A及び15Bが結合点18から離れており、連結装置10Aの押し板15A及び15Bも結合点37から離れていると仮定する。トロリ3がガータ2の長手方向の中央に位置しているときで空荷状態のクレーン装置1Eの運転前に、運転員が、ガーダ2の上に上がって、実施例1と同様に連結装置10の各ハンドルを回転させて、連結装置10のネジロッド14A,14Bをばね部材7とばね部材8の結合点18に向って移動させる。やがて、連結装置10の押し板15A及び15Bがばね部材7とばね部材8の結合点18に接触し、結合点18が押し板15A及び15Bによって挟まれる。結合点18が支持部材9及び連結装置10によって拘束される。
【0079】
トロリ3がガーダ2の長手方向の中央部に位置しているときで、空荷状態のときに地震が発生した場合には、ばね部材7及び35が拘束された結合点18を基点に変形する。錘6及びばね部材7及び35の作用によって、制振装置5Cの固有振動数fs1が、トロリ3がガーダ2の長手方向の中央部に位置しているときで空荷状態でのクレーン装置本体の固有振動数に同調されている関係上、トロリ3がガータ2の長手方向の中央に位置しているときで空荷状態での地震では、クレーン装置1Eの上下方向の振動が錘6、及びばね部材7及び35の作用によって吸収される。したがって、トロリ3がガーダ2の長手方向の中央部に位置しているときで空荷状態での地震時において、制振装置5Cがクレーン装置1Eの上下方向の振動を抑制することができる。
【0080】
トロリ3がガータ2の長手方向の中央に位置しているときで、吊荷状態のクレーン装置1Eの運転前に、ガーダ2の上に上がった運転員が、連結装置10の各ハンドルを逆回転させる。これにより、押し板15A及び15Bが結合点18から離れ、連結装置10による結合点18の拘束が解除される。連結装置10Aが結合点37を拘束していないので、連結装置10Aにおける結合点37の拘束解除の操作は行われない。もし、結合点37が連結装置10Aによって拘束されている場合には、上記した連結装置10と同様に、運転員による連結装置10Aの押し板15A,15Bに設けられた各ハンドルの回転操作が行われる。この各ハンドルの回転操作により、連結装置10Aの押し板15A及び15Bが結合点37から離される。
【0081】
トロリ3がガーダ2の長手方向の中央部に位置しているときで、吊荷状態のときに地震が発生した場合には、ばね部材8,7および35が、結合点17を基点に変形する。このため、錘6、及びばね部材8,7および35の作用によって、制振装置5Cの固有振動数fs2が、トロリ3がガータ2の長手方向の中央に位置しているときで吊荷状態でのクレーン装置本体の固有振動数に同調されている関係上、トロリ3がガータ2の長手方向の中央に位置しているときで吊荷状態での地震では、クレーン装置1Eの上下方向の振動が錘6、及びばね部材8,7及び35によって吸収される。したがって、トロリ3がガータ2の長手方向の中央に位置しているときで吊荷状態での地震時においても、制振装置5Cがクレーン装置1Eの上下方向の振動を抑制することができる。
【0082】
トロリ3がガータ2の長手方向の端部に位置しているときで空荷状態のクレーン装置1Eの運転前に、運転員による連結装置10Aの押し板15A,15Bに設けられた各ハンドルの回転操作が行われる。連結装置10Aのネジロッド14A,14Bが、ばね部材35とばね部材7の結合点37に向って移動される。やがて、連結装置10Aの押し板15A及び15Bがばね部材35とばね部材7の結合点37に接触し、結合点37が連結装置10Aの押し板15A及び15Bによって挟まれる。結合点37が支持部材9及び連結装置10Aによって拘束される。
【0083】
トロリ3がガーダ2の長手方向の端に位置しているときで、空荷状態のときに地震が発生した場合には、ばね部材35が拘束された結合点37を基点に変形する。錘6及びばね部材35の作用によって、制振装置5Cの固有振動数fs3が、トロリ3がガーダ2の長手方向の端部に位置しているときで空荷状態でのクレーン装置本体の固有振動数に同調されている関係上、トロリ3がガータ2の長手方向の端部に位置しているときで空荷状態での地震では、クレーン装置1Eの上下方向の振動が錘6、及びばね部材35の作用によって吸収される。したがって、トロリ3がガーダ2の長手方向の端部に位置しているときで空荷状態での地震時において、制振装置5Cがクレーン装置1Eの上下方向の振動を抑制することができる。
【0084】
制振装置5Cが設けられた本実施例のクレーン装置1Eは、トロリ3がガーダ2の長手方向の中央部に位置しているときで且つ空荷状態及び吊荷状態で地震が発生しても、クレーン装置1Eの上下方向の振動を抑制することができる。さらに、本実施例は、支持部材36、ばね部材35及び連結装置10Aを有しているので、トロリ3がガーダ2の長手方向の端部に位置しているときで且つ空荷状態の時に地震が発生しても、クレーン装置1Eの上下方向の振動を抑制することができる。さらに、実施例1と同様に、クレーン装置1Eを小型化することができる。
【0085】
本実施例のクレーン装置1Eに含まれる制振装置5Cは、錘6及びばね部材7、8及び35を有する第1制振機構、この第1制振機構に含まれる錘6及びばね部材7及び8を有する第2制振機構、この第1制振機構に含まれる錘6及びばね部材35を有する第3制振機構、及びトロリ3がガーダ2の長手方向の中央部に位置している状態における吊荷時に第1制振機構を作動状態にし、トロリ3がガーダ2の長手方向の中央部に位置している状態における空荷時に第2制振機構を作動状態にし、トロリ3がガーダ2の長手方向の端部に位置している状態における空荷時に第2制振機構を作動状態にする切替装置を備えている。この切替装置は連結装置10及び10Aを含んでおり、第1制振機構、第2制振機構及び第3制振機構は錘6を共有している。
【0086】
制振装置5Cは、実施例1のようにトロリ3に取り付けてもよく、実施例3のようにガーダ2の底部材に取り付けてもよい。
【0087】
実施例1〜6の各クレーン装置は、沸騰水型原子力プラントのタービン建屋等の他の建屋内に設置された天井クレーン装置に適用することができる。実施例1〜6の各クレーン装置は、他の原子力プラントである加圧水型原子力プラントの原子炉建屋及びタービン建屋内に設置された天井クレーン装置にも適用できる。さらに、各実施例のクレーン装置は、火力プラントの建屋内の天井クレーン装置にも適用でき、沸騰水型原子力プラントに用いられる、ガーダ及びトロリを有する燃料交換機にも適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明は、原子力プラント及び火力プラントにおけるガーダ及びトロリを有する搬送装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0089】
1,1A,1B,1C,1D,1E…クレーン装置、2…ガーダ、3…トロリ、5,5A,5B,5C…制振装置、6…錘、7,8,26,35…ばね部材、9,25,36…支持部材、10,10A…連結装置、11…支持枠、12A,12B…押し付け装置、13A,13B…支持スリーブ、14A,14B…ネジロッド、15A,15B…押し付け板、16…減衰装置、18…結合部、28…支持部、29…結合部材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガーダと、前記ガーダの長手方向に移動可能に前記ガーダ上に設置され、搬送対象物が吊るされるトロリと、前記ガーダ及び前記トロリのいずれかに設置された制振装置とを備え、
前記制振装置が、前記制振装置の固有振動数を、前記トロリが前記ガーダの長手方向の中央部に位置している状態での吊荷時における搬送装置本体の固有振動数に同調させる第1制振機構、前記制振装置の固有振動数を、前記トロリが前記ガーダの長手方向の中央部に位置している状態での空荷時における前記搬送装置本体の固有振動数に同調させる第2制振機構、及び前記吊荷時に前記第1制振機構を作動状態にし、前記空荷時に前記第2制振機構を作動状態にする切替装置を有し、
前記第1制振機構及び前記第2制振機構は錘を共有していることを特徴とする搬送装置。
【請求項2】
前記第1制振機構が、前記錘と、前記ガーダ及び前記トロリのいずれかに取り付けられた第1ばね部材と、前記錘に取り付けられて前記第1ばね部材に連結された第2ばね部材とを有し、
前記第2制振機構が、前記第1制振機構に含まれた前記錘及び前記第2ばね部材を有し、
前記切替装置が、前記空荷時に前記第1ばね部材と前記第2ばね部材の結合部を拘束し、前記吊荷時に前記結合部の拘束を解除する拘束装置であり、
前記第1ばね部材の剛性は、前記制振装置の固有振動数が、前記トロリが前記ガーダの長手方向の中央部に位置している状態での吊荷時における前記搬送装置本体の固有振動数に同調するように、設定され、前記第2ばね部材の剛性は、前記制振装置の固有振動数が、前記トロリが前記ガーダの長手方向の中央部に位置している状態での空荷時における前記搬送装置本体の固有振動数に同調するように、設定されている請求項1に記載の搬送装置。
【請求項3】
前記第1制振機構が、前記錘、及び前記ガーダ及び前記トロリのいずれかに設けられた支持部材に取り付けられて水平方向に伸び、且つ前記錘に取り付けられた板ばね部材を有し、
前記切替装置が、前記空荷時に、前記板ばね部材の、前記支持部材との結合部と前記錘との間に存在する拘束点を拘束し、前記吊荷時に前記拘束点の拘束を解除し、前記前記ガーダ及び前記トロリのいずれかに取り付けられた拘束装置であり、
前記第2制振機構が、前記第1制振機構に含まれる前記錘、及び前記板ばね部材の、前記錘との取り付け部から前記拘束点までの部分を有し、
前記板ばね部材の、前記錘との取り付け部と前記板ばね部材の前記拘束点との間の第1長さは、前記制振装置の固有振動数が、前記トロリが前記ガーダの長手方向の中央部に位置している状態での空荷時における前記搬送装置本体の固有振動数に同調するように、設定され、前記板ばね部材の、前記錘との取り付け部と、前記板ばね部材の前記結合部との間の第2長さは、前記制振装置の固有振動数が、前記トロリが前記ガーダの長手方向の中央部に位置している状態での吊荷時における前記搬送装置本体の固有振動数に同調するように、設定されている請求項1に記載の搬送装置。
【請求項4】
前記第2制振機構が、前記錘と、前記ガーダ及び前記トロリのいずれかに設けられた支持部材に第1結合部で取り付けられて水平方向に伸び、前記錘に取り付けられた結合部材と、前記第1結合部と前記錘との間に位置する第2結合部で前記結合部材に一端部が取り付けられ、他端部が前記ガーダ及び前記トロリのいずれかに取り付けられたばね部材とを有し、
前記切替装置が、前記吊荷時に、前記結合部材の、前記第1結合部と前記第2結合部の間に存在する拘束点を拘束し、前記空荷時に前記拘束点の拘束を解除し、前記前記ガーダ及び前記トロリのいずれかに取り付けられた拘束装置であり、
前記第1制振機構が、前記第2制振機構に含まれる前記錘、前記結合部材の、前記錘との取り付け部と前記拘束点との間の部分を有し、
前記第1結合部と前記第2結合部との間の第1長さは、前記制振装置の固有振動数が、前記トロリが前記ガーダの長手方向の中央部に位置している状態での空荷時における前記搬送装置本体の固有振動数に同調するように、設定され、前記第1結合部と前記拘束点との間の第2長さは、前記制振装置の固有振動数が、前記トロリが前記ガーダの長手方向の中央部に位置している状態での吊荷時における前記搬送装置本体の固有振動数に同調するように、設定されている請求項1に記載の搬送装置。
【請求項5】
ガーダと、前記ガーダの長手方向に移動可能に前記ガーダ上に設置され、搬送対象物が吊るされるトロリと、前記ガーダ及び前記トロリのいずれかに設置された制振装置とを備え、
前記制振装置が、前記制振装置の固有振動数を、前記トロリが前記ガーダの長手方向の中央部に位置している状態での吊荷時における搬送装置本体の固有振動数に同調させる第1制振機構、前記制振装置の固有振動数を、前記トロリが前記ガーダの長手方向の中央部に位置している状態での第1空荷時における搬送装置本体の固有振動数に同調させる第2制振機構、前記制振装置の固有振動数を、前記トロリが前記ガーダの長手方向の端部に位置している状態での第2空荷時における搬送装置本体の固有振動数に同調させる第3制振機構、及び前記吊荷時に前記第1制振機構を作動状態にし、前記第1空荷時に前記第2制振機構を作動状態し、及び前記第2空荷時に前記第3制振機構を作動状態にする切替装置を有し、
前記第1制振機構、前記第2制振機構及び前記第3制振機構は錘を共有していることを特徴とする搬送装置。
【請求項6】
前記第1制振機構が、前記錘と、前記ガーダ及び前記トロリのいずれかに取り付けられた第1ばね部材と、前記第1ばね部材に連結された第2ばね部材と、前記錘に取り付けられて前記第2ばね部材に連結された第3ばね部材とを有し、
前記第2制振機構が、前記第1制振機構に含まれた前記錘、前記第2ばね部材及び前記第3ばね部材を有し、
前記第3制振機構が、前記第1制振機構に含まれた前記錘及び前記第3ばね部材を有し、
前記切替装置が、前記第1空荷時に前記第1ばね部材と前記第2ばね部材の第1結合部を拘束し、前記吊荷時に前記第1結合部の拘束を解除する第1拘束装置、及び前記第2空荷時に前記第2ばね部材と前記第3ばね部材の第2結合部を拘束し、前記第1空荷時及び前記吊荷時に前記第2結合部の拘束を解除する第2拘束装置を含んでおり、
前記第1ばね部材の剛性は、前記制振装置の固有振動数が、前記トロリが前記ガーダの長手方向の中央部に位置している状態での前記吊荷時における前記搬送装置本体の固有振動数に同調するように、設定され、前記第2ばね部材の剛性は、前記制振装置の固有振動数が、前記トロリが前記ガーダの長手方向の中央部に位置している状態での前記第1空荷時における前記搬送装置本体の固有振動数に同調するように、設定され、前記第3ばね部材の剛性は、前記制振装置の固有振動数が、前記トロリが前記ガーダの長手方向の端部に位置している状態での前記第2空荷時における前記搬送装置本体の固有振動数に同調するように、設定されている請求項5に記載の搬送装置。
【請求項7】
前記ガーダ及び前記トロリのいずれか、及び前記錘に取り付けられた減衰装置を備えた請求項2、4及び6のいずれか1項に記載の搬送装置。
【請求項8】
前記ガーダ及び前記トロリのいずれか、及び前記板ばね部材に取り付けられた減衰装置を備えた請求項3に記載の搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−247958(P2010−247958A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−99463(P2009−99463)
【出願日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【出願人】(507250427)日立GEニュークリア・エナジー株式会社 (858)
【Fターム(参考)】